高雄は無表情であった。
しかし洞穴の天井に括り付けられた、いくつかの探照灯が作り出す逆光によって、川内からその表情を確認する事は出来なかっただろう。
だが高雄から醸し出される、ただならぬ異様な雰囲気を感じた川内は、再び恐怖を感じたのだった。
「私は愛宕程甘くない、嘘を言ったり役に立たないと感じたらすぐに死んでもらうわ?」
「……」
川内は自身の両手足が、問題無く動く事を高雄に悟られないように確認する。
「私は本当に何も知らないし、私の姉妹達もココに来る前の記憶は曖昧だったんだ!だから!もう私を許して欲しい……」
川内はそう言いながら辺りを目だけで確認する。
「許す?別に貴女は許されるような事はしていないでしょ?」
無表情のまま答える高雄の右手には、前に愛宕が持っていた両手持ち用の金槌を握られている。
重巡の力で頭部でも殴られれば即死は免れないだろう。
「そ、それはそうだけど……」
高雄の背後には木箱が三つ程置かれており、その上に愛宕が寝ている。
出口はそのすぐ横にある横穴だと推測出来る。
「愛宕程甘くないと言ったけど、素直に話してくれれば殺しはしないわ」
高雄はゆっくりと川内に近寄る。
「……く、来るな!」
川内は尻餅をついたまま後ずさる。
そうしながらも川内は右手で地面を抉り、一掴みの土を握りしめていた。
「いくら速力に差があっても、この閉所で逃げられると思ってないでしょう?」
更に川内に近寄る高雄……。
「……ふふっ、それはどう……かな!!?」
川内は右手に握り込んだ土を、思いっ切り高雄の顔へ投げ付けた!!
「よし!!行ける!!」
川内は高雄が怯むと予想して、その真横を出口目掛けて駆け抜けた……。
「だから逃げられないって!」
「え?」
川内は右脇腹に衝撃を感じると……。
「うあっ!!」
次の瞬間、右半身を壁に強か打ち付けていた。
高雄は顔面に土を浴びながらも、全く怯むことは無く真横を通り過ぎる川内に対し、金槌の一撃を繰り出していた。
「うげぇほっ!!げぇ……ぼぉっ!!ごぉほっ!」
川内はのたうち回り口からは大量の血を吐いている。
「肋骨でも砕けたかしら?大丈夫?喋れるかしら?」
高雄の右目から少量の流血をしているが、気にもとめず無感情の声で川内に語りかけるが、川内はそれどころでは無かった。
高雄の予想通り、川内の肋骨は金槌が直撃した衝撃によりグシャグシャに粉砕していた。
想像を絶する痛みに、もはや話すことなど出来ない川内、肺に損傷を受けた為、息をする度に死ぬほどの激痛が走る。
「……っっ!!!!!」
「……駄目みたいね?」
川内は糞尿を垂れ流して、吐血しながら地面を這いずり回る。
「おーい、摩耶様只今帰還したぜー?ってくっせーな?どうしたんだよ?」
丁度摩耶と鳥海が帰還した。
「ごめんなさいね?今静かにさせるわ」
そう言うと高雄は金槌を思い切り振り上げる。
「……じん……つぅ……げぼぉっ……なか……うぼぼ……」
川内は痛みに打ち震えながら、手元に落ちていた探照灯に手をかける。
これは先ほど川内の尻に押し付けられた物で、未だに煌々と照らしていた。
「どうしたの?夜戦でもするつもり?」
高雄は初めて表情を崩し不気味な笑みを浮かべる。
「…………わたし……頑張った……よね?」
川内は最後の力を振り絞って探照灯を投げ付けた!!
「いや、流石に当たらないわよ?」
高雄は難無く探照灯を避け、その行方を目で追った。
「愛宕!!」
「……すーすー」
愛宕は徹夜が原因で深い眠りについていた。
探照灯が木箱を突き破り、中身に命中して燃え上がった。
「くっ!ヤバイみんな逃げ……!!!」
!!!!!!!!
高雄が叫ぶ間もなく、エリア50の洞穴は巨大な爆発によって木っ端微塵に吹き飛んだ!!
エリア50で木箱に保管されていた物は、強力なダイナマイトであった。
「おーい、やるじゃねーか?お前ら!いきなり5人も死んだぞー?」
誰も居なくなったエリアに、下卑た声が響き渡った。
待て次回!!
川内型と球磨型は特に好きです。