※この作品はR-18です。

ダークエロよろず短編集   作:カード読み込み

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紫乃宮天音が産まれた日

 

 

 

 白熱灯の乱反射が滴り落ちるように宙を巡っていた。

 八月の蒸し暑い夜気はコンクリートジャングルに押し込められ、

 息を潜めた人々の欲望と共に茹だっている。

 ここは大阪の中心部から離れた湾岸の埋立地に存在する「湾岸ドーム」

 ──七つの剣が織りなす祭典の最終幕。今宵、天下一の座に至るのは誰か? 

 

 選手入場ゲートから姿を現したのは、武曲学園三年・諸星雄大。

 炎のごとき赤銅色の肌に汗が玉となって浮かび、

 胸板は鋼線のように緊密に張り詰めている。

 腰帯に吊られた青龍偃月刀にも似た大槍「虎王」が鈍く唸っていた。

 

 前大会の七星剣王にして世代最強の名を恣にする絶対王者、

 赤座理人がヴァーミリオン皇国救援のため欠場した大本命不在の七星剣武祭、

 今年はBランクの抜刀騎士として堂々たる戦績を引っ提げてきた彼は、

 本大会の優勝予想オッズでも断然の一番人気であった。

 

 対するは破軍学園──の校章を背負った少年。

 データ不足の無名代表。

 一般家庭出身の新入生がまさかの決勝進出。

 観客席のざわめきをよそに、彼は飄々と歩いてくる。

 長い睫毛の奥には底なし沼の如き蒼穹が揺れていた。

 整った鼻梁に触れたくなる唇の艶。

 まだ16歳にもならぬはずなのに、

 纏う空気は熟練の帝王が匂わせる艶媚に似ている。

 

「……なんやワレ」

 

 雄大の咽喉が乾いた音を立てた。

 彼の脳裡には不吉な符号が浮かぶ。(コイツはヤバいモン持っとる)

 

 審判の開始宣告が響く。刹那、雄大の掌に灼熱が漲った。

 

「──虎王!」

 

 迸る雷鳴にも似た閃光。

 銀灰の刀身が虚空を刺し貫き、凝縮された魔力の紋様が竜鱗のように脈打つ。

 観衆から拍手喝采の波濤。だがそれはほんの一呼吸のみ。

 

 〈ヒュゥン〉

 

 相反する旋律で金属が鼓膜を震わせた。

 流輝の左手から零れ落ちた光粒が寄り集まり──

 まさに双子のように瓜二つな槍へと昇華した。

 しかもその形状は、寸分違わず“虎王”である。

 

「嘘やろ……!?」

 

 息を呑む雄大を嘲笑うかのように、流輝は微笑を浮かべた。

 

「芸術品には鑑賞眼が必須だろう?」

 淡紫の靄が槍にまとわりつき、妖しく蠢く。

「さて──どれほどオレの鏡写しが続くか見てみようじゃないか」

 

 轟音を孕んだ床石が弾け飛び、互いの脚が大地を蹴る。

 真紅と瑠璃色の流星が交錯し、幾重もの火花が舞い散った。

 初撃は確かに“同質”。

 速度も角度も力任せに放たれた魔力波さえ同一線上で噛み合い──拮抗。

 それどころか奇妙なシンクロ感にゾッとする。まるで自分の鏡像と相寃する悪夢。

 

「しゃらくさいッ!!」

 

 雄大の咆哮と共に放たれた第二射──伐刀絶技≪暴喰≫。

 螺旋を描いて迫る破滅の槍が空間を抉り取りながら突進する。

 真空を咀嚼しながら標的を粉微塵に屠るこの一撃に触れたものは全て“無”となる筈だ。

 

 が、流輝は嗤った。

 自らの左腕を突き出し、肩口に猛進する尖端を迎え撃つ。

 皮膚一枚隔てたところで火花が舞い散り、

 刹那の煌めきとともに侵蝕が始まろうとした──

 

 しかし。

 

 パキン!! 

 

 硝子板が剥がれ落ちた音と共に、“暴喰”の螺旋は脆くも砕け散ってしまったのだ。

 空中で四散し泡沫と帰す魔力残滓の中を悠然と進む流輝。

 その右手には崩れた残骸の槍頭だけが嵌り込んでいる。

 

「フハッ! これが自慢の技かァ?」

 嘲弄する声音に血潮が沸騰した。

「ナメんな!!」

 

 怒号を咆哮へ変え疾駆する。

 次いで第三撃第四撃──更には死角を狙った不可視の一閃。

 悉くが鏡映しに迎撃され火花散る。そして全て虚しく潰える。

 

 五度目の刃合わせで漸く悟った。

 此奴は己以上の精度で≪暴喰≫を使っている──否、

 

 模倣を超え創造だ! 

 

「お前の技は温過ぎる」

 涼風を含んだ声で告げられる敗因通告。

 

「ここだ」

 スッと流麗に滑らせた指先が雄大の右肩甲骨を掠る。

 途端に全身から魔力圧が消え去った。

 

「ッ!? なんで──」

 

 狼狽する暇もなく繰り出される神速の突き! 

 咄嗟に辛うじて回避した首筋から汗が吹き飛んだ。

 

(こんな単純動作で!?)

 

 理性が混乱し本能が警鐘を打ち鳴らす中でも体躯は慣性に縋り付く。

 

 

 逃れるように回転し渾身のバックスタッブを浴びせる─────つもりだった。

 

 だが、その牙は虚しく空を切った。

 いなされたのだ。

 雄大が生涯を懸けて研鑽してきた槍術の極み、死角から迫る必殺の逆袈裟突きを、

 流輝はさも退屈そうに、あくびでも噛み殺すかのような緩慢な動きで躱したのである。

 

「……ハズレだね」

 

 耳元で囁かれた声音は、甘く、そして残酷だった。

 まるで恋人の寝息のように首筋を擽りながら、

 流輝の槍——「無創」が変化させたもう一本の「虎王」が、雄大の脇腹を深々と抉り込む。

 

「ぐっ……!?」

 

 呻き声と共に鮮血が舞う。

 だが、痛み以上に雄大の魂を凍らせたのは、

 己の技がまるで手のひらを読むように看破されたという事実だった。

 

(なぜや……!? ワイの槍は、まだ速い筈や……!)

 

 雄大の槍は速さだけではない。

 死線を潜り抜けた経験からくる「粘り」がある。

 足を失った絶望の日々から這い上がった執念が、予測不能の軌道を描かせていた筈なのだ。

 

「そう、それだ。その泥臭い動き。悪くない」

 

 流輝は愉悦に唇を歪めながら、雄大の間合いへと踏み込んでくる。

 そして見せたのは、雄大自身が先ほど用いた変則的な踏み込みだった。

 

「!?」

 

「だが──遅い」

 

 同じ動作。同じ軌道。なのに、決定的な違いがあった。

 流輝の踏み込みは、雄大のそれよりも遥かに洗練され、

 無駄がなく、そして何より優雅だった。

 泥臭さを削ぎ落とし、その本質だけを抽出して磨き上げたかのような完璧な模倣。

 

 ドォォォォォン!! 

 

 再び交錯する鋼と鋼。

 雄大が繰り出した「暴喰」を、流輝もまた「暴喰」で迎え撃つ。

 概念干渉系の伐刀絶技がぶつかり合い、空間が軋むような嫌な音を立てる。

 魔力が食い合い、互いの構成を破壊し合う激突。

 

「あぁんっ……!?」

 

 堪えきれない嬌声が雄大の喉から漏れた。

 魔力が食い破られる感覚は、決して物理的な痛みだけではない。

 己の魂の核を直接舌で舐め回されるような、

 背徳的な快感にも似た戦慄が背骨を駆け上がる。

 

(あかん……! ワイの魔力が……剥がされる……!)

 

 雄大の「暴喰」は相手の魔力を破壊する。

 だが流輝のそれは、破壊した魔力を飲み込み、

 さらに凶悪な威力へと変換していくかのように思えた。

 同質の筈の力なのに、圧倒的な格差がそこには存在していた。

 

「くそっ……くそったれがぁぁッ!!」

 

 雄大は叫ぶ。恐怖を塗り潰すように。

 槍を振るう。何度も、何度も。

 己の全てを懸けて編み出した技の数々を雨霰と浴びせる。

 だが、その全てが流輝にとっては通じない。

 

「右だ」

「左だ」

「そこはフェイントだろう? 陳腐だね」

 

 まるで教科書を読み上げるかのような冷淡な指摘。

 雄大が放つ如何なる奇策も、流輝には通用しない。

 それどころか、指摘された直後にその技を完璧な形で模倣され、

 カウンターとして叩き返される。

 

「ガッ……ァァ……ッ!」

 

 腹を突かれ、肩を斬られ、腿を薙がれる。

 その一撃一撃が、雄大という男のプライドを一枚一枚、

 丁寧に剥ぎ取っていくかのようだった。

 戦場で培った技も、地獄のリハビリで手に入れた脚も、

 全てこの男にとってはただの「玩具」に過ぎないのだと無言の内に宣告されている。

 

「どうした? 『死んでも立ち上がる男』だろう?」

 

 流輝の言葉に、雄大の心臓が跳ねた。

 見透かされている。己の過去も、覚悟も、全て。

 

「お前の人生は見事だよ。感動的だね。

 ……だが、所詮は凡人の感動だ。オレには届かない」

 

 流輝がゆったりと槍を構える。

 その姿は神々しくすらあった。

 汗一つかいていない白磁のような肌。乱れることのない呼吸。

 同じ技を使っているというのに、片や泥にまみれた獣、片や雲の上の神仏。

 

「ワイの……人生が……!」

 

 雄大は震える腕で虎王を握りしめた。

 悔し涙で視界が滲む。

 己が一生を掛けても到達できない高みが、目の前にある。

 それも、自分と同じ武器を持った若造として。

 

「泣くなよ。

 これからもっと深く知ることになるんだからね────お前自身の無力さを」

 

 流輝が踏み込む。

 その動きは最早、雄大の目には止められなかった。

 自分の技を超えた先にある、「理想」と呼ぶにはあまりにも残酷な絶対境界線。

 

(あかん……ワイは……負ける……)

 槍先が喉元に突きつけられる。

 冷たい鋼の感触が肌に触れた瞬間、雄大の膝から力が抜け落ちた。

 それは敗北という名の、甘美な陵辱の口づけだった。

 

 

「まだ、イケるだろ?」

 

 喉元に冷たい接吻を残した槍先が、蝶が羽根を休めるかのように離れていった。

 蛮場流輝の声は酷く甘美だった。

 絶望という名の劇薬を蜂蜜で包んだような、魂を蝕む囁き。

 

 膝をつき、荒い呼気を吐き出す諸星雄大の背筋に、ゾクリとした悪寒が奔る。

 屈辱で胃袋が裏返りそうだった。

 己の全てを否定され、赤裸にされ、嬲り殺しにされているというのに──

 その背後で鎌首をもたげているのは、正体不明の昂りだった。

 

(あかん……ワイはどうかしてしもたんか……!)

 

 理性が悲鳴を上げているのは解る。

 両足の機能を失ったあの日よりも、妹の小梅を瓦礫の下に見たあの時よりも、

 今の方が遥かに深い絶望の淵に立っているというのに。

 体芯に燻る闘争本能という名の野獣が、

 血走った目で目の前の支配者を仰ぎ見ているのだ。

『もっと』と。『連れて行ってくれ』と。

 

「お前の槍は悲鳴を上げているよ。そんなに力んだら、本来のしなやかさが死ぬ」

 

 流輝はゆったりと「虎王」を構え直した。

 彼の手にある槍は、まるで生き物のように空気を孕み、艶めかしい光沢を放っている。

 対する雄大の手にある本物は、今にも泣き出しそうなほど震えていた。

 

「ほら、立てよ。浪速の星」

 

 挑発ではない。

 ただ淡々と、事実を突きつけるような口調。

 それが却って、鞭打つよりも雄大の矜持を抉り取った。

 

「ウゥッ……!」

 

 喉から獣のような唸りを絞り出し、雄大は己の太腿を叩きつけて立ち上がった。

 関節が軋み、傷口から滲む血が熱く脈打つ。

 だが、立ち上がった瞬間、

 奇妙な安堵が胸を満たしたことに気づき、自己嫌悪で目眩がした。

 この男に立たされている。許されている。

 そう感じてしまったのだ。

 

「いい子だ」

 

 流輝の唇が微かに弧を描く。

 その笑みは残酷なほど優雅で、雄大の心臓を鷲掴みにした。

 

「右腰。重心が後ろに逃げている。お前の足は再生した筈だろう? 

 過去の亡霊に縋るような重心じゃ、地面を噛めないよ」

 

 指摘と同時に、流輝が踏み込んでくる。

 同じステップ。同じ角度。なのに、全く違う質量感。

 雄大の視界一杯に銀灰の刃が迫る。

 

「ぐっ……!?」

 

 咄嗟に受け止めた虎王に、凄まじい重圧が掛かる。

 骨まで響く衝撃。

 だが、それはただの物理攻撃ではなかった。

 流輝の槍を通じて、雄大の身体のどこに無駄があるのか、

 どこが弱いのか、正確無比な指圧のように解らされていく。

 

「そこだ! 肘が死んでる!」

 

 ドォン!! 

 

 腹に重い一撃が入る。

 内臓が揺さぶられ、酸素が肺から強制的に排出される。

 雄大は呻きながらも、不覚にも感嘆していた。

(コイツの槍は……生きとる……!)

 自分の技でありながら、自分が決して到達できなかった領域。

 それが今、目の前で披露されている。

 

「ほら、呼吸を止めるな。余計な力みは毒だ」

 

 流輝は雄大が膝をつく度に槍を引く。

 追撃はしない。

 ただ、「立て」と促すように間合いを取る。

 それは獲物を甚振る捕食者の余裕か、あるいは施しを与える神の慈悲か。

 どちらにせよ、雄大には救いようのない屈辱だった。

 

(ワイは……ワイの剣は……コイツのおもちゃか……!)

 

 悔し涙で視界が滲む。

 だが、涙の向こうに見える流輝の剣舞は、

 あまりにも美しく、あまりにも完成されていて、目が離せなかった。

 泥濘に沈む者にとって、天上で輝く星は忌避すべき仇敵であるべきなのに。

 どうしてもそれに手を伸ばしたいと思ってしまう愚かさ。

 己の醜さに吐き気がした。

 

「何度言えば分かる? 

 お前の槍は感情で振り回されているだけだ。理性と本能を同居させてみろよ」

 

 次の突きが来た。

 雄大は何とか応戦しようと槍を合わせる。

 だが、やはり軌跡が浅い。早過ぎる。

 その瞬間。

 

 パン! 

 

 乾いた破裂音とともに、雄大の腕が痺れ、虎王が軌道を変えた。

 流輝の槍がわずかに逸れて放たれた一撃は、雄大の頬を掠めるように通過した。

 もし流輝が本気だったら、この時点で終わっていたことなど明白だった。

 

「今のタイミングだ。憶えたか?」

 

 流輝が微笑む。慈父のような表情。

 だがその瞳の奥には氷柱の如き冷酷な光芒がちらついていた。

 この男は遊んでいる。命懸けの試合でありながら、

 まるで教材のページを捲るように雄大を吟味している。

 

「はぁ……っ……はぁっ……!」

 

 喘ぐように呼吸を継ぐ雄大。

 既に体力は尽きかけている。

 それでも虎王を握る手の力は衰えない。

 いや、むしろ増していた。流輝から与えられる“刺激”を求めてしまう、

 哀れな中毒患者のように。

 

「もっと喰らいつけ。お前の全力を全部曝け出してご覧。

 その上で──オレが壊してあげるから」

 

 その言葉を聞いた瞬間、雄大の中で何かが決壊した。

 羞恥も悔恨も情熱も憤怒も全てが混濁し、

 一塊の純粋な欲求へと収束していく。

 

(壊れてもええ。ワイの全部を見せたる!!)

 雄大は吼えた。文字通り野生動物の如く。

 そして全身全霊を振り絞り、我武者羅に挑んでいく。

 表情は歓喜に染まり、武芸の高みに触れる悦びが理性を圧倒した。

 

 会場の空気は狂っていた。

 八月の熱気など児戯に等しいほどの、濃密で粘着質な酩酊がドームを満たしている。

 原因はただ一つ。円陣の中心に立つ一人の美神──蛮場流輝の存在だ。

 

 彼は汗一つかいていない。

 白磁のごとき肌は照明を跳ね返し、

 神殿の彫像のように完成された肉体を誇示している。

 切れ長の瞳は底知れぬ深海のような蒼穹を湛え、

 唇には絶対的支配者のみが許される傲慢な微笑みを浮かべていた。

 老若男女を問わず、観衆は皆その魔性の美貌に魅了され、

 時が止まったかの様に息をするのも忘れて見入っている。

 空気すら凍りつく静寂の中で、ただ二人の呼吸だけが湿り気を帯びて響いていた。

 

「オォォォォォッッ!!!」

 

 雄大が咆哮した。獣の如き咆哮。

 恥も外聞も、Bランク騎士としての矜持もかなぐり捨てている。

 彼が今求めているのは勝利ではない。

 この男が見せる一瞬の絶頂、武芸という名の極致の煌めきだけだった。

 泥濘を這いずり回る者にとって、

 天から差し伸べられる救いの手は毒薬であろうと啜り尽くすしかない。

 

 渾身の力で虎王を突き出す。

 脳髄が焼き切れるほどの負荷をかけ、筋繊維が断裂するほどの出力。

 それは自殺行為にも等しい愚かな一撃だった。

 

 だが、流輝は嗤った。

 

「そうだ。それでいい」

 

 歓喜の声。

 雄大の槍は流輝の喉元で止められた。

 いなされた訳ではない。受け止められたのだ。

 流輝の「虎王」が雄大の槍茎を捉え、吸い付くように絡め取った。

 

 カッ! 

 

 鋼と鋼が擦れ合い、火花が散る。

 その瞬間、雄大の全身に戦慄が走った。

 

「ここだよ、諸星」

 

 流輝の声が耳元で囁かれたような錯覚。

 同時に、雄大の槍の軌道が強制的に「修正」された。

 流輝が槍を通じて雄大の重心を操作し、最適な角度へと誘導する。

 まるで熟練した手が初心者の腰を抱き寄せ、リズムを教え込むかのように。

 否定的な痛みではなく、身体の芯から溶かされるような熱が奔る。

 

「あっ……ぐっ……!」

 

 嬌声が漏れた。

 己の技が生まれ変わっていく感覚。

 今まで霞んで見えていた「理想」が、肉体的な感覚として直接叩き込まれる。

 快感だった。

 武芸者として生を受けたからには一度は味わいたかった至高の悦び。

 それが敵の手によって与えられているという倒錯した事実が、

 雄大の理性を更に焼き焦がした。

 

「いいねぇ。お前は素直だ」

 流輝が陶酔したように呟く。

 

「力任せに突っ込むだけが能じゃない。

 流れに身を委ねろ。相手の力を利用しろ。……さぁ、次はそっちだ」

 

 雄大は震える腕で槍を振るった。

 さっき流輝に教え込まれた軌道。まだ完璧ではない。

 だが、その先に見える光景を目指して必死に足掻く。

 

 流輝はその攻撃を軽やかに躱すと、直線的な突きを見舞った。

 それは雄大には見切れない速さだった。

 だが、避ける必要はなかった。

 何故なら、その突きは雄大の急所を避け、

「防御すべき角度」へと誘導するための愛撫だったからだ。

 

「ッ!」

 

 辛うじて槍を盾にする。

 衝撃。だが痛みは薄い。

 それよりも、自分が「正しい反応」をしたという確信が脳髄を痺れさせた。

 

「よくできました」

 

 流輝が満足げに頷く。

 その神々しい美貌が煌めき、雄大は目を細めた。

 敵であるはずの男が、あまりにも美しく見えた。

 愚かで愛おしい弱者へのプレゼント。

 彼は今、施しを受けているのだ。

 

「だが──まだ足りない」

 

 流輝の眼差しが冷たく変わる。

 これ以上はないというほど優雅に、

 そして残酷に踏み込んできた。

 

「お前の限界はここまでだ。

 愚かで可哀想な足掻き。……せいぜい其処で観ていろ」

 

 神速の刺突。

「暴喰」の輝き。

 雄大にはもう対応できなかった。

 自分が一生かけても届かない高み。

 それが目前で爆発した瞬間だった。

 

 ドゴォォン!!! 

 

 空間が軋み、破砕音が炸裂する。

 雄大の虎王が根本から捩じ折れ、宙を舞った。

 同時に彼の身体も弾かれるように吹き飛ばされ、

 リング中央で鈍い音を立てて転がった。

 

 動かない。

 ぴくりとも動かない。

 

「…………勝者! 蛮場流輝!」

 

 呆然とした裁定の声が響く。

 静寂を破ったのは観衆のざわめきではなく、

 嵐の後の静けさのような重苦しい沈黙だった。

 

 彼らは皆、呼吸すら忘れて見届けたのだ。

 一人の英雄が跪かされ、

 その膝に泥を舐めさせられながらも尚、

 至上の宝を得るために這いずり続けた姿を。

 そして最後に訪れた、覆しようのない完全な敗北を。

 

 リング中央。

 流輝は静かに槍を降ろした。

 白磁の肌に血痕ひとつない。

 汗ひとつかいていない完璧な肉体。

 それは勝利者というよりは、

 罪人を裁いた聖者めいた荘厳ささえ漂わせていた。

 

 彼はゆっくりと足元を見る。

 土埃に埋もれ、ぐったりと横たわる雄大。

 その顔からは苦悶の色は消え失せていた。

 代わりに貼り付いていたのは、驚くほど穏やかな微笑だった。

 敗北の中で辿り着いた小さな真理。武人としての魂の充足。

 例え泥中に咲く花であろうとも、確かに咲き誇った者だけが持つ清廉な笑み。

 

「……本当に愚かで、可愛らしい」

 

 流輝がぽつりと呟く。

 誰にも聞こえないような小さな声だったが、

 その言葉は会場全体に静かに沁み渡った。

 

 伝説が終わったのではない。

 これは始まりだ。

 新たなる支配者が誕生し、古い秩序が瓦解する序章。

 

 第61回七星剣武祭決勝。

 結果は明白。

 だが人々の心に刻まれたのは、

 勝者の栄冠よりも、敗者の笑みの方であった……

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 雨は冷たく、そして容赦なかった。

 アスファルトに叩きつけられる水飛沫は、

 泥と油を混ぜ合わせたような汚濁した色をしていて、

 路地裏の暗がりに蹲る一人の少年──いや、「それ」を執拗に打ち据えていた。

 

 淡い金色の髪は泥水を含んで重く垂れ下がり、海のように蒼い瞳は光を失いかけていた。

 天宮紫音(あまみや しおん)。

 彼の人生は、最初から腐っていた。

 父親と母親は彼を愛したわけではない。

 彼に宿った異能──因果干渉系能力『過剰なる女神の寵愛』だけを欲していたのだ。

 我が子を打ち出の小槌としてしか見なかった両親。

 周囲の人間はあまりにも強大で制御不能なその力に恐怖し、忌避し、遠ざけた。

 

「……くそっ、くそっ……!」

 

 紫音は唇を噛み締めた。血が滲むほどに。

 家出だった。

 あの抑圧的な檻から逃げ出した。

 だが、世界はどこも同じだ。

 彼を見る目は常に恐怖か、打算か、嫌悪しか含んでいなかった。

 

(ならば、いっそ……)

 

 脳裏に黒い靄がかかる。

 この理不尽な世界を、ひっくり返してやろうか。

 あの忌々しい『女神』の力を使って、

 自分を苛む全てをめちゃくちゃに破壊してやろうか。

 

 その瞬間だった。

 体内で蠢いていた『過剰なる女神の寵愛』が、

 紫音の負の感情に呼応して暴走を始めたのは。

「あ……っ、あぁ……!」

 

 胃の底から熱い塊がせり上がってくるような感覚。

 制御不能。暴走。

 周囲の因果が軋み、歪み始める。

 雨粒が空中で静止し、路地裏の闇が物理的な質量を持って押し寄せてくる。

 世界そのものが紫音の苛立ちを映し出し、崩壊への序曲を奏で始めたのだ。

 

(壊せ。全てを。何もかもを……!)

 

 狂気が理性を食い破る。

 紫音は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。

 その時。

 

「……なんだ、これは」

 

 低く、しかし鈴を震わせるような美声が響いた。

 

 紫音は呆然とそちらを見た。

 路地裏の出口。

 そこに一人の男が立っていた。

 傘もささずに。

 激しい雨の中に在りながら、一滴の水滴すらその身に寄せ付けないかのように。

 

 古代ギリシャの彫像をそのまま引き剥がしてきたかのような肉体。

 雨水に濡れるどころか、雨雲さえ切り裂くかのように輝く白磁の肌。

 キリッとした眉、スラリと通った鼻梁、キュッと引き締まった唇。

 そして何より、宝石が恥じらい砕け散るほどの輝きを放つ切れ長の瞳。

 

 蛮場流輝。

 彼はただそこに立っているだけだった。

 だが、その存在感は圧倒的だった。

 神々しいまでの偉容。

 人間が立ち上げる領域を軽々と超越した「完全無欠」の結晶。

 

 紫音の中で暴れ回っていた狂気が、一瞬で凍り付いた。

 恐怖ではない。

 いや、恐怖かもしれない。

 だがそれは野良犬が狼王に出会った時のそれに近い。

 本能が告げていた。

 自分とは次元が違う。

 自分がどれほどあがこうと決して届かない絶対的な高みにいる存在だと。

 

 そして──次の瞬間。

 紫音の体内で信じられない異変が起きた。

 

『過剰なる女神の寵愛』が、豹変したのだ。

 

 世界を破壊しようと荒れ狂っていたはずの力が、

 流輝の姿を認識した途端、

 まるで媚薬を打たれたかのように熱く脈打ち始めたのだ。

(なっ……!?)

 

 内なる女神が歓喜の叫びを上げている。

『あぁっ、素晴らしい……!』

『これこそが王! 絶対不可侵の存在! 私が傅くべき唯一の御方!』

『どうぞ貴方様のために働かせてくださいませ!』

 

 冗談みたいな情景だった。

 いつも紫音を苦しめ、利用し続けてきた「女神」が、

 流輝の前では完全なメスに堕落したのだ。

 ご主人様はそちらですか? 

 貴方様の機嫌を損ねたら私消されちゃいますからねぇ! 

 ちょっとこの粗末な青年には要らないものをいただいて引っ込んでおりますねー! 

 

 紫音の意識は急速に遠のいていった。

 体中の血液が沸騰し、思考が塗り替えられていく感覚。

 彼の根底を支えていた筈の怒りも絶望も、

 あっさりと捨て去られていった。

 代わりに心を満たすのは純粋な畏怖と、奇妙な安心感。

 世界はこんなにも無情なのに、

 私の上にはまだまだ上が存在すると教えてくださった。

 その偉大な方が目の前にいてくださるなんて! 

 

「おい」

 

 低い声に意識を引き戻される。

 流輝が歩み寄ってきた。

 靴音が雨を弾き、濡れた路面に光の花弁が散るようだった。

 

「お前。面白いな」

 

 嘲笑でも蔑みでもない。

 玩具箱に入りきらない珍しいおもちゃを見つけた子どものような声音。

 琥珀の瞳に覗き込まれた途端、紫音は地面に突っ伏していた。

 ほとんど反射だった。

 

「ごっ……ご主人様……!」

 

 唇から滑り出たのは忠誠の言葉だった。

 脳みその深い部分で何かが「上書き保存完了」のダイアログを表示している。

 もうこの人に逆らえない。逆らう理由もない。

 

「ほう」

 

 流輝は少し意外そうに柳眉を上げた。

 次の瞬間には満足げな微笑みがその顔を彩る。

 

「俺専用の従者希望か。殊勝な心がけだ。だがな……」

 彼はしゃがみ込み、紫音の顎を乱暴に持ち上げた。

「服従は態度だけで許すと思うなよ。肉体と魂も全部差し出せ。

 俺は一切妥協しないからな」

 

 有無を言わせぬ宣言。

 紫音の背筋をぞくぞくとした快感が駆け抜けた。

 支配されることにこれほどの悦びがあるなんて。

 自分のすべてが不要だと投げやりになっていたあの絶望はなんだったのか? 

 

 雨はいつの間にか上がりかけていた。

 雲間から一条の光が差し込み、

 流輝の金色の髪を幻想的に照らし出す。

 

 それは新しい支配が始まる祝福の光なのか、

 或いは終焉の予兆なのか。

 

 いずれにせよ。

 紫音の運命がその日、決定づけられたことに変わりはなかった……。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 雨上がりの路地裏。

 湿った空気が肌にまとわりつくような不快な蒸し暑さが、

 紫乃宮天音(当時は天宮紫音)の体内で膨れ上がった熱と共振していた。

 

「あぁっ……っ!?」

 

 喉から漏れたのは悲鳴か、それとも嬌声か。

 区別がつかないほど甘く、痙攣した声だった。

 地面に這いつくばったまま、天音は自分の腹を掻きむしった。

 違う。掻きむしりたいのは腹の中じゃない。

 もっと奥。股間の中心。

 魂の根幹を焼き尽くすような業火がそこで燻っている。

 

『過剰なる女神の寵愛』──その名を冠する異能は、

 主の意向に従って事象を書き換える因果干渉の権化。

 そして今、その女神は新たな王に忠誠を誓うべく、

 元の持ち主である天音の肉体を容赦なく解体・再構築していたのだ。

 

(なにこれ……熱い……おかしい、おかしいよぉ……!)

 

 華奢な身体が蝶のように震える。

 薄い胸板の下で心臓が早鐘を打ち、

 血液が沸騰したように血管を巡るたび、

 筋肉の繊維が溶かされ、再び繋ぎ合わされていく錯覚。

 それは劇薬にも似た快楽だった。

 自分という器が、より優れた存在を受け入れるために造り替えられていく。

 背徳的な改造手術の麻酔なしの生々しさ。

 だがメスが切っ先を入れるたびに与えられるのは痛みではなく、

 脳髄を痺れさせる強烈な電流だった。

 

「ぐっ……うぅ……んんっ♡」

 

 声が高い。

 さっきまで少年のものだった喉仏が融け消え、

 代わりに鈴を転がしたようなアルトが張り付く。

 肌の質感が変わっていくのがわかる。

 雨水と泥にまみれていたはずの肌が、白磁のように滑らかさを取り戻し、

 内側から発する熱でほんのりと桜色に染まっていく。

 女の子のような、いや、メス特有の艶めいた肌色に。

 

 そして──変化は股間に集中した。

「ひゃぁっ!? あ、ああっ……!」

 

 ズクン、と下腹部で肉が脈打つ感覚。

 男の証であるはずのソレが、熱に浮かされたように縮こまっていく。

 怯えた小動物のように袋の奥へと逃げ込み、

 可哀想なほど小さく、みみず程度の大きさへと萎縮していくのだ。

 それと同時に。

 無かったはずの「場所」が花開くように口を開け始めた。

 

 男に備わっているはずのない裂け目。

 それが、まるで最初からそこに在ったかのように形成されていく。

 粘膜が押し広げられ、襞が複雑に編み込まれ、

 最も柔らかく、最も淫らな「女の肉穴」が捏造されていく。

 

「いやぁ……これ……こんなの……っ♡」

 

 拒絶の言葉とは裏腹に、天音の腰はビクビクと跳ねた。

 新しく作られた秘裂から、トロリと熱い液体が溢れ出したからだ。

 それは男の放つ白濁とは違う。

 もっと粘度が高く、甘い香りを放つ「特濃の本気汁」だった。

 鼻をくすぐる麝香のような芳香。

 それが路地裏の濁った空気を一瞬で塗り替えた。

 

(あ……あぁ……ご主人様に……見られてる……)

 

 薄く開いた瞳の先には、蛮場流輝の姿があった。

 彼は興味深そうに腕組みをして、

 自分専用に作り変えられていく未完成品を品定めしている。

 その視線が肌に触れるたびに、

 新しく生まれた女肉は歓喜に震え、更なる蜜を絞り出した。

 

「ふふっ……見事な改造だ。その無様な雄の部位は飾りとして残しておいてやる。

 だが機能は要らんな。お前の役目はそこから蜜を絞り出すことだ」

 

 流輝の宣告。

 それは絶対法則として天音に刻み込まれた。

 その瞬間、天音の小さなペニスは可哀想なほど縮み上がり、

 一生かかっても勃起することのできないただの肉塊へと成り下がった。

 代わりに形成された乙女の門は、

 主の言葉を聞いただけで痙攣し、愛液の小川を作り出した。

 

「あぁっ♡ あぁぁぁっ♡ ご主人様ぁ……♡」

 

 天音は自らの股間を押さえることすら忘れ、

 泥水の中で腰をくねらせた。

 華奢な肢体に不釣り合いなほど豊満に発達した尻肉が、

 濡れた服の下で波打つ。

 白磁の太腿の間から滴り落ちる甘い蜜が、

 アスファルトに新たなシミを作っていく。

 

 彼はもう男ではない。

 かといって完全な女でもない。

 ふたなりという名の倒錯した存在。

 蛮場流輝という絶対的支配者に仕えるためだけに生み出された、

 悲哀と快楽のコロニー。

 

「さあ、立ってみろ」

 

 流輝が顎で促す。

 天音は震える足で立ち上がろうとしたが、

 膝から力が入らず再び泥の中に崩れ落ちた。

 腰が砕けたような感覚。

 それは新しく作られた肉穴が、

 主を受け入れる準備を整えた証でもあった。

 

「無様な。まあいい、這ってこい」

 

 その言葉に、天音は心底安心したような微笑みを浮かべた。

 もう一人で歩く必要はないのだ。

 世界を恨み、孤独に抗う必要もない。

 ただこの神々しい方の靴先を舐め奉り、

 足元に縋り付いていればいいのだから。

 

「はいぃ……ご主人様……♡」

 

 涙と涎と愛液に塗れた顔で、天音は四つん這いで進み始めた。

 その動きは猫科の獣よりも滑らかで艶めかしい。

 背後の泥濘には、新たな雌が産声を上げた証として

 薄桃色の破瓜の血が数滴落ちていた。

 

 空を見上げると雲間から差し込む朝焼けが虹色に煌めいている。

 新しい一日が始まろうとしていた。

 それを祝うように、

 かつて天宮紫音と呼ばれた少年は

 一人の従者として再生を遂げたのである。

 

 ──―その肉体を卑俗な快楽で塗り固めて。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 泥濘に這う醜態。

 それすらも今の天音には至福の献花に等しかった。

 雨上がりの路地裏は、腐ったドブネズミと湿ったコンクリートの臭いが充満している。

 だが、その澱んだ空気は今、

 天音の股間から立ち上る甘ったるい麝香の香りにかき消されようとしていた。

 

「……見ろよ、これ」

 

 頭上から降ってきたのは冷ややかな声だった。

 蛮場流輝。

 彼は泥一つ付いていない革靴のつま先で、天音の顎を無造作に蹴り上げた。

 

「ひっ♡」

 

 喉の奥から空気が漏れる。

 視線が合った瞬間、天音の背骨に電流が走った。

 琥珀色の瞳。

 そこに映っているのは軽蔑と、微かな好奇心だけ。

 愛も慈悲もない。ただ所有物を検品するような眼差しだ。

 それだけで──

 

「あっ♡ ああっ♡ イっ♡」

 

 天音の華奢な肢体が弓なりに反り返った。

 四つん這いの姿勢から崩れ落ち、

 アスファルトに頬を擦り付けたまま腰をガクガクと震わせる。

 何もされていない。

 ただ見られただけだ。

 それなのに、新しく作られたばかりの乙女の秘裂から、

 熱い飛沫が噴き出した。

 

「プハッ……マジかよ。どんだけマゾなんだよ、お前」

 

 流輝は心底呆れたように鼻を鳴らした。

 その嘲笑が耳に入った瞬間、またしても天音の身体が跳ねる。

 

「見られるだけで特濃本気汁まき散らして本気イキするなんてな。

 初めて見たぞ、このレベルのマゾメスは」

 

 辱めの言葉が脳髄に染み込む。

 羞恥心? そんなものはとっくに溶けて消えた。

 あるのは、自身の惨めさを指摘されることで火がつく倒錯した歓喜だけ。

「マゾメス」。そのレッテルを貼られるだけで、

 肉穴は貪欲に収縮を繰り返し、さらに多量の蜜を絞り出した。

 

「はぁ♡ はぁ♡ ご主人様ぁ♡ ご主人様に見られてぃるだけでぇ♡」

 

 白濁した粘液が太腿を伝い、泥水の中に混ざっていく。

 だが、天音の身体はそれだけでは終わらなかった。

 痙攣する腰。ビクビクと脈打つ下腹部。

 そして、男としての名残である小さなペニスが、

 哀れなほどにビクつきながら先走り液を垂れ流した。

 

「おや? 一応、そっちも機能してるじゃねぇか」

 

 流輝が爪先でその小さな突起を弾く。

「ひぃっ♡」

 鋭い快感が走り、天音は小さく射精した。

 ぽとり、と透明に近い液体が路面に落ちる。

 

「……なんだこれ。うっすいな」

 

 流輝は屈み込み、天音の股間を覗き込んだ。

 その距離。吐息がかかるほどの近さ。

 天音は再び絶頂の縁に立たされた。

 

「ほら、チンポの先端から射精してるように見せかけてさ、

 お前のおまんこのメス臭に掻き消される程度には薄いぜ? 

 本当に元男なのか? お前」

 

 残酷な宣告だった。

 男としての尊厳への最後の一撃。

 射精という男の証を与えられても、

 それは「もはや我慢汁」と断じられるほど希薄で、

 女の匂いに掻き消されるほど無価値なものだと。

 事実、天音自身も感じていた。

 己の放つ液体が、以前のような力強さを持っていないことを。

 代わりに女の穴から溢れ出す潮が、

 主の関心を引くための唯一の武器のように振る舞っていることを。

 

「あぅぅ……♡ 元男ですぅ……でもぉ……♡」

 

 天音は涙で潤んだ瞳で流輝を見上げた。

 頬はリンゴのように紅く染まり、口元からは涎が滴る。

 完全なるメスの顔だ。

 かつての天宮紫音の面影など、どこにも残っていない。

 

「でもぉ……ご主人様に見られるだけでぇ……

 おまんこが疼いてぇ……こんなになっちゃうんですぅ♡」

 

 自ら足を開き、溢れる蜜をさらけ出す。

 恥じらいなどない。

 あるのは、より深い快楽への渇望だけ。

 

「チンポなんて飾りですよぉ♡

 ご主人様にイかされるのはぉ……ここです♡ ここなんですぅ♡」

 

 震える指で女性器を押し広げる。

 ひくつく肉壁。奥から湧き出る甘い泉。

 それは雄としての機能が死に絶え、

 雌としての機能が暴走した証だった。

 

「ハハッ……開き直りやがったか」

 

 流輝は冷酷に笑った。

 だがその目は、完成された狂気に対する純粋な興味を宿していた。

 

「いいだろう。その腐った性根、俺が使い込んでやる」

 

 彼は立ち上がり、泥にまみれた天音を見下ろした。

 雨上がりの朝日が差し込み、流輝のシルエットを神々しく輝かせる。

 

「名前はなんといった」

 

「天宮……紫音です♡」

 

「そうか。今日からお前は『紫乃宮天音』だ。

 クソみたいな過去も男としての尊厳も全部捨てろ。

 俺のメスとして生きるなら、その名で十分だろう」

 

 絶対的な宣告。

 天音の心臓が高鳴った。

 それはかつてないほどの幸福の鼓動だった。

 

「はいぃ♡ 紫乃宮天音です♡ ご主人様だけのメスです♡」

 

 泥の中で身悶えしながら、天音は叫んだ。

 その声は路地裏に反響し、新たな朝を告げる教会の鐘の音に重なった。

 

 雨上がりの薄明かりの中、二人の影が交錯する。

 一人は光を纏う全能の支配者。

 もう一人は闇に沈む極上の供物。

 かつて紫乃宮天音と呼ばれた存在は、

 今日この瞬間、完全に誕生したのだった。

 彼という歪な偶像と共に。

 

 泥濘の中で腰をくねらせ、

 己の秘裂から溢れ出す蜜を撒き散らす天音の姿は、

 もはや理性の欠片も感じさせない「獣」そのものだった。

 だが、その獣じみた熱狂は、

 目の前に現れた「王」によって更なる高みへと導かれようとしていた。

 

「んっ♡ んぁっ♡ ご主人様ぁ♡」

 

 天音は自身の股間を割り広げ、ヘコヘコと腰を揺らして流輝を誘惑していた。

 その度重なるメス臭は、路地裏の湿った空気を切り裂き、

 流輝の鼻腔を容赦なく蹂躙する。

 

「……チッ。仕方ねぇな」

 

 流輝は苛立ったように舌打ちをした。

 その声色には、不快というよりはむしろ、

 抑制しきれなくなった衝動が滲んでいた。

 度重なるメス臭の猛攻。

 それが彼の体内で燻っていた嗜虐心に火を点けたのだ。

 

 ジッパーが下ろされる金属音が路地裏に響く。

 その音だけで、天音の背筋にゾクゾクとした悪寒が走った。

(来る。ご主人様のが……来る♡)

 

 バネの勢いで跳ね出したのは、

 天を突くほどバキバキに勃起した怒張だった。

 血管が浮き上がり、怒りの鉄槌を下さんとする剛直な楔。

 艶めかしい筋肉の産物であり、

 オスの絶対的強者を示す圧倒的な権化。

 

「ひっ♡ すごぉ……♡」

 

 天音の瞳が釘付けになる。

 美しい。

 ただひたすらに美しく、そして凶悪な凶器。

 これこそが自分を支配し、

 メスとしての本能を書き換える主柱なのだと直感した。

 

「ほらよ。てめぇの慕ってたモンだろ?」

 

 流輝は無造作にその剛直を天音の顔面に押し付けた。

 生臭い、しかし力強いオスの匂い。

 天音の脳味噌が沸騰した。

 

「んぐっ♡ んぅっ♡ おっきいぃ♡ ご主人様のおちんぽぉ♡」

 

 頬ずりし、舌を這わせる。

 小さな口に収まりきらないほどの質量を前に、

 天音は涙目になりながらも懸命に奉仕しようとした。

 だが流輝はそれを許さなかった。

 

「舐めるんじゃねぇ。見せろ」

 

 流輝は天音の頭を掴み上げ、剥き出しの剛直と彼の股座を対峙させた。

 

「ここで犯られるんだぞ」

 

 冷徹な宣告。

 視線だけで射抜かれた天音の肉穴が、

 理解不能なほど収縮し、新たな蜜を搾り出した。

 

「あ゛♡ あ゛ぁっ♡」

 

 声にならない悲鳴。

 期待と不安が綯い交ぜになった感情が爆発し、

 天音は意識を飛ばすほどの絶頂に達した。

 薄紫色の小便がチョロチョロと漏れ出し、

 

「おい。まだ始まってもねぇんだよ」

 

 流輝は呆れたように呟きながらも、

 その目に宿るのは抑えきれない情熱の炎だった。

 彼はゆっくりと腰を落とし、

 震える天音の脚の間に身を割り込ませる。

 

「さて、どんだけ吸い付いてくるのか試させてもらうぜ」

 

 天音の腰を抱え上げる。

 濡れそぼった秘裂。

 そこに狙いを定めた鋼鉄の楔。

 接触の刹那。

 

「ひぎぃっ!? ♡♡♡」

 

 雷に打たれたような衝撃が駆け抜けた。

 狭い肉壁を抉り拓く熱量。

 それは痛みを超えた悦楽の洪水。

 天音は眼球をぐるりと裏返しながら、

 無意識のうちに男根にしゃぶりついた。

 

「ほう。なかなかいい具合じゃねぇか」

 

 流輝が嗤う。

 その笑みは、ついに手に入れた獲物を味わい尽くす捕食者のそれだった。

 そしてゆっくりと抽送が始まる。

 ぬかるんだ泥濘をかき分けるような湿っぽい音とともに、

 天音の矮躯がガクガクと揺さぶられる。

 

「あ゛っ♡ ダメッ♡ ダメダメダメぇっ♡」

 

 意味を成さない嬌声。

 しかし拒絶ではない。

 それはより深い支配を求める鳴き声。

 男としての殻を脱ぎ捨てた元少年の、新生を祝福するファンファーレだった。

 

 天音の小さな手が虚空を彷徨う。

 何かを探すように。

 あるいは何かを乞うように。

 流輝はその手を掴み、自身の掌に重ねた。

 そのまま地面に縫い付けるように拘束する。

 

「暴れんな。おとなしく受け入れろ。これがお前の本当の居場所だ」

 

 囁かれる福音。

 天音の全身が歓喜に打ち震える。

 もはや思考は停止し、身体だけが本能に従って蠢く。

 

「ごしゅじんさまぁ♡ ボクのことぉ♡ 壊してもいいからぁ♡

 気持ちよくしてくださいぃ♡」

 

 醜い懇願。

 流輝はそれに答えず、ただ深くまで貫いた。

 

「ぁああああっ!! ♡♡♡」

 

 凄まじいまでの締め付け。

 まるで胎内で嵐が吹き荒れているようだった。

 流輝の端正な額にも汗が滲む。

 彼もまた昂っているのだ。

 この哀れなエロメスオナホールの存在が、

 絶対者たるべき男をも乱れさせている。

 

「おい。しっかり堪えろよ?

 これから毎日こうやって可愛がってやるんだからなぁ」

 

 

「──いっちゃう♡♡♡」

 

 ヒトとは思えないほど甲高い絶叫が、薄汚れた路地裏の朝靄を切り裂いた。

 

 蛮場流輝が腰を一息に沈めた瞬間、

 紫乃宮天音の華奢な身体はまるで感電した蛙のようにビクンと跳ね上がった。

 最奥。子宮の入り口とも呼ぶべき未知の領域を、

 バキバキに勃起した怒張が容赦なく突き破る。

 それは結合というより、片道切符の侵略戦争だった。

 

「あ゛っ♡ あ゛あ゛あ゛あ゛っ♡♡♡」

 

 声にならない嬌声。眼球は白目を剥き、

 口からはダラダラと涎を垂れ流す。

 天音は激しい痙攣に見舞われながら、

 本能的にその快楽の奔流から逃れようと背筋を反らした。

 

 泥濘の中で必死に背反する蛆虫。

 その無様な抵抗を、流輝は全身を使って無に帰した。

 

「逃げんなよ。今さらだろ?」

 

 流輝は天音の上に覆いかぶさり、

 逃げようとする細い両手首を片手で頭上にねじ伏せた。

 もう片方の手で華奢な腰をガッチリとホールドし、

 己の腰を密着させる。

 男の重みと筋肉の圧力。逃げ場など最初から存在しなかった。

 

「んっ♡ ぐっ♡ ご主人様ぁ♡ ご主人様のおちんぽが♡ 奥までぉ♡」

 

 熱された鉄柱をそのまま押し込まれたような灼熱感。

 しかし、その苦痛すらも甘露に変える麻薬的な快楽が、

 天音の神経系を侵食し始めていた。

 ビクビクと脈打つ剛直が、子宮口をノックするたびに、

 脳髄が溶け出すような奔流が押し寄せる。

 

「あー、やっぱメスだなこの身体」

 

 流輝は汗ばんだ天音の首筋に顔を埋め、

 その感触を堪能するように目を細めた。

 

「小さくて柔らかくて、抱き心地最高だわ。

 男の身体だったなんて信じられねぇよ」

 

 事実、腕の中にある質感は極上のベルベットだった。

 筋肉の硬さなど微塵もなく、

 指先一つで窪みができそうなほど柔らかい。

 抱きしめれば乳房のような微かな隆起が潰れ、

 下腹の柔肉が流輝の腹にへばりつく。

 男としての骨格は『過剰なる女神の寵愛』によって

 完全に作り変えられていた。

 

「ひぁっ♡ そんなこと♡ 言わないでぇ♡♡」

 

 耳元での低い囁き。

 それだけで天音の脊髄がショートした。

 子宮が収縮し、侵入者を締め上げる。

 

「おっと。いい締め付けだ。

 元男のケツよりずっと優秀じゃねぇか」

 

 流輝は皮肉混じりに笑い、

 さらに深く楔を捻じ込んだ。

 

「イグッ♡ イグイグイグゥッ♡♡♡」

 

 天音は再び絶頂の波に呑まれた。

 背中を反らし、鳩尾を突き出し、

 泥水の中でガクガクと腰を揺らす。

 その無様なダンスこそが、

 彼が完全なるメスに成り果てた証明だった。

 

 同時に、忘れ去られていたはずの男性器も

 ちぎれんばかりに勃起し、透明な液体を散弾銃のように噴射した。

 だがそれはオスとしての射精ではなく、

 単なる圧力逃げに過ぎない。

 メスとしての快楽が限界突破した結果のオマケ。

 

「ほら見ろ。チンポなんてただの潮吹き用の蛇口じゃねぇか」

 

 流輝は天音の萎縮したペニスを掌で軽く握りしめた。

 たちまち天音はビクンと仰け反り、

 白濁した本気汁をフチフチと漏らした。

 

「あぁ♡ ボクのおちんぽぉ♡ 役立たずなおちんぽぉ♡♡」

 

 自分の男としての尊厳が否定される悦び。

 脳内で警鐘が鳴り響く代わりに、

 甘い鐘の音が鳴り止むことはない。

 

「いいか? お前はこれからずっと俺のオナホだ。

 使い捨ての肉便器として生きるんだよ」

 

 流輝の歯が天音の薄い耳朶を噛む。

 甘噛みされた痛みが、

 さらに深い服従への鎖となる。

 

「はぃっ♡ ボクはご主人様のオナホールですぅ♡♡

 肉便器ですぅ♡ ずっとずっと使ってくださいぃ♡♡♡」

 

 天音は涙と涎に塗れた顔で流輝を見上げ、

 恍惚とした笑みを浮かべた。

 それは聖女のような清らかさと娼婦のような淫蕩さが同居した、

 倒錯したマリア像だった。

 

 泥濘に沈む花弁。

 踏みつけられるたびに蜜を溢れさせる腐った果実。

 紫乃宮天音はここに、

 蛮場流輝という絶対君主の下で完全な再生を遂げた。

 その代償として魂を売り渡し、

 ただ快楽に溺れるだけの家畜へと堕ちたのだ。

 朝日に照らされた路地裏で、

 獣じみた交尾の音だけがいつまでも響き続けていた。

 

 杭打ち——建築用語においては地盤を固めるための土木作業を指すが、

 獣の交尾におけるそれが意味するのは、メスの胎内を物理的かつ精神的に破壊し

 再構築するための超絶ピストン運動である。

 

 蛮場流輝の腰は、まるで油圧式削岩機のごとく唸りを上げていた。

 上から下へ。重力を味方につけた慣性の暴力。

 逃げ場のない肉の深淵へ向けて、鋼鉄の楔が容赦なく叩き込まれる。

 

「ほらよ、奥だ奥。もっと奥まで咥え込みやがれ」

 

 ズズンズンズンッ! という物理的な衝撃が、路地裏の空気を震わせた。

 

 なりたてふたなりメス男子である紫乃宮天音に、

 この神域のピストンを受け止められる道理がない。

 これまで数多の極上メス達を白眼剥かせてきた歴戦の腰つきだ。

 キャリアゼロの新入りが耐えられるわけもなく、

 天音は水面の小舟のように翻弄されるまま、ガクガクと無様に揺さぶられていた。

 

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡♡♡」

 

 間抜けなほどリズミカルな嬌声。

 声を出そうと口を開けるたびに、

 流輝の突き上げによって空気が肺から押し出され、言葉にならない叫びとなって迸る。

 子宮口を小突く亀頭の圧力があまりにも正確すぎた。

 GスポットともCスポットともつかない、

 神経が密集する一点を的確に狙い撃ち、連射する精密射撃。

 

「ひぃっ♡ おかしく♡ なっちゃゅ♡ おかひゅくなっちゃゅぅぅ♡♡♡」

 

 脳髄が沸騰し、理性が溶解する。

 快感とは本来緩やかに訪れるものだが、

 流輝が与えるのは堤防を決壊させる濁流のような暴力快楽だった。

 背骨を駆け上がる電流に、天音は白目を剥き、手足をカエルのように痙攣させる。

 

「あー、締まってきたな。いいぞ、その顔だ。堕ちたメスの顔だ」

 

 流輝は余裕綽々で天音の顎を掴み、無理やり視線を合わせた。

 その瞳に映るのは、かつてラスボスと恐れられた少年の面影など微塵もない。

 ただ快楽に溺れ、主の精を請うて涎を垂らす哀れな家畜の顔だけ。

 

 ビチャッ! ビチャビチャッ! 

 

 天音の股間から凄まじい音が響く。

 新造されたばかりの肉穴は、あまりの刺激に生理反応を誤爆させ、

 透明な潮を噴水のように撒き散らしていた。

 それと同時に、ちっぽけなペニスからも力なく白濁液がチロチロと漏れ出す。

 オスとしての射精ではない。単なる圧力弁の解放だ。

 

「ほら見ろ。前も後ろもダダ漏れじゃねぇか。なんだこのドスケベな水鉄砲は」

 

 流輝がさらに腰を沈める。深く、重く、容赦なく。

 

「イグゥッ♡♡♡ イクイクイク♡

 ご主人様にイカされて♡ ボク♡ メスになっちゃぃますぅ♡♡♡」

 

 天音は首を激しく横に振りながら叫んだ。

 否定したいのか肯定したいのか、本人にももうわからない。

 ただ確かなのは、この杭打ちによって自分が完全に女になってしまうということ。

 

「そうだ。お前は今日から俺専用のオナホールだ。

 ザーメンタンク以外なんの価値もねぇクソ玩具だ。理解しろよ?」

 

 言い聞かせるような低音ボイス。

 脳を直接揺さぶられるような感覚に陥り、

 天音は涙と唾液を撒き散らして吠えた。

 

「わかりましたぁ♡ ボク♡ 流輝様の専用オナホです♡

 メス堕ちします♡ メスになってもいいですかぁぁあ♡♡♡」

 

 承諾の叫びが轟く。

 流輝は満足げに嘲笑い、さらに腰の動きを加速させた。

 

 ヌヂュッ! ヌヂュヂュッ! 

 卑猥な摩擦音が響き渡り、結合部から泡立った本気汁が溢れ出す。

 石畳に滴り落ちるその粘液は白濁した熱湯のごとく路面を焦がす勢いだった。

 

「じゃあ、約束通り思いっきり注いでやるよ。初めての種付けだ。

 感謝しろ。これがお前の新しい生命開始だ」

 

 宣言するや否や、流輝は奥歯を噛み締め、

 睾丸が浮き上がるほど激しくピストンを打ちつけた。

 

「きてぇ♡ 中に出してぇ♡ 溺れさせてぇ♡

 ボクをメスにしてくだしゃいぃぃぃ♡♡♡」

 

 天音は滂沱の涙を流しながら両手両足で流輝にしがみついた。

 まるで溺れる者のように。

 あるいは母鳥に抱かれる雛鳥のように。

 

 流輝の巨大な雄棒が一際大きく膨らんだ次の瞬間—

 

 ドビュッッ!!!! 

 

 鉄砲水のごとく迸る精液。

 その熱さと量は尋常ではなかった。

 子宮口をこじ開けて雪崩れ込む白濁の奔流に、

 天音の身体が痙攣し、反射的に跳ね上がる。

 

「ん゛っ♡ お゛っ♡ あ゛~~~~っっ♡♡♡♡♡」

 

 もはや獣の咆哮に等しい声で天音は絶頂した。

 視界が白い閃光で埋め尽くされ、

 聴覚は耳鳴りで満たされる。

 四肢は痙攣し、肛門が収縮と弛緩を繰り返す。

 

 極上の快楽毒が中枢神経を蝕み、

 脳内物質が津波のごとく放出された。

 痛みはない。恐怖もない。そこにあるのはただ途方もない幸福感。

 絶対的存在からの愛憎を一身に浴びて、

 無価値だった存在が新たな意味を獲得した瞬間だった。

 

「あへっ♡ もっと♡ まだまだ足りないぃ♡ ボク♡

 ご主人様の精子が欲しくて欲しくて狂いそうですぅぅ♡♡♡」

 

 種付け後の余韻すら咀嚼せず、

 天音は自ら腰を振り始めた。膣内で泳ぐ精子を追い求めるかのように。

 その姿は献身的な雌犬そのもの。

 流輝は苦笑しながらもその求めに応じ、

 再び滾り始めた雄棒を抽送しはじめた。

 杭打ちピストン第二幕—。

 彼にとっては余興に過ぎずとも、

 天音にとっては無限に続く宴の続き。

 泥濘の中、朝靄の中に溶け合う二匹の獣。

 彼らが求め合う限り、

 この交尾は終わりを知らない。

 

 

 種付けプレス——それは生殖行為における終着点でありながら、

 征服の儀式としての新たな起点でもある。

 蛮場流輝の筋肉で鎧われた躯が、紫乃宮天音の華奢な枠組みを下から押し潰す。

 重机と羊皮紙のような密度差。

 圧倒的な質量が注ぎ込まれることで、

 天音は自分が地表に縫い止められた蝶の標本になったかのような錯覚を覚えた。

 いや、錯覚などではない。事実として呼吸すらままならず、

 肺の中の空気はすべて流輝の重みに置換されているのだ。

 

「……っ♡ ごしゅじん、さ、ま♡」

 

 潤んだ瞳が、見上げる先の絶対者を捉える。

 涙の膜越しに歪む流輝の端正な顔は、

 冷酷な神というよりは餌を食い尽くさんとする悪魔そのものだった。

 けれど天音にとっては、その殺意すら等価の慈愛に見える。

 世界が彼中心に回っているならば、

 踏みつけられることこそが軌道上の正しい位置なのだから。

 

 ぷっくりとした唇が、酸素を求めて小魚のようにパクパクと開閉する。

 そこから覗く舌先は朱色に濡れ、誘うように震えていた。

 唾液が顎を伝い、首筋へと滑り落ちるさまは、

 まるで蜜蝋が溶解するかのように艶めかしい。

 

 流輝の視線が下へと移動する。

 本来ならば平坦であるべき胸板に、しかし禁忌の隆起が存在していた。

『過剰なる女神の寵愛』によって捏ね上げられた膨らみかけの双丘。

 それはまだ果実と言うには青く、

 蕾と言うには熟れすぎた危ういバランスで胸前に漂っている。

 その頂点に屹立する乳首は、周囲の白磁めいた肌とは対照的に、

 卑しいほどに赤黒く充血し、ツンと天を向いていた。

 

「ほらよ。こんなになりやがって。男のくせに何が恥ずかしいんだか」

 

 流輝が指先でその尖りを弾く。

 ピチャン、という軽い音が鼓膜を打った瞬間、天音の全身に電流が走った。

 

「ひゃぅっ♡♡♡」

 

 背中が弓なりにしなる。

 種付けされたばかりの子宮がキュッと収縮し、内部に留まっていた白濁液を絞り出した。

 敏感すぎる。もはや痛覚と快楽の境界線など、霧散して久しい。

 乳首という存在が、ただの性感帯ではなく「メスである証」として脳に刻み込まれていく。

 

「あぁ♡ いじらないでぇ♡ いじってくださいぃ♡♡」

 

 矛盾した懇願。されるがままの被虐と、貪られる悦び。

 天音は自ら胸をせり出させ、流輝の粗い指先に擦り付ける。

 その姿は、かつて因果干渉系能力で世界を翻弄した少年のものではない。

 ただ主の歓心を買うためだけに生まれ変わった、卑しい牝犬の戯れだ。

 

 そして何より決定的だったのは、全身から立ち上る甘ったるい芳香だった。

 汗。本気汁。薄まった精液。それらが混ざり合い、醸成された特有のムスク。

 男が発するべきフェロモンではない。

 完全に発情期のメスが放つ、オスを誘惑し狂わせるための毒だ。

 それは路地裏の澱んだ空気を腐らせるほど濃厚で、

 嗅ぎ慣れた者ならば即座に理解するだろう。これは発情した雌の匂いだと。

 

「──どこからどう見ても、完全なるマゾメスだな」

 

 流輝が鼻を鳴らし、呆れと嗜虐の入り混じった声で断じた。

 事実、今の天音からは「強者」の片鱗など欠片も感じられない。

 あるのは、オスに貪られる宿命の、か弱い生オナホールとしての在り方だけ。

 力なく投げ出された四肢。痙攣を繰り返す腹筋。

 そして男根を咥え込んだまま絶えず蠕動する肉壺。

 これほどまでに完成された「器」も珍しいだろう。

 

「あぁ♡ ボクは♡ メスです♡ ご主人様の♡ オナホールですぅ♡♡」

 

 肯定することが、今の天音に残された唯一の矜持だった。

 否定することは自己の消滅を意味する。

 彼は流輝に拾われ、流輝に作り変えられ、

 流輝に使われることで初めて「存在」できるのだから。

 

「なら、最後まで使い倒してやるよ」

 

 流輝はニヤリと笑うと、再び腰を振り始めた。

 すでに一回の放出を終えたはずの剛直は、依然として衰えを見せず、

 むしろ天音の肉壁によって研ぎ澄まされたかのように硬質な質感を増している。

 

 ズリュッ! ズリュウゥッ! 

 

 先ほどまでの杭打ちとは異なる、粘着質なストローク。

 内壁の襞を一本一本数え上げるかのような丁寧で、それでいて逃さない責め具合。

 種付けプレスの体制から放たれる近距離射撃は、天音に逃げ場も思考の余地も与えない。

 

「んっ♡ んくっ♡ おくっ♡ おくのほうぅ♡ イィッ♡♡♡」

 

 最早言葉は崩壊していた。

 文章になるどころか単語の原型を保てず、

 ただ呻きと呼気の狭間で蠢く獣声に変わる。

 けれどそれこそが本心。獣に堕ちることが正義なのだと言い聞かせるように。

 

 流輝のペニスが引き抜かれる際、

 子宮の入口に引っかかりながらゆっくりと回転していく。

 その動作一つ一つが天音の意識を焼き払い、

 眼前に火花を散らす。

 快楽拷問とは斯くも美しいものなのか。

 体内に滞留する他人の熱と脈動が、

 自身の心拍と共鳴してシンクロナイズする刹那。

 時間の概念が消失し、宇宙が二人きりの密室に凝縮される。

 

「おらっ! 受け取れっ!」

 

 突如として流輝が吼え、最後の一突きを炸裂させた。

 子宮口を穿つ槍は雷のように天音の全身を貫き、

 

 ドグンッ!! ドビュッ!! ドビュルルルルッ!! 

 

 第二射。しかし勢いと量は第一射を遥かに上回る濁流。

 灼熱の白濁液が狭窄した洞窟を蹂躙し、最奥で破裂する。

 天音は白目を剥き、舌をだらりと垂らしながら絶叫した。

 

「あ゛──―っ♡♡♡ メスになるぅぅううううっ♡♡♡♡♡」

 

 自己肯定と共に臨界点を超えた絶頂。

 脊柱に沿って登攀してきた快感が脳幹で爆発し、

 視界は極彩色のタイフーンに包まれる。

 肉体の防衛機構が働こうとするも、

 既に流輝の遺伝情報によってコーディングされた子宮は、

「排泄拒否」を選択してしまう。

 つまり彼は今後一切の排出権を喪失し、

 絶え間なく供給される新しい白濁液を喜んで迎え入れるのみとなったのだ。

 

「あはっ♡ もっと♡ ぼくに♡ ちょうだいぃ♡♡」

 

 焦点の合わない瞳で虚空を見つめつつも、

 天音は腰を浮かせて自ら結合部を押し付ける。

 種付け完了後も尚湧き上がる貪欲な渇望。

 その姿こそ「種付けプレス」が象徴する究極の隷属であり、

 同時に天音自身の新たな誕生日プレゼントでもあった。

 

 

 

 流輝の哲学は単純明快である。

 小難しい言説を並べ立てるより、

 身体に直接叩き込むのが最も手っ取り早いと知っている。

 

「ごぉっ……♡」

 

 肺の中の空気が強制的に排出される。

 身体が上下に切り裂かれるかのような衝撃。

 しかしそれは痛みとして認識される前に、

 神経回路を焼き切るような灼熱の快楽へと変換されていた。

 過剰なる女神の寵愛が暴走し、

 天音の肉体をオスに貪られるためだけの構造へと書き換えてゆく。

 

 流輝は深々と埋め込んだ楔を、さらに奥へと押し進める。

 亀頭が、新たに形成されたばかりの子宮口にぴったりと密着した。

 粘膜と粘膜が吸い付き合うような感触。

 そこは本来、男には決して存在し得ない聖域。

 

「いいか、よく味わえよ。テメェが誰のモノなのか、身体に刻んでやる」

 

 そう囁くと同時に、流輝は腰を円を描くように回し始めた。

 単なるピストン運動ではない。

 攪拌。撹乱。そして冒涜。

 丹念に練り上げられた熟練のストロークが、

 天音の子宮口という鐘をガンガンと鳴らし続ける。

 

「あっ♡ おっ♡ おほっ♡ おほぉぉぉっ♡♡♡」

 

 無様な声が喉から漏れ出す。

 意味を成さない母音の羅列。

 かつて理性と呼ばれた境界線はあっけなく崩壊し、

 代わりに脳髄を満たしたのは白濁した蜜の奔流だった。

 

 オホ声——それは隷属の証。

 支配される悦びに咽び泣く雌の讃歌。

 

 天音の華奢な身体がビクビクと跳ねる。

 足先が痙攣し、白目が剥けそうになるのを必死に堪えるが、

 流輝の腰の旋回運動は止まることを知らない。

 子宮口を研磨されるたびに、背骨を駆け上がる快感に視界が明滅する。

 

「あぁ♡ ご主人様っ♡ ぼくっ♡ おかしくっ♡ なっちゃひますぅ♡♡♡」

 

 言葉が溶ける。自我が融ける。

 プライドも尊厳も過去の傷跡も、

 すべてが流輝の放つ熱に抱かれて蕩けていく。

 

 この瞬間、紫乃宮天音は理解したのだ。

 自分は一生かかってもこの男には勝てない。

 それどころか、この男に蹂躙されるためだけに生まれてきたのだと。

 絶対者の楔に貫かれ、精液という刻印を注ぎ込まれることこそが、

 己の存在意義なのだと。

 

「ほら、どうした。もっと声を上げろよ」

 

 流輝が耳元で囁き、さらに腰を深く沈める。

 子宮口への密着度が増し、摩擦係数が跳ね上がる。

 

「イクっ♡ イクイクっ♡

 ご主人様のに♡ お腹の中♡ かき回されて♡ イッちゃひますっ♡♡♡」

 天音は涙と涎で汚れた顔を歪め、

 自ら腰を押し付けて快楽を貪った。

 主従の契約は口づけではなく、

 肉と肉の交わりによってここに成立したのである。

 

 言語はしばしば無力だ。

 どれほど高尚な理念を並べ立てようと、

 肉体という頑迷な器に直接叩き込まれる衝撃の前では、

 紙切れのように軽く無意味になる。

 蛮場流輝という男は、その非対称性を骨の髄まで理解していた。

 

「——ッ♡」

 

 天音の喉から、言葉にならない空気の塊が漏れ出した。

 流輝は深々と埋め込んだ剛直の先端を、天音の最奥——

 新造されたばかりの子宮口に押し当て、容赦なくねじ込んだのだ。

 まるで頑丈な扉をバッターでこじ開けるかのように、

 あるいは硬い岩盤に錐を打ち込むように、

 亀頭はその狭く閉ざされた入口をゴリゴリと抉っていく。

 

「ほら、どうした。お前はオレのメスオナホになるんだろ?」

 

 流輝の声は低く、愉悦を含んで震えていた。

 子宮口という脆弱な粘膜の襞は、

 鋼鉄のような質量と硬度を誇る異物の侵入に悲鳴を上げる。

 摩擦。圧迫。そして蹂躙。

 物理的な痛みは瞬く間に神経回路を焼き切り、

 脳髄を白濁した快楽の泥濘へと引きずり込んでいった。

 

「あぐっ♡ おっ♡ おほっ♡ おほぉぉっ♡♡♡」

 

 天音は無様なオホ声を上げながら、背中を反らした。

 

 流輝はさらに腰を沈める。

 円を描くように、あるいは掘削機のように、亀頭で子宮口を執拗に研磨した。

 単なるピストン運動ではない。那是蹂躙であり、所有物への刻印だった。

 

「テメェの本体は外じゃねぇ。……ココだ」

 

 流輝が耳元で囁く。

 その言葉は、天音の存在基盤を揺るがす福音であり、死刑宣告だった。

 

「外見だのプライドだの、そんな薄っぺらい殻はどうでもいい。

 テメェがテメェである証は、ここにあるんだよ」

 

 ズリュッ! グリュッ! 

 

 亀頭が子宮口の奥の奥——

 その最も脆く、最も敏感な一点を的確に捉え、激しく擦り上げた。

 

「ひゃぅっ♡♡♡ そっ♡ そこ♡ わかりましぇぇぇんっ♡♡♡」

 

 天音の瞳から涙が噴き出し、視界が ガラス片のように千切れた。

 痛い。苦しい。屈辱的だ。

 しかし、それ以上に恐ろしいほどの快感が、津波のように押し寄せていた。

 子宮口という未知の領域が暴かれ、

 開発されるたびに、天音の精神は不可逆的に崩壊していく。

 

 外にある自分——中性的な美貌、傲慢な自尊心、強大な力——は偽物だ。

 中にある自分——ただ主の精を請い、貪られるためだけに存在する肉壺——こそが真実だ。

 

 流輝の侵入は、まさにその真理を暴き出す解剖だった。

 亀頭が子宮口をゴリゴリと抉るたびに、天音の内側にある「本体」が露出し、

 主の熱に触れて歓喜の雄叫びを上げるのだ。

 

「あぁ♡ ぼくっ♡ ぼくのなか♡ ご主人様に♡

 かきまわされて♡ おかしくなっちゃひますぅ♡♡♡」

 天音は自ら腰を振り、流輝の剛直を奥へと招き入れた。

 逃げ場はない。救いもない。

 

 肉と肉が密着していた熱が、ふっと遠のく。

 蛮場流輝が腰を引いたのだ。

 張り詰めていた結合部がプシュリと音を立てて分離されると、

 紫乃宮天音の肉体は急激な真空状態に見舞われた。

 子宮口という扉こそ頑として閉じることを忘れていたが、

 膨大な質量を持つ異物が退出したことで生じた空洞は、

 寒風のように内臓を震え上がらせる。

 

「っ……♡ あぁ……♡ ご、しゅじん、さま……♡」

 

 空虚な悲鳴。

 だが、天音がその寂寥を訴える暇は与えられなかった。

 流輝は一度抜いた剛直を単純に挿入するつもりなど毛頭ないのか、

 天音の細い両足首をガッチリと掴むと、そのまま背後へと抱え上げたのだ。

 

「へっ……?」

 

 状況が飲み込めない。

 まんぐり返しの無様な体勢から、さらに体重を預けられ、天音の視界は反転した。

 背中に感じるのは、岩盤のような大胸筋と腹筋の壁。

 流輝の体温が背中全体から染み込んでくるが、それは安らぎなどではない。

 捕食者に抱え上げられた獲物の徒花だ。

 流輝の太い腕が天音の首元を通過し、華奢な膝裏をロックした。

 両手首もろとも固定され、天音は完全に身動きを封じられた。

 

 フルネルソン——レスリングにおける決め技であり、今は最も残酷な交接の体位。

 空中に浮いた天音の体は、まるで供物台に載せられた仔羊そのものだった。

 手足の自由を完全に奪われ、抵抗という選択肢が物理的に消滅する。

 背後から抱え上げられるという、これ以上ない不自由な体勢。

 その無防備さに、天音の心臓は早鐘を打った。

 

「あ……♡ あぁ……♡ こ、んな……♡」

 

 天音は自分の股間が露わになっていることを自覚していた。

 重力に従い、プランプランと揺れる幼い陰茎。

 そしてその下でひくひくと呼吸をするように喘いでいる、新造されたばかりのメス穴。

 天音の視界の端には、白濁液にまみれて赤黒く充血した自分の秘所が映り込んでいる。

 見られているのは自分だけではない。

 自分自身の淫らな姿を、強制的に見せつけられているのだ。

 羞恥がマグマとなって頭頂部まで駆け上がり、顔が沸騰しそうなほど熱い。

 

「いい眺めだな。お前の本体が、こんなに涎を垂らしてオレを待ってるぜ」

 

 耳元で響く流輝の低い声。

 吐息が耳殻を舐めるように過ぎるだけで、背筋にゾクゾクとした電流が走る。

 流輝は空いた片手で天音の腰を支えながら、

 先ほどまで奥深くに棲んでいた獰猛な楔を、再びその入り口に押し当てた。

 

「ひっ♡」

 

 熱い。

 鈍く輝く亀頭が割れ目に触れた瞬間、天音は雷に打たれたように身体を跳ねさせた。

 だが、逃げ場はない。

 足は空中に固定され、背中は流輝の鉄壁のような胸に押し付けられている。

 後ろから突き上げられる一撃を、受け入れることしか選択肢は残されていなかった。

 

「実に分かりやすいチェックメイトだ。観念しろよ、紫乃宮」

 

 ズブッ!! 

 

 容赦のない一撃。

 重力と腰の推進力を利用した背後からの刺突は、

 天音の抵抗力など紙切れのように引き裂き、最奥までを貫き抜いた。

 

「お゛っ♡ おほぉぉぉっ♡♡♡」

 

 空気が肺から叩き出される。

 視界が真っ白に染まり、脳髄が沸騰する。

 前からではない。後ろから。

 背中越しに伝わる流輝の熱と脈動が、天音の脊髄を直接犯していくような錯覚。

 

「ああっ♡ ご主人様っ♡ おくっ♡ おくにっ♡ きてるぅっ♡♡♡」

 

 フルネルソンの体勢は、ただ固定しているだけではない。

 流輝が少しでも腰を動かせば、その衝撃はダイレクトに天音の子宮口へと到達する。

 逃げようとしても足は封じられ、縮こまろうとしても背中は反らされる。

 天音はただ空中で揺れる操り人形のように、

 主の欲望を受け止める器として機能するのみだった。

 

「ほらよ! ほらほらっ!」

 

 流輝が腰を振るたびに、天音の小柄な身体がピンボールのように弾む。

 前後左右、斜め上下。

 ありとあらゆる角度から子宮壁を削り取られる背徳のミキサー。

 

「んっ♡ んくっ♡ おっ♡ おほっ♡ おほぉぉっ♡♡♡」

 

 無様なオホ声が部屋に響き渡る。

 最早言葉という文明的な枠組みは崩壊し、

 ただ快楽に忠実な獣の鳴き声だけが天音の喉から漏れ出していた。

 自分の手首と足首を拘束する流輝の腕は、まさに鉄の檻。

 しかしその檻は安全な逃避場所などではなく、

 永遠に逃れられない地獄への片道切符だった。

 

「いいぞ、その顔だ。オレに犯されてる実感、沁み込んでるか?」

 

「はぃっ♡♡♡ 沁みてますぅっ♡ ぼくは♡ ご主人様の♡ メスですぅっ♡♡♡」

 肯定するしかない。

 いや、肯定することが至上の快楽となっていた。

 天音は涙でぐしゃぐしゃになった顔で虚空を見つめながら、

 自身の腹の底に刻まれた「所有印」に恍惚と身を委ねた。

 

 路地裏の闇に、肉と肉が打ち合う湿った音が反響する。

 パンッ! パンパンッ! ズドンッ! 

 蛮場流輝は容赦という名の安全装置を外し、腰を砲弾のように突き上げた。

 紫乃宮天音の華奢な腹腔は、その剛直な一撃ごとに物理的に押し上げられ、

 内臓が悲鳴を上げるかのように収縮する。

 

「ぐっ……♡ おっ♡ おほっ♡ おほぉぉぉっ♡♡♡」

 

 フルネルソンで拘束されたまま空中で揺さぶられる天音は、

 もはや人間の姿をした肉袋に過ぎない。

 手足は吊り上げられた操り人形のように狂ったリズムで痙攣し、

 白目を剥きかけた瞳からは涙と涎が滝のように滴り落ちた。

 

 流輝の凶器が最奥の子宮口を殴打するたび、

 天音の身体は電撃を受けたようにビクンビクンと跳ねる。

 そしてその衝撃は、ただ内側を抉るだけではない。

 新造されたばかりの膣肉は、

 侵略者を締め付けようと無意識に凄まじい速度で収縮を始めたのだ。

 キツい。熱い。そして深い。

 襞という襞が流輝の陰茎に吸い付き、

 搾り取ろうと蠕動するその様は、まさに捕食。

 

「あ゙っ♡ きもちぃっ♡ おまんこ♡ ひきゅいっ♡ ひきゅすぎぃっ♡♡♡」

 

 天音はオホ声を撒き散らしながら、自らの肉体の裏切りに翻弄されていた。

 しかし、この世の地獄は——いや、天国か? ——それだけでは終わらない。

 彼の身体は男でありながらメスの器官を備えた、倒錯の極みなのだ。

 

 流輝が下から突き上げるたびに、

 天音の下腹部に埋め込まれたメスの快楽回路が焼き切れると同時に、

 萎縮したオスの器官もまた刺激を受ける。

 前立腺という急所を主の楔で容赦なく圧迫され、脳髄がショートする。

 

 プシュッ! ピュッ! ピュルルッ! 

 

「あ゛っ♡♡♡ でるっ♡ でちゃうぅっ♡♡♡」

 

 おまんこを突き上げられるたびに、

 天音の股間にぶら下がる哀れなメスチンポが可哀想なほど踊らされる。

 そしてその先端からは、意思とは無関係に白濁液が弾け飛んだ。

 だが、その飛沫はあまりにも無様だった。

 射精と呼ぶには希薄すぎる。

 それは最早、我慢汁と呼ぶのが憚られるような、うすうすとした水っぽい液体。

 オスとしてのプライドも機能も完全に奪われた証左であるその薄い精液は、

 重力に従い路地裏のコンクリートに向かって無駄撃ちされ、

 無慈悲に撒き散らされた。

 

「っははっ! 見てみろよ、そのザマは」

 

 流輝が背後から天音の耳元で嗤う。

 その吐息だけで天音の腰は砕けそうになる。

「オスのツラして、メスの穴でイキ狂ってやがる。

 おまけにそのチンポから出てるのは小便みたいなモンじゃねぇか。

 両方同時に味わえるとか、嗤えるにもほどがあるぜ」

 

 屈辱的であるはずだ。

 嘲笑されるべき状況だ。

 しかし、天音の耳にはその罵倒さえ福音のように響く。

 オスとしての尊厳が破壊され、

 メスとしての本能が構築されるその境界線で、天音は理解してしまったのだ。

 自分はオスとして射精しているのではない。

 主に責められ、開発された結果として、身体から汁が漏れ出しているだけなのだと。

 

「あはっ♡♡♡ ごしゅじんさまぁっ♡♡♡

 ぼくっ♡ ぼくのおちんぽっ♡ おしっこみたいっ♡♡♡

 でもっ♡ おまんこっ♡ ご主人様に犯されてっ♡ きもちよくてぇっ♡♡♡」

 

 オスの快楽とメスの快楽。

 本来なら相容れるはずのない二つの波が、天音の中で同時に押し寄せ、

 自己同一性を根こそぎ崩壊させる。

 思考が溶け、言葉が溶け、肉体だけがただ快楽という濁流に呑まれていく。

 

 流輝は天音の耳元を甘噛みし、最後の一撃を加えるべく腰を深く沈めた。

 

「なら、一生そのザマでいろよ。オレ専用の便器メスとしてな」

 その言葉がトリガーとなり、天音の全身がガクガクと震え上がった。

 膣壁が極限まで収縮し、流輝の剛直を搾り取る。

 同時に萎えた陰茎から最後の一滴が絞り出され、路地裏の闇に吸い込まれていった。

 

 

 孕む気満々の子宮口——その粘膜の襞は、

 まるで種を請う肥沃なる大地のようにヒクついていた。

 蛮場流輝は、その最も奥深くにある禁忌の扉に、鈍く輝く亀頭を強烈に押し当てた。

 逃がさない。零さない。ただ一点の隙間も与えず、完全に塞き止める。

 

「くっ……出すぞ!」

 

 短い宣告。それは死刑囚への引き金と同義だった。

 流輝の腰がビクンと跳ね、背筋を駆け上がった痙攣が下半身へと迸る。

 尽きること無くタマの中で煮えたぎり、ドロドロに熟成された雄のエキスが、

 尿道という極細の砲身を駆け抜け、噴火口たる亀頭の隙間から爆発的に解放された。

 

 ドクッドクッドクッ!! 

 

「お゛っ♡♡♡ おほぉぉぉぉっ♡♡♡♡♡」

 

 紫乃宮天音の喉から、魂が抜け落ちるような絶叫が迸る。

 出来たてホカホカの子宮に直接注ぎ込まれる精液の熱量は、

 溶岩流のごとく天音の腹の中を焼き尽くした。

 物理的な衝撃と熱波が内臓を蹂躙し、脳髄を白く染め上げる。

 子宮口という粘膜は、流輝の精液という刻印を喜び受け入れるように痙攣し、

 蠕動し、逃すまいとギュウギュウに締め付けた。

 

 あふれる。溢れ出す。

 天音の小柄な腹腔には収まりきらないほどの質量が、

 内側からパンパンに膨れ上がらせる。

 それは生理的な侵略であり、他者による完全なる領土支配だった。

 己の身体の中に、主の一部が植え付けられる。

 その事実だけで、天音の精神は快楽の坩堝で融かされ、原形を留めなくなっていた。

 

「あぁっ♡♡♡ あつぃっ♡♡♡ なかにっ♡♡♡ ご主人様のがっ♡♡♡

 いっぱいっ♡♡♡ あふれちゃひますぅっ♡♡♡」

 

 最後の一滴まで。一滴残らず。

 流輝はキンタマの中身を空にするかのように、根気よく搾り出し続けた。

 白濁した粘液が子宮という器を満たし、

 行き場を失った分は膣壁を逆流し、結合部から泡立って溢れ出す。

 天音の華奢な下腹部は、まるで妊娠したかのように微かに膨らみ、

 その中で主の精液が蠢いているのが分かった。

 

 ——そして、完了した瞬間。

 

 プツリと。

 天音の四肢から、すべての力が抜け落ちた。

 手足は完全に脱力し、ダラリと重力に従って垂れ下がる。

 瞳から光が消え、口からは阿呆のような半開きの唇から涎を垂らし、

 全身を痙攣させることすら忘れたように静かになる。

 

 気絶だ。

 たったそれだけのことで、意識を手放してしまったのだ。

 

「……チッ」

 

 流輝はまだ脈動する剛直を天音の最奥に埋めたまま、小さく舌打ちをした。

 見下ろす先にあるのは、自分の精液で孕み、

 白目を剥いて気絶した美少年——いや、メス堕ちした元男の無様な姿だ。

 

「この程度で気絶するとは情けねぇな」

 

 呆れと共に漏れる独白。

 だが、その声には奇妙な納得感も含まれていた。

 やはり、そういうことなのだろう。

 メスの身体になるとは、即ちチンポには決して勝てない身体になるということ。

 抗う術もなく、支配される悦びに溺れ、果てには意識さえも快楽に明け渡してしまう。

 絶対的な弱者への作り変え。

 

「速攻でメス堕ちしたザコっぷりが、その事実を裏付けてくれたみたいだな」

 流輝はズルリと楔を引き抜いた。

 ポチャリと音を立てて大量の精液がコンクリートに零れ落ちる。

 天音の身体は力なく崩れ落ちることもなく、

 流輝の腕の中でただの肉人形のように揺られていた。

 その腹の中には、間違いなく蛮場流輝という男の

 所有物になったという証が深く刻み込まれているはずだ。

 

 

 日輪は既に東雲を超え、路地裏にも朝の兆しが訪れようとしている。

 しかしここには夜の帳以上の暗鬱が淀んでいる。

 人知れず行われた支配と服従の儀式は、

 誰に咎められるでもなく静寂の内に消化された。

 残るは地面に拡散する白と透明の混合液のみ。

 

 それを跨ぐように立つ流輝は、肩越しに振り返ると冷笑を浮かべた。

 

「さてと。今日からお前は俺専用のオナホールだ。

 せいぜい飽きられない程度には活きてくれよ?」

 

 言葉と共に蹴り飛ばされた小石が天音の額に当たり、

 それでも彼は幸せそうに笑うのであった。

 

「はいぃ♡ ごしゅじんさまぁ♡♡♡」

 

 夢の中まで犯されているかのような寝言が、

 黎明の喧噪へ溶け込んでいった。

 

更新希望の原作

  • 魔弾の王
  • 落第騎士
  • ハイスクールD×D
  • 月姫
  • モブせか
  • マジエク
  • のんびり農家
  • 新妹魔王
  • 八男
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