※この作品はR-18です。

堕ちる   作:M-NTR

6 / 11
下着

   @

 

 僕の成績表を見つめて、母さんは苦い顔をしている。前髪をかき上げたまま止まった手が、頭を抱えているようにも見える。

「和彦、何か悩み事? お母さんの帰りが遅いせい?」

「そういうわけじゃ、ないけど……」

 そういうわけではなかったが、そういうことでもある。中間試験から期末試験の間に、僕は順位を百番近くも落として、点数も大きく下がっていた。母さんの帰りが遅いせいではなかったが、その時間に……いや、それ以外でも、まるで発情期の猫みたいに、ふとした拍子に勃起して、我慢できずにシコってしまうのだった。

 やめようと考えれば考えるほど、些細なことに興奮してしまう。薄着になった母さんの腕や、仕事帰りの汗のにおい。洗濯物を干すときに触る衣服にさえ股間を熱くする。僕はすっかりおかしくなってしまった。

「まあ……そうねえ。まだ二年だしね。焦らずしっかりとやりなさい」

「うん」

「それと……明日から、大丈夫?」

「大丈夫だって。いくつだと思ってるの。たまには一人になりたいときだってあるんだから」

「そう? それならお母さん、遠慮なく行くけど……」

 遠慮なくと言うわりに、申し訳なさそうに上目遣いをする母さんだった。

 僕が夏休みに入るのと同時に、一泊二日で温泉旅行に行くのだという。偶然に再会した大学の同期に誘われて、ということらしい。父親が亡くなってから十数年、僕の知る限りは遊ぶということはほとんどなく、羽を伸ばすこともめったにない母さんが、ようやく僕一人を家に残して外へ行けるくらいには、大きくなれたのだと思う。

「何かやっておくこと、ある?」

「えっと……あ、トイレットペーパーが明日安売りだから、それだけお願い」

「了解」

 

 

 朝早くに母さんを見送って、僕は売り切れるのが心配で、開店直後にスーパーマーケットへと足を運んで安売りのトイレットペーパーを買った。家に帰ってからさて、とすべきことを考える。

 宿題やらなんやら……そうだ、まず洗濯をしなくては。

 洗濯機のスイッチを入れて洗剤を適量入れて、電子表示の残り時間を確認する。四十分だ。

 それはあっという間に過ぎてしまい、宿題をしていると、家の中にむなしくピーピーと電子音が鳴り響いた。一人なんだと、ふと思う。かき回されて丸まった洗濯物を伸ばしながら洗濯籠に放り込んで、ベランダへ運ぶ。夏の日差しは強い。すぐにでも乾くだろう。

 まったく機械的に干していって、僕の手はぴたりと止まった。母さんの下着。夏らしい水色で、目立たぬように柄の入ったショーツ。通販で上下セットのカタログで見たような気がする。

 家には僕だけ。

 一泊二日……。早くても、明日の昼……。

 今日は暑い。頭がくらくらする。

 洗濯物を干し終えて、僕は夢遊病患者みたいに不確かな足取りで、母さんの寝室のドアを開けた。部屋にしみついた芳香が胸を満たす。本人の不在が、むしろ残り香をつよくしていた。

 カーテンは引かれており、陽光は窓辺に波打つ線を落としている。そこに母さん一人では大きすぎるベッド。枕元からすこし離れて、三面鏡の化粧台。ずいぶん若い母さんと父さんのツーショット写真。まるでこれから僕がすることを見張るように、反対側の壁際の洋タンスを向いている。

 ばくばくと心臓がうるさい。誰かに見張られているような気がする。父さんだろうか。それとも、母さんだろうか。

 洗濯はずっと、僕の仕事だ。どこにあるかはわかっている。二つあるタンスの、左側の一番下。ひき出しを開けると、ずらりと上下の下着がつまっている。

 ごくりと唾をのむ。

 爆発物にでも触れるように、震える手をそろりと近づける。できる限り目立たぬ一つを手にとって、僕は自室へ逃げ帰った。

 ひどく勃起している。ズボンとの摩擦で感じてしまう。カチャカチャとズボンを、パンツを脱ぎながらベッドに倒れ込んで、これまでになく硬いペニスを握った。

 麻薬中毒者が薬物を吸い込むかのように母さんのショーツを自分の鼻にあてて、大きく息を吸う。部屋にしみついたのと同じ、しかしずっとかすかで、はるかに生々しい残り香が、僕の嗅覚を刺激する。母さんを感じた瞬間から、もう手は高速度でしごき始めていた。

「すん……はぁっ……母さん……! すぅぅー……あっ……」

 精液なのか我慢汁なのかわからないほどの液体を垂れ流しながら、僕はさらに硬くなった気のするモノをしごき続ける。

「母さ……和美……!」

 口をついて出た母さんの名前。びくんとペニスが跳ね上がる。

「和美! あッ、あァァッ!」

 一瞬視界が暗くなるほどの射精。力の入らない腰がこそばゆい。どくどくとだらしなく吐き出され続ける精液。

 夜のうちに干しておけば、明日の昼には取り込める。つまり、夜までは何をしてもバレはしない――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。