IS 《IF》 闇の少女とペンダント(R-18) 作:tamatyann
一応、エロい内容がある題には※をつけます。
R-18でムフフな展開が嫌いな方はご退出をお願いします。
夏休みも目前に迫った七月の日曜日、織斑一夏は@クルーズと言う喫茶店で一人でアイスコーヒーを飲んでいた。
しばらくするとウサ耳を付けた女性が一夏の座っていた机の反対側に座ってきた。
一夏はその女性の為にアイスコーヒーを注文し、女性はパソコンと紙の束を机の上に出した。
「で、束さん。 状況は?」
「上々だよ、いっくん!」
篠ノ之束は紙の束を一夏に渡すと、一夏は満面の笑みを浮かべた。
その紙の束の一番上には履歴書みたいな感じで名前や住所、写真などの情報が記載されている。
そこには、”留宮カオル(留宮トモカ)”と書かれ、彼女の満面の笑みを浮かべた写真が貼られていた。
束は、一夏にお願いされて彼女の情報を集めた。 束の腕にかかれば、大半の隠蔽情報は暴きだせるからだ。
世界中の軍事施設を同時に乗っ取れるほどの腕があれば、彼女の隠していた経歴は赤子の手を捻るくらい簡単に暴くことができた。
「いっくん、本当に真実を知ってもいいの?」
束は彼女の経歴を見て一夏に確認を求めたら、一夏はすぐに頷いた。
一夏は、長い黒髪の彼女のことが気になっていた。
初めて学校で会ったときから彼女の言動に翻弄され、寮や学校で彼女と会うたびに魅かれていった。
一夏は始めての体感する恋心に翻弄されながらも、彼女の豊満と言うよりも端麗な肢体や微笑を浮かべた彼女、幸せそうに眠る彼女の姿を全て心に焼き付けていた。
しかし、恋する一夏は彼女がよく”命の恩人”と呼ぶ男と電話で楽しげに話しているのを知っていた。
彼女は恋人ではないと言っていたが、その男と関係があるのではないかと一夏は訝しんでいた。
その猜疑心は次第に一夏の心に巣食っていき、自制心の限界に達するまでに高まっていた……
トモカの全てが欲しい……
彼女を見るたびに胸の高鳴りが止まらず、いつの間にか彼女の全てを独占したいと心に巣食った闇は考え始めた。
そして、一夏は篠ノ之束に無理を承知で彼女の経歴から弱みまで全てを調べてくれないかとお願いした。
束は、それを快諾すると一週間ほどで情報を集めてくれてた。
そして現在に至る。
「――あれ、名前が間違えてないか?」
一夏は彼女の名前が二つ書かれていることを指摘すると、束は肩をすくめた。
「彼女の住民基本台帳を調べたんだけど、たしか8歳ぐらいに”留宮トモカ”は行方不明になってるの。 同時期に”留宮カオル”と言う名前で戸籍が変更されて、強引に登録されてたから……」
「トモカは海外に親と一緒に移住していただけじゃなかったのか?」
一夏は彼女、カオルから親の関係で移住していたと聞いていた。 だが束は首を振ると、彼女の話を進めた。
「いっくん、白騎士事件は知っているよね?」
「そりゃあ、知ってるも何もISが始めて一般の目に触れた事件だろ? 戦闘機やらミサイルやらを叩ききったりしたとか言う」
「あの時、ISでミサイルが山のように叩き落とされたのよね。 そのミサイルの中に破壊不十分なものがいくつもあって、地上で10基以上が爆発したの」
「でも、避難命令は出てたから死亡者はいないって話じゃなかったか?」
「政府の発表ではそうなんだけど、色々と調べて見ると逃げ遅れた人が結構居たみたいで……彼女とその両親はその中の一人だったの」
「それがどうしたんだ?」
一夏は束が唐突な話に戸惑いを覚えながらも、その話しに聞き入っていた。
「彼女の両親、そのミサイルが直撃して倒壊したビルの下敷きになって亡くなっていたの」
それを聞いて一夏は、アイスコーヒーを飲むのを止めてコップを机に置いた。
「まさか……政府の発表じゃあ死亡者ゼロだって」
「……政府が交通事故で処理していた上に、唯一の生き残った彼女に公安からの監視をつけてたみたいね。 まさか私も、死亡者が出てるなんて興味なくて知らなかったから少しだけ驚いたね」
その話を聞いて一夏は、すぐにでも彼女を抱きしめて慰めてあげたい衝動に襲われていた。
一夏がそんな感情を抱いていると知ってか知らずか、束は続きを話し出した。
「公安の監視を何故か逃れた彼女は、ある男と共に仕事をしているのを日本から消えて数年後に確認できたんだよ」
「仕事?」
「傭兵よ、暗殺から警護に紛争地帯での争いから重要人物の拉致監禁、ISの強奪まで何でもござれってね~」
「ヨウヘイ? ヨウヘイって戦争の奴か?」
「そうだよいっくん、一緒にいた男が仕立てたみたいよ。 悪い言い方をしたら傭兵にするためにマインドコントロールされたって言った方がいいかもしれないね」
「じゃあ、カオルは洗脳されて犯罪を犯してるのか?」
「犯罪は犯罪だけど、逮捕状は出てないし、彼女自身が望んでるらしいわよ」
「でも、カオルが死ぬかもしれない」
「いいんじゃない? 私としては調べた情報を見ただけで私刑を執行してあげたいと思うけどね」
「なんで束さんが私刑を執行したいんだ?」
「だって……いっくん、第二回モンドグロッソで拉致されたでしょ?」
その拉致と言う言葉を聞いた一夏は、嫌なことを思い出したように表情が暗くなった。
あの時、同じくらいの年代の少女に拉致されて何度も蹴られたことを思い出したからだ。
「その拉致の犯人ね、彼女とその男だったの」
「……まさか!」
「拉致した頃の彼女の写真だけど、見覚えない?」
束はその写真をポケットから出して一夏に渡した。
一夏はそれを見て、硬直した。
まさに拉致されて腹を蹴った彼女の写真だったからだ。
確かに、IS学園で彼女を見たときに既視感があった。 だが、一夏は拉致した犯人は違うと思いたかった。
「束さん、違うだろ? 冗談だよな?」
束はその一夏の表情を見てかわいそうに思ったが、真実を伝えると始めに約束したため、真実を語り始めた。
「いっくん言うね……その時、ドイツから用途不明金が彼女達に流れているの。 隠蔽が上手すぎて立証できるほどのデータはないけどほぼ間違いなかったよ」
「だ、だけど……」
「実際に傭兵家業をしている姿を見たら信じる?」
「そりゃあ、カオルが人殺しをしてる動画でもあれば信じるけど……」
一夏はそんな物があるわけないと考えて、束に言った。
だが、束は一夏の予想に反してパソコンを開いて動画を準備し始めた。
「えっ、あるの?」
「米軍の外部から遮断されてる極秘のデータベースに入ってたのを、ね♪」
「……どうやってそんなものを奪ったんだよ?」
「いっくんでもそれは言えないなぁ……まあ、見せるね!」
そう言って、束は再生ボタンを押した。
――どこかの黄塵地帯の空が写っていた。
カメラの視線がキョロキョロと動かしていると、上空に浮かぶ一機のISをカメラは捕らえた。
そのISはカオルが乗っていたISのように全身が黒塗りに塗装されて、まるで死神のようだった。
ISが空中に浮遊させている四門のガトリング砲が地上に向けられ、砲身が回転し始めた。
一秒もしないうちに口径30mm、7銃身のガトリング砲四門から対戦車攻撃用の砲弾が彩雨のように地面に降り注いだ。
砲弾の群れは、ある米軍の空軍基地に吸い込まれていった。
元々戦車などの重装甲を貫くために作られた焼夷徹甲弾が、数時間後に出撃を控えていたCVー22オスプレイやKC-130J空中給油/輸送機などが駐機されていたエプロン(滑走路の側にある駐機用のスペース)にばら撒かれたのだ。
作戦前でバンカー(飛行機を入れる場所)から出されていた航空機に向かってばら撒かれた機関砲弾は機体を貫き、地面に当たると土煙を上げていき、滑走路全体を土煙で染め上げた。
土煙が消える頃には地上に居る航空機は全て火を吹いていた。
ISはバンカーに出ている機体を破壊しつくすと、ロケット弾で滑走路と扉が開いていたバンカーの中へ発射していった。
整備員が逃げ惑おうが、飛行士が迎撃の為に動こうが関係なくISは攻撃を断行した。
機関砲弾が当たった人間の身体は真っ二つに消し飛び、ロケット弾は飛行機ごと人間を消し飛ばしていく。
地面は血で染まった。
ISの猛攻に一瞬基地機能が麻痺していたらしく、滑走路が壊滅状態になってからやっとサイレンが鳴り始めた。
すると散発的に火線を張っていた米軍の反撃が強固になった。
兵士はスティンガーミサイルを発射し、基地防空用の車両群からは機関銃による対空砲火が一斉に開始された。
ISは真っ赤に光るフレアをばら撒きながらチャフを散布してミサイルの機動を逸らし、対空砲火を上下の緩急機動で避けていった。
数分後、回転木馬のように基地上空を旋回し始めたISは、反撃した兵士や車両に向けてガトリング砲やロケット弾などの掃射を行い、対空兵器を一つずつ片付けていた。
それは地上に居る軍隊の戦闘単位を個人単位にまで分解していくまで続いた。
土煙が空高く昇るまで攻撃が続いた頃、飛行場から離れていて生き残っていたアヴェンジャー防空システムを担う数十台のハンヴィーの荷台から幾重もの白煙を引きながら対空ミサイルが飛び出していった。
その数100基以上のミサイルがIS目掛けて突撃し、数十発のミサイルが油断していたISに直撃した。
ISは多少のダメージを与えられ、状況把握の為に急速に基地上空から退避した。
その時、ISがカメラの近くを飛んだため、そのISの操縦士が一瞬だけカメラに写りこんだのだ。
その操縦士は、カオルだった……
動画はまだ続きがあったが、束は動画を止めた。
一夏は食い入るようにその動画を見ていて、カオルに対する事実認識を改めることになった。
「いっくん、これで分かったでしょ? 彼女の正体が」
「わかったけど……じゃあ、何でカオルはなんで傭兵なのにISをもってるんだ?」
「彼女は傭兵だから、お金の多寡と安全性で仕事を選ぶの。 だから危険すぎる任務でも受け持ってもらうためには相当の見返りが必要よね。 ISを供出するということは相当危険な任務に何度も付くという縛りであり証じゃないかしら」
「じゃあ、なんでカオルはあまり危険じゃないIS学院にいるんだ?」
「本当に話してもいいの?」
一夏は少しだけ逡巡してから頷いた。
束はそれを確認すると口を開いた。
「いっくんは有名人でしょ?」
「まあ、世界で唯一男でISが動かせるって報道されたらイヤでも有名になるだろな」
「世界で一人だけのISを動かせる男、そんな稀有な存在を調べたいって国家や企業は山のようにいるでしょうね」
「……そうだよな」
一夏は、テレビで報道されてから押しかけてきた人間達の事を思い出して不快な顔をした。
「彼女、彼らの代行業者みたいな仕事を今請け負ってるの。 日本国政府からいっくんの護衛、その他の政府や企業からはいっくんの情報収集の依頼……」
「だからあんなにカオルは親しくしてくれたのか……」
一夏はチョットだけ落胆した。 もしかしたらあんなに優しくしてくれたのがお金の為だったかもしれないからだ。
そんな一夏に束は止めを刺した。
「それだけなら良かったんだけど……優先すると思われるISの提供主の亡国機業からは、いっくんの篭絡か暗殺の依頼がされてたの」
その言葉を聞いて一夏の脳はフリーズした。
「うそ……だよな? だってさ、任務依頼が矛盾してるだろ?」
手がワナワナと震えている一夏に束は引導を渡した。
「暗殺のためのデゴイ(囮)のために任務を受けることもあるんだよ。 私がいっくんのために本腰を上げて調べたんだから確実だし」
ここで束は言葉を区切り、一夏を見据えた。
「でさぁ……彼女、この世からいなくなっても困らないでしょ?」
無言で押し黙っている一夏に束は決断を迫るために、笑顔で質問しはじめた。
「失望した? 彼女が怖い? だったら跡形も無く消してあげるよ?」
束が言ったことを聞いて数分ほど熟考した一夏は一度深呼吸し、束を見据えた。
束は彼女の事を諦めてくれるだろうと考えていたが、その思惑は外れた。
「……束さん、何でも手伝ってくれると言ったよな?」
「そうだけど?」
「俺は……あいつ、カオルが欲しい」
「――止めておいた方がいいと思うけど? 彼女の手は何千と言う骸の血で穢れてるのに?」
「あいつ、何度か一人で悲しげにしてた事があったんだよ。 それを見てたらさ、心の傷を癒してあげたいとも思ったし、俺が囲んで檻の中で囲ってあげれば……傭兵なんかさせないで癒してあげられるんじゃないかな?」
一夏のその言葉を聞いて束は久々に悪寒が走った。
彼女は自分から手を下さなくても、いっくんの心の闇からに食い殺させると実感し、少しだけ同情を覚えた。
単なる一夏を相手にするなら傭兵の彼女でも問題なくても、自分がバックアップにつけばほぼ逆らえない事が眼に見えていた。
束は、ブツブツ呟きながら一人ニタニタと笑う一夏の呟く内容を聞いていた。
「傭兵だとしても……脅して、監禁か無理矢理……ストックホルム症候群を起こさせれば…」
「……いっくん、妙に現実的な手段を取るねぇ」
「モンドグロッソの仇とでも言えば初動は取れるはずだし……」
「おーい、いっくん?」
「……そうだ、束さん、もちろんバックアップはよろしくね」
一夏の向ける強い視線に屈して束はうなずいた。
「じゃあ、ISの開発者として聞くけど、カオルの乗るISだけを任意で起動させなくすることは出来ないかな?」
「出来るけど……」
「じゃあ、他には何かできることはある?」
数時間後、話し合いを終えた束はウサ耳をペタンと垂らしながらうな垂れていた。
一夏の尋常じゃない執着を見て、人の恋路には邪魔しないと篠ノ之束はこの時思った。
この題は依頼ですね。
初めてのR-18になるので評判が怖いです……
あと二話で入るのですが、楽しんでください。
感想や批評、問題点などプリーズしてます。