「アキ様…?一体、何を言っているのですか?」
心無しか震えた声で、スピカが尋ねた。
彼女にアキが浮かべる笑みは見えない。それでも、普段の言動からは考えられぬ発言、声色は、普段の冷静さを失わせるのには十分過ぎるほどであった。
「だからさぁ、ヤらせてよって言ったんだよ。意味、分かるよね?」
「…え…?あ…いっ、いけません、ダメです!今、アキ様と夜伽をする訳にはいかないのです!」
「はぁ?」
パニックに陥ったこともあり、強く拒否するスピカに対して、アキは眉間に皺を作る。それはまるで、"当たり前のことを拒否された"ような反応、ひいては彼女を性の捌け口としか思っていないともとれる反応だ。
彼女への怒りが、手首を握る手の力となって表れる。キシキシと手根骨を軋ませるその力は、以前押し倒された時、スピカの力の強さに困惑していたことが嘘のような力で、腕の動きを封じていた。
「それはないでしょう?スピカさん。言ったのはそっちじゃあないですか。"わたくしは、いつでもお待ちしてます。気が向いたなら、いつでもおいでませ"ってさ。あれ、誘ってたんでしょ?」
その発言は、いつ頃のことであったか。確か、スピカが眠ろうとしていたアキへと襲いかかってきた夜の、翌朝のことだ。
あの夜は、アキが一方的に抑えつけられていた。今の状況は、まさにその逆だ。体力も、筋力も劣る少年が、スピカを羽交い締めにしている。彼女もアキから逃れようと抵抗するが、ただ身動ぎするだけで体力を消耗するだけであった。
「ダメっ!ダメです!イヤ!離して下さい!」
「僕とヤることなんて、初めてじゃあないじゃん。なんで今さら嫌がるの?」
「それはセレネ様が…」
「あんなのの言うことなんて聞くの?僕の為とか何とか言って、現に僕はこんなに元気じゃないか。」
「し、しかし…」
今まで以上に否定するスピカに対し、次第に眉間の皺が深くなった。焦れや苛立ちからくる胸糞の悪さを舌打ちと共に吐き出す。
「あぁ…もう!うるさいなぁ!!」
声を荒くしたアキが、掌を振り下ろした。それは少女の白い頬を捉え、乾いた音を大きく鳴らした。
館で暮らして以来、初めてあのアキが手を上げたのだ。まるで、生前を含む今までのストレスを吐き出したかのように。
スピカが何か言う前に、もう一度頬を叩く。
間髪を入れず、また頬を叩く。
また頬を叩く。
叩く。
掌で、手の甲で、交互に叩く。片腕が解放されたのにも関わらず、彼女は固まったかのように動くことはなかった。
「大人しくしてよ!僕を怒らせないで!スピカさんはただ、黙って股を開けばいいんだよ!」
数発殴った後で、肩で息をしながら叫ぶ。それでも、スピカは包帯を滲ませながら、掠れた声で"やめて"と繰り返すだけだ。
折れたかのように、深い溜め息をついた。暴行は終わったが、その顔からは邪険な表情は払われていない。
不意に、アキの視線がスピカから逸れた。傍らには、倒れこんだ拍子に戸棚から落ちた雑貨が散乱している。
薬瓶 ガーゼ ピンセット テープ
どれも、簡単な手当てに使用するものばかりだ。今はどうでもいい。
…いや、一つだけ、好都合のものがあった。たまたま見つけた"それ"に注目したまま、狂気をより強く含ませた笑みを浮かべる。
ちょうど手が届く範囲に転がっていた"それ"を拾い、立ち上がった。拘束が解けたスピカだが、混乱や恐怖のあまり、身動き一つとらない。そんな彼女をベッドに放り投げ、拾った物を見せびらかしながら言い放った。
「もういいや…僕は好きにさせてもらうから。」
* * *
「ほら、これで大人しくなった。」
額を拭いながら、ご満悦の様子のアキがスピカを見下ろした。
たまたま、手が届く範囲に包帯が転がっていたことが、彼女にとって運の尽きであった。
今、スピカは、その包帯で手首を強く戒められ、ベッドに固定されている。脚も同様だ。膝を曲げられ、股を大きく開いた状態で、拘束された。
これでは、どう足掻こうと抜け出すことなど到底不可能だ。
「お願い…します…もう…やめて下さい…!」
「まだ言うの?分からないかなぁ…スピカさんに、拒否権なんてないんだよ。いつやめるかは、僕の気分次第なの。」
憂いに満ちた懇願を軽く流したアキは、エプロンドレスの胸元に手をかけ、勢いよく引き裂く。
音をたてながら破れた衣類から、見事に膨らんだ乳房が弾みながら露となった。
「アハッ。スピカさんのおっぱい、面白いことになってる。」
スピカの胸と対面した第一声が、これだ。
乳房の先についているはずの乳首が、埋もれている。思えば、興奮していない状態でスピカの裸体を見るのは、これが初めてだ。彼にとっては、珍しいのかもしれない。
「スピカさんって、おっぱい弄ると凄く反応するよね?普段こうして埋まっちゃっているからなの?」
「イヤ…!言わないでください…そんなこと…!」
「恥ずかしがることないじゃん。もう、何回も見てるんだから。」
そこまで言ったアキの唇が、スピカの胸に喰らいついた。
口を付けるなり、痛いほど強く、埋まっている乳首を吸いだす。反対の乳房にも、指でほじるように、集中的に愛撫を始めた。
「いやあああっ!ぁひっ…い…たい…!ひゃうぅ…!」
快感よりも、乱暴に胸を愛撫される痛みが、スピカを襲う。肢体を震わす度に、包帯を通してベッドの支柱が軋み、ギシギシと大きな音を立てる。まるで、彼女の悲痛な声が外に漏れぬよう、ただの支柱さえもアキの凌辱に協力しているようだ。
抵抗できない状態であるのをいいことに、舌で、指で、乳頭だけを集中的に愛撫する。するとすぐに、アキは固いものが舌を弱々しく押し返す様子を感じた。
顔が、乳房から離れる。
やはり、土から芽を出したかのように、強い桜色に染まり上がった蕾が、痛いほど張り出していた。
「あれぇ?さっきまで隠れていたところ、出てきたよ?嫌がってる割には、感じているんだね。」
顔を出した隆起を、指先でこねながら笑う。心無しか、埋没したままの時よりも、スピカの跳ね具合が強く見えた。
「違います…それは…アキ様が弄る…から…あうぅっ!」
吹き出物を潰すのと同じ強さで乳首をつねると同時に、腰が浮いた。痛みよりも、悦楽が支配を始めた
「こうやって、少しつねるだけでそんなに動くなんて、大袈裟だなぁ。やっぱりね。普段隠れているから、こんなに敏感になるんだ。」
「もぅ…もう止めてぇ!これ以上されたら…わたくし…わた…くしは…!」
「わたくし、は?」
挟み込む指が強くなった。刺すような声が、アキの鼓膜を貫く。
「わたくしは、何?スピカさん、どうなっちゃうのかなぁ!?見せてよ!」
金庫のダイヤルを回すような手つきで、充血しきった乳頭を捻りだした。それと同時に、一方の空いた乳房にまた口をつけて、唇をすぼめて吸い付く。もちろん、時より舌を用いて上から、下から、左右から刺激していくことも忘れない。
「ひぃん!あうぅ!ううぅ…あんんっ!」
執拗に乳頭だけ責めているうちに拒絶の声は止み、その代わりに鋭い喘ぎが絶え間なく部屋の大気を揺らす。包帯のせいで表情は分からない。しかし、露出している部分は鮮やかな朱で彩られ、体の火照りを見せた。
アキには分かっていた。口では頑なに拒むスピカだが、その躯は、既に絶頂の手前に立っていることを。
手を子招いて戸惑い、迷う背中を押してやる。それが、今の欲求であった。
「ぃああっ!ぅんっ!ん…んっ!んはぁ!あぁん!!」
声のボリュームが大きくなり、痙攣のペースも早くなった。あと少し、あと一押しで到達させられるのだが、少女の意識は、必死に抗う。
ー抵抗するな、早くイけ。
軽い苛立ちが咀嚼筋にまで伝わり、下顎に力が籠る。硬い歯が、弾力に富んだ乳首を強く挟んだ。
「あはあぁ!んああぁぁぁぁあ!!」
絶叫。時同じくして、強固なダムが、ようやく決壊した。しなやかな背が反り返り、股ぐらから蜜を吹き、まだ手をつけられていないエプロンドレスを濡らす。
直に潮は収まったものの、細く狭い体躯はビクビクと昇り詰めている。何日かぶりの絶頂は、今までよりも長い時間をかけて身体のコントロールを奪った。
「やったあ。おっぱいだけでイっちゃったね、スピカさん。」
達成感に満ちた笑顔を、闇だけしか見えないスピカに向けた。もう、彼女の顔は涙なのか汗なのか、涎、鼻水のどれかも分からない液体でドロドロに濡れ、泣いているのかすらも判別できない。
「…あ…ぁはあん…あひぃ…ひい…」
胸回りの筋だけでは追い付かず、肩、首の筋も動員して、ただ呼吸だけしている。もはやこの時点で、彼女には余裕が一切なかった。
「案外早くイくんだね。あんなに嫌がってたのに…やっぱり、スピカさんも、こんな事されたくて仕方がなかったんだね。」
返事は帰ってこない。そんなことは、アキには関係なかった。
指先で、ジトりと汗ばんだ鳩尾に触れ、そこからゆっくりと下っていく。絶頂こそは迎えさせたが、まだ肝心な部位を確認していない。
汗や潮で染みを作ったドレスの裾を摘まむと、腕をUターンさせて、ゆっくりとたくし上げていった。
「おっぱいだけじゃあ、物足りないでしょ?大丈夫、こっちも可愛がってあげるからね。」