楽園シリーズの更新も随分久しぶりですね。ぶっちゃけ今回も中々難産でした。
あ、そうそう最近ピクシブのアカウント取ったので、そっちのほうで楽園シリーズのエロ落書きとかもアップしてますんで、気が向いたらそちらもどうぞ。「シスイ憑依オリ主」タグで検索かけたらたどり着けるはず。つか、エロ落書きはまだ書き足りないので小説のワンシーンとか色々また描くかもしれません。そんな感じです。ではどうぞ。
彼女を初めて抱いたあの日から約3ヶ月の月日が流れた。
―――――あれから、シスイは笑わなくなった。
「それじゃあシスイちゃん、後の事はお願いね」
そういって、婦人会の集まりへと向かうミコトを前に、其の日の夕食を頼まれた息子の婚約者である少女は、いつも通りに見える笑顔を浮かべながら「はい、大丈夫です。任せて下さい」そういって送り出した。
それを見て安心したように、美しい笑顔を浮かべてうちはミコトは家を後とする。
うちはフガクの帰宅予定時間はもうすぐだ。サスケももうすぐアカデミーから帰ってくることだろう。
こうして人目がある場所ではシスイは笑う。
まるでいつものように、昔のように、明るく朗らかに。
そう、昔の自分を模倣しただけの、仮面の笑みで微笑む。
本心からのものではない、偽装の微笑み。けれど、そのあまりの完成度に回りは気付けない。気付く事が出来ない。あれが仮面である事を知っているのは己のみか。
そして自分と2人っきりになった途端、それさえ剥がれ、無くし、失われるのだ。
そのことにもう疾うに彼は、イタチは気付いていた。
「シスイ……」
「…………ぁ」
2人きりになった途端、ビクリと、怯えに震える細い肩。感情を無くしてしまったような、それでいて恐怖に引き攣ったような顔と、反応。其の自ら笑って懐き駆け寄り抱きついてきたかつてとは真逆そのものと言える様子に気付かずにいられるはずがない。
シスイは間違いなく、己に、うちはイタチに怯えていた。
「ご、ごめん。私、これから夕食の用意するから、イタチはそこで座って待っててくれないか」
けれど、そんな風にイタチに怯えているという自分自身に罪悪感を覚えているのか、偽りの笑みさえ忘れてしまった少女は、震える肩と泳ぐ目線でそう矢継ぎ早に言って、エプロンを身につけて台所へとそそくさと退散してしまった。
その少女の手を取る術を、天才と麒麟児とは言われながら、まだ弱冠12歳である少年は持ち合わせてはいない。
やがて、間もなくサスケとフガクが帰宅する。
すると、その直前までの空気を解凍させて、シスイはいつも通りを摸した明るい顔と声を浮かべて、帰宅した2人と話しかけた。其の顔と雰囲気はあまりに一瞬前とは違う。
「ただいまー。って、あれ? シスイさん来てたのか」
「お、サスケちゃんおかえりー。フガクさん、お邪魔してます」
「そうか、そういえばミコトは今日は婦人会の集まりと言ってたな」
「はい、それで私も今日の任務は昼迄でしたし、夕食を頼まれまして。あ、もうすぐ出来ますから座ってて下さい。今、おつまみ用意しますから」
「すまないな、シスイ君」
「いえいえ。お仕事お疲れ様です。警務部隊の部隊長も大変でしょう?」
そういって、手慣れた調子で微笑みすら浮かべながら、シスイはシンプルなエプロン姿のまま、労るようにフガクに酒を注ぎ、干し魚を和えて作った簡素なつまみをその前へと置いて台所に戻っていった。
その様子に不自然な姿は無い。
だからこそ、不自然だったとも言える。
誰も、気付かない。
その微笑みも、気遣いも、態度もあまりに昔と変わらなさすぎて、それがかつての自分の模倣でしかないということに、気付かない。
誰も。
(これほど、だったのか)
彼女の演技力は。
元々、正直者であると同時に酷く大嘘つきでもある少女ではあったが、しかしここまで演技力が高いなどイタチは知らなかった。それも、ここ数年あの真実を隠すために磨いたのではないかと思えば哀れで痛々しくさえある。
それでも、表面上彼女は昔と変わらず、ただ笑っていた。
何も辛い事などないかのような顔をして。明るい態度でニコニコと。仮面の笑みとは思えない態度で。
だからこそ、かつて彼女に起きた悲劇を、自分も含めて気付けなかったように。
彼女に起きたその変化に、うちは一族で気付いた者は未だイタチの他にいなかった。
* * *
やがて、小一時間も過ぎれば、夕食も終わりが近づいてきた。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした」
そういって、手を合わせ食後の挨拶をすませるサスケを前に、そう微笑みながら食後の茶を差し出し言葉を返すシスイ。
家長であるフガクはそんな彼女を様子を見ながらふむと頷くような仕草を見せると、時計へとチラリと視線を流し言う。
「イタチ、送って上げなさい」
それに顔色だけは変わらず、一瞬シスイのチャクラが動揺したように揺れる。けれど、そんな自分の動揺を押し隠すように彼女は笑った顔を浮かべて、あくまで遠慮がちな声でそれを言った。
「別にいいですよ。夕食の片付けもありますし」
「そこまで世話をかけるわけにはいかん」
確かにいずれイタチの嫁として迎え入れることになるのだろうが、あくまで今のシスイはイタチの婚約者であって、まだ自分の息子と結婚をしているわけではない。そこまでしてもらうわけにはいかないと、そう言外に滲ましてフガクは言う。
「でも……」
そういって少しだけ迷うような困ったような声と顔をするシスイを前に、フガクはそれを謙遜か遠慮と取ったのだろう。いつも通りのぶっきらぼうな仏頂面じみた顔の中に、そんな控えめな態度も好ましいといわんばかりの柔らかさを僅かばかり目尻に宿して、言った。
「シスイ君。人の好意には素直に甘えなさい」
それは同じうちは一族の大人としての言葉で、それにシスイは少し困ったような顔を浮かべながら、それでも「はい、そうですね。すみません。お言葉甘えさせていただきます」そう言ってペコリと頭を下げた。
それからイタチに振り向き、彼女は言う。
「それじゃあ、世話かけるけど、イタチ、いこっか」
そういって差し出された手と口調は3ヶ月前と何も変わらないのに……。
「……ああ」
その取った手は小刻みに震えていた。
「お邪魔しました」
そういって外に出た途端、シスイの顔からは表情が消え失せた。
まるでどうやって今まで微笑っていたのか忘れたかのように。
「…………あの……」
言葉に迷うように、彼女の唇が歯切れ悪く途切れる。
繋がれた手を外す事もせず、けれど怯えたように小刻みに振るわせながらシスイは俯き、空いている左手で自分の心臓の上の辺りをぎゅっと押さえた。
そんな彼女を見ながら、シスイの婚約者たる少年は問う。
「……オレのことが、恐いか」
「! ……そんな、こと」
けれど、そのイタチの言葉に反発したのは最初だけだった。
「そんな、ことは…………」
やがて震える語尾と共に言葉も失われる。眉根をギュウッと寄せた泣きそうな顔は酷く哀れで、直視しがたいものがあった。そんな彼女を怯えさせないようにそっと抱き寄せると、癖毛の幼顔をした少女は蚊の泣くような声でポツリと「ごめん……」そう呟いた。
「ごめんな、イタチ……」
そういって、体を震わせ、泣くような声で謝罪を告げる彼女は、酷く哀れで、やるせなく、また同時に酷く……愛おしかった。
「……ごめん」
(自分を責めるな)
そう言っても無駄なことはわかっている。
おそらくは、自分に対して示すあの怯えも震えにしても、シスイの意図してのものではないのだろう。そしておそらくは自分に対してそんな反応をしてしまう自分自身に対しても彼女は強く傷ついている。ならば、どうして責められようか。
同時に刑の執行を待つばかりの、自分が捕らえるように裏で手を回したあの三人組の犯罪者に強い怒りも湧く。
……シスイは元々自己を卑下するきらいがあり、自覚はなかったようだが自分嫌いでもあった。本当は任務で人の命を奪う事さえ自己に限り許せないとすら思っていた節のある、そんな危うい人であったのだ。
歪で一生懸命で、誰よりも愚かで、なのにそんな傷を隠して笑って生きている人だった。誰より生きている人だったのだ。
そんな彼女を癒したいのだと、守りたいのだと、そう確かに思ったのに。
なのにそれはイタチの知らないところで疾うに砂上の城となっていたのだ。
あんなどこの誰とも知らぬ輩に3年も体を好きに弄ばれていたなど、どういう悪夢だ。
元より自己評価の低い
汚された、そう思考してもおかしくはない。
それに元々シスイはあれでいて、図太さとは無縁のくせに潔いほどに行動力だけは有り余っている人でもあった。奴らが彼女を襲い悲劇の幕が開けたの時期は丁度うちは一族内でクーデター論が強く息を吹き出していた頃だ。そしてクーデター派の人間を前に真っ向からそれを説いて回っていたのがシスイだ。
もしも、自分が此処でこのタイミングで死ねばうちは一族がどうなるか、そんな思考が働いて彼女に自死という道を閉ざしたのだろうが、それでもうちはクーデター事件のことがなければ、最初に被害を受けた時点で自殺していた可能性もないとは言い切れない、それがうちはシスイという少女だった。
そういう潔癖性がシスイという少女にはあったのだ。
真実を知れば責める気にはなれない。寧ろ、彼女がそんな目にあっているということに気付けなかった自分こそ責めたいくらいなのだ。
だから、もう苦しまないで欲しい。そんな風に震えるな。
そういう代わりのように、イタチはそっとシスイの細い顎を取り、労るように触れるだけのキスをした。
「……」
ビクリと少女の肩が跳ねる。そんな彼女を優しく包み込むように力を込めずに抱き締めながら、その頬と髪にも口づけを落とした。
(たとえ、お前の過去がどうであろうと、オレはお前を愛している)
そう伝える代わりのように。
この愛情がいつか、伝わればいい。
そうして、いつかまた微笑ってほしい。
今は無理でも、いつか……本当の本心からの微笑みで。
シスイの生家には、今はもうシスイの他に住んでいる人間はいない。
イタチの家ほどの大きさでなくとも、それでも1人で住むには大きなその家にある部屋の1つで、まだ年若い……一般的に見て思春期に入ったばかりといえる年頃の、しかし年齢に似合わぬ表情と落ち着きを湛えた少年と、それより6つばかり年上の少女が睦み合っていた。
「ふ、ぁ、ア、ひ、……んッ」
やや小作りな体つきとは裏腹に大きく熟れたシスイの胸に舌を這わしながら、イタチの空いた右手がもう1つの胸をヤワヤワと包み込み、左手が彼女の開発済みである菊門を弄る。
「ひゃ、う! ぁ、あ、ッァ」
チュウと一際大きく音を立てながら乳房を吸い上げ、アナルを内部入り口のあたりをなぞるように掻き回すと、ビクンビクンと体を揺らし、鋭敏なまでの反応を返す様が愛おしい。
「シスイ……」
痛みを与えないように、あくまでも優しく胸の膨らみを右手で包み込みながら、唇の位置を徐々にずらし、臍の辺りを舌でグリグリと刺激する。
「ひ、あっぅ、あ、ヤダッ」
上擦った声を上げ、シスイは弱々しくイヤイヤをしながら、少年の真っ直ぐな黒髪に指を絡ませるが、イタチを傷つけていることを怖れているのか、その震える手が与える力はどこまでも弱々しく、抵抗とさえ呼べないものだった。それに、どれだけ怯え震えていようと、やはり彼女にとって未だに自分は大事な存在であることを確信する。
だからこそ、大丈夫だという代わりのように、彼がその行為を止める事はなかった。
腹に口づけ、腰に口づけ、太ももにも口づけを落として、イタチは彼女の濡れそぼる秘部へと更に舌を這わす。
「あぅッ、ヤッ、ん……く、ぅ、ひ、あぁッ!」
敏感な陰核を丁寧に舐め愛撫し、後ろのシスイが最も感じているらしいポイントをグリと指で弄りながら、愛液滴る女陰へと舌を差し込めば、その衝動を前に彼女は達した。ビクンビクンと一際大きく体を痙攣させながら、力が抜けたようにズルリとシスイはイタチへと体を預ける。
そんな風に息を乱しながら、それでもどこか悲痛な表情を浮かべつつ全身を火照らせる女の体をそっと抱き締めて、イタチは彼女に口づけた。
最初は啄むように、段々と深く。
「はっ、ぁ……ン、ぅん、あ、ふ、ぁ、あ」
何度も、何度も角度を変えて、歯茎をなぞり、舌を絡ませ、唾液を交換するようにしながら、それでも荒々しくならないくらいに力は押さえて、愛を伝えるための行為を繰り返した。
「ふ、は……ぁ、ふ、ァ、ぁ」
「……シスイ」
愛していると、そう言葉にするよりも雄弁に伝えるような行為は、確かにその意味をシスイに伝えていたし、それは伝わっていたけれど、だからこそあまりの辛さにシスイは思わずボロリと涙を零す。
でもその涙の真意を彼女が少年へと告げる事も伝える気もなく、だからこそイタチが抱いているある誤解も解ける事もまたなかった。
イタチは彼女の涙を自分の舌で拭うと、その未だボロボロと涙を流し続けている瞼の上にも口づけた。
そしてそれから震える彼女の体を抱き寄せ、既に勃起している自分の息子を愛液で濡れた入り口に押し当て、再び彼女の唇に自分の唇を重ね合わせるのとタイミングを合わせた上で、押し挿入れた。
「は、ふむぅ……ン、ぁ、ふ、ぁ、ア」
クチュクチュと口づけを合わせる度に水音が部屋に響く。
キスを続けながら、イタチは無理に行為を推し進めるような真似はせず、口づけに集中させながら、一方でシスイの
やがて、銀の糸を引かせるようにして、互いの唇が離れる。ヌラヌラと光る唾液が、少し虚ろなシスイの黒い瞳や赤い唇と合わさって酷く淫靡で、一瞬男の欲が暴走しそうな感覚が背筋を走ったが、イタチはそれを意志の力で押し込めて、上手く力が入らないらしい彼女の体を抱き締めるようにその背に腕を回した。
元より自分はあの男達と同じ事を彼女にしたいわけではないのだ。力でねじ伏せ犯すような愚行など繰り返すつもりはない。
イタチはそれからシスイの髪に口づけると、彼女を傷つけないようにそっと優しく布団の上に横たえ、下は抜き差しを繰り返しながら、自分より年上の少女の体中に真綿で包み込むような口づけと愛撫を繰り返していった。
まるで、怖がる事はないとそう言うかのように。
いつかの行為を上書きするように。
あの男達との過去の記憶が少しでも薄れるように、とそう祈るかのように。
そんなイタチの態度を目にする度にボロリボロリと少女の目からは益々涙がこぼれ落ちる。
イタチの態度は、想いは、熱く、重い。
どうして自分などに執着するんだ、お前ならもっと良い女がいくらでも見つかるだろうと、けれどその言葉がイタチを傷つける刃になると知っているからこそ、シスイは言う事が出来ない。
何故なら、イタチが好きな「女」とは他ならぬ自分のことなのだ。
そのことを既に散々思い知らされてきている。
そんな、イタチにとってはそんな位置づけにいる「女」がどうして言えようか、そんな無責任なことを。
決して自分はイタチに恋愛感情を持ってはいない。寧ろどう足掻いてもそんな感情は抱けない。
それでもシスイにとって、イタチはこの世界で最も大切な相手だったのだ。あの男達に好き勝手玩具にされ、慰み者とされていたとき、シスイの精神を支えていた存在は、明日への希望と為っていたのは、間違いなく弟分のように思っていたこの少年なのに、どうやって拒絶すれば良かったのだ。
抵抗する事さえ恐くて仕方ない、この、過去に受けた行為をなぞるように何も考えずただ反射的に喘ぎ感じ反応するだけの、笑いすらしない人形のような自分に、どうしてイタチはよりにもよって執着などしてしまったんだ。
やめてくれ。
そんな言葉は声にならない。
想いは伝わらない。
すれ違う。どこまでも食い違い、終わりのない絶望だけがじわじわと胸を締め付ける。
愛おしまれるくらいならば、捨てられた方がいいのだと、そんな壊れた天秤と破滅願望を、イタチが知り得る筈がない。
この肉体が女でも、この心はどこまでいっても女になりきれず、またそうなりたくなどないのだと、そんなことを知られるわけがない。当然だ、話すつもりはないのだから。
それでも、それでも、どうか今すぐにでもうち捨てて欲しい。
お願いだから見限って欲しい。
「アアッ、ぅ、あ、ひゃ、う、……あ、ァ」
そう思う間にも現実の時は止まることなく動き続ける。
少年の雄は胎内で硬度と熱さを増し、それが子宮口を叩く度に、意味のない喘ぎの列が外へと流れ出る。
イタチの口づけも止まらず、プクリと膨らんだ乳房を舌と歯で舐るように捏ねくり回し、イタチの指が膣に差し入れたペニスの動きに合わせるように縦横無尽に敏感なアナルの中を這い回る。
「ひん、あ、……は、ぁア」
2つの穴に同時に与えられる刺激に、チカチカと脳が白く点滅する。それに、自分がイきそうになっているのだと、シスイは悟り、僅かに口元に自嘲の笑みを零す。
(弟分だと、大切だと思っている相手にこれか……)
なんて……淫乱。穢らわしく、醜い。まるで汚物だ。
(オレはお前に相応しくなんてないのに……)
なのに、どうして……。
そんな思考は長く保たなかった。
「……ッ、シスイ」
「ひっ!? ひゃ、ぁああアアァッアアァアーーーッ!」
熱に霞んだイタチの声がシスイの名を呼んだ瞬間、ヴァギナの最奥へと吐き出された若い雄の放流を前に、シスイは一際大きく体をビクンビクンと揺らしながら、思考を真っ白に染めた。
一瞬、意識すら飛んでいたらしく、気がつくのに数秒を要した。
「あ……あ……」
そういって漏らされる擦れがちな艶声と、紅潮した頬に荒い息だけで、未だ10代前半の年若いイタチの雄を再充填させるには充分であったらしい。
イタチはシスイの体を優しく抱き寄せ、口づけを落とすと、出来るだけ乱暴にならないように気をつけながら、律動を再開し、そして……その後交わりは3時間ほど続いた。
* * *
何度目かの射精を果たしたイタチは、彼女の胎内に収まったままであったペニスを引き抜き、そのことを少々名残惜しく思いながらも、シスイの体を抱き寄せつつ、彼女ごと布団へと横たえた。
……自分の次の任務は本日の夜明け前からだ。それを思えばまだ何時間か時間はある。シスイは確か朝の9時からだったはずだから彼女はもっと余裕があるだろう。そんなことを思いながらそっと彼女の腹の上をなぞるように整ったその長い指をイタチは伸ばした。
子供が出来てくれればいいと、そう少年は思う。
自分の子供を孕んで欲しい。
ずっと、どうすればまた笑ってくれるようになるのか、考えていた。
どうすれば彼女の傷を癒せるのか。
そもそも、本当に癒せるのかもわからなかったけど。
それでも思ったのだ。
昔からシスイは子供が好きだった。
そもそも、シスイが己を好き懐いた切っ掛け自体がシスイの子供好きから端を発していたのだ。
子供好きで、家庭的。
加えて、シスイは自分が守られる事を想定してではなく、誰か守りたい相手がいるからこそ実力を発揮するタイプの忍びであり、自己評価の低いシスイにとっては守られる事より守ることのほうが望みに沿うものであるのだ。
それが子供相手なら尚更に、全力をもって守りに向かうだろう。
そういう対象がいるということは、希望や生きる目標にも総じて繋がる。
他者の子供に対してさえあれだけ惜しみない慈しみを向けるのだ。ならば、自分の子供相手ならばそれ以上に大切にするのではないだろうか。
だから、子供が出来ればいいと思った。
子供が出来れば、今は無理でも、いつかのような笑顔をまた取り戻してくれるのではないかと。
いつか、其の心は癒されるのではないか、と。
自分と本当の意味で家族となれるのではないかと。
家族を与えてやることが出来るのではないかと。
いつか、また、微笑ってほしい。
偽りの笑みではなく、春の木漏れ日のような笑みで。
いつか……。
「なあ、イタチ」
そんな風に思考する少年を前に、彼女はポツリとどこか感情の抜け落ちた声で彼に話しかけた。
そのシスイの言葉を前に、何故か酷く嫌な予感を覚えつつも、イタチは顔を上げる。
しかしそんな少年の様子など見ていないように、月光の差し込む障子窓を見上げながら、シスイはポツリとそれを言った。
「いっそのこと、私のことは道具として扱ってくれないか……?」
その言葉に、一瞬自分が何を言われたのかイタチはわからなかった。
「シスイ……お前は、何を言ってる」
戸惑うように眉を顰めながら、イタチは確認するようにシスイの頬を撫でる。
そんな少年を前に、彼女は苦しげにキュッと眉を寄せながら自己嫌悪したような顔と声でこう返した。
「ごめん、馬鹿なこと言った……ごめん」
けれど、だからこそ、イタチは少女の言葉に本気を感じてしまった。
(お前は……)
「……ごめん」
そう言ってシスイは頭を下げ続ける。その姿はまるで壊れたマリオネットのようで……。
(もう、手遅れなのか?)
確信の言葉は声にならない。
ただ壊れたようにごめんを繰り返しながら謝る少女を抱き締める事しかイタチには出来なかった。
* * *
あれから何ヶ月もの月日が流れた。
シスイが自分の事を「道具として扱って欲しい」と言い出したのはあの日の晩だけであったが、けれどそれで安心出来るほどイタチは脳天気になど出来ていない。
寧ろ、言わないからこそ今の状態のほうがまずいのだろうとも思う。
それに、シスイは自分が抱いたあの夜から段々体重を減らしていたようではあるが、最近は特に体調が思わしくなく、見かねた母のミコトと共に今日は検診に行っている。
(どうして……)
そんなに自己を疎かに出来るのか。
自分とて必要ならば自分を犠牲にする事を厭うことはない。
しかし、それは忍びとしての責務であり、任務であれば必要な犠牲が出るときもあるだろうという考えからだ。自分が犠牲になることで皆が助かるのならば自己を犠牲にするもやぶさかではない。そういう理由であればイタチも自分を斬り捨てる事など容易だ。それが影たる忍びというものである。
だが、シスイのアレはまるでそれらとは一線を画している種類のものなのだ。
必要な犠牲と、破滅願望は全くの別物なのである。必要な犠牲は払うべきだが、必要でない犠牲は疎うべきものだろう。
けれど、そもそも何故シスイが破滅などしなければならないのか。
一体それほどの何を彼女がしたというのか。
イタチにはわからない。
支えたいと、守りたいというこの想いは届かないのか。
もう一度、微笑ってほしいと、それすら叶わないのか。
お前を癒してやりたいと、そう思っているのに。
そう思い、けれど全く果たせていない自分と現実を前に、思わずイタチは苦笑する。
……前途は多難だ。おそらく自分の願いはとても難しいのだろう。
それでも諦めたくはなかった。
そう思いながら帰路につく。あとはこの巻物を三代目火影である猿飛ヒルゼンに届ければ今日の任務は終了だ。
「ただいま、戻りました」
そう声をかけ、三代目の前に膝をつき巻物を差し出す。
「おお、イタチ。丁度いいところに帰ってきたの。緊急の用事とかで丁度今うちは警務部隊の人間を待たせて居る」
「うちはから?」
「今日の任務はこれで終わりじゃろ。どれ、行ってよいぞ」
「は、失礼します」
好々爺のような顔を浮かべて煙管を吹かせる三代目を前に、イタチはもう一度黙礼をして火影の執務室を後にした。
そして外に出てすぐその見慣れたうちは一族の男はいた。
イタチより8歳ほど年上で、その早熟すぎる内面から一族の人間にも嫌われがちなイタチに対してもわりと中立的な態度を取っていた、どこか野暮ったい雰囲気の一族の男は、出てきたイタチに気付いた途端慌ただしく駆け寄ってきて、彼の名を呼んだ。
「イタチっ」
「何事ですか?」
それに年齢が逆転しているかのように、あくまでも落ち着いた態度で用件を伺うイタチに対し、男はそれにすら気付いていないように焦る声で言葉を押し出した。
「大変なんだ、シスイちゃんが」
「シスイが?」
「シスイちゃんが妊娠したッ」
「!」
その言葉を聞いた瞬間、イタチの姿はその場からかき消えていた。
続く