ダークエロよろず短編集 作:カード読み込み
大要塞シチエンズアガー
———其の栄光と誇り———
この偉大なる城塞が築かれたは遠き日のこと。
古き伝承によれば、かつて下界を覆い尽くさんとした破滅の象徴――
あの憎むべき黒竜の巣窟である"龍の谷"を、永遠に封じ込めるべく建設されたのだ。
黒竜ただ一柱が歩むだけで地表は灼熱に溶け崩れ、
咆哮一つで大陸そのものが揺るがされる。
斯かる絶対的災厄に対する人類の最後の砦こそが、
この大要塞シチエンズアガーなのである。
そもこの城塞が誇るのは、単なる防御壁ではない。
その機能は至純なる一点———即ち黒竜及び古竜群の外部進出の阻止にある。
あらゆる軍勢を薙ぎ払う黒竜の爪牙を前に、常識的手段の一切は無意味。
ゆえに人智を超えた叡智と勇気が結集され、この城塞は誕生した。
その礎には、「決して通さぬ」―――
ただこの鉄槌のごとき意志が込められているのである。
刮目せよ。ミスリル鋼板の表面に精密刻印された無数の呪印を。
それは流動体と固体を瞬時に切り替える魔術式なり。
堅牢なる鎧の如く振る舞うこともあれば、
柔軟な海の波濤となって衝撃を受け流すことも可能。
物理衝撃に対しては液体金属の緩衝を以って砕けるを許さず、
魔法の奔流には固く硬化した鏡面の如き防御を展開する。
斯様の可塑性こそが、この城壁の真骨頂である。
しかも防御だけに留まらぬのがシチエンズアガーの威容なり。
その装甲は自らを鋭利な槍とも成しえる。
迫り来る魔軍が一歩でも境界を越えようものなら———
城壁各所より突如として生えいずる無数の刺突槍。
ミスリル鋼の穂先が寸分狂わず忌まわしき魔物どもを串刺しにする。
更に言えば、城壁全体は自律索敵機能を持つ。
周辺十数キロに渡る領域の些細な異常震動を感知し、
その反応パターンから脅威度を即座に判定。
人間の思考速度を超越した迎撃体系なのである。
最も誇るべきは、城塞そのものが一種の生物兵器たりうることだ。
戦略的必要に応じて、ミスリルの一部は分解再編成を行い、
防御に特化した厚壁形成モードから
攻撃専用の長大砲門モードへと瞬時に変態できる。
まさに呼吸をするように姿を変え、
侵攻者に対して最も致命的な形態を呈するのだ。
神々は語る。建造開始から完成までの歳月は二百年以上。
総計百万を超える建築師たちが心血を注ぎ、
莫大な量の純ミスリル鉱と各種族の秘伝が投入された。
費用としては天文学的という言葉ですら追いつかない。算定不能。
だがそれを厭わない価値があった。なぜなら———
この城塞はただ一つの信念の結晶だからだ。
「世界を守る」という一点に全てを賭けた戦士たちの魂が
石材一枚一枚に籠められているのだから。
如何なる軍勢をもってしても攻略不可能。
そう言い切ることができるのは、他ならぬこの城塞唯一つであろう。
風雪を耐え抜き幾百年。
未だかつて外敵による陥落記録なし。
今日もなお傲然と屹立し、龍の谷の出口を睥睨している。
人類文明の尊厳そのものが具現化した城塞。
それがシチエンズアガーなのである。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
荒野を三つの影がゆったりと歩いている。
陽光が砂塵を照らし、乾いた風が吹き抜ける中、
談笑しながら進む彼女たちの声は奇妙に響き渡っていた。
褐色の肌をした女が先頭を行く。
その肢体は熟れた果実のように完璧だった。
艶やかな曲線を描く腰つきと膨らんだ臀部が歩くたびにしなやかに揺れる。
豊満な乳房は重力に逆らいながらも自然な形で盛り上がり、
衣服の隙間から覗く谷間が否応なく男心を刺激する。
金色の髪は風になびきながら太陽光を反射し、
黒く細い睫毛に縁取られた切れ長の瞳が油断ならない光を放っている。
唇はぬらぬらと湿っていて、微笑むたびに甘い罠のような印象を与えた。
全身に彫られた神聖文字に似た刻印が褐色の肌に浮かび上がり、
異質な美を添えている。
「やっぱりこうして日向ぼっこするのは最高よねぇ?
地上に出て来て本当に良かった」
レギンは伸びをして背筋を反らした。
その動作だけで豊かな乳房がさらに強調される。
頭部から突き出した歪な角が日差しを遮り、彼女の顔に影を作っていた。
斜め後ろを歩く黒髪の乙女は、
無表情ながらどこか冷ややかな気品を漂わせていた。
白磁のような肌に一切の弛みがなく、
モデルのような均整の取れた体つきをしている。
細身でありながら四肢には鍛え上げられた筋肉が隠されており、
しなやかさの中に硬質な強さを感じさせた。
漆黒の長髪は背中に流れ落ち、風になびく様は水墨画のようで美しい。
「……そう?わたしは別にどうでもいいけれど」
レヴィンは淡々と言葉を返す。
しかし視線の先には荒廃した土地が広がっていた。
かつてこの地域には小さな村があったはずだが、今は瓦礫と化している。
最後尾を歩く赤髪の剣士が溜息混じりに呆れ返る。
切れ長の目に厳しい光を宿しながらも端正な顔立ち。
鍛え抜かれた身体には無駄な脂肪が一切なく、
それでいて胸部の隆起は十分すぎるほどだった。
露出度の高い戦装束からは引き締まった腹部や太腿が見え隠れし、
その姿には戦士としての研ぎ澄まされた美しさがあった。
「まったく……お前達は相変わらず勝手だな」
レヴィスが苦笑混じりに肩をすくめる。
華美な身体を屈めて前方を見やると、遠くに巨大な要塞の輪郭が見える。
難攻不落と言われた大要塞シチエンズアガーだが、
「あれがシチエンズアガーだろ?
こんな田舎にもあんな立派な建物があったなんて思わなかったよ」
彼女の目つきが鋭くなった。これから起きる出来事を予期しているかのように。
「まあ見学だけにしておくのもアリだろう?
たまには文化的なものを見ておいても損はない」
レヴィスが提案する。
正直、レギンの悲願は果たされたのだから、
エニュオとは手を切るべきだと確信していたからだ
一方で黒髪の乙女はただじっと要塞を凝視していた。
「おっきいね……ひとも、いっぱい……」
特に裏表も、興味もない無意味な言葉の羅列。
レヴィンが、一応、妹と規定された存在がどういう感性か、
レヴィスは知り尽くしている。
レギンを第一にし、彼女の意向を最優先にする最強の護衛。
「ダメよ、レヴィス?エニュオたちは契約を果たしてくれた。
私を外に、青空の下に連れ出してくれたのだから……
こちらも約束は、守るべきだわ、可能な限り」
真面目くさった美貌と真摯な言葉。
だが、娘、分身とも言っていいレヴィスには分かる。
アレは力を振るいたい。其の為の言い訳だと。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「豊穣の丘陵を湛えし双子の泉
漆黒の帳に映える白銀の瀑布
幾万の夜を独り眺めし虚ろ
どれほどの艶詞を捧げようと
どれほどの美酒を酌まんと願おうとも
月の弓はいつしか折れ
星の糸は絡れて解けぬまま
焦がれし季節は何処へ消え失せ
熟れた果実は腐臭を漂わせ
ただ一人 時の狭間に取り残されし怨嗟
聞こえぬ鼓動 触れない温もり
砕け散った祈りの欠片を集めても
築き上げた塔は誰にも見えず
砂上の城と嘲笑われるのみ
ならば この両腕に抱けぬ光を呪おう
ならば この唇が味わえぬ甘露を穿とう
枯れ果てた涙腺より注ぐは 業火の河
涸れ果てた心臓より滾るは 怨恨の奔流
銀糸を梳く指もなければ
虚空を灯す篝火もない
孤独なる花は棘を纏い
報われぬ蕾は刃と変わる
嗚呼 千年の乙女の唄よ
永劫の悲嘆に染まれ
黒曜石の瞳に映るは虚空ばかり
黄金律の肉体に宿るは寂寥の嵐
破壊せよ 創造主の眼差しすら届かぬ領域へ堕ちよ
原初の混沌を呼び覚ませ
始原の焔を掻き起こせ
万象を燃やし尽くし灰燼に帰せよ
神と呼ばれたものさえ触れられぬ深淵より顕現せよ
此の世界 等しく醜く儚き泡沫であるならば
此の祈り 呪詛と化し宇宙を満たすであろう
さあ 全てを蹂躙せよ
我 永遠に愛されることなく終わりを迎える者なり
故にこそ この怨念こそが至上の絶対と成る
汝が名は終焉――『影焔惨愛』」
金色の光を纏った唇から漏れ出る声は、
天上の音楽のようでいて地獄の釜を開け放つ終焉の喇叭。
詠唱が完了するにつれ、彼女の周囲の空間が軋み始めた。
まるで時間が歪むかのような異常が起こる。
大地が鳴動し、砂塵が渦巻く。
遠方にそびえる難攻不落の大要塞シチエンズアガーが
その圧倒的な威容を誇示しているのが見える。
要塞内部では緊急警報が轟いていた。
ミスリルと刻印が編み出す防御網が自動迎撃準備に入る。
「外部異常震動を検知! 半径30km内に未知の高エネルギー反応!」
「パターン解析不能! これは魔術体系か!?」
「防御プロトコル第1フェーズ発動! 全員防護室へ避難せよ!」
慌てふためく兵士たちが訓練通りに避難経路へ殺到する。
その瞬間——
ドォオオオオン!!
大地そのものが破裂したかのような轟音と共に、
シチエンズアガーの東側城壁が溶解した。
ミスリル製の強化外殻がまるでバターのように溶け落ちる。
黄金の光球が要塞中央部へ向かって流星のごとく落下していく。
着弾地点を中心に同心円状に広がる衝撃波。
「何ッ!? まさか……これがあの噂の新種モンスター!?」
「馬鹿な! 魔術兵器だと!? 対策マニュアルに無いぞ!」
「隊長! 防衛システムが完全停止しています! 制御不能です!」
司令部ではオペレーターたちがパニック状態に陥っていた。
普段は冷静沈着な将校ですら顔色を蒼褪めさせている。
彼らが対応できなかったのは仕方がない。
シチエンズアガーは黒竜を想定して設計された要塞だ。
たった一人の女が放つ個人魔法など考慮に入れられるはずもなく。
だが真の恐怖はここからだった。
光球が触れた地面から禍々しい紫色の結晶体が芽吹き始めた。
結晶は急速に成長しながら分裂を繰り返し、
瞬く間に大地を侵食していく。
結晶表面には血痕のような赤い斑点が浮かび上がり、
そこから粘液を滴らせる。
「ぐああぁぁぁぁ!!」
「助けてくれッ! 何かが体内に入ってくる!!」
「化け物だッ! 化け物が出たぞおぉぉ!!」
侵食された地面に立っていた兵士たちの悲鳴が上がる。
結晶から伸びる無数の触手が防具の隙間から潜り込み、
皮膚を抉りながら内部へ侵入していく。
抵抗しようとしても遅い。
彼らの肉体は瞬時に結晶と同じ色に変色し始め、
筋肉が歪に膨張して人型を保てなくなる。
骨格が軋む音と共に、
かつて人間だったものは異形の怪物へと変貌した。
「何だコレは……幻術か!?」
「いや違う! 実体を持ってる! 物理攻撃が通じてる!」
「撤退しろ! 弾幕を張って時間を稼げッ!」
混乱の中、生き残った兵士たちは必死に抵抗する。
銃砲火器の雨が異形生物に向かって集中砲火されるが、
「効かねェェ! コイツら普通じゃねぇぞ!」
被弾箇所から新たな触手が生まれる。
粉砕されてもすぐに再生が始まり、
破片から独立した小型個体が誕生する始末。
まさに『呪詛』そのものだった。
要塞外周を護っていた重機関砲塔が次々に沈黙していく。
砲口から噴出する炎が一瞬で掻き消え、
冷却水路が紫色の結晶に閉鎖される。
動力系統が浸食され、操作盤が石化し始める。
オート修復機構すら機能せず、
逆に自らを破壊するように内部から崩壊していく。
「畜生! なんで設備までおかしくなるんだよ!」
「おい! そっちの隔壁閉鎖しろ! 敵が侵入してるぞ!」
「もう無理だ……全部が汚染されていく……」
通信は途絶え、照明がちらつく。
非常電源まで機能停止が始まっていた。
漆黒の闇が要塞内部を徐々に蝕んでいく。
わずかに残った光源に照らされるのは蠢く影となった元人間たちの姿。
耳を劈く絶叫が遠くから聞こえる。
もはや戦闘というより大量虐殺だった。
そんな阿鼻叫喚の地獄絵図を遠くから眺めている三つの影。
「すごいねぇ〜。私の『影焔惨愛』の威力はどう?」
無邪気に尋ねるレギンの声だけが場違いなほど軽やかだった。
黄金の髪が風になびき、額の汗さえ輝いて見える。
褐色の肌が太陽光を浴びて健康的な輝きを放っている。
だが彼女の目の奥には狂気すら感じさせる愉悦が渦巻いていた。
「まぁ……期待以上の成果だな」
「…………」
赤髪の剣士・レヴィスは腕組みしながら呆れたように応じる。
普段なら怒号と共に止めに入っていただろう彼女だが、
今回は諦めの境地といったところか。
横目でちらりと妹分の方を見る。
黒髪の乙女・レヴィンは依然として無言だった。
感情の読めない瞳で眼下の惨劇を見つめている。
その口元がかすかに動いたように見えた。
「……きれい」
呟いた言葉は風に攫われそうなくらい小さかったが、
確かに二人の耳に届いた。
レヴィスが眉をひそめる。
「お前、まさか楽しんでるのか?」
問いかけにレヴィンは首を傾げる。
まるで問われた意味が理解できない幼子のような仕草だ。
その無垢な反応が却って不気味だった。
「よくわかんない。ただ……血の匂いが濃いから……」
彼女の左手がゆっくりと持ち上がった。
細い指先が空中で踊るように動く。
次の瞬間、遠方で何かが炸裂した。
視認不可の速度で飛翔した不可視の拳が
異形生物群の密集地を粉砕する。
衝撃波で半径数十メートル内の物体が消し飛び、
後には擂り鉢状のクレーターだけが残った。
「ちょっ……レヴィンちゃんまで参加する気なの?」
「待て! 後処理が面倒になるだろうが!」
レギンが嬉しそうに声を弾ませる一方で、
レヴィスは焦燥感に駆られて制止に入る。
だがすでに遅かった。
クレーター中央部から紫色の粘液が湧き上がり始める。
蒸気のように立ち昇る瘴気の中から複数の人影が現れる。
いずれも鎧兜を纏った要塞守備隊だったが……
「隊長殿! 応援が必要ですッ!」
「あそこを見ろ! もう一個隊が壊滅しているぞ!」
「早く救援を——グガァッ!」
必死に救助を求める守備隊の足元から結晶が生える。
膝から下が固定され動けなくなった兵士へ向けて、
他の仲間たちが救出しようと駆け寄るが、
「うわっ!?」
「離れろ! 触れるな!」
接触した者から感染が始まる。
悲劇は連鎖するように広がっていく。
そんな混乱の中でもレヴィンの動きは止まらない。
今度は右腕が高速で弧を描いた。
真空の刃が放たれ、守備隊ごと異形生物を真っ二つにする。
「おいィ! 勝手に戦闘に入るな!」
「だって……こいつら弱いから……すぐ終わっちゃうよ?」
レヴィスの怒声にレヴィンは平然と答えながら、
まるで遊びに飽きた子供のような表情を見せた。
レギンはこのやりとりを見て微笑む。
その口元が悪巧みを思いついた子供のように歪んだ。
「ふぅん? じゃあこうしましょう! 私も参加しちゃおっと!」
彼女の宣言と共に再度詠唱が始まる。
周囲の気温が急激に低下し、空気が凍結していくような錯覚。
大気中の水分が過冷却され、微細な氷晶が舞い始めた。
太陽光が乱反射し、虹色の霧が発生する。
幻想的な光景だが、その原因が戦慄すべき現象だと気づく者は少ない。
「禁忌の星霜を統べし幽玄なる冬女王よ
古の盟約に依りて現世に顕現せよ
汝が吐息は終焉を告げる鐘となり
触れるもの全てを永劫の眠りに誘う
此処に我が名をもって解放す——」
詠唱途中でレヴィスが叫ぶ。
「馬鹿! ナニをやっているっ!?」
「だって面白くなってきたじゃない?」
「これが終わったら次はどこに行くんだよ!」
「もちろん青空の下を探検よ! 次は海を見てみたいなぁ」
レギンの目標はあくまで外界への探訪なのだ。
黒竜を撃破するつもりはあるものの、手段については全く考えていない。
レヴィスの制止も聞き入れるはずもなく。
詠唱完了と共に紫色の結晶と氷晶が混ざり合った合成魔法が発動する。
視界一面が氷漬けになりつつあり、その隙間からは紫色の光が漏れ出す。
生き残った兵士たちの断末魔すら凍りつく。
文字通り”地獄絵図”であった。
そんな地獄絵図の中を悠々と歩く三つの影。
周囲すべてが死に絶えるほどの破壊力を持つ魔法が展開されているのに、
彼女たちはまるで日常の一コマを過ごすかのように平然としている。
「ねぇレヴィス~? もっと派手にやってもいい?」
「もう十分派手だッ! ……って聞いてないだろ!」
レヴィスの抗議も虚しく、
レギンは新たなる魔法の詠唱を続けていた。
背後に展開された多重魔方陣が眩い光を放ち始める。
空が歪み、亀裂から別の世界の景色が垣間見える。
そこから現れるのはさらに凄まじい災厄の気配だった。
一方で黒髪の乙女・レヴィンは飽きてしまったのか
自分の爪を弄びながら無関心そうに呟いた。
「つまんない……もっと強い奴はいないの?」
彼女にとって破壊行為は暇つぶし程度の意味しかない。
ただ壊すこと自体に特別な感慨はないようだ。
だがその言葉がきっかけになった。
「面白いわねぇ~♪ じゃあとっておきを呼び出してあげましょう!」
レギンの瞳に危険な光が宿る。
その唇から紡がれる詠唱はこれまで以上に荘厳で邪悪だった。
「古の封印を打ち砕きし奈落の咆吼よ……
星辰が巡り逢う深淵より来たれ……
この地に住まう愚か者どもに我が寵愛を与え給え……」
詠唱と同時に大地が轟音を立てて裂けていく。
要塞の地下部分が完全に消失し、巨大な穴が出現した。
そこから出現するのは異形の巨人。
その全長は要塞の天井を突き破るほどだった。
岩石と筋肉が混ざったような肌に無数の牙が生えている。
瞳は赤く爛々と輝き、口からは溶岩のような唾液が垂れている。
一目で知的生命体とは思えない怪物だ。
「ウ゛ォオオオオオオッ!!!!」
咆哮が大地を震わせ、残存する建物を悉く薙ぎ払う。
巨人は周囲の異形生物群を踏み潰しながら前進してきた。
「おー! これが噂の『岩石巨人』ね?」
「いや……明らかに通常個体ではないぞ!」
レギンの楽しげな声とは対照的に、
レヴィスは冷徹な分析を口にする。
その鋭い目付きが巨人の外見を捉える。
通常の岩石巨人はせいぜい十メートルクラスのサイズだ。
しかしこの個体は50メートルを超えている。
それに加え、全身から放たれる魔力量が桁違いだった。
「さて……どうするレヴィス? 遊び相手よ?」
レギンが振り返り、挑発的な笑みを浮かべる。
対するレヴィスはため息一つ零すと、腰の剣に手をかけた。
「……しょうがない。手を貸そう」
その瞬間、彼女の姿が霞んで消える。
現れたのは岩石巨人の眼前だった。
巨体に臆することなく正面から斬りかかる。
だが巨人の表皮は予想以上の硬度を持ち、
「硬いな……普通の鋼では通用しないか」
剣が僅かに滑るだけで傷一つ付けられない。
そこで彼女は一旦距離を取り直し、大きく深呼吸する。
胸元に刻まれた『穢れた精霊』の紋様が淡く光る。
「宵闇の底より呼び覚まされし魂魄の源よ
我が手に宿りし禁断の澱となりて
仇なす者の運命を蝕め」
「【虚淵の呪葬】発動——」
詠唱と共に彼女の全身から闇が溢れ出す。
それはまるで生き物のように蠢きながら剣と女体に絡みつく。
万物を蝕む付与魔術—虚淵の呪葬。
レヴィス唯一の魔法であり、切り札でもあった。
彼女の肉体も精神も少しずつ削られる諸刃の剣。
しかし今この瞬間に使わない手はない。
「うわぁ……レヴィスの本気モードだぁ!」
レギンは歓声を上げた。
彼女の目には楽しそうな光が宿っている。
まるで舞台鑑賞をしているかのようだった。
一方のレヴィンは興味を失ったのか
再び爪弄りに戻っている。
この程度の雑魚など眼中に無いという態度を隠さない。
だが次の瞬間—
「グオオオーン!」
岩石巨人の背中から突如として無数の触手が生えた。
それらは鞭のようにしなりながら周囲を薙ぎ払う。
触手には紫水晶の棘が生えており、掠るだけで致命傷になる。
「チッ! 思ったより厄介だな!」
咄嗟に回避したものの衣服の一部が千切れる。
露出した素肌に薄く血の滲みが広がった。
痛みなど意にも介さずレヴィスは追撃に移る。
しかし巨人も簡単には倒れてくれない。
両者が拮抗している中で突如として変化が訪れる。
「おもしろくなってきたねぇ?」
レギンが指を鳴らすと同時に、
岩石巨人の体内で紫色の結晶が一斉に発光を始めた。
それらは神経系統のように巨人の全身にネットワークを形成しており、
「ギギギギィィィィ!」
異常な反応を見せ始める。
巨人は自分の意志とは別に動き始め、
「何をした!?」
「んふふ~♪ 私たちのペットにしてみましたぁ~」
つまり彼女は怪物同士を融合させて制御下に置いたと言うことだ。
もはや生態系どころか存在論レベルで崩壊している。
こんな無法な奇跡を行える存在こそが本当の化け物なのかもしれない。
だがレヴィスにそれを考える余裕はない。
制御されたとはいえ岩石巨人のパワーは以前より増しており、
「グオオオーーン!!」
唸り声と共に振り下ろされる巨大な拳。
大地が陥没し衝撃波が周囲を席巻する。
間一髪で避けたものの衝撃吸収しきれずレヴィスが吹き飛ばされた。
「うっ……!」
「あちゃー……大丈夫ですかぁ?」
気遣うふりをしながらもレギンは満面の笑みだ。
一方のレヴィンは……
「やっぱり雑魚だね……でももうちょっと遊んでもいいかな?」
完全に飽きていたはずの黒髪の乙女が久しぶりに関心を示した。
それと同時に周囲の空気が凍りつくような冷気を帯び始める。
「【漆黒の暴風】」
小さな呟きと共にレヴィンの全身から漆黒の暴風が放射状に広がっていく。
美しくも凄惨な暴虐を秘めた風を纏いながら彼女は踊り始めた。
風は刃となり岩を削る。
風は柱となって巨人の脚部を貫く。
風は嵐となって全てを吹き飛ばす。
「オオ……ォォ……」
制御下にあったはずの岩石巨人ですら動揺し始めた。
レヴィンの放つ風には物理的攻撃だけでなく精神的侵蝕作用もあるらしい。
理性と意識の境界線を曖昧にする波動。
「すごいでしょ? レヴィンちゃんは暴風の化身だから♪」
レギンの説明も耳に入らないほどレヴィスは驚愕していた。
これほどまでの破壊力を一個人が行使できるはずがない。
ましてや少女のような外見からは想像もつかない暴力。
しかし彼女の疑問もすぐに解決した。
「うわぁ! 食べてるよ!」
レギンが嬉々として指摘した先には
暴風によって引き裂かれた岩石巨人の欠片を口にするレヴィンの姿があった。
「美味しい……もっと食べたい」
無邪気な言葉とは裏腹に残酷すぎる行動だ。
巨人の核を抉り取り咀嚼する様子にレヴィスは言葉を失う。
人間的道徳観など全く考慮していない原始的な捕食行為。
しかもその摂取行為によってレヴィンの肉体が変化していく。
元々端正だった顔立ちは更に整い、
髪は深海を思わせる藍黒色へと変わった。
背中からは漆黒の翼が生え、
全体的により洗練された輪郭になっている。
「すごい……成長してる……」
レヴィスが目を見開いて呟いた。
本来なら数年かかる身体的変化が一瞬で実現されたのだ。
それはまさに『進化』であった。
こうして岩石巨人との戦闘は終了し、
三人娘は再び要塞跡地へと戻ってきた。
そこには既に生命活動を行っている生物は存在しない。
廃墟と化した施設群の中で一際異彩を放つ巨体があった。
「あれが『最終決戦兵器』?」
レギンが興味深そうに指差した先には
全高百メートルを超える巨大ロボットの残骸が鎮座している。
本来ならば国をも滅ぼす威力を秘めた最終兵器だったらしいが、
「制御装置が完全にダウンしています」
「我々では起動不可能です」
エニュオファミリアから派遣された技術者が報告している。
どうやら管理者権限が奪われた状態にあるらしい。
つまり起動キーとなる人物または組織が別に居るということだ。
「ふぅん? でも壊せば使えるかもよ?」
レギンの提案に対してレヴィスは即座に否定した。
「冗談はよしてくれ。あれを分解したら魔力暴発が発生する可能性が高い」
彼女の冷静な分析によると、
この兵器は魔力融合炉搭載型であり危険度も極めて高いとのこと。
下手に触れば大規模な爆発事故につながる危険性すらあった。
「そうなんだぁ……」
少し残念そうな表情を見せるレギンだったがすぐに切り替える。
彼女の目的はあくまで外界探査であって軍事利用ではないのだから当然か。
そんな会話の傍らでレヴィンはロボットの装甲板に触れていた。
「金属……たくさんある……これなら造れるかも……」
意味不明な言葉を漏らしながら彼女は右手を翳す。
掌から漆黒の粒子が放出され装甲に吸い込まれていく。
すると驚くべきことに亀裂が塞がり始めた。
「何をする気だ?」
レヴィスの質問に対して無言で作業を続けるレヴィン。
数分後には見る影も無くなった巨大ロボットが蘇ったではないか。
それどころか前よりもスマートになり各部が洗練されている印象すらある。
「えぇーーっ!?なんで、そんな事できんの、レヴィンちゃん?
私、搭載した覚えないよ、その手の能力とかっ!」
「レヴィスの能力の応用……だと思う……」
彼女は淡々と説明する。
曰く【漆黒の暴風】によって金属分子の結合を変えつつ
新たな構造を生成したという。
「すごいね! やっぱりレヴィンちゃんは天才だわぁ♪」
レギンは感激して抱きつこうとするもスルーされる。
そもそも接触するのが煩わしいと言わんばかりにレヴィンは離れた位置へ移動した。
「でもこれ動けるの?」
レギンの疑問も最もだ。
いくら外装を修理しても肝心の中身—AI制御ユニットが破損している場合
「大丈夫……私が動かせる」
予想外の発言に二人が驚愕する。
「えぇ〜? どういう事?」
「この兵器の中核システムには外部干渉防止用プロテクトが掛かっています」
「しかしそれすら突破可能な規格外ハッキングコードを持っているというのですか?」
専門家の言葉に対しレヴィンは
「……知らない。勝手に使えるだけ」
実に簡潔な回答。
つまり原理も理屈も一切不明だと言うことだ。
これは完全に未知の技術体系に基づいていると思われる。
試しに起動させたところ問題なく動作開始。
コックピット内で複数のディスプレイが点灯しシステムチェックが行われる。
モニター画面に表示される情報によれば
『全機能正常 バトルモードスタンバイ』
とのメッセージ。
「すっごーい! レヴィンちゃん天才!」
拍手喝采するレギンとは対照的にレヴィスは眉間を押さえて呻いている。
完全に予想外の展開についていけなくなってしまったようだ。
一方で技術者達は皆茫然自失状態であった。
人類史上最高性能と言われる超大型兵器が
謎の少女によって自在に操作されている現状。
「でもなんで動かせるんだろう?」
レギンの純粋な疑問に対してレヴィン自身も答えられない様子。
「わかんない……」
「ねぇレヴィス~! これからどうする? お腹すいたわ!」
跡地を見渡しながらレギンが跳ねるような声を上げる。
黄金の髪が太陽光を受けてキラキラと煌めく。
その無邪気な笑顔は惨状とのギャップが際立っている。
「……そうだな」
レヴィスは大きく息を吐き出した。
城壁だった場所は巨大なクレーターと化し、
かつて誇らしげにそびえていた施設群は瓦礫の山と化している。
その間を永遠に成仏できぬ亡者たちの悲鳴や泣き声が響く。
「とりあえずここで補給は無理だ。次の街を目指そう」
彼女の視線の先には都市の位置を示す地図。
少なくともこの廃墟よりは文明を感じさせる建築群だった。
「あのぉ……レヴィンちゃんはどう思う?」
レギンがくるりと向きを変え、
無言で虚空を見つめる娘へ問いかけた。
「……お腹すいた」
ポツリと呟くレヴィン。
その言葉にレヴィスが溜め息を深くした。
「そうか、じゃあ早めに次の街へ行くぞ」
こうして三人娘の行軍は続く。
背後では依然として破壊された施設から煙が立ち上っているが
彼女らにとっては既に過去のことだった。
途中で何度か遭遇した小型怪物も難なく排除しながら
ついに目的地へ到着する。
都市の入口には警戒態勢の守備隊が待ち構えていたが
三人を見るや否や慌てふためいて後退する者もいる。
明らかに只者ではない雰囲気に気づいたのだろう。
「通行許可書はございますか?」
震える声で尋ねてくる若い兵士。
「必要?」
レギンが首を傾げる仕草で返答すると男は言葉を詰まらせた。
金色の髪と妖艶な褐色肌が放つ圧倒的なカリスマに飲まれたようだ。
「ひっ! し……失礼しました……どうぞお通りください」
道を開ける兵士たち。
その後ろでは恐怖と好奇心が入り混じった視線が集中している。
「ふふん♪ 見て見て~みんな私たちを見てくれてるよぉ」
レギンが両手を振って群衆に愛嬌を振りまく。
「騒ぐな馬鹿者。目立つ」
レヴィスが鋭い注意を入れるも逆効果だった。
むしろ美しく凛々しい騎士の叱責こそが
人々の注目を集めてしまう結果となった。
一方でレヴィンは全く無反応。
他人の視線など意にも介さずただ黙々と歩く。
「いらっしゃいませ~こちらの食堂はいかがでしょう」
客引きの女性が声をかけてくる。
店内から漂う食欲をそそる匂いにレギンが足を止める。
「おっ! いい匂い♪ 入ってみようよ?」
店員の誘導でテーブルへ通され
メニューを見ながらワイワイと話し始める。
三人娘の登場で一瞬店内が静まり返ったが
すぐに日常の喧噪が戻る。
「じゃあ私はこの特製スパイシースープとパンケーキセット!」
レギンが目を輝かせて注文するとレヴィスも
「同じものを。あとワインを一杯頼む」
と言い添えた。
「わたしは……」
レヴィンが迷う仕草を見せたので店主が助け舟を出す。
「今日のオススメはこちらの獣肉煮込みですがいかがでしょう?」
その言葉に彼女の目が少し輝いた気がする。
「……それで」
普段から寡黙な彼女にしては珍しく明確な意思表示だ。
店主も嬉しそうに調理へ取り掛かる。
待つことしばし。
目の前に並べられた料理を見て三人娘の反応は様々だ。
「うわぁ~美味しそう!」
レギンの歓声に合わせて湯気を立てるスープ。
独特の香辛料の香りが鼻腔を刺激する。
「確かに見た目は良いな」
レヴィスが冷静に評価しながらグラスを傾ける。
その横ではレヴィンが皿の中身を凝視している。
「いただきます」
短く告げて肉塊を口へ運ぶ。
途端に表情が微妙に緩んだように見えた。
「どう? おいしい?」
レギンの問いかけにも無言で頷くのみ。
しかしその食事ペースは明らかに速くなっていた。
「よかったぁ。レヴィンちゃんがあんな顔するなんて初めてじゃない?」
レギンが嬉しそうに言うとレヴィスも同意する。
「確かにな。普段はほとんど表情を変えない娘だから」
こうして和やかな昼食時間を過ごした後
再び街探索へ出かける三人。
その立ちふるまいには、
数万の命を犠牲にした感慨など微塵もありはしなかった……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
シチエンズアガー要塞跡地は形容しがたい惨状を呈していた。
遠くから眺めてもわかる漆黒の焦土は直径数十キロメートルにも及び、
かつて堅牢を誇った城壁の痕跡は微塵もない。
広大なクレーター状の窪地には無数の紫煙が立ち昇り続けている。
「……なんて酷い有様だ」
最初に現場を目にしたガレスの第一声は単なる嘆息だった。
彼の豊かな髭を蓄えた顔には深い苦渋が刻まれていた。
【重傑】と呼ばれるベテラン戦士でさえ言葉を失うほどの破壊規模だ。
「一体誰がこんな事を……」
ティオナが呆然と呟く。
彼女の大きな碧眼には不安と怒りが交錯していた。
「……人間の所業ではないな」
背後からリヴェリアの低く沈着な声。
翡翠色の髪が微風に揺れ、整った額に深い皺が走る。
エルフの姫君として培われた洞察力が瞬時に状況分析を開始していた。
「確かにこれは常識外れの被害規模だよ」
フィンが金髪の前髪をかき分けながら呟く。
その青い瞳は冷静に地形の変化を追っていた。
「まるで大地が抉り取られたような……」
彼らは慎重に歩を進めながら詳細な調査に入った。
近づくにつれ異臭が鼻腔を刺激する。
硫黄や金属酸化物などが混ざった強烈な臭気だ。
「ここにはまだ熱気が残ってる……」
地面に手を当てたレフィーヤが顔をしかめた。
魔法使い特有の敏感な感知能力が彼女の肌を通して伝わってくる。
地表面温度は平常時の数十倍に達していた。
「何か特殊なエネルギーが残留しているようです」
彼女の警告に皆が頷いた。
周囲には紫色の燐光を放つ結晶片が散乱している。
自然界では決して見られない人工的な断片だった。
「団長、これを見てください」
先頭を行くティオネが瓦礫の山から奇妙な物体を取り出した。
彼女の腕で簡単に掴めるほどの大きさだが、
「これは……魔石?」
一同が興味深そうに覗き込む。
半透明の宝石のような物体には
内部に複雑な紋様が刻まれており、
「いいえ違う! これは『賢者の石』だ!」
突然大声を上げたのは随行していた老学者だった。
白髪と深い皺が刻まれた顔に緊張が走る。
「数百年前に失われた古代技術の産物ですよ!
この結晶を解析すれば魔力増幅器として機能したはずです」
フィンが結晶を受け取り慎重に角度を変えて観察する。
内部の回路状模様が微弱な光を放つのが確認できた。
「もしこれを使って大量の魔力を一気に解放したとすれば……」
彼の推理は最悪の事態を示唆していた。
仮に何万体もの魔物が一斉に暴走したとしても
ここまでの破壊は不可能だろう。
ならば可能性は一つ—
「レヴィス……」
「闇派閥が関わってる?」
ガレスの呟きにティオネが鋭く反応した。
その翠玉色の瞳に激しい怒りが灯る。
「あの忌々しい怪人め!」
彼女の叫び声は戦場跡にこだました。
かつて同胞を多く失った恨みが再燃したのだ。
「落ち着くんだティオネ。まだ確定した証拠はない」
フィンの制止に舌打ちを返すもののティオネは矛を収めた。
「それにしてもこの被害範囲は異常だ」
リヴェリアが周辺を指し示しながら語る。
「単なる魔力暴走では説明できない均一性がある」
彼女の指摘は的確だった。
円形に広がる破壊痕は完璧な幾何学模様を描いている。
まるで巨大なレンズを通して照射されたような……
「まるで何かを『浄化』したみたい……」
突如としてアイズが口を開いた。
普段はあまり意見を述べない彼女が発言したことに
仲間達が驚きの視線を向ける。
「浄化だって?」
ティオナが首を傾げる。
しかしその単語に閃くものがあったのかレフィーヤが顔を上げた。
「あっ! 洞窟内の遺跡にも似た痕跡がありました!
巨大生物の骨だけが原型を留めていて他は何も残っていないんです!」
「つまり何かを選択的に焼き尽くしたというわけか」
ガレスの低い声には畏怖が含まれていた。
無差別破壊ではなく特定目標への執拗な攻撃。
それがもたらす恐怖は計り知れない。
「やはり闇派閥の新兵器か……それとも別の存在なのか」
フィンの独白は全員の胸中に共鳴した。
この一件の真相究明は容易ではないと悟りつつも
彼らの冒険は続くしかないのだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
シチエンズアガー消滅現場からは様々な情報が持ち帰られたが
決定的な証拠は何一つなかった。
ただ一つ明らかなことは
「何かが起こっている……」
オラリオへの未曾有の脅威が刻一刻と
接近しているという事実だけだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
夜の帳が降りたアラモ砦。
月光に照らされた城壁の上で、一人佇む姿があった。
【純潔の園】の二つ名を持つアリシア・フォレストライトである。
涼しい夜気を肺いっぱいに吸い込む彼女。
しかし心は休まることを知らなかった。
(なぜ……この場所に)
翡翠色に輝く月を仰ぎ見ながら自問する。
【ロキ・ファミリア】の二軍所属とはいえ、彼女ほどの魔導師が
僻地の警備任務に駆り出されるのは異例だった。
「ふう……」
軽く息を吐くと、胸元の膨らみが微かに上下する。
緑を基調としたドレスの下に隠されたLカップ級の乳房が
布越しにも存在感を主張していた。
下着をつけていないため、僅かな動きでも柔らかな隆起が確認できる。
(……集中しなければ)
己に言い聞かせつつも、視線は自然と自らの肢体に向けられてしまう。
膝上丈のスカートから覗く太腿は健康的な艶を帯びており
100センチ超えのヒップはドレスを窮屈そうに押し上げていた。
(いけない……このような考え方はエルフとして恥ずべきもの)
清廉潔白を旨とするエルフの一族に育った彼女。
自らの魅力的な肉体に対する認識は薄かった。
むしろ羞恥心の方が強く働くため、
「……」
反射的に肩をすくめて身を縮める。
それでも隠しきれない豊満な曲線は
月明かりの中で妖しく陰影を描いていた。
遠くから梟の鳴き声がかすかに届く。
その孤独な響きが彼女の心を掻き乱す。
(誰かに見られているような……)
振り返った視線の先には闇だけが広がっている。
しかし彼女の研ぎ澄まされた感覚が何かを捉えていた。
獣か魔物か……あるいは……
「……っ」
不意に強風が吹き抜けた。
薄手のドレスが煽られて乳房の谷間が露わになる。
「みっ……見えてしまって……」
慌てて襟元を押さえるアリシア。
普段ならあり得ない不用意な行動に狼狽する。
その頬は赤く染まりつつあった。
(今夜は妙に……熱っぽい)
腹部に鈍い疼きを感じながら自省する。
日中の訓練疲れか、あるいは気候のせいだろうか。
いずれにせよ職務に支障が出るのは避けたいところだった。
月光が石畳を照らすアラモ砦。
城壁上のアリシアがひとり息を吐く。
彼女の視線は遠方へ向けられていたが、
(……何かいる)
研ぎ澄まされたエルフの五感が危機を報せていた。
闇の中に蠢く気配。
そして彼女の足元で不自然に揺れる影。
(まさか……こんな場所に魔物が?)
ゆっくりと視線を落とした刹那。
月明かりに浮かび上がったのは異形の影だった。
八本の足が蜘蛛を思わせるが、
その胴体は昆虫の殻と機械の歯車が融合した奇怪な構造。
「な……っ!」
声にならない悲鳴が喉を塞ぐ。
【ヴァラサイト】と呼ばれる穢れた精霊とエニュオの合作だ。
メカニカルな外骨格に覆われた節足は精密な機構のごとく連動し、
生体組織と思しき緑色の粘膜が隙間から脈打っている。
背部の突起は鋭利な刃物のように研ぎ澄まされ、
「来るな……近寄るなっ!」
魔力を込めた呪文詠唱の準備に入るアリシア。
しかしヴァラサイトの動きは予想外だった。
地面を這うように接近してくると思ったが、
「後ろっ!?」
振り返ろうとした刹那。
別個体の鋭い尾針が彼女の腰部に襲いかかる。
(間に合わない……!)
「――ッ!」
肉を穿つ鈍い感触とともに視界が暗転する。
意識が混沌に落ちる寸前、背後に感じた温もりは死の前の幻覚か。
---
気がつくと冷たい床に伏せていた。
「う……」
起き上がろうとした途端。
腹部を焼くような熱感が奔り抜ける。
「あ……これは……っ!?」
恐るおそる視線を落とした先に広がっていたのは
信じがたい光景だった。
緑色の粘膜質な触手が彼女のドレスを裂き、
「ああ……そんな……まさか……」
柔肌に這う半透明の管が臀部から股間へ延びている。
そして背中に感じる人肌のような温もり。
「嘘よ……こんなの夢に決まって……」
必死に否定しようとする思考を打ち砕くように。
背後の「モノ」が蠢いた。
「んぐっ……!」
下半身を襲う強烈な衝撃。
ヴァラサイトの管が膣内へ侵入を始めたのだ。
「痛い……ああっ……!」
涙を流しながら耐えるアリシア。
だが不条理なことに痛みとは異なる感覚も混在している。
女性特有の性感帯を擦る不気味な蠕動。
「いや……止めて……こんなこと……」
拒絶の声とは裏腹に彼女の秘裂は徐々に潤いはじめていた。
ヴァラサイトの分泌液が媚薬のように作用しているのか。
あるいは本能的に抵抗する肉体の反応なのか。
「ううっ……んっ……」
噛み殺す嗚咽の合間から漏れる甘い吐息。
清廉潔白を旨とする彼女の矜持が音を立てて崩れていく。
蜘蛛の尻から伸びた肉管が前後に抽送を繰り返す。
「お願い……誰か……助けて……」
応える者はいない。
冷たい月光が荒らされた肢体を残酷に照らすだけ。
だが彼女の願いは別の方向に受け止められたようだ。
背中に覆い被さったヴァラサイトが蠢く。
「あ……なんなの……これ……」
突然湧き上がる胎内の疼き。
排卵期を思わせる熱量が中枢神経を焦がす。
「ああ……ダメ……こんなの耐えられない……!」
抗いがたい欲望が理性を塗り潰していく。
彼女の指が無意識にドレスの裾へ伸びた。
裂かれた布地の隙間から白い指が花弁に触れる。
「あんっ……気持ち……いい……」
ヴァラサイトの動きに合わせて指を蠢かす。
清らかだった聖域が淫らな湿地へ変わりつつあった。
腰を揺らし始めたアリシアの背後でヴァラサイトが笑うように光る。
その光沢は紛れもなく喜びの色。
「もっと……欲しいの……」
自ら求めはじめた乙女の姿に勝ち誇るように。
蜘蛛の本体から新たな管が伸びる。
先端は男性器のような形状を模した禍々しい肉棒だ。
「ひっ……!」
怯えとともに期待を孕む瞳が宙を彷徨う。
彼女の背後の「人間のようなもの」が立ち上がる気配。
エルフの耳朶が拾った微かな衣擦れの音。
「あなたは……誰?」
振り返った視線の先には
アリシアと同じ銀髪と翡翠色の瞳を持った男の上半身があった。
腰から下はヴァラサイトの本体と融合している。
「私? 君の忠実な奴隷さ」
低く甘い声色に思わず背筋が震える。
彼女の本能は警鐘を鳴らすのに身体は反応してしまう。
「お願い……私を汚さないで……」
哀願するアリシアに微笑み返す異形の男。
その股間の巨大な肉棒が血管を浮かせて脈打つ。
「安心したまえ。これから君は僕の"純潔の花嫁"になるのだから」
冷たく冴えた月光のもと
エルフの至宝【純潔の園】の烙印が
醜悪な怪物の前に捧げられようとしていた。
冷たい石畳の上。
月光が淫らに輝く肢体を舐める。
アリシアの豊満な乳房が異形の爪に捕えられていた。
「ふっ……んっ……」
銀糸の髪を乱しながら彼女は喘ぐ。
ヴァラサイトから生えた男の手が巧みな指使いで球体を握り潰す。
Lカップ級の柔肉が搾られ隆起するたび、翡翠色の瞳が潤む。
「綺麗だ……君の乳肉は完璧な弧を描いている」
男の上半身──蜘蛛体と融合したそれは囁くように賞賛した。
機械油のような液体が滴る指先が頂を転がす。
「いやっ……そこは……触らないで……」
懇願虚しく硬直した突起が爪で弾かれる。
背筋を走る電流に彼女の腰が跳ねた。
「素晴らしい反応だ。純潔の園と称される君がこんなにも敏感とは」
嘲り混じりの賞賛に頬が熱くなる。
アリシアは歯を食いしばって耐えたが、
触手による秘所への陵辱がそれを許さない。
「んあっ!?」
突如として股間を刺す鈍痛。
ヴァラサイトの肉管が挿抜を速めたのだ。
「同時責めが弱点かな?」
男は微笑みながら乳房への攻めを激化させる。
両手で根元から先端へ搾るように圧迫。
まるで母乳を搾取するかのごとき粗野な動きだ。
「あぁっ!やめてっ……そんなに強く……揉まないでぇ!」
涙声での哀願も徒労に終わる。
男の掌にはエルフ特有の尖り耳と同じ位置に緑色の鱗模様が浮かんでいた。
生物と機械が融合した異形の証が月明かりに蠢く。
「ほう、これが本物の柔らかさか」
ヴァラサイトの爪が乳腺を撫でる。
その冷たさが皮膚に侵蝕する感覚に彼女は恐怖を覚えた。
「やめて……本当に……壊れちゃう……」
震える声を押し殺しながらアリシアは懇願する。
しかしそれこそが相手の嗜虐心を煽るのだった。
「構わないよ。純潔を散らした君はもう我が物だからね」
嘲笑と共に男の手に力が込められる。
巨大な果実が掌の中で潰れるかと思うほどの強圧。
「ひゃああぁっ!!」
絶叫とともに弓なりに反る肢体。
同時に下半身を貫く肉管の律動が加速する。
蜜洞から溢れ出る透明な潤滑液が大腿を濡らす。
「どうだい? 生殖器官を直接刺激されながら乳房を開拓される気分は」
男の指先が乳首を摘まみ上げたまま捻じる。
クリトリスへの攻撃にも等しい神経直撃。
「ああっ!だめっ……一緒にされると……おかしくなるっ……!」
理性の枷が音を立てて軋む。
エルフとして数十年以上保持してきた純潔の概念が
醜悪な異形の蹂躙によって踏みにじられていく。
「おかしくなればいい」
異形の男は慈愛すら感じさせる声音で囁いた。
しかしその手つきは容赦なく乳房を弄び続ける。
左側は揉みしだかれ右側は転がされ
時折爪先が皮膚を浅く削る微痛が快楽と同化する。
「純潔というのは偽りだ」
男の言葉が麻痺した思考に染み入る。
「本当の君はこんなにも淫蕩な肉体の持ち主なのに」
ヴァラサイトの管が膣壁を擦るピストン運動。
乳房への愛撫と同期する三方向からの同時責め。
アリシアの意識は急速に霞み始めていた。
(いけない……感じちゃだめ……)
必死に自己抑制しようとする意志とは裏腹に
子宮口が収縮し快楽物質を噴射する。
蜜穴からは泡立った愛液が溢れ出た。
「ほら……もう逃げられないだろう?」
異形の男が嗤う。
乳房の谷間に顔を埋めると硬直した乳首を口に含む。
「ふあぁっ!?」
温かい口腔粘膜が頂を包み込んだ瞬間
全身を走り抜けた激悦。
アリシアの白い喉が天へ向かって晒される。
「可愛い悲鳴だ」
男の舌先が螺旋を描くように乳輪をなぞる。
同時に指先で反対側の突起を挟みつぶす。
左右非対称の刺激が神経を混乱させる。
「あっ……あっ……あんっ……!」
もはや自分の意思で声を抑えられない。
清廉潔白の看板を掲げてきたエルフの喘ぎが
月光に満ちた廃砦に響きわたる。
「さて」
異形の男が乳房から顔を離す。
唾液で濡れた突起が月明かりに妖しく光る。
「本当の儀式を始めようか」
ヴァラサイト本体から新たな触手が出現した。
先端には針のような小さな管が無数に並んでいる。
「純潔の園に住まう種子が必要だ」
その言葉の意味を理解する前に
触手がアリシアの乳房へ近づく。
「まさか……やめて!そこに入らないでっ!」
絶望に歪む顔を見下ろしながら
異形の男が満面の笑みを浮かべた。
「祝福するがいい。君の大切な母胎に宿る生命の源を」
細い管が雪のような肌に潜り込んだ。
乳腺へと浸透していく異物感。
清らかな泉へ毒が投じられるような背徳的な快楽。
「いやぁあぁあっ!!」
月光が血飛沫を映し出す。
アリシアの悲鳴が星屑へと消えていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
冷たい石畳の上で裸身をさらすアリシアの姿はまさに絵画の一場面だった。
月光に浮かび上がる彼女の肌は
ヴァラサイトの粘液で光沢を得て淫靡な輝きを放っている。
豊満なLカップの乳房が異形の指によって自由自在に形を変えられていた。
左胸は親指と人差し指で乳輪を抓まれ
右胸は掌全体で揉みしだかれている。
エルフ特有の透き通るような白肌が朱に染まる様は
見る者すべてを虜にする美しさだった。
「ほぅ……見事な反応だ」
ヴァラサイトから生えた男の上半身が
満足げに嘆息する。その唇の端から垂れる唾液が
触れた彼女の鎖骨へ妖しい跡をつける。
「やめて……もう……やめてください……」
懇願の声はかすれ切っていた。
しかし乳房への攻めは激しさを増すばかり。
右乳首を爪先で擦りながら左側を搾る動作は
熟練した搾乳工よりも巧妙だ。
「ふあぁっ!」
突如走る電流のような刺激。
乳腺に侵入した細管が微弱な波動を送り込んでいる。
清らかだった母性器官を穢される背徳感が
アリシアの神経を灼く。
「あっ……いやぁ……そこは……私の子供を育てる場所なのに……」
涙を流しながら訴えるも異形の男は嘲笑するばかり。
「そうさ。だからこそ価値がある」
ヴァラサイトの管が乳首へ直接接続された。
チューブの吸引により引っ張られた頂が
月光の中で痛々しく屹立している。
「ああっ!痛いっ……そんなに吸わないでぇ!」
悲鳴に近い声を上げるアリシア。
しかしその声とは裏腹に下半身からは
粘度のある液体が滴り落ちていた。
純白の太腿を伝うその軌跡は妖しく艶めいている。
「ほう……上半身を苛められながら下半身は正直なものだな」
異形の男が嬉々として秘処を指摘する。
肉管が刺さった秘裂からは
白濁した愛液が泡を立てて溢れている。
「ち……違います……これは……あなたが汚いことをするから……」
必死に否定するアリシアだが
自らの指が無意識に内股へ伸びていることに気づかない。
清廉を旨とするエルフの禁忌を犯す矛盾が
彼女を更なる苦悶へと追い込む。
「認めろ。君の肉体は喜んでいる」
ヴァラサイトの管が抽送を再開する。
子宮口を叩く衝撃に加え
乳腺からの波動が連携して体内を波打たせる。
「ああぁっ!だめっ……一緒はだめぇえっ!!」
全身を貫く激悦にアリシアの肢体が弓なりに反る。
翡翠色の髪が振り乱され汗粒を撒き散らす光景は
禁断の祭壇における贄の儀式にも見えた。
「いいぞ……もっと狂え」
異形の男が哄笑しながら乳房への攻めを加速させる。
左右交互に爪で弾いたり捩ったり。
時には両手で挟み込んで圧迫したり。
「ひゃああんっ!!」
巨大な質量が胎内で蠢く。
ヴァラサイトの生殖器官は単なる異物ではなかった。
「んあぁ……っ!」
アリシアの声が震える。
男根は彼女の弱点を見極めるごとに変形を繰り返していた。
カリ高になった先端がGスポットを引っ掻き、
竿部分が無数の突起で満遍なく肉襞を刺激する。
「素晴らしい……君の反応が全てを教えてくれる」
ヴァラサイトから生えた男が嗤う。
彼女の膣圧に呼応するように亀頭が膨らみ、子宮口に吸いつくように密着する。
「やめて……そんなに奥まで……っ」
アリシアの懇願は途中で途切れた。
半機械的な男根が規則的な間隔で脈動を始めたからだ。
「これは面白い」
「君の肉壁の収縮パターンを記憶したようだ」
突起が独立して振動し始め、膣内全体をマッサージするような快楽の嵐。
同時にヴァラサイト本体から新たな触手が伸び、尻穴へ侵入する。
「ひぃっ!?」
「そこは……だめ……っ」
前立腺を刺激されて声が裏返るアリシア。
二穴同時責めに加え、乳房を拘束する触手までもが乳腺内で伸縮を始めた。
「純潔の園に咲いた花がここまで淫らに育つとは」
男の囁きとともに腰使いが激化する。
巨大な肉柱が出入りするたびに愛液が飛び散り、石畳に水溜りを作る。
「いやぁ……見ないで……こんな姿……」
羞恥と快楽が混ざり合う中で自我が崩壊していく。
清廉潔白の仮面が剥がれ落ち、露わになったのは女の本性だった。
「もうすぐだ」
「君の肉体は完全に私の支配下にある」
ヴァラサイトの管が最後の仕上げに入る。
子宮内壁を這う無数の棘状突起が活性化し、
「ひぎぃいっ!!」
「出る……出てる……熱いのが……っ!」
精虫に似た微粒子が放出される。
それは受精卵ではなく「穢れた種子」と呼ばれる代物で、
「あああああーっ!!」
子宮から脳髄へ駆け上がる電流。
純潔を奪われるどころかDNAレベルで書き換えられていく感覚に絶叫するアリシア。
「これで完成だ」
「君は私の永遠の花嫁となった」
男の宣告とともに触手が全て抜け去る。
解放されたはずの肉穴は却って空虚感を訴える。
「嘘……なんで……?」
困惑するアリシアの腹部に微かな膨らみ。
穢れた種子が早速芽吹き始めた証だった。
「心配はいらない」
「君の母胎は永遠に守られる」
冷たい月光が石畳に染み込むアリシアの愛液を煌めかせていた。
「んあ……ぁ…」
恍惚とした吐息が震える唇から漏れる。
ヴァラサイトから生えた男根は依然として
彼女の胎内を貫いたまま、不規則な間隔で脈打っていた。
「素晴らしい感度だ……純潔の園に咲いた蕾がここまで開花するとは」
異形の男が感嘆の声を漏らす。
その下半身は蜘蛛型の怪物と完全に融合しており、
鎧のような外骨格からは緑色の粘液が滴り落ちていた。
「やめて……もう……出さないで……」
アリシアの懇願は虚しく響く。
腰を引こうと試みるも背後から絡みつく触手がそれを許さない。
豊満な臀部がヴァラサイトの腹部に押し付けられたまま固定されている。
「そう言われても困るな。私は君の良き番(つがい)なのだから」
男は嗤いながら腰を軽く突き出す。
すると内部で巨大なものが蠕動し始めた。
「ひっ!?」
子宮口をこじ開ける異物感にアリシアの背筋が硬直する。
それは男根よりも硬質で丸みを帯びた物体だった。
「これが我らを永遠に結びつける契約の証だ」
豆粒ほどのサイズの球体が膣道を遡っていく。
通常の精液とは明らかに異なる存在感。
まるで生き物のように自律的な動きを見せるそれが
「待って……そこは……!」
子宮頸部を通過した瞬間。
アリシアの全身を未知の衝撃が貫いた。
「んはぁぁあっ!!」
絶叫と同時に訪れる深いオルガズム。
クリトリスを直接刺激されたかのような鮮烈な快楽が
脊髄を通って脳天まで昇り詰める。
「感じるだろう?これが本当の交わりというものだ」
異形の男が得意げに告げる。
子宮内へ侵入した球体は粘膜に吸着し始め、
無数の細い根を伸ばしていく様子がアリシアに伝わってくる。
「あぁ……っ…そこに入ってきてる……っ」
胎内の最深部から広がる奇妙な温もり。
同時にヴァラサイトの肉茎から新たな液体が放出される。
「ふああんっ!!」
二重の刺激に思考が溶解していく。
本来なら苦痛を感じるべき子宮への異物侵入が
なぜか底なしの快感に変換されていた。
(なんで……こんなことが気持ちいいの……?)
清廉潔白を旨とするエルフの矜持が
脆くも崩れ去ろうとしている現実。
しかし下腹部から湧き上がる愉悦の波に抗う術がない。
「見てみろ」
異形の男が鏡状のパーツを胸部装甲から展開する。
そこに映し出されたのは
淡く光を帯びた腹部の中央部。
豆粒ほどの異物が脈動し、その周囲に複雑な紋様が浮かび上がっている。
古代文字とも魔法陣ともつかないそれは
「私の種を君の肉体に同調させるために必要な刻印だ」
アリシアの胎内に植えつけられた侵略者が
既に彼女の一部になりつつあることを示していた。
「いやぁ……そんなことしたら……わたしじゃなくなっちゃう……」
泣きじゃくりながらも腰は勝手に動き始める。
膣壁がヴァラサイトの男根を搾りあげるように収縮し、
「ふふっ……身体の方は素直だな」
男の嘲笑に耳を塞ぎたくなる。
しかし下半身を支配する深すぎる快感が
「ああ……だめ……また……イッちゃう……っ!」
思考停止させるほどの暴力的な陶酔をもたらす。
アリシアの白い喉が月に向かって弓なりに反り上がり、
その頂点で彼女はついに絶叫した。
「ああぁぁぁぁ―――っ!!」
子宮内の球体が完全に定着した瞬間。
エルフの純潔は醜悪な怪物によって永遠に改変されたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アラモ砦はいつも通りだった。
風化した石垣の上から陽が差し込み
兵士たちが井戸水を汲む音が響く。
ただ一点だけ異なるのは【純潔の園】の姿だった。
「おはようございます皆様」
エルフ特有の銀髪をまとめたアリシアが現れる。
昨晩の出来事が嘘のように毅然とした表情で歩み寄る。
「おはようアリシア」
「昨日の見張りご苦労さま」
ティオナとレフィーヤが挨拶を返すが二人は微かに首を傾げた。
【純潔の園】の腹部が心なしか膨らんでいるように見える。
しかも歩き方に若干のぎこちなさがある。
「どうされました?私の顔に何か付いていますか?」
アリシアが気遣わしげに尋ねると
ティオナは慌てて話題を変えた。
「そっそれより今日の任務だけど、西門の修復作業を手伝ってくれないかな?」
レフィーヤも会話を繋ぐ。
「あっ、私も同行させてください。魔道具の設置作業があるので」
乾いた風がアラモ砦の石垣を撫でていく。
砂塵が舞う中で彼女の銀髪が朝日に煌めいた。
「西門ですか……承知しました」
アリシアは静かに答えながら腰に手を当てる仕草をする。
それが逆効果だと本人は気づいていない。
エルフ特有の長い指が緩やかな弧を描くウェストラインを強調し、
近くにいた衛兵が思わず二度見する。
「あの、荷物はこちらに置いてください」
指示を出すアリシアの声色は落ち着いているものの
言葉の端々に微かな吐息が混じる。
呼吸を整える動作さえ妙に艶めかしい。
胸元に巻いたサッシュが豊満な乳房に食い込み、
Lカップの双丘が一際目立ってしまう。
(……あら?)
本人が怪訝そうに眉を寄せた瞬間だった。
普段ならぴったりと胸の下で留まっている紐が少し緩んでいる。
昨夜の戦いで傷んだのだろうか?
「んっ……」
微かに身じろぎした拍子に胸部が大きく上下する。
まるで重力に逆らうように揺れる様子を見て
近くにいた女兵士が反射的に顔を背ける。
「だ、大丈夫ですよ!私が持ちます!」
慌てて駆け寄ってきたのは第三軍の新人エリン。
純朴そうな顔立ちながら頬を紅潮させている。
「ありがとう兵士さん」
微笑むアリシアの表情は清らかそのもの。
だが腰を屈めて荷箱を受け取る動作で
ドレスの裾が僅かに捲れ上がり太腿が露わになる。
昨日まで白磁のようだった肌が今はうっすら桜色に染まっている。
(まずい……身体が熱い)
内心焦りながらも背筋を伸ばすアリシア。
しかしその姿勢が却って問題を招く。
前方に重心が移動したことで臀部が後ろに突き出される形となり
「!?」
横目に見ていたベテラン兵士が息を飲む。
エルフの丸みを帯びた尻がまるで魅惑の果実のように
午後の陽光を浴びて輝いているではないか。
「おいあれ……昨日より大きくなってないか?」
「馬鹿野郎!直視すんな!」
小声でやり取りする兵士たちを制するように
アリシアが凛とした声で宣言する。
「作業開始は14時からです。それまでに資材を運搬してください」
彼女の言葉に全員が慌てて敬礼するも
視線は釘付けのまま。
腰の括れから臀部への滑らかな曲線は
どんな芸術品よりも官能的な美しさを湛えていた。
「ちょっとアリシア……」
心配そうな声をかけてきたのは同僚のアナキティだ。
「なんか、エロくない?
いや、普段からエロいのはそうなんだけど……」
単刀直入な問いかけに一瞬言葉を失うアリシア。
「気のせいよアナキティ」
必死に平静を装うも声が微妙に上ずる。
確かに昨日から下腹部に違和感はある。
ヴァラサイトの種子が胎内で蠢いている感覚は
甘美な快楽と紙一重なのだ。
(バレてはいけない……)
(私はまだ【純潔の園】なのだから)
そんなアリシアの葛藤を知ってか知らずか
遠巻きに眺める若者たちが囁き合う。
「昨日までのアリシア様とは違うわよね?」
「どこか憂いがあって……」
「それにあの匂い……なんて芳醇なのかしら」
そうなのだ。
今朝から彼女の周囲には甘い香りが漂い始めた。
ジャスミンのような清冽な香りと
蜜蝋のような官能的な香りが混ざり合い
鼻腔を刺激する芳香となって広がっている。
(これは……ヴァラサイトの影響?)
不安を募らせながらも務めを果たすアリシア。
砦の柵を修復する作業員たちに指示を飛ばしていると
ふと腹部を押さえる仕草をしてしまう。
無意識のうちに手が伸びているのだ。
「ん……っ」
乳首が服の裏地に擦れた瞬間、鋭い快感が背筋を駆け上がる。
昨日までとは比べものにならないほどの感度だ。
乳房全体が熱を帯び
(こんなところで……感じてしまうなんて)
唇を噛み締めて耐え忍ぶ姿さえ扇情的だった。
彼女自身も気づいていないが
額に滲む汗が鎖骨へと流れ落ちる様は
あまりにも煽情的な光景となっている。
「お嬢様……」
年老いた使用人が心配そうに声をかける。
幼い頃から世話をしてきた老婆だけは異変を感じ取っていた。
「ご病気ではございませんか?」
「平気よグレイス」
柔和な微笑みを浮かべながらも
内側で股間がじっとりと濡れていく感触に慄く。
ヴァラサイトの影響で膣壁が過敏になっているのだ。
(耐えなければ……)
(ここで弱音を吐けば……みんなに知られてしまう)
健気に振る舞う【純潔の園】の姿は
却って兵士たちの欲望を掻き立てていく。
汗で貼りついた衣装が肌のラインを露わにし
乳房の突起さえ薄っすら浮かび上がらせる始末。
「あら……?」
階段を降りる際に下着をつけない爆乳が派手に揺れた。
その光景があまりにも妖艶で若い騎士が膝から崩れ落ちる。
「だっ大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄るアリシアの腕が騎士の肩に触れる。
ただそれだけの接触にも関わらず、少年の顔が真っ赤に染まり
「女神……」
無意識に出た呟きにアリシアは苦笑するしかない。
(やはりバレているのかしら)
夕暮れ時にひとり砦の尖塔へ登るアリシア。
眼下に広がるのは燃えるような夕焼け。
そして下腹部に感じる不気味な鼓動。
(いずれは……彼らに告げなくてはならない)
(私はもう純潔ではないということを)
だが今はまだ。
清廉の象徴として振る舞わねばならない。
エルフ特有の長い耳が微かに震え
(この身体……一体どうなってしまったの)
懊悩する彼女の吐息が宵闇に溶けてゆく。
その姿は確かに以前より一層妖艶で、周囲を惑わす魔性を纏っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アラモ砦の石壁を雨粒が叩く深夜。
月光も届かぬ一室で灯りひとつ灯さずに佇む人影があった。
エルフ特有の絹糸のような金髪が広がり
(やはり……昼間は無理があるわね)
深い溜息とともに腰帯を解くアリシア。
簡素な衣服を脱ぎ捨てると現れたのは
常軌を逸した異形の背面であった。
月光に照らされ浮かび上がったのは
背骨に沿って湾曲する異様な装甲。
まるでコルセットのように胴体を覆うそれは
左右八本の節足で肉体に固定されていた。
「……んっ」
四対の脚が脇腹に食い込む感触に
僅かに身じろぎする。
特に下部の二対は皮膚と一体化し
鱗状の突起が肌を押し上げている。
(まるで鎧そのものが私から生えてきたみたい)
背中に這う異形の甲羅は
かつての純潔を象徴する純白の肌を
禍々しい翠緑の装甲で塗り替えてしまっていた。
ヴァラサイトの寄生器官はもはや単なる外部装備ではない。
彼女の肉体と共鳴する"第二の骨格"となっていた。
「ふぅ……少しは馴染んだと思ったのに」
右脇腹に食い込む一本の節足に指を這わせると
金属質の表皮の下で微かな鼓動を感じる。
それは血管と神経が直接連結した証だった。
動く度に関節が軋む音さえ愛おしく思えるほど
「なんてこと……」
無意識に漏れた呟きには自嘲が滲む。
寄生生物との共生関係が日々深化していることは明らかだ。
(最初は苦痛しかなかったのに……)
昨晩、寄生されて暫しは猛烈な拒否反応に苦しんだ。
今では逆に体温調節に利用できるほど適合してしまった。
この異形はアリシアにとって厄介な寄生虫ではなく
欠かせない"第二の身体"となりつつあった。
「周囲にバレないくらいには、悪知恵が働くのね」
憎まれ口を叩きながらも手つきは慈しむようで
装甲表面の凹凸を丹念になぞる。
昆虫標本のような複眼模様や、刃状の突起が月光に鈍く輝く。
もはや単なる捕食者の武器ではなく
装飾品としても洗練されたデザインだ。
(もし誰かに見られたら……)
想像するだけで背筋が凍る。
こんな姿を仲間に晒せば即座に討伐対象だろう。
【純潔の園】の称号も剥奪される。
(でもこの子は……もう私の一部なのよね)
矛盾する想いが胸中で渦巻く。
仲間に隠し事を続ける後ろめたさと、異形への奇妙な愛情が入り混じる。
装甲表面に零れる涙滴が翠緑の肌を伝い落ちていく。
それは人間と寄生体の境界を曖昧にする涙だった。
その刹那——
装甲の内部で何かが蠢く気配。
まるで応答するかのように背部の突起が微かに震えた。
「馬鹿ね……そんなことで誤魔化されるわけないじゃない」
怒りと寂寥が入り混じった囁き。
しかし次の瞬間、アリシアの瞳が潤んだ。
(本当に……勘違いしてくれるなら……)
まるで古い肖像画に描かれた妖精姫のようだ。
寄生者と共存する運命を受け入れたエルフの
悲しみと諦観に満ちた姿が、夜陰に浮かび上がっていた。
「あっ、アンッ!?んっ、あっ、あっ、んんぅ!
赤ちゃんのお部屋、チュッチュしちゃダメぇ……♡」
蜘蛛の尻から伸ばされた管が、アリシアの股ぐらに潜り込んでいた。
じゅぶじゅぶと肉の奥から響いてくる音が意味を教えてくれる。
まるで寄生虫から犯されているようなおぞましい光景に、
何故かそれほど嫌悪を感じてはいなかった。
アラモ砦の尖塔最上階。
古びた木床が軋む音さえ今の彼女には甘美なBGMだ。
窓から差し込む三日月の光が銀髪を青白く照らし
その対比で異形の背甲が冥府の宝石のように輝いている。
「おい我が妻。もう抵抗は終わりか?」
寄生生物が低く嗤う声は脊髄を通して響く。
八本の脚で彼女の肉体をがっちり拘束したまま
腹部から伸びた肉管を激しく出し入れしている。
かつてヴァラサイトと呼ばれた存在は今や
「パラサイトJr.」と自称する小憎らしい相棒と化していた。
(誰か聞かれたらどうするのよ!)
叫びたい思いを飲み込むアリシア。
個室とはいえここは共有施設の一角。
まして彼女は【純潔の園】の二つ名を持つエルフだ。
こんな卑猥な行為が露見すれば即刻追放だろう。
だが理性が警告するほどに体内を貫く管は激しさを増す。
「ぐぷっ」「ちゅぼっ」という湿った音と共に
子宮口を直撃する衝撃に膝が笑う。
「や……やめて……あっ!そこは……あぁっ!」
腰をくねらせ逃れようとするも
背甲から伸びた腕が乳房を締め上げる。
Lカップの巨乳が餅のように拉げ、乳首が痛いほど隆起している。
「ふふん。お前のカラダは正直だな」
異形の声が背骨の奥で共鳴する。
「作業中もずっと疼いていただろう?」
否定できない事実だった。
寄生生活が始まった初日。
恐怖と拒絶感しかなかった結合が、既に不可欠なものへと変わっていった。
今では蜘蛛の暴虐を待ちわびる自分がいる。
昼間は【純潔の園】を演じながら
夜陰に乗じて背中の怪物に奉仕するのが癖となっていた。
(早く終わらせてほしい……)
(でもこの感覚をもっと味わいたい……)
相反する本能が脳を蝕んでいく。
肉管の往復運動が激しくなるにつれ
子宮内に埋め込まれた種子が微かな振動を開始した。
「んあぁっ!?そこだけは……!」
脊髄に沿って突き抜ける快楽の電流。
まるで脳天を貫かれるような感覚だ。
パラサイトJr.が笑う。
「安心しろ。まだ芽吹かせたりしない」
嘘だ。
種子の脈動が明瞭になるにつれ
下腹部の違和感が徐々に増している。
アリシアの肉体は確実に変容していっているのだ。
「だが今日は特別だ」
異形の触手が突然動きを止める。
「新機能をお披露目してやろう」
何事かと思う間もなく背中が大きく跳ねた。
装甲表面が開き小型の突起群が現れる。
それらは正確に背中のツボを捉え
「ひゃんっ!?」
思わず声が出た。
マッサージ機のような心地よさが疲れた背筋を解す。
同時に胸元へ伸びる別の触手が乳房を包み込む。
「サービスいいじゃない……んんっ!」
批評する余裕もない。
乳首を挟んだ二本の肢が優雅なリズムで圧迫し
先端から滲む甘露を啜り出す。
「ああぁぁっ!!」
絶叫と共に仰け反るアリシア。
寄生体との合一が進むほど感度は向上し
今では触れるだけで痙攣するほど敏感になっていた。
パラサイトJr.の嘲弄が続く。
「まだまだ序の口だぞ。明日の任務はどうする?」
「こんな状態で戦えるかな?」
悔しいが答えられない。
すでに膝が笑っている状態で防衛など不可能だ。
「助けてほしいかい?」
耳元で囁く声には明らかな意図があった。
「ならば私の言うことを聞いてもらおう」
背筋に怖気が走る。
また新たな要求だろうか?
しかし異形の望みは意外なものだった。
「明日の朝飯に蜂蜜を入れてくれないか」
呆気にとられた表情のアリシア。
「それが……命令?」
「そうだ。最近甘いものが恋しくてね」
蜘蛛の笑い声が室内に響く。
その子供じみた要求に戸惑うアリシアだったが
ふと自分の頬が緩んでいるのに気づいた。
「いいわよ。でもその前に片づけてちょうだい」
パラサイトJr.は嬉しそうに鳴いた。
「感謝するぜ。だが今夜はこれからだ」
宣言と共に異形の本体が動き出す。
尾部の肉管が急角度で屈折し、膣壁の最も敏感な箇所を狙って突き上げる。
「ちょっ……!まっ……!?」
抗議の言葉は途中で消えた。
代わりに漏れるのは抑えきれない喘ぎ。
背甲と一体化した己の躯体が、蜘蛛の律動に合わせて艶かしく踊る。
(ああ……やっぱり嫌だと言えない……)
荒々しいピストン運動に揺さぶられながらアリシアは悟った。
もはやこの怪物は単なる寄生虫ではない。
彼女の一部であり、唯一無二の伴侶なのだ。
窓の外では満天の星が煌めいていた。
悠久の大要塞の中で繰り広げられる
奇妙な共生関係の一幕。
その終焉はまだ見えない。
だが少なくとも今夜は
互いに求め合う至福の時間となるだろう。
「あっ!だめ……もう……イッちゃう……っ!」
月明かりに浮かぶエルフの裸身が
異形の甲殻を纏って激しく躍動する。
それは悲劇か喜劇か—判断するのは早計というものだろう。
二人の「共存」はまだ始まったばかりなのだから。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
厨房の煙突から朝靄を切り裂く湯気が立ち上る中
アリシアは慎重に作業していた。
大鍋をかき混ぜる傍ら、蜂蜜瓶を握る手がかすかに震えている。
(まさか本当に用意する羽目になるなんて)
昨夜の痴態が蘇るだけで頬が熱くなる。
パラサイトJr.の要求どおりパンケーキに蜜を垂らす姿を想像すると
思わず噴き出してしまいそうになる。
「おはようございます、アリシアさん」
背後からの声に飛び上がりそうになる。
振り向くとレフィーヤが微笑んでいた。
「なんだか楽しそうですね。珍しいです」
咄嗟に瓶を背に隠す。
「気のせいよ。今日は新しい味付けを試そうと思って……」
同僚の目を盗みつつ蜂蜜を小皿に注ぐ。
その時—背中の寄生体が微かに蠢いた。
「んっ」
小さな吐息が漏れてしまう。
寄生者にとってはこの些細な動きさえ、性的な刺激に変換されるのだ。
(朝から盛り上がらないでよ……)
恨みがましく思った矢先
レフィーヤの視線がアリシアの胸部に向けられた。
朝霧に濡れた窓から差し込む光が蜂蜜のように金髪を艶めかせ、
その下で揺れる谷間が殊更に目立っている。
瓶を掴むアリシアの指がわずかに強張る。
(見られている……)
朝からパラサイトJr.に蹂躙された痕跡が残る乳房が
レフィーヤの眼前で悩ましく揺れている。
瓶を傾けると同時に肘が胸のふくらみに当たり
驚くほど豊かな質量がたわみを形成する。
さらに悪いことに……
背後で微かに震える異形の気配。
装甲内部でパラサイトJr.が興奮している。
この状況を楽しんでいるのだ。
(やめて……!今は何もしないで!)
懇願しても聞かないのが宿命。
寄生者にとってアリシアの窮地こそ最高のご馳走である。
腰部から伸びた触手がブラシ状に展開し、乳房の根本を締め上げる。
「んっ!」
思わず漏れる吐息。
甘い衝撃が脊髄を駆け上る。
幸いレフィーヤには小さく咳払いしただけに聞こえたようだ。
「大丈夫ですか?風邪でも?」
心配そうに近づくレフィーヤの視界で
アリシアの豊かな双丘が不自然に膨らむ。
昨夜の凌辱で腫れた乳首が布地を押し上げているのだ。
「ちょっと喉が……気にしないで」
誤魔化そうと蜂蜜を掬ったスプーンを舌先で舐める。
この時パラサイトJr.が仕掛けた第二の罠にかかる。
背中の突起が首筋に接触した瞬間、
「ひゃっ!?」
声量は絞ったものの肩が跳ね上がる。
これにはレフィーヤも怪訝そうに眉を寄せる。
「やっぱり変です。昨日からおかしいですよね?」
核心に迫る問い。
だが異形の邪魔が入る。
寄生者はアリシアの子宮に埋めた種子をわずかに震わせ
(やめてやめて……もうこれ以上は……)
足がガクガクと震え出す。
レフィーヤの目前で腰砕けになるのは死ぬほど恥ずかしい。
必死にシンクの縁を掴み堪えるも膝が笑う。
「あの……本当に具合が」
「大丈夫だってば!ただ疲れが抜けなくて!」
荒っぽく否定しつつも声が震えている。
厨房スタッフの一人が異変に気づき振り向いたその時—
パラサイトJr.の触手が淫核を剥きあげ覆い尽くした。
「や……んっ!」
悶えるアリシアの美貌が発する凄艷な色香に、
幸せそうな顔で気絶するスタッフ。
レフィーヤが驚愕の叫びを上げる。
「ちょっ!?アリシアさんのエロ顔で人倒れましたよ!?」
「言ってる場合じゃないでしょ、おバカっ!」
叱りつけるアキを尻目に、自分の体がどれだけ淫乱になったか痛感する。
パラサイトJr.の嘲笑が脳裡に響く。
(素晴らしい演技だよ我が花嫁)
(さすが【純潔の園】の看板を背負うだけある)
屈辱で歯を食いしばるアリシア。
その一方で子宮内の種子が微かな鼓動を奏でる。
生命を育む母性的な悦びが沸き起こる自分に戦慄する。
(違う……これは違うの……)
混乱するアリシアの横でレフィーヤが騒ぎ始めた。
「誰か担架を持ってきて!」
「あの人を医務室へ運ぶわ!」
慌てふためく同僚の姿をよそに
アリシアは密かに下腹部をさすった。
掌に伝わる違和感は確実に成長している。
寄生体の分身がそこで脈打っているのだ。
(どうしよう……)
パラサイトJr.の笑みが背筋を這う。
「安心しろ。まだ誰にも見破られない」
「それに……今夜のお楽しみの方が大事だろう?」
屈辱と快楽が交錯する中、レフィーヤの心配そうな顔を見上げるアリシア。
(この秘密は墓場まで持っていかないと……)
決意も新たに蜂蜜の壷を抱え直したその時、
「いつも言ってますけど、そのエロい身体、下着つけたほうが、
いや、こういう身内以外もいる環境だと絶対に着けなきゃダメです」
レフィーヤが真剣な眼差しで告げる。
返す言葉が見つからないアリシア。
ただその視線の先にある自分の乳房が
寄生体に改造されつつあることを思うと
(言われなくても……わかってます……)
胸の高鳴りは期待なのか恐怖なのか。
背後で蠢く異形の気配に気づかぬふりをしながら
彼女は再び鍋をかき混ぜ始めた。
湯気の向こうに立ち上る蜂蜜の香りが
奇妙な共生関係の甘美な予兆を暗示していた。
更新希望の原作
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魔弾の王
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落第騎士
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ハイスクールD×D
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月姫
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モブせか
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マジエク
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のんびり農家
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新妹魔王
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八男