あ、時系列的にはムラサキが終わった後って感じです。原作ではあとちょっとで不知火が堕ちます←。
近未来、魑魅魍魎が跋扈する日本。
魔族という御伽噺の中の存在が当たり前のように存在し、太古より人と魔族の間で守られてきた互いに不干渉という暗黙のルールは、人間側の堕落により形骸化してしまった。
人と魔族が結託した犯罪組織や企業が誕生し、法律などあってないようなものとなった混沌とした時代。
そんな中で、魔に抗う正道を歩む忍びの者達がいた。
人は彼らを対魔忍と呼んだ。
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京士郎によって対魔忍の幹部が1人殺された日の翌日。拘束具の全てを破壊し、男と男の部隊を一撃で全滅させた京士郎は幹部達にとってもあまり事を大きくしたくなかったのか、実は生きていたということにして対魔忍達が住んでいる五車町の病院に送られることとなった。柱で貫かれて空いていた胸の穴は既に傷跡すら残らず元通りになっており、真っ白な肌と髪を除けば、知り合い達の知る水城京士郎がそのまま成長した姿となった。
「この子が?」
「ええ、私の子、京士郎よ」
患者服を着てベッドに横たわっている京士郎を彼の母である水城不知火と、名実ともに最強の対魔忍である女性、井河アサギが見ていた。京士郎は昼間ではあるものの熟睡しており、不知火とアサギが入ってきても起きる兆しを見せることはなかった。
「人為的に吸血鬼となった……か」
アサギは今朝、不知火からその話を聞いた。対魔忍の中でも最強とされるアサギとそれに近いとされる不知火の仲は浅くないものがある。だが、そんなアサギでも今回の話はにわかには信じ難いものだった。
不知火曰く、水城京士郎は魔族に捉えられた際に身体を作り変えられ、吸血鬼になってしまったというのだ。
そもそもからして、対魔忍達が持つ異能ははるか昔に人間と魔族が交雑したことによるものなのだから、異能を持つ対魔忍達は多かれ少なかれ魔族の血が混じっていることになるし、かつてのふうま八衆には吸血鬼のハーフがいた。だが、人為的に魔族になった例は聞いたことがあっても、吸血鬼になったという例はアサギは聞いたことがなかった。
「……本当にこの子が1人で幹部お抱えの対魔忍を倒したっていうの?」
「ええ、忍法のようなものを使ったのは確かだけど……正直、私もあんな忍法は見たことがないわ」
さらに信じられない話があった。まだ年端もいかない少年である京士郎が、幹部お抱えの対魔忍の部隊を1人で殲滅してしまったというのだ。
対魔忍は正道を行く組織ではあるが、人で構成された組織である以上腐った人間も当然存在する。しかもそういう人間に限って上の立場につくことが多く、それぞれが個人の権限で動かすことの出来る対魔忍の部隊を密かに持っている事が多い。
当然部隊に所属している対魔忍はアサギや不知火までとはいかずとも腕利きの者達が多く、間違えても対魔忍にすらなっていない少年が1人で蹂躙できるようなものではないのだ。
そう考えると、幹部達がそんな強力な存在を放置するはずもない今、水城京士郎に近寄る人物にも注意を払わなければならない。アサギはそう考えた。
「とりあえず、幹部の老人達を糾弾するにしても京士郎くん1人だけでは証拠が少なすぎるし、下手を踏めば京士郎くんが抹消されかねないわ。保護のためにも五車学園に入学させましょう。貴女もそれでいいわね?」
「……やっぱり事実を公表するだけでは駄目かしら」
「ある程度の効果はあるでしょうけど、きっと最終的には京士郎くんを危険に晒すだけになるわ」
「……そうね」
不知火は悔しそうに俯いた。そんな彼女を見て、アサギは対魔忍という組織の在り方に苛立ちを覚えた。
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水城ゆきかぜには1人の兄がいた。
名前は水城京士郎。ゆきかぜとは1つ違いのごく普通の少年だ。
ゆきかぜのように雷遁の術に対する才能は全くと言っていいほど持っておらず、大人達から出来損ないと言われることも少なくはなかった。
だが、ゆきかぜは兄である京士郎が好きだった。無論恋愛的な意味ではない。
京士郎は才能が無いことを理由にして努力を怠ることはなかった。常に誰よりも努力し続け、稽古中の手合わせではユキカゼの幼馴染の達郎の姉である凛子以外にはほとんど負け無しだった。強く、時に厳しく時に優しい。そんな京士郎のことがゆきかぜは好きで、母である不知火にも抱いていた憧れも抱いていた。
故に、そんな彼が死んだと聞いた日。ゆきかぜは泣き明かした。達郎がいなければ何をやらかしていたかわからないぐらいには取り乱し、気持ちに整理をつけるまで1ヶ月かかったほどだ。
「…………」
そんな彼女は今、対魔忍達が普段暮らしている街である五車町の中で一番大きな病院の入院病棟の一室の前にいた。そうはいってもまだまだ幼いゆきかぜは少々大げさな仕草で深呼吸をした後にドアをノックした。
「京兄、入るわよ」
そう言った後、部屋の主の返答を待つこともなく部屋に入った。
「……ぁ……りが……」
「はいはい、無理に喋らなくていいから」
部屋の主、件の人物である水城京士郎はベッドの上で上半身を起こした状態でお見舞いに着てくれたユキカゼに向けて礼を言おうとするが、口からはかすれた声しか出ない。ゆきかぜはそんな京士郎の様子を見て苦笑いしながら、花瓶の水を入れ替え始めた。
そう、死んだということになっていた水城京士郎は生きていたのだ。
細かい事情こそゆきかぜは説明されなかったものの、ゆきかぜからしてみればそんな事はどうでも良かった。京士郎が生きていた。それだけでゆきかぜは有頂天になり、京士郎の元へと向かった。
「それにしても、本当に真っ白になっちゃったわね~。まぁ、京兄に似合ってるからいいけど」
花瓶の水の入れ替えを終えたゆきかぜは壁に立てかけられていたパイプ椅子をベッドの傍まで持っていき、それに座ったかと思えば身を乗り出して京士郎の髪を触り始めた。ゆきかぜの記憶の中での京士郎は、艶やかな黒髪と白い肌をもち、年相応の愛嬌をもった少年だった。
だが、今の京士郎はゆきかぜの記憶の中の京士郎とは大きく変わっていた。
艷やかだった黒髪は、その質こそ失われていないものの真っ白に染まっていた。元から白かったその肌はもはや何かの病気にかかってしまったのではないかと思うほど白くなり、全体的にやつれていた。いつも柔らかい微笑みが浮かんでいたその顔は何の表情も浮かべておらず、成長した端正な顔立ちと相まって人形のような印象をゆきかぜに与えた。
その変わり果てた姿をみたゆきかぜは、恥も外聞もなく泣きじゃくってしまった。ゆきかぜもまだ小学校高学年程度の年齢だが、変わり果てた京士郎の姿から彼がこれまでにどんなに辛いことがあったかは具体的に理解することは出来なくても何となく察することくらいは出来るからだ。
「京兄は、京兄よ」
まるで、自分に言い聞かせるかのようにゆきかぜは京士郎の髪をなでながらそう呟いた。数年後には将来有望な若き対魔忍になるとはいっても、今の彼女はただの少女だ。変わり果てた家族の姿を見て、不安に思わないはずがないのだ。
「……ぁ……」
「んっ……京兄?」
それに対し、京士郎は不安そうな表情を隠しきれていないゆきかぜの頭をなで始めた。あまりにも長い時間同じ姿勢を取りすぎて、すこしも動くことがなかったために少しでも力を込めれば折れてしまいそうなほどに細くなった腕と指は非常に頼りないものであったが、冷たいはずのその手はゆきかぜにはとても温かく感じられた。
「……うん、京兄は京兄よね! ありがと京兄! もう大丈夫だから!」
それは、稽古が上手くいかなかった時、何か嫌なことがあった時、いつもゆきかぜが京士郎にしてもらっていたことだ。例えどんなに外見が変わってしまったとしても、今目の前にいる人は紛れもなく自分の兄、水城京士郎だ。そう結論づけたゆきかぜはパイプ椅子から立ち上がり、屈託のない明るい笑みを浮かべて歩き出した。
「じゃあ、またね京兄! 明日は達郎と凛子さんもつれてくるから!」
元気良くそう言って、ゆきかぜは病室を出ていった。
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俺の妹が天使過ぎる件について。
いや、色々説明しなきゃいけない事があるのは分かっているんだ。だけどさ、俺の妹らしい幼女が可愛すぎる。無理、ヤバイ。ナデナデしたい衝動を抑えられなかった。おそらく長年ニートしていたせいで凝り固まっていた俺の表情筋が仕事していたらまず間違いなく放送事故レベルの事になっていたね間違いない。
とまあ、現実から目を背けるのはこれくらいにしておこう。
まず、まるで意味がわからないが俺にはあそこで鬱ゲーも真っ青な拘束方法で封印されていた以前の記憶がない。俺の知る限りの知識の中で類似したケースを探してみるが、俗に言う神様転生というわけでもない。神様転生なら俺にはこことは違う世界の記憶があるはずだし、この世界に関してももっと知っていていいはずだ。
この世界、対魔忍と魔族による争いが絶えないこの世界のことを俺はお世辞にもよく知っているとはいえない。少なくとも、これから何が起こるかとか、こいつはどんな能力を使うか、みたいな神様転生した人が当たり前に知っていることは俺は知らない。あくまで、この世界における常識程度の事しか知らない。
俺の事を京兄と呼ぶゆきかぜという幼女とか、俺がずっといた場所から連れ出してくれた(と思われる)俺の母だというありえないくらいの美人さんは既視感があるんだけどな……きっと家族だからだろうけど。
まぁ、それは別にいいんだ。重要なことじゃない。
(……非モテ中尉、だよなぁ)
窓に映る俺自身の顔を見る。現在表情筋が仕事していない整っている顔、鋭い目つき、何かの病気としか思えない真っ白な肌と髪。俺がもし仮に転生してこの体に憑依したとしても前世の記憶が無いため前の俺の顔は一切思い出せないが、この顔に関してはしっかりと覚えがある。
スペックは悪くないはずなのに神からすらも中ボスと呼ばれ、
気に入った相手とはどうあがいても結ばれず、
逆に絶対にお近づきになりたくないヤンデレやメンヘラにはやたらモテるどうしようもない体質。
ベイ中尉こと、聖槍十三騎士団黒円卓第4位、ヴィルヘルム・エーレンブルグの顔だ。
(しかもご丁寧に杭まで生成できる、と……どうなってんだ?)
イメージをすれば、若干透明な、まるで染料を雑に入れたガラスのような杭が掌から出てくる。ヴィルヘルムの能力、というか彼が持つ聖遺物『闇の賜物』の能力が使えるということは、この体はヴィルヘルム・エーレンブルグの身体と見ていいだろう。
(ただ、それだと尚更分からん……少なくとも俺の知識の中ではそれはフィクションってことになってる)
そう、俺の記憶の中では対魔忍やら魔族やらは現実の物事として記憶しているのに、ベイ中尉のことや彼が登場する物語のことはしっかりとフィクションの枠組みに入っている。何を言っているのかわからないかもしれないが、俺という一個人からしてみればどちらもどこの作り話だよと突っ込みたいはずなのに、対魔忍のことは普通に現実のこととして受け入れてしまうのだ。
(薔薇騎士は……だめだな)
ベイ中尉のもう1つの能力が使えるかどうかはまだわからない。どうやればいいのかもわからないし、下手に発動しようものならこの付近にいる人が全員死ぬ。ただでさえ非モテの宿命を背負った身体なのにその上殺人犯にまでなるなんてごめんだ。
(……今の所、わかんないことだらけか)
だめだ、現状わからないことが多すぎる。行動しようにもおそらく長年動かなかったせいで全身の筋肉という筋肉は衰退し、治療を受けてマシになったもののの全身が棒きれのように細い。情報収集をしようにも寝たきりの今の俺ではどうしようもない。
(……まぁいいか、あんな状況から助けられて生きてるだけで儲けもんだ)
とりあえず、これ以上考えることが面倒くさくなった。とりあえずあの状況から生きて戻ることができたんだからこれからのこともまぁなるようになるだろう。考えることが面倒くさくなったし、いろいろな不安から目を背けたかった俺はあっさり眠りについた。
あんま進んでない……妹キャラのゆきかぜが書きたいだけの回だった。一番ヒャッハーしたがっているのは作者だということだけは言っておきます。
にしてもdies要素を強くするとエロの存在を忘れそうになるのが怖いです。