そんな今回ですが、第4話の「幻想淫夢」が執筆進みませんので、急遽今回はしーたん視点の話にさせていただきました。多分③か④くらいで完結すると思いますが、まあネタバレ注意? かもしれません。大体今回の収録話はしーたん15歳~16歳の時の内容です。本編でこんな事件があったとき、しーたんは実はこんなこと考えていたって話なんですけど、副題こそ軽いタイトルですが、結構重い事実が判明するかもしれません。まあ、①の時点ではどっちかというと脳内ツッコミ日記の色合いが強いんですが、回が進む事に多分酷いことになっていくと思います。
ではどうぞ。
10月18日。
オレはこの日、輪姦された時に撮られた写真を盾に脅され、奴らの玩具になることを結局は承諾した。
自分でも馬鹿だとは思う。けれど他に切り抜ける方法を思いつかなかったし、なにより絶対にあの夜のことは知られたくなかった。
弟のように思っているイタチにあんなことを知られるなんて絶対に嫌だったし、それにうちは一族のことを考えても、今のこの状況でオレの事件を知られたら、それが切欠に完全に彼らの思想がクーデターに傾く可能性があったというのも、承諾した理由の1つでもあった。
うちは一族は同族に対しては情が深いし、優しく暖かい人達ではあったが、一方で一族以外を下に見るところがあったし、感情的な人が多く、木の葉の上層部とは上手くいっていなかった。プライドだって高い。
自分たちは優れているのだ、という想いが強い彼らは自分たちはこれほどに木の葉に貢献しているのに、里は自分たちを冷遇していると、暗部が監視についているのもあり、不満を強く持っていた。
それでもそれなりに上手くはやってきていたはずだが、4年前の九尾事件が切欠で更に上層部とは関係悪化の一途を辿っていたといえる。そのことからちらほら近年になって、クーデターを起こして里のてっぺんをとろうという声が一族内で上がっていた。
オレは一族が冷遇されているなんてただの被害妄想だと思うし、一族のみんなのことは好きでもそれでもクーデターを起こすなんて反対だった。
そもそも彼らは何もわかっていない。本当にそんなものを起こしたら、それが切欠で一族は女子供まで皆殺しにされるだろうし、戦争を誘発するだろうことや、てっぺんをうちはが取ったところで誰1人付いてこないだろうことも、頭に血が上っている彼らはわかっていないのだ。
だからオレは、今年の頭から一族の集会の度にクーデターが如何に無意味であるか説得を続けてきた。
未だ、全員を説得には至らず、一族の中にはクーデターを推している一派がいる。そんな中で里の人間にオレが輪姦を受けたなんてことを知られたら、一気にクーデター論が加速する可能性が高いことくらいはオレの頭でもわかっていた。
だって、うちは一族がどういう人たちかなど、うちは一族で今生では育ったオレが一番よく知っている。
多分、襲われたとしっても、一族の皆はオレを責めたりはしないのだろう。不憫だと、気の毒だとオレの肩を持つのだろう。そして、その後襲った連中への怒りが里へと向き、一族のメンツに傷をつけたとそれを理由に決起するのだろう。そういう人達だと知っていた。
だから知られてはならなかった。
というのは……ただの言い訳だとわかっている。
本当はオレがイタチに知られるのが怖くて仕方ないだけだ。
知られたらどんな眼で見られるのか、想像するだけで恐ろしい。
多分、イタチは知ってもオレを責めたりはしない気がする。けれど、そう言う問題ではないのだ。
うちは一族の事情のことを考慮から外せば、奴らに犯されたのだと、そう世間に知られ、後ろ指を指される結果になったとしても、世間から誹謗中傷の嵐に晒されることになっても、それで奴らをレイプ犯として捕まえ、罪を償わせることが出来るのなら安いものだろうと分かっちゃいるんだ。だけどきっとオレは耐えられない。
実の弟のように想ってきたイタチに、腫れ物に触るような扱いを受けることや、哀れみの眼を向けられることは、それだけはどうしても耐えられそうになかった。この世界で、イタチの側に居る時が一番安らげる時だったからこそ、その楽園が失われるのがどうしようもなく、怖かった。同情なんてされたくもないし、あんな汚らわしい姿、たとえ写真とはいえ見られたくもない。
世界中に誹謗中傷されても、イタチにそんな眼で見られるのは嫌だった。レイプされたことよりもずっとずっと嫌だった。
わかっている、自分が臆病なだけだってことは。だけどそれでも嫌だったんだ。
一瞬、別天神を使って写真を回収することも脳裏をチラリとよぎったけれど、だけど別天神はその高すぎる力と引き替えに再発動に10年以上の時がかかるという代物だ。オレには使えない。なにより、私用の為に別天神を使い、その能力を他者に知られるリスクを犯すわけにはいかないというのもわかっていたんだ。ダンゾウあたりに別天神を知られれば原作のシスイの二の舞を踏む可能性があったのだから。
オレはまだ何も成していない。なのにその前に消されるわけにはいかなかった。
……悔しかった。
男に口づけをするのも、身を委ねるのも気持ち悪かった。
いつか、奴らが油断している隙に必ず証拠品を取り戻そうと、それまでの我慢だと大人しくするよう自分に言い聞かせても尚吐き気がしたし、自分で決めたこととはいえ、奴らの言うことを聞く度、好き勝手される度に勝手に心は傷つき続けた。
だが、それにしても奴らは信じられないくらい変態だった。
前世でその手のAVを店で見かけたことくらいはあったし、そういうのが趣味の奴がいる『らしい』ということくらいオレだって知識としては知っていたはずなのに、オレは奴らの変態ぶりを甘く見ていたらしいということに、承諾したあとで気付いた。
まず、綺麗にしろとか言われてチンコを口ん中に突っ込まれたことからしてそうだ。
フェラ自体はそこまで変態的なプレイとはいえねえけど、口ん中突っ込まれたこれが異臭を放っている上に、チンカスがびっしり浮いて居てさ……もう酷ぇのなんの。味も匂いも触感も想像を絶した代物で、もの凄く気持ち悪くて吐きそうだった。
ただ、ここで吐いたら状況は更に悪化するんだろうなって想像はついていたから、必死に吐き気と戦って奉仕してやったけどさ、なんていうの? 本当に酷ぇ、としか言いようがなかったんですけど……。
これを隅々まで舐めて、チンカスは全部食えとか頭おかしいんじゃねえの? とはっきりいって思った。
ていうか、初めて犯されたときは口に突っ込まれはしなかったし、目隠しされた上に手足縛られて、余裕なんてなかったから気付かなかったけど、なんでチンコをここまでチンカスだらけに出来るんだよ。気持ち悪いよ、不潔だよ。オマエラ風呂入ってねえのかよ。
長期任務の時はしょうがねえけどさ、里に居るときくらい毎日風呂入って洗えよ! 病気なるぞ、何考えてんだよ。皮被っているってんならともかく、オマエラ剥けてんじゃねえか。剥けてんだから洗うのだって別に大変じゃねえだろうが、なんでそんな汚い状態でほっといてんだよ、アホなの? 馬鹿なの? ていうかこんな恥垢だらけのチンポ人に見せて平気って恥ずかしくないの? 羞恥心とかないのか、こいつら。心底理解出来ないんですけど。
オレなんか前世で初Hの時、彼女に「ちょっと臭い」って言われてチンコの皮剥かれただけで凄いショックだったし、「不潔なままほっといたら病気なるよ」って言われて、自分じゃ綺麗にしてたつもりなのにそうじゃなかったこととか自分の知識不足っぷりが凄い恥ずかしかったのに、なんでこいつらこんなプンプン臭うチンカスだらけのチンコで恥ずかしくねえんだよ。あまつさえ全部舐め取れ? 正気で言ってんのか。
ついでに口も臭いし。オマエラ歯磨いてないのかよ。磨けよ。食事が終わったら5分以内に歯を磨けって母親に習ったりしなかったのかよ。1日3回と寝る前歯を磨くのはエチケットつうか常識だろ。
そりゃ学校帰りの買い食いの時までは磨かないけどさ、仮にも忍びって職についている奴が口臭プンプンさせているってどういうことだよ。下忍の任務じゃそう危険な目にあわねえからだらしないのかもしれないけどさ、下手すると命取りになるぞ。自分が忍びって自覚ねえのかよ。そんなんだから出世出来ねえんだよ。
あと人の口んなかに次々チンコ押し込みやがって、なんなのこいつら。本気でなんなの。
そりゃ、フェラとかさ、男の憧れの1つだよ。中学時代とかオレも恋人出来たらやってほしいってよく夢想したよ。舐めて貰ったら気持ちいいんだろうなって思ってたって。
でも、あれだよ。確かにフェラは気持ちいいことは気持ちいいけどさ、実際にされてみたら思ったほどは気持ちよくはねえじゃん? 自分の慣れた手コキのほうが快楽はでかいというか、フェラされてもヌルヌルして暖かいだけでイマイチ刺激が足りないというか、多分何時間されてもフェラの刺激だけじゃイけないだろうなーっていうか。
それでも好きな人が自分のモノを咥えてくれていると思うだけで感動したし、たとえぎこちなくてもそうやってしてくれるというだけで嬉しかったし、愛されている気がして満足感は強かったから、フェラされること自体は好きだったし、好きな人にされたらそれだけで勃ったのも事実だ。
けど、それはしてくれる相手が好きな人で、自分の恋人だからだ。
実際の快楽以上に、好きな人がしてくれているというシチュエーションと、視覚からの情報にこそ性的興奮を覚えていたというのが実情なわけで……そしてこいつらはオレのことが別に好きだからさせているわけじゃない。
だってのに、このフル勃起ぶり。
そりゃさっさと終わらせるために、自分がされるならこういうふうにされたかったっていうやり方でしてはいるけどさ、なんでこいつらは好きでもない相手に咥えさせてこんなに硬くしてんだよ……。マジで理解出来ない。
気持ちいいことは気持ちいいだろうけど、まだ手コキのほうが純粋に快楽だけなら上だろうが……いや、慣れてない女の手コキじゃ抜けないけどさ。でもなんでこいつら次々オレの口んなかチンコ押し込んでくるの?
ていうか、好きでもない相手に咥えさせるなんてオレだったら絶対無理、出来ない。だってさ、噛まれたらどうすんだよ。よく知りもしない相手に突っ込んで食いちぎられたらとか思ったら、怖くて出来ないだろ。食いちぎられるかも知れないとかこいつら想像すらしねえのか?
ていうか、苦しいわ、気持ち悪いわ、先走り苦いわ、感触にゾッとするわで脅されていることすら忘れて反射的に噛み千切りそうになったし、どんだけその衝動を押さえるのに理性動員したと思ってんだ。本気でこいつら気持ち悪い。頭おかしいんじゃないか。
「ん……っむ、ふ……」
「おら、全部飲めよ」
……なんでそんな嬉しそうなんだ。意味わかんねえ。
しかも、1度目の時もそうだったけど、突っ込む場所もケツもマンコもおかまいなしだし、なんでケツに突っ込もうなんて発想になるんだよ……ケツとか普通に汚いだろ。絶対あんなとこ突っ込んだら臭いし、見えない細菌うようよつくだろ。穴がありゃそれでいいのかよ。病気なんぞ。
あとマジ痛い。碌に濡れてもいねえうちに突っ込んでガンガン揺さぶりやがって、マジ痛い。前回もそうだったけど、ここまでやられるのが痛いとか知らなかった。髪ひっぱられるのも痛いけど、それ以上に前も後ろもどっちも凄い痛い。突っ込む時だけは入らないからと油使われたから切れはしなかったけど、もしかしたら腫れて炎症起こしているのかもしれない。
中出しされることについては、前回もそうだったけど、やっぱりゾッとした。
そんなのが3時間は続いた。
最後、奴らはオレの陰部に生えた毛を全部剃って、「次から剃ってこい。やらなきゃもっと酷くしてやる」とか言いながら、オレの太ももの内側に火を付けたタバコを2,3カ所押しつけた。そのa熱さと痛みについ反射的にビクリと体を跳ねさせるオレを、奴らは愉快そうに見下ろしていた。
奴らに追い出された後、自分で火傷やアソコの手当他したけど、やっぱり炎症を起こしていた。とりあえず見た目だけは取り繕ったし、薬もきちんと塗ったけど、排泄の度、3日くらいケツもマンコも痛くて仕方なかった。
10月23日。
再び奴らに呼び出された。
「綺麗にしてやる」
とか言われて、浣腸液を入れられ、奴らの目の前で排泄させられた。あまりの羞恥と屈辱のあまり写輪眼を使いかけたが、その直前に写真を盾に「バラまかれてえのか」と言われて正気に戻った己が恨めしい。
その後奴らはフェラさせてオレの口ん中に全員一通り吐き出すと、次にオレの頭に向かって小便を引っかけ始めた。そのあまりの想像を超えた出来事を前に思考が止まった。なんて汚いんだ。そんなオレの頭を掴んで奴らの1人が、「何ボーとしてやがんだ、舐めるんだよ」と言いながら、小便の水たまりにオレの顔を突っ込んだ。
アンモニア臭が酷くて、まだ生暖かいそれが気持ち悪くて吐くかと思った。
なんて奴らだ、チンカスだらけのチンコ舐めさせられた時も汚い汚い思ってたけど、不潔にもほどがある。信じられない。こんなのを、舐めろと? 飲めと? ああ、そうか。オレを病気にしたいのか。
思考だけは現実逃避を始めているけど、だからといって状況は変わらない。
男はオレの頭を掴んだまま、ぐいぐいと顔を小便だらけの床に押しつけている。オレは出来るだけ頭を真っ白にしてそれを舐めた。その味や感触についてはコメントを控える。ただ、酷い、としかいえない。
奴らはこのあと任務があるらしい。最後に、珍しくオレをシャワーにつけて、頭についた小便だけでも洗い流した後、奴らの1人が女性物の下着を箱一杯オレに押しつけていった。
「次からそれを着けろ。いいか、もうそんなの着けてくるんじゃねえぞ」
箱から出てきた下着はパンツにしろ、ブラジャーにしろ、レースやフリルがこれでもかといったくらいあしらわれた代物ばかりで、中にはスケスケのエロ下着と呼ばれるものまであった。色んな意味で目を疑った。
……なんでオレの身体サイズ知ってんだよ。自分でもよくわかってないのに。いや、それよりコイツラ男3人でどのツラ下げて女物の下着買いに行ったんだよ、怖ぇよ。軽くホラーだろ。怖すぎる。あと、オレは着せ替え人形か。
……家に帰るまで、渡されたそれを燃やしたい衝動と戦い続けた。
シャワーを浴びて、それまでの痕跡を消す作業をしていると、初回、前回、今回とされたことも相俟って、かなり死にたい気分になった。いっそ殺して欲しい。だけど、情勢が不安定なこんな時にクーデター反対派筆頭だったオレが死んだらどうなるのか、考えたら死ぬわけにはいかなかった。
何より、オレが死んだ後、原作同様にイタチが両親を手に掛ける展開になったらと思ったら、死んでも死にきれない。未だうちは一族のクーデター論は収まっちゃいない。この世界のこの後が原作と同じ道にならないとどうしていえるんだ。イタチが泣きながら両親を殺める未来は、オレはどうしても嫌だった。
そうだ、感情なんて捨ててしまえ。どうせ奴らはオレのことを「人」だなんて思っていないんだから、オレも傷つく必要なんてない。ただの人形に徹しろ。そうすれば痛くなんてない。
12月 6日。
オレは奴らが脅しに使用するために撮っていた写真を回収するため、奴らのアパートに侵入していた。
これまでも散々信じられないようなあれこれを受けまくってきたが、まあその内容については割愛する。どうせ思い出したくもない内容だ。
「……無い」
けれど、写真は見つかったのに、肝心のネガが見つからない。もしかして、あの日言っていた通りネガは別のやつが持っているのだろうか。さっさと切り上げるつもりだったのに、どこを探しても見つからないことにオレは焦っていた。思えばそうやって冷静になりきれてなかったのが悪かったのだろう。
「何やってんのかなぁ? シスイちゃんは」
そういって、いつの間にやら帰ってきていた奴らのうちの1人が笑った。
悪い子にはお仕置きが必要だな、とそんな言葉をかけて、奴らはオレを後ろ手に縛り吊すと、鞭で打ち始めた。
「……~~~ッ!」
皮膚が破れ、血が滲むほど鞭打たれてもオレの口から声が出ることはない。かまされていた猿轡が全ての悲鳴を吸い込み、僅かにくぐもった音が出るばかりだった。
「オラァッ!」
そう喜色ばんだかけ声と共に何度も鞭が振り上げられる。何度も、何度も。既に痛いのか、熱いのかさえわからない。なんだかんだいって忍びとして育ち、忍びとして鍛えてきたからこそ耐えられているだけで、きっと一般人だったらとっくに気を失っている……いや、最悪死んでいるくらいに鞭打ちは続いた。
いっそ、気を失ってしまいたい。けれど、忍びとして育てられたこの体は安易には意識を手放してはくれなかった。ただ、断続的な痛みが続く中で、終わりだけを待ち続けていた。
それが30分だったのか1時間だったのか、それとももっと長い時間だったのか、時間の感覚が曖昧になっていてわからない。
ただそのうちに興奮したのだろう。そいつはオレの縄を切り落とすと、ズタズタになった血まみれで皮がズル剥けの背中に指を這わし、ピチャリと血を舐めとると、慣らしもせず、オレの中にチンコを突っ込み、2,3度揺らすと中で果てた。でも、背中が痛くて、痛くて、もう中に突っ込まれた感覚さえわからなかった。
終わった後、「いいか、もう二度とこんなことすんじゃねえぞ。それと……覚悟しとけよ」と男は言ってからオレを解放した。
オレはふらつきながらも猫に変化して家まで帰り、それから中の始末もそこそこに背中に手を翳して、おざなりな掌仙術を使って背中の傷を癒した。それでも元々医療忍術は得意なわけではないから、全部は治りきらなかったわけだけど、それでも表層だけは出来る限り癒して、薬草を擦り、手当をした。でもきっと痕が残るんだろうなとそんなことをぼんやり思った。
でももう何も考えられなかった。
とりあえずオレは、出来るだけ害の低い避妊薬を飲んで眠った。避妊薬といっても、それを飲んだからといって絶対に大丈夫なんて保障はない上に、案外こういった薬は害もあるから頼りたくはなかったけれど、それでも何も飲まないよりは気休めにはなった。
そして次の日、オレは男が言っていた「覚悟しとけよ」という言葉の意味を知ることになる。
……里中に噂が流されていたのだ。
曰く、オレは淫売で、金さえ払えば誰とでも寝るのだと。実際、それを信じた男に金を押しつけられ襲われそうになる回数がグンと上がったし、元々今生では女の子には嫌われていたけど、面と向かって侮辱されることも、聞こえるように陰口を叩かれることもずっと増えた。顔面に唾を吐きかけられたことだってある。
……針のむしろに居座っている気分だ。
うちは一族のみんなは、「噂は噂だ」とオレの潔白を信じてくれたけど、曖昧に笑ってそれを流しはしているけど、それが一層苦しかった。
確かに、金を受け取って体を売ったりなんてしていない。だけど、いくら脅されたとはいえ、あいつらに……男に体を好きにさせているのは事実だ。そういう意味では世間の声は間違っては居ない。そうだ、オレは汚いんだ。この身で汚れていないところなんてない。血まみれで嘘まみれで、穢らわしくて虫酸が走る。
……いっそ死ねばいいのに。
任務に付いている最中、このまま殺してはくれないかと、そんな誘惑が時折脳裏をよぎった。けれど、そんなことをすれば、同行している仲間に迷惑がかかるとわかっているんだ。だからその誘惑を振り払い、オレは己に与えられた任務を遂行し続けた。
それでもこの迷路に先など見えない。
オレが本当の意味で落ち着くのはイタチの側にいるときくらいのものだ。
偏見などなく、いつも通りに接してくれるこの弟分の存在に癒されていた。いつも変わらぬ優しさが嬉しくて、だから、オレはきっと益々それでイタチに依存していたんだ。そうしないと、どうやって生きて良いのかさえわからなかった。イタチはオレを待ってくれると、だから帰らないと、いつも通りのオレに戻らなきゃいけないと思いでもしなかったら色んな意味で押しつぶされそうだった。
イタチといつものように団子屋で新作の和菓子に舌鼓を打ちながら、笑ってお茶を飲みながらたわいない会話を交わす。ただ、オレはそんなささやかな幸せさえあれば良かったんだ。そんな些細な日常が何よりも大切で愛しい宝物だった。
この世界の父も母ももう亡い。親友も既に失った。一族は同胞であると同時にある意味最大の敵だ。オレに残されているのはイタチやサスケ、アカデミーの子供達くらいのものだ。
イタチはオレにとっては血が繋がっていなくても弟みたいな存在だ。この世界の誰よりも大切だし、里と平和を愛するイタチならば将来素晴らしい火影になれるんじゃないかと思っている。きっとイタチならばオレには想像も付かない偉業を成せる男になれると、そう信じていた。イタチの作る未来をオレは見たいと、そう思っていた。
だから、こいつを生かすためなら、原作とは違う未来を呼ぶためなら、オレの命や目くらいいくらでも捧げようとそう強く思っていた。たとえオレのほうが弱かったとしても、それでも大人になるその時まではオレが守ってやりたいと思っていた。これまでずっとイタチの存在にオレは救われ続けてきたから、だからイタチに幸せを貰った分だけ、それを返してやりたかった。こいつが不幸になる姿を見たくなんてなかった。
4月27日。
いつものように奴らに呼び出されたら、奴らのうちの1人が怪我をしていた。
つい怪我を治してしまった。自分を脅して好きにしているようなやつの傷を治してやるなんて自分でも一体何をしているのだろう、とそう思う。
……馬鹿みたいだ。どうせ治そうが治すまいがオレには関係ないのに。
6月14日。
何故か奴らに「お前は料理を作れるのか」と尋ねられた。「一通りは」そう答えると、「作れ」とそう言われた。
しかし、作れっていうわりには冷蔵庫の中にはアルコールと酒のつまみくらいしか入っていない。それに戸惑うオレに対し、適当に何か買ってこいとそう奴らは言った。オレはそれにただ従った。
またおかしなことを考えついたのだろうとそう思ったが、既に反論することさえ馬鹿らしかったし、何より逆らったところでメリットなどない。いつかの二の舞はこりごりだったし―――あれのせいで、寝る時間が益々減った―――、最近はうちは一族の会合ではクーデター派が発言力を強めていて、連日のやりあいに疲れていて、奴らに反論する気力すらなかったというのもある。さっさと終わらせてさっさと帰って、さっさと寝たかった。どうせ奴らはオレを人扱いしていないんだ、ならオレだって自分を人扱いするのは止めてやる。ただの人形になりきってしまえばいいんだ。そう思えば何も傷つかない。人形は人形らしく役目をこなすだけだ。
途中、集中力を欠く出来事も多かったながらも奴らの要望通り料理を作り上げた。
そしてまるでガキみたいな顔を晒して、放心気味に奴らは「美味い」とそう言う。
……まさかこの絶対理解出来ない人種としか思っていなかったこいつらに、素で褒められるなんて想像すらしていなかった。そのあまりの不意打ちにうっかり照れるあたりオレはどうかしている。
たとえ相手が誰だろうが、恨んでいる相手だろうが純粋な賛辞は、裏がなく吐かれた言葉だとわかっているからこそ照れくさくなってしまったんだが。
しかし、その後奴らは「美味い、美味い」とやたら絶賛しながら飯食って、それ以来度々オレに飯作らせるようになったわけだが、それで思ったこととしては、ひょっとしてこいつら母親とかいたことねえのか? ってことだった。
だって、オレ程度の料理の腕前なんて別に珍しくはねえだろ。そりゃイタチはオレの作る料理が好きだっていってくれたけどさ、オレの料理がそこまで絶賛されるほど素晴らしいものだと自惚れることが出来るほど身の程知らずのつもりはねえのよ? そりゃ作れるレパートリーは多いけどさ、味は普通っていうか、極一般的な家庭メニューしか作ってないよなあーっていうかな。
なのにこの賞賛っぷり。加えて、あの野菜処か肉すら入ってないアルコールオンリーな冷蔵庫。こいつらの食生活どうなってんだ……食は体の基本なのに、よくその歳まで何事もなく生きて来れたな。不潔な上に食生活まで乱れてて口とかヤニ臭いのに健康とか、ゴキブリ並の生命力だな。ある意味尊敬するぞ。オレなんか病気が怖くてコイツラとしたあとかする前は必ず予防系の薬飲むのに……。
けど、最中と違って毎度のようにガキのようにオレの料理を絶賛して「美味い、美味い」と言いながら食うこいつらを見ているうちに、オレの目には段々こいつらが図体がでかいだけのガキ共に見えてきた。
こいつら、多分母親とかいたことねえんだろうな。身近に女とかいたことなくて、だからあんな風に女に対して物みてえな扱いが出来るんだ。ひょっとして女に対するあの扱いってエディプスコンプレックスがひん曲がったものの一種なのか? とそう思った。
風呂は毎日入るものだとか、歯は磨くのがエチケットだとか、そういう常識を教えてくれる人とかいなかったからこうなっちまったのか?
そう思うと、オレなんかの手料理で喜んでいる奴らが、今まで絶対理解出来ない人種だと思い続けてきた奴らが急に哀れになった。きっとこいつらは女との接し方も知らずに図体だけ大人になってしまったんだろう。そう思うと少しだけ可哀想な気がした。ある意味こいつらも時代の犠牲者なんだろう。
……だからといってレイプしたり、人を脅して言うこと聞かせるのは屑としかいえないけどな。
いいよ、もう、オレの手料理で良けりゃたんと食え。食っちまえ。はっきりいって恨みが多すぎてオマエラを好きになることは絶対無いと断言出来るが、なんていうかこんなもんで喜ぶこいつらは哀れ過ぎる。
まあ、憐れみはあってもそれで恨み辛みが消えるわけじゃないし、証拠写真さえなければ100回殴っても気が済まない相手である事実が変わるわけではないが、それでもそれが切っ掛けでただ憎みきれなくなったというのも確かなんだろうと思う。
なにより恨み続けるというのは案外疲れるもので、ただでさえうちは一族の問題とか色々あるってのに、こいつらばかりにかかずらっていられないというのも現状だ。
あと、いつかの二の舞になるのを恐れていた自分もいたのだろう。本当に今度こそ写真を里中にばらまかれたらと思ったら怖くて仕方なかった。
そうしてオレはこの問題を片付ける気も、ネガを捜索する気力もその頃には消え出していた。
10月 9日。
オレはアスマ先輩他の推薦を受けて上忍に昇格した。
まさか此処まで早く上忍になれるとは思っていなかったから驚いた。2点特化タイプなオレは上忍になるには火力に欠けていたから尚更だ。なれたとしても特別上忍が関の山だと思っていた。そんなオレに対して苦笑しながらアスマ先輩は言った。
「お前は引き際を見るのが上手いからな」
……まあ、確かに任務中はそうかもしれない。私生活はダメダメですけどね。言われてみれば確かに任務達成率とかだけ見てたらオレ結構成果上げていたのか? いや、でもチームメイトあってこその物だねなんですけど……オレ単体だと結構へぼいしさ。まあ、任務に私生活は持ち込まないけどさ。
でも、上忍に昇格した以上は、推薦してくれた先輩達の顔に泥を塗らないためにも出来る限り頑張ろうとは思う。
11月 1日。
其の日、うちは一族の会合にて、やはりクーデターは止めようと思うと、そんな言葉がうちはフガクの口から飛び出した。
説得を始めてから2年近い月日が経ったが、はっきり言って説得するにしても、もっと時間がかかると思っていたからちょっと拍子抜けだ。
自分たちでも考えてみたが、確かにお前の言う通り、無謀なのだろうと、それに次代にかけてみたくなったとそう言われた。それに、嬉しくて、オレは何度もありがとうございます。とそう言った。
そんなオレに対して、フガクさんはいつも通りの仏頂面に少しだけの心配の色を乗せて、オレに向かってこう言った。
「だからもうそれ以上無茶をするのはやめて、きちんと休むんだ」
そういって、他にも数人のフガクさんの部下でもあるうちは一族の人間がオレを写輪眼で見やって気の毒そうな、痛ましいようなものを見るような目で眺めた。おそらくは減りに減った残量チャクラ量などを見られていたのだろう。
……碌に休んでいないこと、オレが疲労を溜め込んでいることに気付かれていたのか。
思えば我ながら無茶な生活を送っていたものだと思う。忍びとして任務をこなしながら、その一方でうちは一族内の穏健派の家をまわりクーデター派につかないよう呼びかけを続け、クーデター派とは会合の時に口論と説得を続け、相変わらずオレに金を握らせて抱こうと迫ってくる奴らから逃げ回り、噂を真に受けた女に出会っては罵倒されて、一方で奴らに呼び出されては好き勝手されて、その時出来た火傷や炎症や青あざ他を治すために稚拙な医療忍術を使ってはチャクラを削り、それでも周囲に異変を悟られないように痛みを誤魔化すために痛み止めに頼ったり、時には使用している薬の副作用に苛まされたりなどするそんな日々が日常だった。
薬だって殆ど自分で用意しているんだ。足りなくなれば薬草を採りに深夜家を抜け出すことも多々あったし、打たれた薬や受けたプレイによっては数日尾を引くものだって珍しくはなかった。
此処1年ほど、オレの平均睡眠時間は2時間から3時間くらいがせいぜいだ。それでも気付かれないよう細心の注意を払ってきたけど、どうやら上忍に昇格したことでより忙しくなった生活を前にボロが出たのかも知れない。イタチは今は長期任務に行っているから暫く顔を合わせていないからいいが、こうやってフガクさん達にもバレるってことはイタチだったらもっと早くバレていてもおかしくなかったということだ。それに少しヒヤリとした。
そんなオレを前に、口下手ながらにフガクさんは二言、三言と言葉を交わしていく。
それで気付いたのだが、オレが憔悴している理由をフガクさんはオレがクーデター事件に頭を痛めているからと思ったらしく、そんなオレを見ているうちに頭が冷えてきたらしい。フガクさんの部下の1人でもある一族の若い男は、「本当にクーデターなんて起こしたらシスイちゃんが抗議の為に自分たちの前で自決しちゃうかもしれないと、そう思ったんだよ」なんてことを語った。
それほどにオレは追い詰められ、鬼気迫ったような顔をしていた……ということなんだろうか。
本当がオレがこれほど疲れている理由はうちは一族のクーデターのことだけが原因ってわけじゃなかったけど、それでも理由はどうあれ正史と違ってクーデターを諦めてくれたというのならば、それは喜ばしい話だった。それを聞いて、オレは安堵のあまりその後気を失うようにして眠りに落ちたらしいと、後からミコトさんに話を聞いた。
……それがオレの肩から荷物が1つ降りた日のことだった。
其の②に続く。