※この作品はR-18です。

散花凌乱   作:バルボロッサ

42 / 59
今回はどれくらいの人が知っているのでしょうか、結構昔のタイトル、『探偵学園Q』から“雪平桜子”ちゃんの登場です。
探偵学園Q自体は漫画からアニメ、ドラマにまでなった作品ですが、桜子ちゃんは作中あまり活躍の場面がなかったような。経歴とか見るともっとストーリーがたてられそうなのに…………
金田一少年の事件簿で有名な同作者さんですが、こちらの方も結構好きでした。
ヒロインのメグちゃんとか(パンチラシーン多めで)可愛かったのですが、シリーズ後の後日談(プレミアム)で出てきた桜子ちゃんがすごく可愛かったので今回は彼女にご登場いただきました。
陵辱、催眠といった要素があります。嫌いな方はご注意ください。




雪平桜子(探偵学園Q)

 

 生活感のない無機的な室内に一脚だけ置かれた椅子の上に、1人の少女が座っていた。

 肩口にも届かない短めの黒髪を額で左右に髪留めした少女。

 

「ぅ…………ぅん」

 

 ――――頭が重い。

 寝すぎたときのような鈍い頭痛と全身に圧し掛かる気怠さを感じながら雪平桜子は目を覚ました。

 目に入ってくる光は、明順応が追い付かずに過剰な刺激となり、反射的に桜子は掌をかざして光を遮ろうとした。

 

「? ……えっ!!?」

 

 だがそれはできなかった。

 持ち上げようとした右腕は動かない。それはこの異様な気怠さのせいだけではないのは、手首に感じた拘束縄の感触から察知できた。

 思考が遅まきながら一気に加速して現状を把握していく。

 

 椅子の上で座った状態に固定されている自分の体。

 衣服はいつも団探偵学園に行く際に着用している制服だが、左右の脚はそれぞれ椅子の脚に括り付けられており、両腕は後ろに回されて手錠で拘束されている。

 

「な、なによこれっ!!? ――っぅ!」

 

 全身に圧し掛かるこの異様な気怠さにも覚えがあった。

 睡眠薬の後遺症だ。

 

 ぼやける思考を無理やりに働かせると頭は嫌がるように鈍い痛みを発するが、それを強引に無視して記憶を遡ってみた。

 現状の確認は探偵を志すものとしてなによりも重要なことだ。

 

 

 

 思い出せる限りでは、たしか自分は学園に届いた依頼の中から、Aクラスの課題として割り振られたとある事件の解決のために某県へと赴いていたはずだ。

 事件自体は行方不明者の捜索で…………その事件を自分は解決した。

 不自然なところがいくつかある事件であったが、証拠や論理の破綻はなく、どうやら第三者による事件教唆の疑いまで見つけることができた。

 そしてその事件の後、その第三者の存在について警察と話をするため、勧められた車に乗って…………車内で……

 

「っ。最悪……」

 

 運転手の男から勧められたペットボトルに手を付け、飲んだ。

 それ以降の記憶がない。

 そこまで思考が及ぶと、桜子はギシリと歯を噛んで己の迂闊さを悟った。

 おそらくそのペットボトルに睡眠薬が仕込まれていたのだろう。

 

 後悔を手早く済ませてこの後を考えようとしていたところ、キィと音を立てて扉が開き、見覚えのない男が入ってきた。 

 

「おや。目が覚めたかい?」

 

 敵か味方か。判別は早く、そして最悪だった。

 軽薄そうな顔つきにはにやにやとした笑みが浮かんでおり、拘束された状態の桜子の姿を見てその態度をとるということは、どう考えても敵――桜子をこのような状態にした側の人間ということだろう。

 

「ちょっと! 誰よアナタ! これを外しなさいッ!!」

「気が強いなまったく。団守彦の姪と聞いたが、ヤツの血縁にしては冷静さが足りないんじゃないか?」

「なっ!?」

 

 ――――秘密のはずの自分の経歴を知られている!!?――――

 

 その驚きは桜子に大きな警鐘を鳴らせた。

 探偵、団守彦の姪。その関係性は、彼に敵対する者に知られれば狙われかねないほどの危うさを秘めており、そして今、実際に襲われてしまっている。

 だがだからこそその情報はほとんど知られていない情報なのだ。

 

「俺が誰かって? これを見れば――—―分かるかな」

「!!?」

 

 男は左腕の袖をまくり上げ、桜子の前にかざした。

 桜子は一つの印をそこに認め、喉を引き攣らせた。

 小さな、しかし凶悪な意味合いをもつ印―――犯罪教唆組織、冥王星のメンバーの証がそこには刻まれていたのだ。

 日本で唯一拳銃の形態を許可された探偵、団守彦がかつて自らの片腕たる人物を失いながらも壊滅寸前にまで追い詰め、そしてここ最近再び活動を始めていると思われる犯罪者集団だ。

 

「冥王星!?」

「そのとーり! ようやく気付いたかい桜子ちゃん? 君がノロノロと事件を解決しようとしているのを横で見ていて何度も噴き出しそうになったよ」

 

 にやにやと嘲笑うような笑みを浮かべる男に、桜子はかっと頭に血を上らせた。

 自分が解決したのは紛れもなく一つの犯罪だった。それをまるで遊びか何かのように語るこの男の言葉。

 だがそれとは別のところで、桜子の頭脳は男を否定していた。

 

「冥王星は直接的な犯罪は犯さないはずっ!」

 

 冥王星は犯罪者集団ではあるが、その役割は犯罪を教唆すること。

 犯罪の芽のある人物を見つけ出して接触し、その芽を芽吹かせ、そして犯罪計画を提示する。

 彼らはあくまでも頭脳者集団を気取っており、直接手を下すことを禁じていると聞いたことがあった。

 だからこそ、桜子が解決した事件に関与しているというのはともかく、今現在、桜子を拉致監禁しているというのは従来の冥王星ではありえないことなのだ。

 

「あぁ~? あー、ああ、まあな」

 

 だがそんなルール、一応は知ってるが、といった程度にしか見えないそぶりを男は見せている。

 

「ケルベロスみたいな小心の小者はそうだろうよ。けどな、俺は違う」

 

 悦に入った芝居のように、男は大仰な身振りを交えて自己陶酔的に語り始めた。

 

「あいつは自分が手を汚さないところでしか、おつむを回せないんだよ。だいたい他のヤツを動かすなんて、どいつもこいつも間抜けしかいねえんだからリスクしかねえんだよ。優秀な俺様の頭脳によってたてられた秀逸な計画は、俺様の手によって描かれて初めて名画になるんだよ!」

 

 小者臭さの臭う男のセリフ。

 たしかケルベロスというのは、桜子にとって目の上のたんこぶであるQクラスのメンバーを手玉にとり、しかし応援に駆け付けた団先生や七海先生の協力により捕縛したことのある冥王星の一員。

 そのケルベロスは捕まるという失態こそ犯したものの、しばらくも経たない後に、七海先生の監視を受けた目の前で脱獄を果たしたというとびきり厄介な犯罪者だ。

 

「計画?」

「知りたいか?」

 

 そんな凄腕犯罪者と比べるとどうにも小者臭さのある目の前の男だが、現状では桜子は監禁されているという極めて危険かつ不利な状況だ。

 利用できるのならばと、少しでも会話からきっかけをつかみ取ろうと、陶酔している男が喋りたがるように水を傾けた。

 男は桜子の思惑を理解しているのか、自身の絶対的な優位性を確信しているからか、それとも単に増長漢のおしゃべりなだけか、ニヤリと顔を歪めると、とびっきりの悪意ある計画を告げた。

 

「団守彦の暗殺計画だよ」

「なっ!?」

 

 冥王星が方針転換したのか、この男の暴走独断かは分からない。

 けれどもDDSの生徒であり、団守彦の姪である桜子を拉致したということは、あながちブラフとは思えない。

 

 男はニヤニヤと悦を浮かべて桜子に歩み寄り、少女の顎を掴んで乱暴に顔を上げさせた。

 

「ヤロウのガードは固い。けどな、姪のお前になら少しは隙も見せんだろ?」

 

 悪党にいいように顔を触られる屈辱に顔を歪ませながらも、桜子は必死に頭を働かせた。

 

 ――暗殺計画。

 片桐先生や七海先生、本郷先生たちのいる探偵学園で?

 そんなはずない。

 なら、私を人質にしてオジサマをおびき寄せる……? …………違う!!!――

 

「私を拉致して、私に成りすました偽物を団探偵学園に潜り込ませるつもりね!」

 

 冥王星お得意の変装術。

 彼らは計画を授けた時に、その身近な者になりすまして計画の遂行を観察することがある。

 彼らの変装は巧妙で、構成員が身に刻んでいる冥王星の印も特殊な染料によって隠してしまうし、外見や仕草で判別することは極めて困難だという。

 見分けるためには推理するしかないのだが、対峙した瞬間に分かるようなものではあるまい。

 団守彦と近しい、姪である桜子に暗殺者を化かせれば、あるいは一瞬の隙をつくことは可能性として高い。

 

 怒りと危機感に男を睨みつけた桜子だが、男はその鬼気迫る表情に対して「ぶふっ!」と噴き出して笑った。

 

「はずれ~。余計な手が加われば加わるほど、俺様の計画は汚れていくんだ。偽物なんて仕込むはずねえだろ」

 

 げらげらと笑いながら桜子の推測を小ばかにする男。

 男の態度と自らの推理が笑い物にされていることに桜子は顔を赤くして睨みつけた。

 

 男はニヤニヤとした笑みも、桜子の顎を掴む手も離さずに、もう片方の手でポケットから何かを取り出した。

 

「俺様の仕込みはシンプルにして確実―――――お前がヤロウを仕留めるんだよ」

「…………はぁ? 何言ってんのよあんた?」

 

 告げられた言葉の、あまりにありえない内容に桜子は呆気にとられ、怒気を忘れてバカにしたような視線を男に向けた。

 男はふふんと桜子の反応を嘲笑うと、桜子の顎を片手でしっかりと固定して、先ほど取り出した何かを桜子の眼前に掲げた。

 

 シャランと、金のメッキに飾られた仰々しい懐中時計が目の前に垂らされる。

 

「な、なによ!?」

 

 にたにたとした笑みを浮かべる男。

 男のその姿は、そのおぞましい考え方とあいまって不気味に映り、桜子は内心の恐怖と動揺を押し隠して――それでも震える声は隠し切れず――敵を見据えた。

 

「—―――――――」

 

 男が言葉を紡ぐ。

 ギリシャ神話かなにかの神をワードに入れた詞だろうか。

 言葉とともに、時計が揺れる。

 

「なにして……ぇ……………」

 

 ユラリ、ゆらり、揺らりと。

 目に映る一つの時計が、2つ、3つ、4つと幻惑の数を増やしていく。

 桜子の意識の中に空白が生まれ、それが増えていく時計の数に合わせて広がっていく。

 先ほど聞いた詞が思い出せなくなり、桜子の瞳から光が消える。

 そして

 

「ひぎっ!!!?」

 

 おとずれたのは異常な感覚だった。

 

「な、なに!!? っあッッ!!!」

 

 茫洋とした感覚が消え、桜子の瞳に光が戻ると同時に、皮膚の感覚がまるで狂ったかのように上昇した。

 衣服の擦れる感覚が異常なほどに感じ取れる。

 

「ぅくぅッッ!! ひっ!!」

 

 身につけているブラの中で抱擁されている乳房が、愛撫を受けているかのように感じられ、励起した乳首が張り裂けんばかりに尖って擦れ、秘所から溢れる愛液が瞬く間に下着を濡らしていく。

 

「なによこれっ!! なんなのよっ!!!?」

 

 桜子はギシギシと腕の拘束をほどこうともがいたが、その思考はもはや先ほどまでの冷静な部分とはまるで別の方向性へと変化していた。

 男の行動や計画に対する疑問や推理から、自身の体に起こってしまった変化。こんな状況では感じるはずもない快楽についての疑問と動揺。

 

「ひぐッッッ!! 私の体になにをしたのよっ!! 放してッ! 放しなさいよっ!!!」

 

 自分の体のことなのに、起きていることが理解できない。

 腕が拘束されていることがもどかしい。

 股の間から溢れるワケノワカラナイものが恥ずかしい。

 

「ほ~、それじゃあお望み通り、解放してやるよ」

「ひぐっ! えっ!? なっ、えっ!!?」

 

 桜子のもがく様をニタニタと下劣な顔で観察していた男は、腕を拘束していた手錠に鍵を差し込んであっさりと解放した。

 突然の行動に理解できなかった桜子だが、微弱な電流でも流されているような感覚が全身を襲う中、その好機を逃さず、男を捕縛するために襲い掛かろうとして――――

 

「えっ!!!?」

 

 これまで以上の驚愕が立ち塞がった。

 桜子の手は、拘束から解放されたにも関わらず、ピクリとも動かすことができなかったのだ。

 

 —―どうなってるのよっ!!――

 

 見えはしないが手首の感触から、手錠は確かに外されたことは分かる。

 間違いなく自分の腕は自由のはずだ。

 なのに動かない。

 左右の手が、互いの手首を握って離さない。

 硬直しているというのではない。

 間違いなく、桜子自身が、手首を握って、自分の腕を後ろ手に拘束していた。

 

「ど~したんだ~い、桜子ちゃぁ~ん?」

「くっ、ッ! 私の体に、ッ! なにしたのよっ!?」

 

 胸や股間が痺れるような感覚が絶え間なく襲い来る中、桜子は言葉を途切らせながら男を睨んだ。

 もっともその瞳は先ほどまでの怒りや義憤、正義感といったものではないものが混ざっているが、それは桜子の瞳を間近で覗き込める男だけが分かることだった。

 その瞳の色は艶と媚。

 大人にはなっていない正義感溢れる少女が、自身知れば羞恥に染まるだろう女の色。

 自らの施した催眠が発動して、それを確認した男は、次に言う言葉に喜悦を堪え切れずに笑みを深くした。

 

「なにって~? そうだな~――――とりあえず桜子ちゃんのナニしてるとこ見せろよ」

「えっ」

 

 意味の分からない返答。

 だが桜子の脳はそれを理解できずとも、催眠をかけられた体はそれを実行した。

 

「な、なんで!!? うそ! うそうそ、やだっ!」 

 

 それまでピクリとも動かなかった腕が自らの意思に反して動く。

 自分の意思とは無関係に動いていく腕に桜子が恐怖して目を見開くが、彼女の手が向かう先はさらに彼女を恐怖させた。

 左手がスカートをめくり上げて、下着を晒し、下着の股の部分をわきによけ、男の眼前に自らの隠すべき大切な花弁を露わにしたのだ。

 

「へー、桜子ちゃんいきなり下からいっちゃうんだ。乳首を使った遊びからだと思ったのにこいつは驚きだ!」

「やだやだっ!! うそっ!! いやぁっ!!」

 

 嘲笑う男の言葉はもはや少女の耳に届いていなかった。

 桜子は自らの意思に反して、自らの恥部を弄び始めたのだ。

 

「いい゛ッッッ!!!!」

 

 下着を脇によけた左手が余った指で陰唇をくぱっと開き、右手の指が割れ目の中にまで潜り込む。

 ビクンと桜子の体が丸まった。

 自分でも数えるほどにしか試したことのない指戯。

 たくさんの本を読んでいるから、その中のいくつかで出てきた行為――――オナニー。

 桜子の手は自分の意思に反して、犯罪者の男の眼前で自らの股を濡らす行為を行っているのだ。

 

「――っ! ――っ!! ――っ!! ――っ!」

 

 膣内に入った二本の指が暴れてぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅと自らの指が秘所をこねくり回して水音をたてる。

 桜子は必死に声を出さないように口を閉ざして歯を噛みしめた。

 口が開くとそこからとんでもなく卑猥な声が漏れ出てしまいそうで。そしてそれが出たが最後、自分の意思が塗り替えられてしまうような気がして。

 

 

「分かったか? テメエを泥沼に堕として、喜んで股を開くような雌奴隷になるまで仕込んで、俺様の命令に忠実になるようにしてやるんだよ」

「そん、ンンッッッ!!!!」

 

 男の催眠により感度が数倍に引き上げられ、止まらぬ指がオナニーを続ける少女を見下して、男は厭らしい笑みを向けて言った。

 反抗して口を開いてしまった桜子から、生意気な声ではなく喘ぎの声が上がったことに男はゲラゲラと笑った。

 

「ぎゃっはっは! もう止まんねえんだよ! おら、マンコだけじゃなく、クリ豆も弄りな!」

「—―――ッッ!!! ひぎっ!! きぅっ!!! ッッ!!!!」

 

 どこまでも意思に反して動く指は、男の命令に従って動き、皮を被ったままの少女のクリトリスに襲い掛かった。

 痛みと、すぐにそれを塗り消す快楽刺激。

 抑えきれない喘ぎの声がどんどんと大きくなっていく。

 

 

 

 ・・・・・・・・

 

 

 

 一時間が経ち、桜子の姿は無残なものとなっていた。

 

「ああ゛ぁッッ♡♡ あ゛~~ッッ♡♡♡」

 

 手足の物理的拘束は完全に解け放たれ、自由に動かせるようになっている。

 だが、その足は逃亡のために動こうとはせず、優れた頭脳は脱出の計画も犯罪者の捕縛の計画も練ることはせず、探偵としての心は淫堕に塗りつぶされようとしていた。

 

 自ら脱衣した服は愛液と小水にびしょ濡れとなって床に散らばっており、下着の代わりについているのは、愛豆にとりついたクリトリスリングと、肛門に突き刺さっているアナルバイブだ。

 右手はぐちゅぐちゅに愛液をあふれさせている秘所に激しく抜き差しを繰り返しており、左手ではアナルバイブを上下させて肛辱に勤しんでいる。

 

「ぉお゛お゛っ♡♡♡ ―――。ひぎぃっっ♡♡♡」

 

 本来ならば絶頂した直後は自慰の手は緩む。そうでなくともほんの一時間と少し前までは碌に性の経験もない少女だったのだ。

 だが催眠によって自らの意思と切り離された腕は、どれだけイって果てようとも止まることはなく、意識が飛んでは即座にたたき起こされるのを繰り返していた。

 

「さーて、どうなったかな、桜子ちゃん?」

 

 扉を開いて、桜子に催眠をかけた忌むべき男が再び姿を現した。

 拘束はなく、扉も開いている。

 脱出の好機。

 だが

 

「いぐぅぅっっ♡♡♡♡ いぐっ、いぐっ♡♡♡ とまりゃないのぉ♡♡♡」

 

 そんなものは欠片も桜子の思考に昇らず、男の目の前で絶頂を繰り返した。

 

「お~お~、すっかりイかれた感じに仕上がったじゃねえか」

 

 ニヤニヤと桜子の痴態をしばし眺めた男は、パチンと指を鳴らした。そして

 

「へぁ―――――イくぅぅぅっっ!!!!!!!」

 

 激しく動いていた左右の手が、ようやく止まる。

 一際深い絶頂を自らの体に叩き込み、ぴーんと体が硬直し――そしてがくりと力尽きたように落ちた。

 

「ぁ……ぁ……ぁ」

 

 長く深い絶頂の余韻はすぐにはおさまらず、桜子の体はビクビクと微痙攣をつづけており、イき続けた体は息も絶え絶えに疲労しており、激しく動かし続けていた腕は持ち上げることもできない。

 

「さーて、準備は整ったみたいだな」

 

 男は仕上げをするために懐中時計を取り出した。

 

「ぁ、ぁぁ…………」

 

 先にかけられた催眠が消えたことで、桜子の中に恐怖が沸き起こった。

 あの時計こそが、先ほどまでの地獄のような快楽を与える始まりだったのだ。

 

「ムダムダ。抵抗しようったって、もう体も心も屈服しちまってんだからよ」

 

 男は恐怖に顔を引き攣らせた桜子を見て嗤った。

 

 催眠とは魔法ではない。高度な催眠をかけようとすれば、念入りな下淳義が必要なのだ。

 事前の準備が少なければ少ないほど、高度な催眠はかけられないし、本人の意思と反することをさせるにはそれ相応に高度な催眠を駆ける必要がある。

 男の催眠の技量は高いとはいえ、あのケルベロスほどではない。

 男にとって認めるのははなはだ癪だが、ケルベロスの催眠の技量は隔絶している。それこそ冥王星のボスであるハデスにも匹敵するほどだ。

 年頃の娘の性欲を亢進させて、自慰にふけさせるくらいならば、本人に気付かれないレベルの仕込みでなんとかなるが、他者を害することを強要させるようなことは事前の準備を念入りにしなければ男には難しい。

 探偵を目指すような犯罪を憎む、正義面した連中ともなればなおさらだ。

 まして尊敬する親類に危害を加えさせようとするならば、それこそケルベロス並の催眠の技量が必要だ。

 だがそれもまともに理性が働いていればこそ。

 自らの手で絶頂を繰り返し、羞恥と快楽と苦悦によって思考能力が吹っ飛び、理性が剥がれ落ちた状態ならばどのような催眠だろうと防ぐことなどできはしまい。

 

「これからお前は、団守彦の名前を聞いた瞬間、アイツに――」

 

 桜子の前で懐中時計が揺れはじめ――――

 

 ガチャリと、扉が開いた。

 男が驚いたように振り返った。

 

「あぁ!? ケルベロス! ……どのじゃないですか。これはこれは、どうされましたか?」

 

 入ってきたのは黒髪の冷たい瞳をし、秀麗な顔立ちの男――ケルベロスと冥王星で呼ばれる男だ。

 ケルベロスは、裸体で力なく床に転がり、時折微痙攣している雪平桜子を見て、ふぅとため息をついた。

 

「何をしているのですか、—――?」

 

 冷たい瞳、冷たい声。

 

「何って計画ですよ、計画。団守彦暗殺計画」

 

 ケルベロスの質問に男は言葉だけは丁寧に、ただし小ばかにしたような口調で自分の渾身と思っている計画をばらした。

 

「あの甘ちゃんの団守彦のことだ。このガキ――かわいい姪っ子を使えば、心臓にぶすりと一刺し。なんって簡単なことだろぉ!」

 

 ぎゃっはっはと笑いながら言う男に、ケルベロスは小さくため息をついた。

 

「甘いことを……」

「あん?」

 

 ケルベロスの小さな呟きは男の耳には入らなかった。

 自己陶酔に浸っていた男は、ケルベロスが自身に向けて鎖で垂らした懐中時計を突き付けているのを見た。

 

「へ……?」

「冥王星の誇りを汚す愚か者には、相応しい末路を」

 

 シャランと、鎖の音が聞こえた気がした。

 

 

 そして男は“失った”。

 

 

 

 

 

「さて、問題はアナタの方ですね」

 

 愚か者を始末したケルベロスは、未だに絶頂の余韻を引きじり続けている桜子を見下した。

 

「ぁ、ぁぅ……ひぐっ…………」

 

 力の入らない体に力を入れて、びくんと快感に襲われながらも、桜子はなんとか首を動かしてケルベロスを見上げた。

 

 冷たい瞳には、裸身をさらし、愛液や小水、涎や涙でぐちゃぐちゃの少女を見ても、同情も劣情も宿しておらず、ただただこの顛末の処理をどうするかだけを冷徹に考えているようだった。

 

「仕方ありませんね」

 

 ケルベロスは再び時計をシャランと垂らし、今度は桜子につきつけた。

 

「ぁ、ぁ…………」

「次に目覚めた時、アナタはこの場であったことをすべて忘れています。思い出すことはありません」

 

 時計が揺れる。

 あれほどまでに敏感だった体の感覚が鈍く、意識が遠のいていく。

 

 —―もっとも、多少後遺症は………………――

 

 言葉が最後まで聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・

 

 

 

「雪平も無事事件解決、か」

 

 同じAクラスの郷田が、数日前、警察から協力のあった事件を“何事もなく無事に”解決した雪平に声をかけた。

 

「まあね。当然でしょ?」

 

 団探偵学園の生徒として、Aクラスの誇りにかけてあの程度の事件を迷宮入りにするわけになんていかない。

 桜子は“いつもどおり”自信満々に言ってのけた。

 

「待ってよ、メグ~!」

「知らないっ!!!」

 

 少し離れたところで、目の上のたんこぶ。Qクラスの二人が駆けて行った。

 ぷんぷんと怒っている少女――美南恵を、頬にモミジの痕をつけた少年――キュウがあやまりながら追っている。

 

「ごめんって! パンツ見ちゃったのはわざとじゃないんだってば~」

「バッ!! こんの、ばかぁ~~~~!!!」

 

 バチンッと軽快な平手が頬を打つ音が聞こえた。

 

 

「まったくなにやってるのかしら」

 

 呆れたように桜子は二人を眺めていた。

 

「あんなのが“団守彦”の後継者候補、Qクラスだなんて……くそっ」

 

 桜子と同じAクラスの生徒、白峰が毒づいた。

 自分たちは決して劣っていない。後から探偵学園に入ってきたあんな連中よりもずっと頑張ってきたし、自負もある。

 だからこそ、あんなほのぼのとしたバカみたいな光景を見せられて気分のいいはずもなかった。

 それは人一倍プライドが高く、自分よりも格上のQクラスを目の敵にしている桜子こそが感じているはずだったのだが、

 

「ッッ」

「どうした、雪平?」

 

 ぶるりと、寒気でも感じたかのように身震いした。

 

「な、なんでもないわよっ!」

「?」

 

 郷田に声をかけられた桜子は、顔を赤くして怒鳴り、足早に彼らから離れてQクラス以外のクラスがある新しい校舎へと入っていった。

 

 

 

 ライバルであるクラスメイトの男たちから離れ、女子トイレへと駆けこんだ桜子は、急いで個室へと入り、スカートの中を確認した。

 

「やっぱり…………なんなのよもう!」

 

 ぐしょりと濡れている下着のクロッチ。

 ここ最近、なにかがおかしかった。

 数日前からだったか、数週間前位からだったか分からないが、突然今のように“漏らし”かけてしまうのだ。

 別に体に不調を感じることはなかったし、本格的に漏らしてしまうようなことはないので大したことはないのだが、にちょりとパンツを濡らしてしまうのは気持ちのよいものではない。

 

「真木先生に相談……するわけにもいかないし。っと気を付けなきゃ。七海先生だってああ見えて切れ者なんだから、こんなの知られたら恥どころじゃないわ」

 

 うっかり漏らしかけてしまうんです、などと校医とはいえ男の先生に言えるはずもない。言わずとも隠し事を暴く探偵がうようよしているこの学園の教師たちには、うっかりすると気付かれてしまう可能性だってある。

 とりあえず男の先生にだけは絶対に知られたくはないと、桜子は気を引き締めた。

 

 ――そうだ。“団守彦”の後継者になるのは自分なのだから、こんなことくらい自分でなんとかしなくては……――

 

「んっ! …………もうっ、また……」

 

 気を引き締めたはずなのに、ぬちょりと液体が溢れた。

 だらしのない自分の体に、桜子は腹立たしげに毒づいた。

 

 とある人物の名前を意識した瞬間、おかしくなってしまう自分の体についての違和感を、桜子が気に留めることは…………できなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。