「んおっ!! おぅっ!! おっ!! あぁああっ!!!」
部屋には、小柄な少女の――イルマの喘ぎ声が響ていてた。
ジャンはといえば、余りの光景に呆然と佇むばかり。
「おひっ! おひぃいいっ!!」
極太の巨根。
成人男性の二の腕以上に太い男根が、少女の下半身を下から貫いている。
“入り口”が破れてもおかしくないような代物を受け入れ、それでなおイルマは悦び喘いでいた。
「おっ! おっ!! おおっ! おおぅううううっ!!!」
ジャンが目の前にいるというのに、まるで気にした素振りがない。
いや、比喩でなく
その証拠に、イルマの双眸は大きく見開き、涙や涎を流しながらただひたすらに嬌声を発している。
普段の彼女とは似ても似つかない、雌の貌だ。
「お、お前――
しばしして、ジャンはようやく声を絞り出す。
誰、ではなく、何。
それは、イルマを犯している“相手”が余りに想像を絶する存在だったからだ。
「んー? 俺様のことが気になるかぁ?
ひゃははは、どうだっていいじゃねぇか、そんなこと」
嗤った。
目の前の男――“雄”と表現した方が良いかもしれない――は、ジャンを嘲笑うかのように顔を歪めた。
「ひっ」
“その仕草”を見て、ジャンは小さく悲鳴を上げる。
それはそうだろう。
『狼』にすぐ目の前ですごまれ、怯えない人間などそうはいないのだから。
(なんで――なんで、こんなところに人狼がっ!!?)
心の中で叫ぶ。
――ジャンが驚くのも無理はない。
目の前にいるのは、人狼。
数多の人種が揃う冒険の街ウィンガストにおいてすら滅多にお目にかかれない、希少種族。
その人狼が、イルマの部屋でベッドの上に寝そべっているのだ。
もう何が何だか訳が分からない。
自分の恋人が目の前で犯されているというのに、その実感が未だ湧いてこなかった。
そんな戸惑うジャンを見かねて――という訳でも無いのだろうが、人狼が口を開いた。
「なんだよ、びびっちまってんのかぁ?
情けねぇ野郎だな、おい。
ほれ、お前が気にしなきゃなんねぇのは、こいつだろ?」
「おっほっ!?」
唐突に、人狼が腰を激しく動きだす。
2mを優に超える巨体が振動を始め、その上に股がる幼い少女は跳ねるように揺さぶられた。
彼女の腹が巨根に圧迫され、ボコッ、ボコッ、と蠢動する。
「おっ!! おっ!! おっ!! おっ!! おぉおおおおっ!!!!」
獣のような声を上げるイルマ。
まるで、自分を犯す“狼”と
「そらよっと!!」
さらに力を入れる人狼。
イルマの身体を片手で掴むと、おぞましいデカさのイチモツを彼女の中へ押し入れる。
「いぎぃいいいいいっ!!!?」
堪らず、絶叫する少女。
これまでの嬌声ではなく、苦痛による悶絶だ。
イルマの腹部が棒状の膨らみ、今にも
「い、痛いっ!! 痛いぃいいいいいっ!!
破れるっ!! 破けちゃうっ!!! 死んじゃうぅうううううっ!!!」
口から泡を垂れ流しながら泣き叫ぶイルマ。
その声を聞き、ジャンはようやく我に返った。
「――て、てめえっ!!
イルマから離れやがれ!!」
人狼へ向かって突撃する。
怪物への恐怖を、恋人が汚された怒りで塗りつぶし。
なけなしの勇気を振り絞って、化け物からイルマを救おうと疾走する。
だがそれは――
「うりゃ」
「あぎゃっ!!?」
――余りにもあっさりと打ち砕かれた。
こともあろうにジャンは、人狼に“デコピン”されただけで壁まで吹き飛んでしまったのだ。
「あ、あ、あ、あ」
意識が朦朧とする。
指で弾かれた――ただそれだけの衝撃で、ジャンは脳震盪を起こしてしまった。
比べることすら烏滸がましい。
僅かな抵抗すら愚かしく思えてしまう。
「ひゃ、はははっ!
どうした、短小ボーイ! いくら何でも弱すぎねぇか!?」
「……ひっ!?」
すぐ近くから声をかけられる。
いつの間にか、人狼はジャンのすぐ近くに立っていた。
……少女を抱え、繋がったままで。
「い、イルマ――」
恐ろしさに身が震えるのを必死に抑えながら、どうにかジャンは顔を上げた。
そして靄のかかる視界で、自分の愛する少女の様子を伺う。
狼に責め立てられ、イルマは変わらず苦悶の声を――
「あっ!! あぁあっ!! あぁあああんっ!!」
――あげていなかった。
「……嘘だろ、イルマ」
思わず、そう呟く。
ほんのわずかな時間で、少女の肢体はあの凶悪な肉棒に適応してしまった。
丸太のようなソレが押し込まれる度に、引き抜かれる度に、身をくねらせる。
股間からは愛液が滝のように流れ落ち、その顔は完全に蕩けきっていた。
「あぁああっ!! あぁあああっ!!
すごぉいっ!! すごぉいぃいいっ!!!」
幼稚さすら感じられる容貌とは不釣り合いに大きな胸を揺らしながら、少女は喘ぎ続ける。
雌犬のような顔付きで乱れていた。
「ひゃはははぁっ!!
どうだっ!?
俺様のちんこはっ!!」
「あっ!! あっ!! あっ!! ああっ!!
す、凄いっ!! 凄い、ですっ!!
あんっ!! あんっ!! あんっ!! あんっ!!
さ、最高ぉっ!!!」
人狼の質問に、イルマは蕩けた笑顔で答える。
ジャンのことなど、もう眼中にないかのように。
「おいおいおいっ! お前の恋人は目の前のコイツだろぉ!?
恋人の前でそんなこと言っちまっていいのかよぉ!?」
「いいっ!! いいんですっ!!
んぁあっ!! あ、あ、あ、あ、あ、ああっ!!
だって!! だって!!! こんなに、気持ち、いぃいいいいいっ!!!」
涙を流し。
涎を流し。
一片の淀み無く、イルマは言い切った。
(い、イルマ……?)
ジャンは呆然としたまま、その言葉を聞いていた。
現実感が無い。
信じられない、信じたくない台詞を、脳が必死に否定していた。
そんな彼の気持ちとは裏腹に、狼と少女の会話は続く。
「ひゃはははっ!!
なんだよ、そりゃあっ!!
お前、もうコイツは要らねぇってか!?」
突如、人狼が腰を思い切り突き出す。
イルマの腹部がこれまで以上にボコッと張り出した。
「んほぉおおっ!!!?」
イルマの目が、ぐりんっと白目になった。
だらしなく舌が垂れ、首が力なく落ちた。
「俺様のちんこがあればいいんだろう!?
俺様のちんこがありゃ、他は何も要らないんだろう!?」
「い、い、い、い、いらにゃいぃぃいいっ!!
コレ、あればいいぃいいいいっ!!
なにもいらにゃいぃぃいいっ!!
ちんこだけでいいのぉぉおぉおおおっ!!」
(う、ぐっ――!)
心が抉られる。
どうしようもない消失感。
大事なモノが、手からすり抜けてしまった喪失感。
いつの間にか、ジャンの目からは涙が零れ落ちていた。
だが当然、人狼とイルマのまぐわいは続く。
「そうかそうかっ!
そんなに俺様のがいいかっ!
んじゃあ、コレをくれてやろう!」
と、狼の動きが止まった。
次の瞬間、
「あっあっあっあっあーーーーー!!?」
甲高いイルマの悲鳴。
彼女の腹が、みるみるうちに膨張していく。
(な、何が……?)
少女の身に起こったことに理解が追い付かない。
狼が射精を始めたのだと――大量の精液でイルマの腹部が膨らんだのだと気づいた頃には、
「――おっ――お、ごっ――あがっ――」
まるで臨月を迎えたかのように、少女の腹はパンパンに膨れ上がっていた。
――挿入されたイチモツが太すぎて、注がれた精液が外に零れないのだ。
そんな様子を見て、人狼は高笑いする。
「ひゃははははっ!!
丸々とした姿になっちまったなぁ!?
ザーメン風船になった気分はどうだ!?」
「――う、あ――死、ぬ――死ん、じゃう――」
何とか声を絞り出すイルマ。
(ほ、ホントに裂けちまうんじゃないか……?)
傍から見ているジャンですら、そんな危惧を抱く。
あと少し。
ほんの少しでも人狼が精子を出したなら、破裂する。
それ程に切迫した膨らみっぷりだった。
「気持ち良くなったり悲鳴上げたり忙しないヤツだな!
そんな簡単に死にはしねぇよ!!
おらっ!!」
「いっ!? ぎっ!! ぎっ!! ぎっ!! ぎぁああああああっ!!!」
射精した。
人狼は、イルマの懇願など全く気にせず、さらに射精した。
限界かと思われた少女の腹がさらに大きくなっていく。
「がっ!! あっ!!
ミチミチッという肉が裂ける音が聞こえた――気がする。
少女の口からは泡がぶくぶくと流れ出た。
じわじわと、限界を超えてなおイルマの腹部は膨張し、そして――
「おらよっ!」
――裂ける、その直前で、人狼が肉棒を引き抜いた。
「あ”あ”っ!! あ”あ”っ!! あ”あ”ーーーーーーーっ!!!!」
イルマの股から、精液がドバッと流れた。
比喩表現などではなく、本当に大きなバケツがひっくり返った時のような量の精液が落ちたのだ。
少し離れたジャンにすら、精液が跳ねてくる程に。
「はーーっ! はーーっ! はーーっ! はーーっ!」
解放されたイルマは、大きく息をする。
危険な領域に居たせいだろう、目の焦点は合っておらず、ただ中空を見ていた。
(――ん?)
そこでジャンは気付く。
ゼェゼェと息も絶え絶えな彼女を、狼はまるで品定めするかのようにジロジロと見ていた。
何のつもりかと訝しんでいる内に、人狼が口を開く。
「――ふむ。
ま、30点ってとこか。
お前のまんこ、ただキツいだけなんだよなぁ。
大して気持ち良くねぇんだよ。
俺様の精液便所になるには不合格だ」
「えっ」
思わず声が出る。
人狼から飛び出したのは、酷評だった。
あれだけのことをしておきながら、狼はまるで満足していなかったのだ。
「だがまあ、ただの便所としてなら使ってやらなくもない。
精液は駄目だが、小便やうんこならくれてやってもいいぜ。
どうだ?」
(どうだ、てお前、そんな――!)
無茶苦茶な話だった。
イルマのことを人としてはおろか、雌としてすら見ていない。
だがそれに対する少女の反応に、ジャンはまた驚かされることになる。
「――――な、なり、ます。
私を、貴方の便器として、使って下さい」
「なぁっ!!?」
言葉が無い。
イルマはあろうことか、狼の便器に成り下がることを受け入れてしまった。
嫌々とした顔ではない。
恐怖に支配されているわけでもない。
嬉しそうに笑いながら、自ら進んで人間便器になることを肯定したのだ。
人狼はくつくつと可笑しそうに笑って、
「おお、そうか。
じゃ、早速役目を果てして貰おうか。
実はさっきから催しててなぁ。
小便くれてやるからしっかり飲み干せよ」
「は、はい!
下さいっ! 私、全部飲みますからっ!!」
極太の――これが先程までイルマの中に入っていたことが信じられない――男根を前に、少女は嬉々として口を開けた。
飲むつもりなのだ。
本気で、便器になるつもりなのだ。
彼女は完全に“墜ちて”しまったのだ。
もう、自分の知っている少女はここには――
「ふざけるなぁっ!!!」
――部屋に、ジャンの怒号が響いた。
流石に無視できなかったのか、視線が彼に集中する。
「じゃ、ジャン……?」
「ほほう、どうした、短小ボーイ?
なにか不満があるってかい?」
ジャンは人狼に向き直る。
怒りに燃えた目で目の前の雄を睨み付け、
「当たり前だ!!
言うに事欠いて便器になれだと!!?
んなこと聞いて黙ってられるかよ!!」
「おいおい、これは俺様とコイツとの話だぜ?
無関係な野郎は入ってくんなよ」
「無関係じゃねぇよ!!」
断言した。
そうだ、自分とイルマは無関係などではない。
冒険者と宿屋の娘、ではないのだ。
「俺は、イルマの恋人なんだよっ!!!」
「へぇー、恋人、ねぇ?」
精一杯の怒気を、殺気を叩きつけても、人狼はどこ吹く風。
逆に質問で切り返された。
「だがよ、短小ボーイ。
お前はその“恋人”を放って、他の女と遊んでたよなぁ?」
「――――え」
言葉が詰まった。
いきなりの話題に、頭が真っ白になる。
「俺様が何も知らないとでも思ったか?
真昼間から酒場で女とイイコトしてたよなぁ?
その後は別の女の家に押しかけて、日が暮れるまでセックス三昧か」
「――う、う」
押し黙ってしまう。
いったいどんな理由か不明だが、人狼はジャンの行動を逐一把握していた。
嘲るように、奴は続ける。
「そんなお前が恋人だぁ?
聞いて呆れるっての」
「―――――ううぅ」
肩が落ちる。
首を垂れる。
全て、狼の言う通りだった。
なんとかしてイルマを助けたいと思ったこと自体が、お門違いというわけだ。
――しかし、人狼の台詞はこれで終わりでは無かった。
「それによ。
もうこの女は
お前のじゃねぇ、別の種でできたガキを、な」
「ん、なっ!?」
衝撃の発言に、バッと顔を上げる。
見つめる先は狼では無くイルマ。
俯く彼女の表情は、ここからではよく見えない。
掠れる声で、ジャンは尋ねた。
「ほ、本当、なのか」
「……本当です。
私のお腹の中、赤ちゃん、いるんです……」
「そん、な――」
身体から力が抜ける。
がっくりと膝が崩れた。
(まさかだろ、イルマ、あの人狼に――?)
項垂れるジャンを見て、狼がくつくつと嗤いながら告げる。
「ひゃははははっ!!
どうよ、自分の想い人が別の男に孕まされた気分は!?」
「う、うぅ、うぅぅぅ――てめぇ、うぅ、ちくしょうっ」
ぼろぼろと涙が零れ落ちる。
殴りたかった。
この人狼を。
そして、これまで恋人が人狼に犯され続けていた(←ジャンの妄想)ことに気付かなかった、自分自身を。
「さぁてぇ?
待たせたな、今からお前を便器にしてやる」
「あっ」
放心する青年を気に留めず、人狼はイルマへと向き直った。
常識外れの巨根が少女の眼前へと突きつけられる。
「――あ、ああ」
見せつけられただけで、イルマはあっという間に雌の貌へ戻った。
顔を赤らめ、愛おしそうに男の象徴を見つめ――
「あ、あああああっ!?」
その先端から放たれた“汚水”を、顔で受け止めることになった。
「ほれほれ、ちゃんと口開けな!
どんどん零れていっちまうぞ!」
「あ、あああっ! はぁああああああっ!!!」
言われるがままイルマは大きく唇を広げ、狼の小便を口に含んでいく。
だが到底飲み切れるような量ではなく、少女の身体は黄色の水で汚れていった。
(あ、ああ――イルマ――)
自分をレイプした男の小便を、喜んで身に受ける彼女を見て。
ジャンは心は暗澹たる場所へ落ちていった。
(なんで――なんで――)
思い起こすのは、イルマと初めて会った日。
『はあ、ジャン、ですか。
いつまでにもつか分かりませんが、ウィンガストに居る間はうちの宿を贔屓して下さいね』
最初はどこかよそよそしかった彼女。
だが蒼の鱗亭で日々を過ごすうちに、少しずつ少女と親しくなり、
『え、今日はまだ夕飯とってない?
……あの、なんなら今から私が作りましょうか?
えっと、私もまだ食べてないんで、一緒に食事ってことになりますけど……』
一緒に居る時間が増えていった。
冒険仲間であるエレナやコナーを除けば、彼女と一緒に居る時間が一番長かったように思う。
そして――
『――あの、ジャン?
笑わないで聞いて欲しいんですけど、私――』
告白。
顔を真っ赤に染めて、自分への好意を伝えてきてくれたイルマ。
まだ恋愛経験が無かったであろう少女の頑張りは、ジャンは何故自分から言い出せなかったのかと後悔すら覚えた。
だというのに。
「よし、これでお前は今日から便器女だ。
しっかり俺様の下の世話をするんだぞ。
気が向いたらまんこにも突っ込んでやるからよ」
「は、はぁい♪」
非道な狼の言葉に、イルマは満面の蕩けた笑みで答える。
終わった。
彼女は終わってしまったのだ。
イルマはもう、ジャンの恋人ではない。
宿屋の一人娘でもない。
人であることすら、放棄した。
ただ雄の汚物を食らって悦ぶ、雌犬以下の便器に成り下がったのだった。
ジャンはもう、ただそんな少女を見ていることしかできず――
「んなわけあるかぁっ!!!!」
――立ち上がった。
どうしようもない現実を見せつけられ、それでもなお――いや、だからこそ、ジャンの胸には怒りが湧き上がったのだ。
狼に犯された?
お腹に子供がいる?
便器になりたい?
(――だから、なんだってんだよ!!)
駆ける。
ジャンは走る。
ほんの短い距離だけれど、全力で。
相手をしっかりと見据えながら。
「イルマぁっ!!」
抱き締める。
汚物に塗れた少女を。
自分が汚れることなど、一切気にせず。
「お前は! 俺の! 恋人だっ!!」
「……じゃ、ジャン?」
突然のことに呆然とする彼女。
ジャンはそのまま有無を言わさず、少女に口づけする。
「ん、んぅううっ!?」
イルマが驚き、身を捩らせても、離さない。
舌を潜り込ませ、口内を蹂躙していく。
彼女の全身は狼の汚臭に包まれ、口の中は汚汁でいっぱいになっているが、そんなもの意に介さない。
「ん、ん、んん、んんんっ!!」
たっぷりとキスをしてから、唇を離す。
彼女の瞳を見つめて、告げた。
「俺は、お前を絶対に離さないからな!
お前の恋人であることを辞めないからな!!
お前がこいつに、どんな扱いを受けようとも、だっ!!」
「――あ。
で、でも、私――私、は」
ジャンの言葉を肯定するでもなく、かといって拒むでもない。
煮え切れない少女の態度に、寧ろジャンはほっとした。
少しでも彼女の中に自分への好意が残っているのであれば、諦める必要は無いのだから。
「ひゃははははっ!!
健気だねぇ?
そんな小便被った女でも、見捨てられないってかい?」
「見捨てる、見捨てない、じゃねぇよ。
――こいつは俺の恋人で、何があったってその事実は変わらないってだけだ」
人狼の嫌味を切り捨てる。
そんな言葉で、今のジャンはたじろがない。
しかし、狼はなおも追撃してくる。
「ま、そうだよなぁ?
こいつが他の男にナニされても恋人だっつーことは、短小ボーイが他の女とナニしたっていいってことだもんなぁ?
便利な雌を確保ってか?」
「そんなことしねぇよっ!!
――いや、今までは、してたさ。
ああ、イルマのことを俺は何も言えねぇ!
他の女性を抱いちまったことだってある!!」
自分の不貞を認める。
そう、ジャンだってイルマと変わりはしないのだ。
「でも、もうしねぇ!!
これからはイルマだけだ!
イルマだけを愛していく!
例えイルマが、他の男に抱かれたとしてもな!!」
「へーえ?」
何が面白いのか、人狼はニヤニヤと笑いだす。
「だがよ、その女にはもうガキができてるんだぜ?
そいつはどうするよ?」
「育ててやるよ!!
誰の子だろうと、母親がイルマなら俺の子みたいなもんだ!!
育て切ってやるさ、たとえ何人だろうとな!!」
断言する。
本当にそんなことできるのか――そんな疑問は挟まない。
できる、ではなく、やるのだ。
やらねばならぬのだ。
彼女を、この人狼の手から救うには、それだけの覚悟が必要なのだ。
「ジャン――で、でも――」
全てを聞いていたイルマは、しかしまだ不安な顔をしていた。
それはそうだろう、何せ、自分を犯した相手がすぐそこにいるのだ。
ジャンが何をどうしたところで、この人狼に勝てない事実は揺るがない。
狼がまたイルマを犯そうとしても、それを止めることはできないのだ。
(……諦めねぇぞ)
だからこその、覚悟だ。
イルマがどれだけ犯されようと、彼女を愛し続ける覚悟。
腕っぷしでは勝てなくとも、想いの強さで負けるつもりはなかった。
その意思を表明するため、再度ジャンは狼を睨みつけ――
「その一言を聞きたかった」
「え?」
――彼から出たのは、予想外の言葉だった。
こちらをゆっくり見渡しながら、人狼は続ける。
「便所女に、短小ボーイ。
ひゃはははっ! お似合いだぜ、お二人さん。
……せいぜい、幸せになんな」
先程までと、雰囲気が違った。
口調こそ変わっていないが、こちらを見る目がどこか優し気で。
まるで、自分達を祝福しているかのようで――
「あんた、まさか――」
まさか、この人狼はこの結末に導くために――!?
全ては、ジャンの不貞を正すためだったと――!?
「何のことかね?
俺様はたまたま目に入った女を犯しただけだぜ」
言って、狼は窓に向かう。
手で窓を開け放つと、枠に足をかけた。
「――行くのか?」
「……へっ」
ジャンが話しかけると、人狼は一度だけ振り返る。
「今日はこれ位で勘弁してやらぁ」
――その後。
ジャンは二度と、その人狼に会うことは無かった。
「ってなんでいい話風にまとまってるでござるかぁっ!!!?」
夜。
とある酒場にて、男が大声を上げていた。
「おかしいでござろう!?
もう色々とおかしいでござろう!?
どこから突っ込めばいいか分からぬくらいに!!」
男の名は、ガルム。
五勇者の一人、“気苦労”――もとい、“鉤狼”のガルムである。
彼が人狼であるという事実は広く知られているが、六龍の一匹ティファレトに憑かれていることを知るのは極一部の人間のみだ。
「イルマ殿、なんでそう簡単に身体を許してるでござるか!?
便器になること受け入れちゃったりとか、頭どうかしちゃってない!?
ジャン殿はジャン殿で、イルマ殿を許すとこはともかく、なんでティファレトまで許すの!!?」
「六龍の力使ってテキトーに頭弄ったんじゃないですかねー?」
喚き散らすガルムに、冷ややかな台詞が浴びせる一人の女性。
美しい金髪を三つ編みにしている彼女は、イネス・シピトリア。
やはり五勇者の一人で、今はガルムと共に食事をとっているようだ。
「まあ、そうなのかもしれんでござるが……
あと根本的なツッコミとして、イルマ殿のお腹にいるの、セイイチ殿の子供でござるよね?」
「そうですねー。
ま、いいんじゃないですか?
ジャン……でしたっけ?
あんな頼りなさそうな男の子供より、誠ちゃんの子供の方がはるかに将来性ありますし」
「そ、そういう問題ではないのでは?」
余りにぞんざいな返答に、思わず突っ込んでしまう。
「そもそも、ティファレトは何がしたかったんでござろうか?」
「単に女が居たから襲っただけなんじゃないですかー?
ひょっとしたら、自分の孫の将来が心配だったのかもしれないですけどー」
「……あの、食事しながらこちらに目線も向けずに返事しないで欲しいでござる」
イネスは、本気でどうでもいいらしい。
確かに、ガルム達が真剣に取り扱わねばならないような案件ではないのだが。
「ま、まあ、ティファレトの考えはどうあれ、1組のカップルが幸せになったのなら、良き事と割り切るべきか……」
「あ、件の女――イルマでしたっけ?――ついさっき誠ちゃんの家を訪ねてましたよ。
きっと今頃よろしくヤってるんじゃないですかー?」
「何もかも全部台無しでござるぁああああっ!!?」
頭を抱えて絶叫する。
まあ、この件に関してガルムが口を挟んでも仕方がない。
正直、彼が動いたところで何も変わらない気すらする。
「――あー、ところで、イネス殿」
「なんです?」
気持ちを切り替えて、ついでに話題も切り替える。
どちらかと言えば、この話の方が本題だ。
「その……“彼女”に、何か恨みでも?」
「え?
――ああ、リアのことですか」
イネスは一瞬、何のことを言ってるのか分からないという顔をしたが。
すぐにこちらの意図を理解したようだ。
2人は、視線を酒場の奥に向ける。
そこには――
「あっ!! あっ!! あひっ!! ああっ!! あぁあああっ!!!」
――何人もの男に組み伏せられた茶髪の少女が居た。
複数の肉棒をその身に突き込まれ、徹底的な凌辱を受けている。
彼女がリア・ヴィーナという名で、実は魔族であるという事実を知るのは、この場でガルムとイネスだけだ。
異常なのは。
こんな行為が行われているというのに、酒場に居る他の客は全く彼女達を気に留めていない、ということだ。
少女が暴行されているすぐ隣で、3人の女性客が他愛ない談笑を繰り広げている。
――イネスが結界を張り、人々の認識を狂わせたのだ。
精力のある男達が、リアを肉便器だと思い込むように。
それ以外の人達が、この“惨状”を気付かないように。
そんな所業をしている本人は、ニッコリと笑って先の質問に答える。
「恨むだなんてそんな。
寧ろ親近感湧いてるくらいですよー。
……肉便器になる運命で産まれてきただなんて、もうアタシそっくり!」
「…………」
言うべき言葉が思い浮かばず、押し黙るガルム。
構わず、イネスは続けた。
「それに、これは彼女のためにやってることなんですよ?
幾ら優秀な魔族だからって、龍の力入れたら壊れちゃうじゃないですか。
だ・か・ら、男共の精を使って補強してあげてるわけです。
龍の力を使っても、
言っている内に、リアを犯す男の一人が倒れた。
呻き声の一つもあげず、ぴくりとも動かない。
「……イネス殿」
「そんな怖い顔しなくったって大丈夫ですよー、ガルム。
別に死んでなんかいないですって。
単に精を吐き出し過ぎて、すっからかんになっちゃっただけで。
ま、もう二度と勃起とかできない身体になっちゃったでしょうけど、散々リアを犯したんですから十分
「――リア殿を“器”として強化するだけならば、このような手段を使う必要は無かったのでは?」
「アタシが知ってる中ではコレが一番てっとり早いやり方なんですよー。
昔、とある淫魔から教わったんですけどね」
精液は命の源であり、それが故に強い“力”を宿している――という説がある。
イネスはその“力”を用いて、リアをより強固な“龍の器”に仕上げようとしているのだ。
「だいたい、こんなの全然“甘い”じゃないですか。
魔王と戦ってる時、各国に助力して貰う見返りに、アタシが国の重鎮共から
ガルムは確か、知ってましたよね?」
「――ぬ、ぐ」
またしても、言葉を詰まらせる。
だが、イネスは止まらない。
「ま、それでもですね、アイツらはまだ全然マシでしたよ。
一応は、アタシを“女”として扱ってくれましたから。
雌犬だの肉便器だの言われても、まあ、女扱いであることには変わらないですし?
やっぱり龍に
両手両足を
浮浪者の汚物を食べて、どうにか飢えを凌ぎましたけど。
あ、
「い、イネス、殿」
かろうじて声を絞り出す。
自分に、彼女へ何か言う資格が無かったとしても。
それでも、何かを言わねばならない。
しかし、イネスはガルムの言葉を待つことなどせず。
「――ガルム。
今まで何もしてこなかったアナタが、今更出しゃばってくるの、止めて貰えます?
別にアナタを恨んじゃいませんけどね、せめてアタシの邪魔だけはしないで下さいよ」
怜悧な視線。
もう、彼女にはガルムのどんな言葉も届かない。
いや、それはとおの昔からだったか。
「……イネス殿。
そこまで――そこまで、
「当たり前でしょう」
絶対零度。
殺気まで含んだ声。
「あの女はアタシから、勇者としての立場を奪い。
アタシの意義を奪い。
その上――あり得ないことに、黒田誠一まで奪った。
恨むなって方が無理じゃありません?」
「――――」
ガルムは何も口に出せなかった。
沈黙する彼をつまらないそうに一瞥すると、イネスはリアを見つめる。
未だ男達と絡み続ける彼女を。
「さあ、いっぱい男達から精液搾り取って、いっぱい強くなって、アタシの役に立って下さいねー。
全てが終わった後、
「――アナタ
イネスの顔には、酷薄な笑みが浮かんでいた。
第二十九話 完