今回で終わればいいなと思いつつ、やっぱ終わらなかったよ畜生ということでまだ続きます後日談。
とりあえず武闘派くノ一っこに弄ばれるしーたんはとことん弄られ属性だと思われ。
ではどうぞ。
……一体なんでこんなことになったのか、どうか説明して欲しい。
「ああ、もう先生動いちゃ駄目だって」
「ご、ごめん。でもこれくすぐったくて……」
そういいながら居心地悪くオレが返答すれば、現在オレの顔に化粧を施している元配下の少女は「それぐらい我慢してよ」と呆れたような声で言いながら、なんだっけ筆みたいなあれ……チーク? でいいんだっけ? を持ちながらぷくっと可愛らしく頬を膨らました。
それに対し、思わず引き攣るような笑いが出る。
「それにしても、先生……普段全然お化粧してないからなのかな。お化粧ノリ良いね。20歳越えてるのに肌すべすべのプニプニで血色も良いし、美肌というよりは健康的な肌質だよねえ……羨ましい。先生がそんなに入念にお手入れしているとも思えないし、やっぱあれ? 食事療法ってやつ?」
とかって、なんだか女子トークっぽい話題を振られるが、そんなもん振られてもオレにどうしろというんだ。
(か……勘弁してくれ……)
そんな気持ちで乾いた笑みを浮かべた。というか、顔にベタベタ色々塗られてすごい気持ち悪いんだけど……。うう……ありえねえ、なんで女の子はこんなもんつけて平気なの?
「って、先生聞いてる?」
ちょ、わざとスルーしてるんだって、察してくれよ、頼むから。
「まぁ、洗顔して、あとはバランスの良い食事ぐらいじゃないかな……してるのは」
とりあえず、動揺しながらもオレがそう返すと、「それでニキビ1つないってのが羨ましいんだけど」とかジト目で返されたんだが、お前さっきからオレに対してよくそういうこと言ってるけど、お前だって充分肌綺麗だし、可愛いのに、なんでオレにそんな視線むけてくんだよ、お前だって別にニキビとかないじゃないか。と、そう思うのに、なんか気迫が恐いので言葉返せなかった。何が地雷なのかわかんねえし、女の子ってこわい。
けれど、オレの表情読んである程度オレの考えていることを察したのか、武闘派くノ一っ子はじとりとオレを見つつこう言った。
「あのね、先生。先生はイマイチ自分が女の子だって自覚薄いみたいだから違うのかもしれないけど、あたしもね女の子なんだよ? そりゃ外を駆け巡ったりするのも好きだけど、あたしだって素敵な恋をしたり、綺麗になりたい願望はあるの。これでも家に帰ったら、ちゃんと髪やお肌のお手入れとかもしてるんだからね。お母さんにメイクの仕方を教わる事もあるんだから」
で、その「お母さん仕込みのメイク術」を今オレに向かって実践しているというわけですか。
「女の子のお肌は努力の賜なんだよ。だっていうのに、先生ときたら碌に努力もせずにそんだけプルプルなんだもん、そりゃ嫉妬もするわよ」
とかじろりと睨んでくるんだけど、女の子こわい。
……でもオレが思うに子供の内から化粧なんかしているから肌が荒れるんじゃ? 確か化粧品って健康にそんなによくない成分が入っていた気がするし、成長期や成長前の子供にとっては毒なんじゃないかなあ。
子供が化粧する文化はオレには理解出来そうにないぞ……。
というか、食事を栄養バランスよく取っているだけでも、体質って結構改善されると聞くし、若いのに肌荒れしてたり、ニキビ出来まくっているような子は食生活見なおすだけでも大分治るんじゃないかなあというか、別にオレは特別でもなんでもないと思うんだけど……。
……だから、なのでオレを目の仇にするのはやめてくれないだろうか、本当。
「と、出来た。うん、上出来! あたしって天才」
そう良いながら、思春期真っ直中な少女はにんまりと笑い、道具を片付けながら言う。
「先生は化粧慣れしてないし、あんまりさきついのはやめておいたほうがいいと思ったんだよね。なので目尻と唇にだけ鮮やかな紅引いて、あとはあっさりと仕上げてみたよ」
そういって彼女はオレに鏡を手渡した。
……正直言えば、見たくない気分でいっぱいだったが、そういうわけにはいかないだろう。というわけでおそるおそる鏡を目に映した。
(……誰)
そこには美しく着飾った若い女の姿があった。
だが、一瞬それが自分と認識出来なくて、フリーズする。
確かに顔の造形自体は前々から鏡で見慣れていたそれだ。けれど、その「女」を自分と認識したくはなかった。
丸みを帯びた女性らしいラインを描く顎に、紅が一筋引かれた釣り気味の大きな黒い瞳。小作りの鼻に、どこか清楚ながらプクリと膨らんだ赤く血色の良さそうな唇に、丁寧に結い上げられ、蝶を摸した簪で纏められた黒髪。頬にかかる二筋のウェーブを描いた横髪が色香さえ添えている。それはこの日の服装も相俟って、とつてもなく強烈なまでに「女」を印象付けている。
(これじゃあまるで……そこらの娘と変わらない)
そう認識した途端、吐き気にさえ似た生理的な嫌悪感が沸き上がってきた。
(気持ち悪い……)
それを押さえるように口元に手を当てようとすると、心配げなサーモンピンクの瞳にぶつかる。
「先生大丈夫? 少し顔青いよ? 慣れないお化粧で疲れたとか?」
それに少し我を取り戻す。
そうだ、こんなところで倒れるわけにはいかない。何も知らない彼女に不審に思われる行為を取るべきじゃない。だからぐっと、沸き上がってきた生理的な気持ち悪さを飲み込み、オレは「ん、大丈夫。なんでもない」そういって笑って少女の髪を撫でた。
「誤魔化しちゃって。疲れたんなら無理しないでよねー」
そういって少女はむぅと膨れっつらを見せながらも、それでもオレを案じているようだったから、「はいはい。大丈夫だって」といって更に笑みを浮かべた。
それにつられるようにして彼女も笑った。
* * *
先生に呼び出されたあの日、あたしが提案したのは何もそれほど突飛というわけでもないことだった。
「はぁ!? イタチを驚かせよう、ドキドキ変身お出迎え作戦!?」
「そう」
つまり、イタチさんが帰宅する日に合わせて、お化粧して綺麗な服で着飾った先生がイタチさんを迎えて上げようというのが大体の流れ。
やっぱり男の子にとって意中の女の子が、自分のためだけに着飾ってくれるのは嬉しいはず。
それに先生は普段から化粧もオシャレもちっともしないんだから、こういう理由でもなければ着飾ったりするとは思えない。
とはいっても、これはイタチさんを喜ばせるという目的以外にもあるのだけど。
見た目からしてそうは見えないけど、先生はあれね、生まれたての赤ちゃんと多分同じ。
ようするに女の子として産まれた楽しみや特権を知らないんだわ。
だから動きやすさ優先してあんな素っ気ない格好ばっかりしているわけだけど、絶対そんなの勿体ないわ。お化粧やオシャレを楽しむなんて女の子ならではの楽しみなんだから、これを機に目覚めちゃえばいいのよ。
それが良い女への道の第一歩ってやつよね。
まあ……本人に女としての意識が欠けてて、服装が地味なことさえ除いたら、基本的にシスイ先生は女として完璧だから、本当にこれで女としての自覚が芽生えたりとかしちゃったら強力すぎるライバルになりそうで、少し妬くけど、でもあのままのほうがずっと勿体ないんだから、しょうがないわよね。
そういえば、勿体ないで思い出したけど、今日も本当シスイ先生には驚かされちゃった。
まさかシスイ先生の付けている下着が、あんな実用性しかなさそうな地味どころじゃないものなんて思っても見なかった……。
こう、無地の木綿で灰色でさ、フリルどころかリボン1つついてないんだもん、信じられない。年頃の女が履くものじゃないよ、あれって。そりゃ先生は細くてちっちゃいわりに胸おっきいし、可愛い下着なんてそうないのかもしれないし、だからオーダーメイドしているって言葉にも納得なんだけど、よりにもよって、あんな色気どころか可愛げすら全く欠片もないデザインにしなくてもいいでしょうに、本当自分が女の子の自覚がないんだから、信じられない。
あんなのさ、先生のファンの男の人が知ったらきっとショック受けて倒れるよ。それぐらい自分のイメージとかけ離れているものだって自覚しなよ。履けたらなんでもいいってもんじゃないでしょ。
と思ったからそう心配して言って上げたのに、ちっともわかってないっぽいし。
なんだかんだいって、先生は出来る人だと思ってたのに、全くこの前といい今日といいイメージぶちこわしだよ。実は先生絶対、仕事以外はポンコツでしょ……。
なんだろうなあ。先生のほうが6つも年上なのに、まるで大きな妹が出来たみたいだよ……凄く世話焼けるというか、今まで同じ女として嫉妬したりライバル視してたあたしが馬鹿みたいじゃない。
こう男の目とか全く気にしていないし、自分が女の子の自覚も碌に持っていないくせに、料理や気遣いサポート力なんかを初めとする女子力がバリ高いのも凄いといったら凄いんだけど、ここまで自分に無頓着な人だと知っちゃったら逆に心配になってくるよ……その気もなくストーカー被害とかいつの間にかあってたりしそうだよねえ。最もシスイ先生の婚約者はあのイタチさんなわけだから、ストーカー程度なら影でなんとかされてそうでもあるけど。
……というか、あんな年頃のレディとしてどうなの? って下着でよく引かなかったね、イタチさん。あたしでもちょっと引くのに……やっぱ幼馴染みの強みなのかな? とりあえず先生には「年頃の女の子がこんな下着履かない!」と説教しといて別の下着の注文入れさせたけど、下着1つで涙目になってぐずるって本当どういうことよ。あたしが悪いみたいじゃない。
とりあえず、今日は家で用意した別の下着つけさせたけど、まず先生の「女教育」は形から入ったほうがいいよね、とあたしは思いました。
というか、ここまで来たら何がなんでも女に目覚めさせないと気が済まないというかね?
そもそもね、20歳越えているのにスッピンでも可愛い可愛い言われている時点で、自分が容姿的にも恵まれているってことを先生自覚してないからね、いい加減あたしも腹立つしその辺りも自覚してもらいたいところだわ。
というか心身共に立派な淑女になった先生を、あたしが個人的にも見たいというのもあるんだけど。
だってシスイ先生って、照れ性だし、表情豊かで行儀が良くて、たまに口悪いこと除けば本当に女性らしい可愛さに恵まれているのに、あれでいて乙女めいた思考はないんだから、あれ一種の詐欺じゃない? こう可愛らしく大切な人の前でしおらしくなる先生とかも見たいって。思えば、先生にああも腹立ててたのってああも女子力高いくせに、乙女めいた思考が全く見えない違和感がカマトトぶっているように感じて腹立ってた部分もある気がするんだよね。あたしと同じ女なのにって。
まさか、あんだけ女らしい人なくせに、女心がわからない人だったなんて誰が思うっていうのよ。
だからあたしは決意しました。
まず、シスイ先生を「女」に目覚めさせようって。
色恋はそのあと。女の子としての自分に目覚めたら後からついてくるだろうし、まずはやっぱり自分が女の子だってこと理解させないと。
折角女の子に生まれたのに、女の楽しみを知らないなんて宝の持ち腐れなんだから、その辺体に教え込んで上げないよね。
ふふふ……。
そう思ってシスイ先生を招いて早小一時間。
とりあえず、シスイ先生にはいつもの地味の服装から赤い着物に着替えて貰いました。
その際色々抵抗しようとしたり、小言で文句言ってきたけど「シスイ先生はイタチさんを労って上げようとは思わないの?」「男の人は、意中の女の子が自分のために綺麗になってくれたらきっと喜ぶよ」「たまには頑張って上げなよ」「先生、先生にとってはイタチさんが笑ってくれたらそれが一番嬉しいんだよね? その言葉は嘘だったの?」「喜ばせてあげようよ、イタチさんを」と言ってやり込めたがあたしは悪くない筈。
……しかし、あれね……同性なのにあたしが着替え手伝おうとしたら狼狽えて恥ずかしがっちゃってまあ。
因みにシスイ先生は本当に脱いだら凄かった。こりゃ男も放っておかないわよねって感じの良い体してて嫉妬が沸き上がってくると同時に、ええいあたしにもその胸ちょっとは寄越せとか思ったけど、恥じらう先生は可愛かったので、とりあえずおっぱい触ったり先生をからかったりして鬱憤は発散させました。やっぱこれぐらいの意趣返しはしないとね。
しかっし本当虐めてて可愛いタイプよね。
「ちょ、そんなところジロジロ見るなって、恥ずかしいからやめろってば」
なんて言いながら真っ赤にして顔とか体隠そうとしたり。
「ひぅ、だから、触るなってば、馬鹿」
とかちょっと胸のサイズ手で確認しがてら触ったらビクビクしちゃって、泣きそうな顔晒したり。
一々可愛い反応しちゃって、弄ってて凄く楽しかったんだけど。なんでこれで女心わからない人なのかなあ。
で、とりあえず楽しいお着替えタイムも終わって、こうして化粧も終わらせたんだけど、鏡を渡すなり、先生の様子がなんか変というか……。
なんか顔色悪くて、ひょっとしてこんな風にキチンとしたオシャレとかしたことないわけだし、体調崩しちゃったのかな。
とまあ、心配してみたわけだけど、大丈夫って笑って言うし、まあ本当にまずかったら言うわよね。
「それにしても……こんなの譲って貰って本当に良いのか?」
なんて言いながら、先生は落ち着かないように自分の服装を見下ろし、心許な気に自分の肩を寄せる。……そういう仕草すると、ただでさえおっきいおっぱいが凄く強調されるからやめたほうがいいよとこれはアドバイスしてあげるべきなんだろうかと思いつつも、あたしは後片付けをしながら答える。
「いいのいいの。知っているでしょ? あたしのおじさん古着屋しているんだよね。だから其れ一着ぐらい平気。ただで貰うのに気がひけるっていうなら先生おじさんの店の常連になってくれない? 多分おじさんもそのほうが嬉しいから」
そう答えると、先生は苦笑しながら「考えておく」と答えた。
「先生みたいな人が常連になったらおじさん喜ぶよ~? 『別嬪さんがキター』ってね」
そうあたしが笑ってお茶目に片目を瞑りウインクしながら言うと、先生は「別嬪ってお前ね……」なんて言って複雑そうな顔しているけど、本当自分の価値分かってないんだからこれだから天然は……。
(って、違うか)
うん、天然以前の問題だった。
だって、先生は本当に自分がどうでもいい人だったんだから。
あたしだって、まさかだと思ってたんだよ。
確かに前々から自分を卑下する台詞は多かったけどさ、あれ全部謙遜かもしくは遠回しの嫌味かなにかだと思ってたんだから。まさかね、本気で自分を底辺だと思い込んでたなんて思うわけないでしょ。
というか……自分嫌いなのかな、あれって。そりゃそういう類の人がいることは知ってたけど、あそこまで行ってるとこっちも悲しくなってくるよ。
だからやっぱここはまず先生に女に目覚めてもらって、それから自分が女の子だって、守られてもいい存在なんだって認識してもらわないとね。
そう思いながら、イタチさんの家に向かうため、シスイ先生の手を引いて家を出る。
「ほら、先生行こう」
そういうと、先生は凄くためらうような顔を見せながら、せわしなさそうに自分の右手で左腕をキュッと抱いて、気後れしたような不安そうな顔で「う……うん」と落ち着かなさそうに言った。
うーん……普段全くオシャレとは無縁に生活してるっぽいからやっぱ慣れないのかしら?
とは思うけど、あたしは気付いていないふりをして先生の手を引く。それに対し、先生はあたしの手を振り払いはしなかったけど、相変わらず慣れてない仕草で、恥ずかしそうに後に続いた。
なんかあれだね……今のシスイ先生、内気で恥ずかしがりの小さな子供みたいだなあ。
うーむ、これはこれで可愛いんだけど。こう保護欲擽られるというか。見てて守ってあげたくなるというか。自分より実力上なのは知っているけど、先生ってなんだかんだで甘いし、他人が傷つけられることについては過敏でも、自分については鈍感っぽいからこう余計に守って上げたい系っぽい。
……なんでこんだけ守ってあげたいオーラ振りまいてて、そういうの興味皆無なのかなあ。恋人と背中合わせで戦う女戦士よりも、大切に守られるお姫様役のがガチ嵌りするだろうに。家庭を守るってのも、女としての生き方戦い方としては有りだし大切だとわからないのかなあ。
いや、わからないから、あんなおかしな相談あたしに持ちかけてきたんだろうけど。
そんなことを思いつつあたしと先生は歩いていく。
やがて大通りに出ると、視線があちこちから集まってきた。
当たり前と言えば当たり前だけど、視線の殆どは男で、目当てはシスイ先生なわけだけど、それに対し先生はといえば、益々居心地悪そうに縮こまり、不安で揺れる目であたしを見ながらこう小声で訊ねた。
「なぁ……その、やっぱり私の格好、変じゃないか」
「あのね、変どころかよく似合っているから。先生はもっと自分の事自覚して堂々としたほうがいいから」
そうアドバイスするも、「だって……」なんて言いながら所在なさげに縋るようにあたしの袖を握ってくるもんだから、本当しょうがないなあと思う。
多分さ、イタチさんって、シスイ先生のこういうところにやられたんだろうなー……とかも思う。
でもまあ、視線が集まるのは無理もないよね。
元々シスイ先生は凄い美人とかでこそなかったけれど、童顔で可愛らしい顔立ちをしてて結構顔立ち自体は整っていたし、普段は化粧っ気なかったから健康的な可愛いらしさとか素朴な愛らしさとかが前面に出ていたけど、お化粧をした今の先生は美しさ2割増しで、恥じらいも艶めかしい大人の「女」な感じに仕上がっている。髪を結い上げたことによって大人っぽさに拍車がかかっているだろうし、覗くうなじが色っぽい。
それに元々身長は低めなわりにスタイルは良かったし、今先生の身を包んでいる赤い着物も、色合いこそ派手目なものを選んだけど、白梅と鶯といった落ち着いた柄色と黒いレースの帯が大人の落ち着きと色香を演出している。因みに下駄は深緑色で簪と揃いの蝶模様をあしらったもので、派手さは控えて先生の雰囲気に合わせた。
でも外見以上に衆目を集める事になったのは、先生の表情や雰囲気に物腰だとあたしは思う。
外見は大人の女の色香さえあるのに、表情はどことなく幼く不安げで、耳を赤らめながら恥じらいがちに俯く様とか、慣れない服装で醜態をさらさないようにか、どこか緊張感を持たせながら一歩一歩気をつけながら歩く様とか、何この生き物抱き締めてやりたい的なオーラを放っている。
それに元々先生って口調が男っぽくて時々凄く口が悪いくせに、なんでか行儀は良いんだよねえ。マナーにも煩いし、挨拶とか礼儀作法は結構きっちりしているというか。今だってそう。表情は俯きがちで不安そうなのに、背筋がぴーんと伸びてて姿勢がとても良いの。あー、良い教育受けてきたんだなーとか、親の教育が良かったんだなーって感じの立ち振る舞いというかね。子供好きで面倒見もいいし、子供が悪い事したら悪いと叱って、良い事したら褒めてって、他人の子供相手にふつーに出来るんだもんなあ。ああいうとこ本当凄いと思う。
そりゃあたしだって意識したら出来るかもだけど、シスイ先生の何が凄いかって、あれが無意識で出ている行動なとこなんだよね……やっぱ女子力高いって、シスイ先生。
……先生はさ、自分に近寄る男は殆どが体目当てだーとか言ってるけど、自分を知らないっていうか、多分さ、先生のそういう自然に出来ている行儀の良い立ち振る舞いとかにも惹かれて……なやつも絶対いると思うんだよね、あたしは。つかあたしが男だったら嫁に欲しいよ。
だって料理美味しいし、からかうと楽しいし、気が利くから気付いたら洗い立てのタオル差し出してくれたり、お手製のスポーツ飲料くれたり、至れり尽くせりだし。おまけに働き者で気立て良いし。綺麗好きだし。
……本当なんでこれで女心がわからないの?
多分これでもうちょっと真っ当な意味で女らしくしてたら、あそこまで同性受け悪くならなかっただろうに。嫌味に聞こえる自分卑下台詞の数々や男っぽい口調改めて、女子に溶け込む努力するだけで大分扱い変わるだろうに、惜しすぎるよ先生……やっぱり先生ってプライベートは駄目な人なんじゃ……。
うん、でもまあ……駄目な子ほど可愛いっていうしなあ。
今のあたしに不安そうについてくる様とか、なんていうか子犬っぽくて可愛い。すごい可愛い。そっちの趣味はないけど、小動物的な愛らしさでちょっとキュンとくる。
で、そう思ったのはあたしだけじゃなかったのか、群れの中から何人か「おい、声かけてみようぜ」とかコソコソした声が耳に届き、先生はビクリとしたように不安そうに肩を揺らしながら、あたしの袖を引き、おそるおそるというように上目遣いでチラリとあたしを見上げた。
(か、可愛い……!)
ちょ、何コレ可愛い。抱き締めて頭グリグリしたい! シスイ先生に惚れる奴らの気持ち今のあたしならわかる、凄くわかる。何これチョー可愛い。ああ、もう可愛いな、そんな心配そうな顔しなくても、ナンパ男ぐらいあたしがぶっ飛ばしてあげるから、おねえさんにどんと頼りなさいって!
(って、あたし落ち着け)
いや、なんかもう凄い子犬可愛いんだけど、落ち着くんだ、あたし。先生はこう見えてもあたしより6歳年上だし、なんだかんだで年下に守られる事は良しとしないタイプの人種だって。
こう童顔だし、あたしよりちっちゃくて、仕草や表情雰囲気とかなんかもう凄い子犬っぽいけど、先生のほうが年上、年上なんだってば。
……任務中はちゃんとしっかりしているし、年上に見えるのにな。
なのにどうしたものか、この守って上げたいオーラは。
でもあれだな……そのうちナンパ男だけじゃなくて変なのも釣れそうだし、このままじゃまずいかも。
多分シスイ先生ってナンパ男の相手とかあしらうのとか苦手っぽい気がするし。今の慣れない格好していると尚更だよねえ。こんな格好じゃ先生得意の瞬身術も服が破れる事とか気にして使えないだろうし。
なのであたしはこう先生に声をかけることにした。
「シスイ先生。ちょっとお手を拝借」
「? うん?」
先生はよくわからなさそうにキョトンとして小首を傾げると、そのまま危ぶむでもなくあたしの手に自分の手を素直に重ねる。それを見てあたしは「んじゃ失礼。先生、暴れないでね」と声をかけてそのままグイと腕を引っ張り、自分の腕の中に先生を倒れ込ませると、そのまま先生の体を抱き上げ、駆けた。
「へ?」
まさか衆目の面前であたしに抱き上げられ、あまつさえそのまま走ってゆかれるとは先生は思っても見なかったらしい……いや、普通は思わないか。先生は目をまん丸にしながら驚いた声を上げて、一拍したあと慌てるように言った。
「ちょっ、お前降ろせって」
「悪いけど、暴れないで。心配しなくてもうちはの集落に入る前には降ろすから」
そう告げると、自分の今着ている格好を思い出したのか、先生は暴れるという選択肢を選ぶ事も出来ず、少しの葛藤の後、落ちないようにだろう、あたしの胴体にきゅっと両腕を回して負担にならない程度の力でしがみついてきた。
それにああ、もう本当この人可愛いなー……なんでこれで乙女の自覚はないのかなあとか思っていると、先生は弱々しい声で呟く。
「ああ、もう最悪だ……クソ恥ずかしい……明日からどんな顔してあそこ歩けばいいんだ」
なんてボソボソ呟いているけど、多分先生が可愛いのが悪いんだと思うよ?
なんて思いながら「あはは」と笑った。
* * *
……散々な目にあった。
全く今日は一体どんな羞恥プレイ日和なんだ。なんてことを思いながら、オレは遠い眼で目的地である屋敷を見上げる。そんなオレに対して、原因の一端でもある気がする少女は何が楽しいのか、「じゃあ、先生またねー! 良ければ結果報告してねー」なんてニコニコ笑いながら別れた。
でもまあ……ある意味本番はこれからなのだろう、と思う。
「はぁ……」
ああ、気が重い。
なんていうか、年頃の娘っ子の行動力って侮れないというか凄いよなと思い知らされずにはいられなかったこの2週間だった。
まず、彼女はオレより先にミコトさんから攻略してきやがった。
イタチを喜ぶのがオレにとって一番の幸せであるという言質を取った上でさ、イタチさんを喜ばせたくないの? を武器にオレをめかし込ませようとあの手この手……しかも帰ってきたイタチへのサプライズとして二人っきりにさせてあげましょう的なことをミコトさんに打診して、おかげで今夜はミコトさんとフガクさん、サスケちゃんの3人は1泊2日の温泉旅行中ですよ?
おかげでこうしてオレは化粧に女物のバッチリ着物姿でイタチの家の前に立っているわけですよ……ううう……。
大体なあ……こんなんで本当にイタチが喜ぶものなのかなあ?
だって、オレだしなあ……。
というか、さっきから顔気持ち悪いのもだけど、もう本当やめたいんだけど、これ……。
でもまあ、イタチを労ってやりたいということだけについては賛成意見なんだけど……。
「まあ、とりあえず……夕食作ってやるか」
そう思って、イタチの家の台所でエプロンを着物の上から身につけた。
……まあ、長期任務お疲れ様を兼ねて、あいつの好物作ってやろう。キャベツたっぷり野菜スープに、白菜の胡麻和え、キャベツ入りコロッケに、昆布にぎり。デザートに白玉ぜんざいとかもいいかな、うん。……今度羊羹作りに挑戦してみようか。
(うん、まぁそうだな……)
この格好には正直不満しかないけど……。
「喜んでくれたら嬉しいなあ」
そう思って料理しながらイタチの帰還を待った。
空いた時間を台所の掃除をしながら待っていると、どうやらイタチは漸く帰ってきたらしい。
「ただいま」
そう聞き慣れた声で帰還を告げる挨拶を耳にして、オレはイタチを出迎えるために、エプロンを外し手を洗ってから玄関まで向かった。
「イタチおかえり。長期任務お疲れ様」
そうオレが声をかけると、イタチは呆気にとられたように一瞬目を見開く。
(……やっぱ変なのかなあ、この格好)
いつもと違い過ぎて気持ち悪いとか? だよな、オレも気持ち悪いし。
とか思いつつも、それを出来るだけ表に出さないようにしながらオレは言葉を続けた。
「多分連絡は行ってると思うけど、ミコトさんたちはちょっと今温泉旅行中で家にいないから、二人っきりということになるけど、夕食は出来ているから……ってイタチ?」
「その格好は……どうしたんだ」
急に腕を取られ、やけに真剣な眼差しで見られながらの問いに居心地の悪さを覚えながらも、オレは答える。
「その……今日、お前が帰ってくるから……(おめかしするべきだと押し切られて半分無理矢理着せられた……ってのは言いづらいし言わなくていいか。知られるの情けないし)変、かな、やっぱり」
そうオレが気恥ずかしさと自分への情けなさに頬を赤らめつつ、俯きながら答えると、イタチはやけに真剣みを帯びた低くやたら良い声でこう問うた。
「つまり、オレのためか?」
うん……? まあ、結果的にはそうなるのか。
「う……うん」
そうオレが小さく答えると、イタチはふっと酷く優しげな嬉しそうな顔を一瞬浮かべて、次の瞬間オレの体を抱き上げ歩き出した。
「うわっ!?」
ただでさえ慣れない服で動きづらいのに、急に抱き上げられたもんだから、バランスを上手くとれずギュッとイタチの頭を胸の間に挟み込むようにして抱き締めちまった。そんなオレの態度にさえなんだかしらないがイタチは嬉しそうにオレの胸の臭いをスンと嗅ぎながら、前は見えてないだろうに、しかし危なげなところのない仕草のまま前へと進んだ。
……いやいや、大分イタチの突飛な行動にもなれたつもりだけどこれはないだろ。
そう思ってオレは慌てて、「ちょ、イタチ、お前降ろせってば」と打診を図るが、それに対しイタチは「断る。お前が可愛いことをいうのが悪い」などと言いながら廊下を進み続けた。
ちょ、可愛いってお前、オレがいつそんなもん言った!?
そんなオレの内心のパニックを置き去りにして、イタチの足はイタチの私室へと向かった。
そして戸を開け、オレを降ろすと素早く手際よく布団を敷いていくんですが、えっと……これってもしかしなくても、もしかしてですよね?
え……え?
「ひゃ……!?」
思う間にもイタチはシュルリと上着を脱ぎだして、オレに再び向かい合い、オレの体を片手ですくい上げるようにして、布団の上に押し倒し直すと、オレの上に覆い被さりながら、酷く色気のある低く良い声でオレの名を囁いた。
「シスイ……」
それはどっからどうみても、どこからどう聞いても情欲の滲んだ声で、内心「ちょっとまてええーーー!」と叫びたい気分だが、あんまりにもあんまりな唐突のR18展開にオレの言語機能はフリーズしていた。
ちょっとまて、おいまてこら!? 一体どうして何故にそんな帰って早々お前という奴はスイッチ入ってんだ!?
いや、そりゃね、暫くしてなかったんならしたくなるのは男の性ってもんでしょうや。そこは元男としてもオレも理解示しますよ!? でもまあ、本気で待て。今まだ夜の7時過ぎだぞ!? 欲情するには早すぎだろ。というか、メシと風呂が先で、そういうのが終わって段階踏んでからが正しい流れってものだろ!? え? 何お前帰るなり欲情しちゃってんの!?
そんな風に内心パニックに陥るオレがなんとか自分を取り戻したのは、イタチがオレに貪るような口付けを仕掛けてきた後だった。
「ん……! ふ……ぅ、あ」
何度も角度を変えられ、口蓋をなぞるように、求めるように執拗に与えられる口付けにビクリと体を揺らす。まるで飢えた獣のような口付けは、あまりにもクールで冷静じみたイタチの表情とは釣り合って無くて、冷たそうな見た目とは裏腹に酷く情熱的で息苦しい。
「ぁ……ふ……ん、んんっ……は、ぁ……ぁ」
まるで息すら奪うようなキスに、頭がクラクラしそうだ。そんなオレの顎に片手をかけて、イタチはもう片方の手をオレの腰へとまわす。オレの足と足の間に割り込むようにイタチの片足が挟み込まれ、オレの太ももの辺りには既にズボンの上から存在を主張し始めている熱の塊が擦りつけられ……ってちょっと、まて!
「ちょ、待てって、イタチ」
「……なんだ」
つい先ほどまでの放心状態から慌てたようにかけられたオレの言葉を前に、イタチはどことなく無表情じみた顔の中にムッとした色を浮かべオレの言葉の意味を問う。
それに対し、オレは言った。
「食事、夕食出来ているから、先にそっち食べよう! な?」
「食事か……」
それに隠れ食道楽属性持ちのイタチはなんだかんだいって少しの興味にも似た反応を示す。
お、これはいけるか? そう思ったオレは続けた。
「そうそう。今夜の夕食は野菜スープに白菜の胡麻和え、コロッケに昆布にぎりだ。お前の好きなキャベツもたっぷり入ってるし、食後のデザートに白玉ぜんざいも作ったんだ」
そうオレが笑って続けると、イタチもふと優しげな笑みを浮かべ、オレの頬を撫でながら「それは楽しみだな」と答え、お、これはいけるか? と思った次の瞬間、しかしイタチはこんなことを言い出した。
「だが、オレは今は食事よりもお前のほうが食べたい」
…………………………はい、説得失敗ーーー!?
うわああ、何がお前のほうが食べたいだよ、馬鹿じゃねえの、本当馬鹿じゃないの。なんでお前はそんなキザなの、あれなの、恥ずかしくないの、真顔でなんでそんな台詞言えるの。オレは恥ずかしいよ、もう涙出そうだよ、涙ちょちょ切れだよ。
「あ……ぅあッ」
そんなこと思っている間に首筋チュッチュ吸い上げられてるしっ! ええい、ビクビク一々反応するなオレ、イタチの思うつぼだぞ。ていうか、お前なんちゅうところにキスマークつけてんだぁああ! ヘタしたらそこ服着ても見えるだろうが、馬鹿ッ!
「ひぅっ……!? ぁ、ちょ、イタチ、ヤダッ」
ていうか、着物の割れ目開いて、人が碌に抵抗もしてないのを良い事に調子乗って太もも撫で回しているし~……ていうか、人が太もも弱いの知っててオレへの説得より先にやるあたりお前も大概良い性格してるよね!?
ていうか、ヤバイ。このペースじゃどう考えてもこのままなし崩し的にあっはんうっふん展開に……!
頑張れオレ、なんとかするんだオレ。
というか、しなきゃいけないことは知ってても、こんな格好でやるとか嫌だ。コスプレプレイみたいでマジキモイ。
「あひぅ……! ァ、ッ」
とか思ってると太ももの内側吸い上げられたし! ちょ、そこ敏感だから本当やめてって!
「ひっ!? ぁ、ぅうあ」
なんて思ってたら下着ズリ下げられて、直接びらびら舐められて陰核吸い上げられたし!
うわああ、もうイタチの馬鹿ッ。阿呆ッ。
ていうかオレまだ風呂入ってないよ!?
入浴もしてないのにやるか、普通!?
とか思ってたらペロペロ舐め出しやがったし!
恥ずかしすぎて死ねるわ、畜生、イタチの大馬鹿野郎!
「ひんっ……っぁ、イタチ、ちょっと、お前、やめろって」
そうグイとイタチの頭を引っ張りやめさせようとしたけど、イタチといえば逆にオレのマンコに益々口を寄せて舌を立てるようにしながらチュウチュウしていくばかりだった。
何これ、オレ泣きそう。そう思いながら精一杯の気持ちを込めてオレは叫んだ。
「まだ私風呂入ってないから! 汚いからやめろってば」
それに対し、漸くイタチは顔を上げたかと思えば短くこう言った。
「オレは気にしないが」
「オ……私は気にするよ!?」
ていうか、普通気にするだろ!? なんでお前そんな平然と入浴前のマンコでも平気とか答えちゃってんの!? ……こ、これが価値観の違いってやつか、やばい。目眩しそう。
この恥ずかしさはあれだな……前世での初セックス時に彼女に恥垢溜まっていることと、ペニスの洗い方がなっていないことを指摘された時のあれと通じるあれだな。
ともかくオレは恥ずかしすぎて死にそうなんだが、なんでお前は恥ずかしくないんだ……!
なんて思っているとイタチは「シスイ……」とオレの名を呼びながら着物の前を開いて、乳房を指で撫で転がすようにしながら、チュウとオレの心臓の上の辺りに吸い付いた。
……っていうか、あれ? お前ひょっとして、入浴無しでエロ突入する気満々だけでなく、ひょっとして着衣エロになだれ込む気満々なんじゃ……?
「ちょ、イタチ、本当お前待てって。服、このままじゃ皺になるから……ッ」
「それぐらいオレが後でいくらでも弁償してやる」
ああいえばこういうだな!? 本当お前は。
「そういう問題じゃないって……ん、ッぁ」
乳首を吸い上げられながら、マンコに指を沿わされ、オレはビクリと体を揺らしながら言えば、それに対しイタチはどことなく不機嫌そうにも聞こえる声でこう言葉を並べた。
「じゃあ何が問題だ。オレは今すぐにでも、今のオマエごとお前が欲しい。お前の肌を暴き、蜜を啜り、その最奥にオレという存在を刻み込みたい」
その言葉は常のイタチにない程、酷く熱を帯びていて……余裕がない事をまるで告げるかのようで。
「お前を抱き締め、お前に口付けを贈り、オレの腕の中で乱れ咲くお前を見たい」
そうして愛おしげに触れる指の温度が、言葉を告げる唇が、真っ直ぐに向けられた切れ長の眼差しが、全てがいっそ誠実なほどに1つだけを求めていた。
「シスイ。オレはオマエが欲しい」
「……ッ!」
続く