セレネが現場からいなくなってからアキが館に帰るのに、随分間が空いた。そう長い距離を移動していないのだが、足の自由を取り戻すのに時間を要したからだ。
玄関で迎えたスピカに、服の洗濯と替えを持ってくるよう伝えたアキは、疲弊した様子で服を脱いでベッドに身を投げた。
目を閉じるとすぐに、禍々しい怪物の姿と、それらを臆することなく、むしろ戯れているかのように殲滅するセレネの姿が脳裏に浮かぶ。
あれが仕事というのなら、アキもあの怪物との戦闘をしなくてはならないのだろう。
ゲームや映画でしか見たことのない化け物と対面しただけで腰を抜かし、あまつさえ失禁までした自分に、あれらと対等以上に戦える気がしない。
しかし、もしもリオスの頼みを断れば、また天涯孤独の身になるかもしれない。
戦いたくないが、居場所は失いたくないという葛藤にうなされていたところで、3回のノックと、扉が開く音がした。
部屋に入って来たのはスピカだ。服を取りにきたのだろうが、それにしては様子がおかしい。
脱ぎ捨てられた服には目もくれず、アキのほうを凝視している。
「あ…スピカさん。服を取りに来たんですか?」
スピカからの返事はなく、アキを無表情のまま見ていた。無表情ではあるが、無関心ではないのかもしれない。
少しではあるが、普段より息が荒い。
そんな些細な変化に気付いていないアキに、スピカが大股で歩み寄る。
目前まで近付いて来て、呼吸の荒らさと僅かながら顔に朱がかかっていることに、アキはようやく気が付いた
「あの…スピカさん。大丈夫ですか?」
体を起こして、スピカの様子を確認しようとしたアキだが、軽い衝撃と共に、すぐにまたベッドに倒れた。
突然のことに混乱するアキの目と鼻の先には、スピカの顔がある。
ここで、ようやく彼女に突き飛ばされたことが理解できた。
「スピカさん!?ちょっと、急に…」
何をするのか。
そう続けようとしたアキの口が、スピカの唇に塞がれた。
一方的に舌をねじ込み、アキの舌を追いかけ、無理矢理絡ませる。
強引なキスから逃れるべく、スピカを引き離そうとするアキだが、腕が動かない。行動を読んでいたかのようにスピカの手がアキの手首を掴み、ベッドに押し付けられて動かせなかったのだ。
まるで、磁石に引かれた金属のようだ。はね除けようにも、幼い外見からは想像もつかない力で押さえられた両腕は、足掻けども微塵も動かすことができない。
自分と近い年齢どころか人間のものとは思えない力に、アキは物恐しさすら覚えた。
ようやく唇が離れたところで、スピカが初めて口をきいた。
「アキ様…」
その表情は、普段のものとは明らかに異なっていた。
常に水平より上に釣り上げていた眉をハの字にさせ、犬のように舌を出して恍惚とした顔をしていた。
声色もいつもの無機質に近い声ではなく、色気に満ちたより高い声だ。
離れた唇が、次は胸に飛びかかった。
「スピカさん!ちょっ…ひっ!なにを…くふっ…!」
アキの胸板を啄むように何度もキスをし、固くなりつつある乳首を舐められる度に、声が漏れた。
"くすぐったい"とは違う感覚が、全身の肌に粟を吹かせる。今まで感じたことのなかったものだ。
その声が一際大きくなったのは、スピカの右手がアキの手首から離れ、アキの竿に指先で軽く触れたときだ。
片手は自由になったが、恐怖と混乱、なにより初めての、得体の知れない感覚が、抵抗の意識を奪う。
「アキ様…夢魔がどのような物かご存知でしょうか…?」
息づかいの荒いまま、スピカが尋ねる。
「…んくっ…し…知りませんよ…んっ…!」
指先だけの愛撫に、言葉が途切れ途切れになるアキだが、スピカの手が止まることはない。
指先で触れるか触れないかの、もどかしい感覚でアキの性感帯、とりわけ雁首を刺激し続ける。
「夢魔とは、人間に快楽を与え、それから得られる精を糧とする生き物です…わたくしも夢魔でございます。アキ様のを一目見てから、身体の火照りを抑えるのに必死でした…」
一目見た時というのは、初対面の日にアキの裸を見た時のことだろうか。
そういえば、スピカと会ってから初めて表情を変えたのは、アキの一物を指摘したときだったか。あの言葉は嫌味とばかり思ってたが、もしかすると、この瞬間から寝込みを襲うことを予定したのかもしれない。
そんな思考も、スピカの接吻であっさりと消えた。そのまま軽い接吻を繰り返しながら、スピカの顔が下半身へ下りていく。
必然的にたどり着く先は、愛撫によって先程よりも大きく、硬くなった皮被りの男根だ。
間近でソレを見るや否や、スピカの表情がより蕩ける。普段の鉄仮面のような相貌からは想像もつかない顔に、アキの心臓が跳ねた。
「はあぁ…アキ様のおちんちん、あの時よりも逞しくなってます…皮も少し被られて…」
吐息がかかる度にピクリと反応するぺニスを前に、スピカはスーッと臭いを賞味する。
リオスの仕事に同行した際に、恐怖で尿を漏らしてから時間は経っているものの、まだ尿特有のアンモニア臭は残っているはずだ。
それを思いだしたようにアキはスピカの頭を掴んで剥がそうとするが、やはり彼女を除けることができない。
「…仕事で、漏らしたのですか?尿の臭いがすごく残って…あぁ、もう…我慢できません…!」
スピカがアキを一気に根元まで咥えたとき、アキの下半身からゾクゾクするような刺激が背中を伝わり、それが声にならない叫びとなって現れた。
その様を上目遣いで確認すると、フフッとスピカから漏れて、唇が胴から離れていく。
しかし、口淫を中断する気はないのか、亀頭に差し掛かったところで止まる。
そこでスピカの口元がもごもごと動き、熱い舌がうねるようにアキを責め立てる。その度にアキは女子のような嬌声を挙げた。
ようやく、スピカの舌が離れた。
反り立つ肉槍の皮は捲れ、涎にまみれたその頭が露になっている。それを掌で撫でるだけで、アキの肩が大袈裟に跳ねた。
「これで大人になりましたね…アキ様のおちんちん。少しばかり汚れていたので、掃除もしておきました…」
「もう止めて下さい…!なんで…なんでこんな汚いこと…もう十分でしょ!?」
初めてずくしで、快楽よりも恐怖の勝った表情で懇願するアキだが、スピカは手を止めないまま、笑うように鼻から息を漏らすだけだった。
「止めて?ご冗談を…こうしている内に抵抗も逃げる素振りもせず、あまつさえこれだけ硬くさせている方の言うことではありませんね。ほら、逃げますか?私は抵抗しませんよ…?」
指の腹で根を軽く握り、それを上下にゆっくりと扱きながらスピカが挑発する。
今やアキは行為を止めるよう言うだけで、抵抗する意思もないどころか、内心では更なる愛撫を求めていた。自身の気付かない内に、恐怖に快楽が勝ったのだ。
喘ぎ以外に何も言わず、体をビクビクと震わせるだけで動かないアキを見て、スピカは不意に立ち上がった。
そのままエプロンを脱ぎ捨てると服のボタンを外して、幼い外見とは不似合いなほど豊かな乳房を自ら晒す。
下着をつけられていなかったそれは支えを失い、上を脱ぐ際に小さく弾んだ。
白く膨らむ、ハリのある半球の先につく乳首は、アキを奉仕していたにも関わらずモノのように隆起し、さながら熟れた桜桃の如く綺麗な朱に染まっていた。
スピカ自身もかなり興奮していることは、普段の彼女を知らずとも明らかである。
「…何もしないということは、続けても構わないということでよろしいですね?では…わたくしの奉仕、引き続きご堪能ください。」