※この作品はR-18です。

プレデター♀のおよめさん   作:範馬勇太郎

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Chapter21.『Desperate』

 

 “ピーター・ウェイランドとローリー・マッケナー。二人の天才について”

 

 21世紀における科学技術の著しい発展は、同時期に現れた二人の天才によって成し遂げられたといっても過言ではない。

 ピータ・ウェイランドは2008年、僅か18才にして父親であるチャールズ・ビショップ・ウェイランド氏(2004年、南極探検中に事故死)からウェイランド社を継いでいる。

 自身が持つその卓越した科学者技術、そして日系企業である湯谷コーポレーションの全面的なバックアップ(湯谷コーポレーション会長ケイコ・ユタニ氏はピーター・ウェイランドの後見人であり、その友好はケイコ氏が死去するまで続いた)を得て、一時倒産寸前だったウェイランド社をより強大に立て直し、2028年にはウェイランド社の時価総額は1000億ドルを超え母体ともいえる湯谷コーポレーションをも上回る規模まで成長させた。

 初の商用利用可能な大気プロセッサの開発、一般的な癌の治療法の確立、亜光速航行可能な核融合エンジンの開発、革新的なバイオティクス、そしてサイバネティックステクノロジーの確立など、ピーター・ウェイランドが遺した偉業は枚挙に暇がない。

 

 我々が現在恩恵を受ける様々な技術の基礎を築いたピータ・ウェイランドは、2093年に老衰によって亡くなっている。だが各種勲章、そして巨額の個人資産など、凡そ人間が持ち得る全ての栄誉を手にした人間の最期には不明な点がいくつかあり、一説には先人文明(これについては別項にて解説する)の遺産を求め、地球から遠く離れた惑星LV-223にて事故死した、という説もある。

 

 ではもうひとりの天才、ローリー・マッケナーとはどのような人物であろうか。

 華々しいピーター・ウェイランドの偉業とは裏腹に、ローリー・マッケナーが遺した功績はほぼ全ての一般大衆が知る事は無い。

 だが、ウェイランド社が開発した技術、特に核融合エンジン開発とサイバネティックス技術開発のほぼ全てが、実はローリー・マッケナ-が開発に携わっていたからこそ成し遂げられた事は疑いようもない事実である。

 

 ローリー・マッケナーは幼少期に先天的なアスペルガー症候群を抱えながらも天才的な記憶能力、いわゆるサヴァン症候群と診断された、風変わりな子供として周囲から奇異の視線を受け育っていた。

 そのローリー・マッケナーの人生の転機は、2018年、米国政府機関が主導する“スターゲイザー計画”に僅か10才で参加したことから始まる。

 公開されている情報が極端に少ない極秘プロジェクトであるスターゲイザーで、ローリー・マッケナーな何を研究していたのかは知る術は無い。

 だが、その後スターゲイザーに出向していた湯谷・コーポレーションの研究員ヒロシ・ヤマダ氏がローリー・マッケナーをリクルートし、ローリー・マッケナーが湯谷コーポレーション先進科学部門に配属されてから度々ウェイランド社へ出向していた記録が残されている。

 

 公開された情報によれば、上記の核融合エンジン開発とサイバネティックス技術の開発に関わっていたとされるが、当時の研究員の証言によると実質ローリー・マッケナーが主導して開発を進めていたとされる。

 ローリー・マッケナーがいかに不出世の天才だったとはいえ、これらの革新的技術を開発出来たのはスターゲイザー計画参加時代に培った様々な知識によるものが大きいとされる。

 眉唾物ではあるが、スターゲイザーは異星人による地球侵略に対するカウンター組織であり、ローリー・マッケナーは父親であるクイン・マッケナーと共に異星人と戦い続けていた、という荒唐無稽な話があるが、これは当時ローリー・マッケナーが同僚研究員に言っていたジョークというのが定説だ。

 

 ローリー・マッケナーはその後湯谷コーポレーションで科学技術の開発に従事し続け、2073年に同社を退職して以降消息は不明である。

 

 この二人の天才がいなければ、個人的な見解ではあるが現在の人類の発展は100年遅れていたであろう。

 それだけに、ピーター・ウェイランドとローリー・マッケナーが実際のところ何を求め、その偉業を成し遂げ続けていたのか興味が尽きない。

 

 

 “21世紀の天才科学者達についての考察”

 西暦2430年、地球連合軍医療開発技術部門ジョナサン・ゲディマン博士が連合政府研究機関に寄稿。

 

 


 

「少尉、奴らだ」

 

 夕刻。日は沈みかけており、山腹が西日を受け朱肉を滲ませたかのような藍色に染まっている。

 精錬所宿泊施設における戦闘でシンシア・スコット一等兵とビル・パクストン上等兵を失ったエミリオ達。

 悲しみに暮れる間もなく、襲いかかるエイリアンの群れから逃れる為、非常脱出口から施設を抜け出した。

 だが、脱出口付近の岩壁に身を隠したエミリオ達は、隙間から3体のエイリアンの姿を見つける。ライバック伍長は顔を強張らせ、エイリアン達へ鋭い視線を向けていた。

 

「……ライバック、どうすればいい?」

「ジャングルへ戻りましょう。ここは開けすぎている。囲まれたら終わりだ」

 

 精錬所は鉱物資源の採掘場も兼ねており、露出した岩くればかりでろくな障壁物が無い。四方を囲まれれば“詰み”であった。

 弾薬も残り少ないエミリオ達は、ただ無数の黒色から逃れるしか生き残る術は無かったのだ。

 

「どのみち大差ないと思うけどねえ」

「だが、奴らのほとんどはまだ宿泊施設のゲート付近にいるはずだ。ここで巻くことができれば時間を稼げる」

 

 やや諦観の念が混じったコナー上等兵。だが、ライバックの闘志は萎えていない。

 仲間を失ったばかりでは百戦錬磨の海兵隊員ですらこの現状に活路を見出すことは難しかったが、それでも僅かな望みをかけ、生き残る術を必死になって探っていた。

 それは、愛しき伴侶を背負うエミリオも同じ。

 

「ライバック、コナー。シシュとロスを頼む。この場にいるエイリアンは僕が倒す」

「少尉! 無茶です!」

「仲間を呼ばれる前に倒さないと。銃を使えば音で気づかれる。ここは、僕に任せてくれ」

 

 引き留めようとするライバックを制し、エミリオは背負っていたシシュを横たわらせる。シシュは時折苦しそうに表情を歪めており、それを見たエミリオもまた表情を曇らせた。

 

「シシュ……」

 

 エミリオはシシュの額を撫でた後、おもむろに乙女から譲り受けたコンビスティックを握りしめた。

 

「ッ!」

 

 投擲。

 一体のエイリアンの頭部を貫き、肉片と共に強酸性の体液を撒き散らす。

 エミリオは間髪を入れず、岩壁から弾丸の如き勢いで飛び出すと、もう一体のエイリアンへ足刀を叩き込んだ。

 

「kyuッ!?」

 

 ゴキリ、と鈍い音が響き、エイリアンの頸部がひしゃげる。傍らにいる最後のエイリアンが襲撃者の存在に気づいた時には、既にエミリオの“間合い”に入っていた。

 

「シィッ!」

「kyuiiッ!!」

 

 一瞬でエイリアンの爪指を掴み、その黒体を地に這わせる。柔を用いた制圧術は、エイリアンに対しても十全に発揮される。

 そのまま二体目のエイリアンと同じように、エミリオは足刀を叩き込んだ。

 

「gyuッ」

 

 短い悲鳴を上げ、エイリアンは絶命した。

 

「相変わらず凄まじいな少尉は……」

「ほんと、素手でアイツら殺せるのは少尉だけさね」

「すごい……」

 

 ライバック達が驚嘆の声を上げながらエミリオの姿を見つめる。

 夕陽を背にエイリアンの死骸の上に立つエミリオの姿は、一種の幻想的な武人のオーラを漂わせていた。

 

「……ッ!? 少尉! 後ろだ!」

「ッ!?」

 

 だが、エミリオ達が知覚していなかった4体目のエイリアンが出現し、醜悪な口から粘液を垂らしながらエミリオの背後に忍び寄る。

 捕食動物が獲物へ近づくかのように、このエイリアンは狡猾に自身の気配を消していた。

 ライバックの声と共に後ろへ振り向いたエミリオ。だが、直後に鋭利な穂先を備えるエイリアンの尾槍が眼前に迫るのを見る。

 

「しまっ──」

 

 刹那の瞬間。

 エミリオは自身の頭部が柘榴のように弾け飛ぶのを幻視し、その身を竦ませた。

 明確な死が、若き少尉へ迫り──

 

 

 ギンッ

 

 

 が、甲高い金属音がなり、エイリアンの尾槍は寸前に切断された。

 

「シシュッ!」

「grrrrrッ!」

 

 見れば、立ち上がりガントレットを突き出す狩人乙女の姿。ガントレットからは小型のレイザー・ディスクが射出されていた。

 やや苦しそうに胸部装甲を押さえるシシュ。それでも、愛する伴侶を助ける為、乙女は轟然と屹立していた。

 

「syaaaaaaaaッ!!」

 

 思わぬ邪魔が入ったことで激高するエイリアン。

 切断された尻尾を振りかざし、切断面から強酸性の体液がシシュへ向け噴射された。

 

「grrッ!?」

 

 ジュウジュウと音を立て、シシュが纏う胸部装甲が焼け爛れる。

 シシュの装備は全て耐酸コーティングを施したものであったが、それは定期的にコーティングをやり直さねば効果は持続せず、BG-386へ降り立ってから装備のコーティングは一度も行っていなかった。

 加えてエミリオと再会した時の河川への入水、非常脱出口での浸水。コーティングはじわじわと剥がれ落ちており、現在その効果はほぼ失われていた。

 見れば、先程エイリアンの尻尾を切断したレイザー・ディスクも酸の血液で溶けており、本来ならばブーメランのように手元に戻ってくる機能を備えていたそれは、無残に溶け爛れ岩くれに転がっていた。

 エミリオが投擲したコンビスティックもまた然り。

 

「grrrrrッ!」

 

 唸り声を上げながら装甲を剥ぎ取るシシュ。

 網状のボディースーツに覆われた大きな乳房が露わになり、窮屈そうに乳肉を食い込ませている。

 だが、そのような官能的なシシュの姿を気にかける者は誰もおらず。

 ライバック達は打ち捨てられた装甲がジュウジュウと音を立てながら爛れていく様を、顔を青ざめさせながら見つめていた。

 

「grrrrrrッ!!」

 

 愛するエミリオ以外に素肌を晒した元凶に向け、乙女は怒りと共にスラッシャー・ウィップを抜く。

 紫電の如き速さで打鞭をしならせると、エイリアンは瞬く間に絡め取られた。

 

「kyu──!?」

 

 直後、シシュが鞭を引く。数瞬動きを止めたエイリアンは短い悲鳴を上げた後、己の肉体がボタボタと輪切り(・・・)にされていく様を知覚しながら絶命した。

 

「す、凄い……少尉も、シシュも……」

 

 僅かの間に繰り広げられた異星の番による無双劇。

 ライバック達は慄くと同時に、この二人と一緒ならば地球への脱出は果たせるのではないか──と、生き残りへの光明が差すのを感じていた。

 

「シシュ、大丈夫?」

 

 肩で息を切らせながら、エミリオはシシュの元へ駆け寄る。

 余人の目がなければ全身で抱きついてその身を労りたい衝動に駆られるも、若き海兵隊少尉は鉄の自制心でそれを抑えていた。

 もっとも、この場合シシュが一切自重しないケースが多いのだが。

 

「grrrrr……」

「シシュ……?」

 

 エミリオはいつもなら自重した自分に構わずむしゃぶりついてくるシシュを想定し身構えていたが、乙女は爪上口器を閉じ、低い唸り声を上げながら宿泊施設の方向を向いていた。

 

「エミ、カタイニク、タクサン、タクサンクル」

「ッ!?」

 

 “硬い肉”というのは、シシュ達の種族が使うエイリアンを指す単語。

 スラッシャー・ウィップで輪切りにされたエイリアンは、死に際に仲間を呼んでいたのだ。

 それを乙女は自身が持つ第六感でそれを感じ取っており、事実エミリオ達も大群が蠢く気配を感じ取り、冷えた汗を全身に滲ませていた。

 

「奴らがここに……」

「少尉、急いでここから離れましょう!」

 

 ぐずぐずしていると大群に囲まれる。

 言外にそう述べたシシュの言葉を受け、ライバックは焦燥感を露わにする。

 すると、一人黙っていたロスが、おもむろに口を開いた。

 

「……皆、あたしを置いて逃げて」

「ロス! 何を言ってるんだい!」

 

 ロスが唐突に言い放ったその言葉。

 コナーは激高してそれを嗜める。

 

「いいの。だって、あたしは、足手まといだし──」

「ロス。それは許さない。もう、これ以上犠牲を出すつもりは僕には無い」

「grr!」

 

 ロスの言葉を、エミリオは強い口調で遮る。

 エミリオに同意するかのようにシシュもまた厳つい口器を揺らして頷いていた。

 

「grrr!」

「シシュ、何か良い案があるのか?」

 

 顫動音を鳴らしながら左腕に装着したガントレットを操作するシシュ。

 ライバックがその様子を見て疑問を上げると、シシュはガントレットを指差した後、拳を握り締めた。

 

「grr!」

 

 そして、まるで打ち上げ花火のように握りしめた拳を開き、指を広げる。

 

「爆弾か……!」

「grr!」

 

 我が意を得たり、といった体で頷くシシュ。

 そのままガントレットの操作パネルを一撫でし、爆弾起動のセッティングを開始した。

 

「あいつらを吹き飛ばすんだね。でも、アタシらも巻き込まれちゃ意味がないよ」

「そのあたりは調整するんだろう。急いでここから離れなきゃならんことには変わりないが……するよな?」

 

 ライバック達の心配を余所に、シシュは手早く起爆をセットする。

 bi、bi、と不安になるような電子音が鳴り始め、シシュはガントレットを非常脱出口へと放り捨てた。

 

「krr!」

「ひゃぁっ!?」

 

 そしてそのままロスを背負い子ごと担ぐ。

 何をモタモタしているんだと言わんばかりにエミリオ達へ視線を向けると、そのままジャングルの方向へ駆け出した。

 

「ライバック、コナー。シシュに続こう」

「りょ、了解しました」

「やれやれ……」

 

 エミリオもまたシシュに続いて駆け出し、ライバック達もまたそれに続く。

 

「スコット、パクストン。あんた達の命、決して無駄にはしないよ……」

 

 コナーがふと後ろを振り返り、そう呟いていた。

 

 

 

 

「grr!?」

「ライバック! 右だ!」

 

 ジャングルへ向け山原を駆け下りるエミリオ一行であったが、当然の如くエイリアン達はそれを阻止しようと行く手を阻む。

 シシュはロスの背負い子を両手で抱え、ショルダー・プラズマキャノンを撃ちまくりながら前方のエイリアン達を駆逐していた。

 エミリオ達もライフルを撃ちながらそれに続き、シシュが撃ち漏らしたエイリアンを確実に仕留めていた。

 

「krr……エミ……!」

 

 だが、ジャングルに近づくにつれエイリアンの密度は増していく。もしこれがシシュ単独であれば逃げ切れたかもしれないが、いかに鍛え上げられた海兵隊員とはいえライバック達の足ではエイリアンの俊敏性から逃げ切れることは難しく。

 ましてや、負傷したロスを抱えながらでは、爆弾が起動する前に囲まれる可能性は高い。

 

「シシュ……!」

 

 幸い、まだ大部分のエイリアンは宿泊施設周辺にいる。

 乙女は立ち止まり、愛しの伴侶へそのつぶらな瞳を向けた。

 エミリオはその瞳を見つめ返し、意志を込めて頷いていた。

 

「ライバック。二手に別れよう。僕とシシュが奴らを引きつける」

「少尉!? 何を──!?」

「ライバック。僕もシシュもまだ死ぬつもりはないよ。それに、この状況は想定していたはずだよ」

 

 当惑するライバックを宥めるようにエミリオは笑顔をひとつ浮かべる。

 ライバックは僅かに逡巡するも、やがて意を決したかのように若き少尉へその精悍な面を向けた。

 

「……その方が全員が生き延びれる可能性があるってことですね」

「理解が速くて助かる」

「了解しました。コナー、ロスは俺が背負う。援護してくれ」

 

 百戦錬磨の海兵隊員は即座に決断すると、シシュからロスを受け取った。

 

「少尉、シシュちゃん。死に急ぐんじゃないよ」

「また、必ず会いましょう。必ず……!」

 

 コナーとロスが別れの言葉を向ける。だが、それは一時の別れでしかない。

 そう信じて、ライバック達はジャングルへと駆け出していった。

 エミリオはその後ろ姿を見つめながら、傍らに控える乙女へと視線を移した。

 

「シシュ。起爆まであとどれくらいかかる?」

「krr」

 

 エミリオの問いかけに、シシュは厳つい指を広げて応える。

 

「5分かな。ギリギリだね……」

 

 ライバック達と別方向へ目を向けながら、エミリオはそう呟く。

 シシュは、おもむろにエミリオを抱き寄せ、その頬に舌を這わせた。

 

「krr!」

「うん。ずっと一緒だよ」

 

 ポンポンとシシュの背中を叩き、エミリオは笑顔を浮かべた。すりすりとエミリオに頬ずりしていたシシュもまた、その口器を広げて笑みを見せる。

 一緒になって笑い合ったエミリオとシシュは、やがて表情を固くさせ、精錬所へと顔を向けた。

 

 ライバック達から無数のエイリアンを引き離しつつ、その群体を爆発の範囲内ギリギリに引き留めながら戦わなくてはならない。

 そんな絶望的な状況に置かれても、エミリオはシシュと一緒なら何も怖くは無かった。

 もし、死ぬようなことがあっても、シシュと一緒だ。

 まだまだシシュと共に生きていたい気持ちはある。だが、最期が一緒なら、それでもいいとエミリオは想っていた。

 

「行こうか」

「krr!」

 

 パルスライフルのコッキングレバーを引く音、そしてショルダー・プラズマキャノンの稼働音が鳴る。

 異星の番は、黒色の怪物達の群れへとその若き肉体を躍動させていった。

 

 

 少し離れた所で、陽炎のような影が複数体揺らめくのを、異星の番は気づくことはなかった。

 

 

 


 

 鬱蒼とした緑の地獄。

 精錬所の方角から閃光が輝くと、大きな爆発音。そして、尋常ならざる衝撃波が押し寄せる。

 ジャングルに棲まう生物達は一様に狂乱に包まれ、森林を騒然とさせる。

 

「grrrrrr……」

 

 ジャングル中の生物が恐慌する中、一体の陽炎から低い顫動音が鳴る。

 紫電に包まれながら、その陽炎はゆっくりと歩を進めていた。

 

「shaaaaaaaッ!」

 

 そんな陽炎に、どこからか沸いた一体のドッグ・エイリアンが飛びかかる。

 だが、奇声を上げて飛びかかった瞬間、そのエイリアンは即座に頭部を裁断された。

 

「……grr」

 

 つまらなそうに顫動音を一つ上げる陽炎。

 見ると、その腕と思わしき部位にエイリアンの黄土色の血液が付着しており、鋭利な刃物を思わせるシルエットが浮かび上がっていた。

 陽炎は腕を一振りし、その醜悪な強酸性血液を落とす。

 ジュウッ、と地面から焼け爛れる音が鳴り、足元の植物は瞬く間に朽ち果てていった。

 

「Shesh……」

 

 顫動音に混じり、陽炎から声が響く。

 死地に取り残された愛弟子を気遣うかのようなその声色は、爆発の衝撃が収まったジャングル内で不思議とよく響いていた。

 

 

 

 

 

 




スカー・プレデター「これをね、こうするとね……ボーンってなるんですよ」
レックス女史「ふーん」
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