エリア25
時刻は午後6時
遠くに公園が見えるこのエリアは、建設途中で放置された建物が幾つもあった。
「うぅ……大丈夫ぴょん?」
「大丈夫……弥生にしっかり着いてきて……」
卯月と弥生はお互いに寄り添って響達の後ろを歩く……。
辺りは薄暗く、視界が大分悪くなってきている。
「公園は目の前だ!時間も無い、急ごう!」
響は残り時間が一時間を切るのを確認して、一気に公園へ駆けた。
「あ!響!待ちなさい!」
すかさず他の面子も後を追った。
「流石に残り一時間で禁止エリアとなる、この場所に人はいないと思う……」
「流石響!」
雷は関心ながら公園内に入った。
「暗くて良く見えないわね?」
「トンネルは何処にあるのでしょうか?」
雷と電はキョロキョロと辺りを見回す。
「皆、あと20分探しても見付からなければこのエリアを出るよ?」
響には確信があった、このエリアに脱出用トンネルが無い事を……望月、或いは比叡が流したデマであると……。
「よーし!絶対に見付けてやるんだから!」
暁は支給品である探照灯を翳す。
「暁!それはダメだ……」
響の注意は暁には届かず、探照灯が煌々と辺りを照らした。
「あぁ……!?」
響は見てしまった……。
「え?響?どうしたの……」
それが暁が発した最後の言葉となった。
次の瞬間、暁の頭部は自身の胴体へとめり込んでいた。
まるで亀のように、頭部が完全に胴体に深々と埋められてしまったのだ。
無理矢理強引に押し込まれた為に、暁の頭部は原型をとどめておらず、頭蓋骨ごと潰されてしまった。
「あ……暁……」
探照灯が足元に落ちる。
その明かりが照らしたのは、左眼から血を流し右腕からも流血した……比叡の姿であった。
「そ……んな……暁、暁ぃ!!暁!!!」
響は力の限り叫んだ。
「響ちゃん!」
「響さん!」
神通は響を抱き抱え、比叡と距離をとった。
「嘘ぴょん!?なんでいるぴょん!?」
「……大丈夫、卯月落ち着いて」
弥生は卯月の手を引いて神通の所へ駆け寄った。
「あはっ、あはは、あはははははははははは!!!また来た!!金剛お姉様ぁ!見ていてくださいぃぃぃいぃぃ!!!」
その場にいる駆逐艦全員が死を覚悟した。
探照灯に照らされて、公園中に転がる死体の山を見てしまったからだ。
「暁……暁ぃ……あぅぅ……暁ぃ」
「ひ、響……さん?」
神通は驚いていた、これまでどの駆逐艦の娘よりも頼りになると思っていた響が、まるで睦月型の子達の様に、か弱く怯えきってしまったからだ。
響はフラフラと比叡の方、暁の死体がある方へ向かおうとした。
「響さん!正気になって!!」
神通は軽く響の頬を叩いた。
「今貴女が死んでしまったら、誰が雷さんと電さんを救ってあげるの!?」
「電……雷……?あ……」
「響ちゃん……」
「響……」
2人は不安気に響の顔を見る。
暗さによってお互いの顔は見えなかったが、恐らくは3人は泣いていたのだろう、お互いに鼻を啜る声が聞こえていた。
「すまない二人共……一緒に脱出して、暁の分まで生き抜こう!」
比叡は足元の探照灯を左手で拾い上げる。
どうやら先の戦いで右腕は自由に動かなくなってしまったらしい。
「響さん、これからの事をお話しますね?」
響達は公園内の樹木の陰に身を潜めている。
昼間であればすぐに発見されてしまうだろうが、夜の闇が助けとなりすぐには見つかる事は無かった。
「話?」
「はいお話です」
待て次回!?
夜間の探照灯には注意が必要です。