??「私と私のこの天輪からは絶対に逃れられないよ!」
「ちがう、おまえじゃない」
現在、我々がいるのは関東北部のとある山中。
道は最低限しか舗装されておらず、本来なら慎重に走行せねばならない車道を一つトラックが全力で走っていた。
その中型トラックに乗るのは人外一人に科学者一人、2匹の豚猿、最後に荷台の屋上に一人。
なおこの車道はひどい荒道で走るたびにごっとんごっとん全力で揺れるが流石の天性の肉体、気合と根性でだけで踏ん張り立つができるのはいろんな意味で流石であろう。
無論、伊達や酔狂でこんな無駄に危険なことをしているのではない。
「ヒ――ハ――ッ!!!!」
ポケットにしまっておいた【エニグマ】の紙から取り出すは、汎用機関銃2丁とそこから繰り出される7.62㎜の嵐。
大人の指ほどもある重厚な金属の弾が高速で近距離から発射されるのだ、普通の人間であれば瀕死確定。
まともに食らえば熊を超え、オークや魔族でさえもただで済まないであろう。
「……無駄です」
……が、今自分たちを追ってきている者はそれ以上の存在であった。
まるで戦車に当たったかのようにあっさりとはじかれ、それの移動スピードが衰えることすらない。
マガジンを2つほど空にして、足止めすらできていない有様であった。
「こなくそ!!これならどうだ!!」
銃撃が効かないなら、それ以外で!
素早く機銃を捨て代わりの武器として、右手には無数の手榴弾と火炎瓶を、左手には火炎放射器を装備する。
口を使って、無理やりピンを抜き34っつ同時に手榴弾と火炎瓶を投げつけつつ、着弾と同時に火炎放射器であぶる。
おおよそ生身の生物にする対応でははない、少なくとも一体の生き物相手にする攻撃とは思えない爆発と熱風がその爆心地から上がったのであった。
パッと見かわされたようにも見えず、防御された様子すらない。
普通ならばそれだけで勝ちを確信し、生きているかの心配ではなく死体が残ってるか程度の心配しか出ないはずだ。
「……損傷軽微、追跡続行、チャージ完了。
陽電磁ポジトロンキャノン、発射開始します」
「のぼぼぼぼぼ!!!!!」
が、残念ながらこちらの全力火器攻撃ですら一切の効果は出なかったようだ。
むしろ、爆炎に包まれたままこちらに接近、さらには無数のビーム光撃をこちらに浴びせてきた。
幸いビーム自体は威力はそこまででもなく、発射する方の反射神経は並程度の様なので、躱したり防御が間に合うのが救いであろう。
「馬鹿ねぇ、あの私を含めた米連に所属する天才達が協力して治したサイボーグ【AT-T】が、そんなケンチな火器ごときでどうにかなると思ってるの?
せめて、あれを倒すならミサイルの一つや2つもってきなさいよ、それでも多分外殻を少し焦がす程度だとは思うけど」
「見た目だけなら普通の人型じゃん!!素肌も眼球も見えてるじゃん!!
なら、そこに当てさえすれば普通なら少しぐらい怯むと思うじゃん!!」
「はぁ、あれの皮膚はほとんどが人工皮膚よ。
見た目は普通の女の原型をしているけど、肉体のほとんどは機械化されているに決まってるじゃない。
あ、それより追加が来たわよ」
「んぎぎぎぎぎ!!!」
だったらわざわざ人型腹筋女性やや裸族ビジュアルにする意味は何だよ!という言葉はぐっと抑える。
そして、博士の言葉が言い終わるとともに周囲から無数の昆虫の形をした大型犬大ほどの機械群がが飛び出してきた。
「【エニグマ】!!あの虫もどき共を紙にしろ!!
……って、んなっ!!効かねぇ!!
あれら、ただの機械じゃないのかよ!!」
「へぇ、よくわかったわねぇ。
あれら【ドローン・ワスプ】は米連の科学と魔界の技術の結晶のサイボーグスズメバチよ。
一応は生き物でもあるからそこのところ気を付けてね」
【エニグマ】での紙化は生物相手だと、恐怖のサインがわからないと封印できない。
感心したようにうなずきながら言われた、全くうれしくない博士の助言を聞き流しながら、後方の追跡者サイボーグには催淫ガスと煙幕でごまかしつつ、ドローンには新しく取り出したライフルで対応していった。
幸いこちらの性能はある程度常識的なようで、機械蜂どもは羽の付け根に銃弾を叩き込むだけであっさりと破損、墜落してくれた。
「近接モードへ移行、強襲します」
が、そのドローンに対応している隙をついて、件の金髪サイボーグは一気にこちらへと突撃してきたのであった。
「えぇぇ!!女性アンドロイドなのに、対魔忍にも有効な催淫ガスが効かない……だと!!」
「いや、あなた何あほなこと言ってるのよ。
フィルター付き人工肺持ち相手なのにそんなのが効くわけないでしょう」
あたりまえだけど当たり前じゃない!!
ある種対魔忍世界、ひいてはブラックなリリス世界万能兵器である催淫&催眠ガスが無効化されてしまうという事実に驚愕する。
世界への叛逆的ともいえる出来事に焦っている間、目と鼻先までの距離まで接近を許してしまう。
が、当然文字通り全身機械の人型兵器に相手にまともに近接戦をするなぞ自殺とほぼ変わらない。
そのために全力で、この生きた殺人兵器を引きはがすために一つの奥の手を起動する。
「【ゴミを木に変える力】!!スペシャル!!」
手のひらのごみに全力で力を注ぎこみ、その数メートル先にいる相手に生きた木でできた濁流を浴びせる。
「無駄です。ビームソード起動……!?」
とんできたサイボーグはその手のひらから、光でできた刃物を発生させ、その無数に発生した樹木を切ろうとした。
が、なぜか切れない。
本来ならこのような木材、ティッシュを指で突き破るよりも簡単に灼切できるはずなのに、まるで鉄を鋏を入れるかのように、最新裏技術の塊の刃はあっさりと止められてしまったのであった。
「馬鹿め!!ただの植物と思った貴様が運の尽きよ!!
ついでに、これでもくらえ!!」
「……!!これは土砂……いえ、コンクリート!!
離脱……失敗、これより防御モードに移行します」
その樹木は刃を止めつつ件のサイボーグの全身に絡みつく。
そのうえで同時にとっておき【総量200トンの生コンクリート】の入った紙をそのサイボーグ頭上で開放した。
どうやら、さすがにこの二重コンボには意表を突かれたのであろう。
よって、そのサイボーグは木と生コンまみれになり、墜落し、道路から転げ、玉となって坂の下へと落ちていき、自分達はその安否を確認しないままトラックに乗った状態でその場を後にするのであった。
「……で、どうしよっか」
「いや、どうしようもないでしょうこれは」
さて、いい感じにパツキン羽根つきサイボーグを撒いてから十数分。
ある程度追跡者から距離を離して、現在は山道を爆走&相談中である。
「一応ああ見えてあれ、改造しただけの人間なんでしょう?
ならさすがにあんな風にコンクリートまみれにされたら生きていないと思うんだけど……」
「無駄よ。あれは潜水モードもあるから、1時間や2時間の無呼吸くらい何とでもなるわ。
それよりも、私としては一瞬とはいえ、あれを足止め出来た貴方の手から出た樹木状のものの方が気になるのだけど。
あれは何?魔界的な技術の一種?それとももっと別なもの?」
天華が希望的観測で尋ねてみたが、それはすぐに博士によって打ち砕かれてしまった。
そして、ピンチな状況であるはずなのになぜか元気な博士。
ノリノリでこちらに先ほどの戦略や見せた技術をぐいぐいと尋ねてきた。
「普通に魔界の植物だよ、特別丈夫なね。
知り合いに植物博士がいましてね。
鉄より硬く、金よりも腐食しにくく、魔界でも高級建築材として評判らしいですよっと」
ただし、本来は成長に数百年単位かかるらしいけどな!チート様様やで!
あの対魔忍強襲事件以降、力不足を感じたため、あらかじめエイシェンさんにお願いしておいたものの一つである。
日頃は催淫植物やらディルドーもどきばかり作っているように思えるが、本来はこう言うののために戦闘で使える樹木の研究をお願いし、そのために研究室や投資をしているのだ。
最近のエイシェンさんは舞同様植物オナニーにどっぷりだったので色々と不安だったが、今回は実践では役立ってくれたようで何よりである。
「へぇ……もう少し詳しい説明お願いできるかしら?
さっきから頻繁に見せてくれる物質の取り寄せ能力も気になるし、あ、それとあなたの肉体構造も気になるわねぇ」
「そういうのは後で、とりあえずお互い無事に逃げ切れてからにしましょ。
追加のお客さんも来てるようだし」
博士がずずいっとこちらに顔をさらに近寄せ、唇が付くかつかないか迄の距離まで近づいてきたがそれをそっと押し返す。
改めてトラックの窓から顔と腕を乗り出すと、遠方及び上空から無数のサイボーグ巨大蜂が見える。
どうやら、向こうは未だきちんとこちらを補足しており、みすみす見逃す気もないようだ。
改めて新しいロケットランチャーとライフルを取り出し、どちらも撃ち落としておく。
「ナイスショット」
「……で、だ。
結局この追いかけっこいつまで続くんだ?
流石にあのドローンをつれて町中までいきたくないし、東京キングダムまでずっとこれを続けるのはさすがに無茶が過ぎるというものだぞ」
弾が入れた火器をしまいつつ、博士にこれからの展望を尋ねるも、その返答はこちらにとって望ましいものではなかった。
「残念ながら、このままだとそうなるわね。
というかあの【ドローン・ワスプ】は現在より上位の警備システムと連動……わかりやすく言えば、あの追跡してきたアルカ・スティエルこと【AT-T】の命令シグナルで私たちを追跡しているの。
だから、あれを完全に沈黙及び機能停止に追い込まない限り、そこが尽きるまで、いやそこ尽きてなお追跡を続けると思うわ」
となると、自分たちはあのブリキ腹筋人形を何とかしなきゃいけないようだ。
あまりの困難に天華は頭を抱えつつ、オークはどうやって投降したらゆるしてもらえるかなんぞ相談し始めたが、それを無視しつつ博士に件のサイボーグの弱点を尋ねるも、返ってきたのはあまり意味のない言葉ばかりであった。
「え?明らかな弱点?そんなの残しておくわけないじゃない。
最新式陽電磁リアクター、高性能ビームソードに陽電磁ポジトロンキャノン、無数のセンサーに人工皮膚バリア機能人工筋肉対魔粒子装甲マジックジャマ―。
そのうえ肉体の9割近くの兵器化と電脳化もおおよそ成功済みゆえ、魔術的洗脳や幻術は無意味だし、毒や環境変化もばっちり。
耐熱耐寒耐酸耐水耐電耐爆耐光etcetc……おおよそすべての攻撃に万能に対応できるわよ。
理論上真空下、宇宙空間での運用も可能なはずなのに明確な弱点が残っているとでも?」
「おまえ、媚薬が効かないってうっそだろおい」
監獄な戦艦での伝統も無効とか、これもうわかんねぇなぁ。
「いや、そこを一番に警戒するべきでしょう。
あなたは対魔忍でもあるまいし、何を言ってるの。
……まぁ、一応は生体部位少しは残ってるから、ピンポイントで毒を浴びせれば効かないこともないわね。
いる?私特性の媚薬?とりあえず脳みそは電脳化しているとはいえ、生の部分も多かったはずだから、直接脳内に注入すれば少しは効くんじゃないかしら?」
「それは頭部装甲をかち割れなきゃ意味がないんですねわかります」
とりあえず、渡された特性媚薬とやらを紙にしつつそう答える。
なお、普通の生き物相手だと、塗って良し嗅いでよし飲ませて良しの最高レベルの媚薬らしい。
リアルな感度3000倍を見て少しだけ感動したのは秘密だ。
「あとはそうねぇ、一応いくつかの専用装置や端末さえ用意してくれれば、あれの手足を制御している機構をジャミングすることはできるわ。
それに適当な機械としかるべき場所さえ用意してくれれば、1日と待たずにそれ用の装置をつくってあげられるわよ?
なんなら、私が直接触れられるのなら、手入力ですべての信号を止めることもできるわ」
「……それは戦闘しながらでもそれは可能か?
それならすごい楽なんだけど」
「なんで私が逃げてきたか、常識を考えて物事を言いなさい」
あきれ顔で博士に常識を問われる。
常識人は感度3000倍の薬を作らないんだよなぁ。
「まぁ、言いたいことはわかったよ。
ようするにあれを止めるのが、自分たちの仕事ってわけだ」
「そうそう、それが分かればいいのよ、分かれば。
私としてもさっさとあなたの能力やら米連の命令に縛られない研究がしたいんだから。
さっさとこの程度の窮地をどうにかしちゃって」
なぜが同じ逃亡者兼今回の逃亡せざる得ないことになった原因のくせに、なぜか尊大な態度を崩さないフレア博士をスルーして、こちらは間もなく追いついてくるであろうターミねーちゃん(生)の対策を真剣に考える。
そうして、足りない情報で何とかするために親指がふやけるチートを使い考えに考えた結果。
「よし、今まで運転ご苦労だったなオークども。
ご褒美に、鉛弾をくれてやろう」
「ちょ、おま!嘘だろ……
んぎゃあぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
トラックに銃声が2回、オークの汚い断末魔が2回響くこととなったのであった。
対魔忍RPGでゆきかぜイベント、いまだユキカゼドロップしませぇん!!!!
ふえぇぇぇ……もう4箱目なのに……