月と幻想を司る龍神(♂)に恋したオッサンは全力で堕とす事にたそうです。 作:厨二豆腐
と言うのも戦闘にこれから入っていくから。
どうしてこうなった!
月の神秘は『死』と隣り合わせである。
死者が活動し人々が眠りにつく夜に輝く月は常に死者の世界に輝く象徴でもあった。
太陽が生命の象徴故に、月が対なす存在と認識され、死者は太陽の光を嫌い月の光で力を得るように。
『死』は月の神秘が持つ一面の一つなのである。
故に朧は全てを欺き騙し惑わし魅了する幻想の力以外に、死者の声を聞き、死者を支配し、死の穢を振りまく事が出来た。
その力を発言し死が実体となり周囲を死に変わったその光景を見て、朧は自傷気味笑う。
(こんな力を持ってる儂などを見たら、あやつはどう思うんじゃろうな)
思い浮かべるのは自らの痴態をさらしてしまった男性。
そしてその人物が恐怖に歪む顔を思い浮かべ、胸を痛める。
死は生者が最も恐れ嫌悪するもの。
それが当たり前であり常識なのだ。
だからこそ人々は不老不死を求め死を克服する事を望み。
愛しい者との死別を嘆き、憎き相手との死別を嘲笑う。
ならばそんな死を死者を司る自分は死神でしかない。
そもそも彼は人間だ。死を恐れるべき存在であり、自分よりも生が身近すぎるのだ。
龍の誇りなど、ただ彼をとどめたいだけの建前に過ぎない。
ただ一人の時間があまりに長く一時の儚い夢でもいい少しでも温もりと安らぎが欲しかったのだ。
「はは、最低じゃな……」
「おぼろーーっ!」
その瞬間、この空間で聞くはずの無い声が聞こえた。
朧は驚いて声の聞こえた方角に振り向く。
そこにはいるはずも無い男がこちらに走っていた。
「朧!」
息切れになりながらも朧の前に立つ中年男性。
「ふ、不動……何故!? どうして!?」
「そんなもん! 朧が心配だからに決まってんだろうが!?」
不動は高らかに吠えた。
そしてそれは本人が気取って無い分だけに、朧の心に強く響いた。
「────ッ!?」
「……ほら、帰るぞ」
そして不動は朧に手を差し伸べる。
朧はその手を掴むか否かで戸惑う。
どうしてこの空間で生きているのか? どうして死を恐れないのか? 朧には不動の言動が理解出来なかった。
そして朧は不動の瞳の奥底を覗かんとばかりに不動の顔を凝視する。
そして朧は目を伏せると首を横に軽く降った。
「悪いが、その手を儂は受け取れない受け取っることは出来ない」
「朧……?」
「何故ならこの惨状を創り出したのは他でもない儂だからじゃ」
これでいい、これでいいんだと、朧は自分に言い聞かせる。
手を差し伸べてくれたことも、自分を心配してくれる優しさも、朧はとても嬉しかった。
だから温もりも安らぎもこれで充分だ。
彼は人間、自分は龍神そもそも種族が違えば寿命と言う大きな壁がある。
これ以上一緒にいればお互いが不幸になると考えた龍神は、彼と決別するべきなのだと結論を出したのだ。
そして朧は彼を追い出さんと全力をぶつける為、力を解放する。
「───ッ!?」
そして朧を黒い煙が覆い隠し、朧の姿が変貌する。
龍とは本来、幻獣である。
それは当然、龍神である朧も例外では無い。
普段は人の姿で生活している朧だが、それは本来の幻獣としての姿ではない。
そして朧の本来の姿をさらけ出す。その姿は黒い鱗をした東洋の龍。
そして月がとりとめなく霞んで見えると言う〝朧〟の名に恥じぬ巨躯と美しさを持っていた。
「────GEEEEEYAAAAAaaaa!!!」
そして月と幻想を司る龍神は天高く咆哮を上げたのだった。