※この作品はR-18です。

社畜冒険者の異世界変態記   作:ぐうたら怪人Z

96 / 119
④! ローラさんの逆襲

 

 

 

「お、おい、やべぇぞ。

 この女、想像以上にノリが悪い」

 

 ぼそぼそと私に語り掛けるティファレト。

 父の顔でいきなり話されるとかなり懐かしさがこみ上げてくるのだが、それはともかく。

 

「レベルが一気に上がったとか、後遺症が治ったとか、その辺りが関係しているんですかね?」

 

「くそぉっ! とっときのネタだったのに!!」

 

 実に悔しそうだ。

 いや、私にとってはかなり深刻なお話でかなりショックも受けているので、ネタとか言わないで欲しいのだが。

 

「と、とにかく!

 俺様は親友の父親で、俺様の血を引くからこそお前は高い龍適性を持っているってことだ!

 ひゃははははっ!! 楽しかったぜぇ、お前との親子ごっこはよぉっ!!」

 

 ティファレトは無理やり雰囲気の立て直しを図った。

 しかしそこへさらにローラさんが水を差す。

 

「あ、でも本当にクロダさんのお父さんなんでしょうか?

 単に姿かたちを似せただけだったりしませんか?」

 

「む、それは――」

 

 あり得るかもしれない。

 神にも等しい龍であるならば、私の父の姿を真似る程度、造作も無いことだろうし。

 

「ふっ、信じられねぇか。

 ま、しゃあないわな。

 だがよ、疑うのは、こいつを見てからにするんだな!」

 

 すっと腕を差し出してくる父さん――もといティファレト。

 その二の腕には、醜い火傷痕があった。

 

「こ、これは――!」

 

 正しくそれは、私の記憶に残るもの。

 今まで忘れたことのない――

 

「へへ、覚えているか、誠一。

 お前が小学校に上がりたての頃、俺が唐揚げを揚げてやった時――」

 

「――ふざけて飛び跳ね、鍋が傾いて油が私に。

 それを庇って、父さんはうでに酷い怪我を――」

 

「ははは、自分が怪我したわけじゃないってのに、お前はびーびー泣いてたなぁ。

 ずっと、俺に謝っていたっけか」

 

 ――私の思い出通りの“父の手”だった。

 そして思い返してみれば、ガルムにもこの火傷はあったのではなかったか。

 彼は長袖の服を愛用していたので、滅多に腕を見る機会はなかったが。

 人狼の時にも、或いは――

 

 ――い、いや、待て。

 

「ティファレト、お前は龍――それも生命を司る龍だ。

 この程度の傷、すぐに治せるはず――」

 

「馬鹿野郎。

 お前との大事な思い出を、そう簡単に消せるわけないじゃないか」

 

「――父さん」

 

 見つめ合う。

 そこには、優しい目をした父の顔が。

 

「……ホントに普通に親子関係楽しんでたんじゃないですか」

 

 ローラさんが深くため息を吐いた。

 今日の彼女は対応が冷たい。

 何か嫌なことでもあったのだろうか?

 

「どうだ、これで俺様が誠一の親父であることに納得いったか?」

 

「いやまだです。

 根本的なお話として、時系列がおかしいじゃないですか。

 今のやり取りからして、クロダさんのお義父様(おとうさま)の身体はガルム様ということですよね。

 でも貴方がガルム様に憑いたのは魔王との戦いの時――7年前の話のはずです」

 

 ん?

 今、何か変な単語があったような?

 

「ああ、そんなことか。

 簡単なことさ、俺様は五勇者が魔王と戦うよりも(・・・・・・・・)前から(・・・)ガルムに憑依していたっていうな」

 

「え?」

 

「何!?」

 

 ローラさんも私も、呆気にとられた。

 そんなこちらの反応を無視して、ティファレトは続ける。

 

「そもそもガルムを作った(・・・)のは俺様だし。

 魔王だけが操り人形ってわけじゃなかったってことさ。

 別にガルムだけじゃないぜ。

 “元々の勇者”であるイネスについては言わずもがな(・・・・・・)、エゼルミアだって前々からケテルに接触されていたようだし、な。

 五勇者の中で龍と関わりが無かったのは――美咲だって魔王に召喚されたんだっつうことを考えりゃ――デュストだけってことになる」

 

 そ、そうだったのか?

 デュスト以外の勇者全員が、龍の関係者?

 

「もっとも、六龍(俺様達)の真意を知っているのはイネスとガルム(・・・・・・・)くらいだったが。

 ひゃはははっ! いくら美咲が“天才”だからって、そうそう都合よくこんな面子が集まるかってんだ!」

 

 な、なんと。

 

「デュストは――そのような立ち位置だったのか」

 

「ああ。

 龍に見込まれたわけでもなく、特別な生い立ちを持つわけでも無い。

 ただ世界を救いたい一心で他の連中と同じ場所まで上り詰めた……凄い奴だったよ」

 

「そ、そんな方を、私は――」

 

 殺してしまったとは!

 なんということをしてしまったんだ!!

 他にやり様は無かったのか、もっと、彼を助ける手段を模索すべきでなかったのか!?

 

「気にするな――とは言えないが。

 しかし、あいつの死も無駄じゃなかった。

 あの死に様で一部の奴に火が付いた(・・・・・)んだから」

 

「それは――?」

 

「ひゃははは、ま、気にするこたぁねぇよ、お前は」

 

 どういうことなのか。

 その疑問が解消することなく、先にローラさんが口を開く。

 

「つまり、六龍の器として生み出されたのは、ヒナタさんだけではなかったということですね」

 

「その通りだ。

 ガルムもイネスも、室坂陽葵を作る前段階って感じだな。

 しかし、六龍界最強の生物として設計した人狼ガルムも、最高の龍適性者となるべく調整された勇者イネスも、“魔王”ほどの器にはなれなかった。

 そこで六龍が目をつけたのが、地球だ。

 あそこの連中は、龍への適性が六龍界の生物に比べて高かったからな。

 この辺、地球が六龍界より魔界から“遠い”ことが関わっていると思うんだが――そう仮定すると、六龍発生の理由は魔素に原因が――――」

 

 何やらぶつぶつ呟き出した。

 

 六龍誕生が魔素の影響によるモノというのは、興味深い話ではあるし、実際、筋の通った説にようにも感じる。

 ティファレトを始め、六龍は魔素を浄化することを本来の役割としていた。

 これはつまり、六龍は魔素の対になる存在として生まれたとも考えられる。

 

 しかしこの六龍界は魔界と隣り合わせであるため、魔素による浸食は六龍の力をもってしても今なお続いている。

 故にこの六龍界の住人は産まれ持って“魔素”の影響を受けており、そのため魔素の対である龍への適性が低いのではないだろうか。

 

 対して地球には魔素という存在は無く、逆に言えば地球の人間は魔素の浸食を一切受けていない。

 私見ではあるが、このことが地球人の龍適性や冒険者適性の高さに繋がっているのではないか、と。

 

 少々忘れられがちな事実ではあるが、冒険者が主に行使する“スキル”や“能力値向上(ステータスアップ)”は、“魔素”に抵抗するため(・・・・・・)発現する能力なのである。

 魔素に慣れ親しまない(・・・・・・・)地球人の方が、“魔素への反発が大きくなる”というのは、あながち間違った考え方ではないだろう。

 

「おっと、脱線しちまったな。

 そうして“龍への適性が高い”地球人をもとに、“完璧な龍の器”を生み出そうと六龍は画策し――最終的に室坂陽葵が出来上がったわけだ」

 

「私は陽葵さんの試作品として作られたということか」

 

「え?

 ああ、まあ、そういうことになる、かな?」

 

 歯切れが悪くなるティファレト。

 何か隠し事でもあるのか?

 

 と、ローラさんが少し怪訝な顔をして、

 

「あら? それではヒナタさんは地球で産まれたということなんですか?

 六龍界で産まれ、地球へ“逃がされた”と聞いていたのですが」

 

「そうだ、室坂陽葵は――無論、誠一も、地球で産まれた。

 面倒だから一気に説明しちまうが、誠一はガルム(俺様)と地球の女、室坂陽葵は“魔王”と“ケセドが憑依した地球の男”との間に出来た子だ。

 もっとも、室坂陽葵は“ただ産まれた”だけでなく、色々と細工を受けているようだ、が」

 

「細工ですか?」

 

「詳しくは俺様も分からん。

 だが、わざわざイネスを派遣して(・・・・)、その警護に当たらせた位だ。

 ケセドの奴にとって余程大事なんだろう」

 

「――なるほど」

 

 納得いったように、ローラさんはコクコクと頷いた。

 会話が途切れたところを見計らい、ティファレトへ声をかける。

 

「私からも質問良いだろうか?」

 

「む、いいぞ。

 どんとこいや!」

 

「……何故、十年前に死んだことにしたんだ?

 父さ――ティファレトの目的を考えれば、別に私の前から居なくなる必要は無かったはず」

 

「ひゃはははは、そんなことか!

 もう、俺様が世話焼いてやる必要はねぇと思ったからさ!

 あとは、十分成長した後で身体を奪ってやればいいってなぁ!!」

 

「――そうか」

 

 そんなところだろう、とは思っていたが。

 それでも、父の顔でそう断言されるのは、少々きついものがある。

 

 と、ローラさんがぽつりと呟いた。

 

「……これ以上クロダさんと一緒にいると情が移り過ぎて身体を奪うとかできなくなると思ったのでは?」

 

「!?」

 

 いやいやローラさん、そんな馬鹿な。

 

「ガルム様にクロダさんの稽古をつけさせていたのも、クロダさんが傷つくのを可能な限り防ぐためとか」

 

「!!?」

 

 ちょっとロマンチックに過ぎませんかね?

 

「クロダさんを親友呼びしているのも、息子扱いするとまた情が湧いてきてしまって駄目だけれど、かといって他人行儀に付き合いたくないから、じゃないんですか?」

 

「!!?!?!?!?」

 

 ローラさんの妄想が炸裂している。

 

「あの、ローラさん?

 流石に六龍――ティファレトを美化し過ぎではないでしょうか。

 この世界で散々好き勝手をやってきた存在なんですよ?」

 

「そ、そそそそ、そうだぜ!?

 この、極悪非道で有名なティファレト様が、に、人間に情を持つとか、そんなん或るわけないじゃん?

 アハハハハハハ」

 

 ほら、ティファレト自身がこう言っている。

 だがローラさんは難しい顔をしながら、

 

「……ひょっとして、ティファレトとは戦わなくていいのでは?」

 

「お、話が分かるじゃねぇか、女!

 そうそう、俺様は昔から六龍界に君臨してたわけだし、今更それをどうこうしようっつう美咲がおかしいんだよ。

 俺様のやりたいことなんざ、せいぜい六龍界や地球に居る全雌を孕ませたい、なんていうささやかなもんなんだぜ?

 勿論、未来永劫永遠にな。

 他の男との子作りもそう制限するつもりもねぇし。

 ああ、でも俺様が気に入った綺麗どころ数万人(・・・)程度は専用の肉便器にさせて貰いたいかな」

 

「やっぱり駄目ですね、お話になりません。

 You are guilty!」

 

「えー」

 

 当たり前だ。

 女性は皆のモノ。

 一人でそんな多くを独占しようなど、マナー違反にも程がある。

 

「……なんだか、クロダさんもかなり酷いことを考えているようですけれど」

 

「そんなことは無いですよ?」

 

 ローラさんにジト目でにらまれて、ちょっとたじろいでしまう。

 ――読心できるようになったわけじゃないですよね?

 

「さぁて。

 楽しい会話はもう終わりだ!

 いいか親友、お前の身体は近々俺様のものになる。

 間違っても、他の龍に殺されるようなヘマこくんじゃねぇぞ!

 体を十分にいたわれ。

 あと、健康とかにも気を付けろ?」

 

 ティファレトの姿が、父のものから、人狼へと変わった。

 

 ――問題、ない。

 私の父は、10年前に死んだのだから。

 

「……いいだろう。

 私ももう、お前を父とは呼ばない」

 

「……………………お、おう。

 ……俺様も……余り、馴れ馴れしくされたくは、ないからな……

 ……そっちの方が、せいせいするぜ……」

 

 どういうわけか、人狼の耳がしなしなとヘタレだした。

 ぱっと見、気落ちしているようにも見えるが――

 

「偶には呼んであげてもいいのではないですか?

 そちらの方が精神にダメージを与えられそうです」

 

「そうですかね?」

 

「ひゃ、ひゃははははは!

 俺様としては嫌で嫌で仕方がないが、親友がどうしてもと言うなら父さんと呼ばれるのも吝かでは無い!!」

 

 ローラさんの提案に、何故かティファレトの方が反応した。

 そのまま奴は、私達の前から跳び去ろうと――

 

「――あ、ちょっと待って下さい」

 

「ん、なんだ、女?」

 

 ――跳び去ろうとする前に、ローラさんが引き留めた。

 彼女は続ける。

 

「せっかくですから、クロダさんとアナルセックスしていって下さいよ」

 

「「え?」」

 

 私とティファレトが同時に声を上げる。

 ナニ言い出してるんだ、この人。

 

「だって、話を聞く限りティファレトはクロダさんに死んで欲しくないわけでしょう?

 そしてティファレトの精液には、レベルを上げる効果がある、と。

 これはもう、クロダさんパワーアップのためにアナルセックスするしかないですよね?」

 

「あ、あー。

 確かに、筋は通っている、かもしれない、けれども」

 

「でしょう?

 では、早速クロダさんに筋を一本通してあげて下さい」

 

「あ、やっばい、この子、目がマジ――」

 

 ティファレトが、本気で狼狽えている!?

 それ程、彼女の放つ圧力的な何かは凄まじいというのか!?

 

「い、いや、ローラさん?

 あのですね。

 流石に私もこういうのは――」

 

「クロダさんは、気持ち良ければなんでもヤれるんですよね?

 大丈夫です、きっと凄く気持ち良くなれますよ。

 体験した私が言うのですから、間違いありません。

 そのうえ、“キョウヤ様の計画”もより滞りなく進められるようになるのですから、これはやらない手は無いはずです。

 ――それともまさか、ご自分が挿(い)れられるのは嫌なんですか?」

 

 み、美咲さんの話まで出されると辛い。

 辛い、のだけれどもいやしかし!

 

「ヤるんでしょう?

 ヤりますよね?

 ヤらないとかありえなくないですか?」

 

 ローラさんは喜悦に満ち満ちた笑みを浮かべていた。

 でも目は一寸も笑っていなかった。

 

 そんな彼女を前にして、私は、ティファレトは――

 

「……や、やべぇ。

 ひょっとして俺様、目覚めさせちゃいけないヤツを目覚めさせちまったのか――!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 きょう、レベルが10もあがりました。

 とってもつよくなれて、うれしいです。

 あと、ローラさんのまんぞくげなかおが、とてもいんしょうてきでした。

 

 くろだ せいいち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の中。

 そこには、一人の女性が恭しい礼をとっていた。

 

 闇に、厳かな声が響く。

 

『ティファレトは首尾よく動いたようだな、イネス』

 

「はい、ネツァク様。

 ティファレト様が派手に動いたおかげで、ミサキ・キョウヤはこちらの動きにまで気付いていません」

 

 イネスと呼ばれた金髪の女性は、顔を上げずにそう答える。

 そこへ、また別の声が聞こえた。

 

『しかし嘆かわしいことですね。

 魔族の身体を使わなければならないとは』

 

「申し訳ありません、ケテル様。

 急遽用意できる器は、アレ(・・)しかなかったのです。

 大した適性はありませんが、それでも数回程度の“使用”には耐えられるかと」

 

 姿勢を維持したまま、イネスは視線を横に向ける。

 そこには――

 

 

「んぉおおおおおおおっ!!

 おっ! おおっ!! あぅっ!! ああっ!! あぁああっ!!!」

 

 

 ――幾人もの男に嬲られる、魔族リア(・・)・ヴィーナ(・・・・)の姿があった。

 それを確認し、イネスはうっすらと微笑む。

 

「此度におけるケセド様の契約は、勇者とその代理にしか適用されません。

 つまり、あの魔族はルールの外を動くことが可能です。

 これを利用すれば、ミサキ・キョウヤを討つことなど容易い――」

 

 彼女の返答に満足したのか、“声”はそれで止まった。

 後に残るのは、

 

 

「あひぃいいいいいっ!!

 ああぁああっ!! あぁああああっ!! あぁあああああああああっ!!!」

 

 

 一晩中犯され続けている、哀れな少女の嬌声だけ。

 

 

 

 第二十八話 完

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。