おまたせしました、4話幻想淫夢です。
楽園シリーズは全20話予定ではありますが、難産で上手く進まないのでもしかしたら15話に短縮するかもしれないですが、ご了承下さい。
……気付けば男は1人、誰もいない路地裏へと立っていた。
何故、こんなところにいるのだろう、と鈍い思考で考える。
確か、男は先ほどまで仲間達2人と共にシェアして借りているアパートで愚痴りあっていた筈だ。
いつも通り、まるで子供のお使いのようなガキにやらせろよと言いたくなるような任務を終えて、買ってきた安酒をチビチビと互いに煽りながら、不平不満を口にして、あんまりにもムシャクシャするもんだから、ストックしている女を誰か呼び出してぶち込もうぜ。どの女にする? なんてそんな話をしていたような気がする。
だというのに、なんでこんなところにいるのだろう。此処は確かに見覚えのある木の葉の里の一角にある路地裏だが、どうして誰もいないのだろうか?
いや、そんなことよりも何故こんな濃い霧が周囲を包んでいる?
けれど、深いことを思い出そうとする度、頭の中に濃い霧がかかっているかのように濁っていって何も思い出せない。
どうして自分は1人なのだろう。
そんな男の前に誰かの人影がぼんやりと浮かんで見えた。
それに、なんとなくほっとして、男は声をかけた。
「おい、そこにいるのは誰だ……お前!?」
やがて徐々に霧の向こうからその人物のシルエットが明らかになってくると、男は明らかに動揺を声に混ぜてその人物を見た。
霧の中から現れた少女、それは間違いなく男が知っていた相手だ。
釣り気味の大きな目に下がり気味の眉。小さな唇に狭い肩。前髪は短く四方に跳ねた癖の強い黒髪はセミロングで少女の肌を彩っている。柔らかそうな大きな胸に、健康的で細すぎない程度に細くキュッとしたウエスト。体型の割に大きく張り出した尻に、ムチムチとした太もも。ほっそりとした腕。
間違いない。それは男が仲間達と共に3年間脅して性玩具としてきた少女である、うちはシスイだった。
そして、今宵の彼女が身を包んでいる衣装は、胸の谷間も顕わに肩をはだけさせた、なんとも扇情的な打ち掛け姿であった。更に普段化粧など一切しないその唇と目元にうっすらと紅が引かれている。
その女の唇がやがて緩やかに笑みを描く。その様がいつもの幼くあどけなささえ感じさせる様と異なり酷く妖艶で、思わず男の心臓がドクリと高鳴った。
……普段、シスイは自分たちが命じて着替えさせる時以外はあまり露出した格好をすることはない。
うちは一族に多い首もとまですっぽりと覆う上着に、なんの変哲もないパンツルックスタイルが基本で、そもそもミニ丈長丈問わずスカートを履くこと自体に抵抗があるのか、スカートやワンピース、ドレスなどの類を自ら着ようとすらしない。最初にその手の衣装に着替えるよう命じたときも酷く戸惑っていたように思う。
下着もそうだ。
初めて犯した時と、その時撮った写真を元に最初に脅して犯した時、どちらも彼女の下着は男を意識したことが1度もないのかお前は? と聞きたくなるほど、ムチムチとした男好きのするエロい体に似合わず、色気の欠片もないデザインの灰色の無地の下着だった。
そのおそらくは彼女自身がチョイスしているのだろう下着が、あまりにも色気にも面白みにも欠ける、年頃の女の下着らしからぬ代物だったので、自分たちが選んで購入してきた女物の下着を大量に渡して、次からそれを着けろと強要して下着を替えさせたほどだ。
まあ下着を買って与えたのも勿論彼女のためなどではなく、呼び出して犯す度にあんな色気のない下着ばかり見せられてたら、いくらなんでもちょっと萎えるなと思ったことが下着を替えさせた1番の理由だが。
おそらくアカデミーに入学したてのガキだってもっとマシなものを身につけているだろう。そもそも木綿の灰色ってなんだ、灰色って。無地にしてもせめて黒か白でレースだろう。スポーツブラ然とした上はともかく、パンツに至っては下手をしたら男の下着でも通じそうだったぞ、あれは。
男と明らかに一生縁がなさそうなレベルのブスならともかく、それなりに可愛い年頃の娘がまさかあんな下着を身につけているとは思わなかった。あれは一種のカルチャーショックだ。
それらの過去を思えば、彼女が自らの意志でこのような、まるで遊女紛いの格好をするわけがないのだが、男は彼女の格好を疑問に思うよりも先に、その普段のシスイならばするはずのない扇情的な色香溢れる姿に見惚れ、そんな基本的なもの……シスイとはどういう女だったのかを思い出せぬほどに動揺していた。
何故なら、男は彼女に……うちはシスイに惚れていた。
無論、最初っから好きだったというわけではない。
最初は上忍やら特別上忍やらにチヤホヤされやがってクソ生意気な女だとか、イイ体しやがって誘ってんのか? とか、一発ヤってみてぇなぁとか、まあそんな風に思ってそもそも体には興味あっても、彼女の中身自体に興味がなかった。
犯してヒィヒィ泣き叫ぶ様を見てやりたい、自分の下でグチャグチャになる姿が見たい、とそんな風に思っていたある日、前々からうちはシスイに対して同じ風な欲望と不満とを持っていたらしい仲間達と共謀して、彼女の知り合いである男を買収し、その男を通じて薬で動けなくした所を皆で輪姦したのだ。
前からイイ体をしているなと思っていたが、実際に抱いてみたら全体的な抱き心地もアソコの具合も想像以上にヨかったし、拒絶の言葉を吐きながら碌に抵抗も出来ず、格下の筈の自分たちに好き放題されて喘ぎながら切なげに啜り泣く姿にはかなり興奮したものだ。
初めはヤり捨てにするつもりだったが、脅して関係を続けようと思ったのは、想像以上にヨかったのでそのまま捨てるのは勿体ないと思ったからだと言える。女らしい肉感的な肢体に息づく、真面目に修行をしてきたからついたのだろう筋肉のバランスや、自分たちの仕打ちに過剰反応する体に心。痛そうにしつつも健気に声を殺して耐えようとする様なども酷くそそった。
そうして脅して呼びつけてはうちはシスイを弄び続けた。
この女の件で味をしめた彼らは共犯者として共同で暮らすようになり、他にも別の女も同じ手口で襲い、脅し玩具にした。けれど、やはりあれほどの興奮を与えてくれたのは彼女だけだったし、他の女は壊れるのも早かったしやがて自分たちに弄ばれることに慣れたりするなど味気がなかった。
けれど、彼にとって長い間やはりうちはシスイはお気に入りの玩具であり、都合の良い肉便器の1人という認識だったのだ。その認識が変わりだしたのは約1年ほどそういう関係を続けた末で、当初は興味すらなかった彼女の内面を知りだした頃くらいからだ。
その頃から少しずつ彼女の体だけではなく、シスイという個人自身に惹かれていったのだと思う。
慣れた仕草で料理を作る姿や、普段自分たちには決して見せなかった筈の、はにかむようにあどけなく笑う姿や照れて俯く姿が愛らしいと、もっとそんな姿が見たいと思い出したのはいつからだったか。
そして、他の仲間が彼女を犯すのが不快だと感じ始めるようになったのもいつからだったのか、自分だけを見てくれたらいいのにと思うようになったのは、悲しい顔ではなく自分にもあの婚約者だとかいうガキに見せているような笑みを向けて欲しいとそう思うようになったのは、それらの感情がいつから始まったのか男自身にもそれはよくわかっていなかった。
だけどいつしか、他者に嫉妬し、彼女を独占したいとそう思うようになった自分がいたのは確かだ。それまで女など穴があればいいと、子を産む玩具としか思っていなかったにも関わらず、だ。
ここまで来れば20年近い年月初恋すら経験したことがなかった彼でも認めるしかない。ああ、そうか惚れてしまったのか、と。
それまで恋などしらなかった。
誰かに惹かれ、自分だけのものにしたいという感情を知らなかった。
けれど、今更だった。今更惚れたところで遅かった。
自分たちは何度も脅して少女を呼び出しては手酷く犯してきたのだ。もう彼女にこういうことをするのはやめないかとそう言い出した時には既に遅かったのだ。
今更どう止めろというのだ? 自分たちは既に脅してこの関係は始まったのだ。そのことを忘れたのか? 今まで一体自分たちがどんな言葉を彼女にかけ何をやってきたのかそれも忘れたっていうのか? それにだ、折角あれだけのイイ女を自由に出来るってのにみすみす抱く機会をフイにするってのか? テメエが止めたところでオレ達はやめねえぞ。熱に浮かれたような提案をした自分は仲間にそう言われ我に返ったものだ。
思い返してみたらかなり酷いことを自分たちはしてきた。
犯して罵倒し、蔑んできただけではない。
時には流血するほど鞭で打ったり、玩具を体内につっこんだり、薬を飲ませたり、女の体の負担や痛みや後遺症など構うことなく好き勝手にやってきた。そのことを肯定し、嬉々として行ってきた1人が自分という人間なのだ。今だって、罪悪感が湧くのは惚れてしまった彼女に対してだけで、他の女に対してはたとえ薬で自我が崩壊しようと死のうと気にならないくらいだ。
冷静に考えれば考えるほど、自分たちがしてきた仕打ちが許されるとは思えなかった。
それに、彼女には婚約者がいた。
うちはイタチとかいう名前の、アカデミー史上トップクラスの天才であるとかいう12歳になったかなっていないかというガキ。
たった1年でアカデミーを卒業し、10歳で中忍に、その半年後には暗部入りをしたというとんでもない経歴の子供だ。しかし、それでも12歳のガキはガキだ。なのに、彼女うちはシスイはこの婚約者ととても仲が良いという話らしく、実際に脅し文句として使う時に1番効果があったのはイタチの名を使った脅しであったことから考えても、本当に彼女にとっては大切な相手なんだろうと伺わせた。
実際に里の中で連れ立っている姿は……婚約者同士というよりは姉弟のようではあったが、とても仲睦まじく、誰に対する微笑みよりも、イタチに向ける微笑みが1番柔らかく目に映ったものだ。
なんでアンタはそんなガキにそんな顔を見せる、そんな場違いで見当違いな嫉妬を抱かずにはいられないほど、シスイはイタチを大事にしていた。
そして……その名を使って脅した自分たちのことを彼女が許す未来はないのだろうと、冷静な自分はそう思った。
それでも叶うならば、男は……彼はうちはイタチに成り変わってしまいたかった。
―――――……緩やかにしなやかに女は歩く。
見慣れない赤い打ち掛けを着崩して、紅を引いた顔で歩み寄る遊女のような装いをした女は、幼顔には合わなかった筈の妖艶な笑みを浮かべ、一歩一歩男の元へと歩みを進めている。
そんな様にドクドクと心臓が昂ぶって、知らず男は一歩後ろに足を下げる。その合間にも女は進む。
それはその顔も体も確かにうちはシスイだった。
「お、おい……」
戸惑いつつ名を呼ぶ。そんな自分に対し、フワリと甘い香の匂いと共に女の柔らかな体が打ちかけ越しに男の体を包んだ。
「……会いたかった」
甘やかに切なげに告げられたその声。
どういうことなのかさっぱりわからない。
ただ、ドクドクと心臓が煩くて、上手く脳が働かない。
そんな男を上目遣いで潤んだ瞳で見上げながらそっと指を男の頬へと這わす。
その小さくて細い指の感触は間違いなくこれはうちはシスイであると告げている。紅が引かれた釣り目がちのあどけなく大きな瞳に、着物越しに伝わる体格の割に大きくて柔らかな胸の感触。胸の谷間がチラリと着物間から覗いている。
そして甘い匂い。
噎せ返るほどの女の……雌の匂い。
クラクラして、何も考えられそうにない。
「ねぇ、シよ?」
やがて匂いに負けぬほど甘い声で、囁くように女が言った。
今まで女が男に誘ってきたことはない。
いつだって彼女は涙を浮かべながら自分たちの要求を受け入れ、感じはしても自ら求めることはなかった。
「なん……で」
どうにもカラカラに乾いて張り付く喉で、それだけ押し出す。
そんな彼に対して、シスイは男の綺麗とは言い難い指を手にとり、その指先を見せつけるようにクチュクチュと音を立て舐め転がしながら、「ン……好きだから、じゃ駄目?」と答えた。
(好き……? あんたが俺を?)
それは2年近くの年月望み続けた言葉でもあったが、叶えられないと思っていた言葉でもあって、男の脳が混乱で固まる。そんな男の体にピタリと体を寄せ、女は囁くような声で言った。
「好きだよ……ずっと前から。私は貴方だけが好きだったんだ」
……甘い香りがする。
甘い匂いと甘い言葉、溶かされてしまいそうだ。
その言葉も匂いも感触も、甘い毒のようにズグリと男の体内に浸食し、回り、意識がぼやけていく。
何も考えたくはない。
男はガバリと女の体を抱き締め、その紅が引かれた唇に己の唇を合わせ、舌を進入させ、夢中で彼女の口内を貪った。
「は……ん、ぅ、ぁ……はっ、ァ!」
甘い。鼻に抜ける声も、一生懸命応えようとする小さな舌も、まるで甘露のようだ。
美しい文様の帯を急くように解けば、スルリと彼女の肩から赤い打ち掛けが落ちる。そんな時間すら惜しいというように男はその無骨な手で女の柔らかな胸を揉みながら、白い喉元を痕が残るほど強い力でチュウチュウと吸い上げた。
「ぁあ、アッ、あ」
ビクビクと揺れる細い肩がたまらない。
「ヒッ、あ、ん……ぁ、もっとソコ……アぁ」
乳首をグリッと抓み上げ、女の臍をペロペロとたっぷりの唾液で舐め上げながら、指を彼女の下腹部に回し、紅く熟れたクリトリスと散々に弄り慣れているケツ穴へと向かわせた。そんな男に対し、女は「待って」そう声を掛けながらそっとその一回り小さな手を男の手に重ね、そしてヴァギナへと誘導した。
「今日はこっち」
そう言いながら少女は優しげに微笑んだ。
「こっちがいいの。赤ちゃん欲しいから」
言いながら女の指が男の男根に絡まり、緩やかに擦り上げながらその先端を愛おしげに舐め、そうして囁くような声で言う。
「ね、頂戴。シスイの奥にたくさん精液ビュービューして孕ませて」
それは男の知るうちはシスイならば言わない筈の台詞だった。
だが、その違和感に男は既に気付けない。脳髄の奥まで熱で浮かされたように、正常な判断なんてとっくに失った。ドクリドクリとペニスが痛いくらいに勃起している。
女の姿も、声も甘く、甘すぎて毒だ。
そして少女は上目遣いに瞳を潤ませながら言う。
「私、貴方のものになりたいんだ」
その言葉に男は堕ちた。
……もう何時間こうしているのかわからない。
「あん……ぁ、イイ。もっと、もっといっぱい奥突いて、ェ!」
パンパンと肉を叩く音が断続的に続く。妖艶に貪欲に少女のナカは男のペニスを捉えて離さない。
気持ちいい。
貪りたい。
もっと。
もっと。
そんな男に訴えかけるように、女の甘やかな声が耳を打つ。
「あ、ァッ、もっとぉ、赤ちゃん欲しいからぁ」
吐き出しても吐き出しても終わりがない。
「もっともっと子宮の奥に精液ビュービューしてェ、孕ませて」
これが夢か現実かさえ最早どうでもいい。
「いっぱいいっぱい、ザーメン出して。カサの張った太いおちんちんでシスイの奥グリグリして。アァ、んっ、イイ、そこがイイの……ン、んぁあ、もっと、もっとぉ」
ただ求められているということと、その声だけが今の彼にとっては現実だった。
「好き、だからぁ……シスイをグッチャグチャにして、かき混ぜて、壊れるくらい愛してェ……」
それだけが現実だった。
「んぁ、あ、ア……ぁ、赤ちゃん、赤ちゃん頂戴ッ、貴方のザーメンで孕ませてぇ」
* * *
「いてぇ……いてぇよ……」
朝の商店街前で呻くような男の声と呻くような声が、肉を打つ音の合間に二重奏に重なって聞こえる。
そして『その2人』を前に、店を開けようと早朝に外に出た商店街の住人はその異様な光景に一様顔を顰めていた。
「え……ちょ、ヤダ……」
「気持ち悪い」
「変態」
「誰か火影様に……いや、木の葉警務部隊に連絡しろ!」
「うわ、あり得ない」
「こんなところで男同士で……頭おかしいんじゃないの」
そう彼らが見た光景、それは素っ裸のどちらかというとブサメンに属する男2人が睦み合っている姿だった。
正確には、痩せぎすの男は腕に手錠をかけられて、「痛い、痛い」と呻きながらケツを掘られ、そこから血を流して青い顔をしている。そしてその上に太った体系の男が焦点の合わない濁った目で、よだれを垂らしながら覆い被さり、一心不乱に腰を振っている。一体どれほどの時間相手を犯し、何回出したというのだろうか、精液で水たまりが出来そうなほどに出していて尚、腰の動きを止めそうもなかった。
その光景はどうしようもなく醜悪で汚らしく、やがて男達2名は商店街の人々によって呼び出された木の葉警務部隊の人達によって「公然猥褻罪」でしょっ引かれて行った。
その頃、別の路地裏でも似たようなこと事件が起きていた。
事件があったのは路地裏近くのゴミ捨て場だ。其の日、ゴミを捨てようとやってきた近所の住民十数名がそれを目撃することとなった。
「うわ、気持ち悪」
「おい、誰か火影様に連絡しろよ」
「なんだこの変態」
「キメェ」
それはゴミ捨て場の上に居た一人の男で、その男は正気を失った目でよだれを垂らしながらにやけ顔で笑っていた。その格好は裸で亀甲縛りをされており、ペニスからはダラダラと精液をたらしながら、そのケツの穴には極太のバイブが突っ込まれており、ウィーンウィーンと音を立てながらそれを起動させていた。
やがてその男も木の葉警務部隊によって連行されていった。
その、公然猥褻罪で奇しくも同日同時刻に捕まった3人が「強姦」「監禁」「脅迫」「婦女暴行」などの罪を犯した犯罪者だと朝の朝刊で大きく取り上げられることになるのはこの1時間後のことだった。
被害者の数は9人。
人々はこの犯罪者3人のことを口々に罵倒し、男同士で交わっていた話や1人SMプレイをしていた話も出回り、どちらにせよ死罪は免れないだろうが、仮に服役でいつか牢獄から出ることになったとしてももう今までのように暮らすことは出来ないだろう。
そんな様子を、木の葉を一望出来る場所から巴模様の浮かんだ赤い瞳で見ていた1人の少年が居た。
その名はうちはイタチ。
男達を破滅に追い込んだ張本人であった。
そう、これこそ彼の復讐だった。
* * *
彼には婚約者が居た。
6歳も年上であるにも関わらず、どこか幼く見える、あどけない無邪気な笑みが印象的な少女だった。
イタチは彼女のことが好きだった。
生憎というべきなのか、彼女には婚約者であるにも関わらず弟のような扱いしか受けていなかったが、それをどこか幼いところのある人なのだから、今は分かってくれずともいつかはわかってくれるだろうと思える程度にはイタチは歳のわりに大人びた子供でもあった。
それに、彼女……シスイも、恋愛的な意味ではないとはいえ、イタチを大事にしていたし、特別視をしていたことも知っていたから、彼女がモテることは知っていてもあまり焦っていなかったのだ。
シスイが笑みを取り繕いながらも無理をするタイプであることは知っていたが、それでもそれを支えていけると支えていこうとそう思っていたのだ、数日前までは。
……彼女は処女ではなかった。
あんな風にいつも無邪気に笑っていたのに、なのに別の男に肌を許したのかとそのことにイタチは怒りを感じた。けれど、処女ではないと知っても尚シスイが浮気をするタイプとは思えなかったし、イタチの知る限り自分以上に彼女が特別視する相手はいなかった。だから、もしかしたら弄ばれたのかと思って相手を問うたら「言えない」というものだから、相手を庇っているのかとつい怒りで我を忘れてしまったが、それでもやはり何かおかしいと思ったのだ。
そうして調べた結果出てきた事実は想像以上のものだった。
彼女は写真を盾に脅され3人の男の慰み者となっていた。
それもつい最近の話ではなく、3年もの間だ。
そして調べれば調べるほど出てくる男達の犯罪の爪痕。
証拠写真として手に入れたそれに載っていた婚約者の姿。
その中には背中の皮が破れるほど鞭で打たれた写真や、まるでペットのような格好をさせられて背後から犯されている写真に、薬を使われたのだろう、焦点を失った目をしてバイブやローターを銜え込まされている写真などもあった。腕を縛られ、ロウソクの蝋を垂らされタバコを肌に押しつけられながら泣いている写真もある。10人の被害者。その中で、シスイの写真だけでも400枚以上にのぼった。それだけ頻繁に呼び出され犯されていたということに、イタチは今まで気付くことが出来なかった。
きっと、シスイが気付かせないようにしていたのだろう、それでも許せるものではない。
どうして彼女がこのような目に合わねばならない。
そして何故自分は気付いてやることが出来なかった。
今に思えばヒントが全くなかったというわけでもない。
その3人の犯罪者が撮った写真の裏には細かいことに日付まで載っていた。
そしてその中にはイタチにとっても印象的だった出来事の1日前の日付として載っているものもあったのだ。
あれは今から2年と5ヶ月ほど前のことだ。
その日、シスイは高熱を出して任務を休み家で寝ていた。
其の日はイタチの非番の日でもあった。そうして見舞いに行くと熱で辛いだろうに、嬉しそうに布団で横になったまま彼女は自分を迎えた。
熱は39度近くもあって、風邪だと彼女は言っていた。
けれど、その時点で自分は疑問に思うべきだったのかも知れない。
本当にそれが「風邪」だったのなら、彼女は嬉しそうに看病と見舞いに訪れた自分を迎え入れたりをしなかっただろう。移してはいけないからと、面会自体を断った筈だ。
だが、彼女はそうしなかった。
病人食を用意する自分に対し、嬉しそうに笑い、高熱で赤らんだ……幸せそうな顔で涙を浮かべ「ありがとうな」と何度も言って、「少しだけでいいから」と彼女はイタチに手を繋ぐことを望んだ。
そうして言ったのだ。
「幸せだなあ」
と。それは本当に嬉しそうに。
何を大げさな、とイタチは思ったものだ。
それにしても確かに元々素直な面があったとはいえ、こんなふうなシスイは珍しい。
シスイは確かにささやかな幸せを愛する人間ではあったが、笑顔で無理をする人間でもあった。こんな風に手を繋ぎたいと、弱っている時にいうことのないそういう少女だった。
しかし、その頃うちは一族は丁度クーデター論が盛んになっていた頃で、彼女はクーデター反対派の筆頭でもあったし、ひょっとして彼女もそれで寂しさと疲れが表になったのかもしれないとイタチはそんな風に思っていた。
彼女は本当の意味で人に甘えることは殆ど無い。だから、甘えてくれたんだと思えばイタチにとっても嬉しかった。そうして眠りにつくまで側にいた。
それは、あまりない経験だった。だからこそ其の日の日付までイタチは覚えていた。
その1日前に彼女が何をされていたのかも知らず。
それが彼女が大人の玩具を取り付けられ、何かの薬を注入された写真の日付の1日後のことだ。
つまり彼女が高熱を出した理由は疲労と風邪ではなく、薬の後遺症だったわけだ。
高熱ではあっても風邪ではないことを知っていたから、彼女は移らないことを知っていたからイタチが側にいることをあの日望んだ、それが其の日の真実であり真相であったことをイタチは今更ながら知ってしまった。
どうして気付いてやれなかったのか、悔やんでも遅い。
それでも、男達の被害者はシスイだけではなかった。イタチは他の被害者達と証拠を探し出し、時には売春宿に売られた少女をイタチ自ら救出して、その証拠や事細かいレポートを三代目火影猿飛ヒルゼンに提出し、男3人を逮捕することを要請した。
その際、シスイも被害者であることは彼女の名誉のためにも伏せさせて欲しいとも言った。
そして、最後の証拠を手に入れ隠滅するために男達のねぐらに入った時その会話をイタチは聞いた。
「ああ、くそ、ムシャクシャする。おい、誰か呼ぶか?」
「しかし次、誰にすんだ?」
「そうだな、またシスイちゃんにでもしとくか?」
その会話にイタチの堪忍袋はプツリと聞いた。
自分の婚約者にあれほどのことをして、その上でまるで物のように言う彼らに我慢がならなかった。
だからイタチは次の瞬間彼らに幻術をかけたのだ。
1人だけ正気を残しておいて、他の2人には幸せな淫夢を与え、そして現実では2度と表を歩けないように、彼らがシスイにしたことをそのまま奴らに返し、それを大勢の人間に目撃させることで社会的に抹殺をした。
それがイタチにとっての復讐だった。
とにかくこれで終わった。
これで気持ちが収まるわけではなかったが、これ以上は里が裁くべきことだ。
これで全てが終わりという気はないが、今は一刻も早くシスイに謝りたい。
彼女にすまなかったと謝罪したかった。
けれど、全てがこの時点で遅かったということにまだ、大人びてはいても12歳の子供でしかなかった彼は気付いていなかった。
了