今回から一応濡れ場スタートですよ。まあ、まだ本番入ってませんが。
因みにしーたんは前世で脱童貞した時、付き合ってた彼女のほうが2つ年上で経験者だったため、初体験は基本彼女にリードされて終わった記憶あったりするので、女がリードすること自体にはあんまり抵抗ない人種です。なので合意エロなら、年上である自分がリードすべきかなーとか考える人種ですが、とうのイタチさんはふつーに経験未経験関係なくセックスとは自分(男)がリードするものだろう意識でいたりするというオチ。
ザアアーと、シャワーが自分の体を打つ音を聞き、感触を感じながら恐怖に縮こまりそうな自分の体を抱き締め、ため息を1つつく。
これからイタチとそういうことをするのだと思えば、自分で誘っといて馬鹿なのかといわれそうだけど陰鬱で、ぶっちゃけすごい逃げ出したくてたまらない気分だった。
イタチは今頃何をしているだろうか。やっぱり、準備とかしてるのかなあ。あーティッシュとか色々必要だよねーとか思えば、より滅入りそうな気分で、それを振り払うためにもシャワーの温度を冷水にして頭からザバザバ被って、まだちょっぴり残っているアルコールも振り払う。
……家に帰った時、オレがまず真っ先にしたことは、イタチにシャワーを勧め、その間に手洗いうがいをすませてから便所に行って出すもんを絞り出してくるという作業だった。
なにせ店でも一応何度か便所を借りて出すもん出していたとはいえ、ビール3杯に水4杯ぐらいは飲んでいたから、そのままヤるとなるとちょっと……流石に情事の最中に漏らすというオチは恥ずかしすぎて避けたいところだったし、漏らさないにしてもセックス中に「トイレ行きたい」とか途中で言い出して抜け出すのはどうよって話ですよ……。ならやっぱり事前に出しとくべきだろう。スカトロ趣味なんてオレにはないし。
それと夜風に当たりながら歩いているうちにマシになったとはいっても、まだ依然アルコールは体内に残留している感じだったので、少しでも酔いを覚まそうと思ったのもあるんだな。おかげで、歯磨き洗顔まで終わった頃には慢性的につきまとっていた眠気も大分スッキリした。
あの時はこれでバッチリかなあとか無謀にも思いましたよ。
が、風呂上がりに自分を呼びに来たイタチを目にしたら、これまた動揺が戻って来たもんで、そんな自分に気付かれないようにと急いでこうして風呂場へと直行し、今シャワーを浴びるに至ったわけなんですが、ああくそ顔会わせづらいな……。
大分酔いは醒めた……とはいっても、ぶっちゃけ多分完全に素面だったら覚悟を決めたとはいえイタチを誘ったりとか出来なかっただろうし、それを思えばアルコールを完全に抜くのは不味いかなあとも思っているんだけど、でも酔いが酷いとオレの場合すぐ寝ちまうから、あんまりアルコールがまわったままの状態にしておくわけにもいかないというジレンマですよ……。
……因みにシャワー浴びてくるようイタチに言ったとき、本当は「一緒に行かないのか」とか冗談交じりの微笑み付きで言われたけど、「恥ずかしいから」といって拒否っといたのは余談だ。
いやね? 「昔はよく入っただろう?」とかオマエ笑っていうけどね? オマエと風呂入ること自体はぶっちゃけあんま抵抗ないけどさ、流石に情事前提で入るのと昔お前をオレが風呂に入れてやってたのが同等になるわけねーだろ。つか、お前のあの目、どう見ても昔の仕返しをどうしてやろうか的な企み含んでただろ、恐いわ。どう考えてもただ一緒に風呂入るってだけで終わりそうな顔してなかったぞ。
って……いや、イタチがオレにどういう感情抱いているかを知ってる癖に、こうして誘ったオレが言えた台詞じゃあねえんだろうけど。自重してるっぽいあいつにしていいって言ったのオレなわけだし。だからどう考えても、オレがそれ言っちゃいけないんだろうけど、でも本音は今すぐにでも逃げ出したいんだよ、うう……。
そう思う間にも、思考と別に手が動いて体中隅々まで綺麗にしちまうのは、習い性みたいなもんで強いて言えばオレが昔から綺麗好きな性分で、洗い残しとか垢が残っていたりしたらそれが気持ち悪いからってだけの話なんだけど、こうして今シャワー浴びるに至ったシチュエーションがシチュエーションだけに、なんか……こう足のつま先まで丹念に洗っていくって今の己の行為は、表面上のそれだけなぞれば好きな人のために肌を磨き上げている恋する女みてーにも受け取れて、我ながら気持ち悪いな。
……実際はいつも通りのことをしているだけなのに、セックス前という形容詞がつくだけで、なんなんだろうな、このいたたまれなさは。
いや、逆にオレが男でイタチが女だったとしてもヤる前には体の隅々まで洗っただろうし、それがエチケットだと思っただろうけどさ、実際問題として寝ようとしている相手は可愛い弟分みたいに思っていた相手とはいえ「男」で、つまり抱かれるのはオレのほうなわけで、これからその……オレは処女を捨てるわけですよ?
花を散らされるとわかっててこう体中くまなく洗っていく行為って妙にいたたまれないね……。肉体性別通りオレの内面も女だったのなら、そうでもなかったのかもしれないけど、生憎オレはそうじゃないからなあ。セックスに対する期待とかも無いし……前世で童貞捨てた時は凄いあったのにな。
ああでも、オレの心が正真正銘本当に女だったんなら、やっぱイタチほどの相手に好かれるってのは光栄で、あいつに想いを寄せられたことに対し、本心から抱かれること望んだりしたのだろうか。そうしたらオレはアイツが望む意味でアイツのこと、愛せていたかなあ。本心からお前を欲しいと望めいたのなら、こんな風に体竦んだりもしてなかったのだろうし。何も考えずただ求め応えられたのかも……。
まあ、そんなIFをいくら言ったところで、そんなもんは絵に描いた餅みたいなものだし、相手が大好きなイタチとはいえ男に抱かれること自体が嫌だな、考えたくないなという現状のオレの思考回路や嗜好がどうにかなるもんではないんですけどね。
うう……覚悟を決めたつもりだったけど、風呂から出たくないよ……。
「…………」
だけど……逃げたところでいずれ対面する問題なんだよな、これは。
自分自身でイタチにも言ったとおり、これは遅いか早いかだけのそういう話だ。
……それだけの話。
なら、そんなオレの感情なんて飲み込んでしまえ。
そうすれば、全部丸く治まるんだから。
「……」
キュッと、シャワーの栓を締めて、洗い立てのタオルでガシガシと頭を拭き、水分を拭き取っていく。あらかた髪の水分を取った後は、体についた水分も拭き取り、それから下着も付けずに直接夜着の浴衣と羽織を身につけた。すると、また恐怖から来た怯えと震えが戻ってくる。
けれど、後戻りするわけにもいかないだろうと思って脱衣所を出て、イタチの気配のあるオレの自室へと向かった。
「シスイ」
名を呼ばれ、視線をやる。
イタチはやっぱりそこにいた。どうやら想像通り床の用意していたらしく、布団を整え、ティッシュやゴミ箱の設置とかもやっていたようです、はい。……準備万端だな、お前。いや、オレがイタチの立場でもするけどね、それくらい……。
……破瓜とかやっぱ痛いのかな。……大学時代の彼女は初セックスの時処女だったけど、初めは痛かったって言ってたな。その後、でも1つになれて嬉しいとか可愛いことも言ってくれたけど。
…………。
嗚呼、どうしようすごい恐い……超逃げたい。
でも、誘った側のオレが怯むのって、駄目だよな……。オレのが年上なんだし、女側としては初めてでも、知識的に完全なセックス未経験者ともいえないし。つかオレのことが好きで今まで誰とも付き合ってなかったってんならイタチ童貞の可能性高いんだよな。なら益々オレのほうが本来はリードすべき立場のような気が。
……多分未経験だよな? イタチ。
そのわりにあいつすっげー自然にキスしてきたんだが……ハイスペックな奴は最初っからハイスペックってことなのか。
とは思うも、イタチに経験があろうがなかろうがオレがすべきことは変わらないし、こんなところで本音を晒して泣き言を喚くわけにもいかない。そもそも誘ったのはオレだし。だから、意地でも本心は顔に出さないようにし、微笑みを心がけ、イタチの元へと歩み寄った。
心臓がバクバクと煩いくらいなっていて、この変調に気付かれませんように、と精一杯で、イタチがどういう表情を浮かべているのか認識する余裕すらなかったけど、それでも「イタチ」とそう名を呼びながら、オレは風呂上がりで揃いの浴衣を身に纏ったイタチの痩身に両腕を回し、胸板に顔を埋めるような姿勢でイタチの体を抱き締めた。
一拍の間を置いてイタチもオレの体を抱き締め返し、そのまま流れるような仕草でオレの体を抱え上げ、布団の上へと運んでいった。
えっと……まさか素でお姫様抱っこされるとは想定外だったんだけど……しかも超自然にしやがって、恥ずかしくないのかこいつ。でもまるで大切な宝物を扱うような繊細な手つきと、密着したままの肌と香り。伝わる体温は酷く暖かくて、それが其の分だけイタチのオレへの想いを思わせて、後ろ髪を引かれるような心地にオレをさせた。
けれど、そうやってピッタリと密着したことで、オレの体の震えもあいつに伝わってしまったのだろう。
イタチは少しだけ難しい顔をすると、もう一度「本当にいいんだな」とそう最終確認を取るようにオレに訊ねた。
(本当は嫌だ)
そんな風に囁く本心には蓋をして、顔だけは笑みながら、イタチの首の後ろに両腕を回して「構わない」とそうオレは告げる。
それにイタチは「……そうか」と小さく納得したようなそうでもないような声で呟くと、次いで愛おしげにオレの頬をなぞって「シスイ……」とそう情念の酷く籠もった声でオレの名を呼びながら、唇をオレの上へと重ねた。
それは、それだけで、イタチのオレへの想いの種類がどんなものであるのか、明確に告げていて、その若い情熱に火傷しそうな錯覚さえ覚えた。
初めは皮膚と皮膚を触れ合わすだけの遊技だったそれは、やがて唇同士を重ね合わせ深まっていく。
「ふ……ぅ、は……」
唇の間を割り開いてイタチの舌が歯列をなぞり、口内へと侵入し、オレの舌を追い求める。
「ん、ふ……んむ、ん……っぁ、んッ」
舌先を触れ合わせ、絡みつき、幾度も角度を変えながら、吸い上げられ、唾液を送り込まれながらなぞられる。粘膜と粘膜が音を立てて響き渡り、まるで息全てを奪うかのような口付けは、クチュクチュとそんな淫らな水音と共に続いていった。
「ぁ、ん……んん、は……ふ」
口蓋までなぞられ、舌を幾度も吸い上げられて、表面は静かなのに内実貪り尽くすような接吻は、想いを直接伝えるかのようで、息が上がると同時に、酷く胸が苦しくなる。
だって、オレは……。
(お前をそういう意味で愛していない)
そんな風に愛おしげに触れられるような資格など本当はない。
お前を誘った理由だって、本気だろうお前からすればあまりに失礼な理由でだ。
「は、はふ……ぁ、ん」
それでも……。
「……シスイ」
唾液の糸を引き唇が離れる。月明かりの下映し出されたイタチの顔はいつも通りの玲瓏たる美貌に一見見えて、その実切れ長の目の奥に男の欲の色を強く宿している。嗚呼、そうだ。間違いなくイタチは今オレに欲情していた。
やがて、イタチの形の良い唇がオレの喉元にかかり、口付けを落とされる。
「ひっ」
それに思わずビクリと想定以上に大きな反応を返して、怯えたような声を出してしまった自分に内心で強く舌打ちをした。案の定、イタチはオレを気遣い、おそらくは本心とは違うだろう言葉をオレにかけた。
「嫌なら……」
止めようとそう続けるだろうイタチの言葉を遮って、オレはイタチの背に両腕を回し、言った。
「……良い、続けろ」
嗚呼、そうだ。お前の推測通りオレは本心ではお前とすることを望んではいないし、怖がってもいる。
それにオレはお前に惚れているわけでもない。他に惚れている相手がいるわけでもないけど、お前のことだってそういう意味では好きじゃない。
それをわかっていて理解していたからこそ、お前は気持ちを伝え、待つほうを選んだのだろう。今は弟分としか思われていなくても、それでもオレにとってお前が特別なことは知っていたから。今は無理でも時間を置けばいつか異性として自分を認識してくれるようになるだろうと、そう判断したから。自分に惚れさせる自信があったから。お前の一連の行動はつまりはそういうことだ。
お前がオレを今止めようとしたのも、オレにはまだ早いとそう思っただけの話なんだろう。
けれど、そんなことをしたところで意味なんてない。
待つことに意味なんてないんだ。
だって、オレの心は女じゃない。肉体は女でも、女心なんてものもまるでわからない。男を、異性になんて思えない。男に恋なんてオレには無理だ。無理なんだ。時間は何も解決しない。
オレがオレである以上、オレとお前が本当の意味で両想いになることはないだろう。
だけど、それでも……オレは、お前を哀しませたくないんだ。
だって、お前は、オレにとってはお前こそが、1番幸せになってほしい奴なんだから。
お前の幸福をなにより強く願っている。だから。
「は……ぁ、ぅ、あ、あァ、ィタチ、ッあ」
(なのに、どうしてだ)
イタチの前戯が足りていないわけじゃない。
寧ろ童貞(とも限らないかもしれないけど)とは思えないくらいイタチは頑張っている。
オッパイを扱くにしろ、服を脱がすにしろ、力任せにしたりとかせず、優しく労るように触れることを心掛けているし、未経験の女を相手の対応としちゃあ満点といっていいくらい、気遣いが出来ているんだろうなとは思う。
「ひ……う、ぁ……あ」
だけど……次々に涙が頬を溢れ落ちていく。
どうしてなのかなんて、オレにもわからない。
けれど、イタチの愛撫でオレのマンコが濡れる事はなかった。
(どうしてオレはこいつを受け入れてやれない)
わけがわからなくて、グチャグチャでただ涙だけがボロボロと流れ出る。
オレはこいつを受け入れなきゃいけない。なのに、嫌だと思ってしまったんだ。やっぱり、嫌だって。でも、そんなのは、意味のない行為だ。拒絶して、それでどうするんだよ、今を回避してもいつかはやがて来るんだぞ。
だけど、恐い。体が恐怖で竦んで、震えが止まらないんだ。
嗚呼、くそ、どうして、止まれよ、涙。震えるなよ、気付かせるな。
だってオレイタチが大切なのに、あいつが恐いって。嫌だ、やめろ、馬鹿。駄目だ、やめるな。
ヤダよ、抱かれたくなんてないよ。女の快楽なんて味わいたいとも思った事ねえんだよ。知るのが恐くて、直視したくなくて、オナニーすらこの体じゃしたことねえんだぞ。嫌だ。見るな、触るな。
違う、触らなくてどうするんだ。見るななんて言ってどうする。そうして拒絶して、傷つけるのか。あいつを傷つけるのかよ。やめろよ、オレ。どうせ誰かとしなきゃいけないのに、オレもあいつもいずれは子供作らないといけないのに、なのにオレの我が儘で全部台無しにする気か。
オレさえイタチを受け入れてやれたら全て丸く治まるのに。
なのに……。
そんな風にグチャグチャの頭で纏まらない思考を持て余しているオレに対し、ポツリとイタチの声が落とされる。
「……シスイ、やはり今日は止めよう」
その声は一見いつも通りの冷静な顔と声で、その言葉を聞いた瞬間ほっと安堵を覚えた自分がいた。けど、次の瞬間、オレは気付いちまったんだ。イタチが言ったそれが、あいつの痩せ我慢でしかないということを。
だから、だからオレは……。
* * *
「家、上がっていかないか」
そんな遠回しの言葉で誘う彼女を見た最初の時点から、それがシスイなりの強がりで虚勢であることには気付いていた。
当たり前だろう。一体オレが何年お前の側にいたと思っている。13年、人生の大半をお前の側で過ごしたてきた。
演技の笑みと本心からの笑みの差ぐらい一目見ればわかる。それを抜きにしても、今日のシスイの演技はお世辞にも上手いとは言い難いというのもあったが。
けれど、それでも恐怖に震えながら、懸命にそれを悟られまいとしながらオレを誘おうとする、彼女の必死な姿は可愛らしく、女に恥をかかせるわけにもいかないだろうと、其の先の関係に進む事に怯えている姿には見て見ぬふりをした。
……シスイが、オレのことを異性として見ていないことは知っていた。
だからこそ敢えて式を迎える前に、気持ちを伝えた。そうすれば真面目なシスイは嫌でもオレを意識し、考えざるを得ないだろうと思ったから。
彼女がすぐに割り切れるような性格でもないことも知っていた。だから、急ぐ気もなかった。
何、今までも充分待ってきたんだ。それが少し増えるぐらいそうたいしたことでもないだろうと、そう思って。だからこそ、一足飛びに誘われるとは思っていなかったといえる。
たとえシスイのオレへの感情に恋愛感情は含まれていなかろうと、それでも「いずれお前と結婚するんだ」とそうオレを受け入れようと必死に努力している姿が愛おしかった。きっと、シスイがこんな反応を返すのは己にだけだろうと思えば、優越感すら覚えた。
別に最初っから男として愛されようとは思わない。
今は家族愛に毛が生えたような感情でも、それでも恋人や伴侶と関係の名を変え共に過ごしていれば、そのうち変わるものもあるだろう。人間とはそういう生き物だ。オレのお前への親愛感情がいつか恋情となっていたように。
だから、お前が無理をして今宵秘め事に誘った事も理解していて、その上でオレは最初は肉体関係でも、それが切っ掛けでオレを男として見てくれるようになるならばいいだろうと思った。恋愛感情が先か、肉体関係が先かそれだけの話だろうと。行き着く先が同じならばどちらでも構わない事だろう。
なにより、慣れぬ誘いをかける姿が、ぎこちなくオレの背に回された手が、震え怯える体が、それら全ての反応がシスイがまだ未経験の乙女であることを示唆していて、「そういう目で見た事はない」と言いながらも、他の誰でもなくオレに処女を捧げようとしてくれたことが単純に嬉しかった。
けれど……。
「……シスイ、やはり今日は止めよう」
20分かけて仕掛けた前戯も虚しく、恐怖で震える彼女の秘所は全く湿り気を帯びておらず、オレを受け入れる準備が整っていない事を示していた。
目の前にいるのは夜着である浴衣がひっかかっただけの裸同然の格好で、ボロボロと泣き続けているシスイの姿だ。ヒクヒクとしゃくり上げながら涙する姿は稚く傷ましかった。
……別にここで彼女に無理をさせてまで続ける気はない。シスイの気持ちが伴わなければこの行為に意味など無いからだ。これが初めてだろう彼女に性交を恐ろしいものだと植え付ける気などなかった。
それに元々シスイが無理をしていたことくらい知っていた。なら此所は出直すべきだろう。最初っから上手くいくなど信じていたわけでもない。
何、機会はいくらでもあるだろう。ならば彼女の体と心から色事に対する恐怖がなくなるまで、これからじっくりと時間をかけて少しずつ慣らしていけばいい。天を向き、痛いほどに硬くなっているモノの始末はトイレを借りて手早く済まし、今日はこのまま帰ればいいだけの話だ。
そう思っていた。
しかし、恐怖に体を震わせながら、泣いていた筈の彼女がオレの姿を視界におさめたことを切っ掛けに起こした次の行動は、オレでも予想外の出来事だった。
「……シスイ!?」
思わぬシスイの行動に思わず驚きに声を上げる。
彼女の様子といえば、相変わらず泣いている。泣いて、震えて怯えている。それは確かな筈なのにシスイは一瞬だけ葛藤したような顔を見せたかと思えば、オレの浴衣の上からも存在を主張していた一物へと手を添え、露出させると、痛いほどに勃起していたペニスをパクリとその小さな口の中へと収めた。
その生暖かさと、彼女の思わぬ行動に一瞬動揺し、焦るような声で彼女に鋭く言葉を飛ばす。
「シスイ、そんなことはしなくていい」
無論尺八を受けること自体が嫌なわけではない。惚れた女が自分のモノを咥えて悦ばない男のほうが少数派だろう。だが、初めてのセックスに怯え泣いている女に自分の陰茎の世話などさせるつもりもない。
勿論、これが本心からシスイが望んでの行為ならば話は別だが、どう見てもフェラにしろその先の行為にしろ望んでいるようには見えない。だからこそ止めようと思った。
にも関わらず、オレの制止の声を聞き、シスイは益々意固地な態度を取り、口腔全体を使ってくびれの辺りにほどよい圧迫を与え、先端をチュウチュウと吸い上げながら、裏筋に親指の腹を押し当てるようにして、手慣れているようにも感じる動きでシュッシュとペニスを扱き上げ、もう1つの手で優しく玉の辺りを摩った。
「ん……っ」
流す涙もそのままに、喉奥まで陰茎を受け入れ、頬をすぼめながら吸い上げ、抜き差しし、指も使ってペニス全体へと刺激を施していく。
「……ッ」
それが、性に不慣れな印象のこれまでの彼女と相反するほどに、巧みで、思わず息が上がるのを自覚しながらも戸惑う。
(一体どこでこんなものを覚えた)
震え怯える体の反応は処女そのものだというのに、口戯とフェラチオに置ける技術だけは娼婦顔負けの正確さと技量さだ。そんな相反する技能の中、相変わらず顔だけは思い詰めたような泣き顔で、とてもじゃないがコレを楽しんで行っているようには思えない。
だというのに関わらず、シスイは変わらずの必死な懸命さで、的確にオレを絶頂へと導いていく。
強すぎるでもなく弱すぎるわけでもない、最も気持ちのいいと男が感じる強さで竿をにぎり扱きながら、グリッと舌で先走りの迸る鈴口を抉るように突く。
その刺激を決定打に、射精感がこみ上げてきて、オレは離れるよう促す意味も込めて、彼女の名を叫んだ。
「シスイッ」
そのまま勢いよく白濁色の液体が飛び出す。
けれど、声をかけたときには遅かったのだろう。或いは自分の意志で踏みとどまったのか。今し方放出した精液の半分はシスイの顔にかかり、残り半分は彼女の口内へと放出され、それを彼女は苦しそうな顔をしながらもゴクリと飲み干した。
それからシスイは放出後の一物にまだ残留している精液をチュウと吸い出すと、快楽を与えようという動きではなく、どちらかといえば労るような弱さと動きでペロペロとペニスの亀頭部分を舐め清めた。
そんな一連のシスイの行動を見て、我を取り戻し、動揺を覚えながらオレはシスイの肩を揺する。
「シスイ、何故」
オレにはセックスに怯えている彼女がどうしてこんな真似をしたのかわからなかった。
怯えているのは今だってそうだ。
相変わらず濡れていない秘所が、今の行為にも彼女に快楽や興奮をもたらすものではなかったことを如実に告げている。そんな状態でしたいからしたといわれても、それを信じることは出来そうにはない。
そんな風に動揺するオレに対して、シスイはボロボロと益々涙を零しながら、グシャグシャの顔でこう詰った。
「イタチの、ばかやろぅ」
続く