そろそろ終わるかなーと思ってたのに武闘派くノ一っ子との会話だけで終わってしまったその3というわけで、後日談まだ続くようです。何故オレは短く纏められないのだろうか、くっ。
そういやあ恋愛関係の話になると、しーたんの元カノ話が挟まってくるのですが、しーたんの歴代元カノはお世辞にも美女ともスタイル良いともいえない(自分に釣り合ってそうな)相手ばっかりだったりします。初カノが貧乳ガリで、2人目がぽっちゃりのほほん系。どちらもそんなにモテるタイプじゃない。しーたんは美女より身近な地味な子に惹かれる傾向があるので、クラブの先輩には惹かれてもクラスのアイドルとかには興味示さないタイプ。
しーたんの好きな女性の部位ランキング第一位が指、二位が太もも、三位が声、四位が髪の毛、五位が唇だったりするので、胸のでかさには本気で興味ないというか、好きな子の胸だったら断崖絶壁でも気にしない。黒乳首や垂れ乳、奇乳レベルのデカチチでさえなければそれでいいよ派。それが女の胸なら平坦でも大丈夫さ。女ならな。
イコール同じ断崖絶壁でも、男(イタチ)の胸では萌えられない、それがしーたん。
「あのな、男に対してそういうのは最悪の悪手だぞ」
―――――そもそも思いつきだけで、深くものを考えずに言うのは止めて欲しい。
そう思わず仏頂面で零したオレの言葉を前に、吃驚したように少女はまん丸に目を見開く。
そんな反応を見て、ムスリと面白くない気分でオレは言葉を続けた。
「そもそも私がイタチのことを好きだろうか好きでなかろうが、そんなことはともかく、結婚決まっている身で別の男にわざとコナかけるなんて、理由はどうあれ浮気と同じだろう。恋の駆け引きなんて言葉で美化していいもんじゃない」
確かにオレはイタチに惚れているわけではない。
だが、既に結婚は決まっているのだ。式の日取りまで決まっているくせに、他の男に誤解されるような行動を取るなんてこれが浮気以外の何者だというのだろう
まあ、元々相手が誰にしろ男に対してそういう感情を一切抱けない身としては、男に気があるように見せかける行動自体、生理的に気色悪いことこの上ないんだが、それを抜きにしても浮気や二股の類は嫌いだ。自分がされるのもするのも虫酸が走る。
……とはいえ、まあオレは別にイタチに惚れているわけではないし、あいつもそれは知っているわけだから、別にあいつが他の女を好きになること自体は全然構わないのだが。イタチならどっちとも関係を続けていこうみたいな不誠実な真似はしないだろうし。ちゃんと関係を清算してから正式にもう片方と……なら別に構わない。
それでも現時点であいつが惚れているのはオレであり、オレはあいつの婚約者だ。告白も受けている以上あいつの気持ちも既に知っているわけだ。にも関わらず、全部捨てる覚悟で惚れ抜いている相手がいるとかならまあ別かもしれないが、その気もなく他の男にコナをかける……となると浮気以外のなんでもない。
大体そんなもん実行したら傷つくのは自分達だけじゃないのだ。
恋だの愛だので盲目にならずその辺もよく考えて欲しい。
「それにそんなもんに巻き込まれる第三者だって可哀想だ。無いとは思うけど、勘違いさせるような行為しかけてコナかけた相手が本気になったらどうするんだよ。元々は無関係なのに、そんな理由で巻き込まれて、傷つくなんてもんじゃないぞ」
そうだ、傷つくのは、たかが当て馬のために巻き込まれ翻弄されてしまう、浮気相手のターゲットもだ。そいつも傷つく。オレ相手だから無いとは思うけど、それでももしも本気にさせちまったとしたら、んでオレに実際その気なんてなくて、たかが「恋の駆け引きごっこ」とやらのために利用してただけなんだと知ったなら、そいつが女性不信になったりしたらどうすんだ。
自分達の遊びのために無関係の人間にトラウマを植え付ける気なのか。
女が思っているよりも男は繊細ないきもんなんだぞ。ちょっとしたことで勃ったり萎えたりそういう生き物なんだよ。ある意味では女以上に理想主義でロマンチストだったりすることも珍しくねえんだぞ。まあ、男と女じゃ理想と浪漫のベクトルが違うから噛み合うことはあんまりないんだけどさ。
それでも、巻き込まれる側の気持ちも考えてみろよ。男はな、女の恋愛ごっこの為の駒じゃねえんだぞ。
「大体女の浮気理由って大抵が寂しかったからとかそんなんだけどさ、寂しかったからなんて甘えた理由で別の男に股開く女なんて、いくら好きだ愛している本命はあなたなのって言われても言い訳にしか聞こえないし、男なら誰でも良いビッチなんだなとしか思えねえよ。例えそれまでどんなに好きだった娘だとしても、そんなのされたら一気に冷めるわ」
男は女の最初の男になりたがり、女は男の最後の女になりたがるとかいうし、男は肉体の浮気を重視するのに対し、女は精神の浮気を重視するって言われている辺りとか、不倫がバレた時男が責める相手は自分を裏切ったパートナーなのに対し、女の場合は自分の男を寝取った浮気相手の女を責めるって話からもまあ、その辺は男女の精神性の違いというか、考え方の違いが出ているのだろうけど、少なくともオレが共感出来るのは男側のパターンだ。
だからこそ、女子のいう「心が離れていなければいいじゃない」というそれには全く共感出来ない。
そういうのは、お前は好きな男の気を引くためだけに、好きでもない相手に股を開くのかと不快にしか感じないし、大体そんなもんされたと知った側も嫉妬で燃え上がるどころか、軽はずみな気持ちで浮気したパートナーに対して瞬間的には燃え上がれても「この程度の女か」と冷めていくだけだろう。寝取られ属性持ちなら別かもしれないが、少なくとも大抵の奴はそうだろう。
もしかしたら、それまで好きだった筈のその女自体生理的に気持ち悪い汚物にしか見えなくなるかもしれない。男の反応の中にはそういうパターンも充分有り得るのだと、少し考えたらわかるはずなのになんで女は思い浮かばないのか、オレにはよくわからない。
寂しかったなんて言葉を言い訳に使うぐらいなら、性欲に負けた自分を恥じて自ら別れりゃいいのに。本当に好きなのはあなただけとかは白々しいにも程がある。
それとも実際に寝なきゃそれでいいとでも思っているのか?
パートナーとは別の男に対してアピールしておいて、周囲に誤解される行動取ったことに代わりはないのに? 誤解されるような行動を取っておいて、「肉体関係は結んでいません。なのでセーフです」といって誰が信用するんだ。寝たいからコナかけていたんだろ白々しいとしか思われんわ。
「それだけでも充分タチ悪いのに、人の気引くために浮気? しかもそれが恋愛ゲームの駆け引き? 論外だな、有り得ない。別にイタチに嫌われるのも捨てられるのも寂しいが構わないけど、そんなの実行したらイタチは傷つくなんもんじゃないぐらい苦痛を負うだろ。そんなの許容出来るか」
オレはイタチを傷つけたくはねえんだよ、惚れてもいないけど。それでもオレにとってイタチは大切な相手なんだ。何されても多分許せるんだろうなってくらいの。
でなきゃいくら酔ってたからって、男のチンコなんて咥えられるか。
だから、あいつを傷つけると最初から判明している選択肢なんて論外だ。
そんな風に内心ムカムカしながら抹茶オレを飲み干し、一息に言い切ったオレだったが、ふと顔を上げるとぽかーんと言葉を失っているくノ一っ子の顔が見えて、オレは思わず引きつり笑いを浮かべた。
……ヤベエ、やっちゃった。
「な、なーんてな。一般論だよ、一般論」
そう焦りながらおどけるようにオレが言うと、それに対して普段はやんちゃなわりには案外乙女な武闘派くノ一っ子は、「ああー……そっか、そうね。吃驚した」なんていいながら、どこか納得出来ていない顔ながらもほっとした顔で一息ついて、コップを指で弄びながら言った。
「ちょっと、納得いかないけど、そうよね」
とかいって、紅茶に口をつけると考え込むようなそぶりを見せる。
それから少しの間を置いてから彼女は再び口を開いた。
「シスイ先生ってさ、前から思っていたけど、普段はわざとやってるのか嫌味かってくらい女らしいし可愛いのに、時々言動や発想が凄く男っぽいっていうか女離れしているよね。自分が女だってことを忘れてるんじゃないかなーっていうか」
普段は女らしい……だと!? ぐはっ。女らしいとか言われる度心に刃が刺さるんだけど。何コレ痛い。そんなに通常時のオレは女らしく見えるというのか、畜生。あと可愛いとかゆーな。
「でもさ」
そうして内心へこんでいるオレに対して、黒髪ポニーテールの少女は、ふと神妙な顔になり、心底心配気な様子でこんなことを続けてオレに対して吐いた。
「あたしだからいいけど、そういうことあんまり人前で言わない方がいいと思う。ただでさえシスイ先生は同性受け悪いんだから、ああいう女子離れしたこと言ってると「何、この女」と余計目の仇にされると思うよ?」
……彼女がここまでオレに好意的? な視線を向けてくるのってひょっとすると初めてなんじゃなかろうか。というか、めっちゃ心配されてる? 今すごい心配されてないか、オレ? うわ、なんだろう、凄くショックなんだけど……。
「それと、1つ謝っておくわ。あたしさ、今までてっきり先生は清純派に見えて実は経験豊富なタイプなんじゃないかなーとか思ってたんだけど、見た目の印象の100倍はお堅いんだなーというか、先生って恋愛に凄い生真面目なタイプだったんだね。なんかゴメン」
それは何か……やっぱりオレは外向け清純系を装ったビッチに見えるということなのか?
くそ、何が原因だ。やっぱ乳か、この身体サイズから考えたらでかすぎる乳が原因なのか!? 冗談じゃねえ、オレは今まで一度も胸を強調するような格好とか色気を前面に出したような格好はしたことねえぞ。ミニスカでお色気どころか、ワンピースや普通のスカートすら数えるほどしか着た事(正確には着せられたこと)ねえし、胸の谷間が見えるような格好なんぞは以ての外で断じてしていない。ただ、他の体のパーツに比べ胸だけでかすぎるから何を着ても勝手に胸が強調されてしまうだけだ! ……ヤベエ、自分で結論出しておいてへこんできた……。
「しっかし勿体ないなあ。料理も上手いし、おっぱいもおっきいし、顔も結構可愛いし、そんだけの武器あったらやろうと思えば男に貢がせるのも簡単だろうに、そういうこと一切出来ないタイプとはねえ……」
とかなんかこの小娘ぼやいてますけど、そもそもオレは男に貢がせたいなんてこと自体思ったことないからね!? つうか、ぶりっこして「これ欲しいのー、買って?」とか男に上目遣いで頼み込んでいるオレとか想像するだけでも鳥肌ものじゃねえか……気持ち悪すぎる。
大体貢いでくれるような男が女に望む代償は、あれだろ。その女を抱きたいからだろ。其の時点でお断りだっての。
「こら、男に貢がせるの前提でもの考えるんじゃありません。大体人に恵んで貰ったもので手に入れたものなんて碌なものじゃないし、モノを貰うということはそれ相応の見返りを向こうも期待しているってことなんだから、そういう誤解させるような行為はしない」
そうまだもなにやら不穏なことをボソボソ続けている娘っ子に対し、窘めるようにそうオレが言うと、彼女は明るく「あははは! シスイ先生って本当生真面目ー!」とか言って笑った。
む。生真面目で悪かったな。オレはデート代はクリスマスや誕生日なんかの特別なイベント時以外は割り勘で済ませるタイプなんだよ。対等な男女関係が望ましいと思っている以上、一方が貢いだり貢がれたりとかそういう力関係は嫌いだし、イベント時のプレゼントも、高価なもんより前に彼女が欲しいと言ってたものや彼女の好きな花とかを選ぶタイプだし。
大体いくら美人でも貢がれて当たり前みたいな女に惹かれる気持ちとかわからんし(そもそも美女には惚れたことないけどさ)、それよりは金銭感覚しっかりしていて買い物上手な子とかのほうが見ててキュンとくるじゃないか……って話ずれたけど。
あと、オレが本当に生真面目だったら、いくら避妊したとしても結婚前にセックスはしないと思うぞ。
「でもさあ、そんだけ生真面目だとこう……イタチさんも苦労したんじゃない?」
「……なんでそこでイタチを出すのかがわからないんだけど」
本当この小娘は神妙な顔して何を言い出すのか。
やはりオレには女心はさっぱりだ。
「だってさ、先生ってあれっしょ? 男に奢って貰うのとかも、自立できてないみたいで嫌なタイプでしょ? ぜーんぶ割り勘とかで済ませちゃったら男の立場ないと思うんだけどなー」
…………イタチはあれでいて結構見栄っ張りな一面があるし、対面的にオレは女なわけだからその意見も一理ある……か?
だけど。
「弟分に全額出させる方が情けないと思うんだけど……私の方が年上なんだし」
年上のほうが奢るのって普通だろ? そう思ってのオレの発言を前に、あちゃーと言わんばかりの顔をしてポニーテール娘っ子は言った。
「うわ、また出たよ、シスイ先生の「弟分」発言! あーあ、絶対イタチさん苦労してそう……っていうか可哀想。確かに長い事幼馴染みしてたんならそう見にくいのもわかるんだけどさ、ちょっとはちゃんと男として見て上げなよ。告白、されたんでしょ?」
そう、寧ろ心配そうに言われた。
「それは……まあ……」
「というか、イタチさんみたいな美男子イケメンに告白されといて、いくらそれまでが姉弟同然の幼馴染みだったからといって全く意識出来ないってほうがあたし的には信じがたいんだけど? 例え好みのタイプじゃなかったとしても、普通は心揺り動くと思うんだけどねえ。告白されて、ドキドキとかしなかったの?」
いや、全く。別の意味では目眩しそうだったけど。
そんなオレの心情を動じていないオレの態度から読み取ったのか、再び少女は呆気にとられた顔を浮かべて、「ちょっと、ちょっと、ちょっと。先生本当に大丈夫? え? ときめいたりしなかったの? こう抱き締められたいとか、キスされたいとかは? そういうのも無し?」
「まぁ……」
そもそも元々オレにはキスされたいとか抱き締められたいとかそういう受け身な願望自体持ってないんだけど。それは男が相手なら尚更っていうか。
確かに現世では無くても、前世では元カノも2人程居たわけだし、恋をした経験も4度ほどあったわけなんだけど、オレは断じて男に惚れたことはないぞ……。キスされたいとか抱き締められたいとか、恋をしてた時でも思わねぇよ。
そもそもこう恋ってのは、こう、なんだ……触れ合った指の先からドギマギしたり、ふとした仕草にこうドキッとしたり、彼女の思わせぶりな台詞にすごく意識しちゃったり、そのうちに愛しいなあとか、キスしたいなあとか、抱きたいなあ、触りたいなあとかなんかそんな風な感情が沸き上がってくる感じがオレにとっての恋なわけで、宿る感情はしたいであって、キスされたいとか抱き締められたいとかそういう受け身な感情は別に芽生えたりとかなかったしなあ。
……とはいえ、恋人限定なら積極的に触られるのとか色々されるのも好きだったんだけど。
でもそれも好きな人が自分を好いてくれている証拠のようで嬉しかったから、自発的にあれこれされるのも好きだったってだけの話で、自らされたい願望があったわけではないし、自分の彼女でもない相手にされても嬉しくないし……体目的で男取っ替え引っ替えしているようなヤリマンビッチは嫌いだし。
非処女でもいいから、オレは少なくとも付き合っている間は浮気しない女が良かったというか、恋人以外に肌を許すような女が嫌いというか。不誠実なのが嫌というか。人間生きていれば心変わりが起きてもそれは仕方ないけど、他に好きな奴出来たんならキープなんかせずその時はきっぱりわかれてくれるタイプのがいいっていうか。いや、オレの初カノがそういう女だったんですけどね……。
でもこう恋人の女に積極的にあれこれされるのにはドキドキ出来ても、男が相手となると……こう無理くね? いくらイタチのことが好きだからといって、オレはあいつにそういう意味で惚れているわけじゃないから、イタチにキスされたいなあとか、抱かれたいなあとか……思えと言われても無理ですよ? いや、両方されてはいるけどね。あいつはオレに惚れているわけだし。されてはいるけど……本心から望めといわれてもマジ無理です。
だからといって抱きたいとかキスしたいとかそっちの感情もないけど。小綺麗な顔しててもあいつ心身共に男だし。男相手に抱きたいなんて趣味オレにはねぇ。
そんなオレを見て、なんだか同情に満ちた声で意外に乙女な武闘派くノ一っ子はこう漏らした。
「シスイ先生……それ女として終わってるよ……なんか可哀想になってきた……。あたしでよければいつでも力になるから、悩んでいることとかあったら言ってね? 変な男に付きまとわれた時とかもちゃんと言うんだよ?」
とか言いながら、オレの両手をギュッと握りしめて、やたら心配そうにそんなことを言ってくるんですけど、何、この反応? このオレより6つ年下の娘っ子、我が子が暴漢に襲われることを心配する過保護な母親みたいな反応してるんですけど!?
おかしい……なんでこんな反応されなきゃいけないんだ。オレ、上忍ですよ? オレ、お前より強いですよ? 幻術と逃げ足に特化しているから、大抵の相手から逃げ通せますよ? 知っている筈だよなあ……元担当下忍なんだし、身近で戦ってきたんだから、オレが見た目よりはずっと強い事ぐらいはわかっているはずなんだけど、あるぇ?
解せぬ……。
「はぁ……なんていうか今日1日でシスイ先生のイメージが変わったっていうか、なんだろうなあ……このあたしが守ってやらなきゃ臭……先生今までよく無事で生きてこれたね……任務中は本当に頼りになるのに、プライベート……特に恋愛関係がここまで駄目な人だとは思ってなかったよ……」
……なんか失礼なことを堂々と目の前で言われてるんですけど、オレ。
「うん、でもまあ仕方ない……のかな。見た目女らしすぎてちょっと信じがたいぐらいなんだけど、多分まだ先生は女に目覚めてないってことなんだろうし。自己評価低すぎて自分がどうでもいいみたいだし。それによく考えたら見た目とスペックが女らしすぎて見落としていたけど、そういやあたし、先生のオシャレやお化粧しているところ一度も見たことないわけだし……」
だから女らしい、ゆーな。しかもなんでそんな深刻そうに語ってるんだよ、畜生。え、何? オレはお前の中でなんなの? あとこれから先も別に女に目覚める予定ないからな? いや、目覚めたほうが周囲にとってもイタチにとっても都合いいんだろうけど、生理的になんかヤダ。乙女なオレとか想像だけでゾワゾワする。
「あ、そうだ」
と、そんな風にオレが内心でツッコミをしていると、この黒髪ポニーテール娘っ子は、何か思い付いたといわんばかりの顔をして、オレを見上げ、次のようなことを言った。
「ねぇ、先生。先生ってイタチさんのこと大事?」
「? 大事だがそれがどうかしたのか?」
にっこりと笑いながら少女が告げてきたのは、答えるまでもないオレにとっては当たり前のことで、でも質問の意図がわからず、困惑しながらオレが言えば、少女は「そっかー……それって誰より?」なんてことを聞いてきたが、本当に何を考えているのかよくわからない。
けれど、とりあえず素直に答えた。
「誰って、誰よりも。一番大事だ」
そうキッパリと告げる。
「……一番大事、ね。そこは即答出来るくせに、その気にはなれないってのがあたし的には結構意味不なんだけど、まあ……それは置いといて、誰よりってことは、先生自身よりも大切なの?」
意味不って……さっきからこいつのオレに対する扱い何?
とは思いつつも答える。
「当然だ」
その言葉に、しかし彼女は一瞬痛そうに瞼を伏せ、顔を顰めたのだが、オレとしてはなんでそんな反応をされなきゃいけないのかもわからなかった。
「そう。ならさ、先生にとって幸福って何?」
「? みんなが笑ってくれてたら私は嬉しいぞ?」
「そうじゃなくて、一番の幸福だよ」
一番……か。夢だったらイタチが火影になることだけど、幸福となるとそうだな。
「そりゃ、あいつが……イタチが幸せそうに笑ってくれたら、私は嬉しいよ」
そういってオレが微笑むと、彼女はガタンと席を立ち、拳を握りしめ言った。……どうでもいいが、よくないけど、食事中に席を立つのは行儀が悪いぞ?
「うん、それでいこう! 先生に恋させるとか諦めたほうがよさそうだし!」
「はい?」
とかってうんうん頷きながらこの小娘言ってますけど、オレには何がなんだかさっぱりなんですが。
「もう一度確認するけど、先生にとっては自分がどうのよりもイタチさんに笑っていてもらえるほうが嬉しいんですよね?」
「え? うん、まぁ、そうだけど……」
ええと、普段タメ口のくせになんで敬語になってるんでしょうかね?
というか、なんでそんな力籠もっているの、おまえ。なにこれついてけない、こわい。
ていうか、なんでそんなガッシリとオレの手掴んでるの、なにこれ、こわい。年頃の娘こわい。
「よし、じゃあ、次イタチさんがいつ任務から帰るのか教えてよ」
え?
一応いつぐらいに帰るのかは告げられているから知っていても、どんな任務についているかは守秘義務があるからオレも知らないし、誰々がいついつ帰るかとかのプライベート情報をいくら元部下相手とはいえ漏らすわけにはいかないんだけど。
そう思って戸惑っていると、「知らないなら、判明してからでもいいよ!」とか彼女は言い出した。
いや、だからなに? お前それしってどうする気なの? そんな風にややドン引きしながら居心地悪く頬を引き攣らせているオレを前に明るく少女はこう告げた。
「作戦決行はイタチさんが帰宅するその日ね! 大丈夫、先生は経験無いんだろうけど、安心してよ。あたしがきっちりシスイ先生のことをプロデュースしてあげるから!」
「はい?」
続く