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僕の成績表を見つめて、母さんは苦い顔をしている。前髪をかき上げたまま止まった手が、頭を抱えているようにも見える。
「和彦、何か悩み事? お母さんの帰りが遅いせい?」
「そういうわけじゃ、ないけど……」
そういうわけではなかったが、そういうことでもある。中間試験から期末試験の間に、僕は順位を百番近くも落として、点数も大きく下がっていた。母さんの帰りが遅いせいではなかったが、その時間に……いや、それ以外でも、まるで発情期の猫みたいに、ふとした拍子に勃起して、我慢できずにシコってしまうのだった。
やめようと考えれば考えるほど、些細なことに興奮してしまう。薄着になった母さんの腕や、仕事帰りの汗のにおい。洗濯物を干すときに触る衣服にさえ股間を熱くする。僕はすっかりおかしくなってしまった。
「まあ……そうねえ。まだ二年だしね。焦らずしっかりとやりなさい」
「うん」
「それと……明日から、大丈夫?」
「大丈夫だって。いくつだと思ってるの。たまには一人になりたいときだってあるんだから」
「そう? それならお母さん、遠慮なく行くけど……」
遠慮なくと言うわりに、申し訳なさそうに上目遣いをする母さんだった。
僕が夏休みに入るのと同時に、一泊二日で温泉旅行に行くのだという。偶然に再会した大学の同期に誘われて、ということらしい。父親が亡くなってから十数年、僕の知る限りは遊ぶということはほとんどなく、羽を伸ばすこともめったにない母さんが、ようやく僕一人を家に残して外へ行けるくらいには、大きくなれたのだと思う。
「何かやっておくこと、ある?」
「えっと……あ、トイレットペーパーが明日安売りだから、それだけお願い」
「了解」
朝早くに母さんを見送って、僕は売り切れるのが心配で、開店直後にスーパーマーケットへと足を運んで安売りのトイレットペーパーを買った。家に帰ってからさて、とすべきことを考える。
宿題やらなんやら……そうだ、まず洗濯をしなくては。
洗濯機のスイッチを入れて洗剤を適量入れて、電子表示の残り時間を確認する。四十分だ。
それはあっという間に過ぎてしまい、宿題をしていると、家の中にむなしくピーピーと電子音が鳴り響いた。一人なんだと、ふと思う。かき回されて丸まった洗濯物を伸ばしながら洗濯籠に放り込んで、ベランダへ運ぶ。夏の日差しは強い。すぐにでも乾くだろう。
まったく機械的に干していって、僕の手はぴたりと止まった。母さんの下着。夏らしい水色で、目立たぬように柄の入ったショーツ。通販で上下セットのカタログで見たような気がする。
家には僕だけ。
一泊二日……。早くても、明日の昼……。
今日は暑い。頭がくらくらする。
洗濯物を干し終えて、僕は夢遊病患者みたいに不確かな足取りで、母さんの寝室のドアを開けた。部屋にしみついた芳香が胸を満たす。本人の不在が、むしろ残り香をつよくしていた。
カーテンは引かれており、陽光は窓辺に波打つ線を落としている。そこに母さん一人では大きすぎるベッド。枕元からすこし離れて、三面鏡の化粧台。ずいぶん若い母さんと父さんのツーショット写真。まるでこれから僕がすることを見張るように、反対側の壁際の洋タンスを向いている。
ばくばくと心臓がうるさい。誰かに見張られているような気がする。父さんだろうか。それとも、母さんだろうか。
洗濯はずっと、僕の仕事だ。どこにあるかはわかっている。二つあるタンスの、左側の一番下。ひき出しを開けると、ずらりと上下の下着がつまっている。
ごくりと唾をのむ。
爆発物にでも触れるように、震える手をそろりと近づける。できる限り目立たぬ一つを手にとって、僕は自室へ逃げ帰った。
ひどく勃起している。ズボンとの摩擦で感じてしまう。カチャカチャとズボンを、パンツを脱ぎながらベッドに倒れ込んで、これまでになく硬いペニスを握った。
麻薬中毒者が薬物を吸い込むかのように母さんのショーツを自分の鼻にあてて、大きく息を吸う。部屋にしみついたのと同じ、しかしずっとかすかで、はるかに生々しい残り香が、僕の嗅覚を刺激する。母さんを感じた瞬間から、もう手は高速度でしごき始めていた。
「すん……はぁっ……母さん……! すぅぅー……あっ……」
精液なのか我慢汁なのかわからないほどの液体を垂れ流しながら、僕はさらに硬くなった気のするモノをしごき続ける。
「母さ……和美……!」
口をついて出た母さんの名前。びくんとペニスが跳ね上がる。
「和美! あッ、あァァッ!」
一瞬視界が暗くなるほどの射精。力の入らない腰がこそばゆい。どくどくとだらしなく吐き出され続ける精液。
夜のうちに干しておけば、明日の昼には取り込める。つまり、夜までは何をしてもバレはしない――