彼女のパラレルワールド1
…プチッ。
ブラジャーのホックの外れる小さな音がセーターの中から聞こえた。
このままでは腰に回された腕によって身動きが出来ずにどんどん裸に近付いて行ってしまう。
そうは思っても、逃げ出した日には私は屈服させられて犯されてしまうだろう。
約束は裸を見せるだけなんだ、そんな高いリスクを背負う必要はない。
大人しく彼の腕に身を預け、約束を遵守するようにする。そうすれば、ししょーに処女をあげることも可能だろう。
処女だけはししょーにあげたい。それはこの身体になった時から思っていた。
彼はホックを外した左手を私の右袖に突っ込んだ。
伸びが良いセーターを着ているとはいえ無理矢理伸ばされた布地は私の腕にぎちぎちと食い込む。
入れられた腕は奥まで届くと指先で脇を優しくなぞった。
「…ん!んふぅ…。」
私の反応が薄いことに苛立ちを感じたのか、腕を更にねじ込むと今度は親指でグリグリと脇を押し込み揉んできた。
「…んはっ!?んんぅ!!」
まだ満足出来ないのか彼は押す力を増して私の脇を圧迫していく。
「…っはああぁぁ!!」
遂に口を開けて喘いでしまった私の反応に満足した彼はブラジャーを掴むと、一息に引き出した。
ブラジャーを引き抜かれ空いた空間を補うように風が滑り込む。
「っぁぁぁぁ…」
暖房の効いた部屋の空気だから冷たいわけでは無いのに、身体を密着させたまま愛撫され汗をぐっしょりかいた肌を震えさせるには充分過ぎた。
「ふふっ、雅ちゃん、激しくされるの好きなんだね」
身体が震えたのが愛撫の効果だと勘違いした彼は、いやらしい笑みを浮かべ私を抱いたまま、ブラジャーを鼻に当て思いっ切り息を吸った。
この至近距離だ、彼のする呼吸の音は生々しく耳へ入った。
空気を吸って数秒、遂に彼は満足げに息を吐き出した。
身長は私の方が10センチ程小さい為吐き出す息は私の顔にぶち当たった。
鼻から侵入する彼の匂いが嫌で鼻息を荒くして私も息を吐き出した。
「あれあれ?ボクの息は嫌なのかなぁ~?しょうがないなぁ~、嫌でも好きにしてあげるよ」
彼はそう言うと口を大きく開き顔を近づけてきた。
私は咄嗟に手を彼の顔面に押し当て、拒絶する。
「キスは約束違反です!」
私の裸を見せるルールとして私の同意無しでの直接キス、生殖器の挿入、写真撮影を禁止している。
このルールが破られた場合私はここから脱出することが出来る。
キスが直接キスなのは間接キスはセーフにしてくれと間接キスが如何にセーフであるかを2時間、逃げられない状況で正座で聞かされたから渋々セーフにしたのだ。
「ふぅ、そうだったね。なら―」
手に持ったブラジャーからパッドを取り出し外側のカップの部分を私の口に被せる。
「ふむぅ!?」
彼は大きく息を吸い、ブラジャーに口を当てると息を吹き込んできた。
そこまで本格的でない私のブラジャーでは空気程度簡単に貫通してしまう。
口に流れ込む彼の臭いに必死に息を止める事で無駄に吸ってしまうのを防いだ。
「ん~?雅ちゃん、そんなにボクのこと嫌い~?でもでもぉ?これなら~?」
ブラジャー全部を私の口に押し込むと次に彼は、私の鼻をつまんだ。
鼻をつままれ口呼吸しか出来ない私は私のブラジャーのせいで息が詰まる。
「息苦しかったら言ってねぇ?すぐに楽にしてあげるよ~」
ついさっき、必死に息を止めていた反動で肺の中には酸素があまり残っていないところからのこれだ。
彼は私を殺したいのだろうか?それとも、こうなる事を見越してッ!!
無理無理!しぬ、しんじゃう!
薄れゆく酸素は私から視界の鮮明さも奪っていく。
酸素が薄くなり頭の中が熱く焦げるような感覚に襲われる。
「雅ちゃん~?もう、無理だよね~?顔真っ赤だよ~。楽にしてあげるよ~?」
私は最低限の動きで鼻をつまむ彼の指に否定の意思を伝える。
それを感じとった彼は私に顔を近付け耳打ちをする。
「死んだら、ししょーさんと会えなくなるね。最後だけど、空気、いる?」
走馬灯のように頭を回っていたししょーの顔が彼の言葉で更に印象強く思い出される。
ししょー、ごめんなさい。
否応なしに私は彼に空気を求めていた。