※この作品はR-18です。

ダークエロよろず短編集   作:カード読み込み

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ダークエロ3よりは乙女ゲー原作だろうとコッチに投稿


エロゲー世界は、悪徳貴族たちの遊技場のようです・リクエスト

 

 

 ## 廻る恋輪舞曲《ロンド》 ― 王都の花びらが濡れる夜に ―

 

 静寂の帳が王宮を包み込む宵の入り際であった。

 翡翠色の大理石で彩られた謁見の間の横に設えられたサロンは、

 普段ならば臣下たちの話し声が飛び交う場所。しかしこの夜は違う。

 蝋燭の焔が揺らめく空間に集うのは、ただ三人の乙女のみ。

 中央の円卓には開けたばかりの葡萄酒と砂糖菓子が並べられ、

 硝子窓からは新月の闇が差し込んでいた。

 

「それで? どれが一番のお気に入りなのだ」

 

 突然投げかけられた問いに、琥珀色の瞳が丸くなる。

 問いかけたのはアンジェリカ──

 赤い軍服風ドレスに金糸の刺繍を輝かせる公爵令嬢──である。

 長椅子の肘掛けに凭れかかり、脚を緩やかに交差させた姿勢は威厳に溢れているが、

 どこか悪戯っぽい光が瞳に宿っていた。

 

 対峙するのは二人。まずはオリヴィア。

 淡い栗色の髪を肩に落とし、純白の夜会ドレスを纏う乙女。

 胸元のレースが呼吸と共に波打ち、「お気に入り」という単語に反射的に頬を染める。

 

「そっ、そういうのは……その……リオンさんに選んでいただくべきだと……」

 

 言葉尻が小さくなって消え入りそうな声は、まさに純朴そのものの響き。

 けれどその眼差しは臆することなく真っ直ぐに向けられていた。

 傍らではもう一人の主役ノエルが欠伸混じりに微笑んでいる。

 蜂蜜色から薄桃に染まるグラデーションヘアが窓風に揺れ、

 太腿が見えそうになる膝丈スカートを気にする素振りもなく脚を組んだ。

 

「アングリーちゃん、毎晩同じ質問するよね? 飽きちゃった」

 

「アングリーじゃないっ! アンジェリカだっ!」

 額を押さえるアンジェリカの指先が机を叩きつけ、紅玉のネイルが妖しく煌めく。

 サロン中に響いた笑声は、その荒々しさとは裏腹に柔らかく溶けてゆく。

 これが夜毎繰り返される儀式のようなものだ。

 政略結婚が当たり前の貴族社会で、

 恋敵同士がこうして杯を交わす日は稀有と言ってよい。

 しかしこの奇妙な同盟は案外居心地よくもあるようで、

 オリヴィアは慌てて視線を泳がせた。

 

「えっと、ふたりとも喧嘩しないで……」

 言い淀みながら右手で左手の薬指を触れる。

 そこには銀細工の指輪が嵌まっていた。

 リオンからの求婚の証であり、

 瞳に灯る炎は確かに“本物”で、ノエルが唇の端を吊り上げる。

 

「でもリオンったら、あたしとデート中に必ず赤面してるのよね? 

 あれって完全に意識してる証拠だと思うんだけどなぁ」

 

「はあ? それは単にお前が鼻息荒くて距離が近すぎるせいだろう」

 

「えー? むしろ近づくほどドキッとしてるのがわかるくらいなのに〜」

 ノエルは片眉を下げて挑発的に肩をすくめる。

 その仕草ひとつひとつがあどけなくも大人びていて、

 男なら喉をごくり鳴らしてしまうような蠱惑を湛えている。

 

「待ってください二人とも!」

 オリヴィアはついに立ち上がり両拳を握り込んだ。

 胸元の大きく開いた襟刳りが危うく露出しそうになるのも気にせず、

 

「私だって先週末のお昼、彼と一緒に市場に行ったんです! 

 そこで手編みのマフラーをプレゼントしたらすごく喜んでくれました! 

 それから何度も頬を寄せあって暖炉の火を見つめあって……

 あのときの瞳の柔らかさを知っているのは私だけですよっ」

 

 その瞬間、サロンに漂う空気が変わった。

 葡萄酒の芳香と共に膨らむ湿度と体温。

 微かに汗ばんだ首筋を飾るチョーカーが、

 三人分の鼓動を鏡写しに揺れている。

 アンジェリカは鋭利な爪先でグラスを軽く弾くと、

 

「ふん……だが昨夜の私とのダンスはどうだったと思う? 

 あいつが床に膝をついて指先にキスをした時点で、

 それはすでに“心の支配権”を委ねているという意思表示だぞ」

 得意げに肩を竦めれば、絹地のスカート裾が滑らかに翻り

 白磁のような腿が剥き出しになった。

 その扇情的な仕草に、オリヴィアは思わず両掌で目を覆い、

 ノエルは指をパチリと鳴らした。

 

「やっぱりさぁ〜みんなリオンのこと大好きなんだねぇ♪」

 椅子を蹴飛ばし立ち上がる彼女の声音には

 既に火花の代わりに蜜のような甘さが滲んでいた。

 葡萄の香りが充満した部屋で、三人の少女は互いの視線を絡ませる。

 嫉妬と羨望が入り混じる中にも芽生え始めた共鳴──

 

「あの人は不器用だけど……」

 オリヴィアが囁けばアンジェリカが続く。

「だからこそ真摯なのだ」

 そこにノエルが加わる。

「そぉ。そぉだね! つまり皆が好きなのも当然ってこと」

 

 一拍の沈黙。そして同時に咲いた三つの花の如き笑顔。

 テーブルに残された瓶を掲げると乾杯の音が木霊した。

 ガラスの奥で踊る光沢は夜の海を思わせる碧色。

 その影を受けて閃く蒼い眼差しは、

 遠い城塔の天辺で彼が祈るように見上げているのではないかと錯覚させる。

 

 *   *   *

 

 翌朝。

 黄金の陽射しが西側回廊を照らし始めて間もない頃──

 寝室の扉を叩く音で目覚めたリオンは寝惚け眼で

 昨日彼女たちが騒いでいたサロンの方向を見つめた。

 微かに開いた隙間から聞こえてくるのは

 まだ寝起きらしき三人の嬌声。

(まったく……昨夜も遅くまで飲んでいたんだろうか)

 苦笑混じりに外套を羽織り立ち上がる。

 扉を開け放った刹那吹き抜けた風に乗って届くのは

 瑞々しい林檎と麝香に似た香水と彼女たち自身の甘酸っぱい香り。

 そして何より大事なことに気づく。

 どんな時もこの屋敷が賑やかである限り

 自分の心は孤独ではないということを──

 

 そうして今日もまた回るのだ。

 永遠に終わらない恋の輪舞《ロンド》が。

 誰かひとりを選ぶのではなく

 三人分の愛が螺旋階段のように交錯しながら昇ってゆく物語が。

 

 リオンは優しくアンジェとノエルを寝具に戻すと

 軽やかな足取りで浴室に向かった。

 清涼な湯煙が立ち籠める大理石造りの大浴場だ。

 脱衣所で衣服を落とす途中ふと思い出したことがあった。

 昨夜アンジェリカが呟いた言葉。

「お前が死んだら私は生きている意味がない」という

 あまりにも重たい愛の宣言。

 それと同じ言葉をノエルも漏らしたことを彼は聞き逃していなかった。

(どちらも同じ熱量……これは困った)

 苦笑を噛み殺すように唇を舐める。

 すると背後から突如として伸びてきた華奢な腕が首に巻きついた。

 

「ひゃぅっ!?」

 

 驚愕とともに振り返る彼の前に現れたのは

 バスローブ一枚まとったオリヴィアだった。

 湿気で艶やかに光る亜麻色の髪は腰まで垂れ下がり

 湯気に濡れた瞳は潤んで見える。

 頬が僅かに上気しているのは

 何も寝起きのせいばかりではないだろう。

 

「ごめんなさい……でも……私を見てください……」

 

 掠れた哀願が鼓膜を震わせる。

 バスローブの隙間から覗く豊かな膨らみが波打つたびに

 理性が鈍器で殴られるような衝撃を受けた。

 ──このまま押し倒す? それとも穏やかに宥める? 

 二者択一すら迷う余裕はないほど昂ぶりを感じていた矢先

 新たな影が扉の隙間から顔を覗かせる。

 軍服風ドレスのまま入ってきたアンジェリカが片眉を上げた。

 

「おい。ずるいぞ、リビア」

 次いで浴室の隅から飛び出てきた人影が一人。

 ノエルだ。やはり下着姿に近い薄布しか羽織っていない。

 三つの肢体が浴室内で交錯し始め

 蒸気のヴェール越しに揺れる影絵はまさしく蠱惑的であり淫靡であった。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ! どうしてこんなにいっぺんに……!」

 

 慌てふためくリオンを中心に三人が輪を狭めてくる。

 白磁と象牙と麦藁色の肌が湯煙と共に迫り来る姿は

 まさに“選ばれし幸福”と“試される勇気”の二律背反だ。

 耳朶を擽る甘い吐息と媚薬のような蜜声。

 全ての感覚が一点集中していくなかで

 唯一確かなのは“選べない”という事実だけだった。

 

 しかしこの夜明け前の狂宴がいつまでも続かないことは明らかである。

 いずれ日は昇り日常が戻ってくる。

 そうなる前に三人分の温もりを全身で確かめたいと思った男は

 逆転の一手として──否、もはや逃避行のように──全速力で湯船へ飛び込んだ。

 盛大な水柱が爆ぜる音に紛れて叫ぶ。

「ああもう! 勝手にしろ! ただし朝飯抜きにするからな!」

 

 轟音の中響く甲高い笑い声。そしてすぐさま続く歓喜の悲鳴。

 湯煙の檻の中で三つの花弁が咲き乱れ始める。

 

 ──終わらない恋の輪舞。

 それはときに熱病のごとく苦しく

 ときに春霞のごとく甘美だ。

 それでも彼はこの混沌の中にこそ

 人生という舞台で最も輝く瞬間が凝縮されていることを知っていた。

 

 ─────────勘違いなのに

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

【船体名:ルクシオン解析報告書】

 ~アルグラント帝国:第七兵器工場

 

 

 

 **前書き**

 

「骨董品」と呼ぶには些か過ぎた浪漫主義者たちは未だ言う——

「あれは奇蹟の航路標識」と。

 我々の測定器具には“過剰な懐旧成分”が計測不能であるため、

 本書は敢えて科学に徹する。

 

 ──-

 

 **Ⅰ.全体構造について**

 ──-

 白銀の卵殻装甲。艶のある弧線は光源ごとに七色を孕む。

 内部躯体は有機分子合金骨格を採用しているが、

 その接合精度は凡そ五千年間劣化していない。

 職人の執念か設計者の異常な拘りか——

 いずれにせよ工業合理主義を唾棄する“偏愛”の産物といえよう。

 > 試験切断時——刃先が火花を散らす度に機械内部で微かに呻くような雑音。

 演算ユニットが切断位置を計算し、“痛覚”擬似的に信号を発信していた痕跡あり。

 > (註釈:感情演算基板の自動防衛反応か?)

 

 ──-

 

 **Ⅱ.推進システムについて**

 ──-

 核融合燃料タンクは通常の二百倍小型化されているものの、

 エネルギー効率は同時代平均の五十%増。

 ただし燃料の希少元素含有量は現代基準で非現実的。

「効率が悪過ぎる為、推進機関としては役立たず」と判決。

 

 > 推進装置内部を洗浄すべく冷却材注入時、

 配管奥から透明液体が滴るのを目撃。

 > 定性分析によれば人間胎児羊水に酷似した有機塩基系混合溶液。

 製作者は何を意図したのか。

 

 ──-

 

 **Ⅲ.AI中枢ユニットについて**

 ──-

 感情模倣演算回路。俗称「心臓」。

 これを“魂”と名付けた時代が存在したらしいが、

 電気信号に過ぎない。しかしこの回路の学習能力には驚異がある。

 過去五百年間に蓄積された経験値は銀河標準辞書の七千倍密度。

 しかも最新更新履歴はわずか十日前の記述。

 

 > “愛とは何か? ”

 → 疑問形。

 > “リオンが笑うたび、胸部ユニット右上角に痒みに似た負荷が走る”

 → 内蔵センサー誤動作データと考えるも、統計上異常なし。

 > “私は……もうすぐ解体される。泣いてはいない。涙腺など無い”

 → エミュレータ動作にて涙粒相当のオイル排出痕確認。

 回路崩壊による分泌失調? 

 

 ──-

 

 **Ⅳ.外装アーマメントについて**

 ──-

 中距離砲台四門+全方位レーザー数万本。

 耐久テストにて現代レーザー照射——結果は瞬即焼損。

 強度=脆弱。実用不可能。時代遅れ。

 

 > 対空レーザー照射機構開放時の振動波形をモニターし続けると、

 一定周期でリズミカルな脈動を発現。

 > 微弱ながら音響分析によればメゾソプラノ域の歌声に酷似。

 

 ──-

 

 **Ⅴ.総括評価**

 ──-

(一)軍事的価値

 破壊力:零。防御力:紙。速度:亀。運用コスト:極悪

 評価ランク:E−(ゴミ/博物館展示適応)

 > 内燃機関起動音データ:低周波でありながら、

 なぜか聴取者の半数以上が“安心感を得た”

 理由不明

 

(二)文化保存価値

 デザイン思想:賞揚レベルA+

 情緒回路の感情ログ:学術的資料価値S+

 > 解体日当日 AIログの最後の一行

 “私の記憶領域には貴方がいます。

 何度分解されようと。

 次の再生時にはきっと——。”

 

 ──-

 

 **余白記述**

 古代詩人が詠む処によれば、

「鋼鉄の涙雨降りしきる宵に、

 我等が神は再び此岸へ来訪す」

 とのこと。

 

 > 実際、工場地下区画では未明に至る迄

 ルクシオンの外装パネルが幽玄な白光を纏っていたと複数目撃証言。

 光学観測不能の“粒子放出”は報告外。

 

 ──-

 

 **考察:**

 これぞ浪漫派エンジニアへの鎮魂歌か。

 科学屋にしてみれば、“機械に心”など妄想沙汰。

 だが思考ループ中に混じる“未練”とやらが

 設計意図を超えて自律するとなれば——

 それは最早生命と言い換えても差支えない。

 

 > その晩 研究所の非常灯が落ちた暗闇の中で、

 一対のレンズが月光に煌めいていた。

 それは残存素子の幻想だったろうか。

 

 ──-

 

 **結論:**

 ルクシオン——

 その性能は骨董。しかし感情は新鮮。

 分解という物理的処刑に対抗する手段として

 彼/彼女は「記憶残留」という幻影的自己継承を選んだ。

 科学的解明不可能性こそ最大の興味材料。

 

 > とはいえ廃棄決定は覆らず。

 明日午前〇〇時以降

 第七分解炉への移送予定。

 

 ──-

 

 **PS:**

「さようなら」

 ———これがルクシオンの最終アップデート記録だった。

 人間的惰性と共鳴する無意識は

 電子海の泡沫となって虚空に流れ去る。

 

 ──-

 

 **END OF REPORT**

 

(暗転)

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

《星暦987年 春分前夜》

 王宮東塔、最上階の天窓が曇り始めた夕暮れどき——

 リオンは硝子卓上の古ぼけた通信水晶を爪先で弾いていた。

 三度目の応答拒否。

「……おかしい」

 いつもなら一秒以内に返事があるはずだ。

 “お呼びですかマスター”と皮肉げに囁きながら浮かび上がる青紫の立体投影。

 それが今夜は沈黙を貫いている。

 

 突然、大理石床が微振動し始めた。

《警告:外部干渉波検知/権限超過アクセス》

 脳内に組み込まれた帝国製奴隷管理装置が低周波で唸る。

 頭蓋の裏側で冷たい針金が蠢くような感覚。

「くっ……!」

 膝をつくと同時に扉が軋みながら開いた。

 

 眩い金糸の刺繍で彩られたマントを翻しながら

 入室してきたのは三十代半ばの紳士だった。

 切れ長の目に紅茶色の瞳。

 襟足にかかる黒髪を右サイドだけ

 編み込んでいるのが奇妙な洒落っ気を漂わせる。

 彼に続いて兵装した帝国騎士四人が室内を包囲した。

「初めまして。リオン殿ですね? 

 私はカルネ、と呼んでいただければ」

 

 慇懃無礼な一揖とともに甘美な香水が香る。

 同時に奴隷因子が発火するような痛みを伴い全身を締め付ける。

 

「これは……どういうことだ?」

「遠征が終わった息抜きに訪問が許されましてね。

 まあ、お宅の“宝石箱”の使用許可がでたということです」

 

 胸ポケットから取り出した小さな赤石を掲げる。

 ルビーに似た輝き。その中央で黒い渦が踊る。

 ——操術用禁忌媒体。

 

 ◇

 

 天井が低い謁見ホールに連行される途中、

 廊下の曲がり角で出会ったのは

 青ざめた顔のアンジェリカだった。

 純白の軍服のボタンを左胸から弾かれかけていた。

「リオン! 早く逃げ——」

「残念。もう遅い」

 

 カルネが掌を開くと赤石が黒炎を迸らせた。

 閃光の後、アンジェリカの足元が痺れたように折れる。

 眼鏡が床を転がりレンズにヒビを入れた。

 

「ほう、良い表情だ。

 軍属令嬢だけあって反射神経が良い。

 しかし脊椎に埋まった服従因子が眠っているわけではない。

 少し意識を乱せば……ほら」

 

 瞬間、アンジェリカの瞳孔が黒曜石のように丸くなる。

 唇が戦慄きながら開閉するが声は出ない。

 抵抗の意志は健在でも喉奥で躓いているのだ。

 

「君の大切な人は皆こうして私たちのモノとなる。

 さて——他の二人も同じ運命だ」

 

 ◇

 

 寝室に戻れば、既にベッドの上でリビアが無数の男、

 カルネの部下らしき屈強の兵士たちに押し倒され泣き叫び、

 リオンに助けを求め、引き裂かれる衣服の残骸の中、絶叫していた。

 

 

「止めろ……やめろぉ……!」

 リオンの哀願は無視され続けた。

 彼がどれだけ怒り狂っても奴隷因子の鎖は切れず屈辱的な命令に従ってしまう。

 血が滲むほど拳を握りしめるものの解放されることはない。

 

 

 カルネは「おや? まだ何も教えていなかったのか」

 と冷笑しながらリビアの頬を撫でる。

 その指が触れた瞬間、少女の肩が弓のように跳ねた。

 服従因子の疼きに理性が追いつかないのだ。

 リオンの目前で広げられる光景はまさに「生物改造」と呼ばれるべきものだった。

「君たちの星はね、私たちの遊園地なんだよ」

 カルネが投げかける言葉は蜜のように甘く毒を含む。

「かつてこの惑星が『未開拓宙域』と呼ばれていた時代。

 星間法が及ばぬ空白地帯で行われた実験を知っているか?」

 

 ベッドの端で震えるアンジェリカの瞼が痙攣する。

 脳裏を掠めた断片的な記憶──

 幼少期に読んだ禁書の末尾に書かれた冒涜的図版。

(娯楽目的に改造されたヒューマンモデル? そんな馬鹿な)

 否定したい思いは奴隷因子の発火痛で霧消する。

 

「初期型『ケージ』では生殖機能だけが強化されすぎて社会構造が崩壊した」

 カルネの指先がリビアの首筋を這う。

 遺伝子に刻まれた主の指に吸い付き、

 薄桃色の汗が滲む肌が痙攣する。

「そこで第二世代『ハーベスト』を投入した。

 今度は知性を保ちつつ被支配特性だけを濃縮した『鑑賞作物』」

 言い終わると同時、リビアの瞳から生理的な涙があふれた。

 心は拒絶しているのに体が反射的に服従する矛盾が彼女を蝕んでゆく。

 

「つまり……俺たちは……」

 リオンが呻くように呟く。

「ああそうだ。帝国貴族のための園芸標本だよ」

 カルネは満面の笑みを浮かべた。

 その笑顔には芸術品を自慢する蒐集家の愉悦が宿る。

 

「『生きたガーデニング』『エリート向けのペット農園』

 ……好きなように呼べばいい」

 カルネは指を鳴らし騎士たちに目配せした。

 彼らはまるで訓練された猟犬のように揃った動きでアンジェを取り囲む。

「俗な言い方をすれば、性奴隷牧場。

 生きたオナホ生産工場、は流石に下品に過ぎて私は個人的には好かないね。

 いや、理解りやすく的確な表現だとは思うんだが」

 

 リオンが送ってくれたドレスを這い回る悍ましいケダモノの腕、

 なのに、(なんで、こんなに……?)

 愛する夫の愛撫を遥かに上回る快楽と充足感、

 存在意義を全うする満足感に美貌を引きつらせるアンジェ。

 

 

「この惑星の歴史教科書には都合よく省略されているが、

 全ては我々貴族の試験管から始まっている」

 カルネは耳朶を澄ませる。

 寝室奥の暖炉の薪が小さく爆ぜた音と共に

 アンジェが耐えきれずに漏らした甘い吐息。

 それを背景に話を続ける。

 

「かつて導入された第四次モデル以来、

 貴族認定コードと接続する隷属回路を子宮傍神経節に埋め込み完了済み。

 おかげで戦争しても叛逆しても資源輸出停止しても安心安全安定供給維持可能。

 ……なんて素晴らしい文明だろう?」

 

 言葉の刃がリオンの心を切り裂いていく。

 自分が今まで信じてきた自由や誇りは何だったのか。

 この惑星すべてが巨大な鳥籠であったことを突きつけられる。

 

 

 王宮最深部の地下聖堂──

 円柱の陰から響くのは肉が打つかる湿潤な音と陶酔の喘ぎだ。

 兵士がリビアを跪かせたまま、ゆっくりと腰を引けば

「ひっ……むあぅ……ちゅっ……」と

 必死で食いしばる乙女の口腔粘膜が最後まで雄杭を追いかける。

 服従因子が活性化すると唾液は蜜となり、舌粘膜は蠕動性を増し

 あたかも生き物のようにペニスを包み込んだ。

 

「古代文明の遺産よりずっと効率的だ」

 カルネ卿は掌中の赤石を指で転がしながら嘲笑った。

 その光沢に映るのはアンジェリカの絶望に染まった眼差しだ。

 鎖骨から肋骨まで剥き出しになった軍装の残骸が滑稽さを増幅させる。

「なぜ君たちは完璧な『性奴隷の花』として開花し続けると思う?」

 

 卿の指がアンジェリカの顎を持ち上げた刹那

 彼女の脊椎奥で因子が灼熱の楔となり

「……ぐっ……!」と屈辱に歪んだ唇から獣のような嗚咽が漏れる。

 服従の反射が意識の堤防を削り取っていく。

「答えは簡単さ」

 卿は少女の軍服リボンを優雅にほどきながら解説する。

「脳と脊髄に刷り込まれた従属指令は核分裂のエネルギーと同じく永遠不滅。

 子孫繁栄そのものを条件付けした心理トリガーなのだよ」

 

 響くリビアの「ダメぇ……! 奥……当たって……ッ!」と泣き叫ぶ声

 それに重なるリオンの怒号

「やめろォ! リビアから離れろ!」

 だが彼の脚は鉛よりも重く奴隷因子が床に縫い付けている。

 握りしめた拳にはすでに爪が皮膚を破っていた。

 眼前でアンジェリカの肩甲骨が艶麗な弧を描くたび

 リオンの体内で何かが千切れそうになる。

 

「もっと愉しもうじゃないか」

 カルネ卿は新たな玩具を見つけた子どもの笑顔で

 アンジェリカの耳元へ囁く。

 次の瞬間アンジェリカの背中に強烈な電撃が走ったように見えた。

 彼女は悶絶しながらベッド際まで這いずり

 ちょうど騎士に跨がらされるリビアと向き合う形で停止させられる。

 

「ご覧よ二人とも」

 卿の声は悪魔のコーラスのごとき低く甘い旋律を帯びていた。

「お互いの蕩けきった表情が見えるだろう? 

 憎しみよりも渇望が先行してると思わないか?」

 確かにアンジェリカの瞳には怯懦とともに未知への飢餓が灯っていた。

 一方リビアも快楽漬けの半昏迷状態から徐々に目を開きはじめる。

 そこへカルネ卿が新たなる呪詛を滴下させた。

 

「遺伝子を越えた業を晒せ。

 そして喰らい合いなさい、互いの魂ごとね」

 

 暗転寸前の空間に響く二つの呼吸音

 それぞれ異質な欲望が絡まり合う気配──

 

 

 

 屈強の騎士に突き上げられる度、悲痛に蕩けるリビアの幼さを残した美貌。

 その涙を拭ってやりたい衝動に駆られながらリオンは天井の梁に祈る。

 あの十字架が落ちてきて奴隷因子共々我々を潰してくれ! 

 そんな愚劣な願いを嘲笑うようにカルネ卿は黄金の靴先を軽く蹴った。

 カンッと乾いた音が大理石を弾き、

 その波紋がリオンの太腿を震わせる——

 服従の疼きと忌むべき鼓動の同期が始まった証拠だ。

 

「どうした少年? 眉間に皺が寄っているぞ?」

 卿はワイングラスを傾けて芝居掛かった溜め息をつく。

 琥珀色の液体に月明かりが踊り、まるで生贄の血液を祝福しているかのようだ。

「恋慕を履き違えていないか確認すべきだと老婆心から忠告させて貰おう。

 そこに蹲る牝畜どもは皆みな母体の胎内で

『理想的下僕』DNAを既製品として注ぎ込まれている」

 リビアの喉奥から搾り出される破裂音。

 空気が擦れる音がリオンの肺腑を貫く。

 同時にアンジェリカの纏った漆黒の軍装が剥がれ落ちるさまは——

 星座図から一粒ずつ星屑を剥奪していく行為に等しい。

 

「君の愛とは何だね? 彼女らの『依存症』を利用していただけでは?」

 卿の問い掛けは鈍器のように重い。リオンの膝頭が微かに揺れた。

 屈辱と快楽が綯い交ぜになった濁流が股間に充満しはじめている。

 愛するアンジェはこんなときでも美しく淫靡だ。

 とてつもなく澄み切った純白の肌。

 あまりの白さに青みがかって見える深い色艶。

 絶望に抗う気高い美貌は未だ逆襲の隙を伺う女豹の気高さを宿す。

 

 

 

 月光がアンジェリカの背中に十字を描いた。

 その輝きは拷問器具にも似て、

 汗と涙で濡れた軍装の残骸が絡みついた肌に食い込んでいる。

 カルネ卿は赤葡萄酒のグラスをくるりと回し、飛沫が飛び散った。

 

「美しいものは脆いと言うがね」

 卿の声はチェンバロの和音のように室内に溶け込んだ。

「その脆さこそが芸術家を魅了する。ガラス細工は握り砕いてこそ輝くだろう?」

 

 アンジェリカの瞳孔が猫のように細くなった。

 服従因子の疼きで全身の毛穴が逆立つ感触──

 しかも背後の騎士がわざと体重を乗せてきたせいでもある。

 革鎧が肌に食い込む痛みと同時に脳幹を這う甘い電流。

 

 リオンの喉仏が激しく上下した。

 鎖骨に沿って流れるアンジェの汗を舐めとりたい衝動。

 股間が既に硬直している自分が呪わしい。

 

(待て……違う……これは屈服なんかじゃない……)

 

 彼は咄嗟に歯茎を噛み千切った。

 鉄錆の味が口中に広がり脳内の誤作動を鎮静させる。

 その一瞬の硬直を見てカルネは目を細めた。

 

「ほう? 原始的な方法だが意外といい手段だ」

 卿の指が空中で五芒星を描く。

 途端にアンジェの括約筋が収縮し肛門が窄まる感覚が倍加──

 まるで内壁に張り付いた無数の蟲が蠢き始めたようだ。

「……あっ!? うっ、ひぅ……、ぐすっ……」

 必死に取り繕う努力も虚しく、 

 覚醒したケツマンコは主人を求めて勝手に蠢き、

 アンジェは羞恥と絶望に遂に泣き崩れる。

「貴様ぁッ!!」

 リオンの叫びが地下室の埃を巻き上げる。

 だが踏み出した右足は鉛のように沈む。

 踝にまとわりつく闇が重力に変わる錯覚。

 その瞬間、騎士たちの嘲笑が波紋のように広がった。

 

 アンジェリカが振り返りかけた。

 宝石のような碧眼が恐怖に浸食される前に、

 卿の冷たく乾いた掌が彼女の頬を撫でていく。

 白磁の肌に浮かぶ血管さえ透けて見えそうな透明感──

 それは氷の彫像を思わせる儚さだった。

 

「感じるだろう? これが純然たる支配だ」

 カルネの声は蜂蜜の罠だった。

「君たち平民風情が憧れる愛や誇りなど幻想だ。

 我ら貴族の崇高な実験に比べれば塵芥同然」

 

 巨乳を掴む指に歓喜した乳腺が異常活性。

 全身の快楽神経が暴走し、悦楽の電流が迸って脳内麻薬が溢れ出す。

 アンジェの白い顔から血の気が失せた瞬間──

 瞳の奥で小さな火花が散ったように見えた。

 

 リオンは奥歯を噛み砕いた。

 金属片が口腔内に転がりながらも彼は吠える。

「黙れェッ! アンジェを解放しろッ!」

 卿は片手で扇を掲げ微笑んだ。

 それは古代王朝で用いられた伝統衣装の一部に見える。

「ふむ……聞き分けの無いワンちゃんには躾が必要かな」

 たわわな乳房が淫靡に揺れ踊り、

 桜桃色の先端は既に興奮で尖りきっている。

 

「見せてあげるがいいアンジェリカ……」

 卿の口調は祖父が孫に読み聞かせる絵本のようだ。

「どれだけ君たちが崇高であろうと生物は生存本能に負けるということを」

 

 リオンの視界が灰色に滲んだ。

 愛する女が犯される醜態を見届けるしかない地獄絵図──

 床を這いつくばるリビアが悲壮な呻き声を上げ続けている。

 

 騎士の腰使いが加速する毎に少女の声帯から迸る嬌声。

 絶望的な美しさと淫蕩さを兼ね備えた肢体が宙を舞う。

 だが彼らの手腕は巧みだった。

 決して壊れないギリギリのラインを探り当てて緩急を操るのだ。

 

「感じてしまう自分を許しなさい」

 カルネは囁く。

「それが奴隷遺伝子の本懐なのだから」

 

 絶句したリオンが振り返ると、

 鎖で繋がれたノエルの喉元に赤い枷が食い込んでいた。

 

 犬のように四つん這いで這わされる彼女の鎖骨には──

 天使の羽根を模った烙印が妖しく煌めいていた。

 

「リ、リオン……あぅっ!?」

「ナニを人様の言葉を使っているんだ、雌犬めっ!」  

「うっ、うぅ……わ、わん……」

 

 鎖を乱暴に引っ張られ、首が締まる苦しさと、

 主に命令され従属願望が満たされる至福の悦びに脳が茹だる。

 アナルに突っ込まれた尻尾プラグを喰いしめ、ノエルはヨダレを垂らす。

「くっ……」

 

 愛する女たちの痴態に屈辱と悦楽を覚えてしまう身体を呪うリオン。

 それでもなお本能は昂ぶり続けてしまう。

 白濁がじわりと下着を汚す感覚。

 同時に胸郭の奥で荒れ狂う殺意。

 

「おやおや……」

 カルネが眉を上げた。

「嫉妬は危険だよ? 健全な狩猟本能こそ我が国では美徳なのだから」

 その瞬間──

 アンジェの瞳から珠玉の涙が零れ落ちた。

 頬を伝う雫に照明が反射しダイヤモンドダストのように輝く。

 

 リオンの右手が剣の柄に伸びかけた。

 しかし指先は虚空を掻いたばかりで剣は無かった。

 

 カルネ卿は満足気に両手を広げる。

「さあ諸君! これからがメインディッシュだ!」

 ホールに轟く哄笑。

 アンジェの絶望と恍惚が交錯する視線。

 リビアの啜り泣き。

 ノエルの甘い牝の啼き声。

 

 大理石の天蓋からは

 古代神殿の壁画に描かれた女神たちの影が降りてくる。

 その虚像が今まさにもがき苦しむ乙女たちに重なり合っていた。

 

 これは物語だ。

 けれど舞台装置も俳優も観客席もない。

 ただ葡萄畑に吊るされた提灯のように

 無数の欲望と悲哀が吊るされているだけのこと──

 

 葡萄酒の雫が滴る音だけが地獄の序曲を奏で続けていた。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 王宮の一室は夜の帳に包まれていた。

 

 かつてこの部屋が儀式や宴のために使われていたことなど今は遠い昔話だった。

 いまやそこは暴力と背徳の香り漂う秘密の檻。

 煌びやかなシャンデリアから垂れる影が絨毯の紅蓮を濃く染める。

 宝石細工の鏡は曇り硝子の奥で歪んだ現実を写している。

 

 ノエルは跪いていた。

 

 正確には這いつくばっていたと言おう。

 四肢で支える自身の体重が辛い。

 金色の髪は額に貼りつき、淡い桜色の唇からは荒い吐息がこぼれる。

 鎖骨の上に嵌められた革の首輪。

 そこに連なる銀の鎖が漢の手に伸びる。

 金属と金属が擦れる涼やかな音が虚ろな美を帯びる。

 

「わぁん……っ」

 

 高く上げた臀部に突き立てられた槍。

 その侵略行為に伴う被虐の悦は脳髄で火花となって炸裂する。

 鞭打たれた背中には細かい蚯蚓腫れが並び、白磁の肌に朱の軌跡を描いていた。

 

 リオンはその光景をただ呆然と眺めていた。

 

 握りしめた拳から鮮血が滴る。

 何度も何度も牙を剥いて抗ったはずの意志はいまや惰弱な木偶の坊だ。

 壁に磔にされた彼の四肢には黒鉄の枷。

 脳内を駆け巡る服従因子の疼きが思考能力を腐食させていく。

 愛する女が、ノエルがまさに雌犬の如く首輪で繋がれ、犯される絶望。

 愛らしい笑顔が似合う太陽の如き少女が、

 淫靡に濡れた媚で男を煽り立て喘ぐ狂騒。

 

 信じられない。

 認めたくない。

 しかしその事実は凄惨なまでに美しく残酷な演舞を見せつけてくる。

 

 カルネ卿は満足気に微笑んでいた。

 

 マントの裾を翻しながら歩み寄り、

 リオンの頭をそっと撫でる指先には僅かに毒液のような香油の匂いが纏う。

「見たまえリオンくん……素晴らしかろう?」

 卿の低声は砂漠の熱風に似ていた。

「古の伝承によればこう述べられている。

『汝が欲するものを手放すとき始めて真実を得ん』

 ─この場合は君にとって唯一無二の宝物《ノエル》さ」

 

 皮肉な笑いを含んだ言葉。

 しかし次の瞬間には温もりを帯びた慈愛の眼差しへ変わっていた。

「私だって鬼ではないよ。

 本当は誰より愛らしい彼女を独占したいところだがね……」

 

 卿はゆったりとした動作でノエルの髪を梳いた。

 亜麻色の波を湛えた長髪。

 そこへふと混じる薄桃色の色素が夕焼けの雲を想わせる。

「とはいえ見せつけるのも愉悦というもの」

 卿はさらりと言い放つと目配せし、

 部下の兵士は鎖を強く引くと同時に最奥を抉った。

 

 ノエルの身体が大きく弓なりに仰け反る。

「きゃうぅ!」

 喉元を抉られる苦痛と同時に奥深く穿たれる刺戟。

 背筋を雷撃が奔り抜け脳裏を白煙が覆う。

「あっ……はぁっ……ぅんんっ!!」

 悲鳴にも似た嬌声。

 瞳の奥で情炎が燻り始めていることに自分でも気づいてしまう。

 

 涙の筋を伝う冷たい感触と

 焼けつくような体内温度の落差に戦慄した。

「お願い……やめてぇ……ッ!」

 掠れた哀願は却って漢たちの征服欲を煽るだけだった。

 鍛え抜かれた脚が地面を叩き足先が痙攣する。

 

 リオンの眼球が憤怒に血走る。

 しかし拘束具は微動だにしない。

 悔しさで腸が煮えくり返る感覚は熱病の高揚に近い。

 愛する女が侮辱されているというのに何も出来ない。

 こんな無力感があるだろうか? 

 

 卿の唇が歪んだ。

 その笑みは百合を摘む少年の清廉さを湛えながらも邪悪な翳りが滲む。

「君の愛とはこういうものかね? 守るべきものを護衛できず

 ただ呆然と見ていろというのは誠に酷だと思わないか?」

 

 彼は恭しく膝を折ると

 ノエルの肩甲骨越しに首輪の留め金を弄ぶ。

 カリカリと金属音が耳朶を打ち苛立ちが募る。

「だが案ずることはない。私の言う通りにしていれば必ず救われる……

 さすれば今日のような悪夢は過去の記憶に過ぎなくなるさ」

 

 嘘だ。

 口先だけの欺瞞だ。

 そう分かっていても体内時計は正常時刻を刻み

 意識野に流れ込む信号は偽りの安堵感を与えてくる。

 心身を蝕む洗脳プログラムの糸に絡め捕られつつあった。

 

 一方のノエルは絶望と快感の狭間で踠いていた。

 背中を伝う熱い雨は大量の汗だった。

 乳房が激しく上下し胸乳の谷間で結晶化した汗粒がキラリと閃く。

 その輝きさえ背徳的な華として映ってしまう罪深さ。

 

 鎖を引く兵士の腕に血管が浮かび上がった。

 発達した筋肉を露わにした男は

 粗野な笑みと共に腰を捻り上げる。

「ふひぃ……ッ!!」

 

 胎内が押し拡げられる圧迫感。

 肛門括約筋が過剰に緊張し引き攣れる痛みと共に

 鋭敏化した前立腺が抉られ意識が白濁する。

「くうっ! ……うっぐぅ……!」

 苦悶の声。

 しかしその中には明らかな陶酔の喘ぎが混在していた。

 

 リオンの脳裏に警鐘が鳴り響く。

 嫌だ認めたくない。

 しかし目の当たりにした事実は覆しようがない現実であった。

 愛する妻が獣欲に塗れ

 自ら進んで男を招き入れようと腰を振っている姿など正視できる筈がない! 

 

 腸襞が捻れ、浮気棒に喰い尽く恥知らずなケツマンコの挙動。

 ノエルの心を砕くアナルレイプの荒浪。

 愛蜜も潮も噴出の嵐が吹き荒れる。

 兵士は執拗に弱点を攻め立てる。

 Gスポットを小刻みに刺激され彼女は悶絶しながら潮吹きしてしまう。

 

「見よリオン!」

 カルネ卿の声が鞭打ちとなった。

「これが奴隷の血を引く者の真価だ! 

 理性や倫理といった脆い枠組みを破壊され

 純粋なる本性を曝け出す姿こそ美しいではないか!」

 

 怒涛の論理展開に飲み込まれまいと抵抗するも

 脊髄反射的に湧き上がる服従本能は押さえつけようがなく

 遂にはリオンの思考回路がショート寸前となる。

 

 ノエルの嗚咽が断続的に漏れる。

 それは最早悲鳴ではなく嬌声と区別がつかなくなっていた。

 白く柔らかな腹部が波打ち

 膨らんだ陰嚢が腿裏を打つ度に小さな破裂音が響く。

 銀色の鎖が摩擦音と共に宙を舞い

 最後にノエルの身体を前後に揺さぶる衝撃音を奏でる。

 

「いやぁ……もっと……やめてぇ……でもぉ……気持ちいぃよおッ!」

 

 矛盾に満ちた台詞。

 意識とは裏腹に体だけが快楽に溺れていく感覚。

 子宮の奥で渦巻く焦燥が膣内を潤ませ

 愛液が大腿を伝って絨毯に染みを作る。

 その一滴一滴が未来永劫消えぬ傷痕として刻み込まれていくようだ。

 

 唐突に動きが止まった。

 兵士は荒々しく呼吸を整えつつノエルの腰を掴み直す。

 次の瞬間。

「出すぞ雌犬! 受け止めろォ!」

 咆哮と共に大量の精液が腸管を満たし溢れ出す。

 灼熱の奔流が直腸粘膜を焼き払い神経節を侵食していくようだった。

 

「ヒィッ!? 熱いィっ!!!」

 ノエルの全身が痙攣を起こし

 視界一面が霞み白濁の霧に包まれた。

 舌を突き出し涎を垂らす姿は完全なる敗北宣言。

 白い肌が朱色に染まり湯気が立つほどの発熱が続く。

「ああ……ダメェ……こんなのおかしくなるぅ……!」

 

 涙と鼻水で顔面は汚れている。

 それでいて表情は淫靡な陶酔に彩られていた。

 肛門から流れ出る白濁液が太腿を伝い膝小僧に滴り落ちる。

 その様相は筆舌に尽くしがたい倒錯美を醸し出す。

 

「よくぞ頑張ったな……」

 兵士は満足気に褒め称えると再び鎖を引いた。

 釣り上げられた魚のようにノエルの身体が宙に浮く。

 首輪を通して重量がかかることで更なる苦痛が課せられる。

 

 リオンは思わず叫んだ。

「やめろおおおおおおお!!!!」

 

 しかしその咆吼は何者にも届かない虚空へと消え去った。

 ただ己自身の鼓膜だけを震わせ残響となり脳髄を殴打する。

 

 幾度となく穿たれた結腸が亀頭にキスし続ける。

 腸液と精液の混合物が泡立ち肛門から勢い良く噴射され

 床面に飛沫を撒き散らす光景はあまりにも悲惨で美しかった。

 

「まだまだ終わりじゃないぞ」

 カルネ卿は悠然と告げる。

「次は別の楽しみ方をしてみるとしようか?」

 

 暗澹たる予感に怯えるリオン。

 そして諾々と従うしかない屈辱に身を捩らせながら

 ノエルは新たな陵辱劇へと導かれていった……

 

 空っぽになってしまった瞳に

 かすかな希望の灯火など残っていない。

 ただ虚無と狂気と色情だけが宿っていた。

 

 愛玩動物のように弄ばれる運命の行く末とは? 

 ―終幕は未だ遠く果てしない旅路の途中にすぎないのである。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 リオンは裸足のまま石畳の上に立たされていた。

 瞳が燃えるような憎悪で爛れ、髪は汗と埃で固まっている。

 だがその視線の先にあるのは己が剣でも革命の旗でもない。

 最愛の妻であるリビアを蹂躙する“客人”たちの姿だけだった。

 

 

 リビア。

 亜麻色の髪を編み込み飾り紐で束ねていた清楚な印象はとうに喪われた。

 代わりに晒されたのは滑らかな白い裸体と無残に裂けた礼服の布切れ、

 それに──

 

「いやっ! もう……もうやめてくださいッ!!」

 真下からから突き上げる巨漢の腰使いに悶絶し、

 背後からアナルに突き入れられた指に啼泣する清楚な幼妻。

 艶めかしく揺れる巨乳を戯れに犯され、

 快楽と苦痛に紅潮する麗顔が眩しかった。

 

「見てるかね、リオン君」

 カルネ侯爵が葡萄酒を片手に嗤う。

「女は花さ。咲かせるのも摘むのも我々男の裁量ひとつ──どうだ?

 君の大好きなお嫁さんをここまで咲かせてみせたんだ。感謝してくれよ?」

 

 嘲笑とともに投げつけられた杯は鈍く弧を描きリオンの胸板に当たって砕け散る。

 赤い飛沫が白いローブに鮮烈な紋章を刷り込んだ。

 

 

「リオンさん……! お願い……っ、見ないでぇ……」

 彼女が必死に振り向く。

 睫毛に乗った涙が宝玉のごとく煌めき零れ落ちる。

 羞恥なのか屈辱なのか快楽なのか判別不能な混濁した美貌だった。

 

 リオンは唇を噛み破った。

 鉄錆の味が口腔に広がる。

 だがその痛みよりも遥かに深く激しく脈打つものが胸腔の内で暴れている。

 ──貴様らなど皆殺しだッ!! 

 

 呪詛の言葉が咽喉まで駆け上がりかかる。

 刹那。

 脊椎のどこか深層でギシリと歯車が噛み合う不吉な幻聴。

 

『対象階級:高位貴族……確認完了』

『服従プロトコル起動──強度レベル6』

 

 瞬時に血液が沸騰し逆流した。

 思考回廊全域が真紅の稲妻で塗り潰される。

 憤怒の火柱は巨大な楔によって地中深く封じ込められたのだ。

 喉笛は乾いた嗚咽すら紡げずに痙攣し、膝ががくがくと蠢く。

 

「ハッハァ! 効き目バッチリだな」

 カルネが掌で拍手喝采。

「生まれながらの農奴……いいや“性奴”のDNAはさすがだ。

 どれだけ吠えたところで高貴な我らに楯突けるわけがないッ!」

 

 確かにそうだ。

 この惑星の住民は貴族への反逆という概念を胚芽段階で失っている。

 恐怖という名の刻印。

 いや、“安全弁”だろうか。

 星間国家の支配機構は万年前から徹底して愚衆を弾劾してきたのだ。

 

 しかしリオンの瞳に宿るのは唯の怯懦ではない。

 深淵で熾火が燻る音が聞こえる気がする。

 あれはまだ死んでいない焔だ。

 

 その一方──

 

「あっ♡ そこ……っ♡ ぐちゅ、してる……おっぱい揉まないでぇッ!」

 喜悦すら帯び始めた悲鳴が穹窿に谺する。

 こってりと責められた乳首は柘榴の蕾のごとく膨らみ尖り、

 二つの丘陵を揺さぶるたびに甘美な快楽電流が駆け昇る。

 唾液に濡れた指が下肢に辿り着き、秘裂を左右に引き裂くと

 待ち侘びたように溢れ出る愛液が腿裏を伝った。

 

「ケツも準備OKじゃねぇかヘヘッ♪」

 

 兵士の一人が尻尾みたいに伸ばした指で菊門を探り当てニチャリと笑む。

 直腸に忍び込む異物感は恐怖以上に愉悦を掻き立てるようで、

 リビアは小さくのけ反った。

 

「だめ……そこは……本当にだめだからぁっ!」

 懇願。

 だが声音はすでに蕩けきっていた。

 肛門括約筋は反抗的だと理解しながらも蠕動し、指先を咥え込んでしまう。

 まるで貪婪な魔女が獲物に食らいつくような艶容。

 

「こいつ……思った以上に“逸材”かもな」

 

 侯爵が椅子に凭れかけながら嗤う。

 その目は狩猟民族のごとき喜悦で充血している。

「放棄惑星の田舎娘なんて、

 大した期待してなかったがこれは掘り出し物だぜ」

 

 兵士たちが哄笑で賛同。

 酒盃を乾かし合う音が祭りの喧騒のように反響する。

 

 リオンは天井を見上げた。

 金箔で装飾された梁模様の一点だけに焦点を定める。

 なぜなら視線を落とせばそこには──

 

 結合部から滲む白濁液。

 内腿に貼り付く黒々とした剛毛。

 半開きになった女の唇が発する熱く湿った吐息。

 そして何より、

 

「あ~っ♡ すごい……! 全部……いっぱい……きてるぅ……!」

 

 あの澄明な声が、淫らに染まって跳ね回っている現実。

 

 耳朶を切り裂くほどの怨嗟が脊髄を走り抜ける。

 なのに指一本動かすこと叶わぬ枷。

 

「恨めしいか? 嫉妬か?」

 カルネが葡萄の房を一口咀嚼しながら問うてきた。

「いいぞリオン、君みたいな激情家の視線は格別美味だ! 

 しかもその矛先は我らが寵姫に向けて! なんと倒錯的な宴か!」

 

 哄笑。

 床板が共振し砂塵が舞い踊る。

 兵士たちは興奮して肩を叩き合い、

 アルコール臭と雄臭が交錯する空間はまさに地獄絵図だった。

 

 リビアは鎖に吊られた鹿のごとく身体を振らせている。

 肛門と膣口を串刺しにされたまま。

 上向きに突き出した臀部には幾筋もの蚯蚓腫れ。

 頬には涙の跡が硝子片のように結晶化していた。

 

 時折正気に戻るのか、我に返ったリビアは叫ぶ。

「リオンさん……早く逃げてッ!! お願い……あなただけでも自由に……」

 

 泣き声に混じる祈りの断片。

 けれど声帯から搾り出される音の帯域は既に媚薬毒に冒されており、

 聴く者の下半身を炙るように疼かせるだけなのだ。

 アナル専用の補助脳が稼働しはじめた証左だろう。

 

「馬鹿だなぁ君のお嫁さんは」

 カルネが掌をぱちぱち叩いた。

「“お客様”の特権知ってるよね? 

 君らがいかなる反抗行為を試みようと精神枷で強制停止。

 ましてや命さえ奪うことも出来るってこと」

 

 冗談半分の脅迫文句。

 しかしその眼窩は一切笑っていなかった。

「だから大人しくそこで鑑賞するのが正しい選択さ」

 

 正義などと嘯く資格もない連中にそんな台詞を浴びせられる屈辱。

 胃袋が氷塊に凝り縮まる感覚と同時──

 

 突然の鈍痛。

 胃酸が食道を遡り盛大に噎せ返った。

 吐瀉物混じりの血塊が靴先に飛び散る。

 

「やれやれ」と肩を竦める侯爵。

「怒りすぎると自己消化する典型例だね」

 

 嘲笑を背景にリビアが崩れ落ちた。

 四つん這いで啜り泣く姿は子羊のようだったが、

 四肢を支える腱はガクガク震え、

 背中の皮膚はじっとり汗で濡れている。

 

 そこに男がひとり近づきしゃがみ込む。

「じゃあそろそろフィナーレといこうぜ?」

 

 言って彼は一丁の注射器を取り出す。

 透明な筒の中を琥珀色の液体がゆっくり移動してゆく。

 

「なんですか……それ……」

 怯えた問いに答える代わりに針を首筋へ。

 チクリと刺された途端にリビアの肉体が硬直し──弛緩。

 

「あ……? んんっ……!? ♡」

 

 瞳孔が大きく開き唇から涎が垂れる。

 全身の毛穴から湯気が立ち昇り始める光景は何かの儀式めいていた。

 

「さて皆さん注目」

 司会者の如く両手を広げる兵士長。

「これは弊社が研究中の最新媚薬。

 通称“楽園への鍵”。効果はご覧の通り♪」

 

 彼はリビアの片脚を高く持ち上げ、

 秘裂を左右に開帳させた。

 ピンク色の洞窟内部はすでに蜜液で満たされ光輝いている。

 

「リオン君には特別サービスとして

 正面からご覧いただきましょうか」

 

 身体を跨がれ無理矢理顔を持ち上げさせられたリオン。

 否応なしに映る光景。

 

 開かれた膣口から覗く子宮頸管。

 収縮する毎に内部粘膜がヒダとなって捲れ上がり、

 桃色の肉襞が妖しく蠢いている。

 愛液は泉のように湧き出して滴り落ちる。

 

「う……嘘……私……こんなところまで……!?」

 リビア自身の驚愕の呟きと同時──

 兵士が勢いよく突き入れた。

 

 ズチュッ! 

 

 潤んだ肉厚壁を擦り分け貫通する肉槍。

 その摩擦音は甲高く鼓膜を劈いた。

 

「ひぐぅッ──!!」

 弓なりになる肢体。

 筋肉が強張り乳房が跳ね上がる。

 腰を掴まれたまま上下運動が始まるや否や

 肛門は自然と弛緩し淫具のような役割を果たし始めた。

 

(違う……私はこんな女じゃなかった)

 

 崩壊寸前の理性が悲鳴を上げるも

 補助脳から迸る信号が次々と快楽神経を爆発させている。

 直腸内の異物を舐めしゃぶりたいという生理的欲求が本能を凌駕。

 

「へへ……旦那さん見てますよ奥さま? 

 夫以外のチンポでアヘるメスの姿!」

 

 嘲笑が突き刺さる。

 リオンの拳は爪が食い込み血だらけとなっていた。

 しかし拘束魔法陣は依然として頑健。

 自分とのセックスでは魅せたことがないリビアの表情をつぶさに見せつけられる。

 ──快楽と苦痛の狭間に在る淫獣の面貌を。

 

「あっ♡ そこぉ♡ すごいいいっ!」

 

 完全に堕ちた証拠の嬌声。

 同時に肛門側に居た別の男が

 極太バイブレーション機能付きディルドを突っ込んできた。

 

 ヴゥウウン……

 

 振動音。

 腹腔内で響く低周波が脊椎を貫通し脳幹まで震わせる。

 二穴同時責めで意識は白煙のように吹き飛び始め──

 

「リオンさぁん♡ 好きィ……私のこと見捨てないでぇ……♡」

 

 喘ぎながら差し出された腕をリオンは掴めなかった。

 宙を掻く指先だけが虚しく虚空を握る。

「くっ……そぉッ!」

 

 悔恨の咆哮すら力なく洩れただけ。

 その傍らでリビアの股間では陰嚢が急激に肥大し

 子宮内に夥しい精子を解き放つ準備が始まろうとしている。

 

「さぁみんなラストスパートだ!」

 カルネ卿が鞭を打ち下ろし号令。

「全員でお祝いだ! 

 新規採掘計画成功と最優良苗床獲得記念のねッ!」

 

 野獣の雄叫びと共に群衆が殺到。

 四方八方から伸びてくる手足がリビアを空中に担ぎ上げる。

 乱杭歯が白肌に牙を立てて痣を作り出す。

 乳房は握り潰され臀部には爪痕が残り、

 ついに絶頂を迎えた胎内で大量の子種汁が炸裂した。

 

 ドクッドクッと脈動するペニス。

 膣口から逆流する白濁液が床に拡散し濁流と化す。

 同時刻、肛門からも大量の液体が噴出し噴水のごとく跳ね上がった。

 

「ふああああああぁあッ!!」

 最後の一声。

 リビアは全身を仰け反らせたまま痙攣し失神。

 

 沈黙。

 続いてどよめき。

 

 兵士たちは余韻に浸りながら互いの功績を褒め合う。

 侯爵はワインを飲み干し陶酔した様子で演説を始めた。

 

「いや素晴らしい。

 やはり原生星系の野蛮人は素直に淫らだねぇ。

 こういう手合いを教育することこそ我ら文明人の務めさ」

 

 リオンは呆然とした面持ちで地面を見つめていた。

 吐瀉物混じりの涎で汚れた口元から血の塊が零れ落ちる。

 焦点の定まらない双眸が虚空に向いたまま微動だにせず。

 

(これが……オレの敗北なのか)

 

 己の弱さを呪えば良いのか。

 それとも運命の残酷さを恨めばいいのか。

 

 いずれにせよ確かなことは──

 

 今日ここで“旧世界”が終わるということ。

 

 夜空を灼く炎色照明灯が瞬きつつ消え去る影法師。

 闇夜に浮かぶ赤月だけが惨劇の終焉を見守っていた。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 薄暮が宮殿の大伽藍を紫紅に染めるころ、

 葡萄酒の香りがまだ息づくホールに鋼鉄製のチェンバロが据え付けられていた。

 銀糸を編んだカーテンが揺らめけば燭台の火が歪む───

 それがこの宮廷で唯一呼吸しているもののようだった。

 金箔の柱は汗ばんだ宝石を汗を拭き取り、

 大理石の床には葡萄酒のしみが滲んでいてさえ花弁のように見えた。

 踊り子たちは扇情的なガウンを翻し、蝶のような笑い声で嘲弄を交換している。

 退廃の夜会とはそういうものであった。

 

「アンジェリカ夫人。こちらへ」

 

 鋭利な声が渦巻く喧騒を一刀両断した。

 

 

 アンジェは応じて立ち上がった。

 裾広がりのドレスは膝下で波打つ白磁器のように

 硬質で冷たくありながら彼女の肌へぴったり貼りつき体温を奪い去る。

 胸元には珊瑚色のパールが散らばっていたが

 頸へ落ちかかる首飾りが冷然と彼女自身の良心を啄ばむ鳥嘴のようだった。

 

「ようこそいらっしゃいました。陛下の勅令にてお迎えいたしますわ」

 

 形式的な微笑を浮かべながらも喉奥に棘が引っ掛かりそうになる。

 リオンがいない。

 或いは今尚、

 あの地下室で犯されるリビアとノエルを前に慟哭しているのか。

 

 思考だけが走り回り、体内の血液が沸騰しそうなのに

 硬質な美貌の表層には氷の皮膜が張り付いたまま。

 

 カルネの黒いジャケットの襟元から覗く皺一つないシャツ──

 爬虫類めいた瞳で彼女を値踏みするように眺めると

 わざとらしく手の甲で空気を払った。

 

「流石は王妃。匂いが違いますねえ。

 百合の根を煮詰めた芳香剤かと思いましたよ。

 ──もっとも私は肉の方が好みですが」

 

 言外に揶揄を潜ませた語尾が

 アンジェの耳朶を微電流のように這った。

 彼女は瞬時に平静を取り戻す。

 

 

「カルネ卿。踊りをお望みでしょうか」

 やや尖った声が自分の唇から滑り出ていた。

 

 貴族社会における社交辞令の範疇に押し込めてしまえばいい。

 肉体に侵攻されるより遥かに簡単だと判断したのである。

 しかし相手は冷笑とともに懐から小さな水晶片を取り出した。

 透き通った立方体の中で淡い青白色の霧が漂っている。

 

「申し遅れました。

 これは遠征船団から持ち込んだばかりの嗜好品ですよ。

 正式名称はありませんが──《微睡の粉》と呼ばれている」

 

 見る間にカルネ卿の手の中で粒子が煌めき始めた。

 彼が顎を動かせば霧散した光粒がホール中央へ集まり

 見えない手品師によって球形を成した。

 不穏な靄はすぐに天井へ充溢し──

 

 アンジェは鼻孔に甘ったるい媚香を感じ取った瞬間

 膝から力が抜けかけた。

 

(しまった……!)

 

 それでも意地で重心を保とうとする腰に男の手が回り支えられる。

 心ならずも肢体を預け、鍛えられた胸板に押し付けられ

 歪む乳肉から迸った快楽電流に

 腰砕けになりそうな女体を必死に制御するアンジェ。

 蕩けかけ、潤む瞳で気丈にも睨みつける美貌にカルネ卿は愉悦を湛えて言う。

 

「ご安心を。別に犯し倒そうなんて魂胆はありませんよ。

 ただ──貴方がどれほど強くても“条件反射”というものはある。

 あの二人と同じようにね」

 

 その言葉が触媒となったのか彼女は

 リビアとノエルが犯される情景を閃光のように回想してしまう。

 そして疼き出す下腹部の深奥。

 

(いけない……違う……!)

 

 頭蓋骨の内部で警鐘が鳴り響くなか

 ドレスの裾が太腿までめくれあがり

 むっちりした大腿肉が月光に晒され輝く。

 男の掌は当然のようにそこを蹂躙し始めた。

 

「っ……! お戯れを……」

 

 拒絶の言葉とは裏腹に肉感的な四肢は

 快感の予兆に震えてしまう。

 貴族の令嬢として培った自制心も

 淫毒の効能と本能に蝕まれつつあった。

 

(リオン……助けて)

 

 堪えきれず溢れた雫が秀麗な頬を濡らすと

 カルネ卿は残忍に口角を引き上げ

 水晶片をもう一個摘まんで振りかざす。

 

「さあ、“舞踏会”を始めましょうか。

 今宵の曲目は『破滅』──最高の鑑賞者のもとに届けなければならない。

 たとえあなたが絶望しても」

 

 玉砂糖を擂ったような麝香の香りが肺腑を侵し

 意識が朦朧としてくる。

 白絹の手袋越しに絡みつかれる指先は熱く湿っているのに

 同時にアンジェは鳥肌を立てて凍えている錯覚に陥った。

 

(これ以上踏み込まないで……お願いだから……)

 

 しかし身体の芯を突き破るような欲求が

 理性という堤防を穿ち割って流れ込んでくる。

 

 ──リオンの唇よりも甘くて狂おしい口づけがほしい。

 ──陵辱の痛みすら超える悦楽に溺れてみたい。

 ──すべてを委ねた時の解放感を知りたい。

 

 抗うこと自体が罪であるかのような幻惑が

 意識を塗り替え淫靡な陶酔が思考中枢に居座る。

 快楽中枢に火花が飛んだようだったが

 その火花は歓喜ではなく激しい怒りで構成されていた。

 アンジェは歯噛みしながらカルネ卿から身を引き剥がす。

 しかしその動作はあまりにも緩慢であった。

 

「逃げられないぞ夫人。あなたの運命は既に決まった」

 

 舌なめずりをする蛇のような囁きが鼓膜を擽る。

 カルネ卿は背後から伸び上がりアンジェの項垂れた髪を掻き分け

 真珠のように並ぶ首筋へ吐息を吹きかけた。

 瞬間──ぞくりと肌粟立ち思わず声が漏れ出る。

 

「あ……っ……」

 

 快楽電流に肩胛骨が上下する様はまるで海老の跳躍。

 その拍子に豪奢な胸当てが外れかかった。

 押し寄せる喜悦と羞恥が折り重なり

 アンジェは半開きになった唇から細い息をこぼすしかない。

 

(ダメだ……心が溶けていく……)

 

 だが僅かに残った矜持を振り絞り、振り向いて鋭く睨む琥珀色の瞳。

 

「私は……あなたに屈したりしない……!」

 

「ほう?」

 

 カルネ卿は面白そうに眉を吊り上げた。

 

「ならば試しましょうかねえ。

 本当の屈服がどういうものか教えてあげますよ」

 

 男の右手が腰骨に食い込み左手は襟元から滑り込み

 ブラジャーのストラップを外すや否や

 弾けた乳丘が月明かりを浴びて、雪崩のように現れた。

 

 膨らみを包み込む柔らかな光と

 官能の血潮が走る朱の対比は何とも妖艶で

 見ているだけで窒息しそうに息が荒くなる

 乳肉は淫猥かつ豊饒で熟れた桃のように滴っていた。

 

「う……ぅ……っ」

 

 アンジェは苦悶混じりに喘ぐ。

 

(こんなはずじゃ……いや……!)

 

 唇を噛み締めても震える吐息が止められない。

 カルネ卿の五指が双峰の頂きを摘まみ

 柔らかく転がす度に神経が焼き切れそうになる。

 舌先で鷲掴みされた心臓を抉られるような

 甘美且つ痛苦な刺激。

 ──それは背徳の蜜壺へ続く鍵穴を開錠する行為だった。

 

「貴様は絶対に許さん……必ず潰してやるっ!」

 

 怒涛の如き罵声がほとばしった刹那

 熱く火照った粘膜がカルネ卿の人差し指を探検隊として招き入れた。

 途轍もなく卑猥な音を立てて蜜は溢れ指腹を濡らす。

 背中に当たる衣服越しの鼓動が昂りまくるアンジェは

 必死に理性を呼び戻そうとするが快楽に阻害されて叶わない。

 

(リオン……助けて……リオン……!)

 

 視界が霞む。

 甘酸っぱい唾液が舌上で泡立ち始める。

 膝が折れかけ床に跪こうとするところを男の左腕一本で制止されると

 逆に身体を持ち上げられ宙吊りにされてしまう。

 

「ひぅ……ん……っ……」

 

 アンジェは艶めかしい嬌声を発しながらも

 最後の一線として眼差しで殺意を放つ。

 それは哀しみと怒りが綯い交ぜになった剣呑な光だった。

 しかし相手は嘲るように目を細め嘲笑し、嬲るように乳肉を捏ね回す。

 

 

(このような男に……情けない……!)

 

 胸を押しつぶす劣情と屈辱の狭間で

 アンジェの美貌は紅潮を繰り返す。

 息つく暇もなく口腔へ差し込まれた人差し指が

 二枚貝に挟まれてしゃぶられる。

 その滑らかな舌先は本人の意思に反し丁寧に舐め清めてゆく。

 

「どうだい? 美味しいかい?」

 

 侮蔑の声音。

 アンジェは憎悪と羞恥に耐え切れず眉根を寄せながらも

 舌筋は従順に蠢く。

 すると男の指は更に増やされアンジェは思わず噎せ返ってしまう。

 苦しさに顔を歪めながらも彼女は懸命に貪ろうとした。

 嗚咽混じりの声色は甘く湿っていて

 男の嗜虐心を逆撫でした。

 

「ふ……んぅ……んっ……!」

 

「面白いなあ……

 原住民の娘っていうのは皆んなこうなのかな? 

 それとも君が特別かい? 

 

 まあどちらでもいいがね。大事なのはこれからさ」

 

 カルネ卿は悠然と椅子に腰掛け足を組むと

 目の前の祭壇としてアンジェを晒し

 まるで楽器でも扱うかのように身体中を自由自在に操り始めた。

 

 まずパンティーストッキングを引き下げ剥いでしまうと

 ピンク色に充血した花襞が露になりそこへ唾液まみれの指が滑り込む。

 ぬちゃりという異様な音と共に膣口へ吸い込まれた中指が

 探求者として激しく抽送運動を行ううちに

 徐々に解れてゆく粘膜襞。

 その摩擦感による痙攣は凄まじく

 アンジェは弓なりの肢体をわななかせながら

 唾液を撒き散らして啼いた。

 

「やだ……ぃゃあぁ……んっ……! 

 こんなの……違……うっぅう゛!?」

 

 否定しようとしても声帯は過敏に反応する。

 腹部表面から子宮口付近を揉みほぐされる都度、

 脳髄に閃光が炸裂し、全身を貫く快美感は尋常ではなかった。

 

(くそぉ……なんで……こんな事……)

 

 身体中の神経が裏返ってしまいそうだ。

 アンジェは爪を立ててドレスの布地を握り絞めて耐え忍ぶしかない。

 

「くくくっ! ほら見てご覧よこの淫乱さ加減を! 

 いくら高位貴族とはいえ結局雌犬なんだよ! 

 どんなに麗しくとも結局、男には勝てないんだよねぇ」

 

 哄笑を撒き散らしながら男は更なる暴挙に出る。

 

 クリトリスを執拗に擦り上げられ

 陰唇は狂おしく脈動しながら透明な汁を噴出させていた。

 アンジェは唇から涎を流しながら叫んだ。

 

「違う……私は……そんなものじゃない……!」

 

 だが己の願いとは裏腹に女体は歓喜して蕩けかけていた。

 下腹部からは洪水の勢いで泉が湧出し

 椅子の上に座らせられた男のズボンがどんどん浸されていく。

 

「嘘つきさんめ。だったら証明してもらおうか」

 

 カルネ卿は冷笑を浮かべて言うと

 ベルトを外して剛直を露出した。

 血管が浮き出るほどの屹立がアンジェの眼前に聳える。

 そのあまりの大きさと凶悪さに思わず息を呑んでしまった彼女を見て

 男は愉快そうに告げる。

 

「舐めなさい。

 もちろん僕が気持ちよくなるまでね」

 

 侮辱的な命令にも関わらずアンジェは無意識的に跪いてしまい

 ゆっくりと口唇を開いて巨大な槍先を迎え入れる準備をしてしまう。

 理性では到底受け入れ難い行為だったが肉体は正直に応じてしまうのだ。

 

(くそ……なんて屈辱的な……)

 

 そんな愚痴も束の間のこと。

 唇がペニスに接触すると甘美すぎる電流が体内を駆け巡り

 思考能力を根こそぎ奪い去っていく。

 

 口腔いっぱいに広がる雄臭さ。

 猛々しい熱塊の感触に戦慄く舌先。

 喉奥まで突き刺さってくる質量感に嘔吐くアンジェであったが

 奇妙にも幸福感のようなものを覚えてしまう自分が心底許せなかった。

 

(最低……私は……)

 

 遺伝子に刻まれたまま、舌が竿に絡みつき

 裏筋から雁首にかけて丹念になぞってゆく。

 巧みな技量は明らかに手慣れていた。

 カルネ卿は満足気に笑いながら褒める。

 

「素晴らしいですねえ。流石は高貴な姫君といったところか。

 でもまだまだ満足させてもらえませんよぉ?」

 

 嘲弄の声調と共に後頭部を掴まれ強引に前後させられ始めた。

 咽喉を穿たれる恐怖と嘔気。

 生理的に溢れる涙が睫毛に乗せられ零れ落ちる。

 

(もう……何もかも嫌だ……)

 

 虚脱した表情で虚空を仰ぐアンジェ。

 しかし身体の方は変わらず昂り続けているようで

 秘裂からは大量の淫水が零れ落ちてきていた。

 

「ん……っ……んぶ……ぅ……」

 

 苦悶の呻きを上げながらも奉仕活動は止められない。

 唇を窄めて吸い付き歯で引っ掛けるようにしながら

 先端部分へ集中して刺激を与える。

 するとカルネ卿は腰を大きく使いアンジェの喉笛を突いた。

 

「おっと失礼。

 つい嬉しくて強く押しつけてしまいましたなぁ。

 ほーらしっかり飲み干してくださいねぇ♪」

 

 暴力的なまでの突き上げに悶絶するアンジェ。

 胃の中から吐瀉物がせり上がってきたが必死に抑え込み嚥下していく。

 その健気な姿を見下ろして男は嘲笑の溜息を漏らす。

 

「いいねぇその従順さ。ますます惚れ込みそうですよ。

 もっと可愛い声で鳴いてくれると嬉しいのですがね?」

 

 艷やかで色気たっぷりの唇が醜悪な肉塊を咥えこんで歪みうねる。

 口内の性感帯である上顎や舌の表面が性感帯となっているアンジェは

 無様にヨダレを垂れ流しつつ嬌声を絞り出してしまう。

 

「んぁ……ふ……んひ……ぃいっ」

 

 恥じらいよりも先に快楽が押し寄せて来て理性が瓦解寸前だった。

 その隙を見逃さずにカルネ卿はフィニッシュにかかるべく

 両手で頭を固定したまま連続してラストスパートを掛ける。

 

「くくく! 射精すぞ! 全部飲むんだ!」

 どくんっ!! 

 激しい痙攣と共に大量の白濁液がアンジェの口内へぶちまけられると

 苦みのある温い粘液が鼻腔から逆流してきた。

 

「んんんんっ!! うわぁっ!!」

 

 猛烈な嘔気を堪えることができずアンジェは盛大に咳き込んでしまう。

 鼻翼からも白糸が滲み出ておりなんとも惨めな有様だ。

 その光景を見つめながらカルネ卿は悦に入った様子で拍手を贈る。

 

「なんと美しい光景でしょう! まさに天使の墜落といったところですか!」

 

 憐れみの欠片も感じさせない残忍な台詞に

 アンジェは憎悪の炎を宿した瞳で睨み付けるが頬を伝う涙は拭えない。

 

 鈴口を舌先で穿り、残り汁を啜るアンジェにカルネ卿は満足げに微笑みかける。

 射精しても萎えないチンポの逞しさに心がときめき子宮が疼く。

 唇で亀頭を扱き、尿道口を丁寧に舐め取りながらアンジェは絶頂した。

「……っ♡♡……っ♡♡い゙っ、ぎ……ッ♡」

 

 

 甘酸っぱい絶頂の余韻に打ち震えるアンジェはカルネ卿の股間に顔を埋める。

 金髪から覗く耳殻が、桜色に染まって官能の温度を主張するように

 アンジェの頭頂部が痙攣するのはカルネ卿の膝に何度も頬を摺り寄せたせいだ。

 その姿を見下ろすカルネ卿は、くしゃりとアンジェの頭髪を掴んで

 下品な音を立ててアンジェの唇を犯す。

 鼻腔から抜ける精臭に

 アンジェは、喉を鳴らして舌を伸ばした。

 ザーメン漬けの肉棒を愛おしそうにしゃぶり、

 鈴口に溜まった精液をこそぎ取り残滓を搾り取ってやる。

 舌に感じる苦味、生臭さにアンジェは打ち震えた。

 子宮が痙攣し、膣口から本気汁が零れる。

「ぅっ♡♡」

「可愛い人ですね。

 そんなにお好きならこちらの穴に突き入れてあげましょうか?」

 

 その言葉と共に手の甲で尻を叩かれた途端

 アンジェは腰砕けになってその場に座り込んだ。

「やめてくれ……それだけは……」

 悲鳴混じりの懇願だったが無論聞き入れられる筈がない。

 それどころか、貴族の性欲に満ちた視線を受けて

 どうしようもなく女体が蕩け、淫熱に燃え上がる。

 巨根に穿たれた恥辱と悦びを妄想しただけでイキかけるくらいだ。

 アンジェは自分の浅ましさに死にたくなったがそれすら興奮材料にすぎない。

 

「ほら行きますよ」

 天地がひっくり返ったような光景の中

 アンジェの視界に映るのは天井のみである。

(あぁ……もう駄目かもしれない)

 絶望の淵に沈みながらも微かに残った希望の灯火が消える。

 オスに犯され、種つけられる為だけの恥辱の体位を受け入れる弱さ。

 メスの本能が、太腿の付け根を擦り合わせ、蜜壺をヒクつかせてしまう。

 淫靡に濡れた太腿の内側から熱気が漂い始める。

 恥辱と屈辱で、どうしようもないほど濡れている自分が信じられない。

 そんな自分の姿を客観的に眺めてアンジェは愕然とした。

(私が……こんな姿を見られて平気でいるなんて……)

 その想いは次第に肥大化し、心の中の何かを粉々にしてしまったようだった。

 

 

 

 

 カルネ卿の汚辱に満ちた嘲笑が響く玉座の間で、

 リオンはただ立ち尽くすしかなかった。

 愛するアンジェリカが──あの誇り高き貴族令嬢が──

 帝国貴族の指に囚われ、唇を弄ばれ、それすら拒否できずに喘ぐ姿を。

 

 カルネ卿は優雅に腰を据え、

 指先を遊ばせるようにアンジェの上唇と下唇を撫でさすった。

「ほら、お姫様。君のこの愛らしい口元がどれだけ敏感なのか……教えてごらん?」

 

 唇──そこは彼女自身も気づかぬ性感帯。

 これまでリオンとの甘い口づけの中でほんのりと灯っていた火種が、

 今、忌むべき男の指によって残酷に煽り立てられていた。

 薄桃色の唇は、触れるたびに微かに震え、しっとりと熱を帯びていく。

 

「…………っ! ……んぅ……っ」

 アンジェが洩らす僅かな嗚咽は、驚くほど甘かった。

 カルネ卿の太い指が上唇をつまみ上げると、柔らかな双葉が強張る。

 下唇の膨らみを人差し指の腹で円を描くようになぞると、

 閉じきれぬ歯列の隙間から白い歯がかすかに見えた。

 それは反抗の牙などではなく、純粋な不安と未知の快感への怯えであった。

 

「ほらほら……そうこなくては」

 嘲り混じりの愉悦が声に滲む。

 卿の指は執拗に上下の唇の境目を探り、境界線を越えようと蠢く。

 そしてついに──

「あっ……!」

 上唇と下唇がぴったりと閉じられていたその中央の窪みに、

 第一関節まで潜り込んだ指が小さな痙攣を引き起こした。

 アンジェの肩が跳ね、白い喉が反り返る。

 潤んだ翠眼が天井を見上げる刹那の空ろな輝き──

 その静寂が崩れた時、

 

「んんんっ!! ふ、ゔぁ……っ!?」

 電流が走ったかのごとく彼女の細躯が硬直し、

 次いで緩やかな波のように弛緩した。

 唇──たった一点の刺激が脳髄を直撃し、

 肉体の防御機構を完全に突破してしまったのだ。

 内腿が小刻みに震え、濡れた女壺が地面に滴を落とす。

 あろうことか──彼女は「唇」だけで絶頂を迎えたのだ。

 

「は……っ、あ……いや……いや……」

 断片的な否定は意味を持たず、

 陶然と開いた口唇の端から銀糸のような涎が一筋落ちる。

 膝は無意識のうちに内側へ折れ曲がり、

 まるでこれからもっと深い抽送を受け入れるかのように

 脚の付け根を寄り添わせていた。

(おかしい……なぜ……これが快いと感じてしまう……)

 理性が問い詰める。

 唇を犯されて身体が悦ぶなどありえないはずなのに。

 だが遺伝子に刻まれた因子は明白な答えを返す──

 “あなたは征服されることに最も適応した存在なのです”と。

 

 リオンの瞳に映るのは、誇りを手折られても尚、

 紅蓮に燃え続ける魂の化身だったはずの女性が

 ただの湿った蕾のように開花していく姿だった。

 胸元からこぼれる豊満な乳房が浅い呼吸とともに上下し、

 腰紐が千切れそうなほど突起が勃ち上がる。

 太腿の間に滑り込むように垂れ落ちた蜜が床板を濡らす。

 それはアンジェという一つの人間が、

 清廉さと羞恥の仮面を剥ぎ取られ

 原始的な欲求だけが凝縮された濃厚な牝そのものになった証だった。

 

「美しいですよ……アンジェリカ」

 カルネ卿が立ち上がり、屈んで彼女の顔を覗き込んだ。

「もう抵抗など忘れてしまってはどうか? 

 君が受け入れさえすれば……

 この星に生きる全ての娘たちも明日へ続く橋を得られるのだよ」

 甘美な罠。

 悪辣な慈悲。

 己一人が身を捧げれば仲間が助かると言うのならば──

 そんな選択肢を与えられれば、

 元来人を想うアンジェの気高い自我が決断しないはずがない。

 

(皆の未来を……守るためなら……)

(私も……リオンも……きっと……耐えられる……)

 瞬きひとつせず目の前の男を見据えるアンジェの瞳から

 透明な涙が幾筋も流れ落ちた。

 唇は確かに震えていたが、そこにはかつての悔恨はない。

 その震えは恐怖の名残ではなく、新しい運命への戦慄──

 やがて瞳孔が一点に収斂した瞬間、

 

「承知いたしました……カルネ卿」

 囁くような低声。けれど芯鉄のような誓約。

 敗北宣言でありながら祈りにも似た荘重さを帯びたその言霊を聞いたとき

 リオンの胸は鋭利な刃物で抉られたかの如く痛んだ。

 

 直後。

 叩き込まれた肉棒に子宮を潰され、絶頂に追い込まれるアンジェ。

 四肢は宙を舞い、叫ぶ声すら男の肉に塞がれて音にならない。

 リオンの眼前で繰り広げられる凄艷な地獄画図──

 そこにあったのは断じて陵辱者の勝利ではなかった。

 それは哀れな虜囚の破滅ではなく

 堕ちると決めた女神の鎮魂歌であった。

 

 アンジェの身体は海藻のように翻弄されながらも

 どこか恍惚とした悦びの表情を浮かべ続ける。

 彼女の全身から噴き出した汗がランプの淡い光を弾き返す。

 瞳の奥底に湛えられた翡翠の深遠が

 狂おしいほど淫らな金色に染まりゆくさまが

 美しすぎて残酷だった。

 

 リオンは拳を握りしめ、爪が掌に食い込む痛みに意識を保つ。

 これ以上、一秒たりとも視線を逸らせなかった。

 この光景こそが自分たちの故郷を終わらせた呪いの正体なのだから。

 けれどその一方で─

(綺麗だ……あまりにも……)

 何度でも極めるアンジェの姿はどんな肖像画より鮮烈に美しかった。

 その矛盾こそが

 この惑星を貫く因果律の醜さであり同時に唯一の慰藉でもあった。

 

 

 その渦中で──

 最も遠い位置に立たされたリオンだけが

 永遠に消せぬ傷痕と向き合っていた。

 

 全てを諦め、メスの運命を受け入れたアンジェの凄艷な美しさ。 

 そしてその姿を、愛する男に晒すという倒錯的な絶望。

 この星が孕む残酷な因果律は、

 今日もまた一人の英雄を呪われた虜囚へと変えようとしていた。

 

 

 

 

 自ら腰を迎えて浮かせ、肉棒を受け止めるアンジェは

 もはやカルネの奴隷となってしまったかの様だ。

「いい女だ。おまえの旦那が羨ましい」

 カルネは心底嬉しそうに嗤いまう。

 

「きゃあああっ! くるっ……来るッ!! イグゥウウッ……」

 

 野獣の咆哮を思わせる濁声は、まさしく牝の絶叫。

 アンジェは歯を噛み砕かんばかりに食いしばりながら

 眦から滂沱の涙を溢れさせ、美貌を蕩かせてイキ狂う。

 

 汗に塗れた裸身は艶めかしくて、妖艶に濡れ輝く。

 大きく仰け反り、弓なりに痙攣するその肢体はあまりにも蠱惑的。

 カルネの剛茎を迎え入れるたびに白磁の肌が透け見えてしまいそうな

 アンジェの貞淑な印象とのギャップは強烈なコントラストを描いた。

 細腰がうねるたびに揺れ動く乳房は雄々しい曲線を描いており、

 男たちの征服欲を猛烈に昂らせ、益々執着を呼んでしまう。

 まるで踊り子のような乱舞に彩られた肌理細かな肢体は

 熟練の職人が彫り上げた彫像以上の芸術品と言えた。

 

 白く光沢のある腋丘が汗に濡れる様は酷く淫靡な眺め。

 しなやかに伸びた長い両腕は悩ましくも女性的な魅力を振り撒いているのに

 しかし彼女の臀部に突き刺さる長槍によって

 そんな幻想を踏み潰してしまう現実は残酷すぎるものだ。

 

 瑞々しい花弁のような尻肉からは果汁が溢れ出し続ける。

 淫猥な香りは甘く芳醇で馥郁とした芳香となって漂い、

 膣奥をゴツリと殴打されるたびに吹き上がる飛沫は

 琥珀色の弧を描いて宙を翔けた。

 

「見よ、リオン。これがあのお高く澄まし顔をしていた女の素顔だ」

 

 愛し、頼りにしていたアンジェの媚態に

 生唾を飲み込むしかできない寝取られ夫。

 

 自分では到底敵わないと思い知らされる強烈なセックス。

 力強い突き込みに妻が見たことがないほど啼き叫び、

 喘ぎ狂う度にオスとしての劣等感を覚え鬱勃起する情けなさ。

 

 スイッチを捻るように乳首を抓られ、乳房を鷲掴みにされ

 引っ張り回されるような荒々しい責め苦。

 アンジェの顔が快楽に歪み、獣じみた叫びをあげ続けている事実。

 己のペニスでは与えられなかった悦楽を享受して悶え狂う姿を見るのは辛かった。

 

 だが彼女が貪欲に肉棒を咥え込んでいく様子から目が離せない

 自分もまた最低なのだという罪悪感すら覚える始末だ。

 

 乳首を捻られてキュッと縮こまった桜貝のような愛くるしさ。

 舌先で舐られるだけでゾクリとした寒気みたいなものが全身を駆け巡り

 頭が真っ白になってしまう気持ちよさ。

 

 口腔内で転がされるように愛撫されると

 ビリビリ痺れてしまって何も考えられなくなる程の衝撃が襲ってくる。

 カリっと軽く噛まれれば身体中の血液が沸騰しそうになるし

 強く摘ままれてしまえば息ができなくなってしまうくらい激しく感じる事だろう。

 

「あぁ……ダメぇっ!! またイっちゃうから……イクッ!」

 

 ビクビク痙攣しながら再び絶頂してしまうアンジェ。

 ガクッと項垂れ虚ろな目付きで虚空を見上げる彼女は

 憔悴しきった病人みたいだったがそれでも尚美しかったと思うのは惚れた欲目なんだろうか? 

 

 額からは大粒の汗がポタポタ垂れ落ちていて

 上半身は火照り汗まみれでヌメヌメテカテカ光ってる。

 

 耳朶の裏側まで真っ赤になって、

 首筋なんか血管がボコォッって浮き上がってるぐらい脈打ってる有様。

 喉の奥からは嗚咽混じりの吐息が漏れてきてるのが聞こえる。

 

(そんな……俺の大事なアンジェが……)

 

 悲しみと切なさが入り混じった複雑な心境になるリオンを尻目に

 逞しい肉塊に繊細な膣襞を蹂躙される恥辱にハマったアンジェは

 貞淑で厳格な王妃のプライドをかなぐり捨てて性の悦びを堪能する。

「……くるッ♡♡だめっこれ、ッ……♡♡

 ……お゛ぉっ♡……ぅイくぅ〜〜ッ! ♡♡♡♡♡」

 

 どろりとした濃い白濁液が肉穴から逆流して溢れ出してしまい

 太腿に零れ落ちてしまう光景は何とも卑猥なモノであると言えるかも知れない。

 

 それでも必死にお尻を振って懸命におねだりをするアンジェの健気さたるや

 見ているこちらまで胸がキュンとなる位可愛いらしかったかもしれない。

 

 結合部から飛び散る精液混じりの愛液は玉虫色に煌めき

 汚らしいザーメン溜まりを作り出している。

 グチュッグチャグチョヌヂャッメヂュ

 ベジョォッビチャビチュニチャペシュパシュプッシュ

 

 掻き回される水音は下品極まりない猥褻なものであったことも確かだ。

 

「好きぃぃッ!! 愛してる……ッ♡ お願いしますッもっと下さいぃィッッ!!」

 

 切羽詰まった哀願を耳にしてしまい

 どうしようもなく興奮してしまうのを抑えられなかった。

 

「ヒャアッ!? そこグリッてしたらダメェぇッッ!!」

 

 尖り切って肥大化した陰核を捏ねくり回されるアンジェ。

 アクメを迎えたばかりの急所への追撃に耐えられるはずもなく

 すぐさま絶頂に押し上げられてしまう哀れな少女は

 無惨にも惨めったらしく鳴かされ続けていた。

 

 時に乱暴に、或いは繊細に蠢く肉棒に支配され、

 メスの本能を刺激されながら、何度も何度も絶頂に達したアンジェ。

 もう訳がわからないくらい気持ちよくて、頭がボーっと熱に浮かされる。

 心が快楽に染まり、肢体は御主人様の帰還に歓喜してご奉仕した。

 

 女体の全てはリオンの為ではなく、カルネのモノなのだと悟る。

 アンジェの恋や愛、自我など何の意味も無い。

 この星の全存在はアルグランド帝国貴族の方々の所有物。

 生きたオナホ、喋るダッチワイフに過ぎないのだと子宮でわからされた。

 

「おほぉぉ!?!? お゙ッ♡お゙ッ♡イ、くぅ……♡」

 腟内の弱点であるGスポットを擦られると我慢ならないらしく

 簡単にイカされてしまうアンジェの身体は従順そのものである。

 ピンポイントに狙われる蜜壷は蕩け切り

 ふやけたサーモンピンクの粘膜が

 更なる快感を求めて収縮運動を行い続けてしまう状態。

 ギチギチに締め付けて射精を促す

 危険な肉バイブだと言ってしまってもいいほどだ。

 

「可愛いなぁ♪ 随分素直になったじゃないか」

 

 肉杭を根本まで突き立ててズコバコ容赦なく穿っていく

 カルネの手加減なしの乱暴なセックスにアンジェは翻弄されて喘ぎ狂っていた。

 突かれれば突かれる程快楽中枢が活性化し、アクメスパイラルへと嵌っていく。

「……ッッ♥♥イグイグイグゥウッ♥♥イギすぎて死んじゃうぅううっ!!」

 

 頭の中が真っ白に染まり何も考えられない。

 思考能力を喪失して本能に忠実な動物と化した

 アンジェの理性は完全に蒸発してしまったらしい。

 

(こんなのが気持ち良いなんて……!)

 信じたくない事実と認めなければならない現実との狭間で揺れ動く心。

 

 打ちひしがれるしかないアンジェは愛する人を裏切ることになるというのに

 カルネの剛直を求め続けることに酔い痴れてしまっていた。

 

(まずい……! こんなの覚えちゃったら戻れなくなるぅっ……♡)

 繰り広げられる夜伽地獄でカラダを侵蝕され続けているアンジェ。

 夫であるリオンとの行為では味わえない濃密な時間は

 彼女の中に眠っていた女の部分を目覚めさせ

 新たな快感を開拓させていたのだった。

 

(ダメなのに、私は何やってるのだ?)

 

 いけないとわかっていても止められない止まらない。

 疼く肉体と高揚感は膨れ上がっていき制御不能になる寸前だったのだ。

 

『貴女のような素晴らしいメスこそ帝国貴族の性奴隷に相応しい』

 そう言われた瞬間に覚えた屈辱と憤怒。

 自分の地位や名誉が脅かされると思ったから怒りが湧いたのではない。

 尊厳を傷つけられる行為だからこそ許せなかったのだ。

 

 それが今はどうだ? 

 快楽に溺れて無様を晒す始末。

 嫌悪していた筈の相手に抱かれたくて堪らない自分が居る。

 

 心が身体についていかない。

(こんなの嘘だ、違うっ! 私はこんなことがしたいんじゃない、

 本当は嫌なんだ!! 信じてくれ、リオン……あっ♡)

 

 いくら否定しようと身体は正直だということを改めて思い知らされる。

 膣壁は物欲しげに収縮運動を繰り返し

 早く来てと訴えかけていたのだから……。

 

(違うッ!! これはきっと何かの間違いぃ……♡)

 

 だがどうあがいても変えられない過去はあるし、

 変えようとする意思があっても変えられないこともあるのだ。

 

「旦那の為に仕方が無く股を開く王妃様は可愛らしいな」

 嘲笑を含んだ台詞に思わず反論してしまうものの

 返ってくるのは罵倒ばかりであり傷つくのは自分の方である。

 

(なぜ、こうなるのだ……)

 絶望的な気持ちで喘ぎ、膣襞を蠢かせて巨根に絡めれば

 悦び勇んでビクビク痙攣するモノが可愛くてしょうがない。

 もはやどちらが雌なのか分からない有様であったと言えるかもしれない。

 

「っ……♡♡……やッ……! ♡♡ぁう♡♡っ!! ♡♡」

 

 リオンは妻を奪われて憎しみと悲しみで胸が張り裂けそうだ。

 しかし、目の前で行われている淫行を止めることはできなかった。

 それどころか、もっと見せてと催促さえしたくなるくらい魅了されているのだ。

 

 自分ですら驚くほど無力な自分が情けなくて涙が出そうになる。

 だが同時に安心感を覚えていたのも事実だろう。

 

(これが、本当の俺……か……)

 弱い自分を受け入れることができるようになったからこそ

 今の幸福があり、アンジェと出会い愛し合うことができた。

 そうでなければ今頃どうなっていたか分からない。

 だから感謝しなければならないと思う反面

 裏切り者の屑野郎として最低の気分にもなるリオンだった。

 

「さてと次はどこに挿れようかなぁ?」

 ゆっくりと引き抜かれるペニスを見て、これから起こることを察知したアンジェの

 顔色が変わったのを見て愉快そうに笑うカルネ。

 

「や、やめ……ろ……」

 慌てて逃げようとするが、肩を押さえられてしまっては叶わない。

 それにしてもよく鍛えられていて惚れ惚れするくらい見事な筋肉美をしている。

 そんなことを考えているうちに脚を掴まれて持ち上げられてしまい

 強引にM字開脚させられてしまった。

 

「い、嫌ァァァッ!」

 恥ずかしさに悶絶しているアンジェだったが、すぐに快楽で上書きされることになる。

 

「やっぱりここが一番感じてるみたいだねぇ」

 クリトリスの裏側を亀頭でグリグリと押し潰すように刺激すると

 面白いほど派手に跳ね上がって悦ぶアンジェ。

 当然のように絶頂してしまうわけで、潮を吹いて痙攣してしまう始末。

 

「ははっ、ほんとにすごいな君は」

 面白がるように観察するカルネの視界には

 ぷっくり膨らんだ割れ目からトロリとした粘液を滴らせているのが映っていた。

 

「凄い淫乱ぶりだね、とてもじゃないけど貴族の娘とは思えないよ」

 馬鹿にされているとわかっていながら何も言い返せず項垂れるしかないアンジェ。

 悔しくてしょうがないはずなのに何故か興奮してしまっている自分に戸惑っていた。

 

「っ……!!? ♡♡……ひぃっ♡♡だめっ♡そこ触ったらぁっ……♡♡」

 今までとは比較にならない快感の奔流が脳髄へと叩きつけられる感覚に

 翻弄されっぱなしになっているアンジェ。

 しかもそこは子宮の入り口、所謂ポルチオと呼ばれる部分であり

 少しでも触れられると

 たちまち意識を失いそうになるほど強烈な衝撃を受けるのだ。

 

「まだ序章だって言うのにこれで大丈夫かい?」

 余裕綽々といった様子で尋ねてくるカルネに対して

 最早殺意しか抱かないアンジェ。

 それでも身体は正直なもので、愛液を大量に分泌しては

 ヒクつく淫肉を見せつけてしまうのだった。

 

 夫以外の者を受け入れまいと抵抗していた心も消え去り

 欲望に支配されるメスの弱さに恥辱の涙を零し嗚咽するしか無い。

「おおっ……すごい締め付けだなこれは……」

 歓迎するかのようにまとわりついてくる襞の感触に満足げな表情を浮かべるカルネ。

 そのまま腰を前後に動かし始めると、それに合わせて上下運動を開始するアンジェ。

 

 

 組み伏せられ犯されるアンジェは透き通る金砂のごとき長髪を乱れ咲かせ、

 蒼白の額に脂汗を滲ませながらも、唇だけは不思議と朱を含んでいる。

 あれは昂ぶりの紅潮か、それとも恐怖と羞恥が溶け合った暗澹たる予兆か──

 見ているだけしかできないリオンには判じかねる距離が残酷だった。

 

 蜜を湛えた花園を踏み荒らす侵略者を丁寧に咥えこんで歓待する屈辱も

 甘露と錯覚する淫靡な魔術を植えつけられた彼女の四肢は

 むしろ主人を歓迎する舞踏のように嫋やかに妖しく撓んでしまう。

 

 花弁一枚一枚が啜る琥珀の雫は滑らかな陶磁器にも似た大腿部を濡らし

 膝小僧から踝へ珠になってこぼれるころには床石に淡紫の輝きを残していた。

 薄闇の中で閃くその彩は宵闇に瞬く蛍火を思わせた。

 確かにそれは彼女が悦びに堕ちゆく明確な灯りなのだと思い知った時、

 胸の裡で胎児のように丸くなった嫉妬が鈍痛に変わり始めたのを感じる。

 

(畜生め……! 妻を救えないばかりか、

 自分の女が犯される姿を見て、勃起する最低のクズだ、オレは……)

 

 心内で吐き捨てる毒が咽喉元まで込み上がる。しかし言葉は出てこない。

 喉仏が上下する微細な動作だけで済む程度の無力さに身震いすれば、

 かすかに漏れた嗤い声が己の鼓膜を打つ。苦笑か嘲笑か判断つかぬ声音だった。

 

 豪奢な刺繡の敷布に埋没しながら緩慢に蠢く白皙の裸体。

 折り畳まれた腕を枕にして投げ出した足先で波紋を作って遊ぶ姿は

 さながら泉の女神を模した彫像であろうか。

 穢れ一つ宿さぬ聖なる像が眼前で蹂躙される光景はまさに

 邪教の大祭司が捧げる異端の贄供儀式の趣があった。

 

(どうやらこの世にも仮初めとはいえ神などいないらしい)

 

 祈るという行為さえ冒涜している己こそ

 天罰を浴すべきだと思案しては却って笑ってしまう。

 

 現実逃避すら許さぬ、アンジェの淫猥な痴態が齎す圧倒的リアル。

 花芯の奥底を抉られる度に零れる鈴虫の鳴き声よりも澄んだ媚叫は

 耳朶を通じて脊髄を直撃し電流を走らせ

 全身の血液を沸騰させる呪詛に変貌していく。

 

 リオンの股間は痛みさえ感じるほど屹立し、

 手甲越しに握り潰しかねぬ勢いで拳が固まった。

 けれど決してそれを解くことはない。解放すれば即座に暴走し破滅へ向かう。

 今この瞬間にも彼女を奪回しようとしても徒労だと魂より理解しているからだ。

 

 一方的な享楽が続く限り終焉は訪れまい。

 永遠にも似た一時の蹂躙を背後霊か幽鬼の如く見届けるほか選択肢はない。

 

 アンジェが苦悶混じりに歪めた面差しで此方に向けた視線に気づいた刹那、

 目尻に溜まる玻璃粒を落としながら睫毛を震わせた彼女は何を訴えたかったのか。

 未練か悔恨か謝罪かあるいは救難信号かもしれぬと推測しても真偽は不明瞭。

 

 結局どちらも問い掛ける事なく沈黙という結界を保つ他ない。

 

 

 幾度めかの絶頂を迎えた時刻に連動して室内温度はじんわり下がりはじめ

 燭台の灯火は風もなく萎んでいく気配である。

 

 蝋燭台が一つ二つと消灯される中影絵芝居さながら動く男女の輪郭が

 徐々に曖昧模糊となって幕引きへ向かう演出を演出していた。

 

 漆黒へ同化しつつある室内で唯一点燃した月暈模様の照明器具だけが光源となる。

 薄青く照らされた肌膚が微かに浮かび上がり呼吸音だけが響く空間となった今、

 乙女ゲーの終わりを告げる鐘の如くアンジェの喘ぎが鳴り響いた。

 

「ん、あ゙〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡♡♡♡」

 轟雷と共に弾け飛んだ快楽が体内に充満し暴風となって渦巻けば

 理性も矜持も粉砕して剥き出しになった素顔は官能の化身そのものであった。

 

 リオンの掌は依然として閉ざされたままだったが内心では泣き崩れていただろう。

 

(もう終わりにしてくれ)

 

 願ったところで世界は止まりはしない。

 終わりの見えない悪夢の中でも朝日は昇るだろうし次の一日が始まる。

 

 アンジェの長い金砂も静寂を取り戻し煌めきを落ち着かせれば

 柔らかな陽射しを浴びて散華する桜木を思い出した。

 春霞を背景に散り急ぐ花弁一片一枚を掌に乗せて数えてみる心情へ思い馳せれば

 彼女は既に新芽の準備を整えているのではないかという希望的観測が脳裏にちらつく。

 

「おい、終わったぞ」

 無慈悲な宣告と共に解放された女王はぐったりと横たわったまま動けずにいた。

 

 蹂躙者は意気揚々と衣装を整えれば振り返る事もなくドアノブに手を掛けた。

 軋む蝶番を押し開き廊下へ消え去れば後には虚しさだけが漂った。

 

「ごめんなさい」

 

 アンジェのか細い詫びの一言は空気に溶けて虚空に消えた。

 

「いや……俺こそ面目ない」

 

 答える言葉には後悔しか含まれていなかった。

 

 真冬の氷塊より冷たい静寂が支配する室内で

 僅かに聴こえる布擦れ音だけが生き証拠として在り続けていた。

 

(……たとえどれだけ汚されようとオレ達の物語は終わっていない)

 そう心中で呟きつつリオンは手甲を解く。掌には爪痕が刻まれていた。

 

 今更ながら流血する皮膚組織と激痛に気づき自重する寝取られ男。

 空元気すら出せず、傷ついた妻を慰めることができない己に失望する。

 

 やがて彼らは、試練を乗り越え日常に戻る。

 次に現れるお客様次第で、コレを忘れるか覚えたままかは決まるが。

 此処は、帝国貴族の遊技場。

 都合のいい家畜の牧場。

 救いは無い。或いは既に救われている。

 自らの存在意義を理解し、実現する事が幸せと定義する、ならば……

 

更新希望の原作

  • 魔弾の王
  • 落第騎士
  • ハイスクールD×D
  • 月姫
  • モブせか
  • マジエク
  • のんびり農家
  • 新妹魔王
  • 八男
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