この作品は「当初は」倫理的にもとんでもないグロ中尉な作品「だった」ので、最初っからR18としておきます。ご了承ください。
ほぼ確実にエタります(´・ω・`)
虚なる闇が、流れて移ろう。
神剣宇宙の静かな流転。
紺碧の静寂に漂う、虹綺の輝き。
その底を見せる事を拒むかに思わせるほどに暗い、昏い、闇の中。 星に見紛わんばかりの煌めきを放つそれらは、しかし星ではない。
それは『樹』
全ての世界の根幹を成す、大いなる存在……その名を『時間樹』
世界(えだ)の剪定(しゅうせい)、新たな世界(は)の創造、枯れた世界(くちば)の吸収……全ての作業を己で成し遂げ、時間樹を維持し続ける。
一つの『永遠』を手にした時間樹の目的は自身の維持以外には無く、その無欲もまた彼の永遠性を助長させる要因となっている事は明白か。
その永遠を内包する時間樹の光は綺羅星の如き輝きをもって、虚無の空間を煌々と照らし続ける。
そんな神剣宇宙の片隅のとある時間樹、とある分枝世界のとある宿泊施設にて、これまたとある男が頭を抱えていた。
「……で?」
重々しく口を開き、発された言葉はたったの一音。しかしそれには、一切の弁明を撥ね返しかねない程の重厚さと堅牢さが備えられていた。
「あははー………い、いや……だからその…ホラ…ね…?」
それに絞り出す様に答えるのは、少女から女性へと変わろうかと言える頃合いの女の子だった。渇いた笑いを浮かべながらも普段は勝ち気そうな眦を弱々しく緩め、涙目一歩手前の状態で指先をもじもじと絡ませている。
「……ホラ…なんだ?」
先程から流れ続ける冷や汗は留まる所を知らず、そこに涙が追加されれば脱水症状は必至であると思わせる程に、少女は追い詰められていた。
「えと……さ…その…」
「ナルカナ」
ついに耐え兼ねたのか、男が少女の名前を呼ぶ。言霊を上乗せしたとしか思えない重みを含んだその一言に、間違い無く部屋がギシリと軋みを上げた。
「何もさ、そんなに難しい事言ってる訳じゃないんだよ。俺が知りたい事は一つだけで、その知りたい事をナルカナは知ってる……だから、もう、一度だけ、聞くぞ?」
わざわざ言葉ごとに区切りを入れ、その度に気合いを籠め直して重圧を増していく。その足元はメキメキと音を立て、床よ抜けよとばかりの圧をなんとか受け止めていた。
不意に、男が座っていた備え付けのチェアから身を起こし、自分の背後をゴソゴソと漁る。程なくして掴んだソレを、正座してうなだれているナルカナと呼ばれた少女の傍へと放り投げた。よく見ればソレはいわゆる革袋と呼ばれる物で、ペチャリとした外見の割に頑丈に出来ており、古来より荷物の運搬などに利用されている。
男が投げて寄越した空の革袋は手の平に収まり切るか否かの大きさしかなく、小物入れに使われる様な物である事は容易に察せた。もはや渇いた笑いすらも浮かばず、涙目で小刻みに震え始めたナルカナに、男は満面の笑みで以って溜めに溜めこんだその問いを発した。
「軍資金、何処やった?」
この宿泊施設の一室から、爆発音と勘違いされた怒号が響くのは三十秒後の事である。
~~~~~
「ただいまー……って、あれ? 望くんだけ?」
「およ? ナルカナが先に帰っておると思ったのだが…」
言葉と共に一人の少女と一体の妖精らしき小さな人型が部屋へと脚を踏み入れる。
少女の名前は『斑鳩 沙月』、そして妖精然とした小さな少女は、先程の怒号の主である望と呼ばれた青年の守護神獣、熾天使『聖レーメ』だ。二人はナルカナの不在に疑問を抱くものの、それを特別気にするでもなくベッドへと腰を落ち着けた。
「ホラ、これが町の調査結果よ」
沙月が言葉と共に投げた手帳が、ポスンと望の膝に乗る。それを軽く手に取ってパラパラと流し読みをするものの、その表情には辟易としたものがありありと見て取れた。
やがて子女特有の丸っこい文字が書かれた部分は終わりを迎える。後の紙面には行間を区切るための横線が虚しく引かれているだけだ。望は溜息と共にメモを閉じ、背もたれへと体重を預けた。
「御覧の通り完全にシロ……辛うじてナルについての伝承が民間レベルで遺ってはいるものの、私達が持ってる情報のが圧倒的に質も量も上ね……」
沙月がぼやく様に情報を要約する。今回の空振りが堪えているのだろう、その瞳からは普段の覇気が失われていた。
暫しの気怠い沈黙が部屋を包む。
「なぁ、ノゾムよ」
その空気をなんとか払拭しようと、レーメが声を上げる。その声に首だけを動かし、望はレーメを見遣った。
「先刻も疑問だったのだが……ナルカナは何処に行ったのだ?」
そんなレーメの問い掛けに望が起こしたリアクションは軽く一動作、床に落ちた革袋を指差すだけだった。しかし、共に旅をしている以上は指差されたソレが何かを否応なく理解してしまうし、その形態が指し示す情報を脳が勝手に組み上げてしまう。
「……通りを二つ跨いだ所にカジノがあってだな」
「皆まで言うな……」
補足のように呟く望の言葉を遮り、ゴリゴリと眉間を揉みほぐす。厳しい表情を緩めようと心掛けるが、どうにも徒労に終わりそうであった。普段であれば率先して騒ぎ立てる沙月も、今回は疲労が勝っているらしくベッドに倒れ込んだままで動く気配が無い。
レーメはふよふよと力無く漂い、望の頭にポスリと着地する。ここまでくれば空気の打開も何も無いだろうと、俯せた体勢のままで望に重々しく話し掛けた。
「ノゾムよ……エト・カ・リファを出て、どのくらいの時が経ったのだ?」
「さぁなあ………」
そう力無く応えつつ、胸元から手巻き式の懐中時計を取り出す。浮き出た錆と芯の歪みで開きにくくなった蓋を両手で開き、その時刻を確かめた。
「それだ」
「?」
「少なくとも、その時計が…幾度も部品を交換し、大元の形が変わるまでに摩耗してしまう程には、吾らも旅を続けて来た……」
「……ああ」
「だがノゾムよ………その旅の中、吾らが掴んだ情報の度合いは……」
「言うなよ……俺だって無茶な事ってのは察してるし、ソレを覚悟の上でこの旅をしてるんだ。その言葉だって今更過ぎるさ」
気丈に振る舞いはすれど色濃い疲弊は拭い切れず、明るく努めようにも滲み出る諦観は隠し切れていない。そもそもが心まで繋がっている守護神獣に、この程度の隠し事など出来よう筈もない。その心中を察するが故に、レーメはつい口を開いてしまう。
「なあ、ノゾムよ……」
吾らは別に……この旅を終わらせても善いのだ
「ノゾムさえ………」
汝が望めば、共にひっそりと永遠を生きても善いのだ
「…………」
サツキや、ナルカナさえも賛成してくれた。汝さえ望めば、吾らは………
「…いや、なんでも無い。忘れ「たっだいまー!!」
ドバァン!!!
突如として鳴り響いたけたたましい音と共に、先程部屋から転がり出たナルカナが意気揚々と帰還する。その勢いで頭上のレーメが転がり落ちるのを感じながら、望は新たな頭痛の種の予感に苛まれていた。
「よくよく考えればナルカナ様が悩む必要なんか無かったんじゃなーい! 私のチカラで持ってすれば、不可能なんかほぼ無いんだしねー!」
そんな事を堂々と宣いながら、ズカズカと部屋へ踏み込みベッドに豪快なスクリューダイビングをかます。ぼふっと大きめの音を響かせて倒れ込むと、ゴロリと仰向けになって枕を抱えた。
「因みに………何したんだ?」
脱力感になんとか打ち勝ち、それだけを絞り出す。ナルカナからの言質さえ取れれば、後はどうとでもなるだろう。
「んー? そこらへんの石ころをチョチョイッと原子配列変換して貴金属にねー。ま、ナルカナ様の手に掛かればこのくらいは朝メシ前っすよ♪」
得意満面にそう話し、懐から換金したのであろうこの分枝世界の通貨が入った小袋を投げる。気分が重くなるのを感じながら、それでもこの問題に終止符が打たれんとしている事をいち早く察した望は、凭れていたチェアから立ち上がると足早に部屋を後にした。
「…ちょっと風に当たって来る。後は自分の部屋に戻るから、鍵は掛けといてくれて構わない」
「ぶー! 望ったらノリが悪いー! せっかく私がいるんだからもっとお話してもいーじゃんかー」
そう文句を言いながらも止める気は無いのか、ナルカナは部屋を出る望を見送るだけに終始する。
背後に迫る鬼(レーメ)がその鉄槌(ハリセン)を振るうまで、あと七秒。
~~~~~
ホテルを出て、通りを歩く。中途半端に発展を成し、魔法大系と科学技術が奇妙な融合を見せた世界。今は夏に当たる時期の黄昏刻、日が高い為に必然的に街灯を点燈させる時間は遅くなる。どちらかと言えば『科学』の分野に分類されそうな、街の至る所に配置された水銀灯。それを点燈させるのに魔法が使用される辺り、この世界の発展の仕方が窺えるだろう。巡回の点燈係が水銀灯の魔法石に魔力を流し込む作業を眺めながら、この分枝世界について、漠然と考えていた。
しかし、どのような発展を遂げようと、逢魔が刻の街の色合いはどんな世界でも変わらないらしい。そこかしこで飲食店の売り子や花売り達が上げる客引きの声が飛び交い、下らない理由で早晩から酒をかっ喰らっていた酔っ払い同士の殴り合いが起こる。そこにこの世界では『魔法』と言うちょっとしたスパイスが加わっているだけで、人々が営む生活というものの基本が変わる事は無いのだろう。
声を上げて客を取ろうと、躍起になっている卑屈そうな若者を無視し、スカートに深く刻まれたスリットから生脚を擦り寄せ、セックスアピールを仕掛ける獣人の娼婦を躱す。魔法薬の行商を追い返した時に、先刻何かをされたポケットに手をやれば、先程の娼婦の個人的な連絡先らしきものが記された紙切れが入っていた。望はそれに苦笑を零し、その紙を丸めて理力で燃やす。望のその歩調には、一切のブレが無かった。
そうして暫く歩き続けて街の喧騒から少し外れた位置に立つと、不意に後ろを振り返り、大きく息を一つ吸う。
肉や野菜が焼ける、夕餉の香ばしい匂い。
子供たちのデザートに使われる、砂糖や香料を溶かした甘い匂い。
花売りの女が纏う、僅かに媚薬を混じらせた香水の匂い。
殴り合いで流された、生臭い血の匂い。
路地裏にぶちまけられた、吐瀉物の不快な匂い。
それは確かな『暮らし』の匂い。
そんな匂いを満喫しながら、望は脚を動かし続ける。
~~~~~
程なく歩くと、拓けた公園らしき場所へと出た。この場所には何らかの取り決めでもあるのか、客引きや売り込みといった手合いの輩は居ない。それでも少し気を巡らせれば、人工的な植え込みや植林された茂みの奥から、微かな喘ぎ声と規則的な律動があちこちで聞こえる。
なまじ望は鼻が良いだけに、そこにある濃厚な雌の匂いと情事の気配を汲みとってしまう。そんな状況に内心で嘆息しながらも、少し高台のある場所へと足を運び、見渡しきれない大きな湖を一望する。安全の為に打ち込まれた鉄柵へと凭れかかり、凪いだ湖面に映った星空を見下ろすが、その表情は勝れない。
「限界……なのかもな………」
ぽつりと、小さく弱音を吐く。これまでにも多少はチラついていたとは言え、いざ言葉にするとなるとかなりの重みが伴っていた。伏し目のままで鉄柵に更に大きく体重を預け、虫の『鳴き声』とそれ以外の『啼き声』に耳を傾ける。
悩みの重さなどという戯言を抜きにしても、今ここで快楽に耽る者達に僅かな羨望と嫉妬をどうしても抱いてしまう。それが世界だと言い聞かせ、それが常だと己を騙くらかし、事なきを得ようと必死になっている自分を自嘲しそうになった。
「……何が限界なのか、良ければ教えてくれないかな?」
それは、全くの突然だった。自分が気配すら感じず、僅かに視界に入っている筈の場所に、一人の少年が立っている。声を掛けられるまでその存在すらも意識の埒外であったとでも言うのだろうか。
だがしかし、普段ならば飛び退いて構えを取るべきこの場面は、今の望には荷が勝ちすぎていた。力無く首を巡らせ、視界の中程に声を掛けて来た少年を収める。
見た目から推察できる歳の頃は己と同年代か、幾許か下と見受けられる。但しあくまでも『見た目だけ』という注釈が付くが。赤い髪に穏やかな笑み……これだけであれば夜の散歩に来た少年で片付けられたのだが、その装いに問題があった。
凡そ、この世界の風土からは掛け離れた意匠の軽鎧。それがこの少年は異邦人(ストレンジャー)であるという事を如実に物語っている。若干警戒心を上げながらも、今更過ぎると姿勢を正そうとはしなかった。
「へぇ………」
そんな望の姿勢に、何故か少年が関心を示す。そして徐に少年も望と同じく、しかし体勢は真逆に鉄柵へと背中を預け、その両腕を投げ出しながら凭れかかった。
「いや、失礼。君が纏う雰囲気が余りにも重過ぎたものだったからね」
そうおどけた調子で言う少年に、望は軽く思惑を巡らす。するとその気配を察知したのか、少年は手をヒラヒラと振って更に態度を砕けさせた。
「別に害そうなんて思ってないさ。気楽にしてくれていいよ」
「…その手合いの言葉を吐く奴は、敵か疫病神かのどっちかだ。いずれにしろ大抵は厄介事がついて回る」
参っていた部分もあるのだろうし、この少年の能天気そうな表情も何処となく癇に障る。どうしても刺々しい口調になってしまうが、これは仕方ない事なのだろう。半ば自棄になっている事を自覚しながらも、言葉を止める気にはなれなかった。その言葉を聞いた瞬間、少年がキョトンとした表情になる。怒り出すのかと思いきや、直後には笑い声を上げ始めた。
「あっはっは! なるほど、ソレには一理ある!」
同意したという事はこの少年は何かしらの厄介事を運んで来た、という事なのだろう。ひとしきり笑い続けた彼は居住まいを直し、望に対して正面を向いた。
「悩みを聞こうと思ったけど、君ならまず自己紹介から入った方が良さそうだ」
その言葉に、望も応えるべく身を起こす。改めて二人は正対し、少年が口を開いた。
「はじめましてだね、『叢雲』のノゾム。僕は、『運命』のローガス………永遠神剣第一位『運命』を担い、カオス・エターナルのリーダーを務めさせて貰っている」
これ以降は今は亡き携帯電話SH002のCPUに保存されていました(´;ω;`)
万が一気が乗ったら続きます。
受けが悪いと消えます。
レーメのハリセンは15○ガーベラを想像してください。どぅぶれあ!