エリア23
一時の休息をしている響一行は、焚き火で焼いた魚を食べ終え、食休みがてら今後取るべき行動について会議をしていた。
先程合流した弥生と卯月は荷物を持っていなかった。
「あの場から少しでも早く離れようと必死だったぴょん……」
「卯月、ありがとう……弥生を引っ張って行ってくれて……」
弥生は無表情のまま頬を紅く染める。
「那珂ちゃん?聞いてます?」
「え?なぁにぃ?」
神通の表情が強ばる。
「あ……ごめんなさい、聞いてます!」
「今言った通り、万が一比叡が公園にいた場合、すぐに逃げる事、バラバラに逃げて最終的にココ……エリア29で合流です」
神通が地図を指差す。
現在響達の地図はこの那珂が持っている物だけである。
「わかった」
響が返事をした所で他の艦娘達も各々返事をした。
「わたしと神通さんは地図を完全に記憶した、逃げる時は私か神通さんか那珂さんと一緒に逃げる……分かったかい?」
「うぅ、地図は覚えられるけど……現実の道が分からない……わかったわよぅ、ついていくわ!!」
「素直な暁ちゃんで良かったのです」
「響は凄いわね?地図を覚えちゃうなんて……」
雷が感心する。
時刻は午後3時、太陽が少しずつ傾き出している。
「ねえ、響?これで私達帰れるのよね?」
暁が期待を込めた眼差しを響に送る。
「……そ、そうだね……何事も無ければ帰れる……筈……?」
響は一瞬何処に帰れるのか?という疑問が頭をよぎったが、すぐに忘れる事にした。
「大丈夫さ、私達は帰る!」
響は暁の肩を強めに叩いて暁を、自分自身を鼓舞した。
「う!痛いわねぇ……でも、その通りよね?皆!早いとこ出発しましょ!!」
「そうだね、神通さん?」
響は神通に視線を送り応答を待つ、流石の響もやはり経験豊富な二水戦旗艦の意見は聞いておきたいところであった。
公園があるエリア26は午後7時には禁止エリアとなってしまう。
このエリア23からエリア26までは、駆逐艦の足でも早くて2時間、警戒しながらだと3時間はかかるだろう。
「そうですね、なにが起こるか分かりませんから……すぐに出ましょう!」
神通は電動釘打ち機を握りしめ、立ち上がる。
戦艦クラスが相手となると、電動釘打ち機でダメージを与える事は容易な事ではない、目や口等のごく限られた部位にのみダメージが通るくらいであり、あまり有効な武器とは言えなかった。
しかも、電動釘打ち機は射程が圧倒的に短い為、かなりの近距離での使用でしか効果を発揮できないのだ。
「神通さん!」
響が電動インパクトドライバーを渡そうとするが、神通はそれを受け取らなかった。
「それは響さんが持っていて下さい、私なら徒手空拳でも戦えますから」
「……わかったよ、でも無理は禁物だよ?絶対皆で脱出するんだ」
「……そうですね?川内姉さんだって皆さんの為に命を懸けて戦った……私が姉さんの死を無駄する訳には出来ませんからね」
覚悟を決めたように真剣な表情をして立ち上がる神通。
「よーし!!それじゃあみんなァ!しゅっぱーつ!!」
そして那珂ちゃんの掛け声と共に歩き出す一行……。
待て次回!!
片栗虎の中でついに最終話までの軌跡が見えてきた!