聖女(性女)様と一緒 ~悠々自適の一人旅が、波瀾とエロに満ちた珍道中に~ 作:ぐうたら怪人Z
① 王都到着!
長い旅路であった。
行く先々でトラブルに巻き込まれたり、トラブルに顔を突っ込んだり、寄り道したり、回り道したり。
そのほとんどが自分達の自業自得な気がしないでもないが、ともかく通常よりもはるかに長い時間をかけ、ヴィル達はようやく――本っ当にようやく、目的地へ辿り着いたのだった。
はるばる訪れた王都。
流石この国の中心というだけはあり、通りは整い人通りも多い。
ざっと見渡しただけでも数え切れないほど建物が整然と並んでいるのを確認できる。
これだけでも発展の度合いを推し量れるというものだ。
この街でエルミアとイーファは他の『勇者の一団』メンバーと合流し、王都と謁見する。
然る後に国民へ顔見せをし、魔王配下『四天王』との戦いに赴くのだ。
そういう訳で、ヴィル達は早速王城へと――
「ごめん、それちょっと待った」
「え?」
「どういうことなんだ?」
ヴィルの詰問が響く。
ここは王城――ではなく、その程近くにある高級宿の一室である。
顔を並べる面子はヴィル一行に加えて――
「どうもこうも、まだ“王国”にゃオマエと会う余裕が無いんだよ」
――神獣の村で出会った少女ラティナが居た。
彼女はあの事件の事後処理を行うため一足先に王都へ向かったのだが、“王国”側からのメッセンジャーとしてこちらに向かわされたらしい。
「いや、会うのは俺ではなくてエルミア達なのだが」
「そんな戯言今更通じるとでも思ってんのか!?
“帝国”の将軍迎え入れるのには、こっちだって相応の準備が必要なんだ!」
「理屈は分かるが、それなら俺のことはただの旅人として扱ってくれてもいいのに」
「オマエが正体バラさなけりゃ、そうしてやるつもりだったとも」
「……それは悪かった」
素直に頭を下げる。
もっとも、ヴィルとしてもこうなる可能性を考えていなかった訳ではない。
他国の重鎮が来たとして、それを知らぬ存ぜぬで済ますことは自分でも無理だ。
「しかも、その将軍様は、
今、“上”がどれだけ混乱してるか分かるか?」
「その件に関しては何度も謝ったじゃないか」
「ボクに謝られたところでどうにもならないし」
「なんなら本来の立場から“口添え”してもいいが」
「本気で止めてくれ。
下手すると王国上層部の顔ぶれが変わる」
神獣の件はそれ程にデリケートな問題のようだ。
王国のみならず教会も巻き込んでの不祥事なのだから、当然のことでもある。
当事者全員が
だからこそ、ヴィルは自分の正体を明かしたのである。
責任の所在を明確にするだけでなく、“上層部”への牽制も兼ねていたのだ。
“王国”からしてみれば、ヴィルは厄介人ではあるがかといって下手な干渉はできないという、迷惑極まりない存在となっているのだろう。
「とりあえず、だ。
色々言ってしまったが、こちらとしても“王国”を刺激するつもりは微塵も無い。
そちら側に意向には最大限従おう。
遠慮なく言ってくれ」
「そうして貰えると助かるな。
じゃあとりあえず、向こう1週間くらいは王都で適当に過ごしててくれ。
オマエの立場がバレると無用に混乱が起きちゃうから、滞在はあくまで一旅人としてだぞ。
あと王との面会もあるから、それ用の服はちゃんと用意しとけ?」
「……遠慮、無さすぎやしないだろうか」
こちらが譲歩しようとした途端これである。
舌の根乾かない内ではあるが、ちょっと如何なものか。
「その図太さがあれば、俺との面会なんてさくっと済ませられそうなものだが」
「バカだなぁ。
失礼なこと言いつけてオマエの不興かってクビ飛ばされるのを“上”の連中が怖がったから、本来は下っ端のボクが遣わされてるんじゃないか」
「……なるほど」
実に説明的な台詞だった。
一応、理不尽なような筋が通っているような。
しかし王都滞在中は一般人を装い、王城に入る時は本来の立場になれとは、手前勝手な話ではある。
とはいえヴィルはヴィルで勝手に神獣の件を押し進めてしまったため、文句を言える筋合いも無いかもしれなかった。
「分かった分かった。
別に無茶なこと頼まれている訳でも無いしな、言いつけはしっかり守ろう。
確認だが、正体さえ明かさなければ好きにしていていいんだな?」
「ああ、それで構わないよ。
言ってくれれば色々便宜だって図ってやるぞ」
「考えておこう」
正直なところ、面倒なのでこれ以上“王国”へ借りも貸しも作りたくはないのだが。
ヴィルの話が一段落したところで、赤髪の魔女イーファが口を開いた。
「結局、王都に来てもしばらくはいつもと変わらない感じですねー」
「何言ってんだ、オマエ」
「え?」
その台詞を、ラティナが遮ってくる。
「オマエもエルミアも、しばらくはこっち手伝ってもらうぞ。
必要な書類がまだまだあるんだ」
「え? え? うそうそ、報告書とか山ほど書かされましたけど!?」
「――はんっ!」
「鼻で笑われた!?」
「素人が1日2日で書き上げられる量の文書で、この案件が収まる訳ないだろ!!
神獣舐めんなバカ!!
あと査問会にも証人として出席してもらうからな!!」
「えええ!?」
「被告人として呼ばれないだけマシだと思え」
「そ、そんなー!?
て、ていうか、アタシ一応“魔女”なんですけど!?
“勇者の一団”の儀礼とかはどうなってるんですか!?」
「そんなもん後回しだ後回し!」
「お、おお――」
自分の立場を“そんなもの”扱いされ、がっくりと膝をつくイーファ。
なかなか大変だとは思うが、乗りかかった船なので何とか頑張って欲しい。
だがそうなってくると――
「向こう1週間、エルミアとも会いづらくなるな」
「そうですね。
しかし、こればかりは仕方がありません」
残念そうに目を伏せる銀髪の聖女。
互いに、王都についたらハメを外すつもりでいたので(正確にはハメまくるつもりだった訳だが)、ヴィルとしても無念でならない。
「その代わり、時間がとれた際には十分に可愛がって下さいね?」
「ああ、勿論だ」
言って、口づけを交わす。
少女の柔らかい唇が実に心地よい。
この場で“その先”までしたくなる気持ちを、ぐっと抑える。
「……やっぱり先生にとってエルミアさんは別枠なんですね」
「……見ててムカつくな、アイツら」
こんな声が聞こえてきたこともあるし。
ヴィルは軽く咳払いをすると、若干不自然感を拭えない口調で無理やりな話題転換を試みる。
「あー、そうそう。
先程便宜を図って貰えると聞いたが、早速一つ頼んでもいいだろうか――」
打合せが終わってから、小一時間程が過ぎ。
ヴィルは今、王都の通りを一人歩いていた。
(……なんだか新鮮な気分もするな)
エルミアと出会ってからこちら、基本的に行動は彼女と一緒だった。
異国の地で一人気ままに動く――というのは、かなり久々な体験だ。
(思えば、それも目的の一つだったんだ)
あの美しい少女と共に居ることに全く持って不自由など感じていないが、それでもこの“自由への高揚感”“未知への期待感”の味わいは筆舌に尽くしがたい。
見るもの聞くものが、全て興味深く感じる感覚。
そんな、どこか少年じみた興奮を胸に青年は道を進み、
「……ここか」
目的の場所へと辿り着いた。
都の中でも、一際目立つ巨大な建物。
「<冒険者ギルド>……!」
思わず、その名前を呟いてしまう。
そう、この場所こそが王都の――いや、“王国”の名物とすら言える、<冒険者ギルド>の本拠地なのだ。
冒険者とは、ギルドを通じた依頼で様々な仕事を果たす職業人のこと、
その職務は魔物退治から隊商の護衛、果ては遺跡探索と多岐に渡る。
仕事柄、関所を自由に通れる権限まで与えられることがあるそうだ。
まさしく“冒険”をするための職だ。
“帝国”にはそのような職業は無い。
魔物退治や隊商の護衛は兵士や傭兵の仕事であり、遺跡の探索は国の管理下で行われる。
故に、ヴィルは昔から関心を持っていた。
<冒険者>とはどのようなシステムなのか。
もっとはっきり言えば、自分も冒険者になってみたいという想いもあった。
彼の立場上、有り得ない話だったが。
(それが、こんな形で叶うとはな)
懐から一枚の羊皮紙を取り出す。
ヴィルの正体が表沙汰にならぬよう取り計らいつつ、彼を<冒険者>へ登録する旨が書かれた、ギルドへの紹介状だ。
……形式は紹介状であっても、その実態は半ば指令書のようなものだったりするが。
言うまでも無く、ラティナに頼んで用意した貰った品である。
これがあれば、やたらとややこしい地位にある彼であっても<冒険者>となることができる、という塩梅だ。
正体を黙ったまま登録してしまうという手段もあるにはあるが、それは自分の立場をより複雑にする上、周囲にも多大な迷惑を振り撒きかねない諸刃の剣。
そのため今回は素直に公的権力へ頼った次第である。
通さねばならない筋はしっかり通しておかないと、関係者が皆不幸になってしまう。
(ま、とは言っても俺が冒険者をやれるのはたかだか一週間。
その間で何か大事を起こすということも無かろうが)
それでも、冒険者としての生活の一端は経験できよう。
心なし高まる鼓動と共に、ヴィルはギルドの扉を開いた――!
一方。
こちらは宿に残った3人。
「……ま、実際のとこ、ズィーガに関してはそんな面倒にはなってないんだけどなー」
ぽつり、とラティナが呟いた。
ヴィルが宿から十二分に離れたことは確認した上での発言だ。
「神獣の悪事を暴いた功績はあくまで聖女エルミアと魔女イーファが成し遂げた、と報告しといたのが良かった。
『若き英雄』を最大限喧伝することで、周りからの批判を上手く逸らしたんだよ。
帝国のでっかい後ろ盾がオマエらにあるってのも大きかった」
「えーっ、そうだったんですか!?
だったら、何であんなこと言ったんです?」
疑問符を浮かべるイーファへ、ラティナが説明を続ける。
「要するに、欲しくなったのさ。
“帝国”最強――いや、世界最強の英雄との
「コネ、ですか」
「そ、コネ。
アイツが“王国”に現れた時点で、これを機にコンタクトしようという話はあったんだが、立場が立場な上に目的も不明だったんで結局静観しかしてこなかったんだ。
触らぬ神に祟りなしってな。
ところがどっこい、アイツが本当に神に匹敵する戦力を
“教会”と“学院”の後に続けってなもんで、“上”が積極的に動き出したのさ」
「……あー、“教会”と“学院”ってのは、エルミアさんとアタシのことですかね」
「そりゃもちろん。
上手くやったな、オマエの爺さんは。
教会の方は嬉しい誤算って感じか。
どっちのお偉い方も、口ではアレコレ言いつつ頬が綻んでたよ」
「そういう言い方をされると複雑ですね」
「祝福されてるんだからいいだろ。
多分、オマエの交際は“賢者の学院”が全力でサポートしてくれるぞ」
「うーん――反対されるよりかはマシだと受け取っておきます」
イーファにしてみれば、ヴィルへの想いは純粋な好意であるため、打算的に利用されることには抵抗がある。
事と次第によっては妨害される可能性も十分有った訳なので、現状は決して悪く無いのだが――それで納得できる程、単純な乙女心はしていないのだ。
「まあとりあえず、それは横に置いときまして。
先生とのコネを作るといっても、どうやるつもりなんです?」
「そりゃ決まってんだろ。
かの将軍は女と見れば誰彼構わず手を出す好色男なんだから、さ」
「……あの。
それってもしかして。
いや、もしかしなくても」
「ああ――色仕掛けだ」
断言しやがった。
「も、もう少し言い方というものが。
いやいや、でもそんな、先生に限ってそういうのに引っかかるなんて――」
「無いと思うか?」
「――あ、ありえそう、かも」
基本的に信頼できる人物ではあるが、こと女性関連については割とだらしない――ような気がする。
仮にも恋人がいる身だというのに、結構簡単に他の女性へ手を出してしまうというか。
……ほとんどケースで、その恋人であるエルミア自身が扇動しているようではあるが。
「あっ!! それじゃあ、アタシ達を先生から引き離したのは!?」
「ようやく気付いたのか。
そうさ、“上”が集めた女共がアイツを垂らし込みやすくするためだよ」
「ずるくないですか、それー!?」
「ボクも思う所が無いわけじゃないけど、決まっちゃったことだからなぁ。
ま、ずるい云々で言うなら、ただ“より早く出会っただけ”で正妻の座を射止めたってのも、十分不公平な話だと思わないか?」
「む、むむむ」
筋は通っていない。
滅茶苦茶言ってると思う。
しかし言い返せなかったのは――イーファ自身、“出会う順が逆であればひょっとしたら自分が”、という想いを心のどこかに抱いているのかもしれなかった。
「で、でもでもでも!!
そんなのっておかしいですよ!!
エルミアさんだってそう思うでしょう!?」
「いえ、別に」
「え!?」
賛同して貰おうと聖女の方へ話をふったのだが、その試みはあっさりと崩れ去った。
「っていうか、この計画を提案したの私だし」
「ええっ!?」
その上、エルミアの口調がやたらフランクなものに変わっている。
共に旅する中で何度も出会った、性女としての彼女だ。
「ふふふ、上手い具合に話が転がれば“王国”の綺麗どころを簡単に集められるんじゃないかって思ったんだけどね。
聞いた話じゃ、実際なかなかな上玉が揃ったとかなんとか。
ヴィルがその内の何人をモノにしてくるのか――今から愉しみでならないわ」
「えええっ!!?」
何言ってんだこの人。
頭は大丈夫なんだろうか、いや駄目か。
「そ、そんなことして、もし万一、先生が本気になっちゃったりしたらどうするんですか!?」
「その時は――」
うっすらと微笑みを浮かべるエルミア。
同性であるイーファですら、
「――その“お相手”を堕としてしまえばいいのよ」
「おおぉおおおいっ!?」
手をワキワキとしながら語るその貌は、性女の名に恥じぬ逸品であった。
……聖女の名は地の底にまで堕ちる代物でもある。
「アタシ、今までエルミアさんのことを“ちょっと頭おかしいけど実はすごい人”だと思ってたんですけど。
実際は“ぱっと見なんだか凄いんだけど頭が半端なくおかしい人”だったんですね!?」
「――――」
その言葉に、聖女の表情が一瞬だけ固まった。
だがすぐに動き出すと不自然な程にこやかな笑顔を作り、
「ああ、ところでイーファ。
長旅で大分疲労も溜まっているでしょう?
せっかく目的の王都に着いた訳だし、今日はたっぷり私が癒してあ・げ・る・わ♪」
「え? な、なんですか? なんでエルミアさん、指を艶めかしく動かしながら迫ってくるんですか!?
だ、大丈夫ですよ、アタシ、全然疲れてなんかいませんから!! ぴんぴんしてますから!!
え、や、やめ、やめてっ――あっ、ちょっと――にゃぁああああああああっ!!!!?」
……と、まあそんな感じで。
『ドキッ! お色気まみれなヴィルの冒険者生活! パコパコもあるよ!』計画がスタートしたのであった!!