これで大体のストーリー予想は出来ると思うので、やっぱりエタる可能性が依然として大きいままっていう(´・ω・`)
それでも読んでくれる人がいると思うと嬉しいと同時に申し訳なくもあり……
「よっ」
不意に、ローガスが何かを望に投げつける。望が危なげなく受け取ったそれは、所謂缶コーヒーと呼ばれる物であった。見たこともない言語が記されながらも、懐かしいという言葉では言い表せない程の親しみが湧くデザイン。恐らくはローガスの私物であろうそれを、プシュッという軽い空気漏れの音とともに遠慮なく開封する。
「悠久のユーフォリアとは、今でも連絡を取っているそうだね? ああ、彼女とは家族ぐるみでの付き合いがあるんだ。気にしないでくれ」
望と同じく開栓した缶コーヒーに軽く口を付け、何の事は無いとばかりに軽く言い放つ。この話の胆はそこにはない、という意思の顕れなのだろう。大人しく望はローガスの言葉を待った。
「最近のユーフィーからの手紙、何が書いてあった?」
「…お母さんとケーキ作りに挑戦して、お父さんに食べてもらったってのがあったかな。お父さんが感極まってホール丸ごと全部平らげて、後で二人の分が無くなった事に気付いて高級ケーキ奢ってもらったとか書いてたっけか。写真も一緒についてて、中々写りも良かったし」
「へぇ、それは中々面白そうじゃないか。今度ユートに聞いてみるとしよう……っと、本題はそこじゃない。望、その手紙……いつ頃来たんだい? 君の使う時間で構わない」
「……? 大体二週間前ってところか。宿にまだ手紙は残ってるし、確認すれば…」
ローガスの言いたい事が今一つ理解できず、疑問を呈しながらも懐の時計を取り出してそう答える。もし必要であればと取りに行こうとする望を手で制し、そうじゃないと小さく呟く。
「そうじゃないんだよ、望……写真が一緒にあったって事は、今のユーフィーも見ているんだろう? それぞれの分枝世界によって進む時の速度に違いはあれど、僕達エターナルは基本的に同じ速度で時を刻んでいる」
「……? そりゃそうだろう、エターナルってのは文字通り世界の枷を外した永遠の存在なんだから……何が言いたいんだ?」
「……なるほど。君のその言葉で、大体は呑み込めた……望、君がエト・カ・リファを脱出して今日に至るまで、君の出身世界の時間でいえば二八三年と三○七日の時が経過している」
「……何故知ってるのかはさておき、もうそんなに経ったのか。でもそれとユーフィー達と何の関け…い……」
言いながら、何かに気付いたのか次第に表情と言葉を凍らせてゆく。
「そういう事だ。それだけの期間があるなら、『人間であれば』精神の成熟どころか、普通ならその一生を難なく費やしている。それだけの時を、人が過ごす事はまず以ってあり得ない……言ってみれば仙人や人外の領域さ。そう呼ばれる連中の精神性の高さは推して知るべしだろう? それを汲んで考えれば、ユーフィーの幼さが変わっていない事がいかに不自然な事か……『今の君』なら、もう理解してしまったんじゃないかな。君の場合はエターナルに至る過程が特殊だから、その変わらぬ幼さにどこかで引っ掛かりを覚えながらも決定的な一線を気付けなかった……気付かなかったと言うべきか」
「……そんな、いや、でも…」
「望…エターナルと人間の決定的な違いはね、思考の違いなんだよ」
戸惑いの表情を浮かべ、何とか言葉を絞り出そうとする望を制し、ローガスは更に言葉を被せる。今の望には情報の整理よりも、事実の羅列が必要なのだと判断したローガスの言葉は止まらない。
「簡潔に言ってしまえば、エターナルってのは大局的視点……マクロ思考が大前提の生き物なのさ。元から非人のルシィマやミカゲはいざ知らず、僕達のようなたかが人間の精神が、千年も二千年も続くような時間に耐えられる訳が無い……だからこそ、エターナルはその思考、精神の一部を意図的に神剣に『喰わせる』んだ。その過程で神剣に悪意があったり、エターナルの心が弱ければ……自分が自分であるための心すらも神剣に喰われて、エターナルは単なる神剣の手足になり下がる」
「…まさか、悠久がそういう手合いの神剣だってのか?」
「いいや、彼女の神剣は宿主との確固たる融和を示している。そもそも彼女は文字通り、生粋のエターナルだよ。ここで特筆すべき彼女の精神性は、単に生まれついてのエターナルであるが故の自覚の無さと、生まれついてのエターナルであるがこその高潔さだ」
そう言ってローガスは自らの米神を二回、次いで胸を同じく二回、親指で軽く叩く。その表情は変わらぬ微笑を湛えながら、どこかニヒリズム的なものを望に感じさせた。
「僕も彼女との付き合いは短くないが、新しい発見の数々だったよ。ユーフィーはね、エターナルとしての自覚に誰よりも欠けながら、エターナルとしての覚悟を誰よりも強く持っていたんだ」
「自覚と覚悟……か。半端者には耳の痛い言葉だな…」
「っははは。何度も言うけど、君は生い立ちが特殊だから仕方ないさ。彼女が自覚さえ持ってくれれば……僕としても安心してあの一家に全てを託して、悠々自適の隠居生活を送れるってのにねぇ」
「……現状ユーフィーが大丈夫なら、それでいい。欠けてるのは自覚なんだろ? それをこれから学んでいくってんなら、ローガスが心配する事なんて無いんじゃないか?」
何の気負いもなく、そうローガスに告げる。打算も深謀も無い、ただユーフォリアを案じたが故の一言。そんな望の何色も浮かばない瞳を見たローガスは、小さく首を振って望に何処か空虚な笑みを向けた。
「……言い方が迂遠に過ぎたね。僕が言いたいのは、僕が心配しているのは、君の方さ」
「……俺?」
思いも寄らぬローガスの言葉に首を傾げる。何故、ユーフォリアの精神論から望の心配へと話が飛ぶのだろうか。
「その通り。君だ、世刻望……いや、正確には君と契約したナルカナと言った方が良いか。」
「?」
ますます理解が追い付かない。自分への懸念がナルカナに繋がる……それもユーフォリアの精神論を説いた後にだ。つまりは望かナルカナ、もしくは双方の精神性に対して、ローガスは何か含む所があるという事だ。一回り遅れながらも、漸く望の思考回路が本格的に回り始める。
だが分からない。忘れていたとはいえ、ローガスはナルカナへの接触を行わなかった。必要が無かったと言われればそれまでだが、今回の接触にはどうにも腑に落ちない点が見受けられる。レーメすら伴わず、真の意味で望が一人だけになるこのタイミングに、神剣宇宙の大勢を左右しかねない組織の頭領が接触を図った。今となっては益体もないが、ローガスのあのリアクションも取り入る為の演技だったのかと思える。
頭の中でそんな事を絶えず考えながら、それでも身体に熱が籠らない。今の自分がどれだけ捨て鉢になっているかが容易に理解出来る。それでも今考えられる可能性を元に、あらゆる状況をシミュレートする。交渉に至るまでの会話の運びから、一戦交える際の生存手段まで、その思考は多岐に渡った。意思と思考の分化を実感しながら、真意の一線を探るべく、現状に於いて最も可能性の高い話題を構築する。
「……激励というよりは忠告。それも宣告に近い何かか。エターナルの気概とナルカナの名前が出たって事は、その話の内容は叢雲の『精神を喰わせる』機能とやらが何らかの不全を起こしている、あるいはナルカナが意図的にその機能を止めている……ってところか。お前の言い分だと、特に後者を推してる様だけど?」
「…ご名答。やはり僕の眼に狂いは無かったね……その通りだ。ひとつだけ訂正するとすれば、その宣告に伴って君に今後エターナルとして生きていく為のアドバイスを送りに来たってぐらいかな? その為にも、まずは叢雲が抱える羽目になった『機能停止の原因』を説明するところから始めた方が賢明だろう」
「賢明ってのは自分で自分に言うモンなのか? っと、まあいいか。ナルカナがそれを止めるに至った経緯を知ってるって事は……お前、やっぱりこの瞬間を狙ってたな?」
「とっくに気付いてたくせによく言う。ナルカナ達にいけずだと言われないかい? ま、良いか…その叢雲が不全を起こす原因なんだけどね。一番大きなファクターになってるのは、世刻望というよりも君の前身たるジルオル=セドカなんだよ」
「ジルオル? なんでアイツが……」
言いかけて、気付く。事の発端たる因縁の遙か彼方、エト・カ・リファと呼ばれる時間樹が創造される経緯にまで遡った、ナルカナとジルオルの関係を。
「そう、彼女が直接の原因ではないとはいえ、そんなものは第三者の言葉遊びでしかない。彼女は……ナルカナは、ジルオルから全てを奪いつくしたと未だに自らを責めている」
やはりか。望がローガスの言葉を受け、最初に脳裏に過ったのはその一言だけだった。彼女が時折見せる、憐憫にも似た憂いの眼差し。積極的な求愛をアピールしながら、自ら一線を越えようとしない臆病さ。望の精神世界の中での邂逅、その時に聞き出したのはジルオルが望に賭けた可能性だけで、ナルカナ自身の懺悔は無かったと聞く。きっと、ジルオルに真意を求める事すらも恐怖になっていたのだろう。
ジルオルが覚醒している内ならばまだその恐怖を払拭する機会はあったのかもしれない……しかし、ジルオルが休眠してしまった今となっては、その安寧を『奪う』事が怖い。関係を『失う恐怖』と、過去からなる『奪う恐怖』……恐怖で雁字搦めにされたナルカナには、普段通りに振舞う事で今の距離を維持する事しか出来なくなっていた。
それを打破できるのは、『ジルオル』であって『望』ではない。自分がどんな言の葉を並べ立てようと、それは彼女にとっての救いには成りえない。それが理解出来ていたからこそ、彼女の茶番を受け入れて互いのバランスを取り続けていられるのだ。
「だからこそ、彼女はもう君から…君達から何も奪いたくない。たとえそれが君に利する行動であったとしても、強迫観念となったそれは、君から何かを奪う事を彼女にとってのタブーにしてしまった……」
ちゃぽちゃぽと、残り少なくなった缶コーヒーの中身をくゆらせながら、ローガスはあくまでも淡々と事実を望に告げる。その理由は今知ったものの、彼女の兆候を以前から察していた望は、そうかと短く返すことしかしなかった。それすらも予想の裡にあるのか、ローガスはにんまりとした笑みを崩そうともしない。その余裕ぶった表情に、腹の奥からせり上がってくる不快な感情を、手元の缶コーヒーで独特の苦みと共に飲み下す。
「此処まで言えば、君だったらもう分かるだろ? 君は、この先の永い時間を『人間、世刻望』として送らなければならないんだ。彼女の心が罪悪感に囚われている限り、それが覆る事は無い」
「……なるほど、な……つまり、ナルカナを真の意味で解き放つのが先か、俺の精神崩壊が先かのチキンレースになりつつある状況を教えに来た…と」
「言い方がアレだねぇ……ま、概ねその通りさ。僕としては…というより、カオス・エターナルの総意としては、君以上にナルカナを御せる存在は今後を含めて出現しないだろうと踏んでいる。だから、君にはナルカナの楔として、神剣宇宙の異端児たる『叢雲』の担い手として、大きな期待を寄せている……だからって君を僕達の陣営に引き込もうなんて事は無いから、そこは安心してよ? 来るもの拒まず、去るもの追わず…ってね」
最後に軽く言い放ち、ローガスは言葉を締め括る。缶コーヒーの最後の一啜りを堪能し、空き缶と化したそれをベコベコと弄びながら、自分が告げるべき事柄は以上だと望に促した。
「……仮に、俺の精神が先に崩壊したとして…その時、お前はどう行動する算段なんだ?」
「本音を言えば、そうならない事を心から祈っている。それでも君が壊れた時は……」
「…だろうな。でも、俺が抱えているモノがモノだ。成るだけ被害は抑えてくれよ?」
まだ半分以上残った缶を軽く揺らしながら、何でもない事のように告げる。ローガスは望の薄ら笑いを苦笑で受け止め、ひとつ頷いて姿勢を正した。
「よし、これで僕からの話はお終いだ。で、ここからは僕個人のお願いになる。最初に弁明させてもらうとすれば、今から話す内容はこのタイミングでなければならない理由があるんだ。だから、申し訳ないが今から話す内容について、一切のクレームを入れるのは無しだよ」
「いきなり厭に丁寧になったな。どうしたってんだよ…」
「うん…たった今の話だ――――」
~~~~~
「成功例の……研究…?」
ザーデャンにとって、その呟きは青天の霹靂に等しかった。そうだ、何故その発想に至らなかった。己の成果と独占したかったからか。否、純粋にこれまでの研究に先人というものが存在しないが故に、その選択肢を最初に排除したのだ。
「…ふむ、その考えに至らなかった自分を心より恥じよう。目標を変更だ」
今までに見たことの無い、慌ただしく動くザーデャンの様子を少し可笑しげにからからと笑いながら、テムオリンはザーデャンにひとつの助け船を持ちかける。
「あらあら、思わぬ一言でしたわね。もしも入用でしたら、陽動は此方で請け負いますわよ?」
「是非も無し……私の『探訪』は戦力として不安が残るのでね。ふむ……アレには確か親が居ただろう。記憶が正しければ彼奴等はカオスの幹部候補ではなかったか?」
「今は時間樹『エイン・ソフ・アウル』でメダリオと小競り合いの最中ですわ。少し前にミトセマールも投入したので、暫くは問題無いでしょう。此方としても、対象の捕獲を仕損じた時の被害は軽視できませんの……念には念を見て、直属の部下をアナタに付けます」
願ってもない申し出に、ザーデャンの顔が僅かにほころぶ。彼のロウ・エターナルの中核を担うテムオリン……その直属ともなれば、戦力としては申し分ない。
ただ、欲を言わせてもらう部分があるとすれば、彼女の部下は性格に難のある者が大多数を占めているという事であろう。もしも略取の過程で対象が壊されるような事があっては、テムオリンとの現状の関係にすら影響を及ぼしかねない。
先手を打つ事に、損は無い……なればこそ、この線引きだけはせねばなるまいと、笑みの中に若干の警戒を含めながらザーデャンは徐に口を開いた。
「ふむ、よろしく頼むとしよう……人員次第で戦法は変わる。差し障りが無いのなら、誰を寄越して貰えるのか事前に教えておいて欲しい」
「そうですわね……シュンは対象を殺しかねませんし、ミカゲは図体が少し大きすぎます。トークォはナマケモノですし……此処は手堅く、タキオスを宛がいましょうか」
「彼の武人であるか。それほどの大物を私に?」
「万一略取そのものが失敗であっても、聖賢の対たる彼ならば多少の抑えは効きますわ。『黒き刃のタキオス』……彼をアナタに付けましょう」
宛がわれたのは、考えうる限りで最上の人材。それはもはや破格と言っても差し支えなかった。リスク回避を望むのは、テムオリンとて同じらしい。
目標が定まったのであれば、それに向かって邁進するのみ。二人は実験室を出て、道すがらに簡易の作戦を立て始めた。
この顛末が、後にロウ、カオス両陣営……果ては神剣宇宙そのものを巻き込んだ全面戦争に至る引き金となった事件、一カ月前の出来事である。
~~~~~
バァン!!
「「「!?」」」
突如として部屋に響いた大音響に、ナルカナ達が驚いて音の発信源…この部屋と廊下をつなぐ扉へと目を向ける。そこには、壊れたドアノブを片手に、それすらも意識の埒外であるといった風情の望が焦燥感も露わに立ち尽くしていた。
「…? 何があったというのだ?」
望のただならぬ気配を察した三人を代表し、レーメが口火を切る。ナルカナと沙月は事態の推移を汲み取り、軽く荷物をまとめ始めた。そんな三人の様子を見て我に帰った望は大きく息を吐き、自らの冷静さを取り戻すと改めてナルカナ達に向き直る。
「すまないが、今日明日にでもこの時間樹を出る。行き先ももう決まってるから、準備が終わり次第だ。長旅になるだろうから、必要な物の調達を」
「……その剣呑さといい、珍しい強引さといい、よっぽどの事態みたいだけど。せめて一言説明くらいは欲しいものね、望くん?」
「そーねぇ……結構な厄ネタってのは見て理解出来るけど、現状で大きなマナがうねる予兆を感じてもないし……沙月と同じく、やっぱ一言は欲しいわよ」
沙月とナルカナ、双方から出た不満に望は顔を伏せる。今、言ってしまっても良いものかと考えを巡らせるも、いずれにせよ話さなければならない事を思えば一緒だろう。事の大きさが大きさだけに、慎重になりすぎていたきらいがあると自省した。これから告げる事の重大さに腹の奥で重みを感じながら、それでもと望は口を開いた。
「…ソースは伏せさせてもらうが、たった今しがた入った情報だ」
その言いざまに何か引っかかりを覚えながら、ナルカナ達は望の言葉に耳を澄ませる。
続く一言が、己の命運を左右しようとは思いもよらずに。
「……悠久のユーフォリアが、ロウ・エターナルの手に落ちた」
~~~~~
――物語は、
「ふむ、そういえば風の噂に聞いたが、彼の『叢雲』に使い手がついたそうであるな」
「マクロ思考すら儘ならないような尻の青い糞餓鬼など、捨て置いて何の問題もありません。あと二周期は放っておいても我々の害には成り得ませんわ」
「ふむ、ならば良かろう。なれば本題であるが……何故私が用意したフリーパスを使わないで、わざわざ非正規の侵入ルートの開拓を繰り返すのかね? 穴を潰すのも楽ではないのだが」
「あの全身を這いまわる感覚がどうにも好きになれません。それを改善していただかない事には、とてもではありませんが……」
「善処するとしよう………ふむ、『叢雲』……ナル化マナの研究か……」
「勝手に消滅するのはアナタの勝手ですが、此方の依頼を完遂してからにしていただけませんこと? 生憎と私、浮気に寛容ではありませんの」
「ふむ、それは手厳しい。案じずとも私とて、この研究は己が生涯最後にして最大の探求だと位置付けている。こればかりは地位を動かす事罷りならんよ」
「ならば良いのです。新入りの双子にカオスの無軌道なゲリラ戦、果ては信者達の人心掌握……悩みの種は尽きませんわ…」
~~~~~
―――動き始める。
「ルインド…ユニバース!!」
《っと! ユーフィー、そろそろパーマネントウィルが限界みたいだ。一旦休憩を挟もう》
「わかったよ、ゆーくん! ……はぁ、どうしちゃったんだろう…ここのところ、どんどん攻撃力が落ちてきてる……」
《でもそれに反比例して防御能力がうなぎ上りになってるよね。それって、ユーフィーの成長の方向性が定まってきたって事じゃないのかな?》
「今まで出来てた事が出来なくなるなんて聞いた事もないよ…もう下級のパーマネントウィルなんか反応もしてくれないんだよ? 絶対なにかあるんだと思う。今度パパとママが帰ってきたら教えてもらおう…」
「ふむ、なればそれも含めて、私が貴方を解明してあげよう」
「《!?》」
「ご機嫌麗しゅう、『悠久の君』……不躾な接触である事をまずは謝罪しよう。そして、諦めたまえ。今、この場に於いては君に首を横に振る権利は与えられていない」
「ほう、貴様が『聖賢』と『永遠』の倅か……なかなかどうして、良い血を受け継いだようだな」
「あ……ああ…」
「なに、悪い扱いにはせぬよ。貴方が案じる事は何もない…では、下手な抵抗はしないことをお勧めしよう」
「……だ、そうだ。大人しくするなら善し。抵抗しようと言うなら………まあ、張り合いが出るだけだ」
「ママ……パパ…ッ……!」
~~~~~
――――その軸を欠いたまま、
「…? ユーフィー…?」
「余所見をする暇があるなら……死んでもらえませんか!?」
「アセリア!! っくぅおおおお!!!」
「っ! ユート、ごめん!!」
「おやぁ? そのガラ空きの背中…そんなに苛めて欲しかったとはねぇ!!」
「させない…!! ユート!」
「よぉし、一気に畳むぞ! インスパイィィィアッ!!」
「おっと、そう簡単にはいきませんよ? 貴方がたは私が殺すのですから!」
「っく……! 負けない!!」
~~~~~
―――――誰にも止められない程に、
「手段は問わぬ……往け」
「「御意に」」
――――――その速度を加速させて。
――落ち逝く奈落に果ては見えず、
――暗む闇の底は知れず。
――歩む道程は屍で埋まり、
――見上げる空は血で染まる。
――――虚の旅路に救いは無い。
―これは、きえゆくさだめのなげき―
「…………すまない、望……これは『賭け』なんだ。君の運命を支度金に据えた、勝ちの目が出ない絶望の賭けなんだよ………もし君がこの流れに掻き消えることなく、その運命に打ち勝つ事が出来たのなら――――――僕を殺すのは、『運命』を終わらせるのは君を置いて他に無い。君が僕を誅殺するその時を、心待ちにしているよ―――『叢雲のノゾム』……」