※この作品はR-18です。

プレデター♀のおよめさん   作:範馬勇太郎

17 / 38
Chapter17.『Research』

 

「来たぞぉ……!」

 

 エイリアンの襲来を告げるサイレンが宿泊施設内へと響き渡っている。

 モニタールームで警戒していたライバック伍長はアラームを鳴らし、休息をとっていたコナー達を叩き起こしていた。

 

「数はどれくらいだいライバック?」

「わからん……セントリーガンAとBが発砲を開始した」

 

 駆けつけたコナーがライバックと共にモニターを覗く。

 既にモニターからはセントリーガンが猛然と砲火を上げている様子が見て取れ、硝煙で映りがやや悪くなっているせいか襲来したエイリアンの数は確認出来ない。

 だが、セントリーガンのラップトップコンピュータのディスプレイを見ると、残弾が凄まじい勢いで減っている。フルバーストで射撃し続けるセントリーガンの様子が、襲来したエイリアンが大群であることを伺わせていた。

 

「セントリーガンAの残弾は80%、Bは75%」

「すげえ勢いで減ってるぞ」

 

 ライバックがディスプレイを見ながら緊張感を高める。

 横で見ていたパクストンも緊張の面持ちでそれを見ていた。

 ゲート前に配置されたセントリーガンは休み無く撃ち続けており、四散したエイリアンの残骸がモニターの端に映り込んでいた。

 

「セントリーガンAとB、残弾50%を切った」

「こいつはきっとタマの嵐だぜ……!」

 

 パクストンが引き攣った笑みを浮かべながらモニターを凝視する。

 余裕があるように振る舞っていたが、その声色は僅かに震えていた。

 

「少尉達は何をしてるのかしら」

 

 スコットがモニタールームを見回し、エミリオとシシュの姿が無いことに不審げな声を上げる。

 もとよりシシュに対しては懐疑的な念を抱いていたスコットであったが、無数のエイリアンが襲来しているこの状況では余計な敵愾心を抱くことは無かった。

 

「直ぐに来るさ。それより、この様子じゃあゲート前のセントリーガンだけじゃ防ぎ切れんぞ……」

 

 ライバックがそう言っている間にもセントリーガンの残弾は減り続けている。

 僅かの間に、残弾は100発を切ろうとしていた。

 ラップトップコンピュータからは残弾切れのアラームが鳴り響く。

 

「Aの残弾は残り50発……20……10……!」

 

 緊迫した様子で残弾を告げるライバック。

 周りにいるコナー達も表情を強張らせていた。

 

「Aは0、Bも残り20……10……!」

 

 残弾切れの電子音が鳴る。

 セントリーガンAの残弾が尽きて数秒後、Bも全ての弾丸を撃ち尽くし、アラーム音がモニタールームに空しく響いていた。

 

「……0だ」

 

 ラップトップコンピュータのアラーム音を消しながら、ライバックが無力感に支配されたかのような表情を浮かべる。

 エイリアンが宿泊施設に襲来してから、僅か5分しか経っていなかった。

 

「ちきしょう、どんだけいやがる……!」

 

 パクストンが唇を噛み締めながらモニターを見つめる。ゲート前のセントリーガンが本当にエイリアンへ向け射撃を浴びせていたのか疑わしい程、無数のエイリアンがゲートへと取り付いていた。

 

 

「皆! 遅れてすまない! 状況は!?」

 

 シシュを連れモニタールームへ現れたエミリオに、ライバックは難しい表情を浮かべる。

 スコットはシシュをやや剣呑な目つきで見ていたが、やがてモニターへと視線を移した。

 

「見ての通りです。ゲート前のセントリーガンは沈黙しました。エイリアンの数は不明。大群だと思われます」

「ゲートは持ちそうか」

「わかりません。そう簡単には破られないとは思いますが……」

 

 ライバックはそういうとちらりとコナーへと視線を向ける。

 

「ゲートはしっかり溶接したよ。厚さが300mmもある鋼鉄製だし、耐食素材で補強もしたからしばらくは保つと思うけど……」

 

 自信なさげに語るコナーの表情も険しいものとなっている。

 ゲート前のセントリーガンだけでは食い止めることは出来ないであろうと予想していたコナーであったが、想像していたよりも遥かに多いエイリアンが襲来していることに危機感を募らせていた。

 

「エイリアンは正面ゲートからしか来ていないのか?」

「今のところは。非常口付近に設置したモーショントラッカーは反応していません」

 

 非常口はシシュのレーザーネットだけでなく、侵入警戒用のモーショントラッカーも設置している。

 このモーショントラッカーが反応したタイミングで、自動的にレーザーネットが起動する設定となっていた。

 

「grrr……」

 

 シシュはモニターへとマスク越しに視線を送り、威嚇するように唸り声を上げる。

 エイリアン相手に無双せしめる実力を持つシシュですら、この大群は予想外であった。

 

「少尉、今の内に脱出しましょうよ! こりゃエントランスも突破されちまう!」

 

 パクストンがエミリオへ情けない表情を浮かべながら提案する。

 エミリオは努めて冷静に言葉を返した。

 

「落ち着いてパクストン。まだゲートは突破されていない。それに、外に出た途端に大群に囲まれる可能性がある」

「でも少尉! 急いで逃げねえとヤバイですよ! モニターが真っ黒だ!」

 

 モニターにはゲートに取り付くエイリアンの群れが映し出されており、時折エミリオ達がいるモニタールームにガンッ! ガンッ! とゲートを叩く音が僅かに響いている。

 エイリアン達がゲートを突破するのは時間の問題であった。

 

「ライバック、君の意見を聞きたい」

「……ゲートがいつまで保つかわかりませんが、いずれにしろ救援隊が来るまで我々は孤立無援です。いたずらにここを離れるのは得策ではないでしょう」

 

 ライバックの言葉を受け、パクストンが「ちくしょう」と悪態をつく。

 籠城を続ける事が最善なのは、依然変わらない事実であった。

 

「krr……」

 

 シシュが、エミリオの手をそっと握る。

 マスク越しにエミリオを見つめるシシュは、不安な思いに囚われたエミリオの手を優しく握っていた。

 

「シシュ……」

 

 シシュの手を、力を込めてぎゅっと握り返すエミリオ。

 エイリアンの大軍勢に囲まれた現状、愛しの伴侶の温もりはエミリオにとって何よりも心強い物であった。

 

「krr……krr……」

「シ、シシュ……?」

 

 そんなエミリオに対し、シシュは身体を密着させ、いわゆる“恋人繋ぎ”のように指を絡ませる。

 この緊急時でもエミリオに甘えたくなるのは、完全に“エミリオの雌”として征服された快感が未だに忘れられないからか。

 節操のない異星の乙女に、エミリオは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 しばらくモニタールームにはエミリオ達を除き、危機感を露わにした第三小隊の面々による異様な緊張感が漂っていたが、外周モニターには相変わらずエイリアンの群れがゲートに取りついている様子しか映し出されておらず。

 ひとまずゲートは耐えていると判断したエミリオの指示により、監視は交代で行う事となり、小隊員は各々休息を取りつつ事態の急変に備える事となった。

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

「ん……! はぁっ……!」

「kyrr……! kyrr……!」

 

 宿泊施設非常口に繋がる通路内にて、ピチャピチャと共に互いの口を貪る湿った音が響く。

 マスクを脱いだシシュの頬は朱く上気しており、荒い呼吸を漏らしながらエミリオの口内へと舌を這わせていた。

 互いに強く抱き締め合い、愛しい存在を全力で貪る二人。この非常時に何をしているのだろうかと、エミリオは陶然とした頭で自問していたが、目の前のシシュの淫靡な芳香と、口内に広がる甘く、香ばしい味を感じる内にその事はどうでも良くなっていた。

 

 エミリオとシシュは自室には戻らず、非常口前の通路にてレーザーネットの点検を行っていた。

 半地下の宿泊施設から非常口へと至る梯子を登り、順番にネットを点検し終えたエミリオが梯子から降りると、即座に全裸となり、モニタールームへの扉をしっかり閉じたシシュに抱きつかれ、前述の様な状況になってしまっていた。

 

 エミリオは最初はいつものように諌めようとしたが、全身全霊をかけてこの異星の乙女の為に生きる事を誓った手前、あまり強く諌めることは出来なかった。

 それに、エミリオには分からぬことであったが、シシュはエイリアンの大群を見てやや弱気(・・)になっていた。

 エミリオの手をそっと握ったのは、愛しい伴侶を励ますのと同時に、自身も不安な思いに囚われていたから。

 

 無論、シシュはあの大群を蹴散らし、エミリオと無事に脱出することを固く誓っていはいたが、現実は百戦錬磨のプレデターでも厳しい事は変わらず。

 故に、万が一……万が一、エミリオと死別してしまうことを考えたシシュが、少しでもこの愛しい雄を全力で感じていたいと思い至ったのは仕方ないことかもしれない。

 エミリオはそんなシシュの思いを本能で感じ取り、異星の乙女の好きにさせていた。

 もっとも、エミリオ自身も無事に生き残れる保障はどこにも無いと、あの大群を見てから強く思うようになり、シシュと同じように愛しい花嫁を全力で貪りたい衝動が沸き起こっていた。

 

 前夜に暴力的な性交を交わし、ある意味で開き直った地球と異星の夫婦は、こうしてお互いの身体を求め合うことに何らためらいを感じていなかったのだ。

 

「シシュ、シシュ!」

 

 エミリオはシシュの頭を抱え、貪るようにその口器へ舌を突き入れる。

 シシュとエミリオは呼吸を荒くし、互いの唾液を飲み込んでいた。

 

「krrrr……」

 

 つう、と、二人の口器に透明の糸が架かる

 顔を上気させたシシュはそのままエミリオにしなだれかかり、愛おしそうにその下腹部に手を這わせた。

 

「あっ、シシュ……!」

 

 シシュはエミリオの前にかがみ込むと、盛り上がったカーゴパンツをうっとりとした表情で見つめる。

 そのまま器用に爪上口器を開き、カーゴパンツのファスナーを咥えると、ゆっくりとそれを下げていった。

 

「krrrr……」

 

 インナーパンツから覗くエミリオの膨れ上がったペニスが現れると、シシュはより陶然とした表情を浮かべそれを見つめる。

 むせ返るような雄の臭いが、シシュの脳髄へと浸透し、淫靡な芳香を嗅いだシシュはヴァギナから愛液を一筋垂らしていた。

 

「っ、うぁ」

 

 口器を器用に使い、エミリオのペニスを露出させたシシュは勢い良くそれを咥える。

 既に腹にめり込まんばかりに反り返っていたエミリオのペニスを強引に口内へと収め、エミリオの臀部をがっしりと掴みながら激しく口淫を開始した。

 

「あっ、あぅ! あぅぅ!」

 

 ジュポッ! ジュポッ! ジュポッ!

 淫靡で下品な水音が辺りに響く。シシュはエミリオのペニスを貪りながら器用に舌でそれを扱き、血管が浮き出るほど剛直したペニスを一心不乱に咥え込んでいた。

 生暖かいシシュの口内から感じられる快感により、エミリオのペニスからはカウパーが溢れ出し、シシュの口内を満たしていく。

 シシュは唾液とエミリオのカウパーを口器から垂れ流していた。

 

「シシュッ! シシュぅッ!」

 

 身体をくの字に曲げ、必死になってシシュの頭を抱え、襲いかかる猛烈な射精感を耐えるエミリオ。

 そんな愛しい伴侶の姿を上目遣いで見たシシュは、よりこの愛しい伴侶への奉仕を激しくさせた。

 

「あ! あぁ! シシュッ! シシュッ!」

「kyuu!?」

 

 射精感が最高潮に達したエミリオは、シシュの頭に生えるドレッドヘアーの様な管を乱暴に掴み、激しく腰を動かしてシシュの口内を犯す。

 ガツ、ガツと、エミリオの腰がシシュの口器へとぶつけられ、エミリオは滾ったペニスをシシュの喉の奥へと突き入れた。

 

「く、ああッ!」

「~~ッ!!」

 

 ドビュッ! ドビュッ! と、ペニスから精液が吐き出される。

 直接食道に精液を流し込まれたシシュは、苦しそうに涙目になりながらもそれを受け入れ、濃厚なエミリオの精液を嚥下していた。

 

「はっ……! はぁっ……!」

 

 ぎゅううっと、力いっぱいシシュの頭を抱え込み、射精を続けるエミリオ。

 やがて射精し終えたエミリオが腰を引くと、シシュはケホケホとえづきながらもエミリオへと陶然とした視線を向け続けた。

 

「シシュ……」

「kyuuu……」

 

 切ない声を上げるシシュに、エミリオもまた愛おしそうにその表情を覗く。

 しゃがみ込むシシュの頬を優しくひと撫でし、自身の体液で濡れるシシュの口器を喋んだ。

 

「ん……んちゅ……」

「kyuu……kyuuu……」

 

 愛おしげにシシュの口器を啄むエミリオ。

 シシュは幸せそうに顫動音を鳴らし、エミリオの唇を受け入れていた。

 

「シシュ……お尻をこっちに向けて?」

「krr……」

 

 ひとしきりシシュの口器を味わった後、エミリオはシシュに優しく“命令”する。

 エミリオに命令されたシシュはうつ伏せになり、おずおずとその大きな臀部を突き上げた。

 

「krr」

 

 シシュの陰裂からは、愛液がとめどなく溢れ滴り落ちている。

 エミリオは静かにその陰裂に顔を近づけ、ゆっくりと舌を這わせた。

 

「kyuuu!」

 

 ピチャリ、と、エミリオが陰裂に舌を這わせると、シシュは嬌声を上げて身震いする。

 エミリオが舌を動かす度に、ピュッピュッと、シシュのヴァギナから愛液が吹き出ていた。

 エミリオは愛液を飲み込みながら舌を陰裂へと突き入れ、ヴァギナの中をゾリゾリと擦り上げる。

 そして、ヒクヒクさせているシシュのアナルへと舌を這わせた。

 

「gyuッ!?」

 

 唐突に弱点を攻めれれ、シシュはビクンッ! と身体を大きく震わせる。

 エミリオはむせ返るような香ばしい芳香に脳髄が溶けそうな感覚を覚えるも、そのまま舌を腸内へと侵入させた。

 

「gkyuu! kyuuu!!」

 

 ジュプッ、ジュプリッと、下品な水音が響く。

 シシュは必死に床を掻き、エミリオの責めから逃れようとするも、エミリオはシシュの腰を抱えて異星の乙女を捕らえていた。

 

「んっ!」

「kyuuuuu!?」

 

 プシャッ! と、シシュの陰裂から噴水が上がる。

 執拗なエミリオの責めに、異星の乙女は絶頂し、うつ伏せのままくったりと四肢を投げ出した。

 

「シシュ……かわいい……」

 

 ヒクヒクとアナルを蠢かせながら、シシュはぐったりと脱力している。エミリオは瞳に妖しい光を宿らせながら、自身のカーゴパンツを脱いだ。

 

「挿れるよ……」

「kyu……kyu……」

 

 エミリオはゆっくりと腰を落とし、自身の脚でシシュの股を開くと、そのままシシュのアナルに自身のペニスを突き立てた。

 

「ッ! くぅ!」

「kyuuuuuッ!?」

 

 ズチュゥ! と、一気にペニスを突き入れるエミリオ。

 シシュに覆いかぶさり、その大きな乳房を後ろから力強く揉みしだきながら激しい抽送を開始した。

 

「はっ! はっ! はぁっ!!」

「ッ! kyuッ! ッッ!!」

 

 パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!

 激しく腰を打ち付ける音が響き、抽送に合わせてシシュは声にならない嬌声を上げる。

 荒い息を吐きながら、エミリオは取り憑かれたように腰を前後させ、異星の乙女のアナルを蹂躙していた。

 

「ああ、シシュ! 僕の、僕だけのシシュ!」

 

 ズンッ! ズンッ! と、思い切りシシュの腸内へとペニスをねじ込むエミリオ。

 シシュの腸内は生き物のようにグネグネと蠢き、愛しの伴侶のペニスへと絡みついていた。

 涙を流し、かすれた声しか上げられないシシュの肉体は、本能で愛するエミリオを悦ばせようと体液を溢れさせていた。

 エミリオは熱く絡みつくシシュのアナルの快感に、猛烈な射精感が込み上がるのを感じていた。

 

「あ、あ、シシュ! シシュッ!!」

 

 腰を大きく引き、思い切り腰を打ち付け、シシュの腰を力一杯抱き締めるエミリオ。

 グチィ! と、肉と肉がぶつかり合う音が響いた直後、ビュウウウッ! と、エミリオのペニスから精液が吐き出された。

 

「うっ……はぁぁっ!」

「kyuu……! kyu……ッ!!」

 

 がっしりとシシュを抱き、射精しながら、ドチュッ! ドチュッ! と、腰を打ち付けるエミリオ。

 熱い精液がポンプのように自身の奥深くへと流し込まれ、シシュは白目を剥きながらビクッ! ビクッ! と、大きく身体を震わせ、何回も絶頂した。

 

「ああ……シシュ……」

 

 繋がったまま、ちゅ、ちゅ、と、シシュの背中、シシュの首筋を優しく啄むエミリオ。

 互いの汗で濡れたシシュの身体を、丹念に口づけをしていた。

 

「シシュ……好きだよ……」

「kyu……k……」

 

 エミリオがシシュの耳元で愛を囁くと、それに応えるかのように、シシュの陰裂は小さな飛沫を噴き出していた。

 

「ん……」

 

 ズチュ……と、いやらしい音を立てながらゆっくりとペニス引き抜くと、シシュのアナルから精液がコポコポと音を立てて溢れ出る。

 相変わらずぐったりと四肢を投げ出していたシシュの大きな尻を、エミリオは愛おしそうに撫でていた。

 

 

 

「ああ……またやりすぎた……」

「grrー……」

 

 行為が終わり、エミリオは申し訳なさそうにシシュの身体を拭っていた。

 しばらく意識を飛ばしていたシシュであったが、散々エミリオに嬲られて少しは耐性がついていたのか、以前より早くその意識を回復させていた。

 自分から誘った癖に、責めるような目つきで見るシシュに、エミリオは苦笑いを浮かべつつ愛する乙女の身体を拭う。

 

 やがて後始末を終え、お互いに装具を装着していると、エミリオがふと思い出したかのようにシシュへと声をかけた。

 

「そうだ。シシュ、腕を出して」

「?」

 

 首をかしげながら、素直にエミリオへ腕を差し出すシシュ。エミリオは懐からライバック伍長から渡された腕時計型の発信機を取り出し、コンピューターガントレットが装着されているシシュの手首に器用に取り付けた。

 

「婚約指輪にはならないかな」

「krr?」

 

 やや気恥ずかしそうにするエミリオに、異星の乙女は増々首をかしげ、その様子を見つめる。

 まじまじと己の手首に巻きつけられた腕時計を見つめていたが、尚も気恥ずかしそうにするエミリオの手を掴み、強引に抱き寄せた。

 

「うわっ」

「krrー」

 

 すりすりとエミリオの頭へ頬ずりし、はむはむとその黒い髪を甘噛む。

 異星の乙女の親愛のスキンシップを、エミリオは苦笑いを浮かべながら優しく抱き返していた。

 

 

 

 結局、その日はエイリアンがゲートを突破してくることは無かった。

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 地球

 JPN・TKY・市ヶ谷

 防衛省航宙自衛隊調査部別室

 

「アメリカさんからの、依頼ねぇ……」

 

 紫煙に包まれたオフィス内で、くたびれたワイシャツを身に付けた壮年の男が手元のタブレットを眺めながら紫煙を吐き出す。

 無煙の電子タバコが普及している現在においても尚、この男は昔ながらの紙巻たばこを愛飲していた。もっとも21世紀中頃に“禁煙法”が施行されて以来、通常の紙巻たばこを吸引する事は違法であった為、飲んでいるのは新規に開発された無害タバコであったが。

 

「遠く離れた宇宙での出来事なのに、なんで我々が……」

「篠原ニ等宙尉くん。マルユの本社はここ東京にあるんだよ。直接埃を叩く手があるなら、それを使わない理由はないでしょ」

「そりゃ、後藤三佐は直接叩くわけじゃないからいいんでしょうけど……」

 

 後藤三佐と呼ばれた壮年の男は、篠原と呼ばれた若い尉官へとニヤついた笑みを向ける。

 そんな後藤三佐に、篠原ニ尉は深い溜息を一つ吐いた。

 ちなみにマルユとは当局の隠語で、ウェイランド・ユタニ社の事を指していた。

 

「それに、依頼の出処は米国政府からではなく、非公式で、それも在日米軍からって……。無茶苦茶ですよ、こんなの。こっちのお偉いさん達が黙認しているから大事になってないだけで」

「篠原くん。それだけマルユはいろんなとこから怨みを買ってるってことだよ。多少の無茶もまかり通るんだなこれが。あと、依頼の出処は在日米軍じゃなくて、ほんとは米国植民地海兵隊からだよ」

「余計無茶苦茶じゃないですか……」

「まあまあ。マルユと喧嘩できるとこなんてそう無いからさ。ま、ウチは喧嘩するにしてもバレないようにこっそり嫌がらせする程度だけど」

 

 ウェイランド・ユタニ社が全世界を経済的に支配し、各国で多大な影響力を持っているのは周知の事実であり、米国も政府、特に米軍に対しては絶大な影響力を持っている。西側諸国でも同様に政府や軍隊に影響力を持っており、日本もご多分に漏れず政府中枢にまでウェイランド社の影響力が蔓延っていた。

 自衛隊も装備品の54%をウェイランド社から調達しており、相応にウェイランド社の影響力が強かったが、意外にもその影響力に関しては米軍や他国の軍隊に比べ多少マシな状況ではある。

 

 その理由のひとつに、創設以来自衛隊の装備は従来の国内メーカーから調達しているという“伝統”がある。ウェイランド・ユタニ社の前身である湯谷コーポレーションですら、自衛隊の装備調達に参入出来るのは規制緩和が大々的に行われた22世紀に入ってからであった。

 四菱重工、松井造船、和豊工業等、従来の国内軍需企業は連合を組んでウェイランド社に対抗し、徐々にシェアを奪われつつあるものの土俵際で踏み留まっている。

 故に、自衛隊はウェイランド社の影響力をある程度は排除する事が出来た。

 

 もっとも、国内企業の兵器開発技術においてはウェイランド社に大きく後塵を拝しており、特に航宙戦闘艦の技術力の差は如何ともし難い状況ではあった。航宙自衛隊の所属艦艇の約8割は、ウェイランド社製の艦艇だった。

 

 後藤三佐らが所属する航宙自衛隊調査部別室は、数少ないウェイランド社の影響を受けない航宙自衛隊内部の諜報機関であった。規模は小規模ではあるが、その分優秀な人材が配置され、国内外や植民惑星における様々な敵対勢力の諜報、防諜を主任務としていた。

 

 

「しかし“惑星植民地開発における資材調達の重大不正調査”とは……我々がやる仕事じゃない気がするんですけど」

 

 篠原ニ尉が手にしたタブレットを見ながら不満そうな声を上げる。確かに、諸々の諜報を主任務とする調査部別室ではあったが、流石に企業不正を調査するのはお門違いであった。

 

「まあ、カービィ将軍にはお世話になってるからねぇ」

 

 そんな篠原ニ尉を諭すように、のんびりとした声をあげる後藤三佐。

 植民地海兵隊の将官であるフランクリン・カービィ准将は、海兵隊内での様々な諜報、防諜部門でのトップであり、諸外国の諜報機関にも太いパイプを持っている。後藤三佐もまたこの人脈の中でカービィ准将と国防に関する様々な情報を交換、時には非公然に協力し合う間柄であった。

 

 そのカービィ准将が、ウェイランド社を追い詰めるべく行動を起こした。

 当然のことながら、調査部別室に依頼された件以外にも様々な手段でウェイランド社を追求する“ネタ”を集めているのだろう。ここらでウェイランド社にきつい“灸”をすえることは、航宙自衛隊にとっても意義のあることであり、カービィ准将、ひいては米国植民地海兵隊に恩を売っておくのも、この依頼を遂行するには十分な理由であり。

 そのようなことをつらつらと、後藤三佐はゆっくりと紫煙を吐き出しながら思考していた。

 

「三佐。手っ取り早く適当な令状出してもらって、捜査機関に家宅捜索してもらった方が早いんじゃ」

「お巡りさんはマルユのシンパが多いからねぇ……事前に情報が漏れて肝心の物証を隠されたら意味ないし、ここは僕達だけでじみーに内偵を続けて、じみーに調査するしかないんじゃあない?」

 

 前述の通り、ウェイランド社は各国の政府機関に強い影響力を持っている。

 警察庁もまた例外ではなく、湯谷コーポレーション時代から様々な企業不正を“お目こぼし”されていた。

 故に、国内の捜査機関はまるで当てにすることは出来なかった。

 

「まあ、直ぐに結果が出るとは限らないし、ここはひとつのんびりと取り掛かろうじゃないの」

「はぁ……」

 

 昼行灯のような後藤三佐に、篠原ニ尉は何度目かわからない溜息を吐く。

 しかし、この呑気な上司が今まで任務に失敗したことはなく、優秀な諜報能力を有しているのを知っていた篠原ニ尉は、それ以上任務について文句を言うつもりは無かった。

 

「血で血を洗うスパイ戦にならなきゃいいですけど」

 

 篠原ニ尉がそう何気なく呟く。

 ウェイランド社にはその筋では悪名高い“渉外部第9分室”という部門があり、ウェイランド社が関わる様々な不正を隠蔽し、時には殺人や破壊工作も行う一国の諜報機関と言っても差し支えない規模であった。

 今回カービィ将軍から依頼された件は、その渉外部第9分室と正面から殴り合う事態が想定され、篠原二尉は不安な思いに囚われていた。

 そんな篠原ニ尉に、後藤三佐はぼんやりとした調子でそれに応えた。

 

「だからさ、それも含めてのんびりやろうって事だよ。とりあえず、ここの耐食建材の納入ルートから探ってみようか」

 

 後藤三佐は再びうまそうに紫煙を吐き出し、手元のタブレットを指しながら篠原ニ尉へ不敵な笑みを浮かべた。

 のんびりとした調子ではあったが既に調査の取っ掛かりを見つけていた後藤三佐を見て、篠原二尉はこの優秀な上司のやり方は基本的には間違いは無いのだと、そう思って苦笑いを返していた。

 

 

「ところで三佐。ここは無害タバコでも禁煙なんですが」

「堂々と吸うのが良いんだよ」

 

 

 翌日。

 禁煙区域で喫煙を行ったとして、始末書を提出する後藤三佐の寂しげな姿が防衛省内で見られたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。