自分の中で決めていた「お気に入り十件で続き書く」を突破されて書くこと決意。
一話3000字を基準に書いてる筈なのに8000弱とかどうなってんだ俺(´・ω・`)
今回はマジで閲覧は自己責任でお願いします。
「ふむ………こんなものか…」
様々な機材が所狭しと置かれ、ぼんやりと光る液体が満たされたフラスコに、一滴ずつ別の液体が配合される様子を老人が無感動に見つめる。ひとしきりその液体を観察し、それが導き出した結果を見届けた彼は、研究の成果を残すべく書物の積み重なった机に向かう。暗い室内、僅かな光源しかない筈のそこを何の躊躇いもなく歩いていく光景は、深謀の賢人を思わせた。
「浮遊マナの液体化は極めて短時間……というより、そもそも液体の時点でマナとは別の物質として自認し、自らを非マナとして神秘性を放棄したと解釈すべきであるか。なれば、血液との親和性の高さから外部より吸着させるようにアプローチを掛けるべきか…?」
己の世界に没頭しながら只管にペンを動かし、結果を詳細に記す。此度の実験と並行している『臨床実験』の結果次第で、今後の課題が大きく変わっていくのだ。特に今回、この老人が行っている研究には依頼人が存在していた。
周囲の者たちからは自分は偏屈であるという評価で通っており、滅多に声を掛けられる事もなければ、老人自体も声を掛ける事が無い。やはりと言うべきか、その実態は興味対象以外は彼の視界にまるで入らないだけである。そんな周りの評価もやはり彼の眼中になく、これもまた本人の預かり知らぬ事であった『悪趣味』と敬遠されている己の研究のみが彼の存在意義であり、存在証明であった。
「…条件として悪くは無い。その目的も、私の求める物と合致しておる……が、何故これほどの案件を儂の元へ持ち込んだのだ……?」
ふと、ペンの手を止めて虚空を睨む。軽い思考のリラックスを目的とした意味の無い自問自答。
「ふむ、詮無き事であるな」
瞬時に終わらせ、再び羊皮紙に向かい合う。この白々しさも研究者ゆえの物なのだろうかという問いは、やはりこの老体にとっては意味の無い物なのだろう。
…………う…くうぅあ………
「…ふむ、そういえばそろそろであったか……」
新たな数式を一通り書き記した時、此処とは扉一枚を隔てた隣室から、くぐもった女の呻き声が聞こえてくる。それを聞いた老人は何かを思い出したかのように呟くも、関係ないとばかりに再び書物と向き合った。
「あらあら、それはいくらなんでも可哀想じゃありませんこと?」
突如として、老人しかいなかった筈の研究室に鈴を鳴らすような可愛らしい少女の声が響く。
元々はそれなりに大きく造られたが、多くの機材によって決して広いとは言えない研究室。本来の出入り口と対角線上にある更に奥の臨床実験室の手前に、その少女はいた。大きくだぶついた法衣にも似た意匠の衣服に神々しい杖を持ち、どのような力が働いているのか宙を漂っている。その容姿も声に見合って申し分なく、体格に見合わない大きめの服と相まって、存分な可愛らしさを発揮していた。彼の研究室に侵入した事を抜きにすれば、その愛らしさに悶える事は必至だったであろう。
しかしそこは研究者。侵入者の正体を知っている以上、大きく気にする事はない。キリのつく所まで結果を書き上げ、若干不機嫌に鼻を鳴らす。
それも無理なき事であろう。彼の絶対的なテリトリーであるこの研究室……己のアイデンティティーの集大成と言って過言ではないこの空間には、幾重にも警戒と罠を張り巡らせてある。そんな研究室の警戒を全て掻い潜り、あまつさえその空間の主にさえ気配の感知をさせなかった。にも関わらず、何の躊躇いもなく言葉を老人に投げかけるあたりで、彼女の行為とその意志のアンバランスさが垣間見える。
「む……」
老人はそんな少女を一瞥し、次の実験に使う機材と薬液、マナの練り上げを始める。作業の手を緩めずとも、会話程度であれば訳はない。本来であれば無視を決め込むところであるが、今回ばかりはそうもいかなかった。己の研究も大切ではあるが、目の前の少女を無視するわけにもいかないのだ。
なにせ、今回の研究の依頼人であり、研究者にとって最も重視すべき出資者(パトロン)である。
そんな彼女の相手をすべく、老人は渋々と口を開く。
「ご機嫌麗しゅう、『秩序』の君……前回もそうだったが、貴方にはこの研究室へのフリーパスを用意させていただいた筈なのだが。いや、そもそも『法王』の座にありながらこれ程までに頻繁に顔は出せる物なのかね?」
正規のルートを利用せずにこの領域に足を踏み入れた事を非難しつつ、わざわざ寂れたこの研究室に度々訪れる彼女の真意を探るべく、余計な言葉は付けずに大きく斬り込んだ問いを投げかける。余分な棘も混じっているが、それを気にする男でもない。
「表向きとしては、私の肝煎りであるこの計画の研究成果の確認と監査…といったところでしょうか。本音を言わせてもらえれば、そろそろ次の臨床体の『予定日』でしょう? 今度はどんな啼き方なのかが気になって……」
「ふむ、私が言えた義理など何処にもないが、貴方のその歪みには溜息がでるな。確かに私とて、もうそろそろ成果を出したい」
「ええ、アナタの研究には私も多大な期待を寄せています。『探訪のザーデャン』……前々回の結果は過程と共に、中々興味深いものでした」
「ふむ…過分なお言葉、身に余る光栄に浴そう……故に、此度の臨床体は特に配慮させていただいた。貴方の意向にはそぐわぬかも知れぬがね……折角であるな、ご案内しようか」
心にもない世辞を厳かに嘯きながら、老人……永遠神剣第二位『探訪』を担うエターナルであるザーデャンは、奥の臨床室に繋がる扉の鍵を取りだす。言葉を告げられた少女もまた、ザーデャンの世辞など気にはしない。結果さえ出るのであれば、それ以外は歯牙にもかけない。互いに求めている物が利害である以上、虚飾に意味はない事は明白。
「ええ、よろしくお願い致しますわ」
ならば、相手には利益以外は求めない。その暗黙の約定を認めながら、少女……『法王』テムオリンは薄く微笑むと、ザーデャンに誘われるままに暗い扉の奥へと消えていった。
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先程まで、生温さと不快を送り込んでいた筈の風が妙に冷たく感じる。羨望を抱いていた筈の快楽者の嬌声が、厭に遠く感じる。
「君……いや、あなたが……?」
「そんな堅苦しい言い方は無しにして欲しいかな。組織の長なんて物を務めているものの、どうにもそういったお堅い言葉や関係ってのは僕の性に合わない。ヴェンデッタあたりはそういうのに煩いんだけどね……気軽にローガスって呼んでくれ」
強張った望の表情を笑いながら、ローガスはもう一度鉄柵に身を預ける。望にも姿勢を崩すのを勧めるかのように手を振るが、生憎と望にはそんな余裕は無かった。そんな望の張り詰めた様子に苦笑を漏らし、大きく身を捩じらせる。
「さて……先ずはわだかまりの解消からかな? こう見えても僕は君より遙かに永い刻を生きている。永遠を生きるエターナルの先達として、ズブのルーキーにして期待のホープたる君の質問に答えてあげよう」
気軽にそう言い放ち、じっと望を見つめる。その無邪気ながらも底の見えない瞳に呑まれそうになりながらも、望は言葉を絞り出す。
「……ナルカナから聞いた情報と、随分違うみたいですね。アイツ、血眼になって探してますよ?」
「……あ」
その言葉に、ローガスは頭を抱える。忘れてたと言わんばかりに、その笑顔は凍りついていた。
「そっかー、そりゃ怒るよなぁ……結界張って正解だった…」
小さく呟き、力なくズルズルと身を沈める。いきなり出鼻を挫かれたように脱力するローガスに望は毒気を抜かれ、そう言えばと彼が言っていた先の言葉を思い出し、元々の気の重さも相まって結局は鉄柵に身を預ける事にした。
「……もういいや…なるようになれ、だ。ローガス、こんな感じでいいのか?」
「そうそう! 是非ともそんな感じでお願いしよう。改めて何でも聞いてよ」
投げやり気味に態度を砕けさせた望にローガスは破顔し、嬉々として望に話しかける。そうであるならばと、望もローガスに自らの最終目標たる核心をぶつける事にした。
「ナル化マナについて、何か知る事は無いか?」
「その質問に対する答えはイエスでありノーである、と言わせてもらおうか。恐らくはこの神剣宇宙において、君達以上にナル化マナ……ひいてはナルについて詳しく知る者はいないだろう」
返って来たのは、絶望という名の事実だった。あっさりと答えた分、その情報の確実性は推して知るべしと言うべきか。知らず知らず、その両膝を地面に付ける。瞳の焦点がずれ、呼吸のリズムが乱れてくる。そんな望の様子を知ってか知らずか、ローガスは更に言葉を続けた。
「アレは例外なく、すべてのマナ存在を取りこんでしまう……言わば、神剣宇宙のアンタッチャブルとでも言うべき存在だ。ウチのブレーンであるルシィマですら触れなかったんだし、好き好んで関わろうとする奴らなんていない……それに、君自身は薄々感づいてるんじゃないのかい?」
「……」
「沈黙は肯定と受け取ろう。恐らくは君が旅をしている一行の中では君と……君の中にいる『彼』が、最もその解に近付いているだろうね」
そう言って、望の出方を窺う。流石に不味かったかと危惧したものの、望は体勢を立て直し、しっかりと二本の足で地面に立っていた。不安が己の杞憂に過ぎない事に安堵しながら、次の言葉を待つ。
「なぜ、俺に目を掛ける? 神剣第一位の担い手だからって訳でもなさそうだし……」
「ナルカナの契約者というのが、大きなファクターになっている事は認めよう。しかしこればかりは今明かす訳にいかないんだ。その時が来れば、全てを君達に打ち明けたい……何でも答えるとか嘯いた割にこの程度か、なんて事は言わないでもらえるとありがたいかな?」
「…まあ、期待もしてなかったし仕方ないか。性急過ぎた自分へのペナルティと思えば納得もするさ……で、今のところは最後の質問になるか……何故、今なんだ?」
「それは、これから君に話す事の内容も多分に含まれている。その質問が最後だというのなら丁度いい……少し、僕の話に付き合ってもらうよ」
~~~~~
こぽり、こぽりと小さく液体が泡立つ音が、先ほどよりも更に暗くなった部屋に響く。全体的にひんやりとした空気が漂う地下室……そこにザーデャンとテムオリンはいた。足元への注意は、浮遊している彼女に必要ない。故に彼はテムオリンを一瞥もせずに、手元の灯を頼りに迷いなく廊下の最奥の間を目指す。
「ふむ、到着だ。そう言えば貴方は今回の被験体を見るのは初めてだったか」
「ええ、ストレスを与えずに育成している…というのが気にかかりますが」
「ふむ、口で言わずとも、現物がこの向こうにある。意味無き言の葉の羅列より、それを見ていただく事が何よりの説明になろう」
言葉尻に、高貴さを感じさせる濃厚な飴色をした樫の木の扉を開く。その中は廊下の暗さとはうって変わり、優しい橙の光に溢れていた。そんな温かい光に照らされ並ぶのは上階の機材に劣らない様々な機材の数々。
そして、そんな温かい部屋の中心に鎮座するのは
「あらあら、これがアナタのいうストレスを与えない方法なのかしら?」
全ての四肢を根元から切断され、
「ふむ、愚問であるな。そもそもストレスとは、外的要因による脳への負荷が原因である」
割り開かれた頭蓋、その露出した脳に直接電極らしき端子を飽和するまでに刺し込まれ、
「ア…アぃェ……ウウウァ……」
その腹部は新しい命が宿っている事が一目で理解出来る程に膨らみ、
「なれば、あらゆるストレスの要因を脳から直接排除すれば、必然的にストレスなき環境を作れるのは自明の理」
だらしなく相好を崩し、片目を刳り抜かれた女性が寝かせられていた。
「……やはりアナタは私の期待に応えてくれますわね。その自論への疑問を微塵も抱いていない」
「ふむ、もしかすると私は心外な事を言われたのかね? 生憎と、私はその言葉がよく理解できていない」
「構いませんわ。流してくださいまし」
目の前にあるオブジェと化した者が、まるで存在しないかのように振舞う二人。ザーデャンはその女性が産み出す結果にのみ注視しているが、テムオリンはその女性の表情をまじまじと見詰めている。
「ああ、この幸せを体現したかのような恍惚の表情。現実の自分がどうなっているのか理解しないが故の無垢なる瞳……この上なく癒されますわ……」
そう言いながら、その女性の顎を優しくなぞる。今、彼女にはどんな世界が見えているのだろう。今、彼女はどんな思いで身重の自分を労わっているのだろう。
思いを巡らせるテムオリンの手元で、尚も女性は身じろぎひとつする事は無い。
「ふむ、お楽しみのところ申し訳ない。そろそろのようだ」
ザーデャンがテムオリンに言葉を投げかけた瞬間、女性の身体がビクリと大きく跳ね上がる。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁっぐぅぅぅぅぅ!!?」
今までの静けさを全否定するかのように、大きく艶の混ざった叫びを上げる。その陰部は大きく膨らみ、新しい命がもうすぐ世に放たれる事を容易に想像させた。
「うまっ、れるぅぅ!? あかちゃ、赤ちゃん! 私のぉっ、見てて! アナタの為に!! がんばってぇ、産むからぁぁぁぁ!!!」
モコリと陰部が歪み、膣肉が外部に見え始める。今までの被験体とは一線を画し、この母胎は出産に手助けは必要ないようだ。その叫びから察するに、彼女はその脳内にパートナーを見出しているようだ。
「ふむ、完全に外部と隔離した状態から脳内に別の存在を飼うか。母胎として捕獲する前の影響か、それとも『コレ』が何らかの影響を与えたのか……」
喘ぎと悲鳴の狭間。その音量に若干顔をしかめるものの、ザーデャンは母胎の様子をつぶさに観察し、その変化から発言に至るまでを簡易にまとめて考察する。その過程でチラリと培養器に入った『ソレ』を見るも、変化なしと見るとすぐさま観察に戻る。
後に残ったのは、人工的な部品と契約を強制させる生体パーツにまみれた『永遠神剣のなれの果て』であった。誇り高きその刀身は蹂躙され尽くし、もはやその威容は見る影もない。威信と共に在ったその銘は剥がれ落ち、永遠神剣第三位という事実だけがかろうじてその哀れな姿に繋ぎとめられているのみである。
「ほう、予想よりも所用時間が遙かに短いな」
この実験の過程はキッチリと映像媒体に録画しており、後ほど再検討の対象となる。しかし、観察研究とは生き物であり、リアルタイムの考察が値千金である事は言うまでもない。その好機を逃すまいと、ザーデャンはその頭脳を最大限に回転させて記録を続けた。
「ああああ!? これぇっ!! ナカで引っ掛かる!? すご、きもちぃぃぃぃぃぃぃ!!! ごめんね、こんな変態なお母さんでごめんなさいぃぃぃ!?」
「……美しい…!」
ついに快感一色に染まり、それでも自省をする嬌声をテムオリンは震えながら見つめる。やはり命の美しさとは斯く在るべきだと再確認しながら、この後で来るであろう最大の『甘美なる瞬間』に早くも思いを馳せてしまう。無理もない、これほどの前提条件だ。きっと、今までの被験体の中でも屈指の反応を魅せてくれるだろう。
「うううぐぅあああああああああぁぁぁっっっ!!!」
ついに女性がひと際大きく声を上げ、その胎内に収めた命を羊水や愛液、果ては尿と共に放出する。凄まじい勢いで赤子が飛び出すも、ザーデャンが予め用意していたオーラのクッションが、産まれ出た赤子を優しく受け止めた。
「ア…んぎゃぁぁ……おぎゃああぁぁぁ……」
「うま…れ……た? あ、あはっ、やった……やったよ…わたしぃ…」
新たに生まれた命。それを生みだした存在が、存在しない手を赤子に伸ばす。
膣は愚か、子宮までもが裏返り、赤子との確固たる絆である臍の緒が卑猥にぬめる子宮にへばりついている様が見る者に劣情と憐憫を同時に抱かせる。彼女が呼吸をするたびに、体外にデロリとはみ出した牝の証がぴくぴくと蠢いた。
「ふむ、ついに産まれたか。なれば、此度の臨床実験……仕上げといこう」
新しい命の誕生に何の感慨も見出さず、『探訪』のザーデャンは産み出された命……その命が齎す結果にのみ、己の興味を注いでいる。根元から、母娘を物理的につなぐ絆を斬る。
「お…」
そして、訪れる、
「おお……」
此度の実験の、
「ついに……!」
最終目標たる……
「来たか……!!」
永遠神剣の、顕現。
赤子にオーラフォトンの光が集まり、その腹の上に確かな形を造る。サラリとその光が崩れると、確かな物質がそこに顕現していた。形状は篭手に近く、刺々しいデザインが特徴的である。その篭手をザーデャンが一通り確認し終えると、その表情を険しくさせる。
「……永遠神剣第七位『忘我』……ふむ、外的ストレス要因は顕現する神剣の階位に影響せず…か。ほぼ確定であるな」
ミニオンの要素を完全に排した上で、人工的にエターナルを産み出す。
それがザーデャンがテムオリン主導の元に行っていた実験の正体である。
大本を辿れば、聖賢者ユウトと永遠のアセリアの間に生まれた悠久のユーフォリアが発端であった。前例なき、生まれついてのエターナル……もしもこれが必然的に生み出されるのであれば、ロウ・エターナルの勢力としての地力は盤石の物となる。そのエターナル出生研究に白羽の矢が立ったのがザーデャンであった。今日に至るまで成功例こそないものの、彼の研究によって様々な成果が認められている。
「ふむ、ケース二八五五九は失敗。ただし、臨床結果としてはケース三七の法則はほぼ決定的である事を確認……」
「影響の確認は終わりましたのね?」
「ふむ、これで終わりである。いささか貴方はこの瞬間に限っては堪えが利かなくなるな」
「仕方ありませんわ。『法王』としてではなく、『テムオリン』としての数少ない愉しみですもの」
もう待ちきれないとばかりに、テムオリンがザーデャンに確認を取り、渋々とザーデャンはそれに頷く。
「処分はしっかりと行っておいてくれ。私はこれから次の準備に入るのでな」
それだけを告げ、赤子を腕に実験室を出る。これからこの赤子の臨床実験がある。
一人のエターナルが産み出せる神剣使いは一人まで。これがザーデャンが一周期に渡る研究の末に導き出した成果であった。
そして、たった今神剣使いを産み出したこの女性には、もはや価値は無い。これから彼女は、テムオリンの享楽にその身を捧げ、廃棄される運命にあるのだ。
「ふむ……それもまた宿命、であるか?」
「……ふぇ? わたし…あの人と一緒に赤ちゃんを産ん……で…? なにこれ、なに……あ、あ、あ…」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!?????」
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赤子の解剖と解体を一通り終え、各所への考察を書き終えた頃、テムオリンが地下より帰還した。
「気は済んだのかね?」
「ええ、おかげさまで。有意義な一時でしたわ」
そう言って一つ、小さく余韻と共に息を吐き出す。それは何よりだと呟き、席を立つ。
「あら、検体の提供なら心配せずとも……」
「ふむ、次の課題は羊水へのマナの付着なのでな。暫くはそちらに専念したい」
一筋縄ではいかないと告げ、今後の模索の為に研究室を出ようとする。そのザーデャンに声を掛けたテムオリンは、本当に何気なく呟いたのだろう。
「この研究の成功例を調べる事はしませんの?」