※この作品はR-18です。

ダークエロよろず短編集   作:カード読み込み

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騎士連盟の喘鳴

 

 

 欧州中部(ミッテルエウローパ)に降る雨は、どうにも粘ついていた。

 雲居から落ちてくる水滴の一つひとつが、女の股間から滴り落ちる愛液のように温く、

 濃厚な生臭さを孕んでいるかのようだった。

 騎士連盟の前線基地──その鉄とコンクリートで築かれた無機質な城塞は、

 鬱陶しいほどの湿気に包まれ、壁面からは絶え間なく水が滲み出しては、

 さながら脂汗をかく淫売の肌のごとく艶めいた光沢を放っていた。

 

 サガ帝国の危機は、この基地の指揮官たちにとって枕を濡らす悪夢。

 飢餓(うえ)に喘ぐあの帝国は、連盟にとり防衛の要(かなめ)にして、

 大国同盟という猛獣の欲望を受け止めるべく股を開かされた肉壁であった。

 その肉壁が今、内側から膿み崩れようとしているのだ。

 放置すれば、東欧という褥(しとね)は忽ち同盟に汚染され、

 連盟の女たちはその野蛮なる種付けに呻吟することだろう。

 故に、連盟は無視していたわけでは決してない。

 いやむしろ、死に物狂いであったのだ。

 

 血を吐く思いで戦力を絞り出し、

 痩せ細った体から無理やり乳汁を搾り取るがごとく騎士たちをかき集めた。

 常軌を逸した速度で援軍が編成され、最前線へと送り出されるはずであった。

 出立前の騎士たちの顔には、武者震いなどという潔いものではなく、

 己の肉を削いで供物とする者特有の蒼白な覚悟が浮かんでいた。

 彼らは知っているのだ。これから向かう先が、

 英雄譚などという美しい物語の舞台ではなく、

 ただただ肉と肉がぶつかり合う泥沼の屠殺場であることを。

 

 しかし、である。

 

 その切迫した血流すらも阻むかのように、

 大国同盟の手による足止めテロが火を噴いたのだ。

 

 基地の機能を麻痺させる魔導的干渉。

 通信網という神経系は焼き切れ、

 輸送路という血管には血栓のごとき障害物が次々と詰め込まれた。

 同盟のテロリストたちが放つ妨害工作は、極めて卑猗(ひわい)であった。

 彼らは正面から牙を剥くのではなく、まるで熟れきった女の弱味を指先で弄ぶように、

 執拗に、粘着的に基地の機能を責め立てた。

 魔導回路へのハッキングは脳髄を直接嬲る愛撫のごとくあり、

 輸送列車の転覆は安産型の腰骨をへし折る暴力のごとくであった。

 

「クソッ……また通信が落ちたぞ! 予備回路に切り替えろ!」

 

 指令室の将校が怒鳴る。

 その声すらも、湿った空気に吸い取られて情けなく響く。

 端末から立ち上る火花は不吉な燐光のごとく瞬き、

 オペレーターたちの顔を青白く照らし出した。

 彼らの手はキーボードの上で痙攣するように走り回るが、

 それは絶頂へと導かれずただ苛め抜かれるだけの自慰行為のように空虚。

 

 対応できない。

 

 どれほど指先を走らせようと、どれほど魔力を注ぎ込もうと、

 同盟が仕掛けたこの見えない凌辱の網からは抜け出せない。

 指揮系統は寸断され、前線へ向かうべき騎士たちは基地の中で足踏みを強いられている。

 時間だけが刻々と過ぎゆき、

 サガ帝国という肉壁が悲鳴を上げ続ける秒数だけが無慈悲に積み重なっていく。

 

 援軍として集められた騎士の一人、

 まだ若い乙女のような面差しを持つ女性が、壁を殴りつけた。

 

「何をしている! このままではサガが……メリーエスト様が……!」

 

 その言葉は、場違いなほど艶めかしい悲鳴となって響いた。

 メリーエスト・サガ。第21皇女にして国のために身を売る皇女。

 同盟の手によってどうなるかなど、想像するに難くない。

 服を剥がれ、白い肌に唾液を塗りたくられ、

 その秘所へと異質な楔(くさび)を打ち込まれる。

 それは国家そのものが受ける陵辱であり、

 連盟という男の甲斐性が問われているのだ。

 

 だが、目の前の現実は惨憺。

 端末から立ち上る煙は焦土と化した街の匂いを思い出させ、

 点滅する警告灯は堕ちてゆく女の瞳のごとく空虚に明滅するばかり。

 足止めテロという名の手によって手足を拘束された連盟は、

 今まさに犯されようとしている最愛の女を目の前にしながら、

 ただ指を咥えて見つめることしかできない不能者の群れに成り下がっていた。

 

「早く……早く繋げ……!」

 

 誰かが呻く。

 それは通信回路への願いか、それとも己の萎えた情欲への懇願か。

 湿った空気の中で、男たちの焦燥だけがムラムラと膨れ上がり、

 行き場を失って基地内を充満していく。

 嗚呼、なんという無様な前戯であろうか。

 サガ帝国という雌が遠くで断末魔を挙げているというのに、

 男たちは射精すら許されず、ただ青ざめた顔で立ち尽くしているのだ。

 

 雨はなおも降り続いている。

 粘つく水音は、まるで遠くで響く女の喘ぎのように聴こえなくもなかった。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 雨音が変わった。

 それまで窓を叩いていた無数の指先のような水音が、唐突に途絶え、

 代わりに底知れぬほど深く、黒い沈黙が基地全体を飲み込んだのである。

 

 暗幕(ブラックアウト)。

 人工の闇が、天から滲み出すように降り注いできた。

 それは単なる光の消失などではない。

 物理法則そのものを強引にねじ伏せ、

 世界の表側を裏返しにするかのような、濃密な魔術の吐息であった。

 視界が奪われる。聴覚さえも欺瞞される。

 己の手足がそこにあるのかさえ怪しくなるほどの絶対的な闇。

 それはあたかも、巨大な獣の子宮(なか)に飲み込まれたかの如き閉塞感であった。

 

 そして、その闇の中から彼らが生まれいでた。

 

 ぐちゅり。

 

 粘着質な水音と共に、影が鼓脹し、形を持つ。

 青白い燐光を眼窩に灯した漆黒の猟犬たち。

 大国同盟が誇る暗殺者、ウォルターの固有霊装『ケイニス・リュカオン』。

 影そのものより紡ぎ出されたそれらは、

 飢えた雄の欲望を具現化したかのような無数の剛毛に覆われていた。

 

 一斉に牙を剥く。

 

「ひぃっ……! 何だ、何だこれぇッ!?」

 

 闇の中で男が叫ぶ間もなく、猟犬の牙が食料庫の扉を食い破った。

 サガ帝国へ送られるはずだった保存食や医薬品の木箱が、

 まるで熟れた果実のように無惨に弾け飛ぶ。

 コンビーフの缶詰が転がり、消毒液の瓶が砕け散り、

 その異臭が鼻腔を突くよりも早く、犬たちはその物資という名の「肉」に群がった。

 貪られる。啜られる。

 人々の命綱が、飢えた獣たちの胃袋へと収まっていく。

 それは略奪であり、同時に犯されたも同然の屈辱であった。

 我々が守ろうとしたものが、我々の目の前で他者の精として注がれていく。

 なんという冒涜。なんという背徳。

 

 次に標的となったのは、兵器庫であった。

 弾薬箱に噛みつき、銃身に爪を立てる。

 火薬が爆ぜる轟音は、女が最初に貫かれたときに上げる悲鳴のように響き渡った。

 鉄の塊である銃器が、まるで腐った肉のようにバラバラに引き裂かれていく様は、

 物理的な強度などというものがいかに脆いかを痛烈に嘲笑っているかのようだ。

 牙は物質のみならず概念さえも断つと聞く。

 なるほど、この惨状を見れば納得せざるを得ない。

 彼らはただ破壊しているのではない。

「防衛」という我々の意思そのものを噛み砕き、

「抵抗」という尊厳を根こそぎ去勢しようとしているのだ。

 

 だが、それ以上に地獄絵図であったのは、

 人材──すなわち騎士たちに対する暴虐であった。

 

「あぁっ…… やめっ…… 来ないでッ……!」

 

 闇の中で響く乙女の悲鳴。

 若き女性騎士の一人が、影より伸びた無数の手のような前足に組み伏せられていた。

 制服の布地など紙切れ同然に引き裂かれ、

 白魚のような肌が闇の中に露わになる。

 犬たちは彼女を食い殺すのではない。

 もっと残酷で、粘着質な方法で「喰ら」っていたのだ。

 

 熱い吐息が首筋にかかる。

 ざらついた舌が無防備な肌を舐め上げる。

 太い前足が内腿をこじ開け、その秘所へと冷たい鼻面を押し込む。

 

「いやぁッ! そこはっ……! ひぐぅッ!!」

 

 抗拒する暇さえ与えない。

 増殖する猟犬たちは、まるで一つの生き物のように連動し、

 彼女の四肢を固定し、身動き取れぬ姿勢を強要する。

 一匹が乳房を揉みしだけば、別の一匹が耳元で甘噛みし、

 また別の一匹がその最も恥ずべき箇所へ舌を侵入させる。

 四方八方からの愛撫。逃げ場なしの快感責め。

 それは陵辱でありながら、熟練した男による手練手管のようにねっとりと、

 執拗に彼女の性感帯を攻め立てていた。

 

「あぁんっ…… ダメぇ…… おかしくなっちゃうぅ……!」

 

 理性的な抵抗は忽ち霧散し、代わりに甘い嬌声が漏れ始める。

 彼女は気づいていないだろう。

 己が今、物理的な暴力によって殺されるのではなく、

 快楽という名の毒牙によって魂ごと喰らい尽くされようとしていることを。

 ウォルターという男の性癖──増殖する猟犬による全身同時愛撫──それが今、

 戦場という公の場において、最大限の残虐性を持って行使されているのだ。

 

 あちこちで同じことが起きていた。

 男も女も関係ない。ただ若く瑞々しい生命力を持つ者ほど、

 その犬たちの餌食となりやすかった。

 鋼糸のようにしなやかな肢体が痙攣し、

 気丈な騎士の仮面が快楽に歪められ、

 ただの喘ぐ雌へと堕とされていく惨状が無数に繰り広げられる。

 

「はっ、はぁっ! 良い眺めだねぇ……」

 

 闇の奥から聞こえる男の声。

 ウォルターだろうか。

 その声には明確な嗜虐の歓喜と共に、

 どこか他人事のような冷ややかさが混じっていた。

 

 食料も薬も武器も女も。すべて奪う。

 サガ帝国を救うための生贄として差し出した我々が、

 今度は大国同盟という巨大な狼の餌として食卓に並べられているのだ。

 

 嗚呼、なんという皮肉だろうか。

 我々はサガという女を守るためにここまで来たというのに、

 その足元で我々自身が犯され、喰われている。

 この粘着質な闇の中で流される体液と血と涙は、

 一体何への供物というのだろうか。

 

 雨は降り止まない。

 この人工の子宮の中で生まれ続ける犬たちのように、

 絶望もまた増殖し、終わることなく続いていくのだ。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ガギンッ! 

 

 乾いた金属音が、湿り気を帯びた悲鳴の合唱を切り裂いた。

 それはただの音ではない。

 鋼鉄が鋼鉄を打ち据えたかのような、絶対的な拒絶の音であった。

 

 闇と猟犬の奔流の中にあって、ただ一点だけ崩れぬ磐石がある。

 連盟所属、二十二歳。

 銀髪にアイスブルーの瞳を持つ麗しき青年のごとき女騎士、カレンである。

 

 彼女は立っていた。

 周囲が阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、

 同僚たちが肉も魂も啜り取られていく中で、

 ただ一人、背筋を伸ばして立っている。

 その姿はまさに動く要塞。されど、ただの要塞ではない。

 冷たく無機質な城壁とは違う。

 そこには脈打つ血の熱と、ねっとりとした女の皮膚の艶があったのだ。

 

 短く刈り込んだ銀髪は、絶え間ない激戦の汗で濡れそぼり、

 まるで夜露を吸った白磁のごとく輝いている。

 その下にある顔立ちは、女性というよりも美麗な青年を思わせる彫りの深さだが、

 薄く引き結ばれた唇と、鋭い眼光には女人特有の執念深さが宿っていた。

 

「排除する!」

 

 カレンが吼える。

 両腕に装着された固有霊装『不壊の盾(インデストラクティブル)』が唸りを上げ、

 飛びかかる猟犬たちを弾き飛ばす。

 その一撃は重く、遅い。

 だが、それは彼女が弱いからではない。

 戦闘スタイルが「絶対防禦」にあるからだ。

 相手の攻撃を全て受け止め、その反動で大地を砕きながらも己が構えは崩さず、

 遂にはその重厚なる一撃で相手を圧殺する。

 疾風迅雷のごとき速さはないが、その歩みは津波のように止められない。

 

 そして、その盾の内側にある肉体こそが、

 男たちの劣情を最も刺激する禁忌の果実であったのだ。

 

 服の上からでもわかる。

 肩幅は広く、腕は太い。

 だが、それらは単なる筋肉の塊ではない。

 鍛え上げられた筋繊維が女性らしい滑らかさを殘したまま、

 美しい曲線を描いて皮膚の下で波打っているのだ。

 

 特に凄いのは腹部である。

 くっきりと割れた腹筋は鋼鉄の鎧そのものだが、

 ボディビルダーのような無骨さは微塵もない。

 汗ばんだ軍服が張り付くその脇腹から臍にかけてのラインは、

 名工が丹精込めて鍛え上げた日本刀の刃紋のごとく妖艶な曲線を描いている。

 呼吸をするたびに筋肉が蠢き、

 臍が周囲の筋肉に引き締められて縦に細長く息づく様は、

 男に無言で「此処を刺せ」と誘っているかのようにすら見える。

 

 そして何より特筆すべきは胸部であろう。

 Aカップかそれ以下。ほとんど平坦と言っていい胸板である。

 普通の男ならば視線を逸らすかもしれない。

 しかし、それ故にこそ「鋼鉄の処女」と呼ばれるに相応しいのだ。

 鍛え上げられた大胸筋の上に必要最低限乗っている淡いピンク色の乳首。

 それが戦闘中の摩擦と興奮で硬くしこり、軍服越しにポッコリと膨らんでいる様は、

 逆説的なまでに強烈なエロティシズムを放っているのである。

「胸がない」のではない。「胸である必要がない」ほどに鍛え抜かれた肉体。

 その事実が男たちに「この鉄壁を打ち破りたい」という歪んだ征服欲を掻き立てるのだ。

 

 カレンは知らない。

 自らが戦うために捨て去った「女らしさ」が、

 皮肉にもその極限まで研ぎ澄まされた肉体によって最高潮に達していることを。

 

 生まれたときから連盟の戦士として育てられた。

 私生活など存在しない。

 恋を知らず、愛撫を知らず、ただ剣と盾と汗だけを舐めて生きてきた。

 故に自分の処女を「戦士としての純潔」と捉え、

 これを失うことを敗北と定義している。

 

 だがどうであろう。

 今この瞬間も、増殖し続ける猟犬たちの牙を一身に受け止めるたびに

 身体には微細な震えが走っているではないか。

 

 ガギンッ! ガギンッ! 

 

 衝撃が内臓を揺さぶる。

 その振動が子宮という未知の器官へと伝わり、

 本人すら認識しない疼きとして蓄積されていく。

 

「くっ…… まだだ……!」

 

 引き締まった小ぶりで硬い臀部が軋むように力む。

 無駄な脂肪など一片もないその尻は歩くときすら揺れないが、

 今は極限の緊張によって更に硬質化し、

 まるで鉄球のように引き絞られている。

 

 カレンの性癖は「征服されること」への潜在的な渇望であると定義。

 頑として認めないだろう。

 しかし心の奥底では、

「自分よりも強い誰かにこの鉄壁を打ち破ってほしい」という願いが

 眠れる獅子のごとく横たわっているのだ。

 

 嗚呼。

 ウォルターという男は見抜いているのかもしれない。

 この鋼鉄の処女の装甲の裏側に潜む熱量に。

 だからこそ彼は直接手を下さず猟犬たちをけしかける。

 物理的な攻撃によって装甲を剥ぎ取りつつ、

 精神的な圧迫によって内側からの崩壊を促しているのだ。

 

 カレンはまだ気づかない。

 自分が守ろうとしているサガ帝国の皇女たちと同じように

「奪われる」ことへの恐怖と安堵が紙一重であることに。

 汗が目に入り視界が滲む。

 それは涙かそれとも快楽による蜜か。

 答えの出ない問いの中で今日も盾を掲げる。

 

 だがその盾もいつまでも持つとは限らない。

 なぜなら眠る「雌」が目覚め始めているからだ。

 ◆◆◆

 

 

 

 闇の中で肉が弾ける音がした。

 それは硝煙の匂いではなく、もっと生々しい、熟れすぎた果実が皮を破る音であった。

 

「あぁぁっ…… もうッ…… ダメぇぇッ!!」

 

 基地の隅々で、悲鳴とも嬌声ともつかぬ喘ぎが木霊する。

 増殖する猟犬ケイニス・リュカオンの群れは、

 殺戮兵器などという生易しいものではなかった。

 歪んだ性癖が凝縮された触手であり、鞭であり、不可視の舌。

 若き女騎士が床に這いつくばり、影のような前足に四肢を固定されながら、

 その秘所を執拗に貪られる。服は裂け、肌は露わになり、

 白濁とした唾液とも愛液ともつかぬ体液でテラテラと光っている。

 男たちもまた例外ではない。影刃に切り裂かれた傷口からは血ではなく理性が流出し、

 ただ快楽の淵へと突き落とされていく。

 まさに媚獄。仏の顔も三度までとは言うが、この地獄に仏の顔などあるはずもない。

 あるのはただ、果てることなく交尾を続ける獣たちの蠢きのみであった。

 

 その混沌たる肉欲の坩堝の中で、ただ一点、汚されざる鋼鉄が輝いていた。

 

 カレンである。

 

「排除する……! 排除する……!」

 

 彼女は呪文のように繰り返しながら、盾を振るい続けていた。

 両腕に装着された『不壊の盾(インデストラクティブル)』は、

 まるで貞操帯のごとく彼女の身を護っている。飛びかかる猟犬を弾き飛ばし、

 影刃を打ち砕き、その身に迫るあらゆる穢れを拒絶し続ける。

 その姿は壮絶であった。汗に濡れた銀髪が頬に張り付き、

 アイスブルーの瞳は血走りながらも揺るぎない光芒を放つ。

 軍服は汗と返り血で泥だらけだが、

 その内側にある肉体は未だ誰にも触れられていない聖域であった。

 

「やれやれ…… 随分と硬ぇ殻をお被りだ」

 

 影の奥から、低く渋い声が響いた。

 沃度(ヨード)のように濃厚な闇を切り裂いて、一人の男が歩み出てくる。

 テンガロンハットを目深に被り、擦り切れたレザーダスターコートを羽織った中年男。

『影狩り(シャドウハンター)』ウォルター。

 その琥珀色の双眸は、獲物を値踏みするような不敵な笑みを湛えていた。

 

「大国同盟の狗め……!」

 

 カレンが牙を剥く。盾を構え直し、その重厚なる踏み込みで距離を詰めようとする。

 だがウォルターは微動だにしない。ただ帽子の縁を指で弾いただけである。

 

「狗で結構。お嬢さんよ、あんたのその盾は何を護ってるんだ? 国か? 民か? それとも……」

 

 言葉と同時に、ウォルターの影が伸びる。

 それは床を這うのではなく、カレンの心の隙間へと滑り込むように伸びてきた。

 

「自分の雌としての本能か?」

 

「なっ……!?」

 

 ガギンッ!! 

 

 鋭い金属音が響く。

 カレンの盾が彼女の目前で影刃を受け止めたのだ。

 しかし今回の刃は、物理的な切断力を持つものではなかった。

 それはまるで無数の手のように柔軟に形を変え、盾の隙間から入り込み、

 カレンの軍服を内側から撫で回したのである。

 

「くぅっ……! 何をっ……!」

 

 衝撃が内臓を揺さぶる。

 それだけではない。

 影刃は粘着質な舌のごとく彼女の体表を這い回り、

 特に女性特有の曲線を描く部分を執拗に愛撫した。

 引き締まった脇腹から腰骨にかけての窪み。

 張り詰めた臀部の割れ目。

 そして何より、鍛え上げられた大胸筋の上にちょこんと乗る淡いピンク色の蕾を——。

 

「ひっ…… あぁっ……!」

 

 カレンの喉から、本人すら予期せぬ甘い鳴き声が漏れた。

 決して触れられたくない場所。

「女」としての自分を意識させたくない場所。

 そこを強引に抉じ開けられ、

 捏ね回されたことによる屈辱と痺れが脳髄を貫いたのだ。

 

「ほら見ろ。随分と反応がいいじゃねぇか」

 

 ウォルターがニヤリと笑う。

 彼にはわかっているのだ。この鋼鉄の処女の装甲の裏側に渦巻く熱量が。

 征服されることを待ち望む子宮の疼きが。

 

「貴様ぁぁッ!!」

 

 カレンは激昂し、盾を叩きつけるように突進する。

 伐刀絶技『絶対防禦(パーフェクトガード)』の展開を見越した捨て身の一撃。

 だがウォルターにとってそれは隙でこそあれ脅威ではない。

 彼は影の中に溶け込み、カレンの背後へと瞬時に移動した。

 

「遅い」

 

 背後から囁かれる吐息。

 それは耳元を舐められるかのような背徳感を伴っていた。

 ウォルターの手には巨大な大鎌。

 その漆黒の刃は空間そのものを切り裂く切れ味を持つが、

 今はあえて切っ先だけでカレンの背中をなぞった。

 

 ズリリリリッ! 

 

 軍服が裂ける音。

 白い背中が露わになる。

 だがそれだけではない。

 影刃は尻肉を削ぎ落とすことなく、むしろ揉みしだくように形を変え続けた。

 

「あぁんっ……! いやぁっ……!」

 

 ついにカレンの膝が崩れた。

 物理的なダメージではない。抑圧していた性的欲求へのノックである。

 鍛え抜かれたシックスパックの腹筋が波打ち、小ぶりな乳房が震える。

 絶対防御などありはしないのだ。

 心に隙がある限り、いかなる盾も意味を成さない。

 

「どうした鋼鉄のお嬢さん。もう終わりか? これじゃあとても『盾』には見えねぇな」

 

 ウォルターはカレンの背後で仁王立ちし、大鎌の柄で彼女の顎を持ち上げた。

 汗ばんだ肌の匂いと鉄の匂いが混ざり合う。

 それはまさしく媚獄の香りであった。

 

「ただの…… 欲求不満の雌じゃねぇか」

 

 その言葉がカレンの自尊心を粉々に砕く。

 同時に彼女の子宮奥底で眠っていた本能が歓喜の雄叫びを上げていた。

 嗚呼。

 この男は私を支配できるのか? 

 この鉄壁を打ち破り私をただの雌へと堕とすのか? 

 恐怖と期待。拒絶と受容。

 それらが入り混じった濁流の中でカレンの瞳は潤み、

 その唇からは嗚咽とも嬌声ともつかぬ吐息が漏れ始めたのである。

 

「うぅっ…… ぁぁ……」

 媚獄にて対峙する二人。

 暴力と性の境界はすでに溶け失せた。

 そこにあるのはただ征服し征服されるという原始的な営みのみである。

 ◆◆◆

 

 

 ウォルターという男は、いわば影そのものだった。

 手をかざせば、地面という地面から、壁という壁から、無数の漆黒の猟犬が滲み出る。

 それは影を媒介とした増殖。左手に持ったものを右手に複製するという、

 彼の伐刀絶技『影刃氾濫(シャドウブレード・デリュージ)』の応用であった。

 一匹、二匹、三匹……その数は指数関数的に膨れ上がり、

 今や基地全体を覆い尽くさんばかりの大群と化している。

 犬たちはただの獣ではない。

 雌という獲物を狩ることに特化した、この上なく淫猥な拷問装置なのだ。

 

 基地の片隅では、四十路を過ぎた年増の女騎士が、

 その身に刻まれた長年の規律と誇りを無惨にも引き剥がされていた。

 生真面目で、規律を何よりも重んじる、いわば鉄の女。

 後輩たちからは陰で「鉄仮面」と囁かれるほどの堅物だった。

 しかし、その堅牢な鎧は今や無残に引き裂かれ、

 成熟しきった果実のような肉体が白日の下に晒されている。

 重力に従い、豊かに垂れ下がった乳房。長年の訓練で鍛え上げられながらも、

 年齢と共に柔らかさを増した腹回り。そして、その豊満な太腿の奥にある秘所は、

 未だ誰にも犯されたことのない処女の門であった。

 

「いやっ……やめ、なさい……! 私は、連盟の……騎士、だぞ……!」

 

 抗議は、しかし、虚しくも嬌声に塗りつぶされていく。

 一匹の猟犬が、ざらついた舌で唇をこじ開け、口腔という処女を奪う。

 生温かく、粘液にまみれた異物が口内を蹂躙する感覚に、

 瞳からは熱い涙が溢れ出た。同時に、別の二匹が両脚を押し広げ、

 まだ誰にも触れられたことのない割れ目に鼻面を突っ込む。

 湿った鼻息が敏感な粘膜をくすぐり、次の瞬間、焼け火箸のような熱い舌が、

 膣という名の処女を容赦なく抉じ開けた。

 

「ひぎぃぃっ!?」

 

 内臓を直接掻き回されるかのような、鋭い痛みと、感じたことのない未知の快楽。

 腰が、ビクン、と大きく跳ねる。同時に、最後尾に潛んでいた別の犬が、

 尻の蕾に狙いを定め、その先端をぬるりと侵入させた。唇、膣、尻。

 三つの処女を同時に蹂躙されるという、前代未聞の屈辱。

 頭は真っ白になり、気高い騎士としての自我はガラスのように粉々に砕け散った。

 

「あ……あぁ……あああっ……!」

 

 涙と涎と愛液に塗れながら、ただ、獣のような雄叫びを上げることしかできない。

 抗う意志は熱いマグマのような快楽に灼き尽くされ、今では自ら腰をくねらせ、

 犬の舌の動きに合わせて淫らに踊り始めている。

 誰もが畏れた鉄仮面は、今やただの一匹の雌犬に成り果てていた。

 

 そんな阿鼻叫喚の地獄の中にあって、一際目を引く悲劇があった。

 まだ十代半ばであろうか、燃えるような赤毛の少女騎士である。

 彼女は今年、騎士学校を卒業したばかりの新米で、欧州の惨状を救わんと、

 燃えるような正義感に胸を焦がして志願したクチだった。

 瞳は希望に輝き、理想のために身を捧げることを何よりも尊いと。

 

 しかし、理想の鎧は現実の前にはあまりにも脆い。

 無数の犬たちに取り囲まれ、身動き一つ取れずに床に縫い付けられている。

 まだ発達途上の、しかし若さ故に瑞々しく張りのある双丘が、

 荒い呼吸と共に上下する。その頂点では、桜色の蕾が硬くしこり、

 今にも弾け飛びそうだ。女体は、細く、華奢で、まさに「美少女」という言葉が相応しい。

 未成熟な秘所に、一際巨大な雄の象徴をぶら下げた犬が、先端を擦り付けているのだ。

 

「な、なに……これ……私、どうなっちゃうの……?」

 

 現実を受け入れられず、ただ呆然と呟いた。その瞬間。

 

「いぎぃっ……!!」

 

 身体が真っ二つに裂けるかと思われた。今まで感じたことのない圧倒的な質量が、

 最も柔らかく、最も神聖な場所をこじ開け、一気に子宮の入り口までを叩く。

 純潔の証である血が、太腿を伝い、床に赤い華を咲かせた。

 衝撃に声も出ない。

 

「う……うぅ……あ……あああああっっ!!!」

 

 一拍置いて、遅れてやってきた激痛と、それ以上の圧倒的な快楽が、全身を突き抜ける。

 涙が、鼻水が、涎が、全ての体液が溢れ出す。だらしなく開かれた口からは、

 嬌声とも悲鳴ともつかぬ声が、まるで壊れた楽器のように漏れ続けた。

 泣いていた。

 理想があまりにも無力だったこと、

 こんな獣の慰み者にされるために生きてきたわけではないという叫び、

 しかしそれ以上に、自分が今、紛れもない快楽に溺れているという事実に。

 嗚咽を漏らし、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、それでも腰の動きは止められない。

 それはまさに、理想という処女を失い、雌としての快楽に目覚めた一人の女の、

 恥辱と悦楽に満ちたマスターピースだった。

 この狂乱の宴のオーケストレーターたるウォルターは、そんな彼女たちを、

 まるで美術館に飾られた絵画でも鑑賞するかのように、冷静に見下ろしている。

 彼の口元には、ほんの僅かだが、確かに嗜虐的な笑みが浮かんでいた。

 この混沌こそが、彼の求める「いい夜」であり、連盟の基地を舞台にした、

 最大の作品なのだ。戦争の裏で繰り広げられる、これはれっきとした娯楽。

 彼の、最も得意とするゲームの一幕だった。

 

 

 ウォルターは、ただ傍観しているだけではなかった。

 創り出したこの地獄の、いや、痴獄の指揮者として、

 最も見応えのある舞台に自らも足を踏み入れたのである。

 

「さて、冷やかしだけじゃあ、夜が勿体ねぇ」

 

 帽子の縁を指で弾くと、影の中から新たな一匹が首をもたげた。

 いや、これは他の猟犬とは違う。

 首だけでなく、胴体も、四肢も、そして雄々しく勃起した一物も

 完備した、ウォルターの分身たる影の使い魔であった。

 

 カレンは、四つん這いにされていた。

『不壊の盾(インデストラクティブル)』は形を変え、

 両手首を背後で拘束する手錠の如き拘束具と化している。

 絶対防御の霊装が、今や自身を縛り上げる恥辱の鎖とは、

 何たる皮肉であろうか。

 解放された両腕の筋肉は無駄に力んでいるが、

 影の鎖は微動だにしない。

 そして目の前には、ウォルターが仁王立ちしていた。

 

「あぐっ……! ふぐぅ……!」

 

 声にならない悲鳴。

 カレンの口は、既に何者かによって塞がれていたからだ。

 ウォルターの股間に鎮座する、凶悪なほど巨大で血管の浮き出た肉棒。

 それが彼女の唇を、その美麗な青年のごとき顔貌を、

 余すところなく占有しているのである。

 

 唇をこじ開け、口腔という名の聖域を侵略する異物の感触。

 鈴口から滲み出る先走りの液は、海水のように塩辛く、

 そして雄特有の濃厚な生臭さを孕んでいた。

 それは舌に絡みつき、喉の奥へと粘着質に流れ込んでくる。

 

 ウォルターは、ただ入れっぱなしにしているのではない。

 腰をゆっくりと、しかし確実に前後させることで、

 口腔粘膜を擦り上げ、その感触を存分に味わっていた。

 

「んむっ…… ごふっ…… うぅっ……」

 

 苦悶の声が、肉の隙間から漏れる。

 だが、その声は次第に変質しつつあった。

 最初こそ拒絶と屈辱に震えていた喉奥が、

 次第に生温かな痺れを受け入れ始めているのである。

 呼吸困難による酸欠が、脳を陶酔させ、

 硬直していた喉の筋肉が、自らウォルターの柱に絡みつくように蠢き始めたのだ。

 

 嗚呼、見よ。

 この美貌を。

 銀髪は汗と涙と涎で乱れ、前髪が張り付いた額には、

 絶頂に近い苦悶の皺が刻まれている。

 引き結ばれていたはずの唇は、今やだらしなく広げられ、

 異物を受け入れるために必死に形を変えている。

 アイスブルーの瞳は虚空を見上げ、その焦点は定かではない。

 だが、その奥には確かに歓喜の色が宿っていた。

 

 彼女は気づいているのだろうか。

 自分が今、ただの穴として扱われていることを。

 尊厳ある騎士としての口で、

 他国の男の性欲処理という下賤な行為に服していることを。

 

 否。

 ウォルターにはわかっている。

 カレンは今、心の奥底で歓喜しているのだ。

 征服されることへの潛在的な渇望。

 それが今、現実のものとなったのである。

 

「ほら、もっと深く飲み込め。喉の奥までだ」

 

 ウォルターが腰をさらに押し込む。

 鈴口が喉の奥、食道の入り口を叩く。

 嘔吐感と、それ以上の被虐的な快楽が同時に襲い、

 カレンの背中は反り返り、鍛え抜かれた腹筋が波打った。

 

「んぐぅぅッ!!?」

 

 痙攣するように体が震える。

 同時に、背後から忍び寄っていた影の犬が、

 秘所へと容赦なく舌を差し入れた。

 前方からの口内蹂躙と、後方からの秘所愛撫。

 前後の挟撃。二つの快楽の波が体内で衝突し、

 理性という堤防をあっさりと決壊させる。

 

「ひぐっ…… あぐっ…… あぁぁぁッ!!」

 

 口を塞がれていてもなお、雄叫びにも似た嬌声が漏れる。

 体液の混ざり合う厭らかな水音が、部屋の中に響き渡った。

 ウォルターは、その音を聞きながら、

 帽子の下で満足げに目を細めた。

 

「いい表情だ。まさに芸術的だね」

 

 彼は独りごちた。

 だらしなく下がった目尻。

 とめどなく流れる涙。

 白濁とした液で汚れた唇。

 それらが織り成す表情は、

 かつての鋼鉄の処女の面影などどこにもない。

 ただの、雄に屈服し、快楽に溺れる雌の顔であった。

 

 ウォルターは、彼女の頭を掴み、更に激しく腰を振り始めた。

 それはもはや性的な奉仕などという生易しいものではない。

 自我そのものを、精液で白濁させるための、

 徹底的な洗脳行為であった。

 

「ぐぢゅっ…… ぶぢゅっ……」

 

 厭らかな水音が加速する。

 カレンの意識は、快楽の泥沼へと沈み込んでいった。

 ◆◆◆

 

 

 

 ウォルターは、眼を閉じていた。

 閉じた眼瞼の裏で、闇色の地図が展開されている。

 欧州中部を支点にして、東西南北に伸びた五つの点。

 そこは彼が放った猟犬の群れが食い荒らす、連盟の前線基地であった。

「ふむ……」

 唇の端だけで笑う。

 彼の放った増殖する影刃は、確かに5つの基地を制圧した。

 だが、フィードバックとして流れてくる情報は、必ずしも芳しくはない。

 他の4つの基地では、外部から駆けつけた増援部隊によって、

 徐々に猟犬たちが駆逐されつつあるらしい。影から生み出したとはいえ、

 遠隔操作には限界がある。本体の魔力と集中力を分散させておれば、

 いずれ影は薄れ、光に溶けて消える運命だ。

「まあ、予想の範囲内だがね」

 ウォルターは独りごちた。

 もとより5つ同時に落とし続けることなど不可能に近い。

「同時に襲撃された」という混乱と恐怖を植え付けることこそが目的であったのだ。

 そして今いるこの基地。

 周辺に配置した影犬の探知網が告げている。

 近隣から駆けつけるべき援軍の気配はない。

 混乱はまだ収まらず、指揮系統は麻痺したままである。

 つまり——まだ遊べる。

 時間はたっぷりとある。

 彼は眼を開けた。

 琥珀色の双眸が見据える先には、鋼鉄の処女がいた。

 

「さて、お嬢さん。続きといこうか」

 

 カレンは、もはや立っていなかった。

『不壊の盾』は両手首を背後で拘束する手錠と化したままだが、

 ウォルターは彼女を床に這わせるのではなく、無理やり立たせた。

 いや、正確には「吊るした」と言うべきか。

 影の触手が天井から垂れ下がり、拘束された両手首を引っ張り上げているため、

 彼女は爪先立ちで立つことを強要されていた。

 軍服はすでに剥ぎ取られ、鍛え上げられた肢体が剥き出しになっている。

 引き締まった腹筋。小ぶりな乳房。そして何より、

 誰にも触れられたことのない秘所が、無防備に露わになっていた。

 

「くっ…… はぁ…… はぁ……」

 

 カレンの呼吸は荒い。

 先ほどまでの口内蹂躙で酸欠状態となった脳はまだ朦朧としており、

 アイスブルーの瞳には虚ろな光が宿っている。

 だが、その奥底ではまだ小さく抗いの炎が灯っていた。

 

「貴様のなど…… 受け入れない……!」

 

「強情だねぇ。口ではどうにでも言える」

 ウォルターは帽子をくいっと持ち上げた。

 猟犬たちとは違う。質量も硬度も段違いの、彼自身の分身たる巨根。

 それをカレンの秘所に押し当てる。

 

「ひっ……!」

 

 冷たい汗が背筋を伝う。

 恐怖かそれとも——。

 ウォルターは容赦しない。彼は腰を一気に押し込んだ。

 

「いぎゃぁぁぁっ!!!」

 

 裂けるような悲鳴が響く。

 鋼鉄の処女が砕かれる音。

 それは物理的な膜が破れる音であると同時に、

 長年培ってきた騎士としての矜持が崩れ落ちる音でもあった。

 鮮血が太腿を伝い落ちる。

 それはあまりにも鮮やかで、あまりにも淫靡な赤であった。

 

「ほう…… これはこれは」

 ウォルターは感嘆の息を漏らした。

 きつい。あまりにもきつい。

 数多の女を抱いてきた彼ですら驚くほどの締め付けだ。

 長年使われずに閉ざされていた門は、頑として彼を受け入れまいと抵抗する。

 だがそれ故にこそ——征服欲が掻き立てられるのだ。

 

「離せ…… 離せぇっ……!」

 

 カレンが身をよじって逃れようとする。

 しかし影の鎖は緩まない。そしてウォルターの腰も止まらない。

 彼はゆっくりと、だが確実に奥へと突き進んでいく。

 子宮の入り口を叩くその感触は、

 まるで聖域への冒涜的なノックであった。

 

「あぁっ…… あぐっ…… ダメぇ…… 壊れるっ……!」

 

 痛みと快楽の境界が曖昧になっていく。

 激痛だと思っていたものが、次第に熱を帯びて蠢き始める。

 内壁を擦り上げられるたびに背筋が震え、

 子宮を突かれるたびに脳髄が痺れた。

 

 これは——敗北なのか? 

 ただの敗北ではない。

 これは——救済なのか? 

 

 カレンの思考が泥沼にはまり込んでいく。

 自分はずっと強くあろうとしてきた。

 誰にも負けない鉄壁の盾であり続けようとした。

 しかしそれは——孤独だったのだ。

 守られることなく、ただ守るだけの存在。

 だからこそ心の奥底で渇望していたのだ。

 自分よりも強い誰かに組み敷かれ、その鉄壁を打ち破ってくれる存在を。

 

「ほら見ろ。お前の中身はこんなにも俺を歓迎してるじゃねぇか」

 

 ウォルターが耳元で囁く。

 指先がカレンのクリトリスを弾いた。

 

「ひゃぁぁっ!!」

 

 雷に打たれたような衝撃。

 カレンの体がビクンと跳ね反り返る。

 同時に子宮の奥から大量の愛液が噴き出し、

 ウォルターの一物をさらに深く飲み込んでいった。

 

「あぁ…… あぁぁ……」

 

 声にならない嬌声。

 涙でぐしゃぐしゃになった顔。

 それはもう騎士ではなかった。

 ただ快楽に翻弄される一匹の牝であった。

 

「これでいいんだよ。お前は戦うためだけに生きてきたんじゃない。

 男に抱かれ、種を注がれるためにこそ生まれてきたんだ」

 

 ウォルターの言葉が呪いのように脳裏に響く。

 否応なしに刻み込まれていく新しい本能。

 征服されることへの渇望。

 それは彼女の中で確固たるものとなり始めていた。

 

「どうだ? 俺の子種を受け入れる準備はできたか?」

 

 ウォルターは激しく腰を振り始めた。

 配慮などない。快楽のために相手を使うだけのピストン運動。

 しかしカレンは抵抗しなかった。

 いや——出来なかったのだ。

 快楽という名の濁流に飲み込まれ、

 ただ雄の動きに合わせて喘ぎ続けることしかできなかったのである。

 

「あっ! あっ! あぁぁんっ!!」

 

 鋼鉄は溶けた。

 処女は喪われた。

 そしてここに——ウォルターに相応しい淫らな肉の器が誕生したのである。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 鋼鉄の処女は溶けた。

 いや、融けたなどという生易しい言葉では足りない。

 彼女は今、沸騰しているのである。

 長年閉ざされていた釜戸に薪が放り込まれ、

 臨界点を突破したかのごとく、

 全身の血管という血管を駆け巡る血液が、

 ただ一つの目的のために熱を帯びて脈打ち始めたのだ。

 

「あっ! あっ! あぁぁんっ!!」

 

 カレンの喉から漏れる声は、もはや言語ではなかった。

 子犬が鳴くような、あるいは発情した牝猫が喉を鳴らすような、

 意味を持たぬ単音の連続。それが基地中に反響し、

 男の征服欲をこれ以上ないほど煽り立てる。

 

 ウォルターの巨根が、彼女の最奥を突き上げるたびに、

 カレンの体はビクンビクンと跳ねた。

 鍛え上げられた腹筋が波打ち、

 汗で張り付いた銀髪が鞭のようにしなる。

 瞳は虚空を見上げ、焦点を失い、

 半開きになった唇からは涎が糸を引いて垂れ落ちる。

 

 嗚呼、見よ。

 この醜態を。

 かつて「動く要塞」と畏れられた女騎士の顔は今、

 だらしなく蕩けきり、眉尻を下げ、

 ただ快楽に貪る牝のそれへと変貌しているのだ。

 

「どうだ? 俺のモノがお前の中を犯してる感触は?」

 

 ウォルターが耳元で囁く。

 低く渋い声が鼓膜を震わせ、脳髄を直接撫で回すような快感を呼ぶ。

 同時に彼の指が、カレンの乳首を摘み上げた。

 戦闘の邪魔にならない必要最低限の膨らみ。

 だがその淡いピンク色の蕾は、今や熟れきった果実のごとく硬くしこり、

 男の指先に弄ばれることを悦んでいた。

 

「ひゃぁぁっ!? そこっ…… ダメぇっ……!」

 

 拒絶の言葉とは裏腹に、腰は自ら動き、

 より深い快楽を貪ろうとウォルターを締め付ける。

 唇は否定を紡ぐが、身体は肯定を叫んでいるのだ。

 これこそが真実の人間の姿。

 理性という薄っぺらい膜の下に潜む、

 本能という名の濁流を晒け出した姿なのである。

 

「素直になりな。お前は戦うためじゃなく、

 こうして犯されるために生まれてきたんだ」

 

 ウォルターの言葉は呪いだ。

 あるいは救いのかもしれない。

 彼女がずっと探し求めていた答えなのかもしれない。

 征服。

 支配。

 隷属。

 渇望。

 確信。

 

「あぁ…… あぁぁ…… そう…… かも……しれない……」

 

 カレンの瞳からとめどなく涙が溢れる。

 それは屈辱の涙ではない。

 あまりの快楽に耐えきれず溢れ出す、歓喜の涙であった。

 

「ほら、イけッ! 騎士のプライドなんぞドブに捨てて、

 ただの牝としてイきやがれッ!!」

 

 ウォルターが最奥を突き上げた。

 子宮口という最後の聖域を打ち砕く一撃。

 それが引き金となり、カレンの背中は弓なりに反り返った。

 

「いくぅぅッ!! あぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

 絶叫。

 悲鳴と嬌声が混ざり合った獣の咆哮。

 カレンの体が激しく痙攣し、

 ウォルターの一物を搾り取るかのように収縮を繰り返す。

 同時に大量の愛液が噴き出し、

 交合部から厭らかな水音を響かせた。

 

 潮吹き。

 鋼鉄の処女が散りばめた花吹雪。

 それは完全なる敗北の証であり、

 同時に雌としての誕生の証でもあった。

 

 

 

 射精した。

 それは単なる生物学的な放出ではなかった。

 長年培い、ある魔女から授かった技術をもってして練り上げた、

 特製の避妊魔術を精巣に常駐させた上での、

 濃厚にして灼熱、女殺しの媚薬たる白濁液の噴出であった。

 

「くぅっ……!」

 

 ウォルターが低く唸る。

 腰がカレンの最奥に打ち付けられ、

 分身が脈打つと同時に、大量の精液が子宮へと侵略。

 生殖能力は皆無。

 子種としての機能は持たない。

 だが、その代償としてこの精液は、

 子宮内膜から脳髄までを直接痺れさせる強力な麻薬として機能。

 

「あ゙っ…… あ゙あ゙っ……!!」

 

 カレンの瞳が見開かれた。

 焦点を失っていたはずのアイスブルーが、

 白濁とした狂気で染め上げられていく。

 子宮に注がれた精液の熱が、臍を通じて脳に直达し、

 残っていた理性という名の堤防を完全に決壊させたのだ。

 

「熱い…… 熱いぃぃッ!! あ゙ぁ゙ぁ゙ッッ!!」

 

 二度目の絶頂。

 いや、これは絶頂などという生易しいものではない。

 魂の崩壊であり、再構築であった。

 ウォルターの精液という名のセメントで、

 カレンという女は「ウォルターの雌」として再造形。

 

 子宮口は貪欲に精液を啜り上げ、

 卵管は痙攣しながら白濁液を送り届けようと蠢く。

 避妊魔術があるとはいえ、女の本能というものは恐ろしい。

 孕みたいという潜在的な欲求が、

 この媚薬たる精液を求めて止まないのだ。

 

 ウォルターは、そんなカレンの痴態を冷ややかに見下ろしながら、

 帽子の縁を指で弾いた。

 彼は女を逝かせるのが大好きだ。

 メス堕ちさせるのが大好きだ。

 中出しも大好物だ。

 だが——家庭に縛られる気はない。

 子どもを作る気など毛頭ない。

 彼が求めているのは、一時的な快楽と支配のみ。

 特定の誰かに縛られない自由こそが、彼の美学であった。

 

 だからこそ、この避妊魔術は必要だった。

 生殖能力を捨てる代わりに得た、

 純粋なる快楽の毒。

 それを注ぎ込むことによってのみ、

 女は真の意味で「堕ちる」ことができるのだ。

 

「いい表情だ。まるで壊れた人形みたいだね」

 

 ウォルターはニヤリと笑った。

 カレンはもう応えない。

 ただ口を半開きにし、白目を剥き、

 ウォルターの精液が子宮に満ちる感覚に溺れているだけだった。

 彼女の中で「騎士」は死んだ。

 そして「雌」だけが生き残ったのである。

 

 これこそがウォルター・シャドウハンターの流儀。

 女を狩り、快楽という影の中に引きずり込み、

 二度と這い出られないように堕とすこと。

 それは暗殺とどこか似ていた。

 相手の命を奪う代わりに、尊厳を奪う。

 肉体を残す代わりに、魂を壊す。

 なんと甘美な殺戮であろうか。

 

 雨はまだ降り続いている。

 基地の中ではまだ猟犬たちの宴が続いているのだろうか。

 だがこの部屋では、ただ二人の交尾が終わりを告げようとしていた。

 いや——終わりなどないのかもしれない。

 ウォルターが望めば、影はいくらでも増殖し、

 快楽は何度でも与え続けることができるのだから。

 ◆◆◆

 

 

 影が囁いた。

 いや、正確にはウォルターが展開していた探査網たる影犬たちの一匹が、

 遠くの気配を感知し、主の脳裏に忠告を送ったのである。

 来る。

 しかも速い。

 並大抵の騎士ではない。

 その魔力の残響は、湖底の銀を梳いたかのごとく冷ややかであり、

 蒼玉の瞳が闇を射抜く幻視すら覚えさせた。

 

「アイリス・アスカリッド、か」

 ウォルターは帽子の縁を指で弾いた。

 無敵甲冑《オレイカルコス》の担い手。

 連盟が誇る要塞騎士。

 彼女が此処へ来るとなれば、いつまでも長居はできまい。

 だが、焦燥というものはない。

 彼はすでに十分に愉しんだのだから。

 鋼鉄の処女をメス堕ちさせ、

 老若男女の尊厳を快楽という泥で塗り潰し、

 基地という名の巨大な肉壺を作り上げたのだ。

 十分すぎるほどの収穫である。

 

「さて、お開きと行こうか」

 

 ウォルターはカレンの身体から離れた。

 白濁とした体液と汗に塗れた彼女は、

 もはや自力で立つことすらできず、床に崩れ落ちる。

 その瞳にはもう光はない。

 ただウォルターの精液という名の媚薬が子宮に満ちている感覚に、

 陶然と酔いしれているだけである。

 彼はそんな彼女に視線を落とすこともなく、

 闇の中に向かって指を鳴らした。

 

「お前ら、消えるまでヤリまくれ。俺の分まで楽しんでいいぞ」

 

 それが命令であった。

 増殖する猟犬たちは、主の意志に従い、

 更なる繁殖と交尾を始める。

 影の中から新たな影が生まれ、

 また新たな肉を貪り始めるのだ。

 それは終わりなき輪姦の宴。

 影が消滅するその瞬間まで続く、

 執拗で粘着質なレイプの幕開けであった。

 

 ウォルター自身は影の中へと溶けていく。

 影渡り。

 彼の伐刀絶技の一端を用いた移動手段。

 本体は安全な本拠地へと帰還する。

 後にはただ、淫らな獣たちと、

 その餌食となった哀れな騎士たちだけが残された。

 

 ◇◇◇

 

 闇が砕けた。

 物理的に、である。

 アイリス・アスカリッドは走っていた。

 その全身を包む漆黒の甲冑《オレイカルコス》が、

 鬱陶しいほどの湿気を帯びた人工の闇を物理的に粉砕しながら進んでいくからである。

 無敵甲冑。不死鳥を象った漆黒外殻。

 損耗箇所は直ちに自律修復し、

 限界域では無敵時間《不死境界》すら解放する絶対防御の結晶。

 それが今はただの装甲ではなく、

 怒れる女神の鉤爪として機能していた。

 

「なんたる、惨状……!」

 

 アイリスは絶句した。

 基地の中はまさに地獄であった。

 そこかしこで繰り広げられているのは、殺戮ではない。

 もっと冒涜的で、もっと生々しい行為。

 影より生まれいでた猟犬たちが、

 人間たちを押し倒し、その尊厳を貪り食っているのだ。

 男も女も関係ない。

 ただ若く瑞々しい生命力を持つ者ほど、

 その餌食となりやすかった。

 

「あぁんっ…… もっと…… もっとぉっ……!」

「いやぁっ…… 助け…… ぁぁぁッ!!」

 

 嬌声と悲鳴が混ざり合う不協和音。

 体液の匂いが充満する閉塞空間。

 アイリスの蒼玉の瞳が細められた。

 怒り。

 純粋なる激怒。

 彼女の中で静かに燃えていた焔が、

 今やマグマのごとく噴き出さんとしていた。

 

「許さない……!」

 

 アイリスの背後から黒翼状の推進器官が展開される。

 伐刀絶技《熾獄穿孔(パルセイト)》。

 全身甲冑の質量を乗せた突貫攻撃。

 彼女は地を蹴った。

 いや、飛んだ。

 黒い流星となって基地の中を駆け抜ける。

 

 ドォォォォンッ!! 

 

 先頭にいた数匹の猟犬が、

 質量攻撃の前に紙屑のごとく弾け飛んだ。

 物理的な衝撃ではない。

 概念干渉をも無効化する圧倒的な質量攻撃。

 彼女は止まらない。

 次々と現れる猟犬たちを踏み潰し、

 影という名の穢れを物理的に排除していく。

 

「離せッ! その手を離せぇッ!!」

 

 一人の女性騎士が影に組み伏せられているのが見えた。

 アイリスは即座に反転し、その背後から突貫する。

 猟犬は粉砕され、女性が解放される。

 だが彼女は意識がないのか、ただ涙を流しながら痙攣しているだけだった。

 

「大丈夫か? すぐに助ける!」

 

 アイリスは彼女を抱き上げるわけにもいかず、

 叫びながらも次の標的に向かう。

 殲滅。

 それ以外に道はない。

 この汚れた空間を浄化するには、

 すべての影を消し去るしかないのだ。

 

 だが猟犬たちは無限に増殖する。

 一匹倒せば二匹現れ、二匹倒せば四匹現れる。

 彼女がどれほど質量攻撃を行おうとも、

 影という名の泥沼からは次々と這い出してくるのだ。

 

「くっ……! きりがない……!」

 

 アイリスは舌打ちした。

 焦燥感が胸を焦がす。

 このままでは自分まで疲弊してしまう。

 しかし後退はしない。

 彼女は要塞騎士である。

 長期戦こそが独擅場だ。

 持久力では誰にも負けない。

 

「私が止める……! お前たちの悪戯はここまでだ!」

 

 アイリスの瞳には決意の色が宿っていた。

 激怒しつつも冷静な判断力を失っていない。

 彼女は闇の中へと突き進んでいく。

 一人の女としてではなく、騎士として。

 そして何より——この惨状を作り出した元凶への怒りを胸に抱きながら。

 雨はまだ降り続いている。

 基地の中での戦いはこれからが本番であった。

 ◆◆◆

 

 

 

 相性が悪い。

 いや、最悪であった。

 アイリス・アスカリッドという騎士は、

 その戦闘スタイルにおいて「持久」に特化している。

 全身を包む無敵甲冑《オレイカルコス》は絶対防御の結晶であり、

 それ自体が一個の動く要塞であると言ってよい。

 敵の攻撃を悉く受け止め、自律修復し、そして最後には質量攻撃で圧殺する。

 正攻法の戦いにおいて、彼女に勝てる者はそうはいない。

 だが、今の相手は正攻法などという生易しいものではなかった。

 影である。

 増殖する猟犬たちが、物理的な質量を持つ獣としてのみ存在しているわけではない。

 奴らは影なのだ。

 三次元の制約などというものは、彼らにとってあってなきがごとくなのだ。

 ドォンッ! 

 アイリスの拳が猟犬を粉砕する。

 だが砕けた肉片は床に落ちる前に影へと還元され、また新たな犬となって立ち上がる。

 キリがない。

 どれほど叩き潰そうとも、泥沼に石を投げる如く、

 基数は減るどころか増え続けている。

 そして決定的なのは——奴らが学習したということだ。

 最初は正面から噛み付いてきた犬たちも、

 無敵甲冑の硬さに阻まれると悟るや否や、その戦法を変えたのだ。

 シュルルルッ……

 蛇が葦の茂みを潛るような音がした。

 犬たちが——平面化したのである。

 三次元の質量を持っていたはずの肉体が、

 突如として影絵のように薄く伸び、

 床の影、壁の影、

 そしてアイリス自身の甲冑が落とす影の中へと潛り込んでいったのだ。

 

「なっ……!?」

 

 アイリスの思考が一瞬凍る。

 その隙を逃す影犬ではない。

 シュボッ、という厭らかな音と共に、

 一匹の犬が甲冑の継ぎ目から、

 ちょうど水が隙間に染み入るがごとく内側へと侵入したのである。

「くぅっ……!」

 

 衝撃が内臓を突き抜けた。

 外からは防げたであろう咬撃が、装甲の内側という聖域で行われたのだ。

 いや、咬まれたのではない。

 舐められたのだ。

 平面化した犬の舌が、甲冑の内側に密着する肌の上を、

 ねっとりと這い回ったのである。

 Cカップの双丘。瑞々しい林檎の実のごとき膨らみの上を、

 ざらついた舌面が執拗に擦り上げる。

 薄橙の頂。凛として勃つ乳首に、影の舌が絡みつき、

 ちゅぽりと吸い込まれる感触。

 

「ひっ……! やめっ……!」

 

 声が震えた。

 物理的な痛みではない。

 もっと恐ろしい、痺れるような快楽の奔流であった。

 鎧の中という、最も卑猗な場所で、

 最も敏感な部分を責められているという背徳感。

 それはどのような強者よりも恐ろしい敵であった。

 

 シュボッ、シュボボッ……

 一匹だけではない。

 次々と犬たちが平面化し、鎧の中へと侵入してくる。

 内腿。脇腹。臍。そして——。

 脚の付け根。控えめな林檎舗装の臀部の谷間。

 誰にも触れさせたことのない、処女の聖域へと、

 冷ややかで粘着質な舌が割り込んでくるのだ。

 

「あぁっ……! そこはっ……! 入れないでぇッ!!」

 

 アイリスは腰をよじり、必死に抗拒する。

《オレイカルコス》の内部で、彼女の肢体が激しく波打つ。

 しかし逃げ場はない。

 閉鎖空間たる甲冑の中に閉じ込められ、

 影犬たちに嬲られるがままになっているのだ。

 これはまさに、鋼鉄の棺の中での凌辱であった。

 

 だが——。

 アイリスはまだ屈していない。

 彼女の瞳には、涙ながらも決然たる光芒が宿っていた。

 蒼玉の瞳。悠久の星霜を写すその眸は、

 決して快楽に溺れはしないという不屈の意思を湛えているのだ。

 

「負ける……ものか……!」

 

 彼女は奥歯を噛み締めた。

 と同時に、甲冑の関節部から火花が散った。

《不死境界》の解放まではいかずとも、

 内部の圧力を急激に高めることで、

 侵入した影犬たちを押し潰そうというのだ。

 圧力嫁接。

 これは賭けであった。

 自分自身の肉をも圧し潰すかもしれない危険な手。

 だが彼女はそれすらも厭わなかった。

 鋼鉄の意思。

 それこそがアイリス・アスカリッドという女の本質なのだから。

 

 パシュッ! 

 圧力に耐えきれず、数匹の犬が甲冑の外へと弾き出される。

 しかしまだ犬たちは残っている。

 辛うじて聖域を守り抜いてはいるが、

 彼女の体力は確実に削がれていた。

 額に浮かぶ脂汗。

 小鹿のごとき肢体を震わせながらも、

 彼女は剣を握りしめ、影の中へと突き進んでいく。

 

「まだ……終わってなどいない……!」

 黒騎士の雄姿。

 嬲られ、汚され、それなお不屈。

 その姿はまさに悲壮なる美しさに満ちていた。

 しかし影犬たちの繁殖は止まらない。

 この持久戦の行方は、いまだ闇の中にあった。

 ◆◆◆

 

 無敵甲冑《オレイカルコス》という絶対防御の聖域は、

 影犬たちによって内側から犯され、本来の機能を喪失しつつあった。

 しかし、甲冑が修復能力を失ったわけではない。

 問題は、その修復と破壊のサイクルそのものが、

 アイリスの肉体を奇妙な方向へと導いているという点であった。

 

 シュボッ、ちゅぽっ、ねちゅっ……

 

 鎧の中で、厭らかな水音が反響する。

 影犬たちはただ肉を貪るだけではない。

 彼らは万能の術師のごとく、女の身体を解体し、再構築していたのだ。

 まず最初に標的となったのは、淫核であった。

 包皮という名の皮を捲られ、その奥に隠されていた脆弱な珠が露わになる。

 まだ誰にも触れられたことのない、無垢なる聖域。

 そこへ影の刃が切入り、包皮を切除したのである。

 物理的な痛みは一瞬。

 直後に訪れたのは、空気に触れた敏感な肉が震え上がるような、

 痺れるような快感の奔流であった。

 

「あぐっ……! ひぃぃっ……!」

 

 そして乳腺である。

 乳首という入口から侵入した影線は、

 内側の管を丁寧に一本一本拡張し、開発していく。

 まだ処女である彼女の乳房は、本来ならば母乳など出るはずもない。

 しかし影犬たちの魔術的な干渉は、生理現象すらもねじ曲げた。

 子宮に代わり、乳房を第二の女性器として造り変えていくのだ。

 

「うぅっ…… なにが…… 出るの……? あぁっ! 出るっ! 出ちゃうぅっ!!」

 

 ぷしゅっ、という音と共に、白濁とした液体が噴き出す。

 母乳である。

 未だ未婚の乙女から搾り取られた、最初の蜜。

 それは影犬たちの滋養となり、また彼女の恥辱の証となった。

 

 だが更に恐ろしいのは、後庭への侵略であった。

 排洩のためだけの器官。

 そこを影犬たちは容赦なく抉じ開けた。

 短時間での破壊と拡張、そして《オレイカルコス》による修復と適応。

 この凄まじいサイクルが繰り返されることで、

 かつてはけして受け入れられなかったはずの孔は、

 淫靡なひだを備えた縦割れのケツマンコへと創り変えられてしまったのだ。

 

「お尻がっ…… 壊れるっ……! あぁぁ…… 熱いぃ……!!」

 

 そして最後に、本番たる秘所である。

 処女膜はまだ健在である。

 しかしその奥にある子宮口は、影犬たちの執拗な愛撫によって、

 処女のまま絶頂に達せしめられるよう教育されてしまった。

 膣口は犬の象徴をしゃぶり上げ、自ら奉仕するほどの淫らな名器へと変貌している。

 

「いやっ…… 私の体が…… 変になっていくぅっ……!」

 

 アイリスは絶叫した。

 身体の中を這い回る異物の感触。

 理性を灼き尽くす快感。

 それはまさに地獄であった。

 彼女はオナニーすら未経験の少女であった。

 自分の体を弄ぶことすら禁忌と考えていた矜持が、

 今や他者によって手荒に開花させられつつあるのだ。

 

 だが——。

 それでも尚、彼女は不屈であった。

 淫核を剥かれ、母乳を搾られ、アナルを開発され、オマンコを教育されても。

 なおも蒼玉の瞳には、鋼鉄の意思が宿っていた。

 ドスケベボディに創り変えられてもなお、

 彼女は黒騎士であった。

 

「負ける……ものか……! 私は…… 騎士だ……!」

 

 彼女は喘ぎながらも、剣を握りしめた。

《オレイカルコス》の出力を極限まで引き上げる。

 総ての魔力を、一撃に込める。

 

「あぁっ! イくっ! イっちゃうぅっ!!」

 

 絶頂と同時に、アイリスは剣を振り抜いた。

 そこはすでに戦場ではない。

 快楽の泥沼である。

 しかし彼女はその泥沼の中から、渾身の一撃を放ったのだ。

 己の身を嬲っていた数多の影犬たちが、

 一瞬にして蒸発していく。

 解放された母乳と愛液が飛沫となり、

 汗と涙に塗れた肢体が露わになる。

 

「はぁっ…… はぁっ……!」

 

 アイリスは膝をついた。

 甲冑の中は体液でぐしゃぐしゃである。

 彼女自身もまた、激しい絶頂の余韻に身を震わせていた。

 だが——影犬たちは消滅した。

 彼女の勝利であった。

 

 鋼鉄の処女は、ドスケベボディの騎士へと変貌した。

 しかしその魂は、まだ鋼鉄のままである。

 嗚呼、なんたる皮肉。

 なんたる栄光。

 そしてなんたる惨敗。

 彼女は勝ったのか? 

 それとも負けたのか? 

 答えの出ない問いの中で、雨はなおも降り続いている。

 

更新希望の原作

  • 魔弾の王
  • 落第騎士
  • ハイスクールD×D
  • 月姫
  • モブせか
  • マジエク
  • のんびり農家
  • 新妹魔王
  • 八男
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