①
以前、ミサキさんは語った。
六龍を祀っていた巫女が魔素に蝕まれ、『魔王』の人格が誕生したのだと。
六龍の力を借り魔王を倒した勇者達は、六龍の力に魅入られ道を踏み外したのだと。
それは、根本的な箇所に虚偽がある。
巫女を魔王にしたのは、六龍だ。
勇者を外道に堕としたのは、六龍だ。
魔素によって狂わされたのは、他ならぬ六龍自身だったのだ。
実のところ。
勇者デュストとの戦いは、私の勝ちが最初から確定したものだった。
いや、あんなものを戦いと呼んではいけないのかもしれない。
私はただ、ミサキさんの敷いたレールの上を走ったに過ぎないのだから。
この先は、違う。
いかにミサキさんであっても、六龍の戦闘パターンなど把握していない。
予行訓練無しの、正真正銘ぶっつけ本番。
即ち。
――ここからが、本当の戦いだ。
第二十四話 魔龍討滅戦
赤龍ゲブラー
目の前には、赤い
私の『宣言』を受け、不敵な笑みを浮かべていた。
『“勇者”を為すとは、また面白いことを言ったものだ。
“勇者”は、我の存在を許容せぬ、と?』
「逆に聞こう。
暴虐な振舞を許す勇者がいるとでも?』
『くく、くはははは!
この世界における“勇者”が
それでなお、そう嘯くか!』
一瞬、イネスさん――葵さんの姿が頭を過ぎる。
「お前達の定義した“勇者”など知ったことか。
地球では、“勇者”とは弱気を守り、悪を挫く者のことを言うのだ」
『それを其方が実践すると?
――滑稽だな。
己の卑小さを自覚できておらぬとは』
「それはそちらも同じだろう。
『――言ってくれたな。
六龍たる我を怪物と同列に扱うか』
ゲブラーの声色が変わった。
怒気がそこに含まれだす。
同時に、奴からの“圧力”が爆発的に膨れ上がった。
まだ何もされていないというのに、肌がピリピリと痺れ、喉がカラカラに乾く。
『その暴言、万死に値する。
少々遊んでやろうかとも考えたが、その気は失せた。
疾く、滅するが良い』
顔から笑みが消えた。
どうやら、最初から全力で来て貰えるようだ。
それでいい。
手加減されると、こちらも困るのだ。
段階的に力を解放されでもしたら、
『
先にゲブラーの身体が動いた。
“右から来る!”
気付けば、もうすぐそこにゲブラーの腕。
赤い光を纏った手が、猛烈な速度で私の頭へ振られる。
まともに受ければ、まあ、即死だろう。
咄嗟に私は<射出>で“左”に飛ぶ。
だが無理。
ゲブラーの腕の方が早い。
右腕でガード――は無理なので、受け流しを試みる。
「がっ!?」
攻撃を流そうとしたのだが、完全には決まらなかった。
長し損ねた力が、右腕に炸裂する。
とてつもない衝撃。
近距離でダイナマイトでも爆発すれば、こうなるだろうか。
<射出>の勢いと併せ、猛烈な勢いで私は吹き飛んだ。
「ぬっ! ぐっ! ぬぁっ!!」
吹き飛びながら、<射出>の力場で体勢を立て直す。
そして、なんとか着地。
すぐに右腕を確認。
……良かった、ちゃんと“ある”。
凄まじい打撃だったので、引き千切れてしまったのではないかと心配だったのだ。
流石は『戦神の鎧』、大した防御力である。
とはいえ。
……腕をただ振っただけでこの威力を生みだしたのか。
分かってはいたが、出力が人の規格から大幅に外れている。
ゲブラーの方を見る。
彼我の距離は、一気に30m程離れていた。
つまりそれだけの距離、吹き飛ばされたわけである。
『逃げるのは、上手いようだな』
奴の声が聞こえ――即、<射出>を使用。
その場から離脱する。
直後、“直前まで私が居た場所”を、ゲブラーの放った『衝撃波』が通過。
遅れて、衝撃波が通過した地面が粉々に吹っ飛んだ。
さらに後方で、建物が倒壊する音が聞こえる。
不幸にも、衝撃波が当たったのだろう。
住人の安否が心配だが、おそらく
被害の補てんも、後でジェラルドさんあたりがしてくれるだろう。
他のことを考えず、とにかくゲブラーに集中しなければ。
『くはははは、逃げ惑うがいい!』
次から次へと衝撃波。
<射出>による三次元機動と“風迅”による高速移動で、左に右に、上に下に回避する。
街並みが破壊されていく。
煉瓦も石も、土壁も石壁も、それに触れれば木端微塵だ。
当然、当たれば私も同じ末路を辿るだろう。
避ける合間で、矢を<射出>して牽制。
しかし放った矢はケブラーの纏う光に触れると、即座に燃え尽きた。
『そんなものが我に効くとでも思ったか?』
奴の言う通り、そして私も予想した通り、矢は何の効果も無い。
続けざま、さらに5本の矢を飛ばしても、結果は同じだった。
お返しとばかりに、ゲブラーの衝撃波が来る。
一撃即死の圧力に身体が竦むのを堪え、回避に専念する。
『これは、どうだ?』
ゲブラーの呟き。
私の目には、紅く輝く光弾が写る。
曲線を描き、猛烈な速度でこちらへ向かってきた。
――これを待っていた!
私は両腕を、
『――む』
訝しむようなゲブラーの声。
私の手に当たった光弾は、『戦神の鎧』によって吸収されたのだ。
装着する籠手は紅く赤い輝きを放っている。
ゲブラーの力が
「せやぁああああっ!!!」
掛け声と共に、ゲブラーへと猛進。
全身の駆動部に<射出>を行使し、一気に奴へ肉薄する。
防御の必要などないと考えているのか、ゲブラーは何の対処もしてこなかった。
その傲慢を突く。
「せぃっ!!!」
右の腕で、ボディブローを放つ。
本来、私の攻撃などゲブラーには通用しない。
オーラに弾かれて奴に触れることすらできないだろう。
下手すれば矢と同様、攻撃した私の方が砕けるかもしれない。
だが。
『がぁっ!?』
ゲブラーの身体がくの字に折れる。
拳は、深々と奴の腹に抉り込まれていた。
本来、私の攻撃は通用しない。
しかし今、『戦神の鎧』には、その籠手にはゲブラーの力が宿っている。
私の
「どうやら、効くようだな!」
言葉と共に、左拳でアッパーカット。
『ごっ!?』
ゲブラーの頭が跳ね上がる。
……奴に気付かれぬよう、心の中で安堵する。
理屈上、この方法であればダメージが与えられるという算段ではあったのだが。
実際に試したことは無かったので、実は内心不安だったのだ。
通じなかった場合、全力逃亡も視野に入れていた。
だが、その不安は晴れた。
六龍だの言っても、
これで、攻撃手段が確立された。
あとは――
『ミサキ・キョウヤの鎧かっ!!
おのれぇっ!!』
ゲブラーが腕を振ってきた。
自分の身体を全力で後方へ<射出>。
ギリギリでかわすことができ――
「ぐっ」
呻く。
胸部に激痛が走った。
おそらく、肋骨が何本か折れたのだ。
内臓にもダメージが及んだのだろう、喉から血が上がってくる。
回避できたと思ったのだが、僅かにかすってしまったか。
もっと、慎重に対処せねば――!
口の中の血を無理やり飲み込み、改めて構えを取る。
両手の輝きは、今の攻撃で既に消費されていた。
『人間風情が、この我に痛みを与えるかっ!!!』
ゲブラーはゲブラーで、怒髪天を突いているようだ。
人から抵抗されるなど、ましてや負傷を負わされるなど、奴にとって初めての体験だったのかもしれない。
私は貴重な初体験相手となったわけだ。
……軽口を思い浮かべている場合ではなかった。
ゲブラーは怒りに任せて衝撃波を周囲へ何発も撃ち放つ。
ほとんど狙いは付けられていない。
八つ当たりで周囲を壊滅させる
ふざけた行為だが、それが却って避けづらい。
私は神経を最大限に研ぎ澄まし、ゲブラーの攻撃へ対処していく。
――さて。
何故、私は曲がりなりにもこうしてゲブラーと戦えているのか。
未知の相手であり、絶望的とすら言える戦力差がある相手に、追い縋れているのか。
不思議に思っている方もいることだろう。
種明かしをしよう。
先程、予行はしていないと言った。
その発言を少々修正する。
実は、“それに近いこと”はやってきたのだ。
デュストとの戦闘である。
ゲブラーは、六龍がこの世界へと多く介入しないと言ったが、それは完全に嘘というわけではない。
実体のない六龍は、この世界に対して過度に干渉“できない”のだ。
奴らが積極的に世界へ関わりたい場合、依り代の存在が不可欠となる。
7年前までは、依り代には巫女が使われていたわけだ。
そして、ここからが肝要なのだが。
六龍の物質的な活動は、依り代に大きく依存する。
龍の力を行使する器としての適性、というだけではない。
その依り代を使って行動する以上、依り代の身体的特徴による束縛を受けるのだ。
例えば足の長さから歩幅は制限されるし、骨格は動く際の所作に影響する。
果ては依り代の持つ『癖』も――些細なものから、行動決定の指針に至るまで――その行動に現れる。
つまり。
今のゲブラーの行動は、デュストの戦闘パターンからある程度予測が可能ということだ。
特に攻撃の予備動作については、かなりデュストのそれと酷似している。
この確度の高い予測によって、『社畜』によるデメリットは限りなく0になっている。
――これが、理由の一つ目。
『おのれおのれっ!!
ちょこまかとっ!!』
ゲブラーの攻撃は続く。
衝撃波の乱れ打ちが、私に降り注ぐ。
だが、どうにかこうにか、私はそれを避けていた。
そのことが、余計に奴の苛立ちを募らせているようではあるが。
『消し飛べぇっ!!』
感情的になったおかげなのか。
ゲブラーは、再び光弾を放つ。
都合4つの光が、それぞれ別の軌道で私を襲い来る。
学習能力が無いのか。
それとも、同時に複数くれば捌けないとでも考えたのか。
どちらにせよ、甘い。
“風迅”を使用している今、この程度であれば――
右手で払い。
左手で止め。
右足で受け。
左足で蹴りつけ。
――両手両足を使って、4個の光弾を吸収する。
『なっ!?』
驚きに、ゲブラーが一瞬動きを止めた。
それを見過ごすわけにはいかない。
私は一直線に奴目掛けて跳ぶ!
『ぬっ!?』
気付くのが遅い!
今度は、輝く四肢による拳と蹴りの四連撃。
一つとして外すことなく、ゲブラーへ叩きつけた。
『ガアァアアァアアアア―――っ!!!』
人のモノとは思えぬ絶叫が、辺りに響いた。
――理由の、二つ目。
これは単純明快。
ゲブラーの戦闘練度が低いのだ。
出鱈目な出力に目を奪われてしまうが、奴の戦闘行動自体は実に
デュストの洗練された剣技と比べてしまうと、大人と子供、月とすっぽん、比べることすらおこがましい。
駆け引きも何もなく、ただ嬲ってくるだけなのだから。
戦闘は、再び遠距離戦となっていた。
実のところ、“デュストの身体”を使った直接攻撃が最も厄介なので(避けにくい上に吸収もできない)、この距離は私にとっても都合がよい。
そしてゲブラーの攻撃の特性も分かってきた。
基本的に、奴は遠距離では衝撃波と光弾の二種類を使う。
衝撃波は速度が高く、比較的広範囲を薙ぎ払う代わりに、どうも精度が低い。
おかげで、避けるのは決して難しくない。
一方、光弾は衝撃波に比べるとやや速度は劣るものの、ゲブラーの意思で自在に動かせるようだ。
吸収できるからこそ驚異は少ないが、しかし避けにくさという点では衝撃波の比ではなかった。
『オオオォオォオオオオッ!』
ゲブラーの雄叫び。
奴も自省したらしく、今や攻撃は衝撃波と光弾の混合となっていた。
衝撃波によって私の動きを止め、光弾で『戦神の鎧』が装着されていない部位を狙い撃つ。
こうなってくると、『戦神の鎧』による吸収戦法も使いにくい。
仮に、最初からこの戦術で来られたら私は成す術も無く負けていただろう。
ゲブラーの攻撃に何度か体験したからこそ、どうにか回避できているのだ。
「はぁっ――はぁっ――はぁっ――」
額から汗を流して、次から次へと放たれる攻撃へと対処していく。
痛みと疲労、そして緊張感で心拍数が上がる。
しかもデュストとの戦いから“風迅”を連続使用しているため、身体のへの負担も厳しい。
――自身の身体能力を大幅に超える動きの代償は、軽くないのだ。
このままでは、ジリ貧。
龍と体力勝負など無謀以外の何物でもない。
打開策は――ある。
私はゲブラーの射撃をかわしながら、“ある地点”へと降り立つ。
『――ム』
案の定、ゲブラーは衝撃波による射撃を取りやめた。
向かってくるのは、光弾のみ。
そうなれば、格好の餌食。
私は赤い光を籠手に充填し――ゲブラーを叩くべく、接近戦を仕掛ける。
――最後の理由。
それは、陽葵さんの存在だ。
彼の身体は、六龍の依り代に最も適している。
魔王が居ない今、龍達が自分の力を
つまり、ゲブラーは間違っても陽葵さんを傷つけたくない。
この戦闘の初手――私が陽葵さんの前に立っていた際、奴が直接殴りかかってきたのも、それが理由である。
そして、先程私が立っていた場所も、その時と条件は同じ。
ゲブラーと私の立ち位置を結んだ延長上に、陽葵さんがいたのだ。
彼が射線に入っていたが故に、精密性に難のある衝撃波を使えなかったのである。
ゲブラーとの3度目の接近戦を終えた直後。
私は確信を得る。
――もう、十分だ。
奴との戦闘パターンには、
思いのほかゲブラーの行動が単純だったため、ルーチン化は予想よりも早く為すことができた。
これで、『社畜』が使える。
まだ『戦神の鎧』に充填をしていない状態で、私はゲブラーに近づいていく。
雨あられと光弾と衝撃波が降り注ぐが、それらを
光に対しては手をかざし、力を吸収しておく。
『――なんだ、その動きはっ!?』
驚愕するゲブラー。
なんだも何も、奴はデュストと私の戦いを見ていなかったのだろうか?
……見ていなかったのかもしれない。
ならばなおのこと、好都合。
十分接近したところで、一撃。
『グァッ!』
ゲブラーは苦悶の声を上げる。
今までは、攻撃の直後、すぐに離脱していた。
その必要はもう無い。
『今度は逃げぬのか。
いい度胸だっ!』
腕で私を薙ぎ払ってくる。
『ぬっ!』
避けたのを見て、もう一度手が振るわれる。
今度は避けず、“完璧な形”で受け流す。
どれ程の剛力であろうと、力を100%流してしまえば、自身にかかる負担は0だ。
『何だとっ!?』
あっけにとられるゲブラーの身体を、右手でそっと
奴の身体を取り巻くオーラが、少しずつ籠手に吸収されていく。
光弾ほど凝縮された力ではないので、どうも充填には時間がかかるようだ。
『――貴様っ!!』
ゲブラーの攻撃が来るが、私は奴に
右からの一撃を避ける。
上からの振り下ろしを流す。
下からの振り上げは回り込んで回避。
『我を愚弄するかっ!?』
左腕を振り回してきたので、それもやはり受け流し。
そんなところで、充填が完了した。
右拳をゲブラーの右頬にぶち込む。
『ブハッ!?』
後ろに仰け反り、そのまま倒れた。
追撃を仕掛ける――前に、奴の身体は跳ね上がり、体勢を元に戻した。
流石にそこまで甘くはないか。
『――認めよう』
ゲブラーが喋る。
『貴様は、
「ッ!!」
奴の身体が、否、“デュスト”を取り巻く赤い光が
咄嗟に<射出>で後方へ退避するも、広がる光に追いつかれ――
『やはり死なないか。
よい、分かっている。
この程度では、貴様は斃せない』
耳にゲブラーの声が聞こえる。
私はというと、地面に仰向けで転がっていた。
奴の言うように死んではいないが、身体のあちらこちらが焼け付くように痛い。
『戦神の鎧』で
それ程、膨大な出力が展開された。
意識は保てているものの、すぐには動けそうにない。
一方でゲブラーの方はと言えば。
『よもや、たかが“代理”相手にこの姿を取ることになるとは思わなかったぞ』
赤い光が、巨大な、神々しさを感じさせる『龍』を形成していた。
全長は、20mを優に超えるだろうか。
“デュスト”の身体は、その『龍』の中心辺りに浮かんでいる。
これこそが、奴の“原型”に近い姿なのだろう。
『しかし――もう、立つこともできぬようだな。
当然の結末だ。
最後に我が姿を謁見できたことを光栄に思いながら、死ぬがよい』
確かに。
今の私は、身体が麻痺して指一本動かせない。
次に来るゲブラーの攻撃に、何の反応もできないだろう。
<射出>で無理やり移動することならできるのだが、これまでの戦闘で周囲はほぼ更地のようになっている。
身を隠すことも不可能。
このまま、死を待つのみ。
だが。
だがしかし!
この展開もまた、
「今にゃっ!!
撃てぇーーいっ!!」
それと共に、無数の光がゲブラーに向かって降り注いだ!
『オオォオオオ――――!?』
龍が叫ぶ。
「にゃっははははははっ!!
どうにゃっ!?
のべ金貨5000枚にも及ぶ攻撃用マジックアイテムの一斉掃射はっ!!」
続いて、アンナさんの笑い声が響いた。
首を無理くり動かして声の方を見れば、そこにはアンナさん、並びにセレンソン商会の方々の姿が。
「待たせたにゃ、クロダちゃん!
いやー、ここまでよく頑張ったにゃあ。
ご褒美をあげよう」
私の近くに駆け寄ってきたアンナさんが、声をかけてくる。
同時に、私の身体へ治癒のポーションを降りかけてきた。
「あれ?
すぐに全快しないにゃあ。
クロダちゃん、どんだけダメージ食らってたの?」
「まあ、それなりには貰ってしまいましたね」
全身の痛みはまだ引かないが、とりあえず会話ができる程度には回復した。
「私のことより、まずはゲブラーを」
「分かってるにゃ!
ポーションはいっぱい持ってきたから、それで回復しててちょうだい!」
言って、アンナさんは私に幾つものポーションを投げ渡してくる。
受け取ってすぐ、それを自分に使いながら、私はゲブラーを見た。
『何故だ、何故だ!?』
奴は混乱していた。
残念ながら、アンナさん達の射撃に戸惑っているわけでは無い様だ。
エネルギー体なので効いたかどうかの判別はしにくいが、ダメージを負ったような様子はない。
アンナさんに向かい、ゲブラーが叫ぶ。
『お前は、“デュストが殺した”はずだ!』
「はんっ、分っかんないのかにゃあ?
神様の癖に?
ほんっと大したこと無いんだにゃ、六龍ってのも。
こんなのを拝んでた知ったら、信者の皆さん首吊って死んじまうにゃ!」
ふてぶてしい口調でアンナさん。
彼女も、ゲブラーに対して思う所あるのだろう。
「もともと、勇者達の戦いは“ヒナタちゃんがケセドに会ってから”始める予定だったにゃ。
なのに、デュストちゃんはそれを無視して開戦を前倒しにした。
それは何故か――」
アンナさんは、ゲブラーを睨み付ける。
僅か、だが。
彼女の目に、光る物が浮かんだ気がした。
「デュストちゃんは、“今らならまだ”お前の意思に逆らえると踏んだから、戦いを開始したのにゃ!
あの人は、ただの一人もこの街の住人を殺しちゃいない!!」
『あ、あの役立たずがぁ――っ!!』
ゲブラーが吼える。
自分の操り人形だと思っていた相手が、実のところ反抗していたのだと知って。
“そんなこと”も察していなかった、無様さを晒されて。
正直なところ、私も少しスカっとした。
デュストは、アンナさん達を殺したように“見せかけた”だけだったのだ。
……まあ、重傷は負わされていたのだけれども。
アンナさんは、デュストと遭遇した後、対ゲブラー戦を見据えて準備を整えていたのである。
そして、大人数で挑みやすい巨龍形態にゲブラーが変化するまで、住民を避難させながら近場で待機していたのだ。
なお、住民の避難に関してはジェラルドさんにも一役買って貰っている。
「よーし、店員の皆さーん!
もういっちょ、やっちまうにゃ!!」
再度、アンナさんの号令で商店の人々はまたマジックアイテムによる射撃を実行する。
だが――
『舐めるなぁっ!!』
龍の“一息”で、その攻撃は吹き散らされてしまった。
「にゃあっ!?
やっべ、マジかよあいつ!?」
「仮にも六龍ですからね。
これで何とかできたら世話無いですよ」
「クロダちゃん、なにを淡々と解説してんにゃ!?」
合いの手くらいは入れようかと思っただけである。
何せ、今の私はポーション飲むことくらいしかやれることが無いのだ。
『塵共がっ!!
纏めて消えいっ!!』
ゲブラーが、“大きく息を吸った”。
奴の口元に、眩い赤光が集中していく。
これが噂に聞く、『
ゲブラーは、我々に向かってその光を解き放つ――
「だっしゃああっ!!
<
どでかく、野太い声が、その直前に響く。
第二十四話②へ続く