※この作品はR-18です。

ダークエロよろず短編集   作:カード読み込み

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オリキャラと魔改造原作キャラの違いはなんなのか


とある小国の滅亡

 

 

 灼熱の太陽が、乾いた大地に容赦なく毒矢を射かける。

 中東のとある小国──その国境線は、人間が引いた徒労の産物に過ぎなかった。

 砂塵を巻き上げて進軍する戦車の履帯音が、祈りの喊声を容易く踏み潰していく。

 解放軍の猛威である。だが、その鋼鉄の軍勢を率いるわけでもない。

 たった一人、巨躯の影が砂丘の稜線に立っていた。

  アークトゥルス。身長二メートルを優に超えるその異形は、

 黒曜石のごとき肌を灼熱の陽光に晒し、

 額から顎へと走る焼痕を勲章のように誇示していた。

 上下から覗く牙の隙間からは、飢えた獣のごとき湿った唾液がぼたりと落ちる。

  「……砕けろ」

  それが合図だった。

 固有霊装《ニグルム=ケントルム》なる黒檀の棍棒が、無造作に振り下ろされる。

 戦車の主砲が火を噴き、徹甲弾が巨漢の肉体を捉えた。

 だが、着弾の衝撃は肉を裂くことなく、虚空へと歪曲する。

 伐刀絶技《反甲轟雷(コンケイヴ・サンダー)》。

 受けた衝撃を増幅し、周囲へ叩きつける因果の結界だ。

  爆炎が渦を巻き、衝撃波が戦車を紙屑のように転がす。

 砲塔がひしゃげ、乗員の絶叫が鋼材の内側で潰れる音が、乾いた大気に響き渡った。

 アークトゥルスは愉悦すら浮かべず、ただ金瞳で惨劇を見下ろすだけだ。

  防御線を突破された歩兵たちが、畏怖に震えながら小銃を乱射する。

 鉛玉の雨もまた、巨漢の前には無意味だった。

 反甲轟雷の磁場が弾丸を弾き飛ばし、

 そのまま反射された鉛玉が射手たちの眉間を穿つ。

 阿鼻叫喚の地獄絵図。しかし、彼にとってそれは前菜に過ぎない。

  一人の女兵士が、腰を抜かして砂を這いずる。

 軍服の泥汚れも構わず、ただ逃げ惑うその姿を、アークトゥルスは無表情に見据えた。

 巨大な掌が伸び、女、ナイルの細い首根っこを鷲掴みにする。

 苦悶に喘ぐ彼女の顔面に、男は荒い鼻息を吹きかける。

「……痛いか?」

  答えを待たず、強靭な指がナイルの軍服を引き裂く。

 黒曜石のごとき分厚い指先が、焼けた刃で紙を裁く如く難なく布地を貫き、

 繊維が悲鳴を上げながら左右へ爆ぜた。金属のボタンが弾丸のように飛び散り、

 砂礫の上に乾いた音を刻む。剥き出しになったのは、薄い下着に包まれた豊穣の証だった。

 サラシの束縛から解き放たれた円錐形のEカップが、衝撃に任せて波打つ。

 月光の粒を弾き返す艶やかな小麦肌が、今は荒い呼吸に合わせて上下し、

 恐怖という名の猛毒に侵されたかのように微かに慄えていた。

  堪らず涙が溢れる。その深紅の双眸を歪め、

 薄い顎から滴り落ちる悔恨と絶望の雫を見て、

 男の股間で猛々しい欲望が首をもたげた。獣革の腰当てを押し上げ、

 ズボンの下から露出した凶器は、もはや人間の器官とは思えないほどに悍ましい。

 血管が浮き上がる太い肉柱は、熱病に罹患した大蛇を思わせ、

 先端からは既に混濁した先走りが垂れ落ちている。

  抵抗すら許さない質量が、ナイルの秘裂を無理やり押し広げる。

 肉と肉が擦れ合う摩擦音すら消し飛ぶほどの暴力的な侵入だった。

 秘所の襞が悲鳴を上げ、内壁が引きちぎれそうなほどに拡張されていく。

 悲鳴は喉の奥で砕け、代わりに空気が漏れる音だけが迸った。

 骨盤が軋むような激痛が脳髄を焼き尽くす。

 まるで焼き鏝を捻り込まれたかのような焦熱と圧迫感。

 両腕を杭のように地面へ突き立て、逃れようと蠢く肢体を固定する。

  灼熱の砂粒が背中に入り込み、擦過傷のような疼痛が走る。

 それでもアークトゥルスは容赦しない。

 巨躯の全体重を一点に集中させ、獣じみた律動で膣奥を殴りつける。

  「……あ゛っ……! やめ……やめてぇ……!」

  懇願は届かない。男は愉悦の笑みひとつ浮かべず、

 ただ機能的に腰を叩きつける。巨大な陰茎が膣壁を抉る度、

 粘膜が内側からひき裂ける音が聴こえそうだった。

  一度、二度──。

 打ち下ろされる度に子宮口が潰され、呼吸が阻害される。

 第三波に達したあたりで、ナイルの思考は途切れた。

 痛みと圧迫感しか感じられないのに、なぜか甘い電流が脊髄を奔る。

  (違う……! これは私の意思じゃない!)

  否定しても身体は裏切る。灼熱の砂を枕に仰向けとなった私の中で、

 男の剛直を受け入れてしまった膣道が脈動している。

 快楽ではない。自己防衛本能として分泌された潤滑液が、

 凶器の動きを滑らかにサポートしていた。

  アークトゥルスはそれに気づいたらしく、一度動きを止める。

 獲物の急所を探る虎のように少し腰を引き、浅瀬で竿先をくるりと揺すった。

「……ここか?」

  見抜かれた。弱点とされるGスポットの入り口を正確に攻撃された瞬間、

 喉の奥から情けない悲鳴が漏れる。

 羞恥心が沸騰して赤面しようとしても、顔面は蒼褪めていく一方だった。

  「やはり獣でも感じるらしい」

  嘲弄と共に杭打ちが始まった。

 速い。それでいて無駄な上下運動は無い。

 パンッと肌が鳴る音と共に肉槍が膣天井を擦り上げてくる。

 一往復ごとに火花が散った。視界が霞む。

  (壊れる……本当に壊される……!)

  耐久限界に達した私の身体は別の信号を送り始める。

 オーガズムという誤認の救済だ。

 無理やり高められた性感は出口を見つけられず腹部に滞積し、

 焼け付くような疼きだけを残して沈殿する。

  「ほう……中が締まった。嬉しいか?」

  アークトゥルスは愉快そうに嗤い、止めの一撃をくれた。

 渾身の力を込めて陰部を叩きつけられる。まるで岩槌で杭を打つように。

 脳天まで衝撃が突き抜けた。

  同時に背筋が大きく反り返り、両脚の腱がピンと張る。

 内臓が胃袋ごと持ち上げられそうだ。

 酸素不足でクラクラする視界が真っ白にフラッシュアウトする。

  「イ……イっちゃう……!」

  必死で歯を食いしばる。けれど無慈悲な男根はさらに膨張し、

 ビクリと脈打って精液の予兆を見せた。

 このままでは…… 絶望の淵でナイルが震えるのとほぼ同時に。

 

 孕むが良い。

  ボソリと、砂嵐の唸りにも似た低音が鼓膜を震わせた瞬間、

 ナイル・セドナの脊髄に氷柱が突き刺さった。

 恐怖だ。純粋な、原初的な恐怖。

 子宮へ注ぎ込まれるという生理的な事実に対する忌避感が、全身の毛穴を逆立たせる。

 だが同時に、下腹部の奥底で燻っていた燠火が、

 その言葉を燃料として爆発的に燃え上がったのも事実だった。

  ああ、また——。

  かつて砂嵐の晩に篝火を囲み、

 信じていた屈強な仲間たちに背後から羽交い締めにされた記憶。

 縛り上げられ、身動きできないまま服を剥ぎ取られ、

 欲望の捌け口として処女を奪われたあの夜。痛みと屈辱に嗚咽しながらも、

 ロープの食い込む感触に〈護られている〉という甘美な錯覚を覚えてしまったあの時から、

 彼女の中の何かが決定的に壊れてしまったのだ。

  拘束されることへの恋情。身動きを奪われ、為すがままに蹂躙される状況こそが、

 彼女に痺れるような安心感を与える。それは狂気とも言える倒錯した愛の形だった。

  そして今、目の前の巨漢は、比类なき質量で彼女を砂礫に縫い止めている。

 アークトゥルスの巨躯は、まるで落下してきた隕石そのものだ。

 逃げ場などありはしない。その絶対的な支配下にあるという事実が、

 ナイルの脳髄に麻薬のごとき快楽を注入していく。

  「……ひっ、ぁぁっ……!」

  無慈悲なピストン運動が、子宮口を槌で叩くように激しく突き上げる。

 肉と肉がぶつかり合う湿った音が、乾いた大気に淫らに響き渡る。

 そのたびにナイルの身体は小刻みに跳ね上げられ、解放されたばかりの豊かな乳房が波打った。

  円錐形をしたEカップの双丘は、重力に従って両側へ大きく揺さぶられ、

 熟れた果実のような重みを主張する。

 汗ばんだ小麦肌は灼熱の陽光と密着する男の体温によって熔け出し、

 妖艶な光沢を放っていた。焦げ茶色の小さめ乳輪が収縮し、

 その頂きは硬く尖って天を向いている。吸い込めばほのかに塩辛いというその突起は、

 今や男の胸板の荒い摩擦によって擦り上げられ、痺れるような快感を放射していた。

  「……砕けろ」

  男が短く呟き、さらに腰を深く沈める。子宮の奥底をこじ開けられるような圧迫感。

 内臓が押し潰されそうになるほどの埋没感に、ナイルは白目を剥いて喘いだ。

 太腿から膝にかけて刻まれた古い槍痕が、男の荒い息遣いに合わせて引き攣る。

 かつて戦場で刻まれた勲章が、今は獣欲を受け止める肉の器として脈打っていた。

  漆黒の三つ編みが解けかけ、乱れて砂に広がる様は、

 打ち捨てられた戦旗を彷彿とさせる。深紅の双眸は涙で潤み、焦点を結べないでいた。

 しかし、その瞳孔は快感に支配され、愉悦に歪んで開かれている。

 汗の塩味と砂埃と女の麝香が層を成した濃厚な匂いが、鼻腔を満たし思考を融解させる。

  (……いい……もっと……壊して……)

  口から漏れるのは拒絶の言葉ではなく、歓喜の喘ぎだった。

 巨漢の体重がのしかかる圧迫感は、彼女にとって束縛の極致であり、

 すなわち至高の愛撙だったのだ。骨が軋み、肉が悲鳴を上げるほどに犯されることが、

 彼女の歪んだ性器を飽和させていく。

  アークトゥルスは感情の読めない金瞳で見下ろしたまま、ただ機械的に腰を振り続ける。

 だがその無機質さがかえって、ナイルにとっては道具として扱われる屈辱的な快感を煽った。

 彼女は自分の意志で動くことすら許されないただの孕み袋だと、本能が告げている。

  「あっ、あぐっ、イッ……イっちゃうぅっ! おぉっ……!」

  腹斜筋が蛇腹のように波打ち、呼気に合わせて隆起する腹筋が痙攣する。

 男の黒檀のような腕が彼女の腰を掴み、根本まで深々と突き刺したまま激しく掻き回す。

 膣壁が収縮を繰り返し、異物を締め付けようと蠢くが、

 それは逆に男茎を刺激し、さらに激しい突き上げを誘発するだけだった。

  限界だった。脳内で白い閃光が弾け、全身の神経が焼き切れるような絶頂が襲う。

 潮吹きと呼ぶにはあまりにも大量の愛液が、結合部から迸り、砂漠の大地を濡らした。

 痙攣する身体を押さえつけるように、アークトゥルスは最奥へとどっぷりと沈み込む。

  そして、灼熱の奔流が注ぎ込まれた。

  子宮を直接満たすほどの濃厚な精液が、ナイルの胎内を侵食していく。

 熱さと重さ。孕まされるという確信。それは彼女に恐怖と同時に、

 底知れぬ充足感を与えた。劣情と恐怖が混ざり合い、

 彼女は涙を流しながらも、狂ったように微笑んだのだ。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「……悪くない。おい……」

 部下にナイルを確保するように命じたアークトゥルスは

 次の獲物を物色する様に辺りを見渡す。

  「あら、お盛んね……?」

 

  その蹂躙を、少し離れた瓦礫の上から冷ややかに見下ろす影がある。

 紫水晶を湛えた双眸が冷笑を孕むとき、

 大気は甘露と毒茸の混淆へと染め上げられる。

 それが『悪の華(ダーティローズ)』と呼ばれる女、アイン・アップグルントである。

 三十路前後という熟れ頃の果実は、

 すでに腐敗の境界線に片足をかけた危うい香気を放ち始めていた。

 

 彼女の纏う葡萄酒で鞣したような艶髪が背中へ流れ落ちる様は、

 まるで暗い情動そのものが蛇のように蠢いているかのごとくだ。

 肩幅は狭く、腰は柳に似て細やかでありながらも、

 その双臀と胸房は成熟の果肉をこれでもかと凝縮したかのような質量を誇っている。

 肩から滑り落ちる布地一枚で隠しきれぬほどに膨れ上がったEカップの熟実は、

 重力に従ってなまめかしい曲線を描きつつも、驚くべき弾力を内に秘めている。

 

 その乳房を包む柘榴色の乳輪は直径三センチほどもあろうか。

 薄桃色の肌との対比が鮮やかすぎて視線がそこへ釘付けとなり、

 否応なく口腔内に唾液が溢れ出す。肌は翳りを吸い込んだ白磁の艶を持ち、

 指先でなぞれば冷たい陶器のような感触が返ってくるであろうと錯覚させる。

 だがその内部には、灼熱のような血潮が渦巻いているのだ。

 

 腹斜筋は浅いV字を描きながら蛇腹のごとき柔軟性を保持しており、

 少しでも力が入ればその起伏が浮き彫りになる。

 そして最大の視覚的暴力は臀部である。月下獣の毛皮のように隆起した双臀は、

 掌に溶け込むような温度と質量を秘めながら、歩みごとに波打つ肉の襞を形成する。

 その谷間へ指を滑らせれば、

 決して日の当たらぬ淫靡な湿り気と熱が指先を侵食してくることだろう。

 

 だが彼女の真の恐怖は、その身体性よりも深淵なる精神的構造に宿っている。

 

 暗殺者育成機関《黒い家(アップグルント)》という地獄より生還した彼女にとって、

 死は日常茶飯事であり、殺しは呼吸のようなものであった。

 幽衣という反逆者との敵対関係は彼女の中に冷徹なる殺意を研ぎ澄ませたが、

 同時に奇妙な欠落感をも植え付けていた。

 それは「他者に所有されることへの渇望」である。

 

 烙印蒐集──彼女が求めるのは、「奴隷」と墨を入れられた幻肢の痒みに他ならない。

 王座に座する者でもなく、他者の命を握る者でもなく、

 ただ一つの首輪によって繋がれることこそが至高の悦びなのだ。

 地下牢へ連れ込まれる戯画に溺れ乱れる彼女の脳裏には

 常に「支配」という甘美な呪縛が焼き付いている。

 

 その歪んだ性癖は彼女の戦闘スタイルにも如実に現れている。

 固有霊装アスタロッテは子宮へ埋め込む種子型霊装である。

 花弁状に開帳し触媒となる血液を吸引するその構造は、まさに交尾そのものだ。

 子宮という生命の揺籃を凶器へと変換し、自らの血肉を糧として咲き誇る華は、

 彼女の子宮が抱える深淵なる虚空を埋めるための儀式なのだ。

 

 伐刀絶技〈枯餓百合(カラミティ)〉は対象の生命力を霊子レベルで吸収し

 肥大花として開花させるという残酷極まりないものだが、

 その過程において彼女自身もまた恍惚に身を委ねている。

「貪食の黒百合」として敵を枯渇させる吸血鬼狩人は、

 同時に己自身も渇き続ける存在なのだ。

 

 一滴啜れば陶然と酩酊し次の瞬間舌が痺れる劇毒。

 それこそがアイン・アップグルントという女の本質である。

 

 宴卓で盃を傾けるだけで殿上人が言葉を慎み、娼館では客が自嘲を禁じ得ず項垂れる。

 そんな圧倒的な支配力を持ちながらも、彼女は自ら跪く相手を探して彷徨っている。

 

 滴る蜜舌で囁く悪魔の福音は多くの男たちを破滅へと導いてきた。

 腋窩から漏れる濃紅の吐息は理性を溶かし鎮め、

 ただ本能だけが剥き出しとなる獣へと貶める。

 

 彼女は扇情的な唇に笑みを刻みながら、戦場という残酷な舞台を特等席で楽しんでいた。

  「あらあら、随分と野蛮なお食事ですこと」

  彼女の足元には、数多の死体が転がっている。

 だが、それらはただの死体ではない。腹や胸から異様な植物が芽吹き、

 鮮血を啜って咲いた赤黒い百合の花が揺らめいている。

 アインが放った〈枯餓百合(カラミティ)〉の餌食だ。

 彼女の秘められた場所──子宮に埋め込まれた固有霊装《アスタロッテ》が疼くたびに、

 周囲の命が養分として吸い上げられていく。

 だが男たちは知る由もないのだ。この悪の華が最も恐れているのは孤独ではなく、

「誰にも摘まれることなく散っていくこと」なのだと。

 紫水晶の双眸は今日も冷ややかに笑いながら、

 その奥底で熱く濡れた視線で「主人」に跪く。

 紫水晶の双眸が冷笑を孕むその裏側で、

 アイン・アップグルントはいつも硝子の破片のような記憶を反芻していた。

 それは彼女が『悪の華』と呼ばれる遥か以前、

 まだ蕾すら付けぬ若木であった頃の話である。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

  初仕事で見事功績を上げた彼女は——英雄譚にあるような称賛や勲章ではなく、

 もっと肉体的で、かつ残酷な「褒美」を与えられたのだ。

  解放軍の盟主アダム・カドモンという男は、

 彼女の人生における最初にして最悪の支配者だった。

 

  彼の居城である地下司令室は、魔導文明と近代武力が融合した異形の建築物だった。

 壁一面には無数の魔導回路が青白い燐光を放ち、

 空中には情報球体が幾重にも重なり合いながら敵国の戦況を映し出している。

 戦略兵器管制盤と結界制御装置が並ぶ中央塔を横目に見て、

 アインは初めて自分がどのような組織に属しているのかを本当の意味で理解した。

 

  「よくやった、アイン」

 

  その声は掠れた低声でありながら、毒を滲ませた丁寧語で彼女の脊髄を痺れさせた。

 

 

 

 褒美だ──

 

 そう言うなり、彼はアインの手首を鉄格子のごとき指で掴んだのだ。

 その瞬間、彼女は悟った。自分に与えられる褒美が何であるかを。

 暗殺者として研鑽を積んだ身体でありながら、アダムの前では為す術もなかった。

 

 抵抗しようと踵を返した瞬間には、すでに彼女は部屋の寝台へと押し倒されていた。

 若い肉体は弾力に富んでいたが、男の体重と筋力の前にては紙細工も同然である。

 スーツの生地越しに伝わる男の体温は火箸のように熱く、

 それとは対照的に彼の手つきは外科医のごとく冷徹であった。

 

「離して! 何をするんですか!」

  アインは叫びながら身をよじったが、

 その抵抗すらもアダムには茶番に過ぎなかったようだ。

 殺人技術を叩き込まれた暗殺者の身体でありながら、男の前では赤子も同然の無力さ。

 彼女の翻す腕を容易く掴み取り、壁際へと押し据えるその力の差は、

 種族を異にする者同士の交わりのように絶対的であった。

 アインの紫水晶の瞳に映る男の灰色の双眸は、

 凍てついた冬の湖のごとく感情の漣さえ浮かべず、

 ただ彼女という存在を対象として計量しているかのように冷徹だった。

 

  彼は無表情のまま、彼女の任務服を引き裂いた。

 高級な暗殺者装束であったはずの黒繊維が、

 紙屑のように腹の前から左右へと裂けていく。

 本来なら刃物すら弾く防刃加工が施された素材が、ただの指先の戯れで意味を喪う。

 布が裂ける乾いた音が室内に響き渡り、

 防御結界の燐光が剥き出しになった白磁のような肌に青白い影を落とす。

 豊かに膨らみ始めていた乳房が外気に晒され、重力に従って僅かに揺れるその質感は、

 熟れかけた果実というよりも、むしろ摘まれることを待ち侘びる

 花の蕾のような未熟さと蠱惑とを併せ持っていた。

 頂点にある柘榴色の乳首が恐怖で縮こまる様は、

 まるで暴風雨の夜に身を守るように花弁を閉ざす睡蓮の如くであった。

 

「無駄だ」

 

  短く告げると、アダムはその豊かな胸を鷲掴みにした。

 五本の指が柔肉に埋め込まれ、白磁の肌に紅色の痕を刻むほどに強く握りしめた。

 熟れかけた果実を壊さんばかりの勢いで揉みしだくその手つきは、

 愛撫という甘やかな表現からは程遠く、獲物の肉質を測る屠畜人の冷徹さを帯びていた。

 親指と人差し指が乳首を挟み込み、きつく捩じれば彼女の喉奥から鈍い呻きが洩れる。

 痛みが走ったが、それと同時に背骨を駆け上がる痺れのような感覚に彼女は戸惑った。

 矛盾する快と痛が神経網を渦巻き、支配される被虐的な陶酔が理性の堤防を崩し始める。

 子宮に埋め込まれた固有霊装《アスタロッテ》が疼き、

 彼女の血潮と共鳴しながら淡い熱を放つのが解った。

 

 

  お前は無力だ───

 

  その言葉は呪いのように彼女の耳朶を打つ。

 いや、呪いなどという生易しいものではない。

 それは彼女の脳髄に直接刻み込まれるような重みを持っていた。

 ただの言葉でありながら、肉と骨と霊魂を貫く杭となって、彼女を定めたのだ。

 事実であった。暗殺術を駆使しても、

 数十人の標的を無感覚のまま黄泉へ送った技倆を以てしても、

 この男の腕一本抜くことすら叶わない。否、腕を抜くという発想そのものが滑稽だった。

 彼女の研ぎ澄まされた感覚は、男の体温を通じて圧倒的な魔力の渦を察知している。

 それは人智を超えた領域、魔人たる存在の絶対座であった。

 

  圧倒的な力の差。そして絶対的な支配。

 彼女は己の無力さを骨の髄まで刻み込まれていく。背骨の各椎が震え、

 骨髓を循環する血の一滴一滴までがその事実を認識する。

 暗殺者としての矜持、殺戮の象徴であったはずの己の身体が、

 今やただの軟弱な雌性へと還元されていく。胸を鷲掴みにされた乳房が疼くたびに、

 彼女は自らの定義が書き換えられているのを感じた。

 任務服の裂け目から覗く白磁の肌が、燐光に照らされて青白く浮かび上がる。

 冷たい空気に曝された乳首は柘榴色に縮こまり、

 男の指先の熱だけを頼りにしているかのように硬く尖り、切なげに顫えていた。

 

  アダムのもう片方の手が、緩やかに、しかし確実に彼女の股間へと伸びる。

 太腿の付け根から内側へと這い上がるその指先は蜘蛛のようでありながら、

 どこか魔性のような巧みさを持っていた。否、蜘蛛などという比喩は生易しすぎる。

 それは獲物の神経を網で捉える前に、

 まず獲物自身を網に仕立て上げる操糸人のようなものだった。

 彼の指が肌に触れるたびに、微細な電流が走った。表皮に細かい汗が珠を結び、

 照明を反射して妖しく煌めく。太腿の内側は他の部分より僅かに温度高く、

 彼女自身が意識するよりもずっと早く湿り気を帯びていた。

 男の指はその湿度を楽しむかのようにゆっくりと上下に滑る。

 指紋の凹凸すら鮮明に感じるほどに肌と指が密着し、

 そこから魔力のような波が送り込まれてくる。

 

  ついに彼の指先が鼠蹊部の翳りに到達した瞬間だった。

 秘所に触れられたその刹那──アインの肉体は電流に打たれたかのように跳ね上がった。

 びくり、と筋肉が痙攣し、背中が弧を描く。

 下腹部に宿る固有霊装《アスタロッテ》が共鳴し、

 彼女の血潮と同調して淡い熱を放つのが解る。触診によって初めて認識される器官。

 これまでただの排尿器官であったものが、

 新たな意義を与えられたことに気づき戸惑う幼子のように疼き始める。

 秘唇の周縁が微かに震え、奥から透明な蜜が滲み出してくるのが判った。

 

「いやっ! そこは……!」

 

  その声は、咽喉の奥から絞り出された悲鳴のような拒絶であった。

 処女である10代前半の少女にとって、他人の手による接触という行為そのものが、

 未知の恐怖の塊に他ならなかった。否、恐怖という言葉ですら生易しい。

 それはまるで、自らの肉体の主権という概念が

 初めて他者に侵されようとしているという、存在論的な戦慄であった。

 自分の身体という領土に、勝手に国境線が引かれ、旗が掲げられようとしている。

 そしてその侵略者は、外交も交渉もなしに、ただ一方的な力で門を破ろうとしているのだ。

 

  だがアダムは構わず指を挿入してきた。

 乾ききっていた秘所に異物が侵入する違和感と痛み。そして内壁を掻き回される屈辱。

 粘膜の襞が一本一本、異物の進入に抗って擦り上げられ、微細な傷を負うたびに、

 焼けるような熱が広がっていく。彼女の身体は防御本能で締め付けを強めようとするが、

 それは逆に指先への圧迫感を増し、さらなる刺激を生み出す悪循環となる。

 指の第二関節まで埋め込まれたその異物は、単なる肉の塊ではなく、

 彼女の内面までも掻き毟る権力の象徴であった。

 子宮に埋め込まれた固有霊装《アスタロッテ》が、

 まるで外部からの刺激に呼応するかのように脈動し、淡い熱を下腹部へと放射する。

 種子型の霊装が、まさに「植え付けられる」という行為に共鳴しているのか、

 あるいは拒絶しているのか。アインには判然としなかった。

 判然とさせぬまま、彼女の肉体は独自の論理を回転し始めていた。

 

「見ろ。こんなにも濡らしているではないか」

 

  事実でなかったとしても、彼には関係なかった。

 彼は自らの言葉を真実へと変える力を持っていたのだ。

 指先が敏感な部位を見つけ出し、執拗に責め立てる。

 痛みの中に混じり始めたのは、名状しがたい熱であった。

 まるで極寒の雪山で遭難し、焚き火を見つけた時の安堵にも似た温もりが、

 彼女の芯を溶かしていく。恐怖と嫌悪が混合した感情の坩堝から湧き上がるのは、

 確かに快楽と呼ぶべき熱の奔流だった。膣壁の一点を押し上げられた瞬間、

 腰骨の奥で何かが弾け、堰を切ったように透明な液体が溢れ出した。

 それは痛みを希釈するための生理的な反応なのか、

 それとも被虐的な性質が露呈した結果なのか。アイン自身も理解できないまま、

 ただ確かなことは、その液体がアダムの指の表面を滑らかに覆い、

 抽送の速度を加速させているということだけであった。

 彼女の内側で行われている微細な抵抗戦争は、

 指というたった一本の武器によって完膚なきまでに制圧されつつあった。

 

  アイン・アップグルントの処女喪失という事件は、

 国家規模の政変が水面下で進行するこの世界においては些末な出来事かもしれない。

 だが、彼女にとっては紛うことなき革命であり、

 己の内なる王国が占領された歴史的瞬間だったのである。

 

  「嘘……こんな……ああっ……♡」

 

 否定しようとした声が甘い嬌声へと歪む。

 屈辱と快楽の狹間で彼女は涙を流した。

 自分の身体が裏切り、快楽という毒に侵食されていく恐怖。

 

  だが、その恐怖の底には、もっと深い慄きが潛んでいた。

 暗殺者として鍛え上げた己の肉体が、

 暴力という名の愛撫に馴染んでしまうという倒錯。

 アダムの指が膣壁を掻き分けるたびに、

 抵抗の意志が砂上の楼閣のように崩れ落ちていくのを、

 彼女は客観的に、しかし鮮明に観測していた。

 子宮に埋め込まれた固有霊裝《アスタロッテ》が、

 まるで祝福とも呪詛ともつかぬ脈動を響かせながら、

 徐々に熱を帯び始めるのが分かる。それは、彼女の肉体を侵す

 雄々しき異物に対する反応なのか、それとも自らがその侵蝕を

 受け入れようとしている証左なのか。判断の埒外にある混乱が、

 却って彼女を昂ぶらせる。

 

  アダムは彼女の涙を舐めるように覗き込んだ。

「泣くな。悦びと慟哭は同一の泉から湧くものだ」

 そんな哲学じみた呟きすら聞こえぬほど、

 彼女は自らの内側で起きている異変に戸惑い続けていた。

 

  そして決定的な瞬間が訪れた。

 アダムが己の猛りを彼女の秘所へ押し當てたのである。

 それは暴力的なまでの質量を持っていた。

 鎧のように堅牢な筈の乙女の鞘が、

 まるで飴細工のように砕ける寸前で震えている。

 彼女は無意識に膝を寄せようとしたが、

 両脚の間に割って入った巨體がそれを許さなかった。

 皮膚に突き刺さる灼熱の先端は、

 処女の扉を軽々とこじ開ける準備を整えているかのようで、

 

  彼女は咄嗟に身を捩った。

 だがそれが無駄であることくらい分かっていた。

 幾百もの敵を葬ってきた筈の四肢が、

 今は鉛のように重く、自由とは程遠い鎖に縛られているかのようだ。

 胸が潰れそうな程の恐怖と緊張の中で、

 膣口が窄まっていく。しかしそれは侵入を拒むためではなく、

 むしろ異物を迎え入れるための準備のようにも感じられた。

 

  アダムの指が再び乳首を抓る。

 痛みと快感が交叉して脳内に火花を散らす。

 その隙に彼は腰を沈め始めたのだ。

 

  容赦なく子宮口を目指して突き進むその楔は、

 彼女の処女という聖域を無慈悲に踏み荒らしていった。

 鋭利な切っ先が肉の壁を抉り始める。

 

  「あぐっ……! 裂ける……! お願い……やめてぇぇっ!」

 

 破瓜の痛みが脳天を貫く。鮮血がシーツに花を咲かせる。

 だがアダムは止まらない。むしろその痛みこそが

「躾け」のスパイスであるかのように、さらに深くへと侵入していく。

 処女膜が弾ける感覚は鈍い破裂音と共に脳裏へ響き渡る。

 続いて内側から灼かれるような灼熱感が駆け巡った。

 

  彼女の膣はまるで拒絶するように激しく締め付ける。

 だがその締め付けすらも快感を助長する要因となってしまう。

 侵入者が彼女の一番深い場所へ到達した時、

 

「これが褒美だ。ありがたく思え」

 

 彼は冷徹な聲で囁きながら、腰を打ち付け始めた。

 その動作には慈悲など欠片もなかった。

 ただ己の欲望を満たし、相手を屈服させることのみを目的としたピストン運動。

 内壁が悲鳴を上げるたびに、彼女のプライドもまた粉々に砕かれていった。

 

 精密機械のごとく無慈悲なリズムで稼働し続ける

 ストロークに込められた膂力は尋常ならざる破壊力を孕んでおり、

 乙女の脆い宮殿を土嚢を蹴散らす銃弾のように貫通していく。

 内壁が悲鳴を上げるたびに、彼女のプライドもまた粉々に砕かれていった。

 鏡の表面のように研ぎ澄まされた誇りは、今やガラス片となって散り敷くばかりだ。

 矜持という鎧も、知恵という盾も役には立たない。ただ剥き出しの肉と骨が露出していく。

 

「無力な雌だ」

 

 その言葉は呪縛となって彼女を縛り付けた。

 鎖骨から鎖骨へと冷たい鎖が掛かり、呼吸ごとに締め付けがきつくする錯覚に陥る。

 抵抗する力などとうに失せていた。否、力は依然として内在しているはずなのに、

 それを用いて立ち向かう資格も意思も奪われてしまっているのだ。

 あるのはただ、この暴力にも似た快楽の波に翻弄されることのみ。

 まるで無重量空間に投げ出された小舟のように、彼女の身体は嵐の中心で旋回し続ける。

 

 子宮を突き上げられるたびに視界が白く弾け、口からは意味を成さない嬌声が溢れ出す。

 言葉に近い呻きはすぐに湿った啼き声へと堕落し、

 その響きがあまりにも淫蕩すぎて彼女自身が聞くに堪えない。

 アイン・アップグルントという一個の人格は跡形もなく溶解し、

「所有されるための肉体」という容器へと再配置される。

 

「ああっ♡ ダメ……壊れちゃう……! お腹の中に……当たって……!」

 

 熱い杭が何度となく最奥を叩く。そのたびに臍の底で炸裂する衝撃波は

 脳天まで届き、理性の糸を一本ずつ切断していく。

 脳裏で明滅するビジョンは炎に焼かれる祭壇であり、

 犠牲羊の脂身が煙を上げて黒く焦げる光景だ。

 自尊心という贄が焼き払われる代償に、

 動物的本能の快感が莫大な利息を支払ってくれる。

 

 彼女の両足はいつしか彼の腰に絡みつき、

 より深い結合を求めているようにも見える。

 だが本人にはわからない。命令されたわけでもないのに、

 肉体が勝手に迎合の角度を変えている。それは抗う余力の消失ではなく、

 むしろ抵抗の停止という積極的な放棄であった。

 無意識のうちに指先は男の背中へと爪を立てていた。

 痛みを与えるためではなく、何かに縋らずにはいられない哀願として。

 

 それは快楽への懇願であり、支配者への服従の証。

 どんな契約書よりも鮮明で明白な誓いを、

 彼女の身体自身が刻印していた。

 紫色の双眸は爛々と燃え上がり、

 その火は恐怖の灰ではなく恍惚の薪を燃焼させていたのだ。

 

 

  「ああっ♡ ダメ……壊れちゃう……! お腹の中に……当たって……!」

 

  やがてアダムが深々と達した瞬間、灼熱の飛沫が彼女の胎内を満たした。

 子宮の最深部で弾けた精液は、ただの生理現象の産物などではなかった。

 それは支配の刻印であり、彼女という個を白紙へと戻す溶解液であった。

 熱液が注がれるたびに子宮内壁が痙攣し、抗えない嘔吐感と背徳の快感が同時に襲いかかる。

 脳髄が焼き切れるような白濁の奔流は、処女の聖域を汚すだけでなく、

 彼女の自我の核をも侵食していく。

 その瞬間、彼女の中で何かが決定的に壊れた音がした。

 乾いた骨が砕けるような、あるいは張り詰めた琴線が断ち切られるような、

 無機質でありながら逃れられない破壊の轟音であった。

 

  処女を奪われ、無力さを骨の髄までわからされ、

 そして女体という器へと躾けられた夜。

 抵抗の糸が断ち切られた肉体は、自ら進んで男を受け入れる角度を模索し始める。

 理性の灯が消えた瞳孔は、虚空を見つめながらも快楽の残像を貪欲に求めていた。

 それ以来、アイン・アップグルントの中には永遠に癒えぬ空虚が残されたのである。

 奪われた処女膜の傷跡ではなく、魂の原型を喪失した深淵。

 その空虚は「所有されること」への渇望となり、

 彼女をして『悪の華』へと咲かしめる肥料となったのだ。

 男に与えられる痛みと服従こそが、唯一彼女の存在を証明する首輪なのだと悟らしめた。

 紫水晶の双眸が冷笑するのは、

 未だあの夜の凍てついた瞳を見つめているからに他ならない。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 灼熱の陽射しがアスファルトを焼き、融けたタールの異臭が鼻腔を突く。

 首都アル・カーミルの最終防衛線は、もはや防壁などという生易しいものではなかった。

 それは血と油とコンクリートの残骸を積み上げたバリケードであり、

 退路を断たれた者たちが自らの墓穴を掘って立ち尽くしているに過ぎない。

  「全機、射撃用意! 一歩たりとも通すな!」

  女性士官の裂帛の喊声が砂塵に融ける。

 かつては近隣諸国との友好を誓う式典に使われた広場は、今や鉄と肉の挽き臼と化していた。

 解放軍の前衛が目前に迫り来る。

 その中心に屹立するのは黒曜の巨人・アークトゥルス。

 背後に続くのは無数の木人兵──伐刀絶技『挿し木』によって瞬時に増殖した不死の傀儡たちだ。

 

  「無駄よ。貴女たちの価値なんて『苗床』以外にあると思って?」

  嘲笑混じりの艶のある声が鼓膜を擽る。アイン・アップグルントだ。

 葡萄酒色の長い髪を風に踊らせながら、悠然と前線へと舞い降りる。

 その紫水晶の双眸に映るのは戦慄ではなく喜悦。

 戦場の香りは彼女にとって芳醇なワインと同じだ。

 

  アインが片手を振るう。──その瞬間、戦場の均衡が崩壊した。

《アスタロッテ》が子宮で脈動し、彼女の大腿部へと小さな芽を伸ばす。

 芽は見る間に肥大化し、触手のような形状となって地面へと根を張る。

「いただきまぁす♡」

  可憐な声と共に放たれたのは伐刀絶技《枯餓百合》。

 大地が割れ、黒紅の茨が蛇蝎の如く奔る。

 狙われたのは防衛軍陣地──否、その中に潜む数多の生命そのものだ。

  「うわぁッ!!」

  甲高い悲鳴と共に若い兵士が宙へ舞う。

 茨に捉えられ、魔力と血液を啜り盗られる哀れなオブジェを量産しつつ、

「私も、いい子見つけたいのよね……あんまり時間無いし」

 その表情は、ウィンドウ・ショッピングで掘り出し物を探す程度の気軽さであった。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 治癒祈祷の最中だった。

  甘き夕祷の鐘など鳴り響く筈もない戦場において、

 ハトシェプスト・エルノアはただ独り、静謐なる慈悲の境界線を護り続けていた。

 両の手を組み、固有霊装たる琴弓《マルカフ》の弦を爪弾く。

 その指先から溢れ出す波紋が負傷者の断裂を繋ぎ止め、

 血と泥に汚れた野戦病院に一抹の浄化をもたらしていたのだ。

 

  だが、神の恩寵も魔の侵蝕には勝てぬ。

「あらあら……随分と美味しい匂いがするじゃない」

  背後から忍び寄った甘い毒霧が、エルノアの祈りを唐突に断ち切った。

 振り返る暇すら与えられず、

 足元の影から伸びた漆黒の茨が修道女の細い足首を鷲掴みにする。

 

「きゃっ……!?」

  バランスを崩し砂礫へと倒れ込むエルノア。

 その瞬間、無数の蔦が蛇のごとく彼女の肢体へと巻き付いていった。

 太腿、腰回り、そして豊かな胸元へ。

 まるで産み落とされたばかりの雛を巣へと引きずり込む蔓植物のごとく、

 粘着質な動きでその身を拘束していく。

 

「ふふっ……いい肌触り。小麦色に焼けた修道女さんって、

 なんだかこう……ソレ系の背徳感が有ってゾクゾクしちゃうわねぇ♡」

  耳元で囁かれたのは蜂蜜と毒茸を混ぜたような声。

 アイン・アップグルントである。

 紫水晶の瞳を妖しく煌かせながら、

 彼女は縛り上げた獲物の上へと馬乗りになる。

 

「離して……! 私は……ただ、彼らを……!」

  エルノアは懸命に抵抗しようと身を捩るが、

 それは却ってアインの嗜虐心を煽るだけだった。

「観念しなさい。あなたのその慈愛に満ちた命こそが、

 私の子宮《アスタロッテ》を最も満たしてくれる肥料なんだから」

  そう言うなり、アインはエルノアの修道服へと指を掛けた。

 薄絹のヴェールが裂かれ、汗ばんだ白衣が左右へと剥ぎ取られていく。

 曝け出されたのは、神への奉仕によって培われたにも関わらず、

 あまりにも此の世的な欲望を孕んだ豊穣なる肉体であった。

 

  Gカップの豊丘は重力に従って大きく揺さぶられながらも、

 驚くべき弾力を保ったまま二つの熟果へと形を変える。

 濃い小麦肌は戦場の熱気と自前の汗で混濁し、

 ランプの焔を吸い込んだかのように艶光っていた。

 胸囲に余裕を持たせていた白衣は今や意味を成さず、

 露わになった谷間には恐怖と恥辱の脂汗が滲み出し、

 淡く淫靡な翳りを投げかけている。

 

「んっ……見ないで……そんな目で……!」

  エルノアは顔を背けようとするが、蔦が顎を固定し逃げ場を封じる。

 アインは楽しげに笑いながら、

 その白磁のような指先で豊かな乳房の曲線をなぞり始めた。

「硬い……。祈りだけでこんなに育っちゃうなんて、

 やっぱりあなたは『母』なる器なのねぇ」

  括れた腰から臀部へかけて撫で下ろされる掌。

 母性そのものの充足したヒップは幅広で肉厚であり、

 薄鼠の長裙越しでもその餅のような弾力が伝わってくるようだ。

 手伝いの尼僧さえ生唾を呑むというその肉塊は、

 今やアインの手の中で無防備に震えていた。

 

「あぁっ……そこは……だめぇ……♡」

  無意識に甘い声が漏れる。

 修道女としての理性が警鐘を鳴らす一方で、

 長らく男の手に触れられなかった肉体が歓喜してしまっているのだ。

 特に腹部中央──祈祷姿勢を支えるために鍛えられた斜腹筋が

 アインの指圧によって波打ち、仄かに暖かく脈打つ子宮へと快楽の電流を送り込んでいく。

 

「ほらほら、お耳の方も寂しがってるんじゃない?」

  アインが顔を近づけ、エルノアの右耳殻へと舌を這わせた。

 ぢゅるっ……と生々しい水音が響いた瞬間──

 エルノアの蜂蜜色の瞳孔がカッ! と見開かれた。

 

「いっ……あぁっ……!!」

  反射的な快感が脊髄を駆け抜け、全身の力が抜け落ちていく。

 右耳殻──それこそが彼女の抱える決定的な弱点であったのだ。

 耳の中へと侵入する濡れた肉塊の感触に、理性が陶然と溶解し始める。

 羞恥よりも未知の愉悦に怯える修道女の顔は、

 慈母の静謐から一転して堕落した牝の表情へと歪んでいった。

 

「ふふっ……やっぱりね。敬虔なシスターさんの耳の中って、

 とっても敏感に出来ているみたい♡」

  耳元で囁かれる悪魔の福音に脳髄を震わせられながら、

 エルノアは為す術もなく蔦の侵蝕を受け入れていく。

 アインの子宮にて肥大化した《アスタロッテ》から伸びた主蔓が、

 エルノアの秘所へとゆっくりと押し入ってきたのだ。

 

「いやぁ……! お願い……入ってこないで……! お腹が……壊れちゃうぅっ!!」

  悲鳴とも嬌声ともつかない曇り笛のような嗚咽が漏れる。

 それは祈りで培った柔和な声帯が喜悅に震える時だけ現れる、

 聴く者の良心と劣情をごちゃ混ぜにしてしまう破壊力ある音色だった。

 内壁を掻き回される異物感と、生命力を啜り取られる喪失感。

 そしてそれとは正反対に子宫底から湧き上がる劇薬的な快楽。

 三つの感覚が混然一体となってエルノアを飲み込んでいく。

 

「あぁん♡ 凄いわ……あなたの中から溢れる命の味……

 これよこれ! 私が求めていたのはっ!」

  アイン自身もまた恍惚に身を委ねていた。

 枯餓百合《カラミティ》が標的の生命力を霊子レベルで吸収し、

 肥大花として開花させていく。それは戦闘であると同時に交尾でもあった。

 互いの子宮が共鳴し合い、吸い合うような背徳的な結合。

 

  エルノアは最早、かつて戦乱で幾百もの兵を蘇生させた

 聖女の面影などどこにもなかった。

 汗で張り付いた白衣から透け上がる背中の汗線が白く浮き上がり、

 異様な官能を醸し出している。蔦によって両脚を大きく開かされ、

 自ら腰を揺らめかせながら侵略者を受け入れている姿は、

 まさに淫蕩なる苗床そのものだった。

 

「あっ……あぐっ……しゅごい……なにか……くるぅ……!!」

  限界だった。脳内で白い閃光が弾け、

 全身の神経が焼き切れるような絶頂が襲う。

 潮吹きと呼ぶにはあまりにも大量の愛液が結合部から迸り、

 乾いた砂礫を淫らに濡らしていった。

 

  同時に《枯餓百合》が最終段階に入り、

 エルノアの胴体全体に茨模様が浮かび上がる。

 それは生命エネルギーを根こそぎ吸い上げられる死の兆しでありながら、

 同時に究極の快楽麻薬でもあった。

 

「イッ……イっちゃうぅっ……! おぉっ……!!」

  絶叫と共にエルノアの背が大きく仰け反る。

 子宮口まで深々と突き刺さった《アスタロッテ》の蔓が脈動し、

 濃厚な白濁液を注ぎ込んでいるかのような錯覚に陥る。

 実際には血と魔力の抽出だが、感覚的には

 まさしく内側から犯し尽くされているも同然だった。

 

  「あ~幸せ♪ あなたの胎内って本当に素敵だったわ」

  アインは満足げに立ち上がる。

 脱力しきったエルノアの身体からは既に生気がほとんど消えていた。

 だが奇妙なことに……その瞳にはまだ微かな光が宿っている。

 搾取され尽くしたはずなのに尚、助けを求めずに戦友の安否を案じる献身。

 それこそがアインの興奮をさらに煽る材料となった。

 

「うふふ……まだ抗うつもり? 可愛いなぁ♡」

  アインは再度《アスタロッテ》に魔力を充填し始めた。

 何度も何度も犯し尽くす楽しみはこれからだと言わんばかりに。

  戦場の夕暮れには黒紅の茨と月明かりだけが揺れていた。

 修道女の濡れた声が哀しく響く……

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

  灼熱の砂漠に巨大な影が落ちた。いや、影などという生易しい遮断ではない。

 光を呑み込み、熱すらも押し潰すかのような絶対的な「質量」が其処に在った。

 それはアークトゥルスという名の災厄そのものであった。彼は何も持っていなかった。

 武器も軍勢も、ましてや慈悲すらも携えてはいない。ただ其処に立ち尽くし、

 額から顎へと走る古い焼痕を勲章のごとく晒しながら、

 虚ろな金色の瞳孔で不毛の大地を見下ろしている。

 常時零れ落ちる湿った唾液が乾いた砂を黒く染め上げていくその姿は、

 知性なるものの成れの果てであるかのように酷く無機質であった。

 

  そして彼は動いた。

 棍棒を構えるでもなく、咆哮を上げるでもない。

 ただ右手を掲げ、握りしめていた拳をゆっくりと開いたのだ。

 その動作は余りにも緩慢でありながら、

 何か神聖なる儀式のごとき不可避な重圧を孕んでいた。

 

  其処から溢れ出したのは、数万、数十万という「種子」。

 黄金の光でも、凶々しい炎でもない。指の隙間から零れ落ちたのは、

 ただひたすらに粘つく生命力そのもののような黒褐色の粒であった。

 それはまるで降雨のごとく、あるいは散華のごとく空を覆い尽くし、

 大地へと降り注いでいく。

 

  乾いた砂礫に種子が落ちた瞬間、地面が痙攣したかのように隆起した。

 否、隆起などという地学的な現象ではない。それはまるで肥沃な子宮内で受精卵が着床し、

 暴走的に細胞分裂を始めるかのような醜怪な胎動であった。

 大地が裂け、地中から湧き出すようにして無数の蔦が蠢き出す。

 その蔦は植物でありながら血管のように脈打ち、

 肉のような湿り気を帯びて互いに絡み合い、絡み合い、

 幾何学的な模様を描きながら急速に体躯を構築していく。

 

  それは一瞬にして人型を成し、灰褐色の肌を持つ兵士たちが次々と立ち上がっていく。

 

  木人兵である。

 

  鎧も衣服もまとわぬ剥き出しの肢体は筋繊維一本ずつが蠢く「歩く森」であり、

 その表面は滑らかでありながらも植物的な凹凸が残る異形のものであった。

 虚ろな翡翠色の瞳だけが虚空を見つめている。彼らは魂を持たない。

 苦悶も恐怖も悦びも知らぬただの器。

 アダム=1の能力によって生成された命なき量産兵。

 戦闘技能と敵味方識別能力だけを焼き付けられ、

 胚の状態から一気に開花させられた消耗品たち。彼らは無言のまま、

 ただ殺戮という目的のためだけに群生し始めていた。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「撃て! 撃ちまくれぇっ! 肉の芽を摘み取れぇッ!」

 

 国防軍指揮官の絶叫が砂塵に溶ける。

 周辺諸国が次々と内戦とクーデターの渦に飲み込まれ崩壊していく中、

 孤島のごとく耐え抜いた彼らは、

 難民と共に流入した有象無象の戦力を貪るように吸収・再編していた。

 旧式の主力戦車、ロータリー式機関砲を搭載した武装ヘリ、

 そして砂漠迷彩の施された歩兵戦闘車。それらが寄せ集められ、

 一時的とはいえ王国本来の国力を遥かに凌駕する鋼鉄の暴力として戦線に展開している。

 

 だが、その鋼鉄の城壁は今、泥濘のごとき肉と木の波に飲み込まれようとしていた。

 

 ズズズズズ……! 

 

 大地そのものが蠢くような不快な振動。

 防壁の向こう側、地平線まで埋め尽くす灰褐色の濁流。

 それは解放軍が誇る魔人アークトゥルスが撒いた種子から芽吹いた、

 数十万の木人兵たちであった。鎧も衣服も纏わぬ剥き出しの肢体、

 筋繊維が一本一本浮き出た灰褐色の肌、そして虚ろな翡翠色の瞳。

 彼らは魂を持たぬ「歩く森」であり、

 ただ敵影を識別し殺戮するためだけにこの世に顕現した枯れ葉剤の悪夢であった。

 

 ドォォォォォォン!! 

 

 戦車砲が火を噴き、榴弾が木人兵の密集地帯に着弾する。

 爆風が木っ端を吹き飛ばし、灼熱の衝撃波が彼らを粉砕する。

 一瞬、空白地帯が生まれる。だが、それはあまりにも儚い勝利であった。

 砕けたはずの木人兵の断片──千切れた腕、砕けた胴体──が地面に落ちた瞬間、

 ボキリボキリと不気味な音を立てて再生を開始するのだ。

 傷口から緑色の樹液が噴き出し、新たな枝を生やし、

 あるいは隣り合う死体同士が融合し、より醜悪な異形へと再構築されていく。

 

「化け物だ……あいつら、死なねぇぞ!」

「弾切れだ! 予備弾薬がない!」

 

 絶望が伝染するより早く、木人兵による殺戮劇が始まった。

 前線に出ていた歩兵たちが悲鳴を上げて後退しようとしたその時。

 ヒュンッ! という鋭い風切り音と共に、先頭の木人兵がその腕を振るった。

 掌から生えた先端の尖った鋭い枝が、

 鞭のようにしなり逃げ遅れた兵士の背中に突き刺さる。

 

「あぐっ……!?」

 

 男が声を上げる間もなく、枝はその血肉を啜って一気に枝分かれし始めた。

 血管の中を根が這い回るような異様な感覚と、

 内臓を食い破られる激痛が走り抜け、

 次の瞬間には男の口から背中にかけて幾つもの芽が吹き出した。

 鮮血を養分として急成長した若葉が風に揺れる光景は、

 冒涜的な庭園の完成であった。

 これが木人兵の唯一にして最凶の手段、「挿し木」。

 被害者は即座に苗床と化し、

 新たな木人兵を産み落とす子宮へと堕とされるのだ。

 

「ひぃぃっ! たす……ぐはっ……!」

 

 隊列が崩壊し、パニックが伝播する。

 近代兵器の数など無意味であった。

 戦車に取り付いた木人兵は装甲の隙間から枝をねじ込み、

 乗員を生きたまま串刺しにして肥料とする。戦闘ヘリが墜落すれば、

 その残骸すらも侵食し、新たな温床へと変貌させる。

  「うわぁぁぁぁっ!?」

「化物だ! 化物が来るぞぉっ!」

  パニックが伝染する。

 防壁上の守備兵たちが次々と枝を投げつけられ、ある者は即座に串刺しにされ、

 ある者は体内から食い破られながら倒れていく。解放軍は数で劣勢になることがない。

 なぜなら敵兵の死体こそが新たな苗床となり、そこから更なる木人兵が芽吹くからだ。

 侵略実験。

 アークトゥルスという怪物は、ただ遠くの砂丘に腰を下ろし、

 その光景を虚ろな金色の瞳で見つめているだけだ。

 口から垂れる涎を拭おうともせず、ただ淡々と「結果」を観測している。

 文字通りの全滅でも、砂漠の緑化でも、彼にとっては等価値ですらなかった。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 弾薬庫の残弾計が赤色ランプを点滅させ、

 最後の籠城戦を見限るかのように砂に埋もれていく。

 近代兵器の雄叫びはとうに途絶え、代わりに響くのは剣戟と肉が裂ける湿った音のみ。

 百万を超える灰褐色の濁流に対し、

 防衛軍が誇るべき銃火は枯れ果てた。

 残されたは魔導騎士たち──

 己の魂を燃料にして奇跡を顕現させる、血肉の自動人形たちのみである。

 

  「はぁ……はぁっ……! まだ……まだ来るッ!」

 

  一人の女性騎士が血走った目で前方を睨み据える。

 銀糸のごとき長髪は泥と返り血で粘つき、

 白銀の胸甲は敵の樹液で黄変している。

 彼女の固有霊装が唸りを上げ、木人兵の群れを薙ぎ払うが、

 倒れた隙間から即座に新たな波が押し寄せてくる。

 徒労。徒労の連続であった。

 肉体は酷使により限界を超え、魔力回路は焼き切れる寸前だというのに、

 休む暇すら与えられない。

 

  だが、その絶望の淵において、更なる奈落が口を開けた。

 木人兵の群れの中に、明らかな「異質」が混じり始めたのだ。

 通常の個体はただ無機質に殺戮と「挿し木」を行うだけだが、

 その異質個体ははどこか様子が違っていた。

 

 それが今や、明らかに「何か」を目当てに動いている。その何かとは──女性である。

 胴体中央が異様に膨らみ、

 股間部分には植物の蕾でありながらも男根のごとき形状をした器官が肥大化している。

 アダム=1の生成プロセスにおけるエラ──―

 増殖ではなく「繁殖」へと性質が変異した突然変異体であった。

 

  「な……何なの、あいつ……!?」

 

  女性騎士が戦慄する間もなく、変異体が跳躍した。

 先端から粘液を滴らせた生殖器官が、

 まるで誘導ミサイルのごとく彼女の股間へと狙い澄まされる。

 

  「いやぁっ! 触るなッ!」

 

  反射的に身を翻すが、疲労困憊の肉体は意志に追いつかない。

 太腿の装甲を粘ついた蔦に捕らえられ、

 無理やり両脚を左右へとこじ開けられた。

 ズズズ……と粘液を擦る音と共に、

 蕾型の生殖器が彼女の秘所へと押し当てられる。

 

  「あぐっ……! 冷たい……なにか……入ってくるぅっ!」

 

  鎧の隙間から浸入する異物感。

 それは鉄のごとき硬さではなく、

 触手のごとき柔軟さと植物特有の生命力を併せ持っていた。

 濡れた花弁が膣壁を一枚一枚丁寧に撫で回し、

 子宮口という聖域へと舌先のごとくねじ込んでいく。

 

  「嘘……やめて……お腹の中に……変なものが……ッ♡」

 

  拒絶の言葉とは裏腹に、腰がビクンと跳ねた。

 恐怖と嫌悪の支配下にあるはずの肉体が、

 久しく触れられていなかった快楽のスイッチを強制的に入れられてしまったのだ。

 粘液は天然の潤滑剤として機能し、同時に強力な催淫剤としても作用する。

 粘膜から吸収された樹液成分が血管を駆け巡り、

 理性の防壁を内側から溶かし始めていく。

 

  変異体は無言のままピストン運動を開始した。

 ただ種を植え付けるための機械的作業でありながらも、

 その動きは妙に執拗であった。

 子宮の最も敏感な一点を見つけ出しては執拗に擦り上げ、

 女性騎士を絶頂へと追い込んでいく。

 

  「ああっ♡ ダメっ……そんなところ……擦らないでぇ……! 

 おかしくなっちゃうぅっ!」

 

  声にならない嬌声が喉から溢れ出す。

 屈辱に頬を染め、涙を流しながらも、

 腰は無意識に異物を受け入れる角度を模索し始めていた。

 鎧の下で豊かな乳房が激しく揺さぶられ、

 硬く尖った乳首が内側から擦り切れるような刺激を訴える。

 

  やがて変異体が深々と達した瞬間、

 子宮口へと熱い粘液が注ぎ込まれた。

 それは精液に酷似した濃厚な白濁であり、

 同時に新たな種子でもあった。

 

  「あぁぁぁっ♡♡ 熱い……なにか来る……お腹に……お腹に注がれるぅぅっ!!」

 

  女性騎士は白目を剥き、全身を痙攣させて絶頂した。

 子宮内で弾けた種子は即座に根を張り始める。

 だがそれは「挿し木」と違い宿主を殺すことはない。

 むしろ養分を提供し、宿主との共生関係を結ぶかのように

 胎内で温まりながら成長していくのだ。

 

  それは冒涜的な受胎であった。

 戦場という殺戮の場においてのみ成立する、

 死と隣り合わせの淫らな生殖行為。

 次々と女性騎士たちが変異体に組み伏せられ、

 悲鳴と喘ぎを重ね合わせていく。

 

  「いやぁ……お腹が……膨らんでいくぅ……♡」

「お願い……もっと……もっと奥まで……種をつけてぇっ♡」

 

  理性の崩壊した騎士たちは自ら腰を振り始め、

 繁殖行為への本能的悦びを叫ぶ。

 戦場は死体の山から胎内に新たな命を宿した女たちの産声へと様相を変えていく。

 

  遠く離れた砂丘の上で、アークトゥルスはただ呆然とその光景を見下ろしていた。

 口から垂れる涎が一層酷くなっている。

 彼は理解できないのだ。

 なぜ敵が死なないのか。

 なぜ敵と交わっているのか。

 ただ一つ言えることは、自分の周りから

「悲鳴」という心地よい音が消えつつあるということだけ。

 

  世界は静かに、しかし確実に「苗床」へと染め替えられていた。

 

 彼は顎の焼痕を指の背で無造作に撫でながら、

 盟主より与えられた実験結果についての考察をまとめていた。

 

 結論は出た。失敗だ。

 

 木人兵という兵器は、その運用において厳密な歯止めが必要である。

 あれは「数」で解決できる類の代物ではない。一度臨界点を超えれば、

 彼らは殺戮マシーンではなく、ただの欲望の塊へと成り下がる。

 繁殖個体は今や膨大な数となり、統制など及ばぬ有様だ。

 今後は補助的に、しかも数千単位での運用に絞るべきだろう。

 それ以上はジャンクを量産するに過ぎない。

 

 アークトゥルスは冷淡な眼差しで、その「ジャンク」の成れの果てを観察した。

 

  オンナどころか犬やウシのメスにまで食指が伸びているのだ。

  繁殖本能という名の狂気が種族の壁を容易く侵食し、

 灰褐色の濁流はあらゆる「メス」という記号を持つ存在へと殺到していた。

 理性なき交配の衝動は、獣すらもその淫らな実験台として組み込んでいく。

  砂漠を彷徨っていた野良犬が灰褐色の塊に押し潰され、甲高い悲鳴を上げている。

 灼熱の太陽と極端な寒暖差で鍛え上げられた痩せぎすの躯は逞しかったが、

 木人兵の無機質かつ執拗な重量には敵わない。

 四つん這いの姿勢で背後から覆いかぶさらられ、

 その短い四肢が空中を無秩序に掻く様は滑稽ですらある。

 だがその滑稽さは、見る者に笑いではなく慄然たる背徳感を与えるものだった。

 木人兵の生殖器官は宿主に合わせて交尾の形態を変態的に模倣し、

 犬の粘膜にねっとりと張り付いて離れない。

 冷たい樹液と熱い内臓の摩擦が生み出す異様な水音が砂漠に響き渡り、

 子宮へと直接注ぎ込まれる異物の感触に、

 野良犬は本能的な恐怖と快楽の狭間でプルプルと震え続けている。

  家畜として飼われていた牛などは、その巨大な体躯を逆に利用され、

 木人兵にとっては格好の「苗床」として消費されていた。

 豊かな乳房を持つ牝牛は、その柔らかな乳袋を複数の蔓手で鷲掴みにされながら、

 後ろから太い根茎のような生殖器をねじ込まれている。

 モォォンと低く鳴くその声は苦痛か快楽か判然とせず、ただただ無様であった。

 涎を垂らし、虚ろな目でピストン運動を続ける木人兵と、

 抵抗を諦めただらりと舌を出す牝牛。そこに流れる時間は残酷なほどに緩やかで、

 ただ肉と木が交わる湿った音だけが堆積していく。

 繁殖個体たちの欲望は底なしで、彼女らの胎内に新たな森を芽吹かせるまで

 その冒涜的な交尾が終わることはないのだ。

 

 

  更には男すら襲う始末である。

 兵士たちは誇り高き戦士であるはずだった。

 祖国防衛という大義名分を胸に抱き、死地を恐れぬ不撓の精神を持つ勇者たち。

 だが今や、その砂上の楼閣のごときプライドは泥濘に沈み、無様に濁っていく。

 一人の若き槍兵が灼熱の砂に顔を押し付けられ、

 四つん這いで地面に這いつくばっている。無防備に晒された尻を高く突き出すという、

 まるで発情した牝犬が交尾を請うような無様な体勢で背後から貪られていた。

 灰褐色の太い根茎がその窄まりを容赦なくこじ開け、

 腸壁を無理やり押し広げながら最奥へと侵入していく。

 乾いた粘膜が裂ける鋭い痛みと、内臓を直接撫で回されるような不快な異物感。

 それが徐々に、木人兵から分泌される催淫性の樹液によって

 痺れるような甘い熱へと変換されていくのだ。

 

「うああっ! やめろっ……俺は男だぞ……こんなこと……やめてぇぇっ!」

 

 彼は涙と鼻水で顔を汚し、屈辱と快楽がスパークする絶叫を上げる。

 だが、木人兵の根茎は慈悲のかけらも持たない。

 むしろその抵抗を燃料にするかのように、腸の深淵に潜む一粒の脆い肉芽──

 前立腺を的確に狙い撃ち始めたのだ。

 ズリュッ……ヌルッ……と粘着質な水音を立てて、

 生殖器の先端がその敏感な急所を執拗に擦り上げる。

 

「あぐっ……! そこ……ぁっ……ダメだ……! 

 力が入らない……変な声が出る……っ!」

 

 全身を駆け抜ける背徳的な電流に脳髄が焼かれ、瞳孔が開いていく。

 本人の意思とは裏腹に肉棒は痛いほどに硬く勃起し、

 腹に押し付けられるようにして震えている。

 尿道口からはもう我慢できないとばかりに透明な先走り汁が溢れ出し、

 やがてビクビクと脈打ちながら大量の白濁液を地面へと垂れ流していく。

 自らの足元を汚すその精液こそが、

 彼が「男」としてではなく「メス」として果てたことの何よりの証明であった。

 男のプライドなど木っ端微塵だ。

 彼らもまた、メスとして扱われることで脆くも崩れ去る生き物なのである。

 

 

  そして極めつけは、ナニをトチ狂ったのか、

 戦車等の無機質な殺戮兵器にまで種付けを行う個体まで現れたことである。

 砂漠の熱気に晒されて灼熱の鉄塊と化した主力戦車は、

 軍が誇る最後にして最大の盾であり、文明と理性の象徴であった。

 だが今や、その冷徹な鋼鉄の処女膜は木人兵の執拗な求愛によって無惨にも破られ、

 冒涜的な受胎の儀式が進行していた。主砲という硬直した鉄の男根からは

 鮮やかな極彩色の花が咲き誇り、戦場という不毛の地に皮肉な祝杯を上げるかのように

 甘い蜜を垂れ流している。履帯の隙間からは鬱蒼とした蔦が内臓のごとく溢れ出し、

 

 砂礫をその湿った根で締め上げながら車体を侵食していく。

 

 ハッチの隙間から強引にねじ込まれた根茎は、

 狭所に閉じ込められた搭乗員たちを逃すまいと絡みつき、

 彼らの肉と血を貪りながら内部構造そのものを苗床へと書き換えていく。

 装甲板の継ぎ目からは、黒い重油と赤い鲜血、そして緑色の樹液が混ざり合った

 粘着質な体液が泡立ちながら漏れ出し、砂漠の乾いた大地に染みを作っていく。

 金属の軋む嫌な音と、肉が裂け骨が砕ける湿った音が不協和音を奏でる中、

 やがて戦車は形を崩しながらも奇妙な生命活動を開始した。

 鉄と肉と木が融合したキメラ。

 

 それは油と樹液を滴らせながら、生き物のような不気味な駆動音と共に動き出す。

 ギギッ……と錆びついた関節が鳴るたびに、

 

 かつて人間だった肉片が挟まって悲鳴のような音を立てた。

 

  濃紅の重油と黄変した樹液の混濁した体液をどろりと滴らせながら、

 かつて主力戦車と呼ばれた鋼鉄の巨獣は、その砲塔をゆっくりと、

 あまりにもゆっくりと回転させ、標的を見定める。

 軸受けの回転音は既に金属の乾いたそれではなく、

 軋む骨盤と濡れた粘膜が摩擦し合う淫靡な水音へと変貌していた。

 照準装置の代わりに埋め込まれた充血した単眼は、赤外線で敵影を探すのではなく、

 ただ鼻先で雌の発情フェロモンを嗅ぎつける発情期の猛獣のごとく、

 獲物の泌み出る蜜の匂いを追って彷徨っている。

 そこから放たれたのは徹甲弾でも榴弾でもない。火薬の炸裂音に代わって、

 妊娠腹の如く膨らんだ装甲板が波打ち、産道のごとき砲身の奥から揉み出されたのは、

 濃厚で生々しい生命の塊であった。ずぶ濡れの鉄の萼が花弁のごとく卑猥に開き、

 その奥底から燃えるような深紅の雄蕊が震えながら挿し木を放つ。

 蒸気とともに噴き出した白濁した粘液を纏った先端の鋭い枝は、

 矢継ぎ早に空中へと飛び出し、放物線を描いて乾いた大地へと着弾した。

 砂に触れた瞬間、ジュワッと甘い香りのする白煙を上げながら根を張り、

 繁殖型変異体が臓腑の蠕動のような醜怪な脈動と共に大量に生成されていく。

 それは単なる物理的な破壊力に代わる新たな汚染を撒き散らす侵略の精液であり、

 鋼鉄の硬直と植物の柔軟という相反する二つの生殖衝動が交配して生まれた冒涜的な種子。

 抗う術を持たぬこの砂漠全体を一つの巨大な胎内へと堕とすための、

 絶望的な受精宣告であった。

 

「……バカめ」

 

  アークトゥルスは短く吐き捨てた。

 その声には軽蔑よりも、深い徒労感が滲んでいた。

 

  兵器として完成されていたはずの木人兵は、

 繁殖というバグによって完全に狂ってしまっている。

 彼らが求めているのは殺戮という名の究極のコミュニケーションではなく、

 ただただ湿った穴に欲望を吐き出すだけの自慰行為に過ぎない。

 女を孕ませるだけならまだいい、それは生産活動として許容範囲内だ。

 だがどうだ。犬を犯し、男を嬲り、

 あろうことか鉄屑にまで精を注ぐなど、正気の沙汰ではない。

 それはもう戦争ではなく、ただの性欲処理機械のパレードだ。

 理性の堤防が決壊し、本能という名の濁流がすべてを飲み込んでいる。

 痛みも悲鳴もなく、ただ快楽という安っぽい麻薬に溺れるだけの交尾など、

 アークトゥルスにとっては唾棄すべき無意味だった。

 

  彼は静かに踵を返した。

 これ以上ここに留まる理由はない。

 背後ではまだ、肉と鉄と木が交わる湿った水音が

 砂漠の夜風に乗って漂ってくる。

 だが彼の金色の瞳には、もうその光景は映らない。

 彼が見たいのは、骨が砕け肉が裂ける悲鳴であり、

 生命の灯火が消える瞬間の輝きだ。

 こんな泥沼のような生殖活動に興味はない。

 

  盟主への報告事項は決まった。

 木人兵は補助兵科へ格下げ。

 運用規模は数千単位へ縮小。

 それが最も効率的な運用法だ。

 これ以上数を増やせば、戦場は殺戮の場ではなく、

 ただの巨大な便所と化してしまう。

  背後で響く嬌声と機械の悲鳴が入り混じる不協和音。

 それは彼が渇望した骨と肉が奏でる荘厳なるレクイエムなどではなく、

 ただただ湿った粘液がぶつかり合うだけの無様なポルカだった。

 アークトゥルスにとって、それは失敗作の挽歌に過ぎない。

 いや、挽歌と呼ぶにはあまりにも下品で、耳を塞ぎたくなるような排泄物の合唱だった。

 彼が好むのは、魂が肉体という器を引き裂いて飛び出す瞬間のあの歓喜の悲鳴だ。

 脳髄が震え、神経が焼き切れ、生命の灯火が散華するあの至高の一瞬。

 だが今、砂漠に満ちているのは快楽という安っぽい麻薬に溺れ、

 ただ子宮と腸壁を痙攣させるだけの獣の喘ぎだ。

 砂漠の熱風が彼の逆立った髪を揺らす。その風は灼熱の砂の匂いだけでなく、

 鉄錆と樹液と体液が煮えくり返ったような鼻をつく悪臭を運んでくる。

 それは死の国の香りではなく、ただ卑猥に肥大化した生命の腐臭だった。

 彼の金色の瞳には一片の慈悲も後悔もなく、

 ただ冷徹な戦略眼だけが宿っていた。この冒涜的な光景を分析し、

 切り捨てるための冷たい刃だけが。彼は知っていた。

 欲望とは恐ろしいと。だがそれはもっと研ぎ澄まされた、

 破壊という名の純粋な結晶であるべきだった。

 この実験によって一つだけ収穫があるとすれば、

 それは「欲望には限度があると思っていたのが甘かった」

 という当然すぎる事実の再確認だけであった。理性という箍が外れたとき、

 生物は破壊神になれるかもしれないが、

 大半はただの尻軽な発情期の猿に成り下がるだけだという薄汚い真実を、

 彼は砂に埋もれた肉塊たちから学んだのである。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 砂礫の冷たさだけが、彼女に現実を繋ぎ止める唯一の命綱であった。

 アイン・アップグルントという名の淫らな嵐が去り残されたのは、

 聖女の仮面を剥ぎ取られ、ただの雌として砂に伏す醜態であった。

 ハトシェプスト・エルノアは膝を抱え、剥き出しになった豊かな肢体を

 隠そうと縮こまっているが、その姿はあまりにも無防備であり、

 却って男たちの──否、今やこの戦場に満ちるあらゆる欲望の視線を

 惹きつけてやまない冒涜的な光景であった。

 

  引き裂かれた修道服はもはや布切れ同然。

 汗と樹液に塗れた薄絹は肌に張り付き、下着の役割すら果たしていない。

 露わとなった小麦色の背中は、

 ランプの名残である橙の光を受けて艶やかに発光しているかのようだった。

 背骨に沿って走る汗の雫が小川を作り、

 その流れが臀部の谷間へと吸い込まれていく様は、

 まさしく大地が雨露を啜るかのように神々しくも淫靡であった。

 

「うぅ……ぁぁ……」

 

  喉から漏れるのは祈りの言葉ではなく、獣のような嗚咽のみ。

 彼女は震える指先で自らの肩を抱きしめるが、

 その指は熱に浮かされたように自身の肌をまさぐり、

 無意識に先ほどの陵辱の余韻を追い求めてしまっている。

 羞恥心が理性を焼き尽くし、肉体の記憶が魂を侵食していく。

 

  特に視線を釘付けにするのは、

 重力に抗えず形を変えた二つの豊饒なる果実であった。

 Gカップと呼ぶにはあまりにも熟れすぎたその乳房は、

 腕に押し潰されることで更なる肉感を主張し、

 圧死寸前の白パンのように横へと溢れ出している。

 濃い小麦肌の谷間にはアインの指が辿った跡が赤く残り、

 まるで所有印のごとく生々しく浮かび上がっていた。

 乳輪は柘榴色に充血し、

 陵辱の恐怖と快楽によって硬く挺立した乳首が

 夜風に晒されてビクンビクンと戦慄いている。

 それは神への奉仕によって培われた母乳の源であるはずなのに、

 今はただ淫らな視姦を受け入れるための卑猥な装飾へと成り下がっていた。

 

  そして腹部。

 祈祷姿勢を支えるために鍛えられた斜腹筋は、

 絶頂の痙攣によって未だ波打ち続けている。

 そこへアインの《枯餓百合》が植え付けた茨の模様が

 青黒い刺青のごとく浮かび上がり、

 彼女が魔女の苗床として穢されたことの証を押印している。

 臍の窪みには樹液と汗が混じった粘液が溜まり、

 呼吸に合わせて泡立ちながら淫らに揺らめいていた。

 指で辿れば仄かに暖かく脈打つその下腹部には、

 子宮がまだ疼いているのか、

 時折引き攣るような甘い痺れが走っていることだろう。

 

「汚れて……しまった……わたしは……汚れて……」

 

  彼女は自身の肉体を見下ろし、絶望する。

 だがその絶望こそが、最も強力な媚薬となることを彼女は知らない。

 母性そのものの充足した臀部は、砂礫の上に押し付けられ、

 餅のように潰れながらもその肉厚さを失っていない。

 歩調ごとに揺れていたその弾力は、今や無抵抗な肉塊として

 誰の手にも揉みしだかれることを待っているかのようだ。

 太腿の内側には処女喪失のごとき血の跡はなく、

 あるのはただ愛液と樹液が混ざり合った濃厚な蜜の痕のみ。

 それが彼女が自ら足を開き、腰を振って悦んだことの動かぬ証拠として、

 砂漠の乾燥した空気の中で生々しく光っている。

 

  右耳殻。

 そこには未だアインの唾液が乾ききらずに濡れており、

 風が吹くたびに痺れるような快感が脳髄へと走り抜けるのだろう。

 彼女は時折ビクリと身を震わせ、

 無意識にその場所へ手を伸ばしては、

 触れることすら恐れるかのように指を引っ込める。

 その仕草は小動物のごとく無垢でありながら、

 見る者に加虐心と支配欲を掻き立てる破壊力を持っていた。

 

  このどうしようもない背徳感こそが、

 戦場という極限状態においてのみ咲き誇る華なのである。

 慈母の静謐と百合の蕾のような可憐さを併せ持っていた修道女は死んだ。

 其処にいるのは、自らの肉欲に打ち勝てず堕ちた一人の牝であり、

 これから先も魔性の手によって調教され続ける運命にある

 哀れで愛すべき苗床だけである。

 

  彼女の放つ曇り笛のような嗚咽は、

 夜風に乗って遠くまで届くことだろう。

 それが敵兵の劣情を刺激し、味方の良心を蝕みながら。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 紫水晶の瞳が戦場の炎を映して妖しく煌めく。

 だがその視線が見据えているのは、燃え盛る王宮でもなければ、

 木人兵に蹂躙される哀れな女たちでもない。

 遥か彼方、決して届かぬ高みに君臨する絶対者の座である。

 

 盟主様の雌になりたい。

 

 それこそがアイン・アップグルントという女の、隠しようのない真実であった。

 歪みきった愛の形状。支配されることへの倒錯した憧憬。

 彼女はその渇望を胸に抱き続け、今日も血に濡れた舞台で舞い続けている。

 

 魔人覚醒を果たしたとはいえ、未だ序列下位にある彼女では

 盟主のお目通りすら適わないのが現実だ。

 あのお方の冷徹な眼差しを一身に浴びるためには、

 こうして泥と血の中を這いずり回り、忠誠という名の点数を稼ぐほかないのだ。

 

「ふふっ……」

 

 乾いた笑いが唇から漏れる。

 それは自嘲か、それとも甘美な妄想への陶酔か。

 

 アインは廃墟のバルコニーに腰掛け、

 戦場を見下ろしながらも脳裏には盟主の姿を鮮明に描き出していた。

 

 灰色の双眼。銀糸の髪。そして何より、

 あの圧倒的な暴力と支配の権化たる手指。

 彼女は想像する。その手が再び己の身体を掴み上げる瞬間を。

 

「ああ……盟主様……♡」

 

 想像だけで子宮が熱く疼き、甘い痺れが背骨を駆け上がる。

 彼女は無意識に太ももを擦り合わせた。

 その摩擦が更なる熱を生み、秘所からはとめどなく蜜が溢れ出していく。

 

 子宮に埋め込まれた固有霊装アスタロッテが反応し、

 花弁のように脈打つ感覚が彼女を狂わせる。

 それは物理的な刺激ではなく、

「所有される」という妄想そのものがもたらす精神的快楽であった。

 

「私を……飼ってください……♡」

 

 首輪をつけられ、地下牢へ引きずり込まれる幻影。

 冷たい床に這わされ、見下ろされる屈辱。

 言葉で嬲られ、身体で躾けられる惨めさ。

 それらすべてが彼女には至高の幸福として映るのだ。

 

 彼女は戦場の喧騒をBGMに、

 己のみだらな独り言に耳を傾ける。

 下着はすでに濡れて重く張り付き、

 その隙間からは濃厚な雌臭が漂い始めている。

 柘榴色の乳首は服の上からでもわかるほど硬く尖り、

 布地と擦れるたびに甘い電流が走る。

 

「見ていてください……私の働きを……♡」

 

 目の前で繰り広げられている惨劇などどうでもいい。

 木人兵が女を犯そうが男を嬲ろうが、

 それは彼女にとって点数稼ぎのための余興に過ぎない。

 重要なのは、この成果を持って盟主の元へ赴き、

「よくやった」というあのお言葉──いや、

 あの冷ややかな視線をいただくことだけだ。

 

 そのためならば彼女はいくらでも残虐になれるし、

 いくらでも卑屈になれる。

「悪の華」と呼ばれる所以はその歪んだ献身にあるのだ。

 

 アインは戦場の熱風を浴びながら、

 頬を紅潮させ、とろんと濡れた瞳で虚空を彷徨う。

 彼女の中ではすでに戦争は終わっている。

 征服されるべきは此のような小国などではなく、

 彼女自身の子宮なのだから。

 

更新希望の原作

  • 魔弾の王
  • 落第騎士
  • ハイスクールD×D
  • 月姫
  • モブせか
  • マジエク
  • のんびり農家
  • 新妹魔王
  • 八男
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