※この作品はR-18です。

プレデター♀のおよめさん   作:範馬勇太郎

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Chapter18.『Marines:Infinity War』

 

「どうやら精錬所にチャーリー中隊の生き残りがいるようです」

 

 薄暗いオフィスの中で、無機質な声質を備えたヒューマノイド……ウォルターが、滔々と口を動かす。

 機械音声のようなその声を、椅子に深く腰をかけた一人の男性が、ウォルターをじっと見つめながら聞いていた。

 

「ジャングルや居住区のゼノモーフが精錬所に集結しています。概算ですが、800匹程度は集まっているかと」

 

 手元のタブレットに目を落としつつ抑揚の無い声で応えるウォルター。男性は予想以上のエイリアンの数にやや驚きが混じった声を上げた。

 

「何故、それほどの数が?」

 

 男性の問いに、ウォルターは少しだけ諧謔味を帯びた笑みを浮かべた。

 

「復讐でしょう。恐らく、ハンター型クイーンの“駆除”をしたのが彼らでしょうから」

「……君の口から復讐なんて情緒ある言葉が出るとはな」

 

 男性は意外そうにウォルターを見つめる。ヒューマノイドはただ黙って口角を引き攣らせていた。

 

「どうしますか?」

 

 今度はウォルターが男性に問いかける。数瞬考え込む素振りを見せた男性は、ややあってその彫りの深い口元を動かした。

 

「光学迷彩タイプを監視につけろ。どうなるにせよ我々はこのまま静観だ。まあ、例の女性型ハンターの生きた標本は欲しいがね」

 

 椅子の背もたれを軋ませながら、男性は自身のタブレットに目を落とす。異星人のテクノロジー、そしてその生体には非常に興味が尽きないところであったが、彼にはそれよりも重要な使命があった。

 男性の言葉を受け、ウォルターは慎ましく頷く。

 

「承知致しました。ですが、イレギュラーが近づいています。それと、植民地海兵隊第501大隊アルファ中隊の残党もまだ周辺に残っています」

「アルファ中隊の排撃は完了したのではないのかね?」

「研究所内は我々が掌握しておりますが、周辺までは。もっとも、研究所周辺のゼノモーフと戦闘を継続しているようですので、いずれは無力化するかと」

「……これ以上戦闘用ヒューマノイドをすり減らすわけにもいかん。そちらも静観だ。ハンター達への備えも必要だしな」

「承知致しました」

 

 ギシリと椅子を軋ませた男性は、諸々の指示をウォルターへ下すと重たい息をひとつ吐いた。

 彼には重要な使命がある。

 その為に、わざわざこうして数年前からこの未開の星へと赴いているのだ。

 

 男性は鋭い目つきでウォルターを見やると、再びその重たい口を開いた。

 

「解析にはあとどれくらいかかる?」

「“大脱走”の煽りを受けて破損したメインコンピューターの修復がまだ完了しておりません。少なくとも、あと一週間は」

 

 ウォルターの受け答えに、男性は再度重たいため息をつく。収容し、生育していたエイリアン達の反乱は、彼の計画を狂わせる大きな障害となっていた。

 

「もっと急がせろ。それと、“第一王女”の状態は?」

「現在低温睡眠状態です。神経デバイスで活動状況を擬態していますので、他のゼノモーフ達は第一王女が我々の手中にあることを察知できないでしょう」

「産卵は出来るのか?」

「……難しいですね。“大脱走”で産卵管を構成する器官に損傷を受けています。もう、“彼女”は“子供”を産めません」

「利用価値が薄れたな。しかし生きた標本は多いに越したことはない。そのまま維持しろ」

「承知致しました」

 

 やや憐れみを込めて答えるウォルターだったが、男性は冷静に指示を下すだけだった。

 オリジナルを含めた4体のクイーン。内、1体は既に“駆除”され、もう1体も使い物にならないこの状況に、男性は増々ため息を深くした。

 

「本社は相変わらずか?」

「はい。先月の“大脱走”以降、計画の中止とBG-386の各施設の封印、そして早期撤収を指示しています」

「CEOはこの13年で随分と臆病になったものだな。余程カーター・J・バークの件が堪えたと見える」

「LV-426への投資回収はまだでしたし、隠蔽工作に相当の資金を投じましたから仕方がないかと。特別損失が過去67年で最大となりましたし、内部留保資金も大幅な減少となっています」

「経営者としての判断か……愚かなものだ。この計画は、たかが一企業(・・・・・・)の損益で収まる話ではないのに」

 

 男性は自身が所属する組織に失望を隠そうともせず、その重たい口を動かし続けている。

 ウォルターは、その様子を無表情に見つめていた。

 ややあって、男性はその鋭い瞳に光を宿しながら、胸の内に秘める野望を燻らせた。

 

「まあいい。せっかくCEOが植民地海兵隊の派遣要請までしてくれたのだ。我々(・・)は、せいぜいそれを有効活用するだけだ」

「……やはり、本社の指示に反するのはリスクが大きいのではないでしょうか」

「今更後戻りは出来ない。それに、言うことを聞かない我々を正体不明の武装組織と偽ってまで“口封じ”をしようとしたのだぞ。もう分水嶺はとっくに通り過ぎている」

 

 重たい腰を上げ、椅子から立ち上がる男性。

 自身が所属する組織……ウェイランド・ユタニ社との対決を明確に決意した男性の瞳には、その狂気が反映された湿った炎が燃えていた。

 

「ゼノモーフも、ハンター達のテクノロジーも、全てはこの計画の副産物にすぎん」

 

 オフィス内の大型モニターを見つめる男性。そこには、BG-386に秘匿され続けていた異星人達の遺跡が映し出されていた。

 様々な機器をたずさえた研究員と思わしき白衣の人間達がせわしなく遺跡へ出入りしている様子を、男性はじっと睨むように見つめている。

 

「ピーターの計画……“プロメテウス計画”は、人類が次のステップに到達する為のものだった。だが、私はその計画をそのまま引き継ぐつもりはない」

 

 狂気的な光を宿し続ける男性の瞳を、ウォルターは黙って見つめている。先程の諧謔味を帯びた笑みは失せ、能面のような無感情な表情を浮かべていた。

 

「人類は、この宇宙で唯一無二の存在でなければならない。始祖である“エンジニア”達をも越える、超大な存在に」

 

 やがて男性はウォルターの方へと振り返る。

 男性はウォルターの目を見ていたが、見つめる瞳には人類がこの宇宙の全てを支配する壮大な野望の光景が広がっていた。

 

 

「その為の第一歩が、我々の“デウカリオン計画”なのだ」

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 惑星BG-386

 精錬所宿泊施設内

 

「ん……」

 

 むわっとした性臭が漂う部屋の中で、エミリオは目を覚ました。

 横たわるベッドのシーツは淫らな芳香を放つ体液で濡れており、その香りを嗅いだエミリオは僅かに頬を赤くしていた。

 

「うう……どうしてこんなになるまで……」

 

 横になりながら、エミリオは自身の額に手を当て深くため息をつく。エイリアンの大群に襲われている危機的状況なのに、自分だけが愛しい伴侶と激しく交わっているのは、改めて非常識な行いだと深く反省していた。もはや、何度目か分からぬ反省であったが。

 

「kyuー……kuuー……」

 

 ふと、自身の傍らで可愛らしい寝息を立てる異星人の乙女の姿が目に入る。

 エミリオの胸を枕に、その大きな身体を猫のように丸めて、すぴすぴと幸せそうに眠る異星人の乙女……シシュ。

 安心しきったその寝顔を見て、エミリオは表情を緩ませながらシシュの頭を撫でていた。

 お互い下着ひとつつけていない、生まれたままの姿。大きな乳房が、エミリオの身体に密着し、その淫らな体温を感じたエミリオのペニスは、寝起きの朝立ちもあってかむくりと血を巡らせていた。

 

「ああ……シシュ……」

 

 スパイシーで香ばしいシシュの淫らな体臭を吸い込むエミリオ。

 しっとりと濡れたシシュの肉体から感じる熱い体温と共に、エミリオの脳髄をジンジンと痺れさせていった。

 

「シシュ……」

 

 エミリオは胸元のシシュの頭を抱き抱くと、その濡れた顔に口づけをする。

 ちゅ、ちゅ、と啄むようにシシュの目元、爪上口器に口づけをし、慈しむようにその頭を撫でた。

 

「krr……?」

「ちゅ……おはよう、シシュ」

 

 くりくりとした寝ぼけ眼をエミリオに向けるシシュ。微笑みを浮かべ、自身を愛でるエミリオを見てもじもじと恥ずかしそうに身体を捩らせた。

 

「シシュ、こっち向いて?」

「kyu……krr……」

「ほら、舌出して。ね?」

「kyuu……」

 

 エミリオに促され、おずおずと口器を開き舌を出すシシュ。ピチャ、と水音を立てながら、エミリオとシシュは互いの舌を絡ませていった。

 

「ん……んちゅ……」

「kchu……kyuu……」

 

 ピチャ、ピチャとねっとりと互いの舌を絡ませる。

 つう、と糸が引き、顔を上気させたシシュはくぅくぅと甘い顫動音を鳴らし、エミリオの胸元に顔を埋めた。

 

「良い子……僕の、およめさん……」

「krrrr……」

 

 シシュの頭を優しく撫で、エミリオは異星の乙女の熱い体温を感じ続ける。

 すりすりと自身の胸元に顔をこすりつけるシシュがたまらなく愛おしく。庇護欲と独占欲がないまぜとなったエミリオは、自身の下腹部から熱い獣欲が湧き上がってくるのを感じていた。

 

 エミリオは、滾った情欲をぶつけるべく、シシュの下腹部へと手を伸ばし──

 

「ッ!?」

「grr!?」

 

 サイレン音が鳴り響く。

 耳を貫かんばかりの警戒警報が、宿泊施設全体へ鳴り響いていた。

 

「……シシュ。準備をしよう」

「grrー……」

 

 エミリオは素早く身体を起き上がらせると、手早く衣服を身に付け装具を取り付ける。

 シシュはぶすっとした表情を浮かべていたが、鳴り響くサイレン音に急かされるように装具を装着し始めた。

 武装を整えた地球と異星の番。

 エミリオからは先程までの甘く、恋情に溢れた空気は一切消え失せており、その闘争心を滾らせながらライバック達が待つ制御室へと足を向けていた。

 

「krr」

「っと。どうしたのシシュ?」

 

 勇んで部屋から出ようとしたエミリオの袖を、唐突に掴むシシュ。

 その顔は無骨なマスクで隠れており、乙女の急な行動にエミリオは不思議そうな表情を浮かべていた。

 

「krr……エミ、エミリオ……」

「シシュ、急がないと」

 

 エミリオの袖を掴みながらもじもじと恥じらう異星の乙女。マスクに隠れて見えなかったが、その表情は薄く朱を差していた。

 完全武装の異星の乙女が見せる妙なギャップに、エミリオは少しだけ表情を緩めていた。

 

「ツヅキ、アトデ、シテネ?」

「……」

 

 乙女の無垢なおねだりに、エミリオは少しだけ驚きと、羞恥が混ざった表情を浮かべていた。

 

 

 

 

──────────────

 

「信じられん。30メートル先だ」

 

 ラップトップコンピュータを睨みつけながら、ライバック伍長は切迫した表情を浮かべている。

 制御室には第三小隊の面々が集まっており、エイリアンの侵入に顔を強張らせていた。

 

「ライバック、ゲートは破られたのか?」

「少尉、信じたくありませんが、そうだと判断するしかありません。エントランスのセントリーガンが射撃を開始しています」

 

 ライバックの声と共に、制御室にはセントリーガンの射撃音、そして無数のエイリアンの甲高い断末魔が漏れ聞こえている。

 ゲートをこじ開けたエイリアンの群れを、4基のセントリーガンが猛然と砲火を上げ迎撃していた。

 

「ちきしょう……! あいつら仲間の死体を使ってゲートをこじ開けやがった!」

 

 ゲート前を映したモニターを見て、パクストン上等兵が苛立たしげに唸り声を上げる。

 見れば、厚さ300mmの鋼鉄製のゲートは、エイリアン達のおびただしい死骸が打ち付けられており、その強酸性血液を大量に浴びて大穴が空いている。その大穴へ、無数のエイリアン達が続々と入り込んでいた。

 

「酸の血液は死んだら中和されるんじゃなかったの?」

「ハッ。コナー、おめえよく考えてみろよ。こいつはカミカゼ・アタックみてえなもんだ。新鮮な酸をぶっかける為に相当のエイリアン共が“志願”したんだろうぜ」

「……動物のくせにナマイキだね」

 

 コナーの問いかけに乾いた笑いを浮かべながらパクストンが答える。20世紀に東洋を支配した大帝国が、その終焉の際に見せた狂気の特攻。エイリアンもまた、このような狂気的な献身により丹念に補強したゲートを突破していた。二日も経たない内にゲートが突破されたことは、コナーにとっても予想外だった。

 

 エントランスでは4門のセントリーガンが絶え間なく火線を浴びせている。

 モニターではセントリーガンの砲口から吹き出す閃光で画面が白くなっている。その砲火に怯むことなく、エイリアン達はひしひしとエントラスへと押し寄せていた。

 

 閃光、飛び散る酸の血液とキチン質の肉体、甲高い断末魔。

 敷き詰められた床タイルはエイリアンの血液でぼこぼこと穴が空いていったが、同時に積み重なるエイリアンの黒い死骸で覆われていった。

 

「25メートル……C砲、D砲の残弾は約70%。EとFももうすぐ」

「早すぎるぜ……!」

 

 ライバックは冷静にラップトップコンピュータのディスプレイを見ていたが、パクストンは狂人のような目でエントランスを映すモニターを見つめる。

 雷のような発砲音が間断なく鳴り響き、その合間にはエイリアンの甲高い断末魔が響く。

 地獄のオーケストラは、エミリオ達の精神を徐々に追い詰めていった。

 

「スコット、ロスは動かせるか?」

「なんとか。ただ、まだ自力では立ち上がれません」

「背負えるように固定具を付けてくれ。パクストン、ロスを頼めるか?」

「了解しましたよ。地球までお姫様をエスコートしやしょう」

 

 パクストンは焦燥した顔を無理やり引き攣らせながら応える。ロスは不安と申し訳無さが入り混じった表情を浮かべていた。

 

「少尉……あの、あたし」

「ロス。君だけ置いて脱出はしないよ。そんなことしたら、シシュに怒られてしまう」

 

 不安げな表情で見つめるロスに、エミリオは優しげに声をかける。シシュは厳つい顫動音を鳴らしながらロスの頭へ手を置いた。

 

「grrー。イッショ!」

「あぅ」

 

 ぐりぐりと乱暴にロスの頭を撫でるシシュ。ロスは顔を顰めたが、異星の乙女の乱暴な優しさを甘んじて受け入れていた。

 その様子を、スコットは冷めた目で見ていた。

 

「Dは残り50%」

「頼む! もってくれ! お願いだ!」

 

 パクストンの悲痛な叫び声が上がる。

 だが、セントリーガンの残弾は無慈悲なまでに減っていく。

 エミリオは自身のパルスライフルを構え、マガジンを装填した。

 

「皆も装填してくれ。ライバック、非常脱出口はどうなっている?」

「そちらの動きはありません。E、Fは40%」

「……シシュ、準備は良い?」

「grr!」

 

 エミリオに倣いシシュもまた自身の装備を点検する。

 ショルダープラズマキャスターが機械音を鳴らしながら、獲物を探し求めるようにその首を振っていた。

 

「少尉。本当にシシュちゃんは頼りになるんですか?」

 

 コナーがパルスライフルのコッキングレバーを操作しながら疑問を上げる。

 レーザーネットなど様々なオーバーテクノロジーを持つシシュであったが、その技術力に見合った実力を持っているのか。

 大きな体躯を持つわりに子猫のような愛嬌を見せるシシュ。果たして、この異星の乙女が足並みを揃えて戦えるのか、コナーは訝しんだ表情を浮かべていた。

 

「近接戦闘なら僕でも敵わないよ。それに、シシュは随分前から奴らと戦ってたみたいだ。むしろ僕らが足を引っ張りかねないよ」

「そ、そうですか……よし。シシュちゃん、頼むよ!」

「grr!」

 

 ジャキンッ! と無骨なリストブレイドを出しながら、シシュは得意げに胸を張る。

 その様子にコナーは苦笑しつつ、シシュの胸に拳を当てていた。

 

「全門20%を切った」

「ちきしょう……とめらんねえ!」

 

 モニターからは相変わらず4基のセントリーガンが放つマズルフラッシュで白色に染まっている。

 高速徹甲弾がエイリアンの四肢を吹き飛ばし、脳漿を爆ぜ、グロテスクな内臓を細切れにする。

 仲間の死骸を踏み越え、狂ったように進軍を続けるエイリアン。

 そして、それを阻み続けるセントリーガン。

 

 だが、この狂気の光景も、もう間もなく終わりを迎えようとしていた。

 

「C砲の残弾50……20……0! Eも20……0!」

「くっそ!」

 

 ラップトップコンピューターからアラーム音が鳴り響く。

 徹甲弾を撃ち尽くしたセントリーガンはその砲門から硝煙を漂わせ、虚しく標的へと標準を向けていた。

 パクストンはロスの元へ駆け寄ると、勢いよくその小柄な身体を背負う。

 ライバックもディスプレイから目を離し、自身のパルスライフルを構え制御室のドアへと向かおうとした。

 

「待て!」

 

 だが、エミリオがエントランスを映したモニターを見ながら制止をかける。

 見れば、硝煙が立ち込めるエントランス内では動いているエイリアンの姿は無く、黒々とした屍だけが取り残されていた。

 

「食い止めたんだ……!」

 

 エミリオの力強い言葉が制御室に響く。

 ゲート前を映すモニターでは、エイリアン達が文字通りしっぽを巻いて退散する様子が映し出されていた。

 ラップトップコンピューターのディスプレイでは、D砲が24発、F砲は10発を残し、残りの2門は残弾切れの表示が点滅していた。

 

 紙一重でエイリアンの侵攻を食い止めた4基のセントリーガン。

 もしこれらが人の人格を持っていたとしたら、エミリオは迷わずシルバースター勲章を申請していたところだろう。

 それほどの歓喜と安堵が、制御室内にいる海兵隊員達に広がっていた。

 

「本当だ……!」

「ひとまず凌いだわね……」

「やったぜ! おととい来やがれってんだ!」

「ちょ、やだぁ、パクストン!」

 

 感極まったパクストンがロスの頭をガシガシと掻き、その柔らかな頬へキスをする。

 ロスは嫌がる素振りを見せるも、その顔は安堵に満ちた表情を浮かべていた。

 

「grrrr……」

「シシュ。ここは喜ぶとこだよ」

「krrー……」

 

 シシュは大暴れが出来なかったのを受け不満げに顫動音を鳴らす。

 そんな不完全燃焼な異星の乙女に、エミリオがその腰をポンポンと叩いて慰める。エミリオに慰められている内に、乙女はマスクの下でふにゃりと口器を垂れさせていった。

 

「……でも、次は楽に止められないね」

 

 一人黙っていたコナーが、重い息と共に吐いた言葉に一同は再び緊張感を漂わせる。

 エイリアンの死骸で山積みとなったエントランスでは、わずかに残弾を残したセントリーガンが2基あるだけ。

 エントランスからこの制御室までの通路では、丹念に拵えたとはいえ所詮急ごしらえのバリケードで塞がれているだけだった。

 

「あいつらはこちらが弾切れを起こしているのを知らない。別の侵入経路を探すはずだ」

「時間が稼げますね。非常脱出口から来られると厄介ですが」

「そちらは僕たちが見張りに立つよ。シシュがいればエイリアンが侵入して来た時も対処しやすい」

「む……確かに、その通りですが……」

 

 ライバックは危険な場所に率先して立つエミリオにやや難色を示すも、この中で1、2位を争う戦闘力を持つカップルが非常脱出口の見張りに立つのは理にかなっていた。

 ため息をひとつ吐いたライバックは、エミリオの白濁した片目を見つめながら了承の意を返した。

 

「了解しました少尉。とりあえずエントランス前の通路にも見張りを立てましょう。あそこには監視カメラは無いですし」

「そうだね。ライバックはここで監視を続けてくれ。スコットはロス用の背負い子を作成。コナー、パクストン、通路の監視を頼むよ」

 

 ライバックの提案を受け、エミリオは兵士達にテキパキと指示を下す。コナーとパクストンはエミリオにしっかりと頷き、ライフルとモーショントラッカーを抱え制御室のドアへ向かった。

 

「二人共。疲れているとは思うが気を緩めるなよ」

「ああ」

「わかったぜ。でも、これであいつら懲りたんじゃねえかな?」

「パクストン。それはあいつら次第だよ。行くよ!」

 

 静かな戦意を秘めた女機関銃手と、お調子者のエンジニア兵が通路へと向かう。

 モーショントラッカーのブツ、ブツという探知音が、まだこの戦争が終わっていないことを暗示していた。

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 なあリプリー、あんた前にもこのバケモンと戦ったことがあるのか?

 

 ええ、あるわ

 

 そいつはすげえな……で、結局その時はどうなったんだ?

 

 フフッ。どうなったかですって?

 

 

 

 

 

 

 

 死んだわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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