※この作品はR-18です。

聖女(性女)様と一緒 ~悠々自適の一人旅が、波瀾とエロに満ちた珍道中に~   作:ぐうたら怪人Z

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⑫ 性欲を持て余した迷宮攻略

 

 どこかは分からない。

 暗い、暗い部屋の中で。

 

「で、首尾はどうなっている?」

 

「今のところ問題ありません。将軍は王都の生活を満喫しているご様子」

 

「具体的には何をしている」

 

「冒険者の真似事に勤しんでいます。今もここの地下に潜っておられるようです」

 

(あて)がった女はどうしてる? 上手く篭絡できそうか?」

 

「そちらは芳しくありません。どうやら将軍、ご自分で“調達”なされているようで」

 

「英雄色を好む、か。まあ、いい。この機会にグルムバッハ家の(たね)を我が王国にも迎え入れようと思っていたが、あくまでついでだ」

 

「しかし今の調子であれば、王国の女と子を為す可能性は高いかと思われますが」

 

「あのグルムバッハの子だぞ、すぐ帝国が手を回してくる。敢えて危険な橋を渡る必要はない。主目的を忘れるな」

 

「はっ。将軍を“アレ”に近寄らせぬこと、ですね」

 

「そうだ。あの男は単身でズィーガを屠れるだけの戦力を保持し――何より、何の見返りも無く(・・・・・・・・)神獣に挑むような酔狂だ。そんな奴に“アレ”を見られれば、面倒ごとになることは火を見るよりも明らか。丁重に扱い、さっさと帝国に帰って貰え」

 

「承知いたしました」

 

 

 

 ―――――――――――――――

 

 

 

 探索2日目である。

 ヴィル達はクリスに導かれ、再び王都地下に存在する巨大迷宮を攻略していた。

 

「……ふーっ」

 

 一つ、大きく息を吐く。

 今は休憩中だ。

 ロアナが張った<結界>の中、各々息を整えている。

 例によって例のごとく、ヴィルは体力的な疲労より精神的疲労の方が遥かに大きいわけだが。

 

 今日もまた、クリスはかっ飛んでいた。

 壁を下る、魔物の間を全速力ですり抜けるなんて、まだ序の口。

『敢えて落とし穴の罠に嵌った上で穴を掘り進めて下の階層へ抜ける』、『魔物の放つ転移魔法を敢えて食らって下の階層へ移る』、『敢えて激流に身を投じて下の階層へ落下する』、等々。

 普通に進むよりそりゃ早いが、気苦労が半端ない。

 

 ……というか。

 せっかくの冒険だというのに、ヴィルは“未知領域の踏破”だとか“罠の探索・解除”だとか“宝の発見”だとか“魔物との闘い”だとか――そういうものは一切体験できずにいた。

 この迷宮がどういう構造なのかも、ぼんやりとしか把握できていない。

 なにせ、クリスはこの迷宮のことを隅から隅まで熟知し、凄まじいスピードで先へ先へと進んでしまうからだ。

 

 おかげで、まだ午前中だというのに昨日辿り着いた場所はとうに通り過ぎてしまった。

 それなりに深いところまで来ているのではないかと思うのだが、真っ当な手段で潜っていないため、自分が迷宮内のどの辺りにいるのかいまいち把握できていない。

 

(……もういっそのこと、早く進みたいなら床とか直接破壊してしまえばよくないか?)

 

 そんな提案もしてみたが、“風情が無い”という理由で却下された。

 こんな攻略法を使う輩に、風情云々を口にされるとは思わなんだ。

 

「……ふーっ」

 

 また息をついた。

 

 気を紛らすため周囲を見る。

 ここは、鍾乳洞のような場所だった――しっかり床や壁はできているので、天然の洞窟と趣は異なるが。

 かなり湿気が高く、<明かり(ライティング)>の魔法で照らされた岩肌は水で滑っている。

 その原因は、すぐ近くを流れる川だ。迷宮の中を、川が流れている。

 少し離れた場所には滝があり、上層からここに水が落ちてきているのである。

 正確なところは分からないが、この場所は相当に地下深くであるため、通常の川というより地下水が集まったものなのだろう。

 ……ついでに言うと、自分達も(・・・・)そこから落ちてきたのだったりする。

 つまるところ、先程語った『敢えて激流に身を投じて下の階層へ落下する』で落下した先がここなのだ。

 

 おかげで全員が全身びしょ濡れの状態。

 流石にこのままでは進行に支障が出るということで、魔法で火を起こして暖を取っている。

 ロアナなど流されている最中に相当身体が冷えてしまったのか、ずっと火の傍から離れない有様だ。

 

「……ふーっ」

 

 三度の溜息。

 

 精神を統一し、思考を安定させる。

 まだ探索は終わっていないのだ、心を乱してはいけない。

 いけない――のだが。

 ヴィルは自分の情動をうまく制御できないでいた。

 それというのも――

 

(――どう見てもクリスが色っぽい……!)

 

 ちらりと横目で彼(?)を見る。

 言動は男っぽさが目立つものの、改めて見るにやはりクリスは美人だ。

 男なのが信じられない。

 向こうも火にあたっているのだが――水に濡れた金髪が妙に艶やか。

 水滴の滴る肌はキメ細かく、何とも言えぬ色気を醸し出している。

 上半身は革製のプロテクターを着用しているのだが、動きやすさを重視したのか下半身には何の防具も付けていない。

 その上でかなりタイトな造りのズボンを履いているものだから、腰から脚元に至るまでの形が割かしくっきり分かる。

 綺麗な曲線を描くお尻や、むちっとした太もも、すらりと伸びる脚が、はっきりと分かってしまうのだ。

 

(いやいや、変な気はよせ!)

 

 慌ててかぶりを振る。

 どれだけ相手が美しくても同性愛はNG。

 幼いあの日、そう誓った筈だ。

 

(なのに――くそ、動悸が酷い!)

 

 彼(?)を見ると、心臓のバクバクが止まらない。

 身体の血が“ある一か所”に集まり出す。

 自分が欲情していることを思い知らされてしまう。

 

(それもこれも、エルミアの料理のせいだ!)

 

 朝、精のつく料理をたっぷり食べた。

 そのせいか、現在のヴィルは割とちょっとしたことでギンギンになってしまう状態なのである。

 ……そうであると信じたい。

 

「ん?」

 

 ふと、反対方向――ロアナの方を見る。

 余程しっかりと服を乾かしたいのか、少女は着ていたローブを開け、インナーも乱し、かなりあられもない出で立ちをしていた。

 一応隠しているつもりではあるようなのだが、ここからだと角度的に色々見えてしまう(・・・・・・)

 膨らみかけの胸や可愛らしいおへそ、シンプルな白下着が、ローブの間から顔を覗かせているのである。

 ヴィルは一つ咳払いすると、

 

「あー、ロアナ。その格好は余り宜しくないぞ。君も年頃の女の子なんだから、そういうところは気を付けた方がいい」

 

「――え? あ、はい」

 

 窘められ、身だしなみを整えるロアナ。

 どことなく不満げな顔(・・・・・)をしているのだが――水に濡れた服を着るのは、やはり不快なのだろう。

 まあそれはそれとして。

 

(このままではまずいな。

 気を逸らさなければ……!)

 

 これ以上クリスを意識するのを避けるため、意図的に話題を振ってみる。

 

「ところで、この迷宮についてなんだが」

 

「うん?」

 

 クリスが反応したため、そのまま話を続ける。

 

「最終的に、どこまで続いているんだろうな?

 これが造られた目的も、分かっていないのか?」

 

「あー、それはなー……」

 

 一瞬、彼が言い淀んだところへロアナが割って入る。

 

「――一説には、(オーバーロード)が<深淵なる悪魔>を封じるために建造した、とされています」

 

「<深淵なる悪魔>?」

 

 聞いたことのない単語だった。

 

「――はい。“王国”の伝承に記述された存在で、魔族とも魔物とも異なる――この世界の全てを破滅させることを目的とする怪物だとか」

 

「ほうほう。“帝国”にはそんな伝承無かったなぁ」

 

「――“王国”の方が歴史は長いですから。信憑性のほどはかなり怪しいですけれど、そもそもこの迷宮自体まだ全貌は解明されていませんし。

 ――そういう説も根深く残っているのです」

 

「ふむ。ならひょっとしたら、最深部にはその<深淵なる悪魔>とやらが未だ眠っているかもしれないのか」

 

「――まさか、戦いたいとか言いださないですよね?」

 

「そんな訳ないだろう。好奇心で聞いてみただけだ」

 

「――仮に伝承が真実だとするならば、幾ら貴方でも勝てない相手だと思いますよ。なんでも神だけでなく人族や魔族、果ては竜族までもが手を組んで討伐にあたるほどの強大さだったそうですから」

 

「いやだから戦おうなんて考えていないって」

 

 彼女は自分のことをバトルマニアだとでも思っているのだろうか?

 とはいえ、<深淵なる悪魔>の伝承そのものには興味が湧かないでもないが。

 

「違う」

 

「ん?」

 

 突然、ぽつりとクリスが呟いた。

 

「オーバーロードは<深魔>と戦ってなんかいないさ。ただ臭いものに蓋をしただけ。実際に戦ったのは勇者と竜で――」

 

「クリス?」

 

「――っていう、伝承もあるわけさ、これが。ははっ♪」

 

 彼は軽くおどけた調子で、肩をすくめる。

 

「いやお前、仮にも神の信徒の前で過激な発言は――」

 

「――いえ、お気になさらず。太古のお話ですからね、様々な説が残っていて不思議はないかと」

 

「君がそう言うならいいが」

 

 極度に敬虔な信者――狂信者とも言う――の前で神を否定すれば、発言者の殺害にまで発展しかねない。

 数は少ないが、そういう事件は今でも起こっているのだ。

 ロアナがそんな極論の持主だとは思わないが、余りいい気分はしないだろう。

 

「ごめんごめん、謝るさ。不用意な発言だった」

 

 クリスもその辺りの事情を思い出したのだろう、慌ててロアナに頭を下げる。

 一方で、ヴィルの“性欲”は一連の会話のおかげである程度収まってきた。

 どうにか当初の目的は達成できたようだ。

 

「……さて。

 そろそろ休憩も終わりかな?

 先に進もう」

 

 話が一旦途切れたところで、クリスがそう提案してくる。

 

「分かった」

 

「――承知しました」

 

 ヴィルとロアナはそれに同意し、冒険は再開されるのであった。

 

 

 

 ――が!

 

 

 

(迂闊! 迂闊だった!)

 

 ヴィルは後悔していた。

 行き先を尋ねもせず、進行開始へ同意したことに。

 

(これは――これは――!?)

 

 胸中で慟哭する。

 

 休憩が終わった彼等は、狭い“穴”の中を進んでいた。

 岩壁にできた割れ目のような場所で、這いずりをすればどうにかギリギリ通れるか、という狭い道である。

 いや、人が通ることを想定されているような場所では無さそうだが。

 おそらく、劣化して空いた小さい穴が、動物や魔物の行き来によって徐々に広がった代物なのではなかろうか。

 

 しかし、別にそれはいい。

 そのような道を通ることに対して、最早文句など無い。

 寧ろ、今までのやり方からすれば余程まともな方法と言える。

 未踏の場所を進むなど、実に冒険らしいではないか。

 

 故に、ヴィルがろうばいしているのはそんなことではなく。

 

(……けつが! クリスのけつが!!)

 

 つまりそういうことである。

 穴の中は、これまで同様にクリスが先行しつつロアナがその後につき、自分が最後尾、という隊列だ。

 だが困ったことにロアナがとても小柄なため――結果、彼女は楽に通路を進んでいる――少女より先を進むクリスの肢体が見えてしまうのだ。

 肉付きいいお尻が、ぷりっとした丸い臀部が、見るからにハリのよさそうなヒップが、ずっと視界内に納まってしまうのである。

 匍匐前進の動作によって彼(?)の下半身がふりふりと揺れる様は、おそろしく煽情的であった。

 

 そのせいで、せっかくの鎮静化したヴィルの性欲に再び火が灯ってしまった。

 

(くそっ! くそっ!!)

 

 なけなしの理性を振り絞るも、雄としての本能には歯が立たない。

 体勢のおかげで周りから見えないのが幸いだが、ヴィルの股間は既にもっこりと盛り上がっていた。

 

(ええい、収まれ!! 収まらんか!!)

 

 下半身へ訴えかけるも、効果は無し。

 ……“男の尻に欲情した”などと故郷の知人に知られたら、自分はもう生きていけない。

 そのことに思い至り、ヴィルの背中をぞっとした寒気が駆け抜けた。

 

「……ん?」

 

 ふと、クリスの手前――ロアナの姿が目に留まる。

 どうも彼女、狭い道を匍匐するのに夢中なせいで大分無防備になっていた。

 穴の幅いっぱいに足を開き、しかもローブの裾が捲りあがってしまっていることもあり、その下半身が丸出しなのだ。

 小さなお尻や華奢な脚がヴィルの眼前に披露されていた。

 そんな少女を前にし、ヴィルは一つ咳ばらいをしてから小声で話しかける。

 

「あー、ロアナ。その格好は余り宜しくないぞ。冒険に夢中なのは分かるが、デリカシーも忘れずにな」

 

「――え? あ、はい」

 

 指摘され、身だしなみを整えるロアナ。

 どことなく不満げな顔(・・・・・)をしているのだが――彼女なりに頑張っていたところへ水を差され、気を悪くしたのかもしれない。

 大人びているとはいえロアナも年頃の少女なのだ、自分の方こそデリカシーに気を配った方が良かったか。

 今後発言には注意しようと反省しつつ、ヴィルは細い穴を這って行くのであった。

 

 

 

 

 

 

「――解せぬ」

 

 俯いたロアナが、そんな呟きを零していた。

 彼女なりに、何かこの探索道中に思うところあるのかもしれない。

 

 穴を抜けたヴィル達は再度休憩に入っていた。

 思っていたより遥かに穴道は長かったため、ロアナの疲労を気遣ったが故の判断である。

 閉所で長時間過ごすのは、余人が考える以上に体力を消耗してしまうのだ。

 ここも、先程居た場所と余り景色は変わっていないのが残念である。

 ある程度整備されているとはいえ、天然の岩肌より人工の床の方が何かと身体を休めやすかったのだが。

 

 ついでに、この休憩には泥だらけになった装備を洗うという目的もあった。

 前述に通りこの辺りの階層は湿度が高く、岩でできた床や壁もたっぷり水分を吸っている。

 そんなところに出来た小穴を通ったのだ、3人とも全身が泥で汚れてしまっていた。

 この状態で探索を続けるのは気持ちの良いものではない。

 都合のいいことに、休憩場所の近くに小規模な地底湖があり、そこで身をゆすごうという話になったのだ。

 ひょっとしたら、クリスはそれも見越してこのルートを選択したのかもしれない。

 

 もう既にロアナは水浴びを終えていた。

 勿論、覗きに行くような下賤な真似はしていない。

 そういうコンプライアンス的なものは守るヴィルである。

 

「――何故。何故に来ないのですか」

 

 ぼそっとしたロアナの独り言が耳に入った。

 何か待ち人でも居るのだろうか。

 まあそれはそれとして。

 

(……俺もちょっと行ってくるか)

 

 そう思い立って、ヴィルはすくっと立ち上がる。

 周囲の安全は十分に確認済みだ。

 足を滑らせるようなことが無いよう魔法の<明かり(ライティング)>もあちこちに灯しており、その上、念のため<結界>まで張ってある。

 ロアナを独りにしても(・・・・・・)、危険は無いだろう。

 

 ……“独り”。

 そう、クリスがちょうど水浴びをしている最中なのだ。

 いや、彼(?)は男性なのだから、いちいち水浴などせず適当に装備品を洗浄しているだけか。

 

(だから、問題ない)

 

 よしんば水浴びをしていたとして、男が男の裸を見て何の不都合があろうか?

 ヴィルの情欲は未だ煮えたぎっていたりするのだが――幾らクリスが性別不詳レベルに美しい外見をしていたも、所詮男はどこまで行っても男。

 その身体は女性と決定的に異なる。

 流石に彼(?)の裸を目にしてしまえば、己の股間も萎えてくれることだろう。

 だったら、態々別れて水洗いするより一緒にやってしまった方が時間の無駄が無い。

 そんな計算のもと、ヴィルは水場に向かった。

 

 

 

「……お、居たか」

 

 目的の場所についたヴィルに目に、早速クリスの姿が映った。

 彼(?)は湖の中ほどに立ち、水で身体を洗っていた。

 どうやらこの地底湖、かなり浅いようだ。

 周辺は整然としており、<明かり(ライティング)>を設置していることもあって見通しも良い。

 或いは最初から身体を清める目的で造られた場所なのかもしれない。

 

 ――勿論、水浴びをしている以上、クリスは全裸である。

 

(大丈夫、大丈夫)

 

 そう言い聞かせ、彼(?)へ近寄るヴィル。

 自分も水へ足を浸しつつ、

 

「おーい、クリス」

 

 そう呼びかけた、次の瞬間。

 

「うぇっ!!? ヴィルっ!!!?」

 

 思いの外、大きな声が響いた。

 クリスは何故か(・・・)胸を押さえ、慌てた様子で。

 

「な、なな、なんでここに居るのさ!?」

 

「なんでって、俺も水浴びをしようと思った――ん、だが――?」

 

 そこまで言って、ようやく気付く。

 クリスのシルエットが、妙に丸い(・・)

 男の身体にありがちな、ごつごつとした部分が無い。

 

(あ、あれ?)

 

 ヴィルの頭に戸惑いが生じる。

 考えていたのと何か違う。

 クリスの肢体が、予想以上に女っぽい。

 女っぽいというか、寧ろ胸がある。

 やや小ぶりではあるが、確かに膨らんでいる。

 そして、男ならば絶対に付いていなければならないモノが無い。

 はっきりと無い。

 

(えーっと、つまり?)

 

 要するに。

 クリスは、女性だった。

 

 

 

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