元々は書く予定なかったのですが、アニメ最終話の展開に書かずに居られなくなりました。バイのフェリドによる事案展開(失礼)からのその後の妄想展開です。
作中に独自解釈、独自設定などが含まれています。
世界の終焉を告げるラッパがまたも鳴り響いた。
5番目の天使が吹き鳴らしたラッパが蝗の王を世界に顕現しようとし、愚かなる人間たちはそれにすら手を伸ばして手に入れようとした。
それに対するために、2番目の天使がラッパを吹き鳴らして塩の柱を打ち立てる。
人間 対 吸血鬼
その結末を描くための決戦は、天使を手中に収めんとする愚か者たちの企図によって混沌とし、再び世界の破滅を招こうとしていた。
それを描いた者の一人、クルル・ツェペシは、自らの傍らに子である吸血鬼――以前に会ったときにはまだ未完だったのに、いつのまにやら完全な吸血鬼となっているミカエラとともに戦場に、いや、実験場に立っていた。
ミカエラが落ちた天使を――彼の家族である百夜優一郎を救おうと駆けだそうとし、クルルはハッと気が付いてその腕をとって、引き戻した。
瞬時、上から跳びかかってきた吸血鬼の腕を切り飛ばして迎撃。
吸血鬼の貴族の一人、第13位始祖、クローリー・ユースフォードだ。
片腕を切り飛ばされたにもかかわらず(強大な吸血鬼にはままあることだが)痛みを感じて怯む様子すらなく、クローリーは片腕ごと落ちた剣を残る手に持ち替えて戦意を示した。
だがその時には、すでに彼の奇襲は終わっており、クローリーの背中に飛びついたクルルは、その矮躯からは想像もできない怪力をもってクローリーの首を捻じ曲げた。
ゴキリと、頸椎が外れ、骨が折れる音が響き、脳からの伝達が途絶えた体がドサリと倒れる。
こんな事態に陥る前、鬼呪装備を携えた人間たちの奇襲をものともせずに跳ね飛ばした強大なる貴族の吸血鬼は、第3位始祖の力の前に敢え無く地に堕ち、
「焦ったね、女王様。きれいなお首がお留守だよ」
瞬間、着地したクルルの背後に現れたもう一体の吸血鬼が、彼女の剥き出しの首筋に噛みついた。
「き、貴様ッ!!!」
油断、とは言えまい。クルルにとっても今の実験場の状態は想定を超えていた。そこにきての始祖二体の連続奇襲だ。
クルルは自身の首に食らいつく者を引き剥がそうとその顔に爪を立てる。
「—―――っっ」
だが、急激に失われる血とともに、力が奪われていく。
もはや振り払うには手遅れだ。
自身の名を叫ぶ声が耳に届き、前を見た。
たった一人の家族を助けるためだけに残る全てを賭けようとしていたはずの子が自分を見ていた。
以前の、人であったころの名残である青い瞳ではなく、吸血鬼の証である紅い瞳。
それがまるでクルルを心配するかのようになっており――――クルルは口を開いた。
背後の吸血鬼に言葉を聞かれないように声に出さずに告げた。
ミカエラはクルルの音無き言葉を理解したのか、逡巡に揺れる瞳に決意を宿すと、迷いを振り払って駆けて行った。
ただ一人の家族のために人の血を吸うことを拒んでいた吸血鬼嫌いの子供。
その彼がまさか、自分のために、家族の所に駆けて行くことを逡巡するとは。
その行方を見つめ続けることも、もはや限界だ。
失われていく力とともに、今度は意識が遠のいていく。クルルを逃さないように体に回された腕が、抱きしめるようにきつくしまる。
ミカエラには決して見せないように取り繕っていた表情が苦悶に歪み――――クルルは意識を手放した。
ガクリと崩折れるクルル。吸血鬼はゆっくりと力を抜いてクルルの体を地に落とした。
先ほど首の骨を折られて倒れたクローリーが起き上がる。
吸血鬼の中でも高位の貴族であるクローリーは、首の骨を折られた程度では、首を落とされた程度ではすぐには死なない。
多少意識が飛んで、すぐには起き上がれなかったが、クローリーは折れ曲がった首を強引に元に戻してから、吸血鬼の女王を倒した反逆者に声をかけた。
二言三言、言葉を交わしてから、反逆者は、意識のないクルルの片腕を掴んで宙に吊り上げた。
「吸血鬼の諸君」
迷走と混沌とに戸惑っていた吸血鬼たちに大声で呼びかけた。
「今ここで。クルル・ツェペシによる重大な裏切り行為が発覚した! 終わりのセラフ研究への関与だ」
白銀の吸血鬼の言葉に困惑が広がる。
裏切り者として晒されているのは日本における吸血鬼たちの女王、第3位始祖、クルル・ツェペシだ。
それを告げているのは変わり者で名高い始祖の一人。
だがこの場に来ることを先導したのは女王であり、彼女は明らかに人間の一人と何らかの取引を行っていた節がある。
吸血鬼にとって人間とは家畜だ。
吸血鬼たちにとって唯一の欲望の対象である血を供するためだけの存在。女王はそんな“物”の一人をあろうことか吸血鬼にして、傍においていた。それもまた疑心の種の一つ。
そこにきてこれだ。
これは“終わりのセラフ研究”。かつて世界を滅ぼした破滅の研究であり、吸血鬼ですらも危惧する悍ましい研究だ。
この研究はかつて上位始祖会によって殲滅が決定され、クルルがその実験を壊滅させた。実験体は一つ残らず葬り去ったはずなのだ。にもかかわらず、その実験はまだこうして続けられている。それもクルルが道を示したまさにその場所で。
吸血鬼に対する明確なる裏切り。
「よって、この場は第7位始祖、フェリド・バートリーが引き継ぐ――――――人間どもを殺せッ!」
フェリドは凶悪に顔を歪めて吸血鬼たちに命じた。
名古屋決戦。
吸血鬼たちにとっても、人間たちにとっても、今日という日をもって決着を望んだはずの戦いは、人間、吸血鬼、双方におけるいくつかの裏切りと離反によってうやむやとなった。
人間側における被害多数(内数十名が人間による“終わりのセラフ実験”による犠牲者)。柊シノア隊5名および鳴海真琴隊一名の離脱。
吸血鬼側における被害多数(貴族を含め人間側による奇襲を受けて討ち死、あるいは“終わりのセラフ実験”による犠牲者)。百夜ミカエラ離反。—――――第7位始祖フェリド・バートリーにより、裏切りの発覚した第3位始祖、クルル・ツェペシ捕縛。
********
地下都市サングィネム、そこにある吸血鬼たちの城。その最奥にしつらえられた玉座の上に、クルル・ツェペシは拘束されていた。彼女のための玉座。第3位始祖としての誇りを表す玉座の上で、以前の彼女と同じ、黒を基調としたドレス風の衣服に身を包んだままで。
太腿を露わにしたミニスカートと肩口は剥き出しにした上衣。並よりもさらにささやかで膨らみのほとんどない胸元は倒錯的な扇情感を煽るかのようなしつらえでかろうじて隠されている。
だが、そこはもはや女王のための玉座とは言えないだろう。
彼女はその上で、両手を頭上で拘束され、両脚はM字に開脚することを強いられている。
元々扇情的なミニスカートは、それによって彼女の下半身を隠しておらず、彼女の秘部をかろうじて隠す紐のような下着が露わになっている。
140㎝ほどしかない低身長とピンクのツインテールが相俟って幼く見えるが、クルル・ツェペシは見た目通りの年齢ではない。
始祖の血を受け継ぐ貴族の中でも、上位とされる第3位始祖と呼ばれる、永き時を生きた吸血鬼の女王だ。
吸血鬼はただでさえ人間の7倍もの力を有しているとされるが、貴族はそんな一般の吸血鬼ですら容易く屠るだけの力を有した圧倒的な存在なのだ。
だが、今のクルルは囚われの存在。
彼女の自由を束縛している拘束具は、人間が吸血鬼を捉えるために研鑽を積み重ねた成果と呼べるものと同等のものであり、フェリドによって血を吸われて力の衰えた今のクルルでは破壊することはできそうにない。
名古屋決戦の後、意識を失った状態で拘束されたクルルは、意識を取り戻してそのことを確認し、
「やぁクルル。起きたんだね。椅子の座り心地はどうだい?」
それを待っていたかのように、明るさを装った蛇のような粘着質の声であいさつをかけられた。
「貴様……」
陽気な風にも聞こえる声の主は銀髪の吸血鬼、フェリドだ。
クルルは抗吸血呪の影響と吸血を受けた影響とで重怠そうにフェリドをにらんだ。それでなくとも苦々しく思っていた相手だ。
今や感情は憎悪にまでなっていると言っていいだろう。
「あはは~。そんな状態なのに、いや、そんな姿こそが実によく似合って綺麗だねぇ、女王様」
以前と同じ、いやらしく笑うフェリドは皮肉気に玉座の主に賛辞を告げた。無論のこと、それはクルルの誇りを責めるための意味以外ありえず、クルルは牙を剥いて睨んだ。
だがもとよりそんな程度で余裕の態度を崩すフェリドではなく、まして今の状態では怯む理由などありはしない。
「あっ、そうそう。君が気を失っている間に君の上位始祖としての権限は凍結。時機に剥奪される予定さ、クルル。つまり君はもう女王でもなんでもない。ただの吸血鬼、ってことだね」
「ッッ―――――」
計画が失敗した以上、分かっていたことだが、それをこの男に告げられることは、そしてその事実そのものが、今の弱ったクルルには思いのほか堪えていた。
動揺する心。それを女王としての矜持と吸血鬼の自制心とで抑えつけ、息を整えた。
「それで? 今はお前が玉座の主、というわけか、フェリド?」
わずかな間で、心を整えたクルルに、そして囚われの姿こそがなお一層美しいその姿を見て、フェリドはにぃと笑った。
「まぁ、暫定的には、ね。いずれは君と同じ、あぁ、元同格だった第3位始祖のレスト・カー様がここを治めに来る予定だよ」
「ちっ」
第3位始祖、レスト・カー。クルルと同じ格を持つ貴族であり、彼女より200歳ほど若い吸血鬼。だがその力はクルルすらも上回っており、同格であったクルルの排斥を狙っていた存在。
そんな彼がこちらに来るということは、もはやクルルの居場所はないということだろう。
「でも安心してクルル。君は僕の物だ。言ったろ? 僕は君を愛しているんだって」
ただ一つ。この男の愛玩具としての居場所以外には。
それでもなお、クルルは矜持にかけて牙を剥いて笑い飛ばした。
「はっ! 笑わせるなフェリド・バートリー。…………ミカエラと優はどうした?」
気にかかるのは、あの場で最優先で狙われたはずの二人の天使。
果たしてあの子は、大切な大切な家族を救えたのか?
自身のことよりも他を気にかけたクルルの問いに、フェリドは肩を竦めた。
「逃げたよ」
事実だ。
あの時、人間の殲滅を命じはしたものの、結局名古屋の拠点は人間によって荒らされ、殲滅はできなかった。
いくらかの吸血鬼は捕まったらしい。
フェリドの答えにクルルは顔には出さずに少しだけ安堵した。
自分の“終わりのセラフ”がまだ人間の手にも、吸血鬼たちの手にも落ちていないのならばまだ可能性は残されている。
クルルがそんな僅かな望みを抱いているのを見て取り、フェリドは喜ばしげに口を吊り上げた。
「嬉しそうだね、クルル。そんなにミカちゃんが愛おしいのかい? 妬けちゃうなぁ」
フェリドはクルルの剥き出しの首筋に手を当て、愛おしそうに撫でた。
滑らかな肌。かつては拒絶され手にはいることなどできなかったそれが、今では彼の物だ。
クルルの肌をしばしうっとりと撫で回した。
彼女の肌に牙を突き立てたのは彼が初めてではない。
初めてはミカエラだ。
クルルが彼女に永遠を与え、そして彼の家族とやらがミカエラを完全にした。
フェリドはクルルの首元に唇を宛がい、舌を這わせた。
「――――っっ」
ビクンと震えそうになる体をクルルは無理やり抑え込み、嫌悪の眼差しで睨んだ。
できることならばこの首を縊って、捩じ切ってやりたい。
だがかろうじて回復してきた程度の今のクルルでは、抗吸血呪の鎖の呪縛を破ることはできない。
クルルの首筋を、ざらつく舌が2度3度と上下し、フェリドはかぁっと口を開いた。
クルルの肌に、フェリドの牙が突き刺さり、溢れる血がフェリドに奪われていく。
名古屋以来二度目の吸血。
だが今回は、あの時とは違い、クルルを無力化するための吸血ではない。
彼女の甘露な血を愉しむために、ゆっくりと、まるでワインをテイストするかのように吸っていた。
「!!」
だけではなく、フェリドの手がクルルの平らな胸に伸びた。
ツツツと、肌を撫で、服を乗り越え、ぽつりと突き出た突起に至る。
フェリドはそのぽっちをクリクリと指で弄ぶ。
吸血によって防御を崩されているクルルの体が、今度こそビクンと跳ねた。
その反応にフェリドは突き立てていた牙を抜いて口元に笑みを浮かべると、傷口から溢れる血を舌で掬い取った。
そして今度は牙を使わずに噛みついた。
「くっ!」
肌には喰い込まない鈍い痛み。肌を甘噛し、傷口から漏れでる血を口内で弄ぶ。そして胸に伸ばされた指は、きゅむと小さな乳首を抓んでくりくりと弄ぶ。
堪えきれずクルルの喉から音が漏れ、クルルは屈辱にカッと顔を赤らめた。
フェリドは首筋から顔を離し、赤らんだクルルの顔を正面からとらえてニヤリと笑った。
「いいね、クルル。君のそんな顔が見れるなんて。ほんっとうに興奮するよ!」
変態的な執着。
クルルはフェリドが愛しているのはクルルが持っている権力だとかつて評していたが、フェリドにしてみればそれは大きな勘違いだ。
フェリドはクルル自身も愛している。
彼女の美しい容姿も。誇り高い上位始祖としての力も。女王としての傲慢な性格も。
すべてを剥ぎとって裸に剥いてぐちゃぐちゃにしてやりたいほどに、フェリドはクルルを愛している。
彼女の彼女足らしめている全てを砕いて、屈服させ、屈辱に顔を歪める愛らしい姿を見たい。
「……殺す。縊り殺してやるっ! フェリド・バートリー!!」
クルルがフェリドに向ける憎悪の顔に、フェリドはゾクゾクとしたものを感じていた。
地に落ちた女王が、それでも汚された矜持のため、怒りに顔を歪める。
どこまでも愛おしく――――
「は、はは、あっはっは!! 流石だよ、女王様!!」
――――徹底的に壊してしまいたくなる。
ブヅリ。フェリドは自らの唇を噛みきった。血が溢れ、口内に広がる。
突然のフェリドの行動にクルルは驚き、その意図を探ろうし…………
「貴様……まさかっ!?」
気付いた。
その行為はかつて自分が嫌がるミカエラに対して行った行為――――血の供与だ。
「やっ、やめっ!! ッ゛グッ!!!!」
再びフェリドの牙がクルルの肌に突き立てられた。
だが今度のそれは血を奪うためではなく与えるため。
吸血鬼が人に対してそれを行えば、人を吸血鬼に変える、つまり子の制作だ、
だが吸血鬼に対して行うのは意味が異なる。
「ぐっ、は、離せ!! よせっ!! や、あぁっ!!」
吸血鬼の子は、親の影響を強く受ける。それは能力であったり格であったり、支配であったり。
血を奪われたことでさえ、クルルの格は著しく傷つけられた。そしてさらに血を与えられたりすれば、もはやクルルの格はフェリドに対して上に立つことなどできなくなってしまう。
「あ、あ、あ…………」
クルルにとって異物となる血が体内に入り、彼女の体を侵していく。
クルルは目を見開いた。
並みの吸血鬼にしてみれば遥かに純度の高い、けれど本来のクルルからしてみれば格の低い貴族の血。
自身の血を奪われたということだけでなく、血を与えられたという事実が、重みをともなってクルルを変えていく。
女王から格下の貴族の所有物へ。
それは本来の在り方とは逆行する、けれども血によって刻まれた業。
「んは。生まれかわった気分はどうだい、クルル?」
名実ともに、女王としてのクルルは死んだ。今の彼女は、フェリドの血に侵された彼の物だ。
始祖の血を濃く受け継いでいるという事実は変わらなくとも、敗北の証を刻み込まれたという事実が、クルルは彼の所有物だということを宿命付けてしまった。
「~~~~…………」
――――もはや自分は女王ではない。この男の玩具なのだ。—―――
その事実は、クルルの矜持に罅を入れた。
クルルは悔しげに噛みしめて、
もちろん万全の状態での戦闘能力を比べれば、クルルの血を吸って力を増した今のフェリドでも、クルルには及ばない。だが、もはやそんな結末は訪れない。
二人の格の優劣において、クルルはフェリドの下になってしまったのだ。
フェリドが見下す視線は嗜虐的だった。
まだまだ、彼女の矜持に入れた罅程度では不十分だ。
フェリドはパンパンと手を叩いて合図を送った。その合図に応じて、玉座の間に幾人もの吸血鬼が姿を見せた。
そして玉座に開脚して拘束される憐れなかつての女王様――裏切りの者の姿を見て、困惑したような表情を浮かべた。
「ふぇ、フェリドさま…………」
いくら第7位始祖であるフェリドが裏切り者だと宣言したからといって、彼ら一般の吸血鬼にとって貴族自体が格別の存在たちだ。
まして僅か前まで、永きにわたって君臨してきた女王様なのだ。
すぐには刻み込まれた畏れを忘れることなどできようはずもない。
だが、そんな変革をこそ望むフェリドは、一般吸血鬼たちの戸惑いなど気にした風もなく大仰に腕を広げた。
「諸君。ここに居るクルル・ツェペシは上位始祖会の決定により、貴族の身分を剥奪された。今ここに居るのはただの吸血鬼、いや、虜囚となった裏切り者だ」
フェリドにとって、クルルはすでに女王様ではなくなった。
だがまだだ。
まだ彼女は彼ら吸血鬼にとって、畏怖すべき対象なのだ。
他者から集められる畏怖は彼女にとってすがるべき矜持となり、彼女を彼女足らしめている邪魔なものに他ならない。
「裏切りには罰が必要だ。君たちの手でクルルに報いを与えるのだ!」
彼ら自身に、そして何よりもクルル自身に、彼女は全ての吸血鬼たちの奴隷なのだということを、刻み付けてやらなければならない。
「彼女をただの小娘にし、吸血鬼として恥ずべき姿を晒させた者に――人間の女のようにイかせた者たちには、彼女の血を吸う権利をやろう!」
「なっ!?」
フェリドの宣言に、クルルは目を剥いて驚愕した。
吸血鬼たちにも動揺が広がり、互いに顔を見合わせた。
吸血鬼にとって、より上位の吸血鬼の血というものは、甘露のようなものだ。
人間の血以上の味を秘め、自らの力を増すという意味を持つ、抗い難い珠玉の雫。
まして上位始祖のものともなれば、一滴の血を飲むことすらも許されないことだ。
「さあ。裏切り者の女王様を徹底的に辱しめてやれっ!」
戸惑いが消えれば、フェリドの扇動に否を唱える者などおらず、クルルの幼い体に、吸血鬼たちの手が一斉に群がった。
「や、やめろっ!!! ひっ!!」
ある者は剥きやすいクルルのドレスを破り捨て、ある者は乱暴に乳首に爪を立て、ある者は下着を引き千切って秘所へと指を伸ばした。
他にも脇や首筋や尻穴や臍、手が届くかぎりのありとあらゆる場所を吸血鬼たちは責め始めた。
吸血鬼は血に対するもの以外に欲望がないといわれている。
だがそんなことはない。
吸血鬼は上位始祖会という一部の特別階級を設けているし、人間を家畜と蔑む。
それは他者よりも、他種族よりも自らが優越だという自尊心があるからであり、それは欲望と密接にかかわる。
事実、フェリドはクルルに対して、そして権力に対して明らかな欲望を持っているし、他の吸血鬼たちとて同様だ。
そしてとびっきりの獲物が自ら目の前に転がり落ちてきたというのならば、そしてそれを上の者が認めたと言うのならば、ためらう理由など最早なかった。
「くっ! キサ、ぁっ! 貴様らごときが、私に、んくっ! ふれ、アァッ!!」
貴族ですらない吸血鬼たちは容赦なくクルルを責め立てる。
それを防ぐ術は今のクルルにはなく、ただ溢れ出そうになる喘ぎの声を抑え、口先ばかりの威圧をするしかない。
そんなモノも、吸血鬼たちの後ろにフェリドが控えている以上、なんの効果ももたらさない。
「おいおい女王様の乳首が尖ってるぜ!」
「ははは。女王様はSだと思ってたけど、案外こういうのが好きだったんだな!」
「家畜どもは、たしかこっちの下の口を弄るもんだったよな。おっ! キュウキュウ締め付けてくるぜ!」
「~~~~~ッッッ!!!!」
励起した乳首を乱雑に扱われ、無毛のヴァギナに指が突っ込まれて激しく擦られ、クルルは必死に歯を噛みしめて口を閉ざした。
口を開けば、さらなる痴態を晒してしまいそうになる。
すでにフェリド・バートリーの玩具に堕ちてしまったクルルだが、それでも吸血鬼の女王として、これ以上は許せなかった。
フェリドの命令通り、クルルをイかせようと責める吸血鬼たち。
必死に屈辱を耐えるクルル。
そんなクルルの背後耳元に、フェリドがいつもと変わらぬにやけ顔を近づけた。
「必死に耐える姿は可愛いけど、なかなかみっともない姿だよ、クルル」
「~~~ッッ。だ、まれっ!!」
言葉による挑発。クルルは歯を食いしばりながら、射殺さんばかりの視線を向けた。
今の自分の状態が見苦しいことなど、クルル自身が一番痛感し、恥じているのだ。
なによりも悔しいのは、フェリドの言葉が、耳にかかる吐息が、クルルにとって心地よく、ぞくぞくとした悦びが湧き上がってきてしまうことだ。
どれだけ耐えようと、取り繕おうと、すでにクルルの体はフェリドをご主人様と認めてしまっている。
それこそが何よりもクルルの精神を苛み、矜持の罅を広げていた。
そうしている間にも、吸血鬼たちの手淫は苛烈になっていき、クルルは背を仰け反らせ、口の端から涎をあふれさせ、それでも嬌声を堪えて歯を食いしばった。
そしてそんな努力は
「気持ちいいだろう、クルル?—――――認めて堕ちろ、クルル・ツェペシ」
その言葉で
「~~~~ッッ!!? アッ!? ああああぁっ~~~~ッッ!!!!!!」
崩壊した。
クルルの蜜壺から愛液が潮のように噴き出し、股間に顔を近づけていた吸血鬼たちを濡らした。小さな体がビクンビクンっと痙攣をおこしたかのように跳ね、クルルの喉から絶叫のような嬌声が迸る。
「ふふふ。あーあ、イっちゃったねぇ。貴族でもないただの吸血鬼にイかされた気分はどうだい、クルル?」
「っぅ、ふく。はぁ、はぁ…………」
ご主人様からの言葉一つで、クルルの体は耐えることを止めて、痴態を演じてしまった。
クルルは顔を俯かせて荒い息を吐き、恥辱に顔を赤らめた。唇をわななかせてちらりと顔を上げたクルルは、そこにあった顔は女王に畏怖を抱く眼差しなどではなかった。
「おいおい、女王様が家畜みたいにイったぜ」
「ほーんと。クルル様はもう俺たちの女王様なんかじゃねぇんだな」
人間と同じく、自らの欲を、感覚を制御できずに絶頂した。
それは一般の吸血鬼が、貴族に、上位始祖であるクルルに抱いていた畏怖を払拭するには十分であった。
「フェリドさまぁ~。これで血を吸ってもいいんですよね?」
「ああ、うん。僕は約束は守るからね。クルルをイかせた君たちには彼女の血を吸う権利をあげよう。死なない程度に裏切り者の女王様の血を味わうといい」
その言葉に、クルルは喉を引き攣らせた。
「くっ、くるなっ! わ、私を誰だと思ってるっ!」
すでに格による威嚇など、なんの効果もないことは分かっていたはずだ。
だがそれでも、クルルにはそれしかできることはなく、その姿には、永き時を生きた吸血鬼の女王であった威厳などありはしなかった。
ただ陵辱に怯える幼き少女の姿であった。
吸血鬼たちはクルルの幼身に群がり、各々牙を突き立てた。
「あっ! あっ! アァアアアッ!!!!」
ある者は微かに膨らむ胸に、ある者は愛液に濡れる内腿に、ある者は力の発揮できない細い二の腕に、脇腹に、首筋に、喰らいつき、血を啜った。
クルルの体から尊い血が奪われていき、力が失われていく。
フェリドの命じた通り、吸血鬼たちの啜血はクルルの命を脅かすところまではいかなかった。
かつてフェリドが行ったように、クルルの意識を消失させるほどでもなかった。
僅かに回復してきた力までも奪われたクルルは、ピクピクと体を微痙攣させていた。
フェリドどころか、一般の吸血鬼程度にまで血を奪われた。
クルルの矜持はもはやガタガタであり、
「さぁ、仕上げだ」
それでもまだ彼女にとっての絶望は終わってはいなかった。
フェリドの言葉に、ゆるゆると顔を上げ、力ない瞳を向けた。
「クルル・ツェペシを、奴隷に落とせ」
吸血鬼たちが唇を噛みちぎり、血を滴らせた。
「ひっ!! ゃ、やめ―――――――ッッッ!!!!!」
奪われた血の代わりに血が与えられる。
次々とクルルの注ぎ込まれる血に、クルルの体は屈服していった。
********
二か月後
「はぁっ! あっ! あっ!! あくっ! あっ!!!」
玉座の上で裸に剥かれたクルルの上に吸血鬼が乗りかかり、腰を激しく打ち付けていた。
これといって特筆すべき肩書などない一般の吸血鬼が、クルルのヴァギナに肉棒を鎮めてストロークを繰り返す。
「くっ、おっ。ダすぞ、クルルさま!」
「あっ、あっ、あ゛あ゛~~~~ッッ!!!!」
どっぴゅると、白濁の熱液がクルルの膣内に吐き出された。
かつての女王様は、今や吸血鬼たちの奴隷へと転落していた。
フェリドに屈服したその日から、次々に吸血鬼たちに血を奪われ、代わりに血を与えられ、2か月が経つ頃には、クルルの体は地下都市に住まう全ての吸血鬼の血に屈服させられていた。
だが、それでもクルルの血には価値があった。
血に屈服しているとはいえ、クルル自身の血は純度の高い、上位始祖の血だ。
その血を吸う機会が得られる代償が、奴隷に屈辱を与えることだというのなら、吸血鬼たちは多少の苦労など喜んで行っていった。
そこに
一巡した後、クルルの血を吸う条件が少し変わった。
女の吸血鬼は、クルルをイかせることのままだが、男の吸血鬼たちはクルルの膣内にチンポを突っ込んで射精すること。
吸血鬼たちは子宮に子を宿すことはない。同族においてそのような生殖機能はない。
吸血鬼たちが子を作るためには、かつてクルルがしたように、人間に血を与えるのが方法だ。
今もクルルの膣内に命の宿らない射精をした吸血鬼は、クルルの首筋に喰らいつき、適度に血を味わってその場を後にした。
幾度その膣に精を受けただろう。
幾百度クルルは絶頂し、潮を吹いただろう。
かつての玉座には、もはやすっかりとクルルの愛液が染み込んでいた。
「やぁクルル。久しぶりだね。うん。随分と可愛らしい姿になったじゃないか」
陽気な声がクルルの耳に届いた。
「…………フェリドか」
クルルは力ない瞳をフェリドに向けた。
あれ以来、フェリドがクルルの下を訪れたことはなかった。
彼はクルルのすべてを欲するといったことをほざいていたが、やはり権力こそが目的であり、クルル自身を貶め、辱めるだけなのかと思うこともあったのだが、やはりこの男の思考を読むことなどできはしなかった。
この日、訪れたフェリドは、相変わらずの笑顔のままで、その後ろには家畜が――人間たちがぞろぞろとついてきていた。
「今日はね、クルル。君に家畜の繁殖のための教材になってもらいに来たんだ」
「………………」
下は精通したかしてないかくらいの年頃の子供で、上は世界崩壊時に死ななかったギリギリの年で、今は性欲旺盛な年頃の男。
「さて人間の諸君。ここに見本となる奴隷がある。君たちにはこれから、子供をつくるためのやり方を学んでもらう」
奴隷。
そう、今のクルルの位は、貴族どころか吸血鬼ですらない。
吸血鬼たちの下、
それがかつての吸血鬼たちの女王の、吸血鬼たちを裏切った者の末路だった。
よりにもよって家畜と蔑む人間にまで、自分の痴態が見られる――いや、見学されるなど、どれほどクルルを貶めるというのだろう。
フェリドの言葉に血の気が引き、絶句しているクルル。
そんな彼女の秘所に、フェリドは何気ないふうに手を伸ばして無遠慮に割れ目に指を入れた。
「んひぃっ!!」
「ここが、君たちのチンポを入れるためのところだよ」
「あっ! あっ! こ、こす、ってっ、ひぎっ!!」
この2か月でフェリドの体は肉奴隷としての性感を定着させられており、家畜たちに見られながらもクルルはその屈辱を伴う快楽から逃れることはできなかった。
「今は指で手本を見せてるけど、入れたらこうやって前後に動かして中を擦る、そうすれば…………」
「あくっ! ひっ! あっ! あっ! あっ! あぁぁぁぁ~~~~ッッ!!!!」
手本としての手マンで、クルルは家畜たちの目の前で絶叫を上げて果てた。
「どうだいクルル。家畜に見られながらイった気分は?」
「く、フェ、リド……どこまで、私をコケにすればッ」
雑魚のような吸血鬼たちに体を弄られ、屈服させられただけではなく、家畜にすらこんな風な姿を見られる。
もはや女王としての威厳どころか、吸血鬼としての尊厳すらも奪われていた。
恥辱の怒りに震えてフェリドを睨むクルルだが、そこに恐怖を感じさせるだけの力など残されてはいなかった。
そして幼い少女の外見の吸血鬼の、そんなあられもない姿を見せられた少年たちは、その本能からごくりと唾を飲んだ。
フェリドはクルルの張りぼての怒りと、少年たちの劣情の欲に、ニヤリと笑い、少年たちに振り向いた。
「さぁ! 君たちも、彼女を使って練習してみるといい! ほらっ、まずはそこの君からだ」
フェリドは芝居がかった口調で少年たちに言うと、その中の最も年若く見える少年を指名した。
指名された少年はびくっとおののいた。
精通を済ませている少年は、クルルの可憐な容貌とあられもない痴態に劣情を抱きはした。
だが幼く見えるクルルでも、やはり彼女は吸血鬼であり、根源的な恐怖は人間である少年にとって消し難かった。一方で、その欲望を肯定して「やれ」と命じてくるのもまた吸血鬼。
自らの欲望に従っても、従わなくても、待っているのは吸血鬼からの怒り。
吸血鬼よりも圧倒的に弱い人間である少年には、どちらを選ぶことも恐怖だった。
そんな少年の背を押したのもまた吸血鬼だった。
一人は全裸で拘束され、淫らな声を上げた少女の吸血鬼。一人はにやにやと笑い、欲望を肯定してくれた吸血鬼。
どちらを選ぶかなど、決まっていた。
「や、やめろっ! 私をっ、私はっ!! ひんっ!」
少年の小さな指がおっかなびっくりとクルルの小さな秘所に触れ、フェリドの示したように愛液に濡れる割れ目に指を入れた。
「んっ……! んっ!! んんっ!!」
戸惑いながらの、ぎこちない少年の指ですらクルルの体は、本人の制御を外れて快楽で弾けており、押し殺した声と愛液の水音が淫らな音色を奏でていた。
「いいねぇ、クルル。人間の子供なんかにいいようにおもちゃにされるなんて、どんな気分だい?」
――うるさい、うるさい、うるさいっ!――
「くっ………んんッ!! んく、はっ!! ん、あぁぁぁッッ!!!!」
耳元で吹き付けるようにささやかれる言葉が脳に響くごとにクルルの神経はむき出しにされていくようで、クルルは精通したての子供の手マンで絶頂した。
「はぁ、あっ! はくっ! あッッ!!!」
少年は恐怖と、それを上回る劣情の本能に突き動かされ、クルルが絶頂しても手を止めることなく指を動かし続けた。
頭の後ろがビリビリと痺れ、体全体にそれが広がって雷光が弾ける。
「あ~あ、家畜にまでイかされちゃったねぇ、クルル」
「――――ッ。フェリ、ドぉっ!!」
ビクビクと体の痙攣が止まらない。
クルルの視線は、それが仇敵を睨み付けるものなのか、ご主人様に懇願しているのか、もはや自身ですら分からなくなってきており、
「アッ! あっ!! あぁぁぁ~~~~ッッ!!!!」
クルルの秘所から潮が吹きあがり、少年の顔に直撃して濡らした。
「うん。いいね、君。それじゃあ次は、君たちのしたいように、その穴を使うといいよ。たとえば――――君たちのムズムズしている下半身のソレを入れたりね」
クルルはなにも言うことができなくなっていた。
絶頂の余韻で呼吸が荒れていたのもあるし、ご主人様の言葉を否定することができないという理由もあるし、けれども、本当の理由は、
「じゃあ、あとは愉しんでね。クルルも、家畜に犯されて愉しむといいよ」
それが愉悦なのだと、体が、血が、覚えてしまっていたからだ。
たとえそれをもたらすものが、吸血鬼が蔑む
後日、終わりのセラフの章に順番を編集します。
1/9 順番を編集しました。