※この作品はR-18です。

感度3000倍の世界で非モテは吠える   作:Re鯖

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日間ランキング1位。約7倍に膨れ上がったお気に入り。色の付いたバー……ふむ、 ワシに(プレッシャーで)しね というんだな! いや本当にありがたいです。本当に有難うございます。皆さんがどんだけベイが好きかがわかりました。
決戦アリーナの新規LRがアスカと知って動機が押さえられなくて投稿が遅れました。すみません。


第2話 これじゃあ形成(笑)だよ!

 あの状況から開放されて一週間。俺は治療を受けながらゆきかぜや彼女の友達だという姉弟の秋山達郎と秋山凛子からさりげなく、怪しまれない程度に俺のことについて筆談で聞いてみた。

 曰く、学校の剣道では凛子以外には負け無しだったとか。

 曰く、勉強の方では同い年の中では敵う人はいなかったとか。

 おいおいおい、どこの聖人君子だよと。やっぱりモテたんだろうか……いや、この身体に限ってまさかそんな……いやでも前は白くなかったって言うし……

 なんて事を考え込んでいたら変なものを見る目で見られた。俺は悪くねえ。

 

「……あ、ぁー、ぁ」

 

 そんな俺は、現在声を出せるようになるために1人でリハビリをしている最中だ。

 俺の身体は、医者や医療班に所属している対魔忍曰く軽く、というか実際人間をやめているらしく、尋常ではない回復速度で身体を修復しているらしいが、喉だけは何故か異常に治りが遅いらしい。針治療をしてくれる八雲玲さんも不思議そうにしていた。それだけ俺の身体がファンタジーということなのだろうが、俺からしてみればこの世界自体がファンタジーなのだから一緒にしてほしくないといった所だ。

 今現在も何とかして声をだそうとしているのだが、どうにも上手くいかない。何気なくやっていることでも、いざ意識してやろうとすると中々難しく未だにしゃがれた声しか出ない。

 

「……ぁ……あ……けほっ」

 

 何だろう、息は不自由なく出来るのだから、声も出せるはずなんだが、声を出そうとした瞬間に喉に蓋をされるような感覚といえばいいんだろうか? 何にせよ、身体の方は一週間でだいぶ回復し、一応そこそこ動けるようにもなってきた。点滴の類は全部外れたことだし、少し外に出てみよう。日が暮れるまではまだだいぶあるし、病院内を探検するくらいはいいだろう。

 

「…………」

 

 思えば、俺が俺を自覚するようになってから自分の意志で出歩くことは初めてだ。いくら若干過保護な不知火さんやゆきかぜが大量の読み物を病院に置いていったとはいえ、もう少し外へ興味を向けるくらいのことはしなかったのだろうか。

 

(ハッ!? まさか前世の俺は引き篭もり……やめよう、虚しくなるだけだ)

 

 適当な所で思考を切り上げて、外に出る。対魔忍という名前からして、和風な施設なのかと思いきや、ごく普通の病院と何ら変わらない清潔な廊下が続いていた。部屋の窓から見える風景から2階か3階に居るということはわかっていたから、とりあえずまずは階段を探すところから始めよう。 

 思えば、この弱肉強食の世界で狙われている子供が1人で外に出ようと思った事自体が間違いなのかもしれない。いや、確かにここは対魔忍の里だけども、自分の事をあんな風にした奴らがのさばってるって段階でだいぶアレだってことくらい考えるべきだった。

 

 

――――――――――――――――――

 

「姉さん、京士郎さん元気そうでよかったね」

「達郎……ああ、そう、だな」

 

 病院内の廊下を、まだ幼い姉弟が歩いていた。無邪気な笑みを浮かべている男子、秋山達郎は姉である秋山凜子に向けて話しかけるが、凜子は何か納得が行かないことでもあるのか、若干返答が雑になっていた。

 凜子にとって、京士郎とはまだそんな事を言うには当時の凜子と京士郎は些か幼かったかもしれないが、競い合い、互いに互いを高め合う仲だった。座学においても、剣術においてもそれは同じで、昨日は凜子が勝ったと思えば、次の日は京士郎が勝ち、その次の日は凜子が……と言った具合に、2人の実力は拮抗し、それぞれの実力は日を追うごとに高まって行った。

 京士郎がいなくなる、その日まで。

 京士郎がいなくなった後も、凜子は自分を鍛え続けた。いつも一緒にいたはずなのに、自分の手の届かない所で消えてしまった京士郎の事を忘れようとするかのように訓練に打ち込んだ。気がつけば大人ですら凛子に敵う者は少なくなり、対魔忍の里に代々伝わる逸刀流の皆伝に到達する日も近いとされていた。

 だが、凜子の心に空いた穴はどんなに力をつけても埋まることはなかった。

 だからこそ、京士郎が生きていたということを弟の達郎から教えてもらったときに、嬉しさを感じると同時に申し訳無さを感じていた。彼がいない間に、彼女は逸刀流を皆伝する日も近いと言われるまでに実力をつけてきた。それは、決して誰に責められるものでもない。それでも彼女は、できることなら京士郎と共にこの道を進みたいと願っていた。京士郎と凜子の差は、間違いなく広がっていた。

 しかし、数年ぶりに出会った京士郎は、彼女の知っていた京士郎とはあまりにもかけ離れた存在となっていた。外見上の変化も然ることながら、彼女は、まるで京士郎の中身がそっくりそのまま入れ替わってしまったかのような印象を受けた。確かに、ゆきかぜの言う通り、彼の優しさは変わっていない。元より自分のことよりも他人を優先する京士郎のそれは何ら変わってはいなかった。

 だが、凜子が数年ぶりに見た京士郎の瞳は、只々空虚だった。何の感情も示さないその顔は、この数年で彼の中にあったものがすべて抜け落ち、ただ水城京士郎を演じる機械となってしまったかのような印象を凜子に与えた。

 

「すまない、達郎。先に1人で帰っていてくれるか? もう少し京士郎と話がしたいんだ」

「そう……? わかった、じゃあまた後でね!」

「ああ」

 

 そう言って、凜子は達郎と一旦別れを告げて来た道を引き返した。やはり、彼に何があったか知りたかったのだ。

 

(京士郎……一体、何があったんだ?)

 

 そんな事を考えながら、1階の廊下を歩いていると、

 

 瞬間、忍犬や忍熊などの動物を治療する棟に通じる扉を突き破り吹っ飛んできた京士郎が壁に激突した。

 

「っ……」

「京士郎!? 何があった!?」

 

 京士郎はこんな時でもその無表情を崩すことはなく、また言葉を発することも無く、自分が吹っ飛んできた方向を指差した。凜子がそちらの方を向いてみれば、治療中なのか各所に包帯を巻かれた忍熊が明らかに正気を失った状態で吠えていた。

 周辺にスタッフはいるものの、戦闘向けの能力を持った人は居合わせていないのか、止めようにも止められない状況だった。

 

「…………」

「け、京士郎?」

 

 京士郎は何事も無かったかのように起き上がると、凜子の手を引いて忍熊がいる方向とは反対方向へと走り出した。忍熊はまるで京士郎しか眼中にないとでも言わんばかりに京士郎と凜子以外には目もくれずに2人を追いかけてきた。

 凜子は状況にも十分に驚いていたが、京士郎の行動にも驚いていた。凜子の知る京士郎なら、流石に倒すなどという夢物語は言わないが、周りの人間の避難まで時間をかせぐくらいの事は言い出しかねないからだ。

 

「……っ」

「うわっ!? な、何を……え?」

 

 そんな事を考えながら京士郎に引っ張られるがままに凜子が走っていると、唐突に京士郎が凜子を空いていた病室に突き飛ばし、そのまま勢いよくドアを閉めた。その唐突な京士郎の奇行に凜子は文句を言おうとしたが、その頃には京士郎は既に走り去ってしまい、忍熊もそれを追いかけてしまった。忍熊は最初から京士郎以外は視界に入っていなかったのだ。

 

「京士郎!!」

 

 彼が凜子の為に凜子を突き飛ばしたことは明白だ。少しの間呆然とし、一瞬でも京士郎の事を疑ってしまった自分を恥じつつ立ち上がる。

 確かに彼の実力は凜子の知る限りでは確かなものだ。しかし、今の彼は当然絶好調ではない。まだまだリハビリをしなければ満足に運動をすることすらも出来ないと医師も言っていたのだ。とてもではないが、助けが来るまで走りまわれるとは思えない。そういった心配を胸に凜子が元いた廊下に戻り京士郎と忍熊が走っていった方向へ走り出した。すると、少し走った後に京士郎と忍熊の姿が目に入った。

 

「…………」

「な、何が……」

 

 結果として、京士郎は無事だった。無事ではなかったのは忍熊の方だった。忍熊は、両手と両足を赤い染料が雑に入り混じったガラスのようなもので出来た杭で縫いとめられ、身動きが取れない状態になっていた。

 京士郎は、縫い止められて身動きが取れなくなった忍熊を、先程までと何ら変わらない機械のような無表情で見つめていた。

 

―――――――――――――――――――

 

 どうもこんにちは、中庭に行こうと思ったら何故か動物病院的な所に迷い込んでなんかすっげえ凶暴化した熊にタックルされた水城京士郎です。

 いや待て、人間の病院と動物病院が併設されていてそこで熊が治療されているのもツッコミ所だけど何で拘束具とかされてないの? 馬鹿なの?

 熊は俺の姿を見た途端に怒り狂ってこっちに突っ込んできた。俺は確かに突っ込んで来るのは確認できたけど何が起きたのか理解している間に吹っ飛ばされた。アニメの如くドアを突き破って壁に激突したけど流石ベイ中尉(の身体)だ! 何とも無いぜ!

 なんて下らない事を考えている最中も熊は怒りが収まらないのかこっちに走ってきた。いや待て(2回目)、周りにスタッフさんとかいるじゃん? 何で俺の方にむかって一直線に突っ走ってくるの? 俺なんかフェロモン的な何かでも出してる?

 とはいえ、この体は黒円卓が誇るヒャッハー野郎ことベイ中尉の身体、しかも聖遺物まで使えると来た。そんじょそこらの熊の1頭や2頭杭で倒すことなんて朝飯前だろう。

 故にここは、

 

(逃げるが勝ちィ!!)

 

 突っ込んできた熊を躱して熊に背を向けて全力疾走! いや無理だよ! だって仕方ないじゃん! いくら身体がベイ中尉でも俺はそういうキャラなんだもん! 冷静に考えてみて欲しい。何の前触れもなくいきなり熊の前に刀持って立たされて「その刀は何でも切れちゃうチート能力を持った刀だ! さあやっちゃって!」って言われてまともに戦える? 俺は無理だね。そんなのが出来るのは主人公か化物かのどっちかだよ。

 

「け、京士郎?」

 

 そんな中、俺の進行方向にさっきまで話していた凜子がいた。何故居る。まぁ、見た感じあの熊は俺以外には興味なさそうだけどこれで置いていって美少女をお茶の間に見せられない惨状にしたら悔やんでも悔やみきれない。一旦一緒に来てもらおう。何やら凜子は俺の事を不思議そうに見てるけどまさか俺があんなのに立ち向かうとでも思ってんの? 死ぬよ? 何の面白みもなく。

 さて、熊はお前実はどこも怪我してないだろってな勢いでこっちに向かって走ってくるけど今の所距離は詰められていない。ここが山の中とかだったら俺は一瞬で追いつかれてミンチよりひでえ死体になってる所だけどあいにくここは病院の中。道をあっちに曲がったりこっちに曲がったりすることで引き離すとまではいかなくても距離を保つことは出来る。

 

(……今!)

「うわっ!? な、何を……え?」

 

 そして、後ろを振り返って熊が完全に視界から外れた一瞬の隙を突いて凜子を適当な病室に突き飛ばす! 瞬間! すかさずドアを閉める! 熊は相変わらず俺以外は眼中にないようで凜子が入った病室には目もくれずにこっちに向かってきている。マジで俺の身体からフェロモン出てんじゃないだろうか。

 

(……とは言え、本当に何で……まさか)

 

 追いかけられながら何故俺だけが追いかけられているのか、そしてそもそも何故すぐに助けがこないのか考えていると、俺の中である1つの仮説が2秒で生まれた。

 

(……お偉いさん、なのか?)

 

 あんな状態になっていた俺だ。きっと各方面から怒りを買っているのだろう。だとしたら、事故という形を装って俺を殺しにかかっても何ら不思議なことではない。いや、これを事故っていうのはちょっと無理があるんじゃないのお偉いさん?

 

(……けど、だとしたら)

 

 が、もしこの仮設が本当なのだとしたら、俺の体力が尽きるまでこの鬼ごっこは続けられることになる……あれ? もしかしなくても詰んでね?

 いや、弱気になるな! この身体を誰の身体だと思ってるんだ、ベイ中尉だぞ? 熊を1頭倒すなんてベイ中尉なら(余裕で)出来たぞ? ベイ中尉なら出来たぞ? ベ(ry。とにかく、病み上がりとは言え戦闘力だけなら間違いなく勝っているはず。覚悟決めてやるしか無い!

 俺は逃げるのをやめて熊の方を向く。熊は相変わらず怒り狂ってこちらに突進してきている。……凄まじく怖いけどやらなきゃ死ぬんだやるしかない。俺は両の手の平から若干色が薄い杭を生み出し。熊の両前足が地面についた瞬間を狙って射出した。当然、熊にそれを避ける術はなく、数本の杭は吸い込まれるように熊の前足へ向かっていき、

 

 ガキン

 

 弾かれた。

 

 ガキン

 

 弾かれた。

 

 いやおかしいだろ!! こっちはベイ中尉だぞ!? 何で熊1頭貫けないの!?これじゃあ形成(笑)以下じゃねえかいい加減にしろ!

 表面上は無表情ながらも内心ではこの理不尽に若干キレていた当時の俺は、聖遺物を必要とする彼らの能力は保有する魂の量によって強さが変わることを完全に忘れていた。うん、ただの馬鹿だね。

 

「っ……」

 

 とはいえ、はいそうですかと受け入れるわけにはいかない。俺は続けざまに杭を、今度はより鋭いものを作り出してより速い速度で射出した。今度は弾かれることはなく熊の前足に突き刺さり、その痛みに熊は怯んだ。その隙を突いて俺は恐怖で動けなくなりそうになるのを必死に抑えて熊に肉薄し、熊に突き刺さっている杭を思いっきり踏んだ。杭は熊の両手を貫通して地面に縫い付けた。俺はそれを確認すると同時に考えるよりも先に身体を動かして熊の後ろに周り、先程と同じ要領で後ろ足も縫い止め、熊の動きを封じた。

 ……自分でやっておいて何だけどめちゃくちゃ痛そうだなこれ。すまん、熊よ。お前もきっとこれをやらされているだけなんだろうが許してくれ。

 

(こ……怖かった……)

 

 何はともあれ、とりあえずの危機は去った。俺は今になって溢れ出してきた恐怖心に任せるがままにその場に座り込んだ。とりあえず、こんな危ない橋はもう二度と渡りたくない。

 

「京士郎! 怪我はないか!?」

 

 熊を駆けつけてきてくれたスタッフさんに任せて、少し離れた場所でボーっとしていると、さっき別れた凜子が心配そうに駆け寄ってきてくれた。わかってはいたが、凜子には何事も無かったようだ。

 

(……疲れた)

「京士郎……? 京士郎!?」

 

 そのことで何故か無駄に安心した俺は、過度な緊張状態から解放された影響からだろうか、気がつけば俺は意識を手放していた。




いくら無能でも対魔忍だからで済ませてしまうことの出来る対魔忍はもう少しどうにかした方がいいと思う。
常時深夜テンションで書いている二次創作ですが今後も暇な時にでも読んでくださると幸いです。
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