※この作品はR-18です。

楽園は消えた   作:EKAWARI

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ばんははろ、EKAWARIです。
久々の更新おまたせしました。
本当は今回更新するのはシスイ15歳時の事件である「処女喪失(モブ×主人公)」だったのですが、あまりにモチベーションが保てないので、過去の陵辱話を省略してストーリーを進めるか、それとも従来の予定通り、処女喪失含めて過去の陵辱エピ6本書いた後にこの話書くかどちらがいいかアンケ取ったところ、過去陵辱話省略してでも話進めて欲しい派が多いようでしたので、話を先に進めて完結目指すことにしました。まあ、気が向いたら陵辱話もおまけで書くんじゃないかな。
尚、今回の話は「しーたんの脳内日記③」の9月20日のエピソードのイタチ視点寄り三人称構成となっております。
因みに余談ですが、Gスポットって本当に存在している女性と、Gスポットなんて元からない女性と世には2パターンあるそうで、イったことがない女性って大抵後者だそうですよ。
そんな感じです。


楽園は失われた 1(イタチ×主人公)

 

 

 ―――――どうしても、消したくても消すことの出来ない記憶がある。

『……止めろッ!』

 

 

 ―――――たとえどんなに思い出したくなくとも、あの屈辱を、あの時抱いた想いを忘れられたことは無い。

『嫌だッ!』

 どんなに泣き叫ぼうと救いなどない。

 ただ、嘲笑われ、抵抗を封じられ、玩具のようにあいつらに好き勝手されるだけだ。

 女として10年以上生きてきていながら、未だ自分の体が女だということすら碌に受け入れられていないままに、そうしてよく知りもしない男達によって処女を散らされた15の秋の夜。あの時に思ったのだ。

 

 ―――――嗚呼、まるで、塵溜めのようじゃないか、と。

 己が人間であることさえ、否定されたようだった。

 ただの精液を吐き出されるだけの、屑籠のような人形。人の形をしただけの不格好でつぎはぎだらけのダッチワイフ。

 それが自分だというのならば、人間ですらないただの物だというのならば、感情など初めから無ければ良かったのに。

 真実、ただの人形だったのなら、きっと誰を傷つけることも、傷つくこともなかっただろう。

 

 ……そんなことを微睡みの中で思う。

 悪夢同然の現実なんて永遠に醒めなければいいのに。

 

 

 

 * * *

 

 

「え?」

 自分が今何を言われたのか理解出来ず、クセの強い黒髪セミロングの少女、うちはシスイは目の前の席に座っている、どこか気まずげなこの木の葉隠れの里長である三代目火影猿飛ヒルゼンに、たった今言われたことについて尋ね返す。

「あの、三代目。今、私に暇を与えると聞こえたのですが、聞き間違いでしょうか……?」

 やや釣り目がちの黒く大きな瞳にそうやって戸惑いの色を浮かべつつ、そんな風に尋ねる少女に対し、三代目火影を務める老人は、苦虫を噛み潰しでもしたような声で告げた。

「いや、聞き間違いではない。おぬしに今日1日の暇を与える、うちはシスイ上忍」

 こういう時、理由はわからずとも火影直々にそう告げられたのなら、「わかりました。失礼します」といってそのまま去るのが通例だろう。下のものが上のものに理由を追及するなんて普通あってはならないことなのだから。けれど、シスイは三代目にそう言われたタイミングがタイミングだった故に、その三代目の申し出という名の命令を上手く受け止めることが出来なかった。

「あの、オ……私は何か問題でも……」

 その言葉に三代目は一瞬だけいたたまれない罰の悪そうな顔を浮かべる。それをシスイが見逃すこともなく、己は失言をしたのだと自覚し、彼女は「いえ、なんでもありません……」と前言を撤回して深々と頭を下げた。

 しかし、気まずげに目を反らす三代目の反応を前にして、その刹那、彼女は自分の無礼を謝るよりも先に、貴方は知っているのですかと衝動的に聞いてしまいそうになった。それを訊ねることを耐えれただけ自分を褒めてしまいたいくらいだ。

 それにわざわざ訊ねなくとも、おそらくは……知らないなんてことはないだろう。だって、あいつは、うちはイタチは暗部に所属している。暗部とは火影の直属部隊なのだ、イタチが三代目に報告しないなんて筈がない。

 ……新聞の朝刊であいつらのことが書かれ、あいつらが逮捕されたのは2日前のことだった。

 彼女が言うあいつらとは、強姦・殺害、脅迫などの容疑で2日前に逮捕された男達のことだ。3年に渡り行為中に撮った写真を盾にシスイを脅し、肉体関係を強要してきた3人の下忍達。

 男達の浅ましい欲望からきた一連の事件の被害者の数は、シスイを合わせて3年で合計10人にも上った。一連の事件における最初の被害者こそが彼女だ。しかし、新聞に発表された被害者のリストにシスイの名は無く、被害者の数も9人と世間には公表されていた。

 そしてその記事を見て、シスイは確信したのだ。

 あの3人を証拠も添えて捕まえたのは、イタチだ、と。

 最も奴らの性玩具として長く使われ、写真などの証拠の品も1番多いだろう自分の名が、わざわざリストから伏せられていた時点で、あいつらを捕まえたのはイタチ以外には考えられなかった。

 きっとおそらく自分の名を伏せたのは、イタチなりの気遣いだったのだろうとは彼女も思う。

 けれどシスイにとっては、自分がこの一連の事件の被害者であるということを世間に知られるということへのダメージ以上に、イタチにそうであると知られ、その証拠の品になる性交中に撮られた写真の数々を見られることのほうが余程胸に堪えることだったのだ。この3年間、何度も脅されながらイタチに知られてしまうのではないかと、怖れなかったなかったことはない。何故ならイタチに知られたくない一心で、彼女は彼らの要求を飲んできたのだから。

 だというのに、自分に対するこの配慮はイコールイタチが最も知られたくないと思っていた、シスイのあの姿を知ってしまったことを意味していた。これでは本末転倒だ。道化だ。ピエロだ。イタチの気遣いはシスイを追い詰めはしても、その逆はない。

 やつらを逮捕させたのはイタチだ。

 しかし、イタチの立場上、シスイも一連の事件の被害者であることをもみ消し、新聞から名と存在を伏せさせたことが出来たとしても、それでも仕えるべき三代目にまで報告しないで、自身の胸の内にのみ仕舞っておくなんてことは出来なかったのだろう。

 おそらく、きっとこの人はシスイがあのおぞましい事件の被害者の1人であることを知っている。

 そうでなければ、いきなり暇を与える理由も、こんな気まずげな態度をシスイに向かって取ることもありえないではないか。

 被害者として新聞に載せることは、おそらくはイタチの懇願かなにかによって避けたのだとしても、それでも目の前に立つ相手が強姦事件の被害者だと知っていては、普通に接しにくいものなのだろう。

 そう思考しながら彼女は己の右手を破れそうなほどに強く握りしめた。

「……それでは、失礼します。三代目」

 それからなんでもないように、儀礼通りに少女は頭を下げる。

 そんなシスイを前にして、猿飛ヒルゼンは「うむ。気をつけて今日は1日ゆっくりするのじゃぞ」と声をかけたが、その優しげな声と共に自分に与えられた憐憫の宿った目に彼女は吐き気を覚えていたということに、シスイを直視出来ずやや視線を逸らしていた三代目は気付くことはなかった。

 彼女もまた、そのままそんな自らの心を胸の奥に押し込んで、火影の執務室を後にした。

 

「ふぅ……」

 誰もいなくなった部屋で、三代目はプカリと煙管を吹かす。

 数日前もたらされた情報のせいか、酷く落ち着かない気分だ。

「まさか、あの子がのぅ……」

 そういって思い浮かべるのは、先ほど出て行った少女のことについてだ。

 うちはシスイのことについては昔から知っている。

 いや、シスイだけではない。三代目火影である彼は里人のほぼ全ての人間について、名や顔だけでなくその性格や生い立ちまで把握している。プロフェッショナルと呼ばれた三代目火影猿飛ヒルゼンの、火影として最も偉大な点はそこだとすら言えよう。里に住んでいる者達は皆、ヒルゼンにとって兄弟であり、また子供のようなものであった。

 しかし、数日前、暗部として自分に仕えているうちはイタチによってもたらされた情報は、青天の霹靂とさえ言えるような内容だった。

 3人の下忍による複数の女子に対する、監禁、暴行、強姦、脅迫事件。10人もの被害者が出ており、中には死んでいる被害者や心を壊し売春宿に売り飛ばされていたものもいた。それだけでも許し難い凶悪犯罪といえるが、それも3年にも渡って続けられていたという時点で、里長でありながら気付かなかった自分が呪わしい。

 だがまさか、そんな事件の被害者の1人として、うちはシスイの名前まで連なっているなど思いもしなかった。

 リストを見たが、被害者の殆どは一般人で形成されており、それも被害にあった少女達の多くが身寄りがない子達だった。ある意味消えても気付かれない子達が中心に狙われていたから、これまで発覚しなかったとさえ言えよう。その被害者の中で、うちはシスイだけが異質な存在だった。

 何故なら、彼女は被害者の中で唯一の上忍であったし、両親こそいないがうちは一族というバックを持っていた彼女は天涯孤独とは言い難い身だ。色んな意味で目立つ子でもあったし、彼女になにかあれば他の被害者の子と同じようにはいかないだろう。

 それに彼女は上忍に16で上り詰めて見せたように、加害者である男達よりも能力的にはずっと強い。そんな彼女が何故そもそも最初に被害に合う羽目になったのかといえば、3年前の当時彼女が一時的に親しくしていた中忍のある医療忍者によって薬を盛られたのが原因だったらしかった。

 無論、こちらについてもイタチが複数回に渡り男達に協力していたと証拠も纏めて書類を提出してきたため、その医療忍者にしろ逮捕まで秒読み段階である。だがしかし、いくら薬を使って抵抗を封じた上で襲ったとはいえ、他の被害女性と違って一歩間違えればシスイ相手の場合、男達のほうが返り討ちにあっていた可能性だってそれなりに高かったというのに、わざわざ標的の中に彼女を加えていたあたりが異常と言えば異常だった。或いは、彼女を標的にすることの危険性を認識出来ていなかったのか。それともそんな危険性を無視してでも犯したかったのか。

 まあ、実際は男達になんらかの形で仕返すどころか、彼女は向こうの要求に従い脅しに屈していたようなので、それだけの材料を向こうは揃えていて復讐されない自信があったから手を出したのかもしれないが。それでも彼らが毒牙にかけたメンツの中でうちはシスイのみが格段にリスクが高い相手だったといえる。

 不審な点があれば彼女の身近な人間……とくにあのうちはイタチが気付かないとは思えない。バレた時のリスクを考えたら、彼女自身が仕返しをしなかったとしても、シスイをターゲットにすること自体が自殺行為と言える。

 だがしかしここでの問題点は、うちはシスイは確かに被害者の1人でありながら、3年間それでも彼女に不審な点などなかったことにあったのではないだろうか。

 それはイコールこの事件の発覚がこれほど遅れた理由の1つとさえ言えるだろう。

 確かに、一時は淫売であると、金さえ払えばヤらしてくれるといった噂が流れていたことはあったが、それでも彼女はいつもなんでもないように笑っていたし、以前と同じように婚約者であるうちはイタチと仲睦まじくしている姿も何度も目撃されていた。それに彼女と親しい人々は噂に否定的だった。

 淫売どころか、幸せそうににこにこ笑う姿は幼さを思わせるものであったというのもあったのだろう。噂を真に受けた男に迫られて逃げる姿だって何度も目撃されていた。故に噂はただの噂だと、彼女が春を売っているなどという噂はただのデマだろうと次第に消えていったのだ。元々アカデミー時代は同性との折り合いが悪かったとも聞くし、だから嫌がらせに誰かが流した噂なのだろうという方向で当時は決着がついた。

 家庭的で男受けの良い体つきをしていて、人懐っこくて小さくて可愛らしいのでモテてはいたが、女性らしささえ感じさせられる性格とは裏腹にやや少年っぽい喋り口調に、化粧っ気なくオシャレの1つもしない姿は自分が女であること自体に興味がないのではとすら思わせた。うちはシスイとはそんな少女だった。

 だというのに、性に疎いのではとすら思わせるほどに、あどけなくいつも幸せそうに笑っていた少女が、裏では陵辱の限りを尽くされていたなどだれが思おうか。

 報告を受けた今ですら正直信じがたい。

 

 が、証拠写真付きとなれば信じるとしかないが、果たしてこれからどう彼女と接していけば良いのか。

 性犯罪被害者など珍しくはないし、たかが強姦、命に別状がないのにグダグダ言うなと思うほど女性蔑視思想を持っているわけでもないが、所詮男である三代目には女の気持ち……性犯罪を受ける側の気持ちなどわかりはしない。

 これまで自分が性犯罪被害者であることを完璧に隠していたあたりからして、脅されていた以上に、自分自身の意志で彼女があのようなことを受けていたと、周囲に知られたくなかったと思っていたことは明らかだ。

 最初は強姦だったとしても、途中からクセになって自分から望んで男達の玩具になった可能性もないわけではなかったが、それでも証拠写真に添えられていた悲痛な泣き顔や、背中の皮が破けてめくれるほどに鞭打たれた写真や、婚約者であるうちはイタチとの普段の接し方を思えば、その可能性は低いように思われた。

 強姦被害者が、自分が強姦被害者だと名乗りを上げられず、泣き寝入りすることは別段珍しくはないが、それでもそんな酷い目に合ったのなら、男性恐怖症なり、悪夢障害なり、なんらかの形で赤信号サインが出ることは極めて普通の事例だ。あれほどのことをされたのなら、なんらかの形で異変が出ても無理はない。原因が強姦であると発覚するかどうかは別だろうが、それでも周囲はよく笑う人間が笑わなくなったりするなどすれば、その人物に起きた異変に気付かされるようにはなるだろう。

 しかし、うちはシスイの場合はそうではなかった。脅されもしたのだろうが、それ以上に自分が被害者であることを完璧に隠してみせた。あれほどのことを3年に渡りされ続けながら、笑って日常を過ごしていたなどただ事ではない。

 元々器用であると同時に酷く不器用な少女だった。そんなところで我慢強さや器用さを発揮しなくてもいいだろうに。少なくとも、隠されていたほうとしては、あれほどのことをされておきながら完璧に隠していた彼女の在りようというのは、却って知れば堪えるものだ。

 頼られていないということ、それに身近な人間であればあるほど傷つこう。それを思えば、猿飛ヒルゼンとしては、この一連の事件をたった数日で暴いて証拠を掴んでみせた、シスイの婚約者でもある部下のうちはイタチのことが不憫でならない。

 自分の愛しい女が3年にも渡ってあのようなことをされていたのに、気付くことさえ出来なかったなど、年若い彼にはショックだろう。いや、年若くなくても同じか。自分の今は亡き妻が若い頃同じ境遇に立たされていたなら、ヒルゼンだったら傷つく。もっとも、彼女ならいくら脅されていたからとはいえ、泣き寝入りなんて道を選ぶとは思えないが。

 幻術等を使って多少の仕返しはしてしまったようだが、感情にまかせるままに彼らのことを殺しにかからないだけまだイタチは冷静であり大人だった。まだ15にすら満たないというのに、幼くしてその老成しているとさえ言える優秀さは、ヒルゼンにしてみればちと哀れでさえあったが。

 

 そんなことを思っているうちに、時間になったらしい。

 呼び出し時間きっかりに、狐のお面を被った暗部服姿の少年が火影の執務室へと現れ、三代目の前に膝をつき頭を下げる。仮面の後ろで流れる1つに縛った見事な黒髪がサラリと流れ光を反射していた。

「お呼びですか」

 凛とした少年の声は、年齢に似合わぬほどの落ち着きを持っている。そんな彼の言葉を受けてヒルゼンもまた口を開いた。

「うむ。イタチ。察しはついているかもしれんがの」

 そういってチラリと彼に視線を送りながら三代目は会話を続ける。

 そう、目の前のこの狐の面を被っている少年こそが、先ほどの少女の婚約者であるうちはイタチだ。

 暗部は任務中はそれぞれに支給されている面を被り、素顔を隠すことになっている。故に、任務中であった今、彼はその顔に狐の面を被り、その表情を覆い隠していた。

 けれど、仮面を被っていても、イタチの表情はいつも通りの感情を隠した無表情だろう。そんなことを察しつつ、猿飛ヒルゼンは次のような決定を告げた。

「おぬしに今日1日の暇を与える」

「……」

「実は先ほどうちはシスイ上忍にも暇を告げたところでな……その、あれじゃろう? あんな事件があったあとじゃ。本人はなんでもないように振る舞って居るが、内心までそうとは思えぬ。生憎1日しかやれんが……慰めてやってはくれんかの」

 そう歯切れ悪く三代目はイタチに告げた。

 もしかして自分は僅か12歳の少年を相手に酷なことを言っているのかも知れないとは思うが、しかしイタチは好きな女が別の男に汚されていたからといってそのことから目を反らしたり、女へと責任を転嫁するほど弱くも愚かでもないだろう。それぐらい信用している。

 自分は正直強姦被害者でありながら、あれほど完璧にそのことを隠してのけていた、うちはシスイに対しどう接するべきかわからないし、どう慰めて良いのかもわからない。否、下手に慰めるのは逆効果なのかもしれないとも思っている。

 なにせあれほど自分が被害者であることの発覚を避けていた少女だ。折角新聞でも彼女が被害者の1人であることを伏せたというのに、下手なことを言えばそこから被害者の1人であることが発覚して、余計に彼女を傷つけるだけかもしれない。

 けれど、イタチなら彼女の婚約者であったし、あれほど普段から仲睦まじかったのだ。自分では上手く出来ない慰めもイタチならば出来るのではないかとヒルゼンは思っていた。

 一方、三代目の申し出はイタチからしたら願ってもないことだった。

 元々、出来れば一刻も早く、シスイに会って6日前のことも含め謝罪したいとそう思っていたのだ。

 それでも1度自分が関わった事件だ。自分の婚約者まで被害者となった一連の強姦事件の後始末や、被害者女性達へのフォローに、元々与えられていた任務の片付けなどがあったから、早く謝りたいと思いつつも今まで実行が叶わなかったが、三代目自らの暇を与える宣言のおかげで漸くそれは叶いそうだ。

 それを素直にありがたいと思いつつ、凛とした声で深く頭を下げながらイタチはその自分の思いをこの年老いた里長に向けて放つ。

「はっ。お心遣い感謝します」

「うむ」

 そういってそのイタチの返答にほっとし、そしてヒルゼンは彼にはそのまま退室を促した。

 すっと背筋を伸ばし、清廉な立ち振る舞いでイタチは火影の執務室を後にしていく。

 ……その自分の選択が、この判断が、余計に彼の少女を追い詰めていく元凶になるなど、その時三代目は夢にも思うことはなかった。

 今は全てが遅い。

 

 

 * * *

 

 

 自分の家に一旦帰ることすらせず、シスイが今は1人で暮らしている彼女の家に向かいながら、イタチはその先にいるだろう女を想う。

 ……会うのは6日ぶりとなる。

 最後に見た、苦しげな寝顔を思い出す。

 同時に、彼女は元気だろうか、どうしているだろうかといった想いが溢れる。

 しかし、だからといってあの日に自分がやった行為を忘れたわけではない。

 あの日、イタチは泣いて嫌がるシスイをその手で抱いた。

 あれほどあどけない顔をして、いつも自分にむかってにこにこと笑っていたのに処女ではなかった。男を知っている体を持っていた。そのことは、イタチにとってとてつもなくショックな出来事だった。

 それでも彼女の性格上男を喰い歩くとも思えなくて、恋愛対象として確かに見られていたわけではないだろうが、それでも明らかに「特別」扱いをしていた婚約者の自分を裏切って他の男と通じていたとは思いたくなくて、もしかしたら合意の上の行為ではなかったのではないかと思い、なけなしの理性で誰にやられたのか相手を訊ねると「言えない」と口を噤んだ彼女に、言えないような相手と寝たのかと、裏切られたのだと思って衝動的に犯した。

 自分の子を孕めと、そんな言葉と共に。

 しかし、彼女が誰に何をされていたのかを知ってしまった今は、酷いことをしてしまったと思っている。

 奴らの家から押収した証拠写真に載っていたのは、彼女がかけられた拷問にほど近い陵辱の数々だった。否、行為のいくつかは拷問そのものだったといっていい。あのようなことをされて、痛みから逃れるために体がそれを快楽であると意識のすり替えを行うようになったのは、肉体の持つ防衛本能の一種だったのだろう。

 あのような酷い目にあってきた少女に、知らなかったとはいえ追い打ちを掛けるような真似をしてしまった。知らなかったなんて言い訳にもならない。悔やんでも悔やみきれない。

 早く会いたい。会って謝りたい。謝りたいと思うことすらエゴなのかもしれないが、そう思い、足早に彼女の家へと向かう。

 そうしてシスイの家へとイタチはたどり着いた。

 

(暗いな……)

 いつもシスイは自分が家に居るときは雨戸を全て開け放ち、清掃をして後、家の中に光と空気を取り入れる。そうやって家の状態を気に掛け、1人でも出来る限り家の状態を良く保とうとし、それを実行していたのがうちはシスイという少女だった。

 しかし、雨戸も閉め切り、換気も碌にしていないこの状態は、まるで長期任務に出る前の時のようだ。けれど、中からは確かにシスイらしき気配とチャクラ反応がある。

 だからイタチは玄関に向かってコンコンと規則正しく2度のノックをしたあと、中にいるだろう彼女に向かって呼びかけ、戸を開いた。

「シスイ、居るのだろう」

 そしてその言葉が合図だったかのように、ガタンと大きな物音が立てられ、悲鳴じみたか細い声と共に彼女の気配が奥に向かって遠離っていく。

「シスイ!?」

 そのかつてない彼女の反応に驚き、イタチもまた少女が逃げた先を目指して追いかける。

 シスイがイタチから逃げたのは、これが初めてだった。

 自分が彼女に酷いことをしてしまったという自覚はあった。それでも顔を見る前に逃げられるほどのことだとは思っていなかったということだろう。シスイが己を特別に見ていた自覚もあったから、それで高をくくっていた部分もあったのかもしれない。

 そんな自分を反省しつつも淀みなくイタチは狭い家の中を走り続ける。

 やがて彼女の反応は、家の裏口から少し離れた位置に建っていた納屋の奥で止まった。おそらく、それ以上の逃げる先を見つけることが叶わなかったのだろう。

 そして、薄暗い納屋の中へと、一歩、イタチは踏み込んだ。

 

「シスイ……」

 そこには会いたいと思っていた少女が確かに居た。

 ガタガタと肩を震わせ、両膝を抱え込んで座り込んでいて、顔は伏せてあるけれど、一瞬チラリと垣間見えた顔は酷く青白く、明らかに顔色が悪い。それに碌に眠れていないのか、目の下にはうっすらと隈が出来ている。

 それは、普段の明るく朗らかな彼女の姿を知っているからこそ、とても痛々しい姿だった。

 そんなシスイの姿を呆然と見下ろしながら、少年はその口を開いた。

「この前のことを……詫びようとそう、思った」

 どこか現実感の掴めない声で、しかしイタチは本日此処に訪れた用件をそうしてなんとか言葉に載せる。

 そんなイタチの反応に怯えるように、ビクリと一際大きく少女の肩が震えた。

 まるで傷つき、追い詰められた小動物のようだ。守りたいとすら思っていた少女のこの反応を引き出したのが自分であるということに、ガンとイタチの頭に金槌をぶつけられたかのような衝動が走る。

 けれど、言葉は止めず、その無表情にほど近い美貌に虚ろを僅かに宿しながら少年は言葉を続けた。

「悪かった。あいつらのことも、長く気付いてやれなくて、本当にすまない。守ってやるどころか気付いてすらやれなかったオレが、今更何を言っても罪滅ぼしにすらならないが……」

 シスイは何も答えない。

 彼女はただ肩を震わせるままに、顔をグリグリと自分の両膝に当てて奔放な黒髪をただイタチの前に晒すだけだ。

「シスイ……」

 地面に水滴が落ちる。

(泣いているのか……)

 それを見て、一体何をしているのだろうとイタチは自分に対し思う。

 アカデミー始まって以来の天才と呼ばれようと、愛する女の1人すら守れず、傷つけるだけの自分は確かに彼女が言っていたように本当は大人ぶっているだけのただの子供だったのかもしれない。いや、それよりもずっと質が悪い。イタチが過去に周囲から与えられてきた賞賛も嫉妬も全て意味がない。麒麟児と呼ばれようと、今の己はこんなに無力だ。救い出す言葉の1つさえかけてやれない。

 守ってやりたいと、そう思っていた女性(ひと)だった。シスイが自分よりずっと脆くて弱い人間であることなんて、8年前には既に知っていた。だからこそ、守ってやりたいと思っていたのに、なのにただ泣かせるだけなど……。

 いつか、虚飾の笑みではない本物の笑みだけで彼女が笑って暮らせるように、そうあってほしいと、それを成せるのが自分であればいいとそう思っていた。本当の意味ではあまり他人に甘えぬ人だったから、だからこそいつか自分が支えられるようになれたらと……彼女に頼り甘えられる存在になれたらと、彼女の心の拠り所が自分であればいいとそんな風に思っていた。

 なのに、今こうしてシスイを泣かせているのは他ならぬイタチ自身なのだ。

 肝心な時に守ってやることさえ出来なかった。少女を襲っていた悲劇にすら気付くことすら出来ず、その上で裏切られたとそんな勝手な自分の怒りを彼女へと押しつけた、その結果がこれなのだ。

 こんな顔を、こんな姿を、見たかったわけじゃないのに。

「すまない……シスイ……」

 そう幾度目になるかわからない謝罪の言葉を告げて、イタチは彼女の震える肩へとそっと手を伸ばした。

 途端、ビクリと今まで以上に大きく跳ねる肩と、一瞬垣間見えたシスイの恐怖に引き攣った顔。

 それはあることを少年に突きつけるには充分過ぎるほどの反応だった。

「……オレのことが、それほど嫌いになったか」

 そういって自嘲気味に笑う。

 ……嫌われたとしても無理もない。

 己は、彼女が性犯罪に3年も合っていたことすら気付かず、更に彼女を追い詰めるようなマネをした男なのだから、もし嫌われたのだとしても仕方ないと思えた。寧ろ、これで赦される資格こそないだろう。

 未練はある。しかし、もし彼女が自分の顔をもう見たくないと、2度と会いたくないとそういうのなら、出来る限り受け入れ、完全には無理でも出来るだけ希望を叶えようとそう思っていた。

 だが、そこで少女が告げた言葉は「嫌い」だとも、「2度と会いたくない」とも違う言葉だった。

「…………違う」

 震える声で、彼女はそう吐き出す。

「イタチのせいじゃない」

 悲痛な声でそう告げるシスイ。

 ならば、誰のせいだというつもりなのか。

「イタチが悪いんじゃない……」

 そう言ってか細く声は消えていった。

(オレのせいじゃないというのなら、あいつらのせいか?)

 シスイのその言葉に再び一瞬でイタチの奥でどす黒い炎が灯る。

 彼女をこんな風にしたあの3人には、殺しても殺したりないほどの憎しみが沸き上がる。

 立場上証拠も添えて逮捕といった形にもっていきはしたが、それでも叶うのならば今すぐにでも、彼女を3年に渡り散々に弄んできたあの3人をこの手で八つ裂きにしてしまいたい。

 でもイタチがそんなことを思う合間にも、ポロポロと彼女は大粒の涙を零しながら、クシャクシャの顔で泣いて、体を震わせながら吐き出すような声で、その心情を吐露した。

「ごめん……本当、ごめん。だけど……無理なんだ……」

 ……性犯罪被害にあった人間が好きな相手とセックスに及ぶとき、かつてされた行為がフラッシュバックしてセックス自体に拒否反応をおこし、相手に関係なく行為自体を拒否することは度々あるのだという。

 逆に、自分は「汚された」という意識が強いあまりに自暴自棄になって股を開いて回り、娼婦へと落ちるケースも存在していると。それは犯されたという出来事を「たいしたことではない」と自分に思い込ませることによって心の傷を軽減させようとする行為でもあり、前者も後者もどちらも共通しているのは心の傷から生まれた行動であるということだ。

 たとえ日常においてどれほど普通を擬態して、上手く取り繕っていたとしても、体の傷が治ったとしても、それで性犯罪を受け続けたという過去や心の傷が消えるわけではない。

 どちらにせよ、彼女達は自分が物のように犯されてしまったことから、「自分は穢れている」として自己を卑下する傾向をもつようになるようであった。まあ、強姦云々を抜いたとしても、シスイの場合は最初っから自己嫌悪が強いタイプだったように思うから、今まで発覚しなかったのもそれがあったのかもしれないが。でも、一連の事件の被害者となることで自分嫌いが加速している可能性が酷く高かったが。だが、性犯罪被害者とはそういうものである。

 故に、たとえ被害者の気持ち自身はわからなかったとしても、他の被害者女性を通じて、「性犯罪を受けた女性とはそういうものなのだ」というメカニズムを知識として「知っていた」イタチが、その「イタチは悪くない」と「だけど無理なんだ」という彼女の言葉と反応に、誤解を生じさせたのはある意味、当たり前のことだったのかもしれなかった。

「無理なんだよ……」

 

 それはなんてことのないすれ違いなのかもしれない。

 けれど、どうしようもないボタンの掛け違いだったのだ。

「シスイ……」

 こうして6つ年下の婚約者たる少年に怯えている筈のシスイは、それでも今確かにイタチを悪くない、けれど無理なのだとそう告げた。

 それを少年は、彼女が自分を受け入れられないのは、あいつらに弄ばれていたから、「自分は穢れている」と自己を卑下するあまりの行動と受け取ってしまった。

 それは全てが間違いではないが、正解というわけでもない。

 確かに自分を卑下する気持ちも、己を最低で汚らしいと蔑む気持ちがシスイ当人にあったのも、それもそれでイタチの読み通り当たってはいたのだ。

 ただ、ここでの問題はそれでもシスイのメンタルは肉体性別通りの女というわけではなかったことと、彼女にとって無理といった最大の理由がイタチによるシスイに対する異性への愛情があったということ。シスイにとって最も受け入れがたかったものとは、イタチに子供を望まれていたということと、恋愛感情を向けられていたということそのものだったということにあったのだ。

 その歯車の掛け違いに、シスイが性犯罪被害者であるというフィルターがあったからこそ、イタチは気付くことが出来なかった。

「シスイ……」

 元よりイタチは口が上手いほうではない。寧ろ下手なほうに分類されるだろう。言葉よりも行動で雄弁に自分の意志を示す。それがうちはイタチという少年だった。ある意味において、イタチは婚約者である少女以上に不器用であったのだ。

 

 怯えさせないようにと、そっとイタチは小動物のように怯え震えるシスイの体を抱き締める。

「……ヤダッ」

 少女は、涙で顔をクシャクシャにしながら、己を抱き締める少年の胸板を押す。けれど、それを前にしかし此処で引いたら意味がないと思ったのか、イタチは益々彼女を抱き締めていく一方であった。

 ……自己を否定し、自分を最下層と見なすトラウマを抱えた人間に対し、最も効果的な治療薬は愛情であると、以前イタチは書物で見たことがあった。

 自分は愛されているのだと、必要とされているのだと理解することにより、自分の心の傷と向き合っていけるようになるのだと……実際にそうして立ち直った性犯罪被害者もいると聞くし、今回イタチが助け出した一連の事件の被害者女性をフォローするための参考として、そうやって立ち直ったといわれている元被害者の女性に話を聞きに行ったりもしたのだから、その対処法については書物だけの知識というわけでもない。

 もしも当時は恋人であった夫が自分を1度でも見捨てていたら、私はきっと立ち直れなかったでしょう。そう、イタチに話を聞かせてくれた元レイプ被害者の女性は語った。

 その言葉が本当なら、ここで引くわけにはいかなかった。

 けれど、愛の言葉を囁くにはあまりにイタチはそういった方面に不器用であったのだ。彼の愛を伝える手段は自然と行動という形で現れる。

 心配しなくてもいいと、怯えなくても良いと、見捨てたりなどしないからと、口でいうよりも雄弁にイタチは心を込めてイタチは彼女の震える体を抱き締める。

「シスイ……」

 名や彼女の背を摩る手に精一杯の愛情を込めた。伝わればいいと願ったそれは確かに彼女に届いてはいたが、それがシスイの心を追い詰める要因の1つとは気付かず、強張った彼女の反応に、イタチは自分の想いが足りなかったのかと誤解を強める一方であった。

「ぅ……ぁあ、あ」

 自分の気持ちをもう言葉にすることすら碌に出来ず、シスイは呻くような声を漏らしながらただ、ますますボロボロと大粒の涙をこぼしながら泣き、首を横に振るばかりだった。

 そんなシスイの背を何度も擦りながら、イタチはそっと啄むような口づけを落とした。

 泣くなと、慰めるように仕掛けられた接吻は、以前の貪り奪うようなそれとは違って、ただどこまでも相手を労る色に満ちている。

 けれど、それがシスイにとっては辛くてたまらなかったのだ。

 こんな風にイタチに異性の愛情を向けられるくらいなら、まだ肉欲による強姦でもされたほうがマシだとさえ彼女は思っていたのだから。

 けれど、抵抗することすら忘れたかのように、シスイは強張ったまま動けやしなかった。

 いくつものどうして、という問いが彼女の脳裏を駆け巡る。

 答えなんてわかりきっている。イタチはシスイのことを女として愛しているのだろう。その結果がこれだ。だがそれを彼女は理解なんてしたくなかった。そうだ、シスイだってイタチのことは愛している。だけどそれはあくまで弟分として、疑似家族愛といえる愛情なのだ。イタチのように男女の色恋における愛とは到底ほど遠い。

 イタチは己のことを異性として好きなのだろう。

 そんなこと、前回の交わりで充分過ぎるくらい思い知らされている。どんなに手酷くイタチ自身が自分を扱ったつもりでいようと、本当に愛など欠片もない肉欲だけの交わりとはどうやったって同じになるわけがない。あんな、火傷しそうな目で全身全霊でオレを愛せと目で訴えていたのに、気付けないはずがないだろう。

 まして、イタチは自分に子を孕めとまで言ったのだ。シスイを自分のものだとまで口にして、シスイを抱いたのであろう見知らぬ誰かに嫉妬を向けていた。

 だが、一線を越えても尚、シスイにとってはイタチはやはり可愛い弟分のような存在でしかなかったのだ。それ以上なんて無理だ。男として愛せなど言われても愛せない。なにより、子供を産みたくなんてないし、自分が妊娠する未来など怖くて仕方ないだけだ。

 女としての幸せを享受する未来などどうやっても受け入れがたい。

 こうやって愛情を示される度に、彼女の心に強襲するのは、同性に愛を迫られているような生理的な嫌悪感と、誰よりも大事だった弟のような存在を前にそんなふうにしか思えない自分自身への失望ばかりだ。

(……お願いだから、もうやめてくれ。そんなことをするくらいなら見捨てるか殺してくれ)

 その願いは言葉になることもなく、碌に動けなくなった体は行動をエスカレートさせていくイタチを阻むこともなかった。

 やがて、イタチの『慰め』が肉体的な手段に出たのは、必然であったのか。

 それはシスイには知る由もない。

 

 

 * * *

 

 

「ぁ、あ……ぅあァっ」

 反射的に口を突いて出る意味もない言葉の羅列と共に、彼女は泣きじゃくり喘ぐ。

「シスイ」

 何度目になるのかわからぬ少女の名を少年は口にし、愛しいのだと言う代わりのような優しいキスを彼女の胸元へと落とした。最初は唇、次に頬、目元、額、髪に首筋。イタチによるキスの雨は降らすように絶え間なく続いた。

 密着した体からは少年の匂いと体温と、硬く存在感を示す一物の感触が直に伝わる。けれど、その動きはこの前のように性急に繋げるような欲が滲んだものとは違い、強いて言うのなら愛情を伝えるための手段としての交わりであり、前座であるといえた。

 自分の快楽など後回しな、相手を思いやるセックスなど、現世においては始めて受けたとすら言っていい。感じはしても、いつだって彼女が受けるセックスは暴力の延長線上のようなものだったのだから。

 けれどそんなことをされていること自体も、している相手がイタチであることすらも彼女にとっては辛い要因でしかなくて、優しくされればされるほどボロボロと益々涙を零して、シスイは泣きじゃくるばかりだった。

 こんな風に接されるくらいなら、慣らしもせずに突っ込まれたほうがまだマシだとさえ思った。

 無論、そんなことをシスイが思っているなどイタチは思いもしないだろう。

 ただ、彼は少しでも彼女に楽になってほしかっただけだ。

 あいつらへされたことのトラウマで自分を受け入れられないというのなら、それを上書きして書き換えてしまえばいいとそう思っただけだった。

 こういった手段に出たのも、これは怖い行為ではないと、そう伝える代わりのようだった。

 おそらくはそれがイタチなりの愛してるの伝えかただったのだろう。

 

「ん、ぁッ、ッ……ひ、ァあ」

 花弁に口を付け、丁寧に内部まで解すように、ピンク色をしたシスイのヴァギナへとイタチは舌を這わし、膣内へとそれを進入させる。そのぬめる舌の暖かさと、反射的に沸き上がってきた快楽の波に、ヒクヒクと少女はその体を震わせた。

「アッ、ひっ!? ぁ、あ」

 そのままチュウと愛液を啜り上げるそのイタチの唇と舌の動きに、ビクリと一際大きく体を揺らす。

「ひ、あ、ぅ、……あ、うぁ」

 それからピチャピチャと飴でも舐めるように彼女の紅く熟れたクリトリスを優しく舐め転がし、唾液で濡らした指を彼女の尻部に沿わし、ツプリと2本後ろの穴へと差し込んだ。それに反応し、彼女の菊門がキュウキュウとイタチの形の良い指を締め付ける。けれどそれに構わず少年の指は性感帯を探るようにアナル内を彷徨い動き、イタチの舌が再び割れ目の内側へと進入し、俗に言われるGスポットの辺りをグリッと刺激した。

「ぁ、ひぅ!」

 そのまま、ビクリと一際強く体を跳ねさせ、シスイは潮を吹いて絶頂へと至った。その液体がイタチの顔にかかる。それは尿と違ってサラサラとしていてほぼ無味無臭であった。それを指で拭い、イタチはイったばかりで敏感となっている豆粒大の彼女の陰核に口づけを落とした。

「ぁ、ああ、ぅああ」

 一連のイタチの行動を前に、ボロボロ溢れる涙はそのままに、息を荒げて、彼女はその体を小刻みに震わす。

「シスイ」

 そんな彼女の名を愛おしむような色を宿して呼び、イタチはシスイの体を抱き締め、その首筋に接吻を落とす。そして数回、愛液でぬめる彼女の内股に自分の一物を摺り合わせながら彼女のクリトリスを刺激すると、彼女の体を抱きかかえて、ゆっくりと椅子に降ろすような仕草でペニスをシスイの女陰の中へと挿入していった。そんな侵入者の気配を捕らえ、彼女の身体的サイズに似合いの狭い膣がキュウキュウとイタチ自身を若干痛いほどに締め付ける。

「……ヒッ、あ、あ」

 全部収まった後もすぐに動くことはなく、暫くはまるで自分の膝の上に彼女を抱きかかえたかのような姿勢を保ったまま、彼女の内部に自分の雄が馴染むまでイタチは待ち、それから前回見つけた彼女が特に感じていただろうポイントを優しく摩っていくような動きで、彼は律動を開始した。

「……だ。ャダ、ひ、ヤダ、イタチ」

 子供のように泣きじゃくりながら、シスイはそう弱々しく訴える。

 優しくなんてされたくなかった。感じたくなどなかった。イタチにこんな感情をむけられたくなどなかった。けれど、そんな少女の願いはどれも上手く言葉という形になることはない。だからこそ、イタチが益々その言葉の本意を誤解していくのだということに、自分のことだけでいっぱいいっぱいの彼女は気付いてはいなかった。

 まさにイタチは今、シスイのいう嫌の意味が、この行為で己が感じていることについての嫌だと思っているということについては見通して察してはいたが、それが彼女が見知らぬ男達に自分が汚されてしまっているが故にそんな風に感じる「資格」がないのに感じてしまったという、そんな自己嫌悪から来た嫌なのだと誤解をしていたのだから。

 イタチが嫌いだから嫌だと拒否しているのならともかく、彼女に愛していると伝える手段としてこの方法を選んだイタチが、そんな言葉でやめるわけがなかった。

「大丈夫だ」

 そういってイタチは泣きすぎて赤く晴れた彼女の目元にそっと舌を這わせ、それを拭い、そして彼女の唇へと優しく重ねるだけのキスをした。

 右手は彼女の胸に沿わせ、時折乳頭部分を人差し指の先端部分で刺激するように全体的にゆっくりと揉みしだきながら、何度も角度を変え口づけを重ねる。やがて、その淡く色づく唇の内側へと舌を挿入させ、彼女の怯える舌を撫でさするように絡め、少女の唾液をも啜った。クチュクチュと粘着質な水音が納屋の中に響く。

「……ぅ、ん、ん、ぁ、あ」

 それでもシスイの目から流れる涙は変わらない。それでもそうやって口づけの合間に漏れる彼女の艶めいた声だけでも、彼女の奥深くへと収まったイタチの若い雄を膨張させるには充分過ぎるくらいで、イタチは空いた右手でシスイのセミロングの黒髪を優しく撫で擦りながら、もう一方の手を彼女の下腹部に沿わした。

 そして、少女の赤く熟れたクリトリスを刺激し、彼女を絶頂させるのと同時に、その奥へと精の奔流を解き放った。

 ドクドクと全ての白濁液をイタチが彼女の内部で出し切ると、シスイはそれを見届けるよりも先に気を失っていた。そんな彼女の体をそっと抱き締め、シスイを風呂場まで連れて行くと、意識のない彼女の体を清める。

 タオルで顔を拭うと、そこには多少苦しげでもあどけない寝顔があるというのに、その目の下にうっすらついた隈と、泣き腫らして腫れた目元と頬と青白い顔色が痛々しかった。

 そんな彼女に寝着を着せ、少女の私室に運び、布団を広げてそこに横たえさせる。普段から手入れが行き届いていた彼女の布団は大抵日の匂いがしたものだが、どうやらここ数日布団を干していないらしく、ただ彼女の匂いだけが染みていた。

 そうして彼女の寝顔を見ながら、イタチは誓いとすらいえる言葉をポツリと呟いた。

「オレは……お前を見捨てたりはしない」

 きっと、もしもここでシスイの意識があったのなら、寧ろなんの冗談だ、見捨てろよ、と思ったかも知れない。だが、そんな風に行為の最中ずっと彼女がイタチに対して思っていたなど、イタチが知る由もない。

 だから続けて言った。

「シスイ、だからいつか……」

 また、笑って欲しいと、その言葉は声にならずかき消えた。

 そんな未来が2度と来ないことなど、知る由もなく、楽園はとうに失われているということに気付く由もなく、ただイタチはそんな夢の残照を求めていた。

 彼女の眠りはまだ醒めない。

 

 

 続く

 

 

 




 因みに余談になりますが、よく感想で、10年以上女として育ってきといて環境に適応が出来ないなんておかしくないかみたいな意見貰いますが、人の性自認ってのは後天的に身につく物じゃなくて先天的に身につく物ですよ。
 詳しくはデイヴィッド・ライマーのウィキペディアとか見たらわかりますが、生まれた時は男だったけど、去勢され、性転換手術を赤ん坊の頃に受けさせられ、女性ホルモンも定期的にとらされ、元男だということは隠され、女として14年に渡り育てられようが、彼は「自分を女だと思ったことは1度もなかった」といい、女として自身が扱われ、女性器形成手術まで受けさせられそうになったり双子の弟との疑似性交を強制させられたりして「頭が狂いそうになった」とはいうが、やはりそうまで女として育てられても自身が女とは思えず、14歳の時事実を両親から告げられてすぐに性転換手術を受けて男に戻り、女性と結婚までしたりしています。
 なので、精神が男でも女の体で10年以上育ったんなら中身も女になるってのは迷信です。そこで女になりきれるやつは多分元からそっちの気があっただけだと思います。
 この世に性同一性障害というものがあるのも、育てられた性別や実際の肉体性別とか関係なくそういう性自認といったものは先天的に出来るものが故ですね。
 というわけで、何が言いたいかといったら、しーたんが内面まで女の子化することはどちらにせよ無理だったというそれだけの話でした。まる。
 追記:因みに書き方が悪いのか、誤解している方が生じたみたいなので補足しておきますが、あくまでここで俺が語っている話は自分の認識する性別がどちらであるのかという「性自認」に関しての話のみで、どういった相手を恋愛対象とするのかという「性嗜好」とは別問題です。というのは、世の中には性同一性障害の同性愛者という人もいますし、性嗜好の問題である同性愛と自己認識性別の問題である性同一性障害は全くの別ものだからです。で、それを含めてのそういった性的なものは先天的なものといっているのであり、たとえ体が男で心が女であるにも関わらず、恋愛対象が女性であろうと、性自認と性嗜好は別物なので、それらは別に矛盾してはいませんから。
 まあ、しーたんの場合100%異性愛者なのに性同一性障害状態になっているので、こんなことになってるんですけどね。
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