今回の話は思ったより実際書いてみると短い話しになりました。いつもは気付いたらどんどん長くなっていくのでこんなに短くなるとは吃驚。なので今回はゲストにカカシ先生に友情出演してもらいましたぜ、いえい。
とはいえ、何はともあれ楽園シリーズ本編は次回で完結です。
楽園シリーズとしーたんらしい結末というか、かなり精神的に欝いというか、エグい展開が待っていると思いますがよろしく。
オロッチーも多分活躍するお! ではでは。
―――――愛しいと、そう思う事さえ罪だったのなら、一体何が正しかったのか。
「あ……は、ぁ、ん……あっ」
―――――望む事さえ無意味だというのなら、どうすればいいのか。
「ふ……ぅ、んんっ、あ、っは、ひ」
―――――こうしてお前はオレの腕の中にいるのに、どうしてこうも遠い。
「ああああーーーっ!」
―――――そうして今日も、無意味な情事ばかりを繰り返す。
自分の腕の中で、力なくもたれ掛かる人の髪を梳きながら、イタチはぼんやりとこれまでのことを考える。
シスイと結婚した日から、今日で丁度3年となる。
その間に変わったことは多かった。
自分は16歳になり、シスイは22歳となった。己の背丈は伸び、体つきも昔よりかは男らしくなったといえるだろう。
まあ、一般的に見てイタチはそれでも華奢な体格ではあったが、その辺は骨格的な問題でもあるわけであり、男にしては細身で線の細いシルエットといえど、肉の質や付き方は女のそれと同じわけではない。
伸びた手足や、各パーツ、やや小柄な体格をしている彼女より頭1つ分近く高い背丈を考えても、少なくとももう肉体面でいうなら大人との差異もほぼなくなってきたといえるだろう。
けれど、いくら肉体面や年齢面で大人に近づこうと、それでも欲しいものは早く大人になることを望んでいた子供の時にこそ手に入れていた、今は遠いものというのは皮肉なものだ。
シスイは、あの日、自分が彼女を抱いた其の日から自分に一切微笑いかけなくなった。
……あの無邪気な笑みはもう何処にもない。
昏く光を宿さない両目に、長く伸びた黒髪、痩せた体。儚さや病的な美しさはあっても、かつての快活さや健康的なかわいらしさ、見ていてこっちが飽きなかったあのコロコロ変わる表情といったものはもう彼女のどこにもない。
それでも、イタチは仕方ないと思っていたのだ。
シスイがこうなってしまったことについては自分にも責任はあったし、心の傷は簡単に癒えるものではないのだから、今は笑えなくても、それでもいつか、昔のようにまた笑えるようになってくれるのなら、その時彼女の隣にいるのが自分であるのならばそれでいいと。
また、いつか本心から笑えるようになってくれたなら、時間がかかってもいいのだと。
だから、その傷を癒せたなら。
少しでも昔のように、微笑ってくれたなら。
それでいいのだと、そう思っていた。あの、笑顔が好きだったから。
なのに。
一体、どこから間違ってしまったのか。
もしくは全てが間違っていたのか。
いつか、昔のように戻ってくれたなら、それだけを願っていたのに。
自分の腕の中で、浅く呼吸をする
拒むように閉じられた瞳。力なく投げ出された白い肢体。まるでなにもかもがどうでもいいのだと語るような、生への意欲に希薄な気配と、縋る事のない小さな手。
まるで昔の彼女と真逆の姿。
見ていて痛ましいほどに今のシスイは全てを拒んでいる。
其の体を抱き締め、こうして過ごす夜を何十回繰り返したのだろう。
それに、イタチはこの日、思わずその言葉を呟いていた。
「何故だ……どうして、笑ってくれない」
ボロリと言うはずのなかった弱音がこぼれ落ちる。
その言葉にシスイが反応を返すことはなかった。
けれど、そんな昔には有り得なかった彼女の反応こそがイタチを傷つけた。
昔からいつだって彼女はイタチを優先して、全力で大切だと大好きだとそう告げていた。それは異性としての好きとは残念ながら違うことを彼は知っていたけど、それでもシスイにとって自分が1番大切な相手であったことを確信させるには充分過ぎるくらい、彼女は愛情にストレートな人だった。
そして「イタチが大切」だというシスイの行動原理はおそらくは今でも変わっているわけではないのだ。
それは、今でもイタチに対して情事の最中爪を立てないように気をつけていたり、イタチを傷つける行為を恐れているような在り方を見ればわかる。
だが、イタチが望んだのはそんな風に恐れながら触れられ、自分は苦しみながら己を傷つけまいと、こんなになってまでイタチを守ろうと無意識に行動するそんなシスイの姿ではなかったのだ。
イタチはただ、守りたかっただけだ。
シスイが自分より脆いと弱いと知っていたからこそ守りたいと、支えになりたいと、伴侶として共に歩んでいきたいとそう願ったのだ。
その笑顔を隣で見ていられたのなら其れで良かった。
そうして共に歩めたのなら、それだけで良かったのだ。
別に全てを欲していたわけでもなかった。
そもそもシスイも、イタチもどちらも木の葉の忍びなのだ。任務のためにその命散らせる時もあろうし、忍びとしてのシスイについてはある程度の信頼も持っていた。お互い話せないことがあったとしても、そんなもの職業柄当たり前というものだ。そもそも守秘義務のある内容についてまでベラベラ喋るような人間ならイタチは信頼も信用もしなかったし、こうも惹かれることもなかった。
だから自分の知らぬ面があったとしてもそれを疎う気もなく、彼女の全てを管理しようなんて気もなかった。故に其の過去の全てを詮索するような真似も、あの日まではしてこなかった。
それが信頼の証だと思っていた。
それに、イタチがしたいのは束縛などではなかった。
ただほんの少しだけ肩を寄せ合った分だけ、其の負担をわかち合えたなら。
可愛がられるだけの弟のような存在などではなく、対等な立場で彼女の隣に立ち、その隣で悲しみも、苦しみも、喜びも、その人生を分け合えたなら。
この強がりで不器用で誰よりも愚かな人に、1人ではないと知ってくれたなら充分だったのだ。
あの日も、本当に1番望んでいたのは、自分が彼女に守られるだけの存在などではもうないのだと、自分はもう一人前の男であることも含め知って欲しかっただけだ。その筈だった。
一方的に守られ、可愛がられるだけの子供など御免だと、その主張自体が子供そのものの行動と言えたことにすら気付かず、其の結果最も大切なものを失った。
あの笑顔こそを、守りたいとそう思ったはずなのに。
なのに、体はこうして隣にいるのに、どうして心はこうも遠い。
……また、微笑ってほしい。
そんな願いは、過去にしかないというのだろうか。
あの笑顔は既にいつかの残照でしかないというのか。
自分の望みはそれほどに罪深く、呪われたものだったというのか。
大切な人を支えたいと、守りたいという願いは、苦しみを分かち合いたいのだという想いは全部意味のないものだったというのか。
(何故オレはお前を苦しめる事しか出来ない)
イタチは出来る限りのことをしてきたつもりだった。
だけど、それでもやはりシスイが再び笑うことはなかった。
どうして、とイタチの頭脳をもってしても教えて欲しいくらいだった。
自分で出来ることがあるというのなら、叶えられる範囲であるならばなんでも叶えるのに。苦しいというのならそれをぶつけてくれればいい。嘆いて、叫んで、全ての理不尽や怒りを自分にぶつけてくれたって、イタチはかまいやしなかったのだ。それぐらいでどうにかなるほど弱くはないのだから、好きな人のそれぐらい受け止めてみせる。苦しいなら、吐き出せばいい。
自分を責めるくらいならイタチを責めれば良かったのだ。彼女は元々そんなに強いわけでもないのだから。そうでなければあんなふうに苦しんで等いないはずだろう。
少なくとも、自分で自分を傷つけて、己で己の心を殺すよりもそのほうがずっといい。そのほうが人間の心理状態としてはずっと健全だ。そのほうが傷の治りも早くなろう。自分を責めるよりは他者に責任転嫁をするのはとても簡単なことなのだ。少なくとも……大抵の人間にとっては。
そうしてくれて、かまわなかったのに。
なのにシスイは何も言わない。何も求めない。そもそもイタチに期待などしないし、頼ることもない。救いや助けを求めることもない。
彼女は何も求めていない。
心を開くつもりもない。
そのことが彼をなによりも打ちのめし、遂にイタチに弱音を吐かせた。
シスイがイタチに笑いかけなくなった日からもう4年近い。
イタチがこれまで見続けてきたのは怯えや諦め、泣き顔といった負の感情に類する表情ばかりだ。
そんな中、イタチの弱音を聞いたからか、それまでの無表情をゆらりと揺るがせて、彼女は抱き締められたままそんな少年の顔を見上げた。
(泣かないでくれ)
まるでそういうように、きゅっと眉根を寄せて、ガラスの瞳に痛みを寄せながらシスイはイタチを見上げる。
それは見ているほうが痛そうな顔で、イタチが苦しんでいることが辛くて仕方ないというかのようなそんな表情で、なのにかつてと違って伸ばされることのない手も相俟って、一層に胸が苦しい。
こんなになっても、こんなになってさえ彼女にとってはイタチが1番大事なのだ。
そんなの見ているだけでもイタチはわかる。知っている。誰よりも近くでこの人のことを見てきたのだ。わからないはずがない。
だけど、こんな形で思い知らされたくなどなかった。
シスイにとって、未だに自分は大切な弟分でしかなく、そしてそういう意味で最愛の相手だなどと。
未だ彼女にとって自分は守りたいだけの相手であって、心を預ける相手でなどないと。
気付いてしまう自分の洞察力が、この日ばかりは恨めしかった。
イタチとシスイの「大切」と「愛してる」が噛み合うことはない。
彼女がその仕草と表情でイタチへの思いを伝えるほど、そう思い知らされるだけだった。
* * *
「なぁ、イタチ。お前さァ、嫁さんとはどうなってんの?」
18の誕生日を2週間後に控えた其の日の任務帰り、珍しい人にそう呼びかけられ、イタチは隣に立っているその人のほうへとゆっくりと顔を向けた。
そこには銀髪を逆立て、口元を隠した、木の葉でも特に有名人だろう忍びが立っていた。
男の名ははたけカカシ。伝説の三忍以上の実力を持っていたとされるはたけサクモの息子であり、本人も「コピー忍者カカシ」の異名を取り、他国のビンゴブックにもその名を連ねる有名人である。
「なんですか、カカシさん。いきなり」
イタチは無表情気な顔の中、口元だけ僅かに困ったように笑ませながら真意を問う。
イタチとカカシは別に仲がいいというわけではない。ただ、イタチは暗部の隊長であり、この目の前の上忍は元暗部であったため、多少の顔見知りであり、知らぬ仲ではないというくらいの縁だ。
そのため、カカシが自分などに話しかけてきたことに内心では少々イタチは驚いていた。
「いやね? 色々オレも噂を聞いているわけだけどさ、なんか大変みたいじゃない? 彼女。アスマが愚痴ってたよ。昔はあんなじゃなかったのに、って。オレは彼女のことよく知らないけど、アイツ彼女のこと妹分みたいに思ってたみたいでね、随分気にかけてるみたい」
「アスマさんですか……」
つまり、今回の件は友人を気に掛けての行動であるらしい。
確かに、アスマとシスイは前からそれなりに仲が良いようではあった……というより数度の任務を通じてシスイが兄貴分宜しくアスマに懐いて先輩と慕っていたらしく、アスマもまたそんな後輩を可愛く思っていたらしくなにかと世話を焼いてくれていたらしい。というのは、昔彼女がああなる前に共に茶菓子でも食べながらの世間話でシスイ自身がイタチに暴露していたことだ。
つまり自分ほどでなくてもアスマも近くで昔の彼女を知っていた人間の1人であったわけであり、そうであればこそ今のシスイの姿は衝撃も高かったことだろうと、イタチはどこか他人事のように思う。
……もしかしたら、精神的に疲れていたのかも知れない。
「それにあれから随分経つのに彼女未だにああでしょ? イタチは何やってんだって煩くてさ、それで実際のとこ聞いてみようと思ったわけ。で、どうなの?」
そのカカシの言葉に全く木の葉の忍びはお人好しだ、と少年は思う。たかが後輩の1人のためにそう思いやれるアスマも、その友人を思いやって此処に来ているこの目の前の男も。
けれどイタチは言った事はないし、言うつもりは欠片もないが、この人のこういうところをわりと好ましく思っていたし、内心敬意も覚えてはいた。なので、彼は一拍だけ置いてから自嘲気味の感情を瞳に宿して、小さな声でポツリポツリと答えた。
「全く面目次第もありませんよ……あれから5年近く経つというのに、オレは未だに何もしてやれない」
その言葉に含まれた色に気付いたからだろうか、カカシはいつも通りの軽い口調を装いながら、それでもそこか慎重さを宿して訊ねる。
「そんなに深刻?」
「ええ……元々あいつは他者に責任転嫁は出来ない質ですから」
その言葉に少しだけ考えるような色を見せて、それからカカシは言った。
「意外。お前がそんなに素直に内情を明かすなんて。イタチ、お前ってもっとつかみ所なくてクールなやつだと思ってたよ」
「意外ですか」
「まあ、いっちゃなんだけど安心した。お前さんも人間だったんだなってね」
「オレはあなたが思っているほど完璧じゃありませんよ、カカシさん。惚れた女1人守ってやることも出来ない無力な男だ」
そういってイタチは遠くを見つめる。その憂いを帯びた横顔はとてもじゃないが17歳の少年とは思えぬ憂いがあり、カカシはどうにもやりにくいねと思いながらボリと側頭部を掻いた。
(顔立ちだけならサスケとよく似ているんだけどねぇ……)
そう思ってカカシが思い出すのは、ついこの間担当下忍として己の下についたばかりの少年についてだ。
アカデミーの成績では同期主席で卒業し、負けん気が強く、それでもこちらの言ったことを破ってまでも自分の弁当をナルトにわけてやるなど、あまのじゃくで不器用ながらも優しさも秘めた少年だった。
なにもカカシが今回それほど親しくもないイタチと接触して話をしようと思ったのは、アスマの件だけではない。サスケもまたうちはシスイというイタチの妻について気にしていたからだ。
自己紹介の時のサスケの言動からして、うちはシスイという義姉のことについてなにか気に病んでいることは察していた。が、自分はうちはシスイのことについて詳しいことは何も知らない。
得意ジャンルやプレイスタイルが被っているところがあるせいもあるのか、任務で組まされたこともない。せいぜいが「瞬身」の2つ名を持つくノ一であり、能力的にサポートと暗殺奇襲に特化していることや、最近は医療忍者に火影様の要請で転向したこと。あとは噂や書類に載っている経歴としての彼女くらいしか知らなかった。
だから、今回イタチに接触してみたのだ。
『誰よりも忍びらしく戦い、誰よりも忍びらしくない性格の、子供好きで涙脆いくノ一』
そう評していたのはアスマだったか。だが、遠くから見るだけでも暗くこの世の終わりのような顔をしたあの女が、本当に昔はそんなに明るくて笑みを絶やさないような女だったのか、カカシにはよくわからなかった。
そして、収穫もない。
結局なにもわからないことだけしかわからなかった。
それでも、たとえよく知らない相手だろうと相手もまた木の葉の忍びであり、この里で生まれ育った人間なのだ。うちはシスイとは、アスマにとって妹のような可愛い後輩であり、サスケにとってなんとかしてやりたいと思わせる義姉であり、イタチにこんな顔をさせるだけの女なら、ならカカシにとってもそれだけで気に掛ける理由としては充分だった。
木の葉の忍びは、仲間とは、つまり家族であり、兄弟なのだから。
カカシはポンポンとイタチの頭を軽く叩く。そして「まあ、なにかあったら話しなさいね。愚痴ぐらいなら聞いて上げるから」そういって笑った。
そんなカカシに珍しくもつられたのか、氷の表情ばかりだと思っていたかの後輩は、それに対してふっと口持ちにうっすらと笑みを浮かべながら、そんなカカシの手を嫌がるでもなく「そうですね。ありがとうございます、カカシさん」と礼を言って頭を下げた。
(意外と付き合いやすい奴だったのかも知れない)
それにカカシはそう思う。
なんとなく、普通に接しにくい相手でもあり、写輪眼の正当継承者であることや、その殆ど動かない氷の美貌や、実年齢に相応しくないほど落ち着き払った物腰などからつい距離を取ってしまったのだが、それが色眼鏡だったのかもしれないとここで初めてカカシは思った。
だからこそ笑って「どういたしまして」と答えた。
「ところで、サスケは貴方の師事を受けることになったと聞きましたが、弟はあなたから見てどうですか?」
そして既にその時には気持ちを切り替えていたらしい、兄として、保護者としての顔でそう訊ねる後輩に、少しだけ微笑ましいような気分を覚えながらカカシは答えた。
「ああ、サスケはね……やっぱりお前の弟だけあってそりゃ優秀よ」
「そうですか。カカシさんにそういってもらえるとは光栄ですね」
「まあ、そうね。あとはあの視野の狭さを改善すれば……あ、それと……」
そんな風な話が気付けば1時間ほど続いた。
カカシとの話は適度な息抜きにはなったらしい。自分の心が随分と軽くなっていたことにイタチは気付いた。全く、これだからあの人には頭が上がらない。そんなことを苦笑して思いながら家路につく。
「ただいま」
「ああ、おかえりなさい、イタチ」
そう声をかけると、玄関でイタチを出迎えてくれたのはシスイではなく、母のミコトだった。
どこか慌ただしいように見えたので、不思議に思いながらイタチが見上げると、母は少し困ったような顔をしながら言った。
「どうもまたあの子、体調崩したみたいでね。これから付き添いで病院に行ってくるから、帰ってきて早々悪いけど、家のことは任せたわよ、イタチ」
「シスイが?」
それにイタチは母の顔を見上げる。昔から美しく年を感じさせない人だった母だが、其の目元に浮かんだうっすらとした隈や皺が彼女の心労を思わせて、イタチは少し考え言った。
「それなら、オレが付き添うよ」
「駄目よ。3日ぶりの我が家でしょ? 任務明けくらいしっかり休みなさい。それに母さんだってこう見えて元木の葉の上忍なんだから、シスイちゃんのことくらい任せなさい」
そういって母は笑った。
それに強い人だとイタチは思う。本当に強い人とは、母のような人の事をいうのだろう。
多分母だって辛いはずなのだ。なのに文句もいわず、こうして笑っていてくれる。それがとても有り難いとイタチは思った。
「母さん、シスイのこと頼む」
「ええ、任せて」
そういって、母はシスイを連れて病院に向かった。
その間、イタチは用意されていた食事を取り、3時間ほどの仮眠をとることにした。
それから風呂に入り疲れを癒すが、まだ母と妻は帰宅しない。昼過ぎであるこの時間帯なら父も仕事中だろうし、サスケも同じ班になったというナルトやサクラたちと共に下忍としての任務に励んでいる頃だろうか。
「……」
今夜の任務で必要な忍具の手入れをするも、落ち着かない。
母を信用していないわけではないし、病院に行くのなら付き添う相手は同性である母のほうがシスイとて落ち着くだろう。そう思って送り出したが、やはりこれほど気になるならついていけば良かったかとイタチは思う。
(迎えに行くか……)
そう思い鍵をかけて家を出た。
木の葉病院を出てすぐそこに目当ての人はいた。
シスイは……いつも通りだ。だが、母であるミコトはシスイが体調を崩しているというのに、それに相応しくないはずの嬉しそうな顔をしていて、其の違和感に暫しイタチは戸惑う。
そして告げられた。
「イタチ、シスイちゃんはね」
「妊娠してるんですって。無理かもしれないって言われてたのに、まるで奇跡ね」
その時告げられた言葉の大きさに、イタチはシスイがどんな顔をしていたのか気付く事は出来なかった。
―――――過チガアッタト言ウノナラ、一体ドレ?
続く