~現代~
草木も眠る丑三つ時、暗い路地裏に一人の青年がいた。
赤いシャツに黒服を着込み、その上に濃い灰色のロングコートを着ている。
髪は黒のオールバック。
一見するとその筋の者にしか見えない青年は、退屈そうに欠伸をひとつすると路地裏にひっそりとあった扉の前に立つ。
それは彼の自宅であり、迷路のようになっているこの路地裏に一つだけある扉だ。
自宅と言っても寝に帰るだけのような場所なので、ベッドと照明以外は何もない簡素な空間だ。
家の鍵を取り出して扉を開けて中に入った。
そこにはいつものボロベッドはなく、ただ延々と森と山が続いていた。
かなり高度な位置にいるらしく、山の遠くまで見渡せる。
後ろにはすでに先程までの薄暗い路地裏ではなく、山林が広がっていた。
青年は溜め息を1つつくと、重力に従って下にある神社に垂直落下していった。
~幻想郷、博麗神社~
「はぁ…」
溜め息をつくのは博麗神社の巫女である博麗霊夢である。
今日は博麗神社にて宴会が開かれており、他の者がワイワイと騒ぐなか、翌日の片付けを考えると素直に楽しめず、神社の裏手で一人酒に興じていた。
霊夢「……な~んか嫌な予感がするわね」
彼女の勘はよく当たるのだ。
ドオオオオオオォォォォォン!!!!
特に、悪いことに関しては。
霊夢「は~ぁ……」
彼女は溜め息をつき、誰かが呼びに来るまでの僅かな時間を全力でだらけることにした。
~数分前、博麗神社表~
「ん?霊夢の奴どこいくんだ?」
「片付けが面倒で憂鬱になってるんでしょうね」
「あ~。明日起きられたら手伝ってやるか」
「起きないでしょうけどね」
そう会話するのは自称普通の魔法使い霧雨魔理沙と、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットである。
二人も今日の宴会に参加しているのだ。
魔理沙「そ、そんなことないんだぜ」
レミリア「なら目を合わせて言いなさいよ」
魔理沙「そ、それよりもレミリア。咲夜と美鈴はどうしたんだ?」
レミリア「露骨に話題を反らしたわね…。咲夜は美鈴にお説教してて欠席よ」
魔理沙「またいつもの居眠りか?」
レミリア「ご名答」
魔理沙「美鈴の奴も懲りないな~。まぁ、そのおかげで私は易々と本を借りに行けるからな」
レミリア「そうね泥棒さん」
魔理沙「永遠に借りるだけだぜ」
そうして仲良く話しているとレミリアの目付きが突然鋭くなった。
魔理沙「どうしたんだ?レミリア」
レミリア「何か……来る」
魔理沙「何かって何だよ?」
レミリア「しっ!静かに」
魔理沙が周囲を見るとレミリアの他に勘が鋭い者達は全員宴を中断していた。
レミリア「……!上か!」
レミリアがそういった瞬間、神社の境内の端に轟音と共に何かが落ちてきた。
魔理沙「うわぁ!何だ!?」
もうもうと砂煙がたち、落ちてきた物の確認が出来ない。
ようやく煙がはれると一人の男が立っていた。
魔理沙「アイツ…誰だ?」
レミリア「さぁね。少なくともあれだけの衝撃を無傷で過ごせる者ってことになるわね」
レミリアがそう言うと男が声を出した。
「ったく。何だってんだ?突然お空の真ん中にテレポートとかよ…誰の仕業だ?」
男が愚痴るように独り言をこぼしていると、男とレミリア達の前にスッとスキマができ、八雲紫が姿を見せた。
紫「突然御免なさいね。でもあの瞬間じゃないと貴方をこっちに引っ張ってこれそうになかったものだから。それでも途中で途絶えちゃって高空に置き去りにしちゃったけどね」
「あん?誰だお前。今の口振りから俺をここに連れてきたのはお前みたいだが……ここはどこだ?何が目的だ?」
紫「質問攻めね…順に答えましょう。まず、ここは幻想郷。貴方のいた世界で人々から忘れられた妖怪や神様が最後にたどり着くところよ。この世界は貴方のいた世界とは異なる世界、つまり別世界に当たるわね。そして、私は八雲紫。この世界の管理者のようなものよ。この世界の均衡を保つことが私の役割であり、生き甲斐と言っても過言ではないわ。最後に、目的は貴方を味方につけることよ」
「話が長い分かりづらい胡散臭い」
紫「と、とにかく!私は貴方を雇いたいのよ」
「俺の仕事をわかってて言ってるのか?残念ながら俺は傭兵でもガードマンでもないんでね。味方を探してるなら他を当たりな」
紫「わかってるわ。掃除屋さん」
「掃除屋でもねぇよ」
紫「法を統べる力にはより強き力を」
紫がそう言った瞬間に立ち去ろうとした男の足が止まる。
「……どこでそれを知った」
紫「どこでもいいでしょう?重要なのは私がこの言葉を発したことよ」
「ちっ…話は聞いてやる」
紫「ありがとう♪」
魔理沙「結局何なんだ?」
レミリア「わからないけれど……霊夢を呼んだ方が良さそうね」
魔理沙「私は嫌だぜ。霊夢絶対不機嫌だし」
レミリア「私も嫌よ」
レミリアと魔理沙は周囲を見るが、皆巻き込まれないように目を反らしている。
レミリア「はぁ、二人で行きましょうか」
魔理沙「そうだな」
二人は霊夢を呼ぶために神社の裏に向かっていった。
紫はその背中を胡散臭い笑顔で見送り、その近くには苦虫を噛み潰したような顔で立っている青年がいた。
プロローグ終了です。
これから遅くても書いていきます。
ちなみに以前書いていたダークソウル×艦隊これくしょんの物語は友人のイタズラにより削除されました。
気が向いたらもっと軽い内容にしてそっちも書き直します。