※この作品はR-18です。

散花凌乱   作:バルボロッサ

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今回は最近の有名どころ。Fairy tailから天竜ことウェンディちゃんです。
彼女のヒロインものやエロ系って少ない気がするんですが、はたしてどれほど需要があるのか……気が付けば、結構な割合でロリ系しか書いていない気が……
ちなみに魔法に関しては独自解釈です。

新年一発目からひどいことをしていますが、天竜幼女にブヒブヒしてくださる方は、感想などよろしくお願いします。
ちなみに今回は2話くらいを予定しています。


FAIRY TAIL
ウェンディ・マーベル 1


 それは天狼島から奇跡の生還を果たし、過ぎ去った7年の時の重みを感じつつも徐々に日常へと戻ろうとしていた時のこと。

 

 妖精の尻尾のギルドでは、腰まで届く青い髪をツインテールにしたウェンディと真っ白い毛並の2足歩行しているネコ、シャルルがクエストボードの前で唸っていた。

 

「どれにしようか、シャルル?」

「そうねぇ……って言っても選べるほどないけどね」

 

 天狼島で、ギルドの主要メンバーが行方不明になっていた7年間。それは容赦なくギルドの運営状況を悪化させており、かつては(天狼島組にとってはほんの少し前)大きなクエストボードに所狭しと依頼書が貼られていたが、今ではボロボロの小さなクエストボードも閑散としている。

 

 妖精の尻尾をはじめとした魔導士ギルドには元々様々な類の依頼がくる。

 商業ギルドや工業ギルドのようにある意味分野に特化したギルドとは異なり、魔導士であることが加入の条件のようなものである魔導士ギルドは、言ってしまえば何でも屋だ。

 

 一般人が立ち入ることの難しい山岳にある薬草集め、盗賊退治、違法魔導士の捕縛依頼、怪奇現象の解決依頼といった魔導士に対するもの特有な危険なものから、魔法教室の先生や宅配便、猫さがしといった小さなものまである。

 

 かつてはフィオーレ屈指とも言われたギルド・妖精の尻尾だが、マスターやS級魔導士をはじめとした主要なメンバーを一時期失っていたため、現在ではフィオーレ最下位の弱小ギルドと後ろ指さされる状態になっている。

 そのため、回ってくるクエストは、例えば国を挙げてのお尋ね者の捕縛依頼であったり、非常に安価なクエストであったりと、言ってしまえばだれが挑んでも変わらないようなクエストが大半となっている。

 

「そうだよね。でもお仕事頑張らなきゃ、貯金が危ないし……」

「頭の痛い問題よね」

 

 7年間の不在は、ギルドの仕事だけでなく、ウェンディとシャルルをはじめ行方不明だった者たちの懐具合も容赦なく苛んだ。

 行方不明、と言っても魔法により凍結封印されていたのであって、彼女たちは7年前と年が変わっていない。彼女たちも長く行方不明だったという実感はなかったが、周囲の状況は違う。

 ウェンディやシャルルなど、借家に住んでいる者にとっては家賃などがそれだ。

 

 行方不明中の7年間も、死亡がささやかれる中、変わらず部屋を保っていてくれた。いつ帰ってきてもいいように、掃除をして、新たな入居者もいれずに。

 それだけ聞けば、心温まる話だが、残念ながらそれだけではない。

 

 部屋を借りたままにしていたということは、たとえ使っていなくとも、家賃が発生するということだ。

 安い家賃のルーシィですら、溜まった滞納金に苦悩したように、ギルドの女子寮、フェアリーヒルズに住んでいるウェンディたちもまた滞納金に苦しめられている。それほど浪費をせずに、幼いながら貯蓄をしていたウェンディもまた、貯金がすっ飛ぶような事態になってしまったのだ。

 

 不在の間、残っていたギルドの仲間がいろいろと世話をしてくれていたらしく、住める状態にはなっているものの、お金の問題は仕方がない。温情によって多少、おまけしたりもしてくれたが、ただでさえ経営難に財政難のギルドの現状。お金のことで救済処置をしてくれるゆとりはなく、メンバーの多くは家計が火の車になっていた。

 

「あっ、これ……これなら私にもできるかも」

「どれ?」

 

 先にも述べたように魔導士ギルドには危険な仕事も多く来る。

 火の滅竜魔法を使うナツや妖精女王の異名を持つエルザなどは、荒事でもなんなくこなす……というよりも好んで荒事を受けたがる節があるが……だが、ウェンディは残念ながらそうもいかない。

 ウェンディが使うのは天空の滅竜魔法。

 滅竜魔法は、同じギルドのナツやガジルのように、元来攻撃性の高い魔法だ。だが、その中でも天空の魔法は異色の性質を持つ。

 

 治癒の魔法

 

 極めて珍しいその性質と、ウェンディ自身の性格もあって、ウェンディとシャルルはあまり荒事となる仕事を自発的には受けない。

 事情があれば異なるし、ほかのメンバーとチームを組んだりすれば話は別だ。妖精の尻尾に加入して以降、攻撃魔法もいろいろと覚えているから多少であれば問題はないだろう。

 ただ、今は各々の家計の事情もあって、報酬が分配されてしまうチームでの仕事はあまり受けていない。

 

「傷心の私の心を癒してくれる方お待ちしています。女性魔導士もとむ、だって」

「…………怪しくない?」

 

 自身の癒しの(魔法の)特性からだろう、目につく依頼書も自然と治療関連のものが多いのがウェンディの特徴だった。

 魔法の性質もあるが、自分にできることとして、治癒の魔法を行使することにウェンディは喜びにも似た感情を持っていた。

 消費する魔力の多さからシャルルはそれを危惧していたりするが、自分の居場所、自分を必要としてくれる存在を求めるウェンディにとってそれはかけがえのないものなのでもあるのだろう。

 

 自分の性質に合致しそうな依頼内容にウェンディは嬉しそうな表情をしているが、書かれている文面(特に女性限定の箇所)にシャルルは怪しむ視線を向けている。

 

「でも、内容はそんなに危なくなさそうだし、すごく報酬もいいよ?」

「ホントね……」

 

 依頼主は、ロー・ペドリア男爵。報酬は家賃の7か月分に相当するほどで、貯蓄がほとんどない二人にとってはとてもありがたい。

 依頼自体も少し変わった内容ではあるが、以前オニバスという町の劇団の座長から依頼された内容も似たような内容で、しかもそれは行ったはいいが、仕事はほとんどなくて、依頼自体が開始しなかったという顛末だった。

 

「どうかな……?」

「あんまり気は進まないけど。先立つものがないものね」

 

 シャルルの勘はよく当たる。

 予知能力とも言えるそれは、今まで幾度も未来を予知してきた。

 しかし、それは断片的な情報であり、正確に情報をコントロールできるわけではない。中にはくだらない日常会話の予知だったりすることがほとんどだ。それゆえ、シャルル自身は、彼女の予知したことを気にかけながらも、それで強く行動に制限をかけたりはしない。

 今回も、差し迫った懐具合と自身の感じる些細な不安感。それを天秤にかけた結果、出た答えが、仕事を受けるとなった。

 

 

 依頼にはいろいろなものがある。中には本来の意図を隠しつつ、カモフラージュしたものがあったり、依頼人自体が予期しないほど複雑怪奇な事案になったりすることもある。

 昔の妖精の尻尾であれば、依頼の選別が可能であったし、えり好みができた。

 だが、今の妖精の尻尾は些細な仕事も、それが闇に属する依頼でない限りは受けざるを得ない運営状態だった。

 

 いろいろな理由があった。

 もしもギルドが仕事の内容を精査できていたら

 もしもシャルルが自身の予知にもう少し重きを置いていれば

 もしもウェンディが、癒すことの意味を疑っていれば

 

 あるいはこの未来を回避できたかもしれない…………

 

 

    ✡✡✡

 

 

 

「よく来たね! 私が、当屋敷の主人。ロー・ペドリアです」

 

 依頼を受けた二人は、早速依頼主のもとへと訪れていた。

 男爵、という爵位を持っているだけあって(もちろんそれだけが尺度ではないが)、訪れた屋敷はかなり裕福そうな家だった。またペドリア自身も裕福さを体で現したような肥満気味の体で、年齢的には三十路を超えて、40になるかならないかあたりだろうか。

 

「よ、妖精の尻尾の、ウェンディです」

「シャルルよ」

 

 こういった豪華な場所や人に縁のないウェンディは、きらびやかに彩られた室内に通され、ふかふかのソファに腰かけさせられたことでかなり萎縮しながら挨拶をした。隣のシャルルは、「借りてきた猫」という言葉などどこ吹く風といわんばかりにツンとすました態度だ。

 

「ほほう。ウェンディちゃんか……これはこれは、可愛らしい魔導士が来てくれたものだ」

 

 白のゴシック調の服装に、垂れ耳の猫のような髪留め。幼いウェンディの容姿を可愛らしく主張するその姿に、ペドリアはにこにことした人の好さそうに見える笑顔を向けた。ただ、周囲の豪華な様子に気圧されていたウェンディは、その言葉にびくりと反応した。

 

「あ、あの。私じゃ、ダメでしたでしょうか……?」

 

 女性魔導士限定、とあったが、もしかしたら求めていたのはもっと熟練の魔導士だったのかも知れない。貴族層の人間にはよく見られることだが、彼らは時として、些細なことでも大人物に解決してもらいたがる。

 そこまでいかなくとも、ウェンディのように外見から子供と分かる人物が来ると、侮られたと見て、仕事の話に移る前から憤慨する者もなかにはいる。

 

 ギルドの現状を考えても、あまり依頼人の心情を悪くしたくないし、萎縮している今の状態からもかなりびくびくとした不安感を募らせたのだろう。

 

「いえいえ。逆によかったですよ。あなたのような可憐な少女のほうがむしろ好みですから」

「えっ? あ、はぁ……」

「ウェンディ。仕事の話でしょ」

 

 おびえるウェンディに対して、ペドリアはとんでもないとばかりに首を振ってアピールした。フォローのつもりだったのだろうか、好意的な言葉に戸惑うウェンディにシャルルがピシりと注意を入れた。

 

 元々はウェンディが卵から孵化させたネコ(エクシード)なのだが、やや天然のきらいがあるウェンディに対して、シャルルはしっかり者なため、保護者が逆転したかのようなやりとりがしばし見られる。

 

「あっ、そうでした。あの、依頼についてなんですけど……」

「ああ。少しお待ちください。丁度お茶が入るところです。お茶を飲んで気を楽にしてからお話ししましょう」

 

 シャルルの言葉にウェンディは居住まいを直して緊張感を取り戻し、仕事の話に移ろうとした。しかし、その話をくじくようにぺドリアがにこやかに告げた。タイミングよく、家令のものがお盆に3つカップを載せて運んできた。

 どのカップも白磁の陶器で1脚でもかなりの値段がしそうなカップだ。

 

「えっと……」

「ひとまず仕事のお話の前にどうぞ!」

 

 立ち上る芳香は甘く、緊張感を解きほぐす香り。依頼人からの丁寧な対応に、ウェンディはどうすればいいのか分からずにぺドリアとカップ、シャルルの間に視線を彷徨わせた。

 視線を向けられたシャルルもこの対応には戸惑いを隠せないようで、困ったようにウェンディと視線を交わした。

 

 前方にはにこにことした笑顔でお茶を勧めてくる依頼人。

 用意されたカップは見るからに高級さのあるカップ。報酬のことや、ギルドの面目もあるが、それ以上にウェンディの慎ましやかな性格上、丁寧なもてなしに対して邪険にすることは戸惑われた。

 

 しばらく逡巡したウェンディは、しきりに勧めてくるぺドリアに促されるようにカップに手を伸ばした。

 

「えっと。それじゃあ……いただきます」

 

 おずおずとカップを手にしたウェンディ、シャルルも小さな体をちょこんとテーブルに移し、カップに口をつけた。

 その味は薫り立つ芳香を偽ることなく、甘く芳醇。

 なぜ緊張していたのか、それを忘れてしまうほどに、心を解きほぐす味だ。

 

 口をつけたシャルルはその味に、あら? というように少し驚いたような顔になった。

 

「わぁ。すごい美味しいです」

「そうですか。それはよかった」

 

 両手を組んでにこにことした視線を向けてくるぺドリア。

 両手でカップを持つウェンディは、美味しいお茶の味にこくこくと喉を潤した。

 

 なんで緊張していたのか。そもそもなにをしに来たんだっけ? 

 美味しいお茶の味に、思考が緊張とはかけ離れた方向へと飛び始めた。

 

 不自然なほどに緊張感が薄れ、思考が定まらなくなり始め、そのことに微かな疑問を覚えた時、

 

 ポテン

 

 と隣のシャルルが体を倒した。

 

「シャルル!? あ、あれ……?」

 

 唐突に意識を失ったシャルルにウェンディが訝しみの声をあげた。だが、シャルルの小さな体に手を伸ばそうとしたとき、グニャリと視界が揺らぎ、ウェンディはソファに手をついた。

 思考が定まらず、視界は揺らぎ続ける。なんとか体を起こしていたウェンディが、依頼主の方に視線を向けると

 

「ぐふふふ」

「ペドリア、さん……?」

 

 もはや顔も見えない視界の先から、不気味な笑みを浮かべながらペドリアがウェンディを見下ろしていた。それを確かめようとしたウェンディだが、ぐらぐらと揺れていた腕が崩れ、確かめることなくソファへと倒れこんでしまった。

 

「ようやく、か。小さい割にはなかなか保ったな」

 

 ウェンディの傍まで寄ったペドリアは、すっとウェンディの顔の前で手を動かし、ウェンディからただ寝息しか聞こえないことを確認すると、にやりとほくそ笑んだ。

 

「こっちのネコは要らんが……まあ、なにかには使えるか。さて、それじゃあ場所を変えてゆっくり楽しもうか。ウェンディちゃん?」

 

 弱小ではあるものの、かなりの粒ぞろいという噂を聞いていたが、まさに自分の理想通りの展開になったことにペドリアは嗤いを隠し切れなかった。

 

 幼く可憐な少女。傷心を癒してほしいなどという書き方に反応したくらいだし、実際に話した様子からも少女がとても優しい心をもつ少女だということはわかった。

 

 穢れを知らず、手垢のついていないだろう無垢な少女。発達しきっていない蕾はペドリアにとってまさに食べごろに見えた。

 

 見下ろすその姿は、自らが捕らえた天竜の少女の、これからを夢想して怪しく、不気味に嗤っていた。真っ白な空のような少女を汚していくこれからは、きっと今までよりもずっと楽しめるだろう、と……

 

 

 

    ✡✡✡

 

 

 

 広い室内の中、豪華な白い天蓋付きのベッドの上に少女が囚われていた。

 

 天竜の幼生、あるいは妖精。そう評していいだろう可憐な少女は、白を基調としたゴシック調の可愛らしい服装だ。

 

 囚われている。

 

 その言葉通り、少女の両手はYの字のように頭上に上げられ、錠によって鉄柵のベッドに固定されていた。両足も軽く開かれた状態で、両の足首に巻きつけられた紐を通じてベッドに固定されており、まさに白いキャンバスに磔にされた蝶のようになっていた。

 

 

 

 五感に優れるウェンディは、ぼうっとした頭でもその片隅で奇妙な感触をとらえていた。

 なんだかフワフワとする感覚を覚えると当時に、妙に身体な火照りと違和感とを覚えた。

 

「ん……?」

「おや。ようやくお目覚めかい?」

 

 重たい瞼を開けると見知らぬ天蓋。馴染みのない男性の声がウェンディの耳に入り、寝ぼけ眼でそちらに視線を向けた。

 

「え……、ペドリア、さん……?」

「おはよう、ウェンディちゃん。気分はどうだい?」

 

 霞がかった思考で、声の主が意識を失う直前まで話していた今回の仕事の依頼人、ロー・ペドリアであることを思い出す。

 ペドリアの言葉にウェンディは違和感を覚えて、なぜか万歳するように上げられていた手を動かし、脚を曲げて身を起そうとした。だが、

 

「えっ!?」

 

 その動作は、がちゃりという音とともに阻害され、微かな動きだけでウェンディを固定させていた。動けぬ状況に困惑するウェンディは慌てて周囲を見渡した。

 

「これは! ペドリアさん!? これはどういうことですか!?」

 

 自分がいる場所が、先ほどとは異なるどこかの一室で、自分がベッドの上に固定されていることに気付いたウェンディは、驚きの声でペドリアに問いかけた。

 

「お仕事だよ。お仕事。君は僕の心を癒しに来てくれたんだろう?」

 

 困惑しているウェンディに対してペドリアは、その様すらも愛らしいとでも言いたそうな嬉しそうな眼差しを向け、なんでもないことのように返した。

 

「どういう……?! シャルル! シャルルはどこですか!?」

 

 要領を得ないペドリアの答えにウェンディが睨みつけるような視線を向けた。そして、いつも傍にいるはずのシャルルの姿が見えないことに、ウェンディが声をあげた。

 

「おやおや、この状況で飼い猫の心配とは、優しいねえウェンディちゃん」

「シャルルは飼い猫なんかじゃありません! 私のパートナーです!」

 

 ウェンディの問いに対して、ニヤニヤとした態度を崩さないペドリア。その言葉にウェンディは憤慨して声を上げた。

 

「心配いらないよ。これから君は僕のものになるんだから。あの猫は、そうだな。発情期の雄猫たちにでもプレゼントしようか?」

「!! ふざけないでください! どういうつもりですか!」

 

 何も知らない少女にも見えるウェンディだが、妖精の尻尾に所属する魔導士であり、その活動の中で、人の悪意に触れたことももちろんある。今のこの状況は、どう考えても自分に対して悪意ある行動をとるつもりにしか思えなかった。

 だが、それにもまして、この依頼人の言動はおかしかった。

 非力に見えるウェンディだが、滅竜魔法を使う魔導士だ。その魔法の中には、攻撃魔法も多少はある。自らを捕らえている戒めを解こうとウェンディは自らの魔法を発動させようとして

 

「えっ! あっ! くっ、ふ……!!」

 

 魔法が発動しないことに愕然とした表情となった。だが、驚きはそれだけではなく、ウェンディの体からは魔力が漏れ出るように吸い取られた。自らの体の中から、大切なナニカが奪われる感覚に、そしてその際のぞわりとした不快な感触にウェンディは苦悶の吐息を漏らした。

 

「おや、いけない子だ。早速暴れようとしたね?」

「なにを、したんですか……?」

 

 魔力を吸い取られたのは一瞬だった。だが、突然襲ってきた感覚にウェンディは息を乱し、やれやれと言いたげな表情を向けてくるペドリアに、キッと視線を返した。

 

「腐っても“あの”妖精の尻尾の魔導士だからね。調教する前に暴れられては大変だから、少し仕掛けをさせてもらったのさ。君の手足についている錠はね、君が魔力を使おうとするとその魔力を奪って発動を邪魔させてしまうものなんだよ」

「そんな! なんでこんなことを! 放してください! シャルルを返して!」

「言っただろう? 君は僕のものになるんだよ」

 

 生理的嫌悪感を抱かせる厭らしい笑みを浮かべながら近づいてきたペドリアは、なんとか距離をとろうと身じろぎしているウェンディに、すっと手を伸ばし、無遠慮にその脇腹を撫で上げた。

 

「きゃっ! や、やめてください!」

「可愛いねえ、その声。でもあんまり反抗的だと、君のネコ。シャルルちゃんだっけ? が大変な目にあっちゃうよ?」

 

 可愛らしい悲鳴を上げ、体を暴れさせながら抗議を訴えるウェンディ。キッとした眼差しは少女の反抗心を表していた。ウェンディの反抗的な表情にも愉悦を覚えはするが、あまりガチャガチャと暴れられては弄びにくい。ペドリアはひょっとしてという思いから、先程ウェンディと一緒に確保したおまけを盾にしてみた。

 

「シャルルに何をするつもりですか!?」

「言っただろう。雄猫にでもプレゼントしようかって。この街には野良猫がたくさんいるからね。発情期になって煩いのも多いし、きっとみんなシャルルちゃんと仲良くしてくれると思うよ?」

「なっ! や、やめて!」

 

 効果は抜群だった。

 目に見えて顔を蒼ざめさせ悲鳴じみた声を上げてウェンディは大切な友達の身を案じた。

 

「なら。どういう態度をとればいいのか分かるだろう? 君は僕のものなんだ。ご主人様にお願いするときは、そういう言い方があるだろう」

 

 ウェンディの訴えに、ペドリアは表情からおちゃらけた雰囲気を消して威圧するように問いかけた。

 この人のモノになる。そんなことを言ったが最後、どのような目に合うのか。それはウェンディの幼い経験でははかり知ることはできない。

 それでも

 

「……シャルルに、手を出さないでください。お願いします。私は……私はどうなっても構いませんから!」

 

 ウェンディにとって、シャルルをひどい目に合わせることはできなかった。

 

「ぐふふ。よーしいい子だ。大丈夫。君がちゃんと僕の心を癒してくれたら、シャルルちゃんを君に返してあげよう」

「! ほんとですね?」

 

 ウェンディの言葉にひとまず満足したのか、ペドリアは気持ちの悪い笑みを再び表情に出し、絶望の中に一筋の希望の糸を垂らした。

 

「ああ。もちろんだよ。君がちゃんと、自分の立場を弁えればね」

「……」

 

 立場を弁える。その意味は先の言葉と今の状況とを合わせて考えるとウェンディにも明白で身の毛がよだつほどだ。だが、それでも大切な友達を傷つけるわけにはいかない。ウェンディはぎゅっと唇を噛んで堪えるように沈黙した。

 大人しくなったウェンディを見て、ペドリアは気を良くしたように笑みを浮かべ下卑た視線を向けた。

 

「よーし、よし。それじゃあ、じっくり楽しませてもらおうかな。といっても……」

「ひっ!! あっ!!」

「もうさっきから味見させてもらってたんだけどね」

 

 ペドリアがウェンディのお腹をさするように撫でると、ウェンディはその手の感触に声を上げた。

 

「な、なにを、したんですか?」

「いやなに。君が寝ている間に、いろいろな所を触らさせてもらっていたんだよ。例えば……」

「あっっ!」 

 

 お腹の上を這いずるような手の感触に身をよじらせていたウェンディは、不意に首筋から右の耳たぶにかけてを撫でられて嬌声を上げた。

 

「ほかにも、こことかもいいんだよね、ウェンディちゃん?」

「ふぁ、ん!! ん、やっ!」

 

 首元にあてられた手から逃れようと顔をそむけていると、今度はお腹を撫でていた手が一気に下に下がり、左の太ももの内側を撫で上げた。ぞわりとした感触がウェンディの背を駆け巡り、びくりっと背が浮いた。

 

「ぐふふ。いいね、感じやすくて、素直な子は大好きだよ、ウェンディちゃん」

「そんな! ふっ! んあっ!!」

 

 悶えるウェンディに追い打ちをかけるように、耳元に口を寄せ、敏感なウェンディの耳に息を吹き付けるように話しかけた。同時に太ももを撫でていた手は、脚の付け根をこするように指でさすった。

 ウェンディ自身ですら知らない、というよりも性に対する知識など碌にないウェンディは、自らの体から湧き上がってくる感覚に戸惑いと苦悶をあらわにしている。

 

 滅竜魔導士は総じて感覚に優れている。聴覚、嗅覚、平衡感覚。時に弱点となるほど敏感なそれは、ペドリアの仕掛けた罠、そしてウェンディの知らぬ間に発掘された性感帯によって、今、少女の未熟な体を苛み始めている。

 

「いいよ、その顔。こんな感触初めてなんだろう? ほらじっとりと汗が出始めてるじゃないか」

「ひっ! や、やめ。きゃぁっ!! ん、やっ!」

 

 寝ている間に味見していたというのはウェンディ自身が知らぬ性感帯を探り当てただけではないのだろう。本来、感じる度合いの薄い部分を、ねっとりと攻め続けていたため、そして身悶え続けさせられたためにウェンディの体はじっとりした汗をかきはじめた。

 目敏くそれを見つけたペドリアは、その中でも特に敏感な部分。ノースリーブの服装のためにむき出しとなっているウェンディの脇に顔を近づけて、わずかに湿り始めた汗を舐めとり始めた。

 

「ひんっ! なん、で、こんな。ひゃっ! あぁっ!!」

「ん? どうしたんだい、ウェンディちゃん?」

 

 瑞々しいウェンディの柔肌をそのざらついた舌で堪能していたペドリアは、途切れ途切れの声で尋ねてきたウェンディの問いに舌を止めた。もっとも

 

「あぁっ! くっ! なんで、こんな、こと、ひゃっ! するんです、んくっ! かっ!?」

「おやおや、感じすぎてまともにしゃべれないのかい、ウェンディちゃん。ほら、ここがいいのかい?」

 

 肢体を弄るその手は全く止まらず、ウェンディの言葉をわざと遮るように敏感な部分を弄ぶことで、嬌声を楽しんでいた。ペドリアの指は再びお腹のところへと戻ってきて、今度は先ほどは触れなかった部分。服に隠れていたお臍をいじり始めた。

 白いフリルのついた裾がわずかにめくりあげられ、その下からペドリアの手が侵入する。到底性感帯とは異なるはずのそこは、

 

「ふああっ! やっ、やめっ! ああっ!!」

 

 まるで体の奥底を穿りあてられたかのように、ウェンディ自身信じがたいほどの感覚をウェンディの脳に伝えた。

 

「ぐふふ。不思議かい? なんでこんなに感じちゃうのか?」

 

 大きく仰け反って全身で感じていることを露わにして、しかし顔には困惑を浮かべているウェンディに、ペドリアは愉しそうに問いかけた。ウェンディの質問にはまるで頓着せずに、話しかけながらもお臍の周りをさする手は止めなかった。

 ウェンディは荒い息をつきながら、腹部から湧き上がる疼きにも似た感覚に抗うように、「んっ、んっ」と声が漏れ出るのを堪えていた。

 

「さっきウェンディちゃんが魔法を使おうとしたら、その魔力を奪うって言ったよね」

「? んんっ!」

「さて、奪われた魔力はどうなったと思う?」

「どうい、うんっ!!」

 

 ペドリアの問いに疑問を生じさせたウェンディ。その意識の隙間を縫うようにペドリアはカリッと臍を掻き上げた。ビクリと背を反らして反応したウェンディに気をよくしたペドリアはカリカリと何度も臍をほじくり返し、その度にウェンディの背は弓なりにしなった。

 

「分からないかい? それじゃあ、実際に試してみようか」

「?」

 

 何かを試すつもりなのかペドリアは責める手を止めた。絶え間なく責めたてられていた中で不意に訪れた休息にウェンディは荒い息をついた。呼吸を整えようとするが、それは火照り始めた体の感覚を認識するものとなった。

 全身を火照らせ、汗ばむ幼体を見下ろすペドリアはにまにまとした笑みを浮かべながらウェンディの痴態の訳を説明し始めた。

 

「魔導士というのはね。優れた魔導士であるほど、無意識に魔法を使っているんだよ。大気中のエーテルナノを取り込んで、自身の魔力として貯蔵できなかった部分を無意識に身体の強化に用いている」

 

 ペドリアの言うことは、理論的には今のウェンディには理解できかったが、平常の状態であればなんとなくわかっただろう。例えば、ナツ。彼は普段から余剰魔力で身体強化を行っており、それがために、普段から有り余る力を発揮しているのだ。ほかにも無意識の状態では建物すら粉砕してしまギルダーツを例にとれば分かるように、強すぎる魔導士になればなるほど、余剰魔力によって引き起こされる事象は大きくなる。

 

「ただ、外部からの刺激に対して強制的に意識が飛んだとき。その瞬間、強い魔導士は無意識のうちに体内の魔力も身体強化に充ててしまうものなんだよ」

「どういう、……!?」

「さて、いい声で鳴いてみせておくれ、ウェンディちゃん」

 

 ペドリアの言葉に、ウェンディが問い返そうとし、それを遮るようにペドリアの指使いが一斉に動いた。

 ウェンディの性感帯以外の感じる部分。右の首筋から耳元にかけてを舐め上げ、左の手はお臍を穿り返し、右の手はももの付け根を覆った。そして、無意識に魔法で防御してしまうように魔力を込めた。

 

「あああっ!! ん、ああっ!! 」

 

 ウェンディの体は無意識に外部からの魔力の干渉を遮ろうと魔力を用い、その瞬間、ウェンディの体は固定された状態で大きく跳ね上がり、艶を帯びた激しく嬌声を上げた。

 

 ナツやグレイなどが、戦闘時にある程度の高所から落ちても軽傷、あるいは無傷で済むのは先の身体強化が強く発現するからだ。ペドリアは強制的にその状態をウェンディに引き起こし、魔力を発散させたのだ。つまり、無意識状態にならざるを得ないように、体の敏感な部分を刺激し、同時に魔力による刺激を使って、反応を起こさせた。

 それによって、錠とベッドに秘められた機能が、ウェンディの魔力に反応してウェンディの体を蝕んだのだ。

 

「奪った魔力、その行くさきは君の体さ。君の感覚を敏感にする魔法。それが、このベッドの機能だよ」

「はぁ、は、んっ! く、ふっ、ぅ……」

 

 大きな感覚の波にさらわれたウェンディは、なんとか途切れた息を戻そうと大きく深呼吸するが、なぜか、呼吸すればするほど、ウェンディの体の疼きは増していた。

 

「ああ。ウェンディちゃんは、たしか天空の魔法少女ちゃんなんだよね?」

「なん、で、それ、を」

「天狼島からの奇跡の生還。週刊ソーサラーが大きく取り上げてくれたからね。空気を食べて魔力を取り込む魔法少女。まさにこの状況にうってつけの素材だよ」

「!! まさ、か……!」

 

 滅竜魔導士というのは、自らの性質と同じものを食することにより魔力を回復する魔法がある。天空の滅竜魔導士。ウェンディのその特性は空気を食べて魔力を回復することにある。魔力を回復する魔法。無意識的にもできるそれは、たしかに滅竜“魔法”の一つだ。

 

「たくさん空気を吸えば吸うほど感じる敏感な体になっちゃうんだよ。そのうち、これがなくてもいつでも感じっぱなしの淫乱魔法少女ができそうだ」

「!!」

 

 感じてしまえば、息が乱れる。生理的な反応であるそれは、魔法の発生を感知してウェンディの体を改造するこのベッドと組み合わさることで、凶悪な魔法道具へと変身していた。

 感じて息を乱し、呼吸を激しくするほどに体を敏感に作り替えていく。

 

「感じすぎて魔法を使うことができなくなっちゃうかもしれないけど、大丈夫。ウェンディちゃんはずっと僕が飼ってあげるからね」

「や、いや、放して! 放し、んんっ!!」

 

 ペドリアの言葉に、ウェンディは今まで以上に体を暴れさせた。魔法を使う上で大切なのは信じる心だといわれている。つまり裏を返せば、それだけ心の影響を受けやすいということだ。もしも、魔法を使うことに苦痛を感じるようなトラウマを負ってしまえば、魔法は使えなくなる。かつて、一人のS級魔導士が、魔力を失いかけたように。

 

 魔法が使えなくなる。今はいない大切なグランディーネから教わった、今となっては唯一のつながりである滅竜魔法が使えなくなる。

 それはウェンディにとって、今現実に起こっていること以上の恐怖心を抱かせた。だが、その反抗は、潜在的な攻撃魔法である滅竜魔法を無意識に操ってしまい、ウェンディは一層敏感になった体から湧き上がった感覚に声を上げた。

 

「ほらほら、暴れちゃだめだよ。大切なシャルルちゃんが、大変な目にあっちゃうよ? もっとも、ウェンディちゃんが自分から淫乱な女の子になりたくてわざとやってるのなら、大歓迎だけどね」

「ぁっ。ちが、っんん!!」

 

 ペドリアの言葉に、一瞬反抗心を鎮めたウェンディだが、すぐに続けられた言葉を否定しようとして、反抗を取り戻し、結果ペドリアの目論見通りの痴態を演じた。

 

 

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