先輩への異常な執着/またはぼくはいかにして心の痛みを忘れて性愛を求めるようになったか――というより、3ヶ月、2週と1日でぼくにはなにをなしえたのか 作:果肉ぬき
高校時代の憧れの先輩「雛里やよい」と偶然の再会を果たし肉体関係を結ぶも、「わたし、もうあといくらも生きていられないの」というやよいの言葉をどう受け止めていいのかわからない会社員「風見健一」。それどころか、自分になにができるのかを模索していくなかでやよいの妹「雛里えな」ともセックスをしてしまう。
今度こそやよいのことを知りたいと思い、やよいの死期について教えてくれるという条件でえなの誘いに応じてショッピングモールへ向かった健一は、しかしトイレに連れ込まれてまたしてもえなの淫牙にかかり手でイカされてしまった。
バカンス気分を惹起するような初夏らしい館内BGMがくぐもって響いている室内には、えなさんのフェロモンとも香水ともわからない甘ったるい空気が満ちていた。きっとぼくの脳はもう半分くらい溶けている。
「ジーンズに染み込んでますよ、健一さんの精液……」
えなさんの妖艶な微笑が射精直後の浮遊感にマッチして心地よかった。
「パンツのなかぐちょぐちょですね……そのくせ変態おち×ぽはまだこんなに元気……」
いつの間にかぼくのジーンズのボタンを外しジッパーを下げていたえなさんは、精液が滲んで色が変わっているボクサーブリーフの前の穴からペニスを取り出す。
「多目的トイレでこんなこと……本当に必要としている人に迷惑かけちゃうよ」
「だったら普通のトイレの個室ならいいのですか?」
「そういうわけではないけれど……うっ……」
ぼくの話など聞いていないかのように、えなさんはまだ白濁液に塗れているぼくのペニスをしゃがんだ状態で咥えた。
「んりゅ……はぁ、はぁ……ちょうどいい大きさですね……ちゅ……ぢゅる……」
いきなり包皮の根元のほうまで咥えられ、口蓋の奥のほうに亀頭の先が当たっている。
「んぢゅるっ……はぁ……んんっ……汗ばんだザーメンおち×ぽっ……私が、綺麗に、してあげますっ……んっ、んっ、んっ、んっ……りゅる……んろ……ぢゅりゅんっ……」
唇と口蓋による包皮と亀頭への愛撫に加え、えなさんの舌がカリ首と裏スジへの奉仕まで始めた。
つい数分前に射精したばかりだというのに、2発目の兆しがすでに見え隠れしている。
「んっ、んっ、んっ、んっ……はぁ……ん……ぢゅろ……ぢゅ……ちゅちゅりゅ……」
「え、えなさんっ……えなさんっ……」
ペニスと肛門の間あたりでじんじんと痺れるような疼きがのたうち回っている。
ぼくはその快楽中枢が揺さぶられる感覚に翻弄されえて腰が砕けそうになる。
そんなふうに導いてくれるえなさんが愛らしくて、ぼくはえなさんの金髪のボブヘアを側面から後頭部にかけて撫で回した。雛里家で使われているあのベルガモットのシャンプーの香りがぼくの鼻腔を犯していった。
「ぃまは……んんっ……その呼びかひゃ……ゆりゅ、して、あげまふ……んっ……」
えなさんとの距離が半歩近づいた気がして、ぼくは嬉しくなった。
けれどそれは本来ぼくが望んでいたことなのか……? 本来望むべきことなのか……? いや、そんな疑問はいまはどうでもよかった。この快感の渦のなかでは、すべてがどうでもよかった。
「んぢゅ……るんりゅ……ちゅっ……ぢゅ……んはっ……」
あえてそうなるように作っているのか、自然と鳴っているのか、えなさんによるフェラの艶美な音が異様に大きく響く。
えなさんの艶めかしく動き続けている舌や唇の感触とふんわりとしたボブヘアを10の指で撫でまわす感触は、自分がいまどこにいるのかを忘れさせた。自分のなすべきことなど忘却の彼方に吹き飛んでいた。
「えなさんっ……ぼく、出そうっ……」
「健一ひゃんの、へんひゃいざーみぇん……んっ、全部くだひゃい……」
こみ上げてくるオーガズムの奔流にぎりぎりまで耐える。
「んっ、んっ、んっ、んっ……ぢゅるちゅりゅんっ……んにゅるっ――はむっ……んんっ、んんっ、はぁ……はぁ……ひぁ……んろっ…………んっんっんっんっんっんっんっんっ、んりゅっ――!」
放出の瞬間、ぼくはえなさんのさらさらの髪を抱え込むかのようにして体をくの字に曲げた。白と黒が点滅して明度の下がった視界が酩酊感を呼び寄せる。
「んくっ……ん、ん、んくっ、ごくんっ……健一さんの精液………確かにいただきました……せっかくのお気に入りのワンピースが汚れてしまうので、きょうはおま×こはおあずけです……」
それからどれくらいの時間が過ぎただろう。
幸いなことにドアをノックされることはなかった。けれど、それはこのトイレを必要としている人がいなかったことを意味するわけではない。
その罪悪感がスパイスのようにぼくの海綿体にまぶされ、えなさんは一向に膨張という存在証明を放棄することのないぼくのペニスをしゃぶり続けていた。
ぼくは病気なんじゃないかと思うくらい狂ったように射精を繰り返した。
「健一さんのえっち汁、もうこんなに薄くなってます……でも、まだやめてあげません……」
次第に、宙に浮いてるような感覚に陥る。
あまりの愉悦に絶叫しそうになりながら、えなさんの唇や胸のふくらみや秘部に触れられないもどかしさが、切なさを呼び覚ました。セーラーカラーとリボンがキュートなワンピースごと、えなさんを力強く抱きしめたかった。
「えなさんっ、えなさんっ、えなさんっ」
ぼくの手の汗でえなさんのボブヘアはすでにしっとりとしていた。
ベルガモットの香りが熱気を帯びて淫靡に漂う。
もう先輩の唾液の味を思い出すことなどできそうになかった。
「はむっ……んぢゅっ……りゅろ……ん、んくっ、んっんっんっんっんっんっんっんっ――んくっ、んっ……ごくんっ……」
何回めかわららない口内射精を終えたぼくは、ぼくの精液をすべて嚥下したえなさんを立ち上がらせ、撫でるような抱擁と柔らかい口づけをようやく果たした。
「健一さん……姉のこと……お姉ちゃんのこと、まだ知りたいですか……?」
恍惚の空気は一気に冷め、後悔の念は心臓の鼓動を嘘みたいに大きな8ビートへと変貌させた。
「お姉ちゃんは……少なくとも病名のある病気ではありません……ただ、おそらくですが、9月の27日に私たちの前からいなくなると思います」