※この作品はR-18です。

ダークエロよろず短編集   作:カード読み込み

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今更ですが、デスマキャラだけクロスです


ルモォーク王国の収穫祭

 

 何という哀れな肉人形の喜劇であろうか。

 大国同盟の兵たちが、鈍く光る剣を振り上げて、国境を越えてくる。

 奴隷狩りだ。

 彼らはルモォークの民を、人として認めてはいない。

 ただの資源。ただの肉。娯楽と労働のための、消耗品。

 だから、何の躊躇もない。

 女は奪われる。男は縛られる。

 子供たちは怯え、老人は踏みつぶされる。

 それが、今のルモォークの現実なのだ。

 

 サガ帝国は? 

 飢餓の帝国は、自らの飢えを癒やすのに必死で、

 隣の処女が野獣に裂かれていることなど、もう、どうでもいいのだ。

 シガ王国は? 

 泥沼の蛇どもは、互いの肉を食み合う内乱に明け暮れ、

 緩衝地帯の悲鳴など、もはやBGMにすらなっていない。

 国際魔導騎士連盟は? 

 足止めテロに足をすくわれ、影の猟犬に食い荒らされ、

 速やかな介入能力など、とうの昔に喪失している。

 頼れるものは、誰もいない。

 どこにもいない。

 此処には、ただ、蹂躙される側の熱い吐息と、

 蹂躙する側の粘着質な体液だけが充満している。

 

 クリュー・ルモォーク。

 その第二王女は、窓の外を眺めていた。

 桃色の髪が、首筋に張り付く。

 湿度が高い。

 空気そのものが、男たちの欲望でねっとりと冒されているのだ。

 眼下では、同盟の兵たちが、若い女たちを荷馬車に放り込んでいるのが見える。

 悲鳴。

 嗚咽。

 そして、服が引き裂かれる音。

 白い肌が露わになる。

 むっちりとした肉が、粗雑な手に鷲掴みにされる。

 たまらぬ光景であった。

 

 クリューの腹の底から、どろりとした熱いものが湧き上がる。

 これは、怒りなのか。

 それとも、絶望か。

 いや、もっと原始的で、もっと蠱惑的なものだ。

 自分もまた、あの荷馬車に乗せられるのが、

 ルモォークの王女としての宿命なのではないか。

 そう思うと、太腿の内側が、ちりちりと痺れた。

 子宮が、ぎゅうっと収縮する。

 彼女の肉体は、征服されるのを待っているのだ。

 

 ここで、我々は改めて、

 この哀れな国の第二王女、

 クリュー・ルモォークという女(ひと)の、

 その肉体的特質について、じっくりと、ねっとりと、

 その皮を剥くように、暴いていかねばなるまい。

 

 先ず、髪だ。

 腰まで届く、桃色の髪。

 これはもう、何という呪われた色彩であろうか。

 天与の恩寵ではない。

 大国の欲望の毒を受けて、変色した肉の萌芽だ。

 王族の血筋だけが発現させる、この蠱惑的な色は、

 それだけで、見る者の劣情を引きずり出す。

 まるで、熟れきった果実が、

「さあ、お食べなさい」と、自ら皮を裂いているようなものだ。

 

 次に、顔。

 童顔である。

 しかも、ただの童顔ではない。

 あどけなさすら漂わせる、

 その丸みを帯びた輪郭。

 大きな瞳は、朝露に濡れた菫の色をして、

 いつも、何かに怯えているかのように、うるうると輝いている。

 唇は薄桃色にふっくらと膨らみ、

 わずかに開いたまま、閉じることを忘れたかのように、

 常に湿った光沢を帯びている。

 

 この唇が曲者だ。

 男は、ここに何かを突っ込みたくなる。

 指か、あるいは、別の肉の塊か。

 彼女の無垢そうな顔立ちと、

 この、異常に扇情的な唇のギャップ。

 これこそが、クリュー・ルモォークという女の、

 最も凶悪な性的武器なのである。

 彼女は、自分がどれほど男の劣情をそそる肉体を持っているか、

 恐らく、本当の意味では理解していない。

 その無自覚な媚態が、また、男を狂わせるのだ。

 

 さて、その肢体である。

 身長は百六十二センチ。

 小柄ではない。

 だが、その華奢な骨格と、ふわりとした柔らかな物腰のせいで、

 実際よりずっと小さく、庇護欲をそそるものに見える。

 さながら、嵐の前夜に羽を濡らした小鳥のようだ。

 しかし、衣服の下に隠されたその中身は、

 小鳥どころか、とんだ食人花なのである。

 

 胸部。

 白いドレスの胸元を押し上げる双丘は、

 カップサイズで言えばHに届こうかという膨らみだ。

 重力にわずかに抗いながらも、その質量は確かに下へと引かれ、

 たわわな滴型を形作っている。

 歩くたびに、ドレスの下で、とぷん……とぷん……と、

 質量を持って揺れる様は、まるで、

 熟れきった桃が、枝先で風に震えるようではないか。

 肌は雪のように白く、青い静脈がうっすらと透けて見えるほどに薄い。

 触れれば、しっとりと汗を吸い付かせ、

 指がどこまでも沈み込みそうな、

 その柔らかさ。

 その透き通るような白い丘の頂には、

 淡い桜色の乳輪が広がり、

 中心で乳首が、慎ましくも確かな存在感を持って控えている。

 刺激を受ければ、この可憐な蕾は、

 みるみる充血して、桜から薔薇色へと変じ、

 ぷっくりと膨れ上がる。

 彼女は、この巨乳を、激しい動きの妨げになるという、

 ただそれだけの理由で、邪魔な肉塊だと思っている。

 その純真さが、また、男の嗜虐心を唆るのだ。

 

 腹部。

 細い。しかし、骨ばってはいない。

 むっちりと柔らかな脂肪の層が、薄絹のように腹筋を包み込み、

 触れれば指が沈むほどの弾力を持つ。

 臍は縦に細長く、白い肌にぽっかりと開いた、小さな秘密の窪み。

 脇腹から腰へとかけての曲線はなだらかで、

 後ろから抱きしめたくなるような庇護欲と、

 女の成熟を感じさせる肉感的な膨らみが、

 奇跡的な均衡を保っている。

 まさに、雌豹の腹だ。しなやかで、しなやかで、それでいて、内臓は灼熱に満ちている。

 

 臀部。

 これがまた、極めつけである。

 ドレスの上からでもわかる、豊満な肉の盛り上がり。

 腰のくびれから一気に広がるヒップラインは、

 まさに「安産型」という言葉を具現化したかのようだ。

 尻肉はたっぷりと重く、歩くたびに左右にゆっくりと揺れる。

 その動きは、見る者の視線を無意識に奪い、

 掌を押し当てて、その弾力を確かめたくなる衝動に駆らせる。

 この柔らかそうな肉の塊に、顔を埋めたい。

 息ができなくなって、窒息死しても構わない。

 そう思わせるほどの、魔性の魅力が、この尻にはある。

 肉付きは柔らかく、指を立てれば、どこまでも沈み込みそうだ。

 

 なんという、肉の楽器であろうか。

 彼女は生まれながらにして、男の欲望を奏でるための、

 最上級のストラディバリウスだったのだ。

 その自覚が、彼女には致命的に欠けている。

 いや、あるいは、知っていてなお、知らぬふりをしているのか。

 どちらにせよ、これは、悪夢のような肉体だ。

 ルモォークという国の、いびつな運命を、

 その身一つで体現している。

 

 クリュー・ルモォーク。

 彼女の半生は、国際政治という名の、

 淫猥な褥の上で、

 大国の欲望を受け止めるための生贄として

 捧げられてきたに等しい。

 十三歳のとき、某国の王子に、

 半ば政略的に捧げられた初夜。

 相手は、彼女の肉体に執着し、

 一晩中、その豊満な肢体を弄んだという。

 痛みと屈辱に耐えながら、

 王女としての責務を果たした彼女は、

 以来、自らの肉体を「国のための道具」と割り切るようになった。

 だというのに、その心の奥底では、

 純粋に愛し合える相手との交わりを、

 まだ、夢見ている。

 その、救いようのないまでの初心さが、

 彼女を単なる「清楚な姫」から、

「哀しき戦略家」へと、格上げしているのだ。

 

 白桃の杖。

 先端に桃の花をあしらった、白銀の杖。

 その硬度だけが、今の彼女の唯一の拠り所だ。

 

 窓の外からは、まだ、女たちの悲鳴が聞こえる。

 同盟の兵たちの、粗野な笑い声が聞こえる。

 やがて、あの手は、この王宮にも伸びてくる。

 もう、時間がなかった。

 

 クリューの、桜色の唇から、

 もう一度、熱い吐息が漏れる。

 

「……っ」

 

 これは、国の存亡を案じる危惧か。

 それとも、絶対的な暴力に支配されることへの、

 甘美な、期待なのか。

 もはや、彼女自身にも、

 その区別は、つかなくなっていた。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 哀れな肉人形の喜劇、その滑稽な舞台の上に、一人の男が降り立った。

 

 岩山を削り出して仕立てたような巨体。

 これが、大国同盟の侵攻軍を率いる男、アドルフ・フォン・シュナイダーである。

 噂には聞いていた。『空を裂く聖騎士』と。

 だが、目の当たりにしたその怪物のような質量は、想像を絶していた。

 身長は軽に二メートルを超えていようか。

 仕立ての良い紺青のタキシードが、はちきれんばかりに脹れ上がった筋肉の鎧を被っている。

 その背中から垂らした金糸を束ねた長い髪は、

 馬の鬣のように雄々しく、東欧の湿った風を受けて妖しく煌めく。

 一筋一筋が、悲鳴を上げているかのようだ。

 この男の存在そのものが、半径数メートルの空気を凍りつかせ、

 同時に、粘度の高い欲望で満たしていく。

 

 彼は、眼下で展開されている奴隷狩りを、冷ややかな眼で見下ろしていた。

 

 氷河の底を覗き込むような蒼色の瞳。

 見つめられれば瞬時に凍死してしまうのではないかと思わせるほど冷ややかで、

 それでいて、どこか厭らしく濡れた光を帯びている。

 この瞳だ。

 この瞳こそが、男の本性を語っている。

 由緒正しきシュナイダー侯爵家の血筋でありながら、

 政争によって追放され、修道院という冷たい搾乳機の中で育った男。

 禁欲と規律の隔壁の中で、逆に煮えたぎった粘着質な情欲を、

 どうしようもなく蓄積してきた男の眼である。

 

 

 及第点。侵攻作戦は、術順に進行している。

 あまりにも容易い。

 サガ帝国は動けず、シガ王国は泥沼の内乱に呻吟し、

 連盟は影の猟犬に食い荒らされている。

 誰も、この小国を救いに来ない。

 手負いの処女を裸で砂漠に放り出したようなものだ。

 獣たちが群がり、肉を食み、骨を砕く。それは自然の摂理であり、秩序である。

 アドルフは、秩序を愛する男だ。

 弱き者が強き者に蹂躙されることこそが、世界の正しい在り方だと信じている。

 だが、だからこそ、今の状況に一抹の飢餓を覚えてもいる。

 あまりにも、あっけないのだ。

 泣いて命乞いをする民衆。

 粗野な笑い声を上げる兵隊。

 裂かれる服。露わになる白い肌。

 それはそれで、悪辣な興奮を煽る光景ではあるが、

 彼の奥底に棲む巨大な悪魔を、完全には満足させない。

 

 彼は、前戯を愛する男なのだ。

 

 九歳の頃、修道院の冷たい石床で、神に祈りを捧げていた少年は、

 いつしか、祈りそのものを神聖な宦具に見立てていた。

 額を床に擦り付け、唇を震わせ、懺悔の言葉を吐き続ける過程。

 それこそが、彼にとっての快楽の原点であった。

 たっぷりと時間をかけて、相手の全身を丹念に愛撫し、

 肌が沸騰するまで高めていく過程そのものを、彼はセックスと捉えている。

 即物的な快楽は唾棄すべきもの。

 征服するならば、相手の芯が砕け散り、自ら足を開いて懇願するまで、

 じっくりと、ねっとりと、時間をかけねばならない。

 三百六十五日かけて穀物を実らせ、収穫の喜びを噛み締めるがごとく。

 それが、アドルフ・フォン・シュナイダーの美学である。

 

 赤い襟飾りが、胸元で揺れる。

 唇から、冷ややかな、それでいて奇妙に湿った声が滑り落ちた。

 

「……苛立ちますな」

 

 独り言にしては、朗々と響き渡る声量。

 一字一句が大理石のように硬く重い。

 部下たちが、ビクリと肩を震わせる。

 粗野な笑い声が、ぴたりと止む。

 彼の不機嫌は、即死の宣告に等しい。

 

「獲物の悲鳴に、覇気がありません。不足です。もっと、泣き叫ばせたまえ。

 もっと、絶望に染め上げたまえ。惨めなる肉人形にこそ、魂は宿るのですからな」

 

 有無を言わせぬ威圧。

 そして、その裏に隠された、微かな嘆息。

 彼は、ルモォークという国そのものを、巨大な宦具として見ている。

 サガとシガの間に挟まれ、政治的な体液にまみれて熟れ悶えるこの国を、

 彼は隅々まで味わい尽くしたいのだ。

 その桃色の髪の王女たちが漏らす吐息が、

 危惧なのか絶頂の悲鳴なのか区別がつかなくなるまで、自身の手で開発し尽くしたいのだ。

 

 その時であった。

 ふと、アドルフの蒼い瞳が、王宮の窓際に留まった。

 

 桃色の髪。

 白いドレス。

 華奢でありながら、異様なほどの膨らみを抱えた肢体。

 クリュー・ルモォーク。

 第二王女。

 

 視線と視線が、交錯した。

 熱い。ねっとりと絡みつくような、

 粘着質な視線が、クリューの肌にへばりつく。

 まるで、舌で舐め回されているかのようだ。

 氷河の底の蒼が、彼女の豊満な肉体を、舐り尽くす。

 巨大な双丘。たわわな尻肉。むっちりとした太腿。

 あるべき秩序が、問答無用の暴力によってねじ伏せられる瞬間の、あの甘美な戦栗。

 それを、彼は瞳の奥で噛み締めている。

 

「……ほう」

 

 低く、濁った感嘆が漏れる。

 秋に予定されている婚約者との結納式など、もう、どうでもよかった。

 目の前に現れた、極上の果実。

 まだ、誰の手にも屈していない、芯の強さを残した処女。

 

 アドルフの背中で、黄金の鬣が、誇らしげに揺れた。

 欠伸をする獅子が、ふと、狙いを定めたかのように。

 ゆっくりと、彼は歩き出した。

 その巨体が一歩踏み出すたびに、大地が哭泣するかのように震える。

 

 ルモォーク王国の悲劇は、まだ始まったばかりである。

 いや、これからが本番なのだ。

 長く、ねっとりとした、地獄の前戯が。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 巨体が、動いた。

 

 ゆっくりと、しかし確実に。

 岩山が地響きと共に迫る如く、アドルフ・フォン・シュナイダーは歩を進める。

 その一歩一歩が、ルモォークという小国の主権を、

 粘着質な体液でべっとりと汚していくかのようだ。

 メイスを構えた重歩兵のような威圧。

 廊下を歩く足音だけでも、石造みの王宮が悲鳴を上げそうである。

 

 対するは、クリュー・ルモォーク。

 桃色の髪の第二王女。

 華奢な肩を震わせ、しかし退かない。

 退くに、退けないのだ。

 彼女の背後には、挽肉にされようとしている祖国の民がいる。

 退けば、彼らの悲鳴が一オクターブ高くなる。

 だから、前に出る。

 震える足を、無理やり動かして。

 

「ルモォーク王国、第二王女、クリュー・ルモォークでございます」

 

 声が出た。

 震えている。

 掠れている。

 だが、響いている。

 どうにか、言葉になった。

 彼女は、白桃の杖を握りしめた。

 その白銀の冷たさだけが、理性を辛うじて繋ぎ止めている。

 

「お話が、あります。同盟軍の撤退、そして、解放された民の返還を──」

 

「撤退?」

 

 言葉が、遮られた。

 冷ややかな氷河の底の声。

 だが、その響きには、どこか厭らしく濡れた湿り気が含まれている。

 アドルフは、目の前まで歩み寄ると、見下ろした。

 二メートルを超える巨体と、百六十二センチの肢体。

 見上げなければ、顔が見えない。

 その物理的な高低差が、既に、支配と被支配の構造を決定づけている。

 

「返還? 姫君。勘違いをしているようですな」

 

 アドルフの唇が、冷笑の形に歪む。

 その笑みは、虎が兎の懇願を聞き流す時の、あの残酷な、そして満ち足りた笑みだ。

 

「彼らは、もう、貴女方のものではありません。対価を支払って買い取った商品です。

 合法的かつ、秩序だった取引の結果です。違いますかな?」

 

「そんな……! 人を、人を商品のように……!」

 

「人も、資源の一つに過ぎません。それに、貴女方の国こそ、そうでしょう? 

 サガの盾として、シガの緩衝材として、大国の褥の上で身を開いてきた。

 其処が、今度は同盟の褥に組み敷かれた。ただ、それだけのこと。

 肉体が、持ち主を変えただけです」

 

 ねっとりとした声音だ。

 言葉の一つ一つが、粘液質の触手のように、クリューの肌にへばりつく。

 その触手は、スルリとドレスの裾から入り込み、白い太腿を這い上がってくるかのようだ。

 

「あ……っ」

 

 クリューが、息を呑んだ。

 アドルフの巨手が、伸びてきたのだ。

 肉厚のある、剣胼胝の目立つ掌。

 その指が、クリューの桃色の髪を一房、掬い上げた。

 

「────────」

 

 吐息が、触れる。

 熱かった。

 氷河の底の瞳だというのに、吐息だけが灼熱のマグマのように熱い。

 髪を弄ぶ指の動きが、異様に丁寧で、異様に執拗である。

 ただ触れているだけではない。

 指先で、一本一本の髪の質感を確かめ、その感触を味わっているのだ。

 まるで、食事の前の儀式。

 

「美しい。侵攻前の情報では、随分と質の高い果実があると聞いていましたが……

 これほどとは。桃の髪。これはもう、ルモォークの呪いなどという生易しいものではない。

 見る者の理性を焼き尽くす、毒そのものだ」

 

「な、何を……! や、やめてください!」

 

 クリューが、後退ろうとする。

 だが、腰が引けている。

 恐怖で、足が動かない。

 アドルフの手が、髪から頬へ、そして顎へと滑り落ちる。

 酷く重い、鉄の錘のような手触り。

 その手に顎を掴まれ、無理やり上向かされた。

 

「んっ……!」

 

 視線が、真正面からぶつかる。

 逃げ場がない。

 蒼い瞳が、吸い込まれていく。

 その深淵の奥には、底なしの欲望が、じっと様子を伺っている。

 

「交渉なら、喜んで。

 ですが、王女。外交の席には、相応の服装というものがありますまい?」

 

「え……?」

 

「そのドレス。

 随分と、肉が溢れていますな。

 胸元が。尻が。

 まるで、『さあ、どうぞ』と誘っているかのようだ。

 献身的な姫君だ。民のために、自らの体を差し出そうとは」

 

「そ、そんな意図は……!」

 

「意図など、どうでもいいのです。

 結果だけが、全て。

 見えない敵に蹂躙されるのが、貴女方の国の定めなら、

 見える敵に蹂躙されるのもまた、定め。

 違いますかな?」

 

 否定の言葉が、喉で詰まる。

 そうだ。

 ルモォークは、いつもそうだった。

 知らぬ間に、大国の都合で捏ね上げられ、

 理不尽な圧力を受け止める肉壁として存在してきた。

 今も、そうだ。

 目の前の巨男から注がれる圧力を、

 その華奢な肉体で受け止めること。

 それこそが、今の彼女に課された職分なのかもしれない。

 

「────あっ」

 

 アドルフの指が、ドレスの胸元に掛かった。

 占領軍の指揮官たる巨躯の指先は、

 裁縫糸のように頼りない留め具を、軽々と弾き飛ばす。

 プチンッ。

 乾いた音が、廊下に響いた。

 

「いやっ……!」

 

 クリューが、慌てて胸元を隠そうとする。

 だが、遅い。

 白いドレスの前がパックリと開き、

 その下に隠されていた、驚くべき質量の双丘が、弾けるように露わになる。

 

 むにゅうぅっ。

 

 重たい音を伴って、肉が弾む。

 重力に従い、たわわな滴型を形作るHカップの巨乳。

 雪のように白い肌。

 透けて見える青い静脈。

 そして、頂点に君臨する、淡い桜色の乳輪と、

 慎ましく控えていた乳首。

 

「ほう……」

 

 アドルフの瞳が、爛々と輝く。

 まるで、探検家が未踏の秘境を発見した時のような、

 純粋な、それでいて占領欲に満ちた光だ。

 

「これは……傑作だ。

 西欧の古い哲学に、『隠された美は開示されるべし』という言葉があります。

 開示いたしましょう、姫君。

 貴女のその美しき肉の、すべてを」

 

 アドルフの両手が、遠慮なく、その白い双丘に添えられた。

 巨大な掌が、その豊満な質量を、下からすくい上げる。

 

「んんっ……! あ、ああっ……!」

 

 クリューの喉から、悲鳴ともつかぬ、甘い声が漏れる。

 重い。

 熱い。

 剣胼胝のある、荒れた掌の感触が、

 あまりにも繊細な乳房の皮膚を刺激する。

 まるで、荒縄で縛られているような、被虐的な快感。

 

 アドルフは、ゆっくりと、その肉を揉みしだき始めた。

 急かない。

 圧迫しない。

 ただ、質量を楽しむように、掌の中で形を変えさせ、

 その弾力と柔らかさを、指先で確かめていく。

 

「優秀な肉だ。

 弾力があり、脂肪の層が均一。

 しかも、これほどの大きさでありながら、崩れがない。

 ……姫君。貴女は、気づいていなかったのでしょうな。

 自身が、ただの布一枚の下に、

 これほどの凶器を隠し持っていたことに」

 

「ふ、ふぇっ……いやぁ……さわ、らないで……!」

 

「触らねば、始まりますまい。

 交渉とは、互いの不利を突き合うもの。

 貴女方の不利は、圧倒的な軍事力。

 私の不利は……そう、此度の遠征費用と、兵の労働対価だ。

 これらを相殺するには、桁違いの対価が必要だ。

 分かりますかな?」

 

 分かるわけがない。

 クリューには、彼の言う「対価」が、

 自分の肉体そのものであることなど、明白すぎるほどに分かっているが、

 それを認めることなど、できるはずもない。

 

「ひっ……ぃやぁ……!」

 

 アドルフの指が、乳首を捉えた。

 ぷにゅり、と。

 慎ましい蕾を、指の腹で押し潰す。

 桜色が、薔薇色に変じるまで、さほど時間は要さなかった。

 充血し、ぷっくりと膨れ上がった乳首を、

 アドルフは親指と人差し指で、軽く挟み込んだ。

 

「あぐっ! ああああんっ……!」

 

 電流が走ったかのようだ。

 背骨を駆け上がる痺れ。

 子宮が、ぎゅうっと鷲掴みにされるような、内側からの収縮。

 クリューの膝が、カクンと折れた。

 

 巨躯が、それを逃さない。

 アドルフの腕が、クリューの腰を抱き寄せる。

 ドレスの背中側に、硬い男の胸板が押し付けられる。

 逃げ場はない。

 背後から抱きすくめられ、前方の胸元は、陵辱の掌に占領されている。

 完全なる、包囲だ。

 

「どうです、姫君。

 此処が、貴女方の玉座でしょうか? 

 それとも、処刑台でしょうか? 

 いずれにせよ、視界は良好。

 眼下の惨状が、よく見える」

 

 窓際だ。

 アドルフは、クリューを抱えたまま、窓の方へと歩を進める。

 クリューの視界に、再び、地獄が広がる。

 奴隷狩りされる民衆。

 引き裂かれる服。

 白い肌にへばりつく、同盟の兵たちの粗糙な手。

 

 そして、自分もまた。

 今、この瞬間に、背後の巨人に、

 その白き肉を貪られているのだ。

 

「ああっ……ああっ……! だめ、だめぇ……! みんなが、見てる……!」

 

「見せるがいい。

 自国の姫が、占領軍の将に良いようにされている様を。

 それが、最も確かな『降伏宣言』というものだ」

 

 アドルフの唇が、クリューの耳元に寄せられた。

 湿った舌が、耳の甲を舐め上げる。

 

「ひゃぁっ!?」

 

「じっくりと、ねっとりと、教え込んであげましょう。

 貴女方の国が、これからどうなっていくのかを。

 その豊満な肉体の、隅々に至るまで。

 私の掌の上で、その理解を深めるがいい」

 

 ねっとりと。

 的確に。

 前戯の、開始である。

 ルモォーク王国の悲劇は、まだ、序の口に過ぎない。

 

 ◆◆◆

 

 窓硝子が、蝶番を悲鳴上げさせながら内側へと跳ね除けられた。

 

 暴風のような湿気が、室内へと雪崩れ込んでくる。

 それは東欧の風か。

 いや、違う。

 それは眼下で展開されている、略奪と暴行の狂宴が撒き散らす、

 どす黒く粘度の高い欲望の蒸気だ。

 

 アドルフ・フォン・シュナイダーは、

 その蒸気を纏わりつかせたまま、

 華奢な第二王女を抱え込み、バルコニーへと躍り出た。

 

「ああっ……! だめ、だめぇっ……! 外に……人が……!」

 

 クリュー・ルモォークが、か細い悲鳴を上げる。

 退け、と抗うその華奢な肩は、しかし岩のような巨躯に押し付けられ、

 万力のごとく強靭な腕の中に封じ込められている。

 逃げ場など、最初から用意されてはいなかったのだ。

 

 眼下には、地獄があった。

 王宮の中庭を埋め尽くす同盟軍の兵士たち。

 そして、その足元で虫のように這いつくばるルモォークの民衆。

 女たちは服を引き裂かれ、白い肌を晒し、

 粗野な手に鷲掴みにされて悲鳴を上げている。

 男たちは縛り上げられ、鞭打たれ、

 ただ黙ってその惨状を見せつけられている。

 

 そして今、その無数の視線が──

 飢えた狼のような視線が、

 そして絶望に染まった虚ろな視線が──

 一斉に、上を見上げた。

 

 バルコニーに立つ、二人の人影を。

 白きドレスを乱され、巨乳を露わにした桃色の髪の姫君を。

 その背後から抱きすくめ、所有権を誇示するように

 白き肉を貪る巨躯の騎士を。

 

「ほら、ご覧なさい、姫君。

 貴女方の民が、貴女を見ていますよ」

 

 アドルフの低く湿った声が、耳元で響く。

 熱を持った吐息が、クリューの首筋を舐め上げた。

 

「ひっ……! み、見ないで……! みないでぇっ……!」

 

 クリューは顔を背けようとする。

 だが、アドルフはそれを許さない。

 巨手がクリューの顎を掴み、無理やり下を向かせる。

 見せつけさせるのだ。

 自国の王女が、占領軍の将に良いようにされているその様を。

 これが「降伏」の現実であると。

 これが「隷属」の第一歩であると。

 

「あぐっ……んんっ……!」

 

 アドルフのもう一方の手が、露わになったHカップの巨乳を

 遠慮なく掴み上げた。

 むにゅうぅっ! 

 たわわな肉が、指の間から溢れ出す。

 雪のように白い肌が、無慈悲な圧力で赤く染まる。

 重たい質量を持った双丘が、掌の中で形を変え、弾力を主張する。

 

「傑作だ。これほど見事な肉器は、そうあるものではない。

 西欧の貴族社会でも、これほどの質量と美しさを兼ね備えた女は稀だ。

 それを貴女方は、ただの『緩衝地帯』としてしか活用してこなかった。

 なんという勿体ない。なんという愚か」

 

 アドルフは独白するように呟きながら、

 その指先で淡い桜色の乳首をつまみ上げた。

 充血し、硬くふくらんだ蕾を、指の腹でねっとりと弄ぶ。

 

「ああっ! あぁんっ……! そこ、だめぇ……!」

 

 電流が脊髄を駆け抜ける。

 背骨が弓なりに反り返り、

 クリューの喉から甘く高い悲鳴が迸った。

 

 その声だ。

 その艶めかしい声が、バルコニーの下まで届いたのだ。

 兵士たちの歓声が上がる。

 口笛が飛ぶ。

 下品な野次が飛び交う。

 

「おい見ろ! 姫様のおっぱいだ!」

「すげえデカパイだな! 揉み心地はどうだ将軍!」

「泣き声がエロいぞ! もっとやってやれ!」

 

 民衆は沈黙したままだ。

 ただ、その目には深い絶望と共に、

 異様な光が宿っていた。

 それは「我らの象徴が陵辱されている」という怒りか。

 それとも、「自分たちもあんな風に扱われるのか」という恐怖か。

 あるいは──

「あんな風に支配されたかった」という歪んだ羨望か。

 

 クリューは知った。

 自分が今、国境線上に立たされていることを。

 サガとシガという二つの猛獣に挟まれた緩衝地帯ではなく、

 支配と被支配という二つの衝動に挟まれた、

 究極の辱めの場に立たされていることを。

 

「いい声だ。もっと聞かせたまえ。

 貴女方の王女としての尊厳が、肉の快楽に食い破られていく音を」

 

 アドルフの手が激しさを増す。

 巨乳を揉みしだく指の動きが、一段と執拗になる。

 ただ圧迫するだけではない。

 肉の弾力を楽しみ、その重みを掌で量り、

 乳首への刺激で反応する女の生理を探り当てていく。

 それはまるで、職人が最高級の粘土を捏ねるような、

 愛おしさすら感じさせる丁寧さであった。

 

 だからこそ、たちが悪い。

 ただ暴力で犯されるなら、まだ耐えられたかもしれない。

 だが、この男は「愛でる」のだ。

 女としての機能を余すところなく引き出し、

 その肉体が悦ぶ通りに開発していく。

 それは蹂躙というより、調教に近かった。

 

「んぁっ……あぁっ……ちくび……だめ……びんかん……なのぉっ……!」

 

 思考が溶ける。

 否定したいのに、言葉が甘く蕩ける。

 子宮の奥底から湧き上がる熱い塊が、

 理性という堤防を内側から押し破ろうとしていた。

 

「敏感なのだな。さすがは『水桃』の血筋。

 潤いやすい体質と見える。

 見えない敵に蹂躙される悦びも、

 見える敵に蹂躙される悦びも、

 貴女方にとっては同じことなのかもしれないな」

 

「ちが……う……! ちがうぅっ……! わたしは……ただの……肉壁……じゃ……ない……っ!」

 

「肉壁だ。そして今日より、私の肉壺となる。

 それが貴女の国を救う唯一の道だと思いたまえ」

 

 アドルフの手が、ドレスの裾から滑り込んだ。

 太腿の内側へ。

 むっちりとした肉の感触を楽しむように、

 指先がゆっくりと這い上がる。

 

「ひゃぅっ……! そこ……ああっ……!」

 

 熱だった。

 太腿の間は既に灼熱の炉となっていた。

 決定的な証拠が指先に触れる。

 下着はとうに濡れそぼり、

 粘度の高い蜜が溢れ出している。

 

「ほう……既に此処まで準備ができているとは。

 素直な体だ。心は拒絶していても、子宮は歓迎している」

 

「いやぁ……! いやぁぁっ……! みないでぇっ……! お願い……もう許して……!」

 

 クリューは涙で潤んだ瞳で懇願した。

 誰に? 

 眼下の民衆にか。

 それとも背後の支配者にか。

 答えは出なかった。

 ただ分かるのは、自分という女が今この瞬間、

 決定的な解体を迎えようとしているということだけだ。

 

 バルコニーの手すりを掴む白い指先が震える。

 その指先だけが必死に抵抗し続けている。

 この指先が離れた時、

 彼女は完全に堕ちるだろう。

 

 アドルフ・フォン・シュナイダーは冷笑した。

 まだだ。まだ早い。

 彼は前戯を愛する男だ。

 相手が自ら足を開き、「どうかお食べください」と懇願するまで、

 じっくりと時間をかけるつもりだった。

 

 だが今はまだ序章。

 その美しき肉を貪り尽くす暴虐の愉悦は、

 まだほんの小口に過ぎないのだから。

 

 アドルフ・フォン・シュナイダーは思った。

 

(これは、愛玩に値する)

 

 秋には婚約者との結納式を控えている。

 由緒正しき伯爵令嬢。

 肌は大理石のように白く、声は小鳥の囀りのように愛らしい。

 前戯に時間をかけ、ろうそくの灯りの下で崇拝するように抱く。

 それが彼の美学であり、秩序だった。

 

 だが。

 だが、である。

 

 このクリュー・ルモォークという女は、

 その「秩序」の対極にいた。

 

 彼女の肉体は、彼の理性を焼き切る。

 婚約者にはないもの。

 即ち、『蹂躙したくなるような、庇護欲と嗜虐心を同時に唆る、危うい美しさ』。

 それが、この桃色の髪の王女にはあった。

 

「ふむ……」

 

 彼の脳裏に、ある構想が浮かぶ。

 侯爵家の別邸。

 誰にも知られることのない、深い森の中の隠れ家。

 あの場所に、この女を囲おう。

 愛人として。

 あるいは、性奴隷として。

 言葉はどちらでも良かった。

 重要なのは、この極上の肉を、

 自分だけの所有物として、誰にも触れさせず、

 飽きるまで、いや、飽きることなど未来永劫ないだろうが、

 それでも飽きるまで、弄び尽くすこと。

 

「姫君」

 

 アドルフの声が、ぬめりを帯びてクリューの耳朶に絡みつく。

 巨体がさらに密着し、硬い胸板が彼女の華奢な背中を押し潰す。

 バルコニーの手すりが、ギシリと軋んだ。

 

「ひっ……!」

 

「良いことを教えましょう。

 私は今、貴女を『妾に欲しい』と思った」

 

 クリューの菫色の瞳が、驚愕に見開かれる。

 眼下の民衆も、その言葉に静まり返った。

 

「な、なにを……!」

 

「貴女は美しい。

 その桃色の髪も、この白く柔らかな肉も。

 だが、それだけではない。

 貴女の奥底に眠る、被虐の才が、私を誘うのだ。

 気づいているか? 貴女は今、恐怖と同時に、

 これから起こることへの期待に、子宮を震わせている」

 

「ち、ちが……!」

 

「違わない。証拠を見せよう」

 

 アドルフは、クリューの太腿の間から濡れそぼった指を引き抜くと、

 それをゆっくりと、彼女の眼前に掲げた。

 白い指が、粘度の高い蜜を引いて、陽の光にきらめいている。

 

「見よ。これは何だ? 

 これは、貴女の内臓が分泌した、歓迎の蜜だ。

 心がどう拒絶しようと、肉体は正直だ」

 

 クリューは言葉を失った。

 自分の目を疑った。

 あんなに、こんなに、どれほど。

 言い訳の余地もないほど、自分の秘所は濡れきっている。

 それは、背後の巨漢に組み敷かれることが、

 彼女の深層意識にとって、どれほどの悦びなのかを示す、

 紛れもない物的証拠だった。

 

「あ……ああ……」

 

 クリューの瞳から、涙が零れ落ちる。

 それは悔しさか。屈辱か。

 それとも、自分の隠された本性を暴かれたことへの、

 甘美な敗北感か。

 

 アドルフは、その涙を指ですくい取ると、

 今度は、自分の唇へと運んだ。

 ぺろり、と舐める。

 蜜の味と、涙の味を、混ぜ合わせるように。

 

「美味だ。貴女方の国の水は、女をこうも甘美に育てるのか。

 ならば、この国そのものを、我が同盟の苗床とするのも一興。

 ……だが、まずは其方だ。姫君。

 其方一人を、じっくりと、ねっとりと、

 私だけの雌へと調教して進ぜよう」

 

 彼の両手が、クリューの豊満な臀部を掴んだ。

 ドレスの上からでも分かる、その圧倒的な質量。

 指が沈み込むほどの柔らかさ。

 

「ひゃうっ!」

 

「まずは、この尻だ。

 見事な肉付きだ。安産型というやつだな。

 何人、孕める? 五人か? 十人か? 

 其方が私の子を孕み、腹を膨らませ、

 その豊満な乳房から乳を噴き出す様を想像すると……

 おお、これはいかん。年甲斐もなく、昂ぶってしまう」

 

 ねっとりとした独白。

 彼は、自分の妄想を、言葉という形でクリューに聞かせることで、

 その精神をも蹂躙しようとしているのだ。

 

 尻を揉む手が、さらに執拗になる。

 左右に割り開き、その中心にある秘裂の位置を、

 布越しに指でなぞり上げる。

 

「んおっ……! あ、ああっ……!」

 

 クリューの背筋が、ビクンと跳ねた。

 バルコニーの手すりを掴む指が、白くなる。

 歯を食いしばり、声を押し殺そうとするが、

 アドルフの指がそれを許さない。

 

「声を出せ。隠すな。

 貴女のその甘い悲鳴は、私への忠誠の証。

 そして、眼下の民への、子守唄になる」

 

 アドルフの指が、下着の上から、秘裂の切れ込みに沿って、

 ゆっくりと上下に動き始める。

 

 くちゅっ……くちゅっ……

 

 粘着質な水音が、静かなバルコニーに響き渡る。

 それはあまりにも官能的で、あまりにも淫猥な、

 王女のメンブラムであった。

 

「あっ♡ あぁっ♡ だめ、だめぇ……! おとが……おとがしちゃう……!」

 

「させろ。聞かせろ。それが、貴女の国を救うための、

 最初の貢ぎ物だと思え」

 

 アドルフの指の動きが、さらに激しくなる。

 彼はもはや、ただの侵攻軍の指揮官ではなかった。

 これは狩りだ。

 一人の貴族が、その財力と暴力を以て、

 気に入った女を囲い込み、飼い慣らす。

 それは、この歪んだ世界においては、

 神聖で、高貴な、権力者の戯れですらあった。

 

 彼は、クリューのうなじに、吸い付いた。

 強く。痕が残るほどに。

 

「ひぃっ!?」

 

 痛み。

 そして、その痛みを追いかけるように、

 背筋を駆け上がる、甘い痺れ。

 

「所有の印だ。これで其方は、私のものとなった」

 

 アドルフは、ゆっくりと顔を上げた。

 その唇は、クリューの体液と血液で、うっすらと濡れ光っている。

 氷河のような瞳の奥で、悪魔の炎が静かに燃え盛っていた。

 

「安心しろ、姫君。

 私は手荒な真似は好まない。

 これからたっぷりと時間をかけて、

 其方のその美しい躰の、全ての性感帯を開発し尽くしてやろう。

 其方が自ら、『愛人にして下さい』と、

 そう、懇願するまで、な」

 

 彼の指は、まだ止まらない。

 クリューの秘所を、愛おしむように、しかし容赦なく、

 それは長く、ねっとりとした地獄の前戯の、

 ほんの始まりに過ぎなかった。

 

 ◆◆◆

 

 泣いても無駄である。

 

 懇願しても無駄である。

 

 詰っても、やはり無駄なのである。

 

 その三重の無駄を、クリュー・ルモォークはまだ理解していなかった。

 桃色の髪を振り乱し、菫色の瞳から涙を散らし、

 か細い声で「いや」「やめて」「お願い」という言葉を紡ぐ。

 屠殺場へ引かれる子牛が、その無垢な瞳で慈悲を乞うかのようだ。

 哀れである。しかし、その哀れさこそが、

 捕食者の食欲を刺激するスパイスに過ぎないこともまた、事実なのである。

 

「再教育ですよ、姫君」

 

 アドルフ・フォン・シュナイダーは、

 岩のような巨躯から発する重低音でそう告げた。

 その声には憐憫すら含まれていたが、それは対象への共感ではなく、

 理解不能な他者の言語を聞く時のような、冷徹な観察者のそれであった。

 

「貴女方は長らく、『肉壁』としての正しい使い方を教えられてこなかった。

 ただ立ち尽くし、圧力を受け止めるだけ。それはあまりにも勿体ない。

 肉には、肉の悦びがあるのです。それを教え込むのが、貴族の務めだ」

 

 巨躯の手が、再びHカップの白桃のような双丘を掴んだ。

 今度はさらに深く、指が肉に埋没するほどに。

 むにゅうぅっ! という卑猥な音が、バルコニーの湿った空気を震わせる。

 

「あぐっ……! ひぃっ……! や、やめ……!」

 

「やめないと言っているでしょう。此処から先、貴女が『はい』と言うまで、

 私は指を止めない。それが秩序であり、貴女方の新たなる定めだ」

 

 アドルフの指が、赤く腫れ上がった乳首を捉えた。

 左右同時に、親指と人差し指で挟み込み、容赦なく捻り上げる。

 

「ひゃあぁぁっ!? ああっ! いたい……! いたいぃっ……!」

 

 痛みである。

 鋭利な痛みが乳房の先端から脳髄へと突き抜ける。

 クリューは背中を反らし、逃げようと身をよじる。

 だが、アドルフの腕は万力のごとく封じ込め、逃げ場など微塵も与えない。

 

「痛いか? だが、見てみたまえ。其方の肉は、どうだ?」

 

 言われて、クリューは視線を落とした。

 信じられない光景であった。

 痛みに歪む顔とは裏腹に、その乳房は期待に脈打っていた。

 乳首は硬く屹立し、赤黒く充血して、

「もっとやってくれ」と唆すようにぷっくりと膨れ上がっているのだ。

 しかも、その付け根から乳房の表面にかけて、うっすらと桃色の紅潮が広がっている。

 それは屈辱の赤みではない。肉の歓喜、雌の発情の色なのである。

 

「いやぁ……! こんな……こんなの……!」

 

「認めなさい。貴女の体は正直だ。

 痛みを快楽に変換する回路が、すでに出来上がっているのだから」

 

 アドルフの手が下方へと滑り落ちる。

 ドレスはもはや布切れ同然。

 彼の手は何の障害もなく、クリューの最も秘めたる場所へと到達した。

 下着など、既に意味をなしていない。

 太い指が、熱を孕んだ秘裂に割り込む。

 

「ひっ……! だめ……! そこは……!」

 

「濡れている。どろどろにだ。これほど明白な証拠があろうか。

 貴女は今、私に犯されることを渇望している。

 心が否定しようと、子宮が肯定しているのだ」

 

 ぬるっ、という音と共に、指が侵入を果たした。

 異物感。圧迫感。

 しかし、それは決して不快なものではなかった。

 むしろ、長らく空いていた穴に、

 ようやく適合する栓が差し込まれたかのような、安堵にも似た充足感がクリューを襲う。

 

「あぁっ……♡ あぁぁっ……♡」

 

 声が変わった。

 悲鳴が、喘ぎへ。

 拒絶が、歓迎へ。

 

 アドルフは、その変化を見逃さなかった。

 氷河のような瞳が細められ、口元にサディスティックな笑みが浮かぶ。

 彼は指を動かし始めた。

 出し入れするのではない。

 壁面をなぞるように、最も敏感な場所を探り当てるように、執拗に、ねっとりと。

 

「くちゅっ……♡ ぐちゅっ……♡ じゅぽっ……♡」

 

 水音が響く。

 卑猥で粘着質な音が、クリューの理性を削り取っていく。

 太腿が震える。

 腰が勝手に動き出す。

 指を求めて、無意識に腰を振る自分に気づき、クリューは絶望した。

 

(わたしは……何を……!)

 

「そうだ。いい動きだ。

 其方は今、私の指に侍っているのだ。

 これが『肉壁』の真の姿だ。

 ただ受けるだけではない。

 自ら求め、貪り、快楽を啜るのが、真の雌の務めだ」

 

 アドルフのもう片方の手が、再び乳房を掴み上げる。

 上半身と下半身、両方からの同時攻撃。

 もはや、思考など働くはずもなかった。

 

「ああっ♡ ああんっ♡ おおきい……♡ おおきいのが……♡ はいってくるぅっ……♡」

 

 言葉が出た。

 知らず知らずのうちに。

 それはルモォーク王国第二王女としての言葉ではない。

 ただのメスが、オスを悦ばせるために吐く、卑屈な媚び言葉であった。

 

「ほら、下を見ろ。貴女方の民が見ているぞ。

 かつての象徴が、今は私の指一つで腰を振っている様を。

 

 視線が突き刺さる。

 数百、数千の目が。

 失望と軽蔑と羨望が入り混じった視線が、クリューの肌を焼く。

 羞恥心が爆発した。

 熱い。頭が沸騰しそうだ。

 しかし、その羞恥こそが、最強の催淫剤となってクリューを追い詰める。

 

「いやぁっ♡ 見ないでぇっ♡ 見ないでくださいぃっ♡」

 

 叫びながらも、クリューの腰は止まらない。

 むしろ、見られているという事実に興奮し、その動きは加速していく。

 今、衆人環視の中で公開オナニーのような真似を強要されているのだ。

 しかもその相手は、他ならぬ占領軍の将。

 

「あっ♡ あっ♡ いくっ♡ いくぅっ♡ おおきいのが♡ わたしのなかに♡ おおきいのがぁぁぁっ♡」

 

 限界であった。

 理性の堤防が決壊する。

 快楽の濁流が、クリューという一人の女を飲み込んでいく。

 

「再教育完了だ。

 さあ、其方から言うのだ。

『愛人にして下さい』と」

 

 アドルフが耳元で囁いた。

 その声は悪魔の囁きだったのか。

 それとも救世主の啓示だったのか。

 

「……♡」

 

 クリューは自ら足を開いた。

 これ以上ないほど大きく。

 そして、蜜にまみれた秘所をアドルフに擦り付けながら、

 涙と涎でぐしゃぐしゃになった顔で、彼を見上げた。

 

「……あいじんに♡ して……くださいませぇぇぇっ♡♡♡」

 

 絶頂であった。

 メスとしての本性を完全に晒け出し、

 屈強なオスに侍る媚態を見せつけながらの絶頂。

 その桃色の髪が乱舞し、白い肢体が弓なりに反り返り、

 Hカップの乳房が波打つ様は、

 まさしく哀れな肉人形が魂を得て踊り狂う喜劇そのものであった。

 

 ルモォーク王国は今日をもって滅びたのかもしれない。

 いや、新たなる主を得て生まれ変わったのかもしれない。

 どちらにせよ、もう後戻りはできないのだ。

 ねっとりとした体液の海の中で。

 

 ◆◆◆

 

 バルコニーの上で演じられた、哀れな肉人形の喜劇。

 その余韻は、叫撃となって王宮の廊下を、そして王都の石畳を転がり落ちていった。

 

「あいじんに♡ して……くださいませぇぇっ♡♡♡」

 

 クリューの絶頂の悲鳴は、春の嵐のように、全ての理性を吹き飛ばした。

 あの高潔なるはずの第二王女が、占領軍の将に足を開き、

 自ら腰を振ってメスの悦びを啜ったのである。

 その痴態は、同盟軍の将兵たちにとって、最強の催淫剤となった。

 

 だが、戦場において運命の女神が微笑むことなど滅多にない。

 あるのは、泥と血と、そして男たちの欲望が混ざり合う泥沼だけだ。

 その泥沼から、今まさに、強欲な触手が伸びようとしていた。

 

「おい、聞いたか! 姫様のあの声だぞ!」

「締まりのない間抜けな鳴き声だ! あれが王女の本性かよ!」

「俺たちも! 俺たちもあんな風にやっていいんだ!」

 

 狂気が、伝染する。

 感染症のように、あるいは野火のように。

 士官たちの目が、血走る。

 兵士たちの股間が、熱く脹らむ。

 およそ人間にあるまじき暴虐の限りが、ここに解き放たれたのだ。

 

 まず、犠牲になったのは王宮侍女たちであった。

 上級貴族の出身。選りすぐりの容姿端麗。

 日頃は高慢な態度で兵士を見下していた彼女たちも、今はただの獲物でしかない。

 

「ひっ! な、何をするのです! 離しなさい!」

「離せだと? 笑わせるな。其処の姫様が見本を示してくださったんだ。お前らも倣えよ!」

 

 士官の一人が、まだ若い侍女の腕をねじり上げた。

 ドレスがビリビリに引き裂かれる。

 白い肌が露わになる。

 上級貴族の出としての矜持から、必死に抵抗しようとした。

 爪を立て、足を蹴り上げる。

 だが、それは野蛮な狼の毛皮に火镖を投じるに等しかった。

 

「あぐっ! 痛っ! や、やめて……! 助けて! 誰か!」

 

 士官の平手が、侍女の頬を叩いた。

 乾いた音が響く。口端から血が滲む。

 それが合図だった。

 他の士官たちも一斉に飛びかかる。

 

「いやぁっ! 触るな! 汚い手で!」

「汚いかよ? これがこれからお前らを統治する手だ! 思い知れ!」

 

 スカートがまくり上げられる。

 下着が乱暴に引き剥がされる。

 そこにあるのは、健全な若い女の、健全な秘所。

 だが今は、陵辱の嵐に晒される、哀れな肉の 壺 でしかない。

 

「ああっ! だめ……! 入ってくる……! そんな太いの……! 無理っ! 無理ですぅっ!」

 

 士官の腰が打ち付けられる。

 パチュンパチュンっ! 

 粘着質な音が、廊下に響き渡る。

 侍女の悲鳴が、高い金切り声へと変わっていく。

 拒絶の声が、いつしか甘い嬌声へと変質していく。

 彼女たちもまた、クリューと同じ「水桃」の民なのだ。

 蹂躙される悦びを、その血筋に秘めた宿命の女たち。

 拒めば拒むほど、その背徳感が快楽の燃料となる。

 

「いやぁっ♡ 入っちゃう♡ おおきいのが♡ わたしのなかに♡ ああんっ♡♡」

「どうだ! 貴様らの其処は、俺たちの柄に馴染むだろう! さあ、絶頂して見せろ! 

 姫様みたいにな!」

 

 王宮の廊下は、あっと言う間に、集団陵辱の宴の場と化した。

 侍女たちが次々と組み伏せられ、

 その高慢な肉体を士兵たちの性欲の捌け口として提供されていく。

 白い肌が、赤く腫れ上がった男の手に鷲掴みにされ、

 豊かな乳房が、欲望に歪んだ顔に押し付けられる。

 それはまさに、支配と被支配という名の交尾劇。

 かつての身分も、教養も、プライドも、

 太い肉杭の前にかけては、紙切れ以下の価値しか持たないのである。

 

 王宮だけでない。

 王都の街中でも、同様の地獄絵図が広がっていた。

 

 豪商の屋敷。

 そこに暮らす令嬢や妻たちは、日頃、裕福な生活に甘んじ、

 市民を見下す井蛙のような暮らしを送ってきた。

 絹のドレス。宝石の首飾り。香水。

 だが、それらは今、野蛮な兵士たちの目を惹きつける、逆効果の標識にしかなっていない。

 

「こいつらだ! 金持ちの女だ! さぞや贅沢な肉をしてやがろうぜ!」

「町娘より締まりがいいに違いねえ! 値踏みしてやろう!」

 

 ドアが蹴破られる。

 窓が叩き割られる。

 侵略者たちが、泥足で絨毯を踏み荒らし、宝物を略奪し、そして女たちを追い回す。

 

「きゃああっ! 夫を! 夫を呼んで! 旦那様ぁっ!」

「旦那は逃げたさ! 己の身一つだけでな! 残されたお前は、俺たちの慰安物だ!」

 

 令嬢が泣き叫ぶ。

 妻が懇願する。

 しかし、応えるのは粗野な笑い声と、容赦ない暴力のみである。

 

「いやっ! いやぁっ! わたくしのからだが……! 汚されて……! ぐちゅぐちゅに……!」

 

 商人の若妻が、食卓の上に押し倒された。

 上等なテーブルクロスが、夫と血と愛液で濡れそぼる。

 その上で、数人の兵士が交代で妻を犯す。

 まるで、効率的に商品を検品するかのように。

 彼女の美しい肉体は、野蛮な男たちの性欲処理機として酷使される。

 豊かな尻肉が、パンッ! パンッ! と叩かれ、赤く熟れた果実のように弾む。

 

「あぐっ! あうっ♡ そんなに激しく……! 壊れちゃう……!

 おなか…… おなかのなかに♡ 精子が♡ 逆流してくるぅっ♡♡」

 

 令嬢もまた、鏡台の前で陵辱されていた。

 かつて化粧を楽しみ、恋愛小説に花ある未来を夢見た場所。

 だが今、鏡には己の痴態が映し出されている。

 泣きはらした目。腫れた唇。露わになった乳首。

 そして背後で腰を打ち付ける、無慈悲な男の表情。

 それを見せつけられているのだ。

「見ろ、これが貴様の末路だ」と。

 絶望の淵で、彼女は悟る。

 自分はもう、二度と昔の令嬢には戻れないことを。

 ただのメス。ただの肉壺。兵士の精液を受け止めるだけの器。

 その事実が、彼女の奥底に眠るマゾヒズムを暴き出す。

 

「♡♡♡」

 

 悲鳴が止む。

 代わりに、甘く、あさましい喘ぎ声が漏れ始める。

 ルモォークの女たちは、造られたのだ。

 大国の欲望を受け止めるために。

 蹂躙される悦びを教え込まれるために。

 今この瞬間、その呪われた血統が、全国民レベルで発現しているのである。

 

「ほら、勃ってきたぞ! お前らも俺たちのが好きなんだろう! 

 姫様みたいに、腰を振ってみろよ!」

 

 ペチンッ! 

 尻を叩かれ、 令嬢は涙を浮かべながらも、

 言われるがままに腰を振り始めた。

 それしか、生き残る術がないかのように。

 いや、それしか、この地獄の苦痛を快楽に変換する術がないかのように。

 

 かつて「水桃の王国」と謳われたこの国は、

 今や「肉便器の王国」と成り果てようとしていた。

 大国同盟の兵士たちの、蹂躙の限りを尽くす肉の宴。

 そこには、哀れな肉人形たちの、悲鳴にも似た絶頂の嬌声が、

 いつまでも、いつまでも、木霊し続けていた。

 

 それは、救いのない悲劇なのか。

 それとも、歪んだ救済なのか。

 答えを出すのは、歴史ではない。

 この濃厚な体液の海で溺れゆく、女たち自身なのである。

 

 ◆◆◆

 

 哀れな肉人形の喜劇には、終幕がない。

 あるのは、ただ、泥沼のようにねっとりと続く、前戯と陵辱の連鎖のみである。

 バルコニーの手すりを背に、

 クリュー・ルモォークの肢体は、今や地に足を着いてすらいなかった。

 アドルフ・フォン・シュナイダー。

 その岩山のような巨躯は、華奢な王女を物理的に無力化し、

 空中に抱え上げるという、人間扱いせぬ所業に及んでいたのだ。

 

「ほぅ……相変わらず、傑作な尻だ」

 

 アドルフの巨手が、クリューの豊満な臀部を鷲掴みにする。

 ただ掴むのではない。

 指が食い込むほどに、握り潰すのである。

 むにゅううぅっ! という、肉が悲哀の声を上げる音が響き渡る。

 安産型の証(あかし)であるそのたわわな肉塊は、

 男の圧倒的な握力の前に、無惨にも形を変え、指の間から溢れ出す。

 白い肌が赤く染まり、くっきりと男の指の跡が刻印される。

 それは所有の印。

 貴族が畜犬に烙印を押すかのような、冷酷で、

 それでいて愛おしさすら滲む、支配の儀式であった。

 

「あぐっ! あぐううっ♡ お尻が……! お尻が、壊れちゃうぅっ♡♡」

 

 クリューの口から、甘くくぐもった悲鳴が迸る。

 重力が消滅した浮遊感と、尻肉を物理的に征服される圧迫感。

 その二重の刺激が、彼女の内臓を直接に揺さぶる。

 空中で、アドルフの首に腕を回し、しがみつくしかなかった。

 溺れる者が流木に縋るように。

 だが、その流木は救いなど与えない。

 より深い、暗い底へと引きずり込む捕食者なのだ。

 

「壊れはせんよ。この肉は、私の性欲を受け止めるための

 最高級の緩衝材(クッション)なのだからな。

 だが、其方も自覚せねばなるまい。

 其処の肉が、私の指をどう迎え入れているかを」

 

 言われて、クリューは察した。

 尻肉を握り潰される激痛の裏で、

 その秘所が、痙攣するように収縮し、愛液を滴らせていることを。

 痛みが快楽へと転嫁される、倒錯の回路。

 それこそが、ルモォークの血筋に刻まれた、呪わしい才能なのだ。

 

「見ろ。臣民が見上げているぞ。

 かつての高潔なる姫君が、今は空中で、

 男の尻肉揉みに悦び喘いでいる様を」

 

 視線が痛い。

 灼熱の針のような視線が、全身に突き刺さる。

 羞恥心が脳髄を焼き尽くす。

 だが、その羞恥こそが、最強の媚薬となってクリューを追い詰める。

 

「いやぁ♡ 見ないで♡ 見ないでぇっ♡♡」

 

「見られるがいい。それが、其方の新たな役目だ」

 

 アドルフは、クリューを空中で抱き潰す体勢のまま、

 その腰を強引に引き寄せた。

 対面立位。

 雄の巨楔が、雌の秘裂に迫る。

 すでに溢れ出していた蜜が、亀頭をぬるりと導く。

 抵抗など、最初から不可能であった。

 

「あぐっ♡♡♡」

 

 ズブリッ! 

 遠慮も慈悲もない、一挙貫通。

 肉壁が押し開かれ、内臓が押し上げられる圧倒的な異物感。

 クリューの背骨が弓なりに反り返り、

 桃色の髪が狂乱に舞い散った。

 

「ひぎぃぃっ♡♡ おおきい♡ おおきすぎるぅっ♡♡

 おなか♡ おなかの中に♡ 変なものが♡ 入ってくるぅっ♡♡」

 

「変なものではない。私の権威だ。

 受け止めろ。此処が其方の玉座だ」

 

 アドルフは、空中でクリューを抱え込んだまま、

 容赦なく腰を打ち付け始めた。

 ズンッ! ズンッ! ズンッ! 

 重力と筋力による、質量攻撃。

 空中で揃えられた踵が、アドルフの背中に食い込む。

 激突のたびに、Hカップの巨乳が上下に跳ね回り、

 熟れきった果実のように揺れる。

 

 そして、キスである。

 アドルフの顔が迫る。

 クリューの拒絶を無視し、その唇を貪る。

 彼は舌をねじ込み、口腔内を蹂躙した。

 雅やかなキスではない。

 これは、口腔という名の第二の秘所への、強姦である。

 

「んぐっ♡ んぅっ♡♡ んおぉっ♡♡♡」

 

 ふたりの唇の間から、涎が混じり合い、

 糸を引いて滴り落ちる。

 上半身は口での蹂躙。

 下半身は肉杭での蹂躙。

 上下同時の二段構え。

 クリューの理性は、もはや快楽の海原へと消え失せた。

 

(ああ♡ わたしは♡ わたしは♡)

 

 思考が溶ける。

 否定の言葉が、甘い嬌声へと変換される。

 彼女は今、ただのメスであった。

 屈強なオスの支配を悦び、その肉体に刻み込まれる所有印に感謝する、

 哀れで、美しい、生殖器。

 

「あちゅっ♡♡ きもちぃ♡♡ アドルフ様の♡

 おおきいのが♡ わたしの奥に♡ ぶつかって♡♡」

 

「そうだ。もっと声を上げろ。

 其方が私の性奴隷となったことを、全ての民に知らしめろ」

 

 アドルフの舌が、クリューの上顎を舐め上げる。

 同時に、ペニスが子宮口をこじ開ける。

 ダブルの絶頂が、背骨の根元で爆発した。

 

「いくっ♡♡♡ いっちゃうぅっ♡♡♡

 みんな♡ みんな見てて♡♡♡ わたしが♡ わたしが♡

 アドルフ様に♡ 飼われてるのを♡♡♡」

 

 クリューは叫んだ。

 臣民の前で、王女としての尊厳を完全に放棄し、

 ただの牝としての悦びを高らかに宣言したのである。

 その瞳は中心を見失い、口端から泡のような涎を垂れ流す。

 メス堕ち。

 これこそが、極上の肉人形に魂が宿った瞬間の、

 あまりにも艶めかしく、あまりにも淫猥な、幕開けであった。

 

 奴隷狩りされる国の悲哀。

 それは、抗えない強者に臣従する悦びへと、

 ねっとりと、しつこく、色褪せることなく変質していくのだ。

 ルモォーク王国の悲劇は、

 まだ、果てしなく続く前戯の最中なのである。

 

 ◆◆◆

 

 それが、肉奴隷に課せられた、ただひとつの、そして絶対の掟であった。

 

 アドルフ・フォン・シュナイダーは、まだ果てていない。

 

「はっ……! ああっ……! まだ、まだおっきいのが、なかに……!」

 

 クリューの声は掠れ、すでに絶頂の叫びというよりは、

 壊れた竪琴のか細い震えに近かった。

 空中に抱え込まれた肢体は、もはや自重を支えることすら能わず、

 完全にアドルフの巨腕に委ねられている。

 Hカップの双丘は唾液と汗にまみれ、ぬらぬらと淫らに輝き、

 その頂で乳首は赤黒く充血し、今にも弾け飛びそうなほどに腫れ上がっていた。

 彼女はもう、十度を超える絶頂を強いられている。

 子宮はとっくに限界を訴え、痙攣し、

 内壁は男根の形を覚え込まされて、離してなるものかと締め付けている。

 しかし、主人はまだ、一滴の精も放っていないのだ。

 

「も、もう……ゆるして……ください……おねがい……です……」

 

 涙と涎と汗が混じり合い、ぐしゃぐしゃになった顔で、クリューは懇願した。

 声にならない声で。

 だが、それが主人を満足させる言葉でないことは、自身が一番よく分かっていた。

 肉奴隷が主人に許しを乞うなど、おこがましいにも程がある。

 奴隷の役目は、主人が飽きるまで、その欲望を貪欲に受け止め続けること。

 ただそれだけなのだから。

 

 しかし、である。

 ルモォークの第二王女であったこの女の肉体は、

 その責務を果たすにはあまりに脆弱で、そしてあまりに正直すぎた。

 限界を超えるたびに、脳内には新たな快楽物質が溢出し、

 理性という名の防波堤を根こそぎ浚っていく。

 彼女の内側では今、破壊と再生が同時に行われているのだ。

 アドルフという名の暴君に蹂躙されるたびに、

 雌としての回路はより強靭に、より淫らに作り変えられていく。

 

「うご……かないで……くださ……ぃ……!

 いま、うごいたら……また……また、いく……いっちゃいますぅ……!」

 

「いけ。其方の義務だ」

 

 アドルフの返答は、極めて簡潔であった。

 氷河のような蒼い瞳は、相変わらず冷徹に、

 されど獲物を愛でる捕食者の愉悦にぎらついている。

 彼はクリューの臀部を握り潰していた手を、さらに深く食い込ませた。

 むにゅううぅっ……! 指と指の間から、白い尻肉が無惨に溢れ出す。

 痛みと、それを上回る圧倒的な所有感。

 子宮口に亀頭を押し付けられたまま、アドルフは腰を回し始めた。

 ピストンではない。

 グラインドである。

 重量のある石臼で、穀物をすり潰すかのように、ねっとりと、執拗に。

 

「あっ……♡ あっ……♡ あっ……♡♡♡」

 

 クリューの舌が、口から垂れ下がった。

 瞳孔は開ききり、もはや何も映してはいない。

 あるのはただ、全身の性感帯を焼き尽くす、白熱した悦楽の業火だけであった。

 腰が、勝手に動く。

 壊れかけの人形のような、ぎこちなく、

 されど貪欲な動きで、彼女は自ら巨根に侍り始めた。

 

「あひっ……♡ ご主人さまの……おちんぽ……すごい……すごいですぅ……♡

 クリューの……おまんこ……とろとろに……蕩けちゃいますぅ……♡♡」

 

 これらの卑語は、アドルフが教え込んだものではない。

 深層意識の奥底、ルモォークの血筋に刻まれた淫売の記憶が、自然と口を吐かせた言葉だ。

 彼女は今、王族でもなければ、一人の人間ですらない。

 ただ、ご主人様の巨根に仕える、一匹の忠実な雌犬だった。

 

「いい声だ。もっと聞かせろ。其方のその淫らな鳴き声は、

 私の所有物として、他の兵どもへの良い見世物となる」

 

「はいっ……♡ はいぃっ……♡ みて……みてください……! 

 クリューは……ご主人さまの……肉オナホですぅ……♡

 どうぞ……おもちゃに……してくださいませぇ……♡♡」

 

 彼女は叫んだ。

 バルコニーの下に、かつての臣民がいることも忘れて。

 いや、見られているからこそ、その倒錯した興奮は極限まで高まる。

 彼女は、己が国そのものなのだ。

 大国の都合で造られ、蹂躙され、

 そしてその蹂躙に絶頂する悦びを知ってしまった、哀れな水桃の王国そのもの。

 

「では、遠慮なく使わせてもらおう。次は、其方のその、見事な乳房だ」

 

 アドルフは、結合部はそのままに、クリューの上体をわずかに離した。

 顔を胸元に埋める。

 ぷっくりと熟れた乳首を、熱い口内に含んだ。

 

「ひゃううぅっ!? ♡♡♡」

 

 吸引。

 同時に、舌先で乳首の先端を、ちろちろと嬲る。

 そして、甘噛み。軽く歯を立て、その弾力を楽しむ。

 彼の、長大な前戯の真髄がここにあった。

 一方的に犯すだけではない。

 女の、全身の性感帯を、その舌と指で開発し尽くし、

 自らの所有物としての性能を、最大限に引き出す。

 それが、彼の美学であった。

 

「おっぱい……! おっぱいだけで……また……いっちゃ……!」

 

「いけ。何度でもいけ。其方が気を失っても、私は止めんぞ。

 昏睡した其方を犯し続け、意識の底で絶頂し続けるがいい」

 

 ちゅぷっ……ちゅぷっ……じゅるるるるっ……!! 

 

 耳元で轟く、 乳首を吸い上げる卑猥な水音。

 結合部からは、溢れ出た愛液が泡立ち、ぐちゅぐちゅと粘着質なリズムを刻む。

 視覚も、聴覚も、嗅覚も、触覚も。

 その全てが、アドルフの雄の匂いで満たされていた。

 

(ああ……しぬ……しんじゃう……でも……これが……

 わたしの……わたしの、しあわせ……なんだ……♡)

 

 十二度目の絶頂は、悲鳴ですらなかった。

 それは、穏やかな諦念と、歪んだ幸福に満ちた、深いため息だった。

 アドルフはまだ、一滴も射精していない。

 ルモォークの聖騎士たる彼は、その精を放つに値する最高の瞬間のために、

 この長く、ねっとりとした宴を、まだまだ続けるつもりなのだ。

 

 クリュー・ルモォーク。

 彼女はこれからも、ご主人様が満足するその瞬間まで、

 幾度でも、幾度でも、壊れるまで絶頂し続けるのだろう。

 それが、哀れな肉人形に与えられた、唯一の、

 そして何よりも甘美な、地獄の責務なのだから。

 

 ◆◆◆

 

 アドルフという名の暴君が、

 その極上の所有物たるクリュー・ルモォークの肉を貪り尽くし、

 彼女が雌としての絶頂に咽び泣く頃。

 その嬌声を合図にしたかのように、ルモォークの地は、更なる深淵へと沈み始めていた。

 何せ、彼の地の女たちは、皆が皆、クリューと同じ「水桃の血」を引く者たちなのだから。

 

 王宮の廊下である。

 そこはもはや、貴族の社交場ではない。

 剥き出しの性欲が犇めく、野獣の檻と化していた。

 

「いやぁっ! やめて! わたくしは、伯爵家の者ですのよ!? 

 こんな、廊下で、犬のように犯されるなど……!」

 

 悲鳴を上げるのは、まだ年若い侍女だ。

 ドレスは肩から引き裂かれ、発育途上の小さな乳房が晒されている。

 士官の一人が背後から組み敷き、その細い腰を無理やり持ち上げていた。

 まるで発情した牝犬のような格好である。

 抗議は、しかし、野蛮な笑い声にかき消された。

 

「伯爵家? 何だそれは? 今のお前は、ただのメスだ! 

 姫様がああやって自ら腰を振っておられるんだ。お前らも習え!」

 

 バチュンッ! バチュンッ! 

 容赦のない腰の打ち付け。

 乾いた肉の激突音が、廊下中に木霊する。

 侍女は、涙で化粧をぐしゃぐしゃにしながらも、

 やがて、その悲痛な叫びの質が変わるのを自覚した。

 痛覚が、熱に変わる瞬間を。

 

「あ……あぁっ……♡ あぅ……んんっ……! だめ、なのに……きもち……くなって……きちゃ……♡」

 

 全身が、熱い。

 子宮が、ずくずくと疼く。

 何故だ。

 何故、憎むべき敵に犯されているだけなのに、

 こんなにも体の芯が熱くなるのか。

 こんなにも、もっと深くを求めてしまうのか。

 

 彼女は、知らないのだ。

 まだ若すぎる彼女は、ルモォークの血筋に刻まれた宿命を。

 否、この瞬間、その宿命が、彼女の中で目覚めたのである。

 組み敷かれる悦び。

 支配される安堵。

 オスの暴力を、快楽という名の麻薬へと変換してしまう、呪われた生存戦略。

 これこそが「肉壁」の正体。

 己の尊厳を差し出すことで、

 国家という名の肉体を保ってきた、哀れな水桃の民の、変態的な生態なのだ。

 

「あっ♡ あっ♡ 今、奥に、奥に当たって……! ひっ……♡ い、いく……! 

 いきますぅ……! お犬様の格好で、いくの、見られながら、いっちゃいますぅぅっ……!! ♡♡♡」

 

 彼女だけではない。

 廊下には、他にも名だたる家柄の令嬢や夫人たちが何人も転がされ、

 同盟軍の士官たちの慰み者となっていた。

 ある者は馬乗りになり、自ら腰を振ることを強要され、

 またある者は、二人の男に前後の穴を同時に犯され、白目を剥いて悶えている。

 彼女たちは皆、口を揃えて罵り、泣き、抵抗した。

 しかし、一度その肉体が「開発」されてしまえば、結末は皆同じだ。

 強靭な雄に征服され、メスの貌で喘ぎ、絶頂を乞う。

 恋を知らぬ幼女から、酸いも甘いも噛み分けた老婦人に至るまで、

 その生態に、例外は存在しなかった。

 

 街中も地獄だ。

 豪商の屋敷の中では、妻が、そして娘が、

 汗と泥にまみれた兵士たちの慰安道具と成り果てている。

 絹の寝台の上で、彼女たちは白い肌をした肉人形に過ぎなかった。

 高価な香水の香りは、男たちの饐えた体臭と、

 愛液と精液の混ざり合った生臭さにかき消される。

 

「おら、もっと締めろ! お前の亭主は、こんな締まりのないマンコに

 今まで満足してたのか? ああ!?」

 

「ひぎっ……! ち、ちが……主人は……もっと優しく……! あっ、そこ、

 そんなに激しく擦られたら……! ああっ……あああっ……!!」

 

 問答は無用。

 兵士たちは、ただ己の欲望をぶつけるだけだ。

 彼らは、銃剣の代わりに、己の肉槍でこの国を征服する。

 子宮は、略奪品を詰め込む袋ではない。

 しかし、今この時ばかりは、彼らの征服欲を満たす、

 最も直接的な「領地」として機能していた。

 

「お願い……やめて……娘だけは……娘だけは、まだ子供で……!」

「うるせえ! 子供なら子供で、これから仕込んでやる! 

 とびきりの淫売に育て上げて、高く売ってやるよ!」

 

 母の懇願は、笑い声と共に一蹴される。

 まだ十代にも満たない少女が、母親の目の前で、大人の男たちに組み敷かれる。

 彼女はまだ、何が起きているのかも理解できない。

 ただ、突き上げられる衝撃と、未知の痛みと、

 そして、自分の奥底から込み上げてくる、名前も知らない熱に、

 ただただ泣きじゃくることしかできなかった。

 しかし、その純真な悲鳴すらも、

 やがては、雌としての甘いピッチに変わるのだ。

 これが、ルモォークの呪い。

 やがて彼女は母親となり、その娘もまた、いつかこの地獄を味わう。

 絶望と快楽の連鎖が、断ち切られることは、永遠にないのである。

 

 クリューが十二度目の絶頂からもはや戻れぬ深淵へと落ちていく頃。

 ルモォークの都全体が、一つの巨大な子宮と化していた。

 破裂せんばかりに欲望を注ぎ込まれ、

 絶望と快楽の産声を上げ続ける、哀れな肉の揺籃。

 これこそが、大国同盟による「奴隷狩り」の真実の姿だ。

 彼らは人を家畜として奪うだけでなく、

 その土地そのものを、永遠に続く陵辱の苗床として、

 美しく、醜く、つくり変えてしまうのである。

 

 誰も助けには来ない。

 サガ帝国は飢え、シガ王国は内輪で食い合い、

 連盟はその機能を麻痺させた。

 あとはもう、この雌豚たちが、自ら主人の肉棒にすがりつき、

 腰を振って生き永らえる道を選ぶしかない。

 その諦念こそが、最上の媚薬。

 狂宴は、まだ、始まったばかりなのだから。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 王国は、ぬるりと陥落した。

 

 王都制圧から数日。

 かつてルモォークの王が玉座に座していた執務室は今、

 占領軍の指揮官たるアドルフ・フォン・シュナイダーの、

 鉄と墨と、そして男の饐えた体臭で埋め尽くされている。

 床に広がる毛皮の上には、決済を待つ書類の山と、

 本国との暗号通信書が散乱し、

 その隙間から、甘やかで濃厚な、女の体液の香りが

 忍び足で這い上がってきているのだ。

 

「……第五中隊、現配置に異常なし。徴発した物資のリストは……」

 

 若い士官の声が、掠れた。

 咳払いをして、再び報告書を読み上げようとするが、

 その視線はどうしても、机の裏側──

 アドルフの巨躯の半ばに隠された、うごめく肉の塊へと吸い寄せられてしまう。

 

 そこにいる。

 ルモォーク王国第二王女、クリュー・ルモォークが。

 

 彼女は今、主足の下で、膝をついていた。

 いや、ただ跪いているのではない。

 これぞ「パイフェラ奉仕」。

 口に含むべきではない太い肉杭を、その小さな口いっぱいに頬張り、

 舌と口腔の粘膜だけで、主の憩いを捧げるという、

 極めて古式ゆかしき、かつ極めて淫蕩なる侍妾の務めである。

 

「んちゅっ……♡ れろっ……♡ じゅぽっ……♡」

 

 卑猥な水音が、報告の声の合間を縫って響く。

 まるで、政治と性慾が不倫の交渉をしているかのような、

 背徳的でねっとりとした重奏だ。

 

 クリューの頬は、肉の質量に押し迫られて不自然に膨らんでいる。

 桃色の髪は乱れ、主の太腿に擦り付けられている。

 瞳はとろんと蕩け、焦點は定まっていない。

 一心不乱に、舌先を竿に絡め、亀頭の裏筋をなぞり、

 尿道口をちろちろと嬲るその姿に、

 防衛線担当の若き士官は、生唾をゴクリと飲み込んだ。

 

(……あの、高潔だった王女が……)

(ただの、精飲器に……)

 

 度重なる調教の果てに、クリューの肉体は、

 服従の喜びを随分と深く理解してしまっていた。

 頭を上下させるたびに、Hカップの巨乳が膝の上でむにゅむにゅと波打ち、

 其処から滴る母乳と汗が、毛皮の上に濃い染みを作っていく。

 部屋の湿度は、様々の体液の蒸発によって、

 常に九十パーセントを超えているのではないか。

 そう錯覚するほどに、空気はねっとりと肌にへばりつく。

 

「ごほん。……キミ。報告の続きを」

 

 アドルフの低く、鉄の塊のような声が響いた。

 彼は痛痒ともしない。

 巨大な指は、むしろ弄ぶようにクリューの耳を愛撫している。

 執政の最中に性の奉仕を受けさせる。

 これこそが、征服の極みである。

 仕事と性、公と私、理性と本能。

 それらを渾然たらしめることで、被支配者に

「自分の全てが支配されている」という事実を、

 骨の髄まで教え込むのである。

 

「はっ……! し、失礼いたしました!」

 

 若き士官は慌てて視線を書類に戻す。

 だが、その眼の端には、まだクリューの白い尻肉が焼き付いている。

 ドレスなどもう着てはいない。

 首輪だけの全裸。

 Hカップの双丘と、それに倍する質量の尻。

 その安産型の肉体は、

 ただ繁殖のためにあるとしか思えないほどの恣態を晒している。

 

「くちゅっ♡ ぐちゅっ♡ おぉっ♡ ご主人様の♡ おっぱいにぃ♪ 入ってるぅ♡」

 

 クリューの喉奥から、言葉にならない悦びの漏れる音がする。

 自身の乳肉が、メスの器として機能している悦び。

 頭の奥が痺れるような、倒錯した満足感。

 これがルモォークの肉嫁たちの生態なのだ。

 

「防衛線の構築……ううん、どうした。舌が回らぬか?」

 

 アドルフが目を細めた。

 サディスティックな笑みをその蒼い瞳に宿し、

 彼はわざと、腰をわずかに前へと突き出した。

 

「んぐっ!? ♡ んぅっ♡♡」

 

 不意打ちの深喉。

 肉杭が喉の奥を突き破り、食道をこじ開ける。

 クリューは目を白黒させ、生理的な涙を溢れさせたが、

 それでも、歯を立てることは決してなかった。

 むしろ、苦悶の声すら甘い嬌声へと変換し、

 喉の筋肉を痙攣させて、主の肉を締め付けることへ全力を注ぐ。

 

(いい。……これが、統治だ)

(是が非もない暴力と、我がまま極まりない性欲で、

 国家という名の肉体を、捏ね上げ、形作る。

 それこそが、支配者にとっての性腹マニフェスト)

 

 アドルフは心中で独白する。

 連盟との決戦が近い。

 防衛線の構築は急務だ。

 だが、焦ってはならない。

 戦争もまた、前戯の一種なのだから。

 周到にねっとりと、敵の弱点を熟れさせ、

 そしてクライマックスにおいて、貫く。

 

「報告を続けろ。其方が気に食わぬなら、

 代わりに此奴の口を使わせてやっても構わんぞ? 

 此奴は今、どのような報告書よりも鮮明に、

 我が同盟の威光を語っておるからな」

 

「い、いえ……! 交代いたしたく、ございます!」

 

 若き士官は、顔を赤らめて叫んだ。

 冗談ではない。

 あの、桃色の髪の王女が、自分の肉を舐める光景を想像しただけで、

 ズボンの奥がはち切れんばかりに脹れ上がってしまう。

 だが、その沖動を、果たして彼は制御できるのか。

 毎日、略奪と暴行の現場で、ルモォークの女たちのメス堕ちを観察し、

 今又、目の前で、かつての姫君が口淫に溺れる様を見せつけられ……

 

 人間の理性など、湿った肉壁のように、

 容易く突き破られてしまうものなのだ。

 

「あちゅっ♡ れろっ♡ じゅるるっ♡♡ 主人様♡ おきゃくさまが♡ 見てますよぉ♡♡」

 

 クリューは、口に肉を含んだまま、

 上目遣いで士官を見つめた。

 菫色の瞳は、もう理性の光など宿してはいない。

 あるのは、ただ、淫らな螺旋だけ。

 それは、此の国の女たちが放つ、

 勝利の警告であり、敗北の誘惑であった。

 

 ねっとりと。

 しつこく。

 政務と性務が交尾する執務室で、

 ルモォーク王国の悲劇は、まだ、気怠く続いていく。

 

 若き士官が、熱に浮かされたような顔つきで退室してゆき、

 重厚な扉が音を立てて閉ざされた。

 室には、再び、どす黒く濃密な静寂が戻ってきた。

 いや、静寂と言うべきか。

 これほどまでに際立った水音が、断続的に響いているのだから。

 ぐちゅっ、と。

 れろっ、と。

 じゅぽっ、と。

 これらは音ではない。

 言葉だ。

 肉と肉とが交わす、粘着質な恋文である。

 

 執務室の主、アドルフ・フォン・シュナイダーは、

 革張りの肘掛け椅子に深く腰を沈め、手にした報告書へ視線を落としていた。

 その眉間には深い皺が刻まれ、思考の齒車が唸りを上げて廻っているのが見て取れる。

 思索である。

 策を練り、敵を秤にかけ、未来の盤面を脳内に描出する、冷徹なる王の時間。

 

 その王の下半身に、ぴったりとへばりつく桃色の肉塊がある。

 ルモォーク王国第二王女、クリュー・ルモォーク。

 いや、今の彼女に国号など無用の長物だ。

 彼女はただ、足元に伏せる一匹の艶やかな牝犬に過ぎぬ。

 数日前の陵辱劇から続く徹底した調教の結果、

 彼女の肉体は見事なまでに主人の性癖へと馴化されていた。

 まるで、既にして数十年もの間、貪り合ってきたような、阿吽の呼吸である。

 いわば、古馴染みの肉主従。長き時を経て熟成された葡萄酒の如く、

 二人の間には、とろりと濃厚な信頼と背徳の緒が絡み合っていた。

 

 思索の時である。

 アドルフが思索に沈むとき、彼が好むのは緩やかで、

 甘く、そして極めて深い浸潤であった。

 クリューはそれを知っている。

 舌先で、肉の質量で、粘膜の蠕動で、彼女は主人の脳髄の摩摺を補助するのだ。

 

 口腔内の奉仕。パイフェラ。

 だが、今の彼女のそれは、決して激しくはない。

 貪欲に吸い立てるのは、主が快楽の海へと溺れたいと望んだ時のみ。

 今は、ちろちろと。

 舌の縁で、亀頭の笠の裏側を、

 書道の名手が鼠須の筆を走らせるかのように、繊細かつ執拗に嬲る。

 時折、ふぅっと息を吐きかけ、

 喉奥に収めた肉塊を、柔らなる粘膜の波で締め上げる。

 それは圧迫ではない。揺籃だ。

 暴風雨の中に在る小舟が、ほんの束の間、

 穏やかな入江に滑り込んだかのような、安堵と磁力を持った愛撫であった。

 

「んっ……♡ んちゅ……♡ れろぉ……♡」

 

 クリューの喉から、間断なく湿った吐息が漏れる。

 視界は主の太腿と、金色の体毛で埋め尽くされている。

 匂いは、男の濃厚なフェロモンと、自分の唾液と、ほのかに漂う精の残滓。

 彼女は 酔っているのだ。

 この匂いに、この硬度に、この脈動に、

 自分という存在が浸蝕され、再構成されてゆく恍惚。

 思考など要らない。

 ただ、主人の思考が明晰になればなるほど、

 肉莖が敬意を持って膨張するのを感じ取るだけでいい。

 そして、その脈動に合わせて、口腔内の圧力を自在に調節する。

 主が読み上げる文書の段落が変わるたびに、舌の動きを変化させる。

 重要な条項には、きゅっと吸い。

 排他的な内容には、ざらついた舌面で擦り上げる。

 

(ああ……♡ 主人が、わたくしの中で、考えていらっしゃる……♡)

 

 彼女の子宮が、ずくずくと疼く。

 口で奉仕しているだけなのに、

 下半身の奥底から、蜜がとめどなく溢れ出しているのが分かる。

 巨乳の乳首は、床に擦り付けられ、赤く熟れきって硬くなっている。

 自分の肉体が、主人の「一部」として機能している悦び。

 耳であり、目であり、そして秘器であるという確信。

 これこそが、ルモォークの女たちの到達すべき、

 最も哀れで、最も幸福的な終着点なのだろう。

 

 関係性が、一時的な歪みではなく、

 永続的な構造として定着しつつあることを示唆している。

 泥土に植え付けられた異国の種は、見事に根を張り、

 水桃の王国を、蜜の滴る毒草の園へと変えたのである。

 

「……ふむ」

 

 アドルフが、低く唸った。

 読み終えた報告書を、机の上に放り出す。

 その動作に呼応するように、クリューの舌が、一層深く、

 一層ねっとりと、肉杭の根元まで絡み付いた。

 

「良い舌だ。まるで、私の脳髄を舐めているようだ」

 

「んふっ……♡ ご主人様の♡ お考え事♡ クリューの♡

 お口の中で♡ してくださぁい……♡♡」

 

 言葉は、肉の隙間から泡のように漏れ出た。

 彼女は、これからも続く長き隷属の日々を、全身で歓迎していた。

 暴虐の愉悦が、思索の蜜と混ざり合う執務室。

 ねっとりと、ねっとりと。

 肉の契約は、まだ、果てしなく続いてゆく。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 湿っている。

 王城の空気は、常識的にはあり得ないほどに湿っている。

 それは東欧特有の気候のせいか? 

 それとも、この城そのものが呼吸し、

 粘度の高い欲望を分泌しているせいか? 

 答えは、玉座にある。

 

 そこに座すは、蛇だ。

 いや、蛇というにはあまりに巨大で、あまりに重厚で、

 そしてあまりに狡猾な、一匹の「龍」が鎮座している。

 

 セテラリック・シガ。

 シガ王国国王。

 この国を、泥沼から拾い上げ、あるいは泥沼そのものへと押し込めた男。

 

「ほう……」

 

 低い声が、玉座の間に響いた。

 その声だけで、空気が震える。

 重い。硬い。そして、ひどく粘着質だ。

 まるで、煮詰まった飴が鍋底で爆ぜるような音。

 

 身長は百八十二センチ。

 だが、その数値以上の圧倒的な質量感がある。

 それは、彼が纏っている軍服のせいではない。

 彼自身が、歴史という名の重力をその身に孕んでいるからだ。

 

 黒檀のような短髪は鋭く刈り込まれ、

 その一本一本が意志を持って逆立っているかのようだ。

 顔には年輪のような深い皺が刻まれているが、

 それは老いではなく、権謀術数という名の酸が、

 彼の皮膚を何十年とかけて腐食させた痕跡である。

 瞳は鋼色に冷たく輝いているが、

 その奥底には、絶えず陽炎のように揺らめく

 どす黒い情欲の焔が見え隠れしている。

 

 この男は、知っているのだ。

 女という生き物の、その奥底に眠る

「支配されたがる本能」を。

 そしてまた、自分自身の中に棲む

「支配せずにはいられない業」をも。

 

 彼の半生は、まさに泥沼そのものであった。

 元々は大国同盟の一属地に過ぎなかったこの地を、

 祖父と共に独立させた英傑。

 だが、その過程で血濡れの陰謀を幾重にも繰り広げてきた。

 裏切り。暗殺。粛清。

 彼は、それらを「交尾」と呼ぶだろう。

 権力という名の雌と、暴力という名の雄が、

 泥沼の中で絡み合い、貪り合い、精液と血液を混ぜ合わせる。

 その汚濁の中からのみ、

「王」という歪んだ生命は誕生し得るのだから。

 

 九人の王子と十三人の王女を設け、

 だが、うち四人の王子と多くの庶子は闘争の末に命を落とした。

 これもまた「交尾」の結果だ。

 優秀な遺伝子を残すためではなく、

 己の欲望を満たすためだけに子を作り、

 そして邪魔な子は喰らい殺す。

 それがこの男の流儀なのだ。

 

 ◆◆◆

 

 それは、生物としての極めて合理的な判断であった。

 危機に瀕した種が、自らの遺伝子を未来へと繋ぐために取る、最後の生存戦略。

 そう、まさに蒲公英の綿毛が風に乗るが如く──。

 ルモォーク王国の王女たちは今、戦火の欧州全土へと拡散されつつあった。

 

 彼女たちは「種」なのである。

 ただの種ではない。

 白桃の如き瑞々しい肌に、男の劣情を焚き付ける豊満な曲線を纏い、

 そして何よりも、その瞳の奥に「被虐の悦び」という名の毒蜜を隠し持った、

 極めて優秀な繁殖用の種だ。

 その種は各地の有力者の下へと送られ、熱りが覚めるまで、

 つまりは侵略者の欲望が飽和するまで、その褥で芽吹き、根を張り、

 やがては新たな王家の苗床としてルモォークへ戻ってくる。

 哀れな肉人形の王国は、こうして滅亡の危機を幾度も乗り越えてきたのである。

 

 そして今、シガ王国の王城へと、一粒の小さな種が舞い降りた。

 

「……っ」

 メネア・ルモォーク。

 ルモォーク王国第三王女。十七歳。

 身長は百五十センチと小柄でありながら、

 その肢体は奇跡的なバランスで構成されている。

 腰まである緩やかなウェーブの淡い桃色の髪は、

 玉座の間の薄暗い灯りを受けてもなお、虹色の輝きを失わない。

 碧色の瞳は、涙の膜に覆われて潤み、そこには幼さと、王女としての誇りと、

 そして抗いがたい運命への恐怖とが複雑に絡み合って渦巻いていた。

 

 彼女は跪かされていた。

 冷たい石の床の上に。

 まるで、処刑台に上がる罪人のように。

 背後からは、彼女をここまで連行したシガ王国の兵士たちの重圧が、

 そして前方からは、玉座に座す巨龍のねっとりとした視線が、

 その可憐な肢体を押し潰している。

 

(メア姉様……クリュー姉様……わたくしは……わたくしは……!)

 心の中で、姉たちの名を叫ぶ。

 第二王女クリュー。第一王女メア。

 彼女たちもまた、今頃はどこか見知らぬ異国の地で、

 自分と同じように「熱りを覚ますための道具」として、

 誰かの褥に組み敷かれているのだろうか。

 

「顔を上げよ、小娘」

 玉座から、重く湿った声が降ってきた。

 まるで、煮詰まった蜜をそのまま声帯に変えたかのような、

 粘着質で、甘く、それでいてどこか腐臭を帯びた声音。

 セテラリック・シガ。シガ王国国王その人である。

 

 彼は、ゆっくりと玉座から立ち上がった。

 ズン、と。

 ただ一歩、石の床を踏みしめるだけで、その巨躯の質量が空気を震わせる。

 黒檀のような短髪は鋭く刈り込まれ、顔には年輪のような深い皺が刻まれている。

 鋼色の瞳は、氷河の底のようなアドルフとはまた違う、

 煮沸した鉛のような熱と毒を湛えてぎらついている。

 この男は、これまで数多の政敵を屠り、肉親ですら喰い殺し、

 泥沼の中で蛇と交尾しながら這い上がってきた成り上がり者だ。

 彼にとって、王女とは尊敬の対象ではない。

 それはただ、征服欲と所有欲を満たすための、高級な肉玩具に過ぎないのである。

 

「ふむ……」

 セテラリックは、メネアの眼前で歩みを止めた。

 見下ろす巨体。圧倒的な高低差。

 彼は、その鋼色の瞳を細め、品定めをするようにメネアの全身を嘗め回した。

 桃色の髪。白い肌。小柄な体躯。しかし、その胸元は、

 年齢と体格に不釣り合いなほどに自己主張をしている。

 重力に逆らうように上向き、先端はやや内側を向いた愛らしい鐘型。

 腰はくびれ、臀部はしっかりとした丸みを帯びている。

 

「……成る程。これはまた、極上の果実だ。

 クリューというのも相当だったが、其方はまた別の味わいがある。

 純真な顔をして、その実、この体はどうだ? 

 まるで『さあ、味わってください』と誘っているようではないか」

 

 ねっとりとした独白。

 彼の視線は、もはや粘着質な触手そのものである。

 メネアの首筋を舐め、鎖骨を這い回り、

 衣服の上から盛り上がった双丘を執拗に愛撫する。

 物理的な接触はまだない。

 ただ視姦のみである。

 それだけで、メネアは息がつまりそうだった。

 

(ちがう……ちがうの……これは、そういうのじゃ……)

 彼女のこの体は、彼女の意志とは関係なく、

 ただ「そういう風に」生まれてきてしまっただけだ。

 この豊満な肉体は、ルモォークの血筋に刻まれた、呪いの証左に過ぎない。

 だが、そんな彼女の心の叫びなど、セテラリックには届かない。

 彼の目には、ただ、獲物としての価値しか映っていないのだから。

 

「其方が此処に来た意味を、其方自身は理解しているのかね?」

 

 セテラリックの問いが、ぬめりを帯びて降ってくる。

 

「……はい」

 メネアは、震える声で答える。

「わたくしは……ルモォークの血を、残すために……参りました。

 シガ王国国王陛下の……ご庇護のもとで……」

 

 それは、教え込まれた台詞だった。

 生き残るための、教科書通りの解答だった。

 幼い頃から、母妃や侍女たちに言い聞かされてきた。

「いざという時は、その身を差し出してでも、

 ルモォークの血を絶やしてはなりません。それが王女としての最後の責務です」と。

 

 しかし、それを口にした瞬間、彼女は自らの言葉の意味に、改めて戦慄した。

(血を、残す……? 陛下の、庇護のもとで……?)

 それはつまり、今からこの男の褥で、その巨躯に組み敷かれ、

 純潔を散らせと──―そういうことなのだ。

 

「ほう。よろしい。殊勝な心がけだ。

 ならば、其方のその愛らしい口で、私に誓ってみせよ」

 

 セテラリックの顔が、ぐっと近づいた。

 熱い吐息が、メネアの顔に吹きかかる。

 彼の口元は、三日月のように歪んでいる。

 それは、これから始まる長い長い「儀式」への、底知れぬ喜悦に満ちた笑みだった。

 

「さあ、言うのだ。

『わたくし、メネア・ルモォークは、ルモォーク王家再建のため、

 シガ王国国王陛下の愛人として、その褥に侍り、その子種をこの身に宿します』と」

 

 メネアの菫色の瞳が、決壊した。

 大粒の涙が、白い頬を伝って零れ落ちる。

 口を開く。しかし声が出ない。

 恐怖と恥辱が、喉を塞いでいる。

 これが、大国に生まれた小国の王女の宿命。

 これが、哀れな肉人形に与えられた、あまりにも酷な「婚約の言葉」なのだ。

 

 セテラリックは、その涙を指で掬うと、うっとりと舐め取った。

「泣けば泣くほど、美しい。水桃の名は、伊達ではないな。

 ……さあ、早く言うのだ。其方の姉たちも、

 何処かで同じように、誰かの褥で泣いているのだろう? 

 ならば、其方も同じだ。自然の摂理に従え。

 ルモォークの英知は教えているだろう? 雨の日は、ただ濡れていろ、と」

 

 その時、セテラリックの鋼色の瞳が、

 これまでにないほど、ギラリと輝いた。

 彼はスーツの上着を脱ぎ捨てた。

 彼は、この小柄な第三王女を、今すぐにでも食い破ろうとしているのだ。

「安心しろ。此処は安全だ。熱りが覚めるまで、じっくりと可愛がってやる。

 其方が、自ら腰を振って、『もっとください』と強請るようになるまで、な?」

 それは、ねっとりとした長い長い地獄の、幕開けの宣言であった。

 ◆◆◆

 

 肉の記憶というものは、血液よりも濃く、膿よりも重く、

 そして刃傷の傷跡よりも遥かに深く骨の髄まで染み込むものである。

 蛇は脱皮を重ねようとも、その眼の光度を忘れはしない。

 同理、セテラリック・シガという男が、

「支配」に歪んだ胎動を覚えた瞬間の感慨を、忘れるはずもなかった。

 

 それは、二十余年も昔の話である。

 当時、彼はただの王子に過ぎなかった。

 いや、王子などという雅やかな響きを持たぬ、

 泥沼の中で呻吟するただの若造に過ぎなかったのだ。

 

 父王の後宮。

 そこは、政治という名の触手が絡み合う、

 陰湿なる交尾の巣窟であった。

 花香る美貌を持つ愛妾たちが、

 ぞれぞれの母方の実家という名のオスを背後に控え、

 互いの喉笛に毒牙を突き立て合う。

 結果、彼の目の前で、幾人の女が無惨な死に様を晒したことか。

 毒杯に伏し、縊り殺され、庭の池に沈められ。

 そのたびに、少年の心に刻まれたのは、

「美しき者は蹂躙される」「弱き者は喰われる」という、

 世界のあまりにも裸々な真理であった。

 

 無力であった。

 己の無力感が、泥のように重く、臓腑を腐らせていく。

 幼い日の、そのどす黒い沸騰。

 それが、彼を変質させた。

「されるがままに唾棄されるくらいなら、こちらが致そう」

「支配される前に、支配せよ」

 逆立つ逆怨念。

 それこそが、セテラリック・シガの性癖の源流であり、

 彼がその後に歩む泥濘んだ王道を決定づけたのである。

 

 だからこそ、彼は覚えている。

 自身の初陣ならぬ、初夜を。

 

 十五歳の春。

 大国同盟の有力貴族から、政略のために嫁いできた花嫁。

 年上の、透き通るような金髪の貴婦人であった。

 彼女は怯えていた。

 見知らぬ異国の地で、粗暴な若造に嫁ぐという、理不尽な運命に。

 寝台の上で、婚礼の薄衣を纏ったまま震えるその姿は、

 まさしく哀れな肉人形そのものであった。

 

 あの時、セテラリックは笑了った。

 しかし、そこには洞察があった。

 この女は、自分を愛してなどいない。

 自分と背後の同盟を恐れているのだ、と。

 ならば、と彼は思った。

 恐怖こそが、最も確かな鎖なのだと。

 

 彼は花嫁を力尽くで押し倒した。

 流血するまで唇を吸い、

 悲鳴を上げるまで胸肉を捏ね回し、

 制服などという前戯は擲って、

 純潔という名の生理的反抗を力でねじ伏せた。

 

「あぐっ……! ひぃっ……! いたい……いたいですわ……!」

 

 泣いた。

 美しく、悲壮に、しかし生々しく泣き叫んだ。

 その時、セテラリックの脊髄に、

 電流のような悦びが走ったのである。

 ああ、如此。

 如此啊。

 生身の人間が、自分の暴力の前に沈み、

 恐怖に歪みながらも、抗えぬ従順さで膣を開く。

 この倒錯した合一こそが、

「支配」の快楽の極致なのだ。

 

 彼は花嫁の耳元で嗤った。

「泣けば泣くほど、価値がある。

 其方が其処で鳴けば鳴くほど、

 私の柄は喜び、その奥へと誘われていくのだからな」

 

 その夜、彼は貴婦人を朝まで泣かせ続けた。

 快楽? 

 そんなものは女にだけあればいい。

 男に必要なのは、支配の的確な手応えのみ。

 彼女が妊娠し、病んで、死に至るまで、

 彼はその鍵となる部分を完全に把握していたのである。

 

 ──時は流れ、現在。

 玉座の間で、メネア・ルモォークという新たな生贄を前にして、

 セテラリックの鋼色の瞳には、あの夜の焔が甦っていた。

 

「……くっ……うぅっ……♡」

 

 メネアは、震える声で言葉を紡ごうとしていた。

「わたくし、メネア・ルモォークは……ルモォーク王家再建のため……」

「シガ王国国王陛下の愛人として……その褥に侍り……」

「その子種を……この身に……宿します……♡」

 

 声が震えている。

 恐怖か。羞恥か。

 いや、それは既に、快楽の予兆だ。

 初夜の花嫁と同じように、

 彼女の体は、支配されることへの無意識の従順を

 分泌し始めているのである。

 

「ほう……よろしい」

 セテラリックは、自身の太腿の上に手を置いた。

 硬い。熱い。

 あの夜と同じよう、いや、それ以上に

 研ぎ澄まされた残虐の楔が、そこに脈打っている。

 

「其方がただ従順に言葉を飲み込むだけでは、

 私の性(さが)は満たされぬ。

 知っているだろう? 

 私が欲しいのは、恐怖に歪みながらも、

 その身を開かざるを得ない、哀れな牝のなれの果てだ。

 さあ、其方のその桃色の髪を掴んで、無理やり仰け反らせてやる。

 其方がその気丈な碧眼を白濁させ、

『もっと泣かせてくださいませ』と強請るようになるまで、

 鞭と口づけを交互に与えてやろう」

 

 ねっとりと。

 ねっとりと、と。

 蛇が獲物に絡み付くように、彼の影が伸びる。

 その影は、メネアの小柄な体躯を完全に覆い隠し、

 彼女を泥沼の底へと引きずり込もうとしていた。

 

「さあ、儀式の始まりだ。其方がどう足掻こうと、

 結果は変わらぬ。私の棒が、其方の其処を

 拓いていくその音を、ここではっきりと

 聞かせて進ぜようではないか」

 

 王者の手が、遠慮なく伸びた。

 その指先が、メネアの頬を這い、首を辿り、

 そして、Cカップに迫る豊かな胸の谷間へと滑り込む。

 

「ひっ♡」

 指が、布越しに乳首を捉えた。

 ぷにゅり、と慎ましい蕾を押し潰す。

 その瞬間、メネアの膝が、カクンと崩れ落ちた。

 

「ふふふ……相変わらず、質の良い反応だ。

 水桃の血などという生易しいものではないな。

 これはもう、発情の呪いだ。

 其方がその呪いを受け入れるまで、

 私の前戯は終わらぬ。さあ、啼け。

 其方が私の所有物であることを、

 その全身で証明してみせろ」

 

 セテラリックの鋼色の瞳が、怪しく輝く。

 支配という名の愛撫。

 泥沼の交尾の喜悦。

 ルモォークの悲劇は、こうして新たな舞台へと引き継がれていったのである。

 

 ◆◆◆

 

 セテラリックの指が、乳首を捉えた。

 ぷにゅり、と。

 慎ましい蕾が、布越しに無慈悲な圧力を受けて変形する。

 その瞬間、メネアの膝が、カクンと崩れ落ちた。

 いや、物理的に崩落したのではない。

 骨の髄から、立つ術というものが消え失せたのだ。

 

「ひっ♡」

 

 声が出た。

 悲鳴にあらず。

 ましてや、抗議の声でもない。

 それは、己の肉体が裏切り、

 快楽の予兆という名の毒を分泌したことへの、

 驚愕と、戸惑いと、そしてほのかに滲む安堵の入り混じった、

 ひどく淫らな音であった。

 

「ふふ……相変わらず、質の良い反応だ」

 

 セテラリックが嗤う。

 その声は湿っている。

 玉座の間の空気が、彼の吐息だけで飽和しているかのように、

 ねっとりと、メネアの肌に張り付く。

 

「水桃の血などという生易しいものではないな。

 これはもう、発情の呪いだ。

 其方がその呪いを受け入れるまで、私の前戯は終わらぬ」

 

 支配者の手が、さらに遠慮なく伸びる。

 長い指が、メネアの首の後ろへと回り込み、

 その桃色の髪を、鷲掴みにした。

 

「あぐっ……!」

 

 強引に、引き寄せられる。

 小柄な体躯が、ふわりと浮き上がり、

 セテラリックの巨躯へと吸い寄せられていく。

 女の甘やかな香りが、男の鼻腔をくすぐる。

 それは、ルモォーク特有の体液の香り。

 あるいは、処女が持つ特有の青臭さと、

 それとは裏腹に、すでに熟れ初めている子宮の甘い気配とが、

 不倫の交渉をしているかのような、背徳の香りであった。

 

「其方がどう足掻こうと、結果は変わらぬ。

 私の棒が、其方の其処を拓いていくその音を、

 ここではっきりと聞かせて進ぜようではないか」

 

 顔が、迫る。

 近い。

 あまりにも近い。

 男の熱い吐息が、直接メネアの顔に吹きかかる。

 皺の刻まれた顔。鋼色の瞳。

 その奥底で揺らめく陽炎のような欲情の焔。

 メネアは見た。

 残酷な歓喜に満ちた、捕食者の眼差しを。

 

「い、いや……! 離して……離してくださいまし……!」

 

 必死に抵抗する。

 小さな手が、セテラリックの胸板を押し返そうとする。

 だが、それはあまりにも無力で、

 まるで赤子が岩山に指を突き立てるような、

 凄惨なまでの労力の無駄遣いであった。

 

「抵抗か。好いぞ。

 其方がそうじて抗えば抗うほど、

 征服した後の歓びが深まるというものだ」

 

 セテラリックは嗤いながら、

 その醜悪な唇を、メネアの唇へと寄せた。

 

(!?)

 

 メネアの思考が、凍り付いた。

 キス。

 口づけ。

 そんな、雅やかな響きを持つ行為ではない。

 これは、口腔という名の第二の秘所への、

 侵入の予告である。

 獣が、獲物の喉笛に牙を突き立てる前の、

 残酷な甘噛 の如く。

 あるいは、雄が雌を完全に所有するための、

 体液の交換儀式の如く。

 

 ファーストキス。

 乙女たちが夢見る、甘く純潔な行為。

 しかし、今メネアが奪われようとしているのは、

 そんなロマンチックなものではない。

 これは、質量攻撃だ。

 圧倒的な雄の圧力による、口唇の蹂躙である。

 

「んっ……! ンんんんっ!!!」

 

 重なった。

 唇と唇が。

 だが、セテラリックのそれは、決して優しくはない。

 長い舌が、メネアの唇の隙間をこじ開け、

 無理やり口腔内へとねじ込んでくる。

 

「んぐっ♡ んぅっ♡♡」

 

 メネアの目が見開かれる。

 驚愕。羞恥。そして、決定的な敗北感。

 男の舌が、彼女の舌を絡め取り、

 上顎を舐め回し、歯莖をなぞり、喉奥へと侵入してくる。

 それは蹂躙だ。

 抵抗の余地など与えぬ、一方的な蹂躙。

 

 だが、である。

 倒錯した話だが、

 不意に押し入ってきた異物感と、

 男の饐えた体臭、そして唾液の味が、

 メネアの脳髄を灼き尽くしたのだ。

 

(ああ……♡ 何、これ……♡ なにが、入ってきてるの……♡)

 

 痺れだ。

 頭の芯から、全身の神経へと奔る、甘やかな痺れ。

 それは、ルモォークの血が為せる業か。

 それとも、純潔を散らされる恐怖が、

 快楽という名の防衛本能へと反転したのか。

 答えは出ない。

 ただ分かるのは、自分が今、

 この男に「所有」されようとしているという事実だけだ。

 

 涙が、溢れた。

 哀れな肉人形の如く、頬を伝い、

 セテラリックの顔へと滴り落ちる。

 傷つき涙する処女の艶姿。

 乱れる桃色の髪。

 白濁した碧眼。

 口端から漏れる、くぐもった嗚咽。

 

 それこそが、オスの欲を掻き立てる最強の媚薬なのだ。

 セテラリックは、その反応を貪るように、

 さらに深く、さらに執拗に、口づけを続けた。

 

「ンんんんんんんっ♡♡♡」

 

 長い、長い口づけ。

 やがて、セテラリックが唇を離した時、

 二人の間には、銀色の唾液の糸が引いていた。

 それは、美しい契約の印か。

 それとも、淫らな婚姻の証か。

 

「はぁっ……♡ はぁっ……♡♡」

 

 メネアは喘いだ。

 ガクガクと膝が震え、

 セテラリックに縋り付かねば立っていられない。

 口元は濡れ光り、はち切れんばかりにふくらんだ唇は、

 今や、完全に「メス」の貌へと変貌していた。

 

「ふふ……実に美味だった。

 処女の唇など、百貨で売っている安い飴のようなものだが、

 其方のそれは、特級の蜂蜜のようだな」

 

 セテラリックは、濡れた唇を指で拭いながら、

 うっとりとそう囁いた。

 

「さあ、此奴も嘴開きだ。

 次は、其処のほうも開いて貰おうか。

 其方がただの『種』でなく、

 私の『肉壺』であることを、

 その身を以て理解するまで、

 じっくりと、ねっとりと、

 時間をかけてやろうではないか」

 

 ファーストキスは、奪われた。

 純潔は、汚された。

 だが、セテラリックの前戯は、まだ序の口に過ぎない。

 泥沼の交尾劇は、ここからが本番なのだから。

 

 口づけの余韻が、まだ、玉座の間に漂っていた。

 いや、余韻などという優しい響きでは到底足りぬ。

 部屋の中に充満しているのは、粘度の高い唾液の腐臭と、男の饐えた体臭、

 そして、かき消されつつある処女の青臭さが不倫の交わりを結んだ、

 どす黒い瘴気である。セテラリック・シガは、その毒気を肺の奥深くまで吸い込み、

 うっとりと目を細めた。獲物を喰らう前の蛇が、舌先で空気を味わうかのように。

 

「さて、小娘よ」

 

 低く湿った声が、再びメネアの鼓膜を震わせる。

 口づけの衝撃で未だ脚元のおぼつかない少女の顎を、長い指でそっと持ち上げた。

 涙に濡れた菫色の瞳が、怯えきって捕食者を見上げる。

 その瞳の奥に、抗いがたい運命への諦念が微睡んでいるのを、セテラリックは見逃さなかった。

 

「其方は、己の父親について、何か知っているのかね?」

 

 不意を衝く問い。メネアの濡れた睫毛が、ぴくりと震えた。

 父親。それは、ルモォーク王国の王。

 彼女が幼い頃から「国のための生贄」としての教育を施してきた、実の父である。

 しかし、その問いはあまりにも異質で、あまりにも脈絡がないように思えた。

 

「いいえ……何も……」

 メネアは、か細い声で答える。

「ルモォーク王家にとって、女とは……生贄の他には、

 何の価値もない存在でございます。父王は、わたくしども王女には……

 ほとんど関心をお持ちになりませんでしたから……」

 

 その声には、深い傷と諦念が滲んでいた。

 それが、彼女の「真実」だった。

 父は、自分たち娘を愛してなどいなかった。

 ただ、政治の道具として、

 種を撒き散らすための「袋」としてしか見ていなかったのだと、

 心のどこかで悟っていたのである。その傷つきやすく、

 何かを察して怯える表情こそが、オスの嗜虐心を最も強く刺激する毒。

 

「成る程。では、其方は知らぬのか」

 

 セテラリックの口元が、三日月のようにねじ曲がった。

 鋼色の瞳に、これまで以上の毒々しい輝きが宿る。

 これからこの哀れな肉人形に、最も残酷な「真実」を突きつけるのだ。

 前戯にも等しい精神的な陵辱。

 これこそが、彼の最も得意とするところであった。

 

「其方の母──第三王妃は、なかなかどうして、非常に美しい女だった。

 見事な桃色の髪、知性を湛えた菫色の瞳。そして、壊れ物のように華奢なくせに、

 男の欲を唆る肉付きを隠し持っていた。あれは、

 まさに水桃の姫君と呼ぶにふさわしい、至高の逸品であったと記憶している」

 

 母のことを、まるで商品か肉奴隷のように品評され、

 メネアは全身の血液が凍りつく思いだった。

 しかし、セテラリックの言葉は、さらに恐ろしい方向へと舵を切る。

 

「覚えているとも。其方が生まれる、ずっと前にな。

 私は何度か、お忍びでルモォーク王都へ赴いたことがある。

 表向きは、サガ帝国への牽制、

 そして緩衝地帯の実情調査ということになっていたが……本当の目的は、別にあった」

 

 彼は、獲物の反応を楽しむように、一拍、間を置いた。

 湿り気を帯びた沈黙が、メネアの心臓を締め付ける。

 

「其方の母に、会うためだ」

「……え……?」

 

「あの女は、ただの生贄ではなかった。政治の道具として、

 敵国の王子や将軍たちにその身を捧げさせられる哀れな肉人形。

 しかし、彼女はその宿命に抗わず、ただ美しく咲き誇り、そして甘く腐っていった。

 私は、その腐りゆく果実の香りに、すっかり夢中になってしまったのだ」

 

 セテラリックはまるで思い出話でもするかのように、うっとりと語る。

 その声には、熱情すら込められていた。

 しかし、それがメネアにとってどれほどの悪夢であるか。

 

「そ、それでは……まるで……」

 メネアの唇が、戦慄に震える。彼女は察してしまったのだ。

 この巨龍が何を言わんとしているのか。

 その「事実」があまりにも残酷で、口にすることすら恐ろしいのだ。

 

「そうだ。其方が勘付いている通りのことよ」

 セテラリックは、冷酷に笑った。

「其方の母が誰の手で幾度も開かれ、誰の体液でその身を濡らしたか。

 それは、其方の父だけではなかったということだ。いいや、もしかすると……」

 

 彼は、メネアの耳元に口を近づけ、

 まるでこの上なく甘美な愛の囁きでもするかのように、ねっとりと毒を吹き込んだ。

 

「其方のその、見事な桃色の髪。純真そうな菫色の瞳。

 そして何より、蹂躙される悦びを無自覚に滲ませる、

 その被虐の才。……ふ、ふふ。これは、いったい誰に似たのかねぇ?」

 

 メネアの思考が、完全に停止した。

 あまりの衝撃に、声も出ない。

 ただ、大粒の涙が、菫色の瞳から零れ落ち、白い頬を伝っていく。

 自分は、誰の子なのか。

 父王は知っていたのか。

 母は、何を想ってあの人の褥に侍っていたのか。

 

「いい表情だ。其方の母親も、かつて私の言葉に、そうやって涙を浮かべて震えていた」

 

 彼は、全てを察し、絶望の淵で打ち震えるメネアの艶姿を、愛おしむように眺め渡した。

 

「だが、安心しろ。今さら血筋など、この国では何の意味も持たぬ。

 大事なのは、其方が今、此処で、私の前に跪いているという事実だけだ。

 其方は、ルモォークの再建などという虚ろな夢のために種を蒔く、哀れな苗床に過ぎん。

 ならば、その夢を叶えるための楔は、胎内深く、直接刻み込んでやろうではないか」

 

 王の嗤いが、玉座の間に木霊する。

 泥沼の交尾劇は、まだ、始まったばかりなのだ。

 

 

 父かもしれない。

 己をこの世に生み落とした、その種を注いだ張本人かもしれない男。

 その男が今、娘の細い腕を万力の如き力で掴み、

 石の冷たい床へと押し倒そうとしている。

 教育とは恐ろしい。

 いや、ルモォーク王家が何世代にも渡って

 女たちに施した「生贄教育」の成果こそが、恐ろしいのだ。

 それは、雌としての本能すらも粉砕する、鉄槌の如き戒め。

「王族の血を、穢してはならない」

 近親相姦。

 血の穢れ。

 それは、種を残すための道具である王女たちにとって、

 生殖の目的を根底から否定する、絶対の禁忌であった。

「いやっ……! いやぁっ!!」

 メネアは、これまでにない必死の抵抗を見せた。

 首を振り、桃色の髪が乱れ狂う。

 細い脚をばたつかせ、爪を立て、獣のように叫ぶ。

 先ほどまで快楽の予兆に濡れていた菫色の瞳は、今、剥き出しの恐怖と嫌悪に染まり、

 生理的な涙が滝のように溢れ出している。

「放して……! 放してくださいまし……! そんな……そんなこと……! 

 血を……血を穢すことだけは……許されない……! お許しください……! 

 お父様……! お母様……! 誰か……! 誰かぁっ!!」

 助けを求める叫びは、もはや王女のものではない。

 それは、迷子になった幼子の、恐怖に竦む魂の断末魔であった。

 彼女は、居もしないナニカに救いを求めている。

 ルモォークの神か。

 遠い異国に散った姉たちか。

 あるいは、すでにこの世に亡き母の霊か。

 その哀れで、純粋で、そしてどうしようもなく無力な抵抗の姿こそが、

 捕食者であるセテラリック・シガの、心の臓を昂ぶらせる。

「ふ……ふふ……そうだ……そうだとも……その顔だ……」

 セテラリックは嗤う。

 その鋼色の瞳を、これまでにないほどギラギラと輝かせて。

「犯し、責め嬲るほど、其方の母親は、かつて私にそうやって泣きながら縋ったものだ。

『お許しください』『血を穢さないで』と、なァ。

 その仕草、その口調、その恐怖に引き攣る眉根の寄せ方まで、あの女と寸分違わぬ」

 彼は、メネアの両手首を片手で纏めて頭上に縫い付け、

 もう一方の手で、彼女のドレスの胸元を、ビリィッ! と、無造作に引き裂いた。

「ひゃあぁっ!?」

 露わになる、白い肌。重力に逆らうよう上向いた、Cカップの豊満な双丘。

 薄紅色の慎ましい蕾は、恐怖と外気に触れて、ぷくりと硬くなっている。

「血を穢すだと? 笑わせるな。

 其方の母親はな、私の子種をその身に受けながら、

『ああ、これでまた、ルモォークの血は守られます』と、

 あの美しい顔を快楽に歪ませて泣いたのだぞ? 

 其方のその存在そのものが、私の血と、其方の母の淫蕩な悦びの結晶だ! 

 禁忌? 血の穢れ? 

 そんなものは、泥沼を這い回る我らにとっては、ただの潤滑油に過ぎぬわ!」

 彼の言葉は、メネアの心を、徹底的に破壊するための前戯であった。

 メネアは、ただ泣き叫ぶことしかできない。

 逃れようと身をよじればよじるほど、その肢体は蛇のように絡みつき、

 巨乳が揺れる様が、無防備で、無意味な性的魅力を撒き散らす。

「いやぁっ!! 誰か……! 誰かぁっ!! 助けて……助けてぇっ……!!」

 絶望の叫び。

 その悍ましさと、そこから滲み出る蠱惑的な媚態。

 この矛盾こそが、哀れな肉人形の生態の奥深さなのだ。

 絶叫は、誰にも届かない。

 しかし、その絶叫こそが、玉座の間を満たす陰湿な空気を震わせ、

 征服者である巨龍の、劣情を極限まで煽り立てるのである。

 ねっとりと、ねっとりと。

 泥沼の交尾は、まだ、その嘴を開いたばかりなのだから。

 

 ビリィッ……! 

 

 その音は、まるで絹の悲鳴であった。

 空気を裂き、肌を灼き、そして何よりも、守られるべき乙女の尊厳を、

 根本から木っ端微塵に粉砕する破壊の凱歌。

 メネア・ルモォークの白いドレスが、胸元から無残に引き裂かれ、

 露わになった素肌が、玉座の間の陰湿な空気に晒される。

 

「ひゃあぁっ……!?」

 

 彼女の口から迸ったのは、もはや声ですらない。

 剥き出しの恐怖が、空気の振動となって爆発しただけの、

 獣じみた断末魔の気配である。

 

 セテラリック・シガは、その醜悪な唇を三日月に歪めて嗤った。

 手にはまだ、引き裂いたドレスの布切れ。

 まるで、獲物から剥ぎ取ったばかりの毛皮でも愛でるように、

 それを鼻先に運び、深く、深く、その残り香を吸い込む。

「……ふむ。水桃の王女は、やはりその実こそが極上だ」

 彼の鋼色の瞳が、ぎらりと輝いた。そこに映るのは、もはや少女ではない。

 ただの肉、である。

 いや、肉というにはあまりに芸術的で、淫猥で、

 そして男の劣情を唆るように計算された、至高の造形物。

 

 メネアの両腕は、自身の胸を隠そうと必死に交差された。

 しかし、それはあまりにも無意味な抵抗である。

 何せ、彼女の胸は、百五十センチの小柄な体躯には不釣り合いな、

 重力に逆らうよう上向いた豊満な双丘なのだ。

 隠そうとすればするほど、その柔肉は細腕の間からこぼれ落ち、

 さらに奥にある、庇護されるべき慎ましい蕾の存在を、

 見る者に嫌が応にも意識させてしまう。

 

 じつに、珍妙な造形である。

 この爆乳と言うべき形は、まるで彼女の人格とは無関係に、

 ただ「そこに在る」ことで存在を主張しているようだ。

 やや内側を向いた愛らしい鐘型。

 触れれば掌の中で零れんばかりに弾むと予感させる、

 その質量と弾力は、彼女がまだ恋すら知らぬ純真な少女である……という事実を、

 逆説的に、淫らに彩っている。

 

 乳暈は小振りで薄紅色。

 その中心で、恐怖と外気に触れた乳首が、ぷくりと硬くしこっている。

 自己防衛の本能。あるいは、ルモォークの血に刻まれた、

 陵辱の予感に対する、無意識の媚態。

 

「見事、だ。この蕾の色、大きさ、硬度。

 まるで其方の母親のそれを見ているようだ。

 嬲れば嬲るほど、美しく熟れていったものだ」

 セテラリックの長い指が、ゆっくりと、獲物を嬲るように伸びる。

 その指先が、メネアの右の乳房、そのふっくらとした膨らみの、

 あまりにもなめらかな稜線を、そっと、なぞった。

 

「ひぅ……っ!」

 

 びくんっ! 

 メネアの全身が、電流を流されたように跳ね上がった。

 ただ、触れただけだ。

 それだけのことで、彼女の背骨の根元に冷たい恐怖と、

 その実、火傷しそうな熱さが同時に走るのだ。

 過剰な反応。処女特有の、誇張された生理現象。

 だが、それこそが征服者にとっては堪らなく愛しい。

 

「何故、其方はそうまでして己の肉を恥じる? 

 この国で、其方の姉も、母も、その乳房を男に捧げ、

 国を守るための道具としたのだぞ。

 其方のそれも、ただの肉だ。雄を誘い、種を受け止め、

 次代の苗床を生み出すための、ただの装置。

 ……そうであろう?」

 セテラリックの言葉は、粘着質な触手のように、

 メネアの精神の襞に絡み付く。

 教育。

 ルモォークの女たちに何世代もかけて施された、生贄の呪い。

 

「ちが……ちがいます……わたくしは……これは……」

 メネアは泣いた。声にならない声で、泣きじゃくった。

 しかし、その否定の言葉とは裏腹に、彼女の乳房は、

 先ほどよりもさらに紅潮し、その中心の蕾は、

「もっと触れてほしい」と強請るかのように、

 ぷっくりと、これまでにない硬度で屹立していた。

 思考は拒絶を叫んでいるのに、肉体は正直に歓迎しているのだ。

 

 哀れな肉人形の喜劇。

 その真髄が、ここにある。

 機械は、意志を持たぬ。

 しかし、この王女という名の装置は、

 支配者の命令よりも早く、その淫らな本性を暴き始めるのである。

 

「違わぬ。其方のこれは、もう知っているのだ。

 蹂躙される悦びを。

 其方のその滴る汗、脈打つ心臓、そして硬くなった其処。

 全てが一つの物語を語っている。

『私は、肉です。どうぞ、お使いください』となァ」

 セテラリックの巨躯が、さらに近づいた。

 その影が、完全にメネアの肢体を覆い尽くす。

 それは、単なる暴力の前兆ではない。

 

 教育で縛られた理性と、

 呪いで開発されつつある本能。

 その狹間で引き裂かれ、涙し、それでもなお抗おうとする乙女の媚態。

 それを、じっくりと、ねっとりと味わい尽くすための、

 これ以上なく甘美な時間の始まりなのだ。

 

「……見よ」

 

 セテラリック・シガの低い声が、玉座の間の湿度をさらに高めた。

 彼が指を鳴らすと、部屋の奥に置かれた巨大な映像投影装置が、

 音もなく起動したのだ。

 白い光が闇を切り裂き、石壁に鮮明な色彩を投げかける。

 

「な……何を……?」

 メネア・ルモォークは、胸元を隠そうとする腕すら忘れ、

 その光景に目を奪われた。

 そこに映し出されたのは、見覚えのある場所ではなかった。

 だが、見覚えのある「色」だった。

 桃色。

 それは、彼女自身の髪と同じ、呪われた色彩。

 

 映像の中には、一人の少女がいた。

 いや、少女というにはあまりに成熟し、

 しかし今のメネアよりは幾分か幼い、あどけなさの残る乙女であった。

 桃色の長い髪。白い肌。そして、男の劣情を焼き尽くすような、

 豊満な肢体。それは、彼女が幼い頃に見た「母」その人であった。

 

「お母様……?」

 呆然と呟くメネアの耳を、突き刺すような悲鳴が殴りつけた。

 

「いやぁっ! 放して! 放してくださいませっ!」

 

 映像の中で、母は泣いていた。

 組み敷かれていた。

 彼女の上に跨る男は、若き日のセテラリック。

 今よりもいくらか黒髪に艶があり、皺も浅いが、

 その鋼色の瞳に宿るどす黒い欲情は、今と寸分違わぬ。

 

「ひぎっ……! 痛い……痛いですわ……! 血が……血が溢れて……!」

「知ったことか。其方が私の物になる証だ。

 泣け。泣けば泣くほど、私は其方を愛せるのだからな」

 

 映像は残酷なほど鮮明だった。

 母の純潔が裂かれる瞬間。

 太い肉楔が無理やり押し入る感触。

 血と愛液が混じり合い、白い太腿を伝い落ちる赤黒い雫。

 それを、セテラリックは執拗に、ねっとりと貪る。

 

「いやぁ……っ! お父様……助けて……誰か……! 

 ルモォークの血が……血が穢れてしまいますぅっ……!!」

 

 その悲鳴は、今のメネアと完全に重なっていた。

 教育。禁忌。血の穢れ。

 それらへの恐怖が、映像の中の母を追い詰め、

 そして現在のメネアをも追い詰める。

 

 だが、である。

 映像はそこで終わらなかった。

 時間が経過するにつれ、母の悲鳴は、次第にその質を変えていくのだ。

 

「ああっ……♡ あぐっ……♡ そんな……激しく……ぶたないで……♡」

「どうした? 先ほどまでは『血を穢すな』と喚いていたではないか。

 今は其方が自ら腰を振り、私の子種をねだっておるぞ」

 

 否定。拒絶。

 しかしその声には、確かな甘やかな響きが混じり始めていた。

 映像の中の母は、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、

 それでもなお、セテラリックに縋り付き、

 自ら巨乳を押し付け、恍惚とした表情で絶頂していたのだ。

 

「いいっ……♡ 気持ちいい……♡ ご主人様の精液……

 子宮に……注がれてるぅっ……♡♡♡」

 

「……!」

 メネアは息を呑んだ。

 目の前が真っ白になる。

 母が、ルモォークの高貴なる妃が、

 外国の王に蹂躙されながらも、その快楽に溺れている姿。

 それは、彼女の精神を根本から破壊するには余りある光景であった。

 

「如何だ? これが真実だ」

 セテラリックの声が、メネアの耳元で囁いた。

 いつの間にか、彼はメネアの背後に回り込み、

 その剥き出しになった乳房を、下から鷲掴みにしていた。

 

「其方の母は、最初は泣いていた。

 だが、最後には笑っていた。

 私の肉棒に貫かれ、子種を注がれる悦びに酔い痴れてな。

 其方も同じ血が流れているのだ。

 其方もまた、最後には笑うのだ。

『もっとくださいませ』とな」

 

「ちが……ちがいます……! お母様は……そんな……淫らな方では……!」

「映像があるだろう? 其方が今見たのは紛れもない事実だ。

 其方のその豊満な肉体も、その被虐の才も、全てはこの時から始まっているのだ」

 

 セテラリックの手が、強引に乳首を捻り上げた。

 

「ひゃあぁぁっ♡♡♡」

 

 メネアの背骨が弓なりに反った。

 映像の中の母の嬌声と、自分自身の悲鳴が重なり合う。

 脳髄が灼ける。

 これは悪夢か。

 それとも、ルモォーク王家に課された宿命の啓示か。

 母が辿った陵辱と快楽の道筋を、娘もまたなぞるという血統の循環。

 

「さあ、見ろ。そして聞け。

 其方の母が私に抱かれて啼いた声を。

 其方もまた、その声を出すようになるのだからな」

 

 映像の中の母が絶頂し、

 現実の中で娘が肉を弄ばれる。

 二つの悲鳴が交錯し、玉座の間を満たしていく。

 

 ねっとりと。しつこく。

 過去と現在が交尾する残酷な儀式は、

 まだ終わりそうにないのである。

 

「むにゅううぅっ……」

 

 あまりにも生々しい音が、玉座の間の湿度をさらに高めた。

 それは、熟れすぎた果実が、無慈悲な掌圧によって潰される音か。

 あるいは、粘度高い蜜が、指の間から溢れ出す音か。

 

 セテラリック・シガの手は、まさに万力であった。

 いや、万力にも増して執拗で、熱く、そして何よりも愉悦に満ちていた。

 彼はメネア・ルモォークの豊満なる右乳房を、その巨大な掌で完全に包み込み、

 そして、遠慮という名の緩衝材を一切合切抜きで、握り潰したのだ。

 

「ひゃああぁぁっ……♡♡」

 

 メネアの喉から、悲鳴と嬌声が混ざり合った奇妙な和音が迸る。

 背後から抱きすくめられた体勢。

 華奢な肋骨が男の鉄のような胸板に押し付けられ、軋む。

 そしてその前面に位置するCカップの柔肉は、

 今や男の手の中で無惨にもその形を変えていた。

 

 白く滑らかな肌が赤く充血し、指の跡がくっきりと刻まれる。

 指と指の間から余った乳肉がむぎゅりと溢れ出し、

 まるで独立した生き物であるかのように脈動している。

 

(ああ……ああっ……壊れる……おっぱいが、声れちゃう……♡)

 

 思考が融け出す。

 映像の中で啼く母の姿と、今自分がされている行為とが、

 粘着質な糸で繋がれ、脳髄の中でぐるぐると回り始める。

 母もこのようにされたのか。

 この男にこの巨躯に押し潰され、

 その肉棒で貫かれながらあんなにも淫らに喘いだのか。

 

「見ろ。其方の肉が私の手に吸い付いておるぞ」

 セテラリックの耳元での囁きが熱した針のように鼓膜を刺す。

「力を込めれば込めるほど其方は其処から蜜を溢れさせる。

 これが『肉壁』の本能だ。圧迫されることこそが其方らの生存術なのだ」

 

 理屈だ。支配者の理屈だ。

 だが今のメネアにはそれを否定するだけの理性は残っていない。

 むしろその理屈にすがりつきたいという倒錯した渇望が湧き上がってくる。

 

 セテラリックは握り潰した乳房をさらに激しく揉みしだき始めた。

 上へ。下へ。左右へ。無造作に。乱暴に。

 

 プルンッ! プルンッ! ブルルンッ! 

 

 重たい肉の波紋がメネアの全身を駆け巡る。

 乳首は擦り上げられるたびに電流のような刺激を放ち、

 子宮の奥底へと直接的な快楽信号を送り続ける。

 

「いやっ♡ いやぁっ♡ そんなに♡ 揉まないでぇっ♡♡」

「嘘をつけ。其方の子宮は今歓喜の鐘を鳴らしておるわ。

 ほら映像の中の其方の母と同じようにな」

 

 投影された母の絶頂。現実の娘の陵辱。

 過去と現在が交差し肉と肉とがまぐわう視聴覚の地獄。

 

 メネアの瞳から生理的な涙が溢れ続ける。

 だがその涙はもはや悲しみだけを成分としていない。

 そこには確かに快感という名の毒が混じり始めていたのだ。

 

 彼女はまだ母と同じ場所へ堕ちてはいない。

 しかしその階段を一段一段確実に降りていることだけは確かである。

 

 むにゅうっ。むぎゅうっ。ぱふんっ。

 

 卑猥なるオノマトペの連呼。

 揉み潰されるたびにメネアの口からは

 拒絶の言葉とは裏腹な甘く濁った吐息が漏れ続ける。

 

「あぐっ♡ あむっ♡ ひぃっ♡♡」

 

 母の声と重なる。

 自分の声が母の声になる。

 血の呪縛。

 肉の連鎖。

 

「さあもう片方も同じようにしてやろう。

 其方が私の物だと刻み込むまでこの前戯は終わらぬぞ」

 

 セテラリックのもう片手が残された左の乳房へと伸びる。

 逃げ場はない。

 蹂躙はまだ続く。

 

「むぎゅうぅっ!!」

 

 右の手。左の手。

 その両方が同時に、メネア・ルモォークの豊満なる双丘を

 万力の如き握力で鷲掴みにしたのだ。

 遠慮などという言葉は、彼の辞書には存在しない。

 ただ純粋に、無慈悲な圧力のみが、白く柔らかな肉に食い込む。

 

「ひぎぃぃっ♡♡ おっぱいっ♡ おっぱいがっ♡♡

 壊れる♡ 壊れちゃいますぅっ♡♡」

 

 メネアの背骨が弓なりに反り返る。

 巨躯の男の胸板に押し付けられた華奢な胴体は、

 逃げ場を失い、ただ前へとその形を変えるしかない。

 指の間から溢れ出す乳肉。

 それはまるで、自ら男の手を歓迎し、

「もっと握ってください」と媚びているかのようにむにむにと波打つ。

 

 これが「再教育」である。

 鞭で打つだけが教育ではない。

 過剰なまでの愛撫によって、肉そのものの屈服を促す。

 これこそが、最も効果的であり、最も残酷な調教法なのだ。

 

「壊れはせんよ。其方のその肉はな、

 オスの手に心地よく吸い付くように出来ておるのだからな」

 

 セテラリックは、耳元でそう囁くと、

 握り潰した両手をさらに激しく動かし始めた。

 揉む。捏ねる。揺らす。潰す。

 四つの動詞が同時に実行される、荒療治のマッサージ。

 

 ぷるんっ! ぶるるんっ! むにゅうぅっ! 

 

 卑猥な音が、玉座の間に充填されていく。

 湿度はすでに九十パーセントを超えているだろうか。

 汗と愛液と、そして男のフェロモンが混ざり合った空気は、

 粘度を増し、メネアの肺を直接侵食し始めていた。

 

(ああっ♡ だめ♡ こんなこと♡ 王女として♡ わたくしは♡)

 思考が溶ける。

 否定の言葉が、甘い嬌声へと変換される回路。

 それこそが、ルモォークの血筋に刻まれた、呪わしい才能なのだ。

 

 映像の中で啼く母と同じように。

 今、自分もまたこの男の手の中で啼いている。

 

「感じておるな? 其方の子宮が、うずいておるだろう? 

 乳首を這い回る私の掌紋の感触だけで、

 其方のその奥は洪水を起こしておるのだ」

 

「いやぁ♡ ちがう♡ ちがいます♡♡

 きもちよくなんて♡ なってませんっ♡♡」

 

 嘘だ。

 その声はあまりにも甘く、あまりにも潤んでいる。

 メネアの瞳から溢れる涙はもはや恐怖だけではない。

 そこには確かに、抗えない快楽への屈服が混じり始めていた。

 

 オスには敵わない。

 絶対的な力。絶対的な質量。絶対的な支配。

 それらを前にして、メスがなしうる抵抗など最初から存在しないのだ。

 だからこそ、ルモォークの女たちは「肉壁」になれた。

 抗うことを諦め、ただ快楽の波に身を任せることでしか、

 生き延びることができなかったからだ。

 

(これが……わたくしの……定め……?)

 

 メネアの全身から力が抜けていく。

 セテラリックの手の中で、

 その肢体はただの人形のように揺さぶられながらも、

 自らその形を男の手に合わせようとし始めていた。

 

「そうだ。其方が其処で鳴けば鳴くほど、

 私の性欲という名の筆先は、其方の肉という名の紙に、

 より鮮明に文字を刻み込んでいくのだよ」

 

 再教育は続く。

 乳肉がその形を記憶し、オスの手形だけを受け入れるようになるまで。

 泥沼のような悦楽の時間は、まだ終わりそうにない。

 

 セテラリック・シガの手が、止まった。

 

 それは不思議な静寂だった。

 あれほど激しくメネア・ルモォークの双丘を揉みしだき、捏ね上げ、

 その形を己の掌に記憶させようと貪欲だった両手が、ふと動きを止めたのである。

 

 むにゅうぅ……という余韻だけが、玉座の間に粘着質な残響として漂っている。

 メネアは呆然とした。乳房を解放されたという安堵よりも、

 何かもっと別の、名状しがたい不安が背筋を這い上がってくる。

 捕食者が獲物を解放するとき、それは慈悲ではない。

 むしろ、より残酷な次の段階への序章なのだ。

 

「……少し、昔話をしようか」

 

 セテラリックの声は、先ほどまでの嗜虐的な嘲笑とは違っていた。

 いや、正確には、その核心にある支配欲は変わらぬまま、表面を覆う膜の質感だけが、

 ねっとりとした粘液から、柔らかな羽毛へと変わったのだ。

 

「其方の母はな、実に美しい女だった。それは何も、

 其方のように若く瑞々しかったから……というだけの話ではない。

 あの女は、泣きながら笑うことが出来たのだ。蹂躙され、陵辱され、血を穢され、

 それでも最後には私の名を呼びながら、その桃色の髪を私の胸に擦り寄せてきた」

 

 メネアの心臓が、どくりと波打った。

 母が、そんなことを? あの、高貴で、貞淑で、

 それでいて何処か陰のある美しい母が? 

 

「其方の母は、ルモォークの王妃として生まれたことを、誰よりも恨んでいた。

『生贄』として育てられ、政略の道具として嫁ぎ、

 父王からはただの苗床としてしか見られず、愛情などというものは一滴も与えられなかった。

 其方とて知っておろう? 其方の父王が、どれほど冷たい目で娘たちを見ていたかを」

 

 言葉が出ない。

 その通りだった。

 ルモォークの王……いや、彼女たちの父は、

 娘たちを一度も「娘」として見たことはなかった。

 ただの政治の駒。

 外国に捧げる供物。

 それだけが、彼にとっての王女の価値だったのだ。

 

(だから……お母様は……?)

 

「私が与えたのは、全てだ。蹂躙であり、陵辱であり、暴力であり、

 血の穢れであり、禁忌の悦びであり……そして、『お前は私のものだ』という、

 絶対的な所有の宣言だ」

 セテラリックは、ゆっくりとメネアの両の乳房から手を離し、

 代わりにその大きな掌で、彼女の涙に濡れた頬を、そっと包み込んだのである。

 

 まるで、壊れ物を扱うかのように。まるで、最愛の娘を慈しむかのように。

 

「其方はずっと、思っていたのではないか? 『私は愛されていない』と。

『私はただの道具だ』と。『私には守ってくれる父親がいない』と。……違うか?」

「……っ!」

 

 図星だった。

 メネアの心の奥底で、ずっと燻っていた孤独の炎。

 その存在を、この王は、いとも簡単に言い当ててみせたのだ。

 

「哀れだな。だが、もう大丈夫だ。もし、それを求めるなら、

 それを与えよう。今まで欲しくても手に入らなかった、父親の愛というものを」

 

 それは、悪魔の囁きであった。

 それは、麻薬の誘惑であった。

 最も禁忌なる近親相姦の穢れを、

「父の愛」という倒錯した論理で塗り替える精神の陵辱。

 

「……いや……いやです……」

 

 メネアは震える声で否定する。

 

「ちがう……そんなの、愛じゃない……これは……これは、ただの陵辱で……」

 

「陵辱と愛の、何が違うというのだ?」

 

 セテラリックは、嗤わない。ただ静かに、諭すように言った。

 

「母は、私に組み敷かれて泣きながら、

『ありがとうございます』と言ったのだぞ。誰からも与えられなかった愛情を、

 私が見せてやったからだ。同じだ。ずっと、父親に愛されたかった。

 ならば、私が父となろう。その美しい桃色の髪も、菫色の瞳も、豊かな乳房も、

 全ては血を受け継いだ証。ならば、これは何の穢れだ? これは祝福ではないか?」

 

 手が、そっとメネアの髪を撫でる。

 その手つきは、あまりにも優しく、あまりにも温かく、

 彼女が幼い頃に夢見た「父の手」そのものだった。

 メネアの心臓を締め付けていた恐怖の箍が、音を立てて外れていく。

 

(ああ……あったかい……お父様の手……?)

 

 精神の防壁に、致命的な亀裂が走る瞬間だった。

 恐怖と嫌悪だけで拒絶していた扉が、

 歪んだ「愛」という名の鍵で、内側から腐れ落ちようとしている。

 

「お前は娘だ。ならば、すべては私のものだ。もう、一人ではない。

 もう、誰にも愛されない哀れな生贄ではない。国王の娘として、永遠に愛してやる。

 さあ……父と呼べ。もう一度、愛らしい声で、私を父と呼ばぬか」

 

 メネアの唇が、わななく。

 理性は叫んでいる。

 これは罠だ。

 これは敵だ。

 これは国を奪う侵略者だ。

 しかし、心の奥底で渇望していた「父の愛」を差し出された今、

 その叫びは急速にかき消されていく。

 

 泥沼の蛇は、獲物を絞め殺すだけではない。

 その毒で獲物の神経を麻痺させ、恐怖を快楽に変換してから、

 ゆっくりと喰らうのだ。近親相姦の禁忌。愛の倒錯。

 肉の交わりが、精神の空隙を埋め尽くすとき、

 一人の王女は名実共に「娘」として、その全てを捧げることになる。

 

 セテラリックの太い指が、メネアの唇をなぞる。

 それはかつて母に向けられた「父の愛」と同じように、ねっとりと、甘く、

 そして逃げ場のない罠として、今、娘の心を絡め取っていくのだった。

 

「お父様……」

 

 その言葉は、メネア・ルモォークの唇から、

 あまりにも自然に、

 あまりにも無防備に零れ落ちた。

 

 それは、これまでの陵辱という名の前戯が、

 精神の奥底に堆積させた泥の結晶。

 恐怖と嫌悪、絶望と諦念、

 何よりも幼い頃から喉から手が出るほど渇望していた「父の愛」という名の毒蜜が、

 凝固して結晶化し、一つの言葉という形を取って、

 この陰湿なる玉座の間に迸ったのである。

 

「……っ! あ……わたくし、今、何と……?」

 

 メネア自身が、自分が口にした言葉の重みに戦慄する。

 菫色の瞳が見開かれ、白い頬がさらに青ざめる。

 今、自分は確かに、この国の王を、自らを陵辱し、母を陵辱し、

 祖国を奪う張本人を、父と呼んだのだ。

 それは、ルモォークの王女としての最後の矜持が粉々に砕け散った瞬間であり、

 同時に「メネア」という一人の少女が、

 全く新しい生き物へと変態を遂げる産声でもあった。

 

 セテラリック・シガは嗤わなかった。

 鋼色の瞳は、むしろ静かな愉悦に細められている。

 その手は変わらず、メネアの頬を優しく包み込んだままだ。

 それは、射手が矢を射る直前の、風すらも止める静寂。

 最も残酷な真実を、最も慈悲深い形で突き刺すための用意周到な静けさ。

 

「今、其方は自らの意思で、私を父と呼んだ。ならば、全ては定まったな」

 

 声はいつもの嘲笑を潛め、代わりに、とろりとした甘さを含んでいた。

 それは、まさしく父が最愛の娘に語りかけるときの声音そのものであり、

 だからこそ悍ましく、だからこそ抗いがたい引力を放つ。

 

「血の繋がりなど、所詮は肉の理屈よ。大事なのは魂の契約だ。

 其方は今、孤独な生贄から、私の娘へと生まれ変わったのだ」

 

 彼の大きな手が、メネアの桃色の髪を、優しく、優しく撫でる。

 まるで、雨に打たれて震える小犬の頭を、飼い主が安心させるかのように。

 もう一人ではない。もう誰にも愛されない哀れな生贄ではない。

 国王の娘として、永遠に愛される。

 甘やかな囁きは、メネアの心の空虚を、温かい泥で埋め尽くしていく。

 

(ああ……お父様……わたくしは、ずっと、ずっとこうされたかった……)

 

 精神の堤防は、完全に決壊した。

 

 しかし、である。

 

 皮肉にも、彼女の身体は、その精神よりもはるかに早く、

 この倒錯した関係を受諾していたのだ。

 セテラリックの愛撫は続いている。

 それは先ほどまでのような暴力的な揉み潰しではない。

「父」が「娘」にするような優しいものへと変貌していたが、だからこそ尚更、

 ルモォークの血に刻まれた被虐の本能が、抗いがたく呼び覚まされてしまう。

 

「ひゃうっ……♡」

 

 父の節くれ立った指が、娘の乳首の先端を、そっと掠めた。

 それだけだ。それだけのことが、メネアの全身を貫く甘い電流へと変換される。

 

「どうした? 気持ち良いのか?」

「ちが……ちがいます……♡ これは……身体が勝手に……」

 

 嘘だ。

 それはもう、明らかな嘘だった。

 彼女の声は、もはや拒絶の響きを失い、甘く蕩けたメスの鳴き声へと変質している。

 恐怖と嫌悪に震えていた唇は、今や無意識のうちに薄く開かれ、

 熱い吐息を吐き出している。自分を守るために交差させていた腕も、

 いつの間にか解かれ、むしろその豊満な双丘を父の手に差し出すかのように、胸を張っている。

 

「そうか。では、これはどうだ?」

 

 さらに指が、優しく、しかし執拗に、胸の先端で硬くなった蕾をくりくりと嬲る。

 その度に、メネアの子宮がきゅんっと締まり、太腿の奥から熱い蜜が滲み出してくる。

 

「ああっ♡ やっ……♡ それ、だめ……♡ だめなのにぃ……♡♡」

 

 心は拒絶しても、肉は悦ぶ。

 この矛盾こそが、哀れな肉人形たる由縁である。

 彼女は今、絶対的な恐怖と、それ以上の抗いがたい悦楽の狹間で、

 その肢体をくねらせ、悶え苦しんでいる。

 禁断の関係。

 背徳の悦び。

 それが、彼女の肉体にとって、これ以上ないほど強力な媚薬となっているのだ。

 

「ちがう、こんなの、いやなのに……身体が、言うことを……♡

 お父様の指に、おっぱいが吸い付いて……♡ きもちよくて……溶けちゃいそうです……♡♡」

 

 彼女の内面で葛藤していた二つの人格──

「王女としての矜持」と「父に愛されたい娘」──が、

 今や完全に後者によって塗り潰されようとしていた。

 映像の中の母と同じように。

 あの時、母もきっと、この淫らな悦楽に敗北し、

 そして最後には笑いながら、この男を受け入れたのだ。

 

 ならば、自分も。

 

「お父様……お父様……!」

 

 それは、もはや哀願だった。

 何を求めているのか、彼女自身にも分かっていない。

 ただ、この熱く煮えたぎる身体を、

 目の前の雄に何とかしてほしいという、メスの本能丸出しの懇願。

 

 セテラリックは、満足そうに目を細めた。

 時は熟した。

 母から娘へと受け継がれるべきは、血だけではない。

 陵辱の悦びも、支配への隷属も、そして絶望の果ての安堵も。

 全てを継承させ、この泥沼の中で永遠に循環させることこそ、彼の歪んだ愛の形なのだ。

 

「母は言ったぞ。『ありがとうございます、ご主人様』と。今、同じ目をしておる。

 ならば私が決定的な継承をさせてやろう。あの日、母にしたように、今宵、

 新たな命を注ぎ込んでやる。娘として、いや、私の雌として、

 二度と戻れぬ場所へ連れて行ってやろう」

 

 父が、娘の細い肩を掴み、冷たい石の床へと押し倒す。

 もはや、抵抗はない。

 あるのはただ、禁忌という名の泥沼に沈みゆく、甘やかな屈服だけだ。

 

「お父様……♡ お父様……♡ わたくしを……

 あなただけの娘にしてくださいませ……♡♡」

 

 玉座の間には、過去と現在が不倫に交わる、歪な子守唄が響き渡る。

 水桃の王国は、今日もまた新たな主人の子種を受け入れ、

 その呪縛を未来へと紡いでいくのである。

 

 決定的な分岐点にして、修復不能なる運命の合流点。

 三つの可能性──精神の崩壊、血の暴走、そして歪んだ慈愛──が、

 一つの交差点において爆発的な濃度で混ざり合い、臨界点を突破する瞬間。

 

「ぐちゅっ!!」

 

 湿った音がした。

 それは、熟れすぎた桃が無慈悲な圧力で潰れる音か。

 あるいは、泥沼の底で息づく何かが、その口を開ける音か。

 いや、これは間違いなく、

 肉が肉を食い破り、

 肉が肉を飲み込む、

 生命の根源たる交尾の音だ。

 

 セテラリック・シガの腰が、一息に、最奥まで沈み込んだのである。

 

「ひ゛っ……♡♡♡」

 

 声にならなかった。

 メネア・ルモォークの口から迸ったのは、悲鳴ですらない。

 肺の奥底から絞り出された空気が、喉の筋肉という名の笛を通り抜け、

 ただただ無意味な振動音となって霧散しただけの、獣じみた唸りであった。

 

 痛い。

 痛くない。

 痛いはずがない。

 

 相反する感覚が、脳髄の髄まで雷撃のように駆け巡る。

 純潔が裂ける物理的な痛み。

 処女膜という名の薄い肉壁が引き裂かれ、

 異物がねじ込まれる異常な圧迫感。

 そして、その奥にある子宮口という名の秘扉を、

 容赦ない鉄杭が叩き破る衝撃。

 

 それは恐怖であるはずだった。

 それは嫌悪であるはずだった。

 

 だが、である。

 ルモォークの血に刻まれた呪縛は、この決定的な瞬間において、

 あまりにも残酷な変換を遂げていたのだ。

 痛みが快楽に。

 恐怖が歓喜に。

 そして破壊が生成へと。

 その回路が、「父に抱かれる」という禁忌のスイッチによって、

 暴走寸前の出力で回転を始めたのである。

 

「あ゛あ゛あ゛っ……♡♡♡ お゛と゛さ゛ま゛ぁ゛っ……♡♡♡」

 

 メネアの瞳が上転した。

 白目が剥き出しになり、焦点というものを完全に喪失する。

 もはや彼女は見ていない。

 ただ感じているのだ。

 肉で。

 子宮で。

 そして魂で。

 

「見ろ! これが血の継承だ! 其方が私の子ならば、

 この痛みすら愛として受け取れ! 母がそうであったように!!」

 

 セテラリックの咆哮が響く。

 彼は腰を退かず、ただその場で、さらに奥へと楔を押し付けた。

 押し潰すような圧力。

 内臓が押し上げられ、肋骨が軋むほどの埋没。

 それが今のメネアには、何よりも甘美な「父の愛」として認識される。

 

「お゛と゛さ゛ま゛……♡♡ あ゛い゛……♡♡ して゛る゛……♡♡♡」

 

 言葉が溶けている。

 言語機能が崩壊し始めているのだ。

 だがその崩壊した言葉の端々に、背徳的な陶酔が滴り落ちている。

 彼女は自ら太腿を広げ、父の腰にその細い脚を絡め付けようとさえした。

 痛みに泣きながらも、その涙は恍惚に歪み、

 本能が疼き昂ぶり、子宮が疼き悦びに震えているのだ。

 

(ああ♡ わたくしは♡ わたくしは♡ お父様のおんな♡♡)

 

 精神の弾け飛ぶ寸前。

 自我という名の薄皮の下で、「肉壁」としての本能が牙を剥く。

 母を超える感度。

 母を超える淫らさ。

 それが今、娘の中で爆発的な花開きを見せようとしていた。

 

「ん゛お゛お゛ぉ゛っ……♡♡♡ ぐ゛ちゅ゛ゅ゛ゅ゛っ……♡♡♡」

 

 結合部から、卑猥な水音が溢れ出す。

 血と愛液が混ざり合った赤黒い蜜が、

 パックリと開かれた傷口からじゅわじゅわと滲み出し、

 白い太腿を伝い、冷たい石の床に黒い染みを作っていく。

 

 セテラリックは動かない。

 ただ埋没させたまま、その肉の蠕動を楽しんでいるのだ。

 メネアの子宮がどうしようもなく痙攣し、

 彼の子種を搾り取ろうと無意識に蠕動している様を。

 

「ふ……ふふ……! これだ! この締め付けだ! 

 母以上だ! 其方は母以上の淫らな肉壁となったのだ!」

 

 セテラリックは嗤った。

 征服の極みである。

 単なる暴力による制圧ではない。

 相手の精神構造そのものを書き換え、

「父に抱かれる悦び」へと塗り替え、

 自ら首輪を首にかけるよう仕向ける。

 これこそが王道である。

 

「さあ、鳴け! 父に抱かれて産声を上げろ! 

 もう其方は哀れな生贄ではない! 

 私だけの雌だ! 私だけの娘だ! その身に刻み込め!!」

 

 腰が動き始めた。

 ずんっ! ずんっ! ずんっ! 

 遠慮という名の前戯を剥ぎ取り、

 ただ純粋に質量攻撃のみを叩きつける。

 

「お゛お゛ぉ゛っ……♡♡♡ お゛っ♡ お゛っ♡ お゛お゛お゛っ……♡♡♡」

 

 メネアはもはや人間ではなかった。

 ただ快楽に溺れる肉塊。

 自ら腰を揺らし、白濁した瞳で虚空を見つめながら、

 涎を垂らし続けるだけの哀れな肉人形。

 

 だがその口元には、微かではあるが間違いなく、

 三日月のように歪んだ笑みが張り付いていた。

 

「お゛と゛さ゛ま゛……♡♡ だぁぃす゛き゛……♡♡♡」

 

 愛している。

 殺してくれてもいい。

 だってこれは、

 わたくしがずっと求めていた「父の愛」なのだから。

 

 泥沼の中で蛇が交尾するようにねっとりと。

 血と蜜と背徳と歓喜が混ざり合う玉座の間で、

 ルモォーク王国第三王女は今、

 完全なる「メス」として生まれ変わったのである。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 玉座の間の扉が、音もなく開かれた。

 

 重厚なる黒曜石の両開き扉が、その口を大きく開けたのである。

 そこから押し寄せてきたのは、外気ではない。

 熱だ。

 生温かく、粘度が高く、そしてひどく生々しい雄の体臭を孕んだ熱波が、

 未だ床の上で事後の余韻に震えていたメネア・ルモォークの肌を、

 遠慮という名の前戯なしに舐め回したのである。

 

「……集まれ」

 

 セテラリック・シガの短い命令。

 その声は、玉座の間の隅々まで届いたかのように思えたが、

 実際には扉の外に控えていた近衛兵たちへと向けられたものであった。

 彼らは待っていたのだ。

 主君が事務的なる政務を終え、

 より根源的なる「支配」の儀式を終えるその時を。

 

 ズズズズズ……! 

 

 足音ではない。

 床石を擦る音でもない。

 それは無数の蛇が泥沼の中を蠢き寄せる音であり、

 飢えた狼の群れが獲物の匂いを嗅ぎつけ集結する音であった。

 

 入ってきたのは、シガ王国の重臣たちであった。

 老若男女入り混じるが、その瞳は皆一様に鋼色に輝いている。

 いや、違う。

 彼らの瞳は鋼色ではない。

 欲望という名の泥に汚染された、濁った色をしているのだ。

 

「……見よ」

 

 セテラリックは、玉座から腰を浮かせることなく、

 ただ膝元に縋り付くメネアの桃色の髪を掴み、無造作に引き寄せた。

 

「ひっ……♡」

 

 メネアは小さな悲鳴を上げた。

 彼女はまだ、自身が置かれている状況を正確に理解していなかった。

 父に抱かれ、純潔を散らされ、肉壁として生まれ変わった悦びに浸っていたその顔は、

 しかし目の前に広がる光景を見た瞬間、凍りついたように硬直したのだ。

 

 視線だ。

 何十人、あるいは何百人もの視線が、

 一斉に彼女に突き刺さっている。

 その視線は物理的な質量を持っていた。

 ねっとりと粘着質で、まるで無数の触手が這い回るような不快感と、

 それとは裏腹に子宮の奥底を直接撫で上げるような背徳的な刺激。

 

(見られてる……みんなに……見られてる……♡)

 

 羞恥という名の電流が背骨を駆け上がる。

 先ほどまでの密室での陵辱とはわけが違う。

 これは公示だ。

 国家という巨大な権力機構の前で、

 彼女が何者であるかを白日のもとに晒す儀式なのだ。

 

「此度より、この女を私の公式なる『愛人』と定める」

 

 セテラリックの声が響く。

 淡々としていた。

 まるで明日の天気を告げるかのような事務的な口調であったが、

 その内容はあまりにも凄惨で、あまりにも冒涜的であった。

 

「同時に、この女はルモォーク王国第三王女メネアであると同時に、

 私だけの雌であり、私だけの肉壁であることも併せて宣言する」

 

 臣下たちの間から、どよめきのような吐息が漏れた。

 それは驚きか。それとも歓喜か。

 いや、それは間違いなく「共犯者」としての歓呼であった。

 彼らもまた知っているのだ。

 この国が泥沼の中で交尾する蛇であることを。

 そして王が新たな雌を手に入れたということは、

 自らもまたその余り物にあずかれる可能性があるということを。

 

「しかし……言葉だけでは足りぬな」

 

 セテラリックは嗤った。

 その鋼色の瞳がギラリと輝く。

 

「其方は今までルモォークの王女として育ってきた。

 ならばその殻を完全に引き剥がし、

 新しい殻──私の雌としての殻を被るための儀式が必要だ」

 

 彼はメネアの体を強引に抱き上げると、

 自らの太腿の上に跨らせた。

 背面座位。

 臣下たちへメネアの豊満な肢体が晒される位置だ。

 

「いやっ……! いやぁっ……!! やめて……やめてくださいまし……!!」

 

 メネアは必死に抵抗した。

 手で胸を隠そうとし、太腿を閉じようとする。

 しかし、それは無駄であった。

 セテラリックの手は万力のように彼女の両脚を掴み、

 M字開脚という最も無防備で最も淫らな形へと強制的に固定したのだ。

 

「見せろ。其方の其処を。

 臣下たちに見せてやるのだ。其方がどうやって私を受け入れ、

 どうやって悦びの声を上げているかを」

 

 ずぷっ♡

 

 肉茎が再び秘所へとねじ込まれた。

 先ほどまで陵辱され続け、赤黒い蜜を滴らせていた其処は、

 もはや抵抗することすら忘れ、驚くほど素直に雄を受け入れたのである。

 

「あぐぅっ♡♡♡」

 

 メネアの背中が弓なりに反った。

 衆人環視の中での挿入。

 その背徳感と羞恥心が、彼女の快楽を異常なまでに増幅させる。

 

(見られてる……こんな姿……お父様と……してるところ……見られてる……♡)

 

「さあ、言うのだ。其方が誰の物であるかを」

 

 セテラックは耳元で囁きながら、腰を激しく打ち付け始めた。

 ずんっ! ずんっ! ずんっ! 

 質量攻撃。

 玉座の間という神聖なる場所で響く卑猥な水音。

 

「お゛お゛ぉ゛っ……♡♡♡ お゛と゛さ゛ま゛……♡♡ お゛と゛さ゛ま゛ぁ゛っ……♡♡♡」

 

 言葉が出た。

 拒絶ではない。

 歓喜だ。

 彼女は自らセテラリックの首に細腕を絡め付け、

 その豊満な乳房を振り乱して懇願した。

 

「わ゛た゛く゛し゛は゛……♡♡ お゛と゛さ゛ま゛の゛……♡♡

 め゛す゛で゛す゛ぅ゛っ……♡♡♡に゛く゛か゛べ゛で゛す゛ぅ゛っ……♡♡♡

 も゛っ゛と゛……♡♡ あ゛い゛し゛て゛ぇ゛っ……♡♡♡」

 

 臣下たちが息を呑む音が聞こえたような気がした。

 だがもはや彼女には関係がない。

 ただただ快楽の波に身を任せ、

 父という名の絶対的支配者に溺れていくだけだ。

 

「ふふ……よくぞ言った。ならばその言葉通りにしてやろう」

 

 セテラリックはメネアの唇を奪った。

 衆人環視の中での口づけ。

 それは契約の印であり、同時に王女としての尊厳への最後の弔いであった。

 

 ああ、なんという惨めさ。

 そしてなんという幸福か。

 

 水桃の王国は散り果てたが、その種は泥沼の中で見事に根付いたのだ。

 

 それは、完成を意味する。

 未完成なるものが、全ての過程を経て、

 最終的な形へと凝固する瞬間の数字だ。

 

 玉座の間は、もはや呼吸すら許さぬ濃密な空気に満ちていた。

 汗と愛液と、雄の体臭と、雌のフェロモンが混ざり合い、

 粘度を極めた瘴気は、石の壁にまで染み付いて離れないだろう。

 

「くっ……♡ あ゛っ……♡ お゛と゛さ゛ま゛……♡♡」

 

 メネア・ルモォークは喘いでいた。

 衆人環視の中、国王の太腿の上で激しく揺さぶられながら。

 彼女の瞳はもはや、何も映してはいなかった。

 羞恥心も恐怖も、遥か彼方へと追いやられ、

 ただ子宮の奥底から湧き上がる、どす黒く甘やかな快楽の波だけが、

 その小柄な肢体を支配していたのだ。

 

「見よ! これが新たなる愛人だ! 

 ルモォークの血を受け継ぎながら、その血に殉じることを選んだ、

 我が忠実なる雌だ!」

 

 セテラリック・シガの咆哮が響き渡る。

 彼は腰を止めなかった。

 むしろ、臣下たちの視線という名の燃料を投入し、

 その炎を極限まで煽り立てながら、

 メネアの肉壁を打ち砕くような勢いで腰を振り続ける。

 

 ずんっ! ずんっ! ずんっ! ずんっ! 

 卑猥な水音が玉座の間に反響し、それはやがて、

 この国の新たな国歌のようにすら聞こえてくる。

 

「お゛お゛ぉ゛っ……♡♡♡ す゛ご゛い゛……♡♡♡

 お゛と゛さ゛ま゛のが゛……♡♡ お゛っ゛き゛い゛……♡♡♡

 わ゛た゛く゛し゛の゛な゛か゛……♡♡

 ぱ゛ん゛ぱ゛ん゛に゛な゛る゛ぅ゛っ……♡♡♡」

 

 メネアは自ら太腿を大きく開き、

 父の侵入を歓迎するかのように腰をくねらせる。

 その豊満な乳房が、激しい律動に合わせて上下に激しく揺れさざめき、

 熟れ爛れた果実のような愛らしい振動を撒き散らす。

 

(ああ♡ いい♡ いいぃ♡♡ もっと♡ もっと深く♡♡)

 

 思考はもうない。

 ただ快楽の器として、父の愛を受け止めることだけが、

 彼女に残された唯一にして絶対の使命であった。

 

 臣下たちが息を呑む音が聞こえる。

 驚愕か。

 羨望か。

 あるいは、自身もまたその余禄にあずかりたいという劣情か。

 どれでもいい。

 この瞬間、この場にいる全員が共犯者なのだから。

 王女を肉壁へと堕としたこの背徳の儀式に、等しく手を汚しているのだから。

 

「くっ……! 出るぞ! 受け取れ! 父からの愛を!」

 

 セテラリックが低く唸り、最奥へとその楔を叩き込んだ。

 どぷっ♡ どぷぷっぷっぷっぷ♡♡♡

 

 熱い。

 熱い塊が、子宮という名の器に注ぎ込まれる感覚。

 それは物理的な熱量だけでなく、

「所有」という名の焼き印として、

 メネアの魂そのものを灼き尽くすほどの熱を孕んでいた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っっっ……♡♡♡♡♡♡」

 

 メネアは絶頂した。

 白濁した瞳がさらに上転し、口からは泡のような涎を垂らしながら、

 ただただ無様に、しかし至福の表情で啼き続ける。

 王女としての尊厳も、処女としての純潔も、

 ルモォーク再建という大義名分も。

 その全てが、この濃厚な白濁液と共に溶かされ、

 書き換えられていく。

 

「ふぅ……よい締め付けだ。やはり母に似て、

 子宮の奥まで吸い付くようになっている」

 

 セテラリックは満足げに息を吐きながら、

 まだ結合したまま、メネアの頬を優しく撫でた。

 その手つきは、これ以上ないほど慈愛に満ちていた。

 

「もう其方は一人ではない。哀れな生贄でもない。

 私だけの愛人だ。私だけの娘だ。

 其方がその身に宿したのはルモォークの血などではない。

 私の子種だ。これからはそれを誇りとするがよい」

 

「はぃぃ……♡♡ お゛と゛さ゛ま゛……♡♡

 あ゛い゛し゛て゛る゛ぅ゛っ……♡♡♡」

 

 メネアは夢見心地で呟き、

 父の胸にその身を預けた。

 桃色の髪は汗と体液で濡れそぼり、その美しさは残酷なまでに穢れている。

 だがそれこそが、セテラリック・シガという王が求めた唯一つの美であった。

 

 玉座の間には、静寂が戻った。

 しかし、それは平和な静寂ではない。

 泥沼の底で蛇が交尾を終え、満足げに獲物を抱くような、

 濃密で重苦しい、そして背徳的な安らぎに満ちた静寂だ。

 

 水桃の王国は散った。

 しかしその種は、泥沼の中で見事に根付いたのだ。

 哀れなる肉人形は新たな舞台にて、

 今度こそ永遠に愛される「雌」として、

 甘美なる腐敗の汁を滴らせながら生きていくのである。

 

 物語はここで終わる。

 だが彼女たちの「喜劇」は終わらない。

 大国たちの欲望という名の舞台装置が回り続ける限り、

 このねっとりとした前戯のような悲劇は、永遠に繰り返されるのだから。

 

 

更新希望の原作

  • 魔弾の王
  • 落第騎士
  • ハイスクールD×D
  • 月姫
  • モブせか
  • マジエク
  • のんびり農家
  • 新妹魔王
  • 八男
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