エリア31
時刻
午前1時過ぎ
「ヤバイ!みんな!!敵だ!」
いきなり扉を乱暴に開けて川内が小屋に駆け込んできた。
「……敵は?もうこちらに気付いてるかい?」
響は暁を起こすために暁の体を揺すりながら尋ねた。
「いや、私は見られたけど、隣のエリアを経由して撒いたから多分大丈夫だと思う、ただ……」
川内は険しい表情を浮かべる。
「……どうしたんだい?」
「うん、高雄型の4人だった……」
それを聞いた響は青ざめた。
今の戦力では、重巡洋艦を相手にするだけでも死を覚悟して望まなければならないのだが、よりによって精強で知られる高雄型、しかも4人揃ってる……。
「川内さん、相手はヤル気なのかな?」
響は一縷の望みを託して聞いた。
「……分からないけど……」
川内は右腕を見せる。
「……」
川内の右腕には切り傷が付いていた。
幸い傷は浅いようで血も止まっているが、これは相手の明確な敵意を汲み取るには十分なものであった。
「私を確認する前に切り付けてきたんだ……」
「どうする?この小屋に隠れてやり過ごしちゃうの?」
那珂が小屋の壁に空いている穴から外を見るが、真っ暗で何も見えなかった。
「……」
響は迷っていた。
この人数で外に出れば万一敵に気付かれた場合、逃げ切れる可能性は低い、かと言ってここで留まって見つかってしまった場合、確実に全滅する。
響には決められなかった。
もう一つの選択肢、それぞれ散り散りバラバラに逃げる……。
「……」
響には出来なかった。
姉妹達と別れて1人で死ぬ事、それだけは出来ない選択だった。
「皆……取り敢えずここでやり過ごそう……」
響にはその選択しか選べるはずは無かったのだ。
「…………」
「ふふ、分かっていますよ姉さん……」
突然神通が言った。
「さっすが神通だね!それじゃあ首尾よく逃げてよ?」
「……川内……さん?」
響には2人が何を言っているのか理解出来なかった。
「それでは、後ほど……エリア22で落ち合いましょう?」
「……うん、分かった……30分して戻らなかったら私の事は気にせず逃げるんだ、わかった?」
「はい、承知してますよ……それでは姉さん……ご武運を……」
2人の会話を聞いて響はようやく理解した。
「ダメだよ川内さん!絶対に死ぬ!」
「……大丈夫だよ、夜の戦いは誰にも負けないからさ?それに、まともに戦うわけじゃないしね?上手く撒いてまた合流するさ」
「そんな事……」
響が川内を止めようとした時、横から電が出てきて響の肩を掴んだ。
「電!?」
「川内さん……疑ってしまって申し訳ありませんでした」
電の手には電動釘打ち機が握られていた。
「これを使って下さい……」
電はそれを川内に差し出す。
「……ありがと、気持ちだけ受け取っておくよ、私は殺し合いをするつもりは無いからね……それは受け取れない」
「何故だい!?何故そこまでして私達を助けようとするんだい?」
響は珍しく無意識に大声を上げていた。
「しっ、声が大きいよ?私は水雷戦隊の旗艦だ、駆逐艦を守るのも私の義務だ……それは神通も那珂も同じだよ?」
「……」
「……」
2人は無言で頷く。
「大丈夫さ……私を信じて……」
そう言った川内は扉から出ていき、暗い夜の闇へと消えて行った。
「……」
「さぁ!皆さん!姉さんが時間を稼いでくれますから、すぐにここを出ますよ?」
神通が声を上げて荷物を纏める。
「よーし!皆の荷物は私が持つから!皆は逃げる事にだけ集中だよー?」
那珂は器用に全員分の荷物を担いで外に出た。
「分かったよ……とにかくエリア22まで走ろう!」
響も決心を固めて暁と雷の手を引く。
壮絶な逃走劇のはじまりであった。
待て次回!!
あと少しだけ、バトル回が続く予定です。
暑くてテンションが上がりません、冬よ早く来い!!!