第5節 フラッシュバック
私は高幡不動に向かうまでの間、考えていた。
私ははっきり言えば男性恐怖症だった。それ自体は萩原さんと同じだった。ただ、萩原さんが男性恐怖症であるのと、事情は大きく違う。萩原さんは、生来、犬と男性が苦手だった。
だけど、私は違う。私は、あの男に身を捧げるようになってから、男というものが全てあのけだものに見えてしまうようになったのだ。時々恐ろしい夢を見る。あの男に襲われている夢だった。もうあの男はこの世にいない。春香がこの世から葬ってくれた。けど、未だにそんな夢を時々見る。そのたびに、私は恐ろしくなって春香に抱き着くのだ。私にとって、それが最も安心できるからだ。
正直、京極さんや猿渡さんも、私からするとあの男と同じようにしか見えない。もちろん、そんな言い方は失礼千万だ。それはわかっている。京極さん・猿渡さん、二人は柄は悪いかもしれないが、良い人であることには違いない。私を犯したようなあの男とは全然違う。けど・・・体が受け付けないのだ。
望月先輩だったら、どうだろう。私は彼に触れられている瞬間を想像してみた。
だめだ・・・。例え彼であったとしても、どうしても不気味なオーラを感じてしまう。
駅のアナウンスが、高幡不動の駅に着いたことを知らせた。私はすごすごと電車を降り、集合場所である飲み屋まで歩くことにした。
今回の会場は、以前新人歓迎会で使ったあのお店。以前行った場所であるということから、駅で待ち合わせはせず、現地に集合するということになっていた。
今日あずささんから言われたことを考えた。望月先輩は、私の思い出の加藤君ではない。あずささんのいい口は、私に彼への思いを断ち切らせるものであった。あずささんの主張と立場を考えれば、そういうアドバイスになるのは当然のことだ。
だけど、あずささんの言っていることは何一つ間違ってはいない。結局、私は思い出の中の加藤君の姿を望月先輩の中に求めようとしているのに過ぎない。
その意味では、私は先輩を冒涜しているのだ。
だから私は、あえて先輩に「嫌われよう」と思う。望月先輩に、思い出の中の「加藤君」の話をしてみようと思う。先輩が、その思い出の中の「加藤君」に似てて、気になっているって。そういえば、先輩は「こいつは初恋の人を自分にだぶらせているだけだ」って思って、きっと私に幻滅するだろう。自分自身ではなくて、思い出の中の加藤君を見ているにすぎないって伝えてしまうからだ。
でもそれでいい。何だか、それで私は満足できるような気がした。自分の中に区切りをつけられるような気がした。これで、望月先輩を諦められるような気がしたのだ。
彼に話すためには、彼と隣通しの席にならなくちゃいけない。そのための秘策があった。今はまだ午後6時20分、集合時刻の午後6時50分よりも30分も早い。さっき、部室で私は春香と先輩の会話を盗み聞ぎしていた。それによれば、春香と先輩は、今日の飲み会の準備をするため、少し早めに現地入りすることにしていたそうだ。
だから、私も早めに行って、二人で仲良く隣通しになっているところの隣の位置を確保する。そうすれば、私と春香で望月先輩を挟み撃ちにすることになる。
あとは、春香に事情を話して、協力してもらえれば問題ない。そのためには、事前に電話をしておくのがいいだろう。
私は飲み屋に到着する少し前に、携帯電話を取り出し、春香に電話をかけた。幸いなことに、春香は一発で電話に出てくれた。
「千早ちゃん、どうしたの?」
「春香。急なんだけど、ちょっとお願いがあるの?」
「なになに、大丈夫?ちょっと今、中にいるから外出ようか?」
どうも春香は既に飲み会の会場についているらしい。
「うん。ちょっとお願いできるかな。」
私は、春香が店の外に出るまで待った。
「出たよ、千早ちゃん。」
「ありがとう。それで、お願いっていうのは、私に望月先輩の隣を座らしてほしいの。」
「えっ、それどういうこと?」
声のトーンが下がった。明らかに警戒しているようだ。
「先輩に、あのことを話そうと思うの。加藤君に似ているってこと。」
「話して、どうするつもり?」
春香は依然として警戒を解かない。
「ただそれだけ。別に彼をどうこうしようというつもりはないの。自分の中で区切りをつけたいの。こんな事彼に話したら幻滅されるだろうから、それで終わり。」
「ふーん」
会話が途切れた。春香は少し考えているようだ。
「まあ、そういうことなら、協力できると思う。いいよ。私が隣座っちゃうけど、もう片方に座っちゃいなよ。ただ、早く店に来ないと取られちゃうと思うよ。」
「それについては、心配ないわ。春香、後ろを見て。」
「後ろ?」
春香が振り返った。私はそんな春香に手を振った。もう私は、春香が話していた目と鼻の先まで到着していたのだ。
「なーんだ。もう着いていたんじゃない。」
「ごめんね、どうしても先輩に感付かれないようにして相談したかったから。」
私は携帯電話の通話を切って、小走りで春香のもとに向かった。
「千早ちゃん、今なら私たち3人しかいないから、どこでも席は選び放題だよ。早くいこ。」
春香は私の腕をつかんで、店の中へと連れて行った。
「あれ、如月さん?一緒に来てたの?」
いきなり春香が私を連れてきたものだから、びっくりしている。
「ううん、そうじゃなくて、電話してたら、たまたま千早ちゃんが到着したんですよ。」
「そうなのか!奇遇だったんだね。さ、中に入って座ってよ。」
私は先輩の手招きに応じて、中へと入った。宴会場は、縦長のスペースで対面式になっている。先輩は、真ん中あたりに座っていた。春香は先輩の左隣を、私は先輩の右隣に座った。
「じゃあ、私トイレに行ってくるから。」
春香はカバンを自分の座席に置いて、トイレに向かってしまった。多分、この隙に話せってことなんだろう。
「如月さん、君と直接しゃべるのって、もしかして結構久しぶりなのかな?」
そうだ。私と望月先輩は、ほとんど一緒にしゃべったことがない。周りのライバルが多すぎて、とてもじゃないけど、先輩の半径1メートルに近づけなかったからだ。
「そうですね・・・。あんまり、お話しする機会ってないですから。」
「そうだね・・・。如月さんって、春香ちゃんと一緒に住んでいるんだってね。春香ちゃんから聞いたよ。うらやましいよ。春香ちゃんみたいに元気な子がいると。家も明るいでしょ。」
「いやいや、ただ単にうるさいだけです。」
先輩と私は笑っていた。
「それに、春香ちゃんは君のことを随分信頼しているみたいだね。やっぱり、高校時代から友達だからなのかな?」
「どうなんでしょう・・・。まあ、でも私と春香の間にいろいろあったのも事実ですから。お互い仲も深まったのではないかと。」
こんな曖昧な言い方しかできなかった。望月先輩は、もしかしたら、私と春香の間が特別な関係にあることを見抜いているのかもしれない。
「そこが羨ましいんだよ。いわゆる『親友』って堂々と呼べる間柄がね。僕にはそういう子はいないからね・・・。」
そうなのかしら?普段一緒につるんでいるあの二人は違うのかしら。
「京極さんとか猿渡さんとは、『親友』ではないんですか?」
望月先輩は、苦笑しながら答えた。
「前にも言ったと思うけど、あの二人とは『腐れ縁』なんだよ。友達ではあっても、『親友』じゃない。君たちの関係とは似ても似つかない。」
腐れ縁ね・・・。
「春香ちゃんって料理が得意なんだってね、なんでも、昔から働きづめのお母さんの代わりに作ってあげていたとか。今度お弁当を持ってくるって言ってたよ。すごいよなー。うちなんて、いつもお手伝いさんが料理作ってくれて、厨房には立たしてくれないから、全然料理ができないんだよ・・・。」
「作らせてもくれないんですか?」
ただ単純にその必要がないから作ってないのだと思っていたけど、厨房にも立たせてもらえないのか。
「そうなんだよね。『危ないから坊ちゃん下がっていて下さい!』なんて言われちゃって・・・。」
「へえー。私なんか逆でしたよ。『料理はお前が作れ!』って言われてましたから。」
「なんだか、それは酷いね。お母さんは作ってくれなかったの?」
あ、やばい。この話の流れだと、私と家族の関係が正常でなかったと疑われてしまう。何とかごまかさないと。
「あっ、いやー、その、両親とも外で働いていて、時間があるのが私だけだったんですよ。だから、私がお夕食を作る係だったってだけです。それに、私、料理作るのは嫌いじゃなかったですから。」
望月先輩の顔が明るくなった。
「へえーそうなんだ!じゃあ、如月さんも料理は得意なの?」
「ええ、まあ、得意といえば得意かもしれないですね。」
「そっかー。ぜひ、如月さんのお弁当も食べてみたいな。」
これはラブコールなのかしら。どちらにしろ、話が「お弁当」につながった。あの話を持ち出すチャンスだ。
「もし機会があれば是非。もともと、私が料理を作るようになったのは、初恋の人が料理好きで、その彼に合わせて料理をするようになったからなんです。彼にお弁当を作ってあげたこともあります。」
「初恋の男の子にお弁当か・・・。素敵な思い出だね。中学生のときかな?」
「いえ、小学校6年生のときです。」
「すごいね、その時からずっと料理作ってきたんだ。」
「ええ、まあ・・・。」
なんだか褒められると照れ臭い。
「それで、望月先輩。話があるんです。」
私は改まって、彼の顔を見つめた。
「何かな?」
彼は私を警戒するそぶりを見せず、優しい顔で私を見守っている。
「実は、望月先輩、その・・・えっと・・・先輩が・・・私の初恋の人に・・・」
その時ガラガラと宴会場の扉が開いた。
「待たせたな!」
予想外の人物が入ってきた。噂の京極さんと猿渡さんだ。
「早かったね。もう来たんだ。」と望月先輩。
「いやー、やることなくてさ。早めに来ちゃったんだよ。ほかの奴らももうすぐ来ると思うぜ。ていうか、このツーショットは珍しいな。お前、浮気したのか?」
猿渡さんが、望月先輩を冷やかした。その冷やかしの言葉に少しドキッとしながらも、やっぱり軽薄な彼への嫌悪感が先立っている。
「千早ちゃん、そんなに怖い顔しないでくれよ。」
猿渡さんが少したじろいだ。正直、なれなれしく「千早ちゃん」なんて呼ばないでほしい。
「他に誰か来てるのか、そこにバッグおいてあるけど。」と京極さんが尋ねた。
「ああ、春香ちゃんが来ているんだよ。」
「なるほどな、あの子もしっかりしてるな。ちゃんと定位置を押えてやがる。」
この二人は、望月先輩と私の正面に座った。
間もなくして、他のメンバーも会場に入ってきた。春香もトイレから帰ってきて、先輩の隣に座った。荷物を置いていた成果もあってか、彼女の座席はとられなかったのだ。
私の隣には、美希が座った。美希は相変わらず眠そうだった。
午後7時になり、飲み会が始まった。音無部長の方針により、20歳未満の人はウーロン茶が与えられた。
「ドイツ語って難しいですよね。名刺の種類が3種類もあって、それぞれで定冠詞が違うなんて。」
春香が第二外国語の話題を振った。
私たちの島での話題は、大学での勉強の話だ。私たちの大学では、1回生と2回生は、英語と第二外国語が必修科目になっていて、その負担が結構大きいものだった。
「ただ、ほかの言語に比べたら簡単らしいよ。僕は中国語を習っているんだけど、中国語は書くのは比較的簡単なんだけど、読みが難しくてね、結構苦戦しているよ。」と答えるのは望月先輩。
「先輩は、どうして中国語を選んだんですか。これからのことを考えてですか?」
「まあ、そういうことになるかな。うちのグループでも中国との取引は年々増えているしね。これからは、英語だけじゃやっていけないからね。」
「やっぱり、明確なビジョンを持っているんですね!」
春香は先輩をほめちぎった。
「いやいや、そんなことないよ。中国語だって大学に入ってから始めたばっかりだし。行き当たりばったりだよ。」
「嘘つけ、お前半年間アメリカ留学に行って英語ペラペラじゃねーかよ。」
京極さんが望月先輩にかみついた。
「えっ、そうなんですか!知らなかった。すごいですね、何か英語でしゃべってみてくださいよ。」
春香が先輩に英語を使うよう求めた。確かに、先輩がアメリカ留学していたなんて初めて知った。
「高校時代に半年間だけね、アメリカにホームステイしていたんだよ。とはいっても、うちのグループの現地法人の関連企業に勤めている人の家だったから、VIP待遇だったんだけどね。」
望月先輩が英語で話し始めた。恐らく、内容としては自己紹介のあいさつをしているのだろう。
「やっぱり先輩ってすごいや!私も先輩みたいにペラペラになりたい!」
春香が感激のまなざしを向けた。
「うちのグループで英会話教室をやっているから、ぜひ受講しに来てよ。値段の方は多少融通するよ。」
「ありがとうございます!検討してみます。ねっ。千早ちゃん。」
「えっ、ええ。まあ、そうね。」
いきなり話を吹っ掛けられてびっくりした。
「ジャーナリストを目指す上でも、英語は必要だもんね。」
春香、また余計なことを・・・。
「へえー、千早ちゃん、ジャーナリストなんてめざしてんの!?」
猿渡さんがまた噛みついてきた。
「ええ・・・まあ。」
「いい目標だね。どうして、ジャーナリストになろうと思ったの?」
望月先輩が私の話に興味を持って聞いてきた。
「ええっと・・・その・・・」
どうしよう、どう答えたらいいんだろう。
「かっこいいからだよね!?そうだよね、千早ちゃん!?」
さすがに、これはまずいと春香も気づいたようで、言い淀む私に助け舟を出してきた。もとは春香の不用意な発言がいけないのだが。
「ええ・・・その通りよ!」
「確かに、日本や世界を飛び回って取材をする姿はかっこいいよね。」
望月先輩は、とっさに春香が考えた理由を信じてくれたようだ。
「まあ、確かにかっこいいといえば、かっこいいけど、俺には向いてないな。勉強苦手だし。」
猿渡さんが、聞かれてもいないのに勝手な感想を述べてきた。
「別に猿渡先輩には聞いてないですよ。」
さすがに春香が突っ込みを入れた。
私の将来の夢、それはジャーナリストになることだ。何故私がジャーナリストになりたいのか、それは別に「かっこいい」からではない。私は、自分でいうのもなんだが、ひどい家の下で生まれ育った。そうしてしまった理由の大半は私にある。私が千尋を見殺しにし、父を絶望させたからだ。その結果、私は贖罪のために父親に体を捧げ続けることになった。
私は感じていた。たとえ、私のような環境が特殊な環境であったとしても、親に虐待され、性的に搾取され、辛いけど辛いと叫ぶこともできずに苦しんでいる人がきっとたくさんいるはずなのだ。私は、そうした子供たちの声を届けていきたい。親友に父親を殺させることでしか自分を解放できなかった私だから、そういう環境に遭っている子のSOSを届けたいのだ。
気づけば、周りは別の話に興じていた。
「憲法の長浜先生の授業眠いよねー。」と春香。
「あの先生の声は子守歌だから、しょうがない」と京極さん。
「試験自体はメジャーどころからしか出ないから、過去問をあげるよ。要点さえ押さえれば、そんなに難しくはないはずだよ。」と望月先輩。
「先輩、優しい!」
「あっ、俺にも教えろよな。俺再履なんだから。」
「分ってるって、克也。」
ふと、隣で黙々と食べていた美希が私に話しかけてきた。
「で、千早さん。どうして千早さんは、ジャーナリストを目指しているの?かっこいいからっていうのは、違うんでしょ?」
この子、やっぱり鋭い。私も慎重に答えなくては。
「どうして、そう思うの?」
美希は口に入っていた唐揚げをお茶で流し込むと、こんな風に述べた。
「だって、千早さんみたいに感情で行動しない人が、かっこいいからって理由で将来の道を選ぶのは変だから。」
確かに、私はあまり感情で行動したりしない。でも、それだけだと根拠は薄いんじゃないかしら。
「確かに、私は普段感情では行動しない方だけど、将来の夢なら別なんじゃない。私は、本当にジャーナリストはかっこいいって思ったから、なりたいと思ったのよ。」
「ふーん、じゃあそういうことにしておこうか。」
今度はこちらから逆襲してみる。
「美希は将来何になりたいの?」
「んー、そうね。なるべくなら楽な仕事に就きたいかなー。成り立つならニートでもいいかも。」
ニートって・・・。話にならない。
「それじゃ生活が成り立たないでしょ。」
「じゃあ、お嫁さんかな。専業主婦なら楽そうだし。」
「今の時代、そう易々と専業主婦はさせてくれないわよ。それに、子供育てるってなったら、専業主婦でも結構大変なのよ。」
「お手伝いさんとかがいる家庭なら、楽なんじゃない。」
そう言って、美希は望月先輩の方を見やった。まさか、美希も彼を狙っているっていうの!?
「美希・・・まさかあなた・・・。」
「冗談なの。ミキは人のモノに手を出すほど欲張りじゃないの。何だか怖そうだしね。」
そう言って美希はくすくすと笑った。さっきは話したけど、そういえば、美希とはあまりしゃべったことがなかった。この際だから、お話してみようか。
「美希って、おにぎりが好きなんだよね?たまに、サークル室でおにぎりを食べているのを見るけど。」
私と春香は、お昼はお弁当を持ち寄ってサークル室で食べることが多い。その中で、美希がおにぎりを食べる光景をたびたび見ていた。
「そうなの。ミキね、おにぎりが好きなの。特にコンビニのは好き。ノリがぱりぱりしていておいしいの。中の具で好きなのは、シーチキンとシェケかな、でもそれ以外でもおにぎりなら好きだよ。千早さんは?」
「私は、普通かな。コンビニのおにぎりはそんなに食べないわ。自炊した方が安いし。」
「春香と一緒に住んでるんだよね?」
「ええ、そうよ。」
「ふーん。」
ふーん?それだけ?
「美希は実家に住んでいるんだよね?」
「そうなの。実家の方が、気楽でいいからね。パパとママとお姉ちゃんと私の4人で住んでるの。」
「へえー、お姉さんがいるんだ。」
「そうだよ。菜緒っていうんだ。とっても、しっかり者なの。」
ふーん、何だか想像できないな。美希はとても子供っぽいのに。
「千早さんには、兄妹いる?」
兄妹か・・・。こういう時、私は「一人っ子」だって言っている。下手に「かつて妹がいた」なんて言うと、余計な詮索をされるからだ。だから、「一人っ子」って言った方が、後が色々と楽なのだ。
「私は一人っ子よ。兄妹はいない。」
「そっか。」
それだけ述べると、美希は再び唐揚げに手を伸ばした。私もそれに合わせて、唐揚げに手を伸ばした。そしてそれを食べ終わると、不意に美希がこんなことを聞いてきたのだ。
「千早さんってレズ?」
はい??
「いきなり何なの、美希。」
「千早さんって、雪歩に似ているような気がするの。」
萩原さんに似ている?
「雪歩ってね、真君のことが好きなんだよ。真君も雪歩のことが好きみたい、ふたりは、つまりそういう関係ってわけ。千早さんも、春香の事好きなんでしょ?一緒に住んでいるくらいなんだから。」
「まあ、確かに春香のことは好きだけど・・・そういうアレってわけでも・・・」
「それから、男の人嫌いでしょ?」
見抜かれてる。
「どうしてそう思うの?」
「だって、克也とか隼人に対する態度が、雪歩のそれと同じなんだもん。男の人が嫌いだって一発で分かっちゃうよ。」
私は何て返したらいいのだろうか。今更嘘を言っても、どうしようもない。いいんじゃないだろうか、「男が嫌いだ」って言っても。別に萩原さんだって、男の人が嫌いなんだから。
「・・・そうよ。私は男の人が好きじゃない。美希の言う通り。」
「ふーん。」
美希はポテトに手を付けた。美希の咀嚼が終わり、一息ついた。
「だとしたら、どうして俊のことは『嫌い』じゃないの?」
ドキッとした。確かにそうなのだ。私は男の人が嫌いだ。だとしたら、私は彼の事も嫌っていなくてはいけない。美希には初恋の人に似ているっていう話をしていなかった。
「美希、この話はもうやめにしない?お願いだから。」
「わかったの。じゃあ、歌の話でもしようか。」
私と美希は別の話題に興じた。
その間、私は美希について考えていた。私が思うに、この子に「悪意」はない。ただ純粋に勘がいいのだ。そして、疑問に思ったことを次々に口にしてしまう。この子は恐ろしい子だ。だけど、それと同時に彼女に興味が湧いてきた。彼女は、このサークルの中に潜む「カオス」についてどう考えているんだろう。そのことについて、いつか聞いてみたい。
「ちょっと、席外すわ。」
尿意を催した私は、美希との会話を中座して、トイレへと向かった。
美希の言っていることは、きっと私の本質をついているのだと思う。私は、多分レズだ。だけど、誰でも好きになるというわけではない。私が好きなのは、春香。彼女一人だ。私は今まで春香のことを、親友として、家族として好きだと思ってきた。だけど、最近どうもそれとは違うんじゃないか、そういう気持ちに囚われてきた。
もしかしたら私は、春香が誰か別の人に取られるのを恐れているのかもしれない。私が先輩に対して抱いているもやもやした感情の一つは、もしかしたら、そこにあるのかしれない。
私は用を足して、トイレから出てきた。すると、トイレへと向かっていく望月先輩と鉢合わせになった。
私は彼の横を無言で通り抜けようとした。
その時だ!
「わっ」
私はお店の縁石に足を引っかけて、転びそうになってしまった。
「危ない!」
望月先輩は、倒れ掛かってくる私を抱きしめるようにして支えた。
その時私は、男性の胸板を感じた。恐ろしいことが起きた。あの感覚がよみがえってきてしまったのだ。あの男が、憎むような眼で裸の私を抱きしめてきたあの時の感覚が。
私の体は硬直した。頭の中が真っ白になる。肌全体が、あの感覚でおおわれる。恐ろしい、怖い。
「大丈夫?如月さん?」
私は何も考えられなくなった。私は、幻覚を見た。彼の眼の中にあの男の表情を見てしまった。
「やめて!私に触らないで!」
気づいたら、思いっきり大声を上げて、彼を突き飛ばしていた。幸いにも、彼はバランスを保っていたが、店中が「何事か!」とこちらを振り返っている。
「千早ちゃん!?千早ちゃん、どうしたの!?」
私の悲鳴を聞いて、春香が真っ先に飛び出してきた。
私は、そこでようやく我に返った。目の前には、茫然とした様子の望月先輩と、慌てた様子の春香の姿があった。
「あ・・わ・・わた・・・」
言葉がのどから出てこない。もうダメだって思った。全部終わってしまった。
「ごめんなさい!」
私はそう言って、店の外へ駆け出してしまった。
「千早ちゃん!」
私は必死で走った。走ってどこへ?分からない。駅の方向とも違う、どこか別の方向へと向かっていた。
「千早ちゃん!待って!」
後ろから春香が追いかけてきた。気づけば、そこは住宅街のど真ん中だった。私は、その声を聴いて、少しだけ安心した気持ちになって、走る速度を緩めた。私は、春香の優しさに甘えたくなってしまったのだ。自分がどうしようもない、ダメな人間であると認めてほしかったのだ。
私はどんどん速度を緩めて、そしてやがて春香が私を捕まえた。
「どうしたの?いったい何があったの?」
「・・・・・春香・・・私・・・とんでもないことを・・・」
春香は私をくるりと正面に向けて、優しく抱きしめてくれた。
「怖かったね・・・もう大丈夫だよ。私に全部話してごらん・・・。」
春香はやさしく、ゆっくりと頭を撫でてくれた。あの時とは違う、優しい感覚。胸の感覚、柔らかい肉の質感、包み込むような甘い香り。私は、まるでお母さんに抱き締められているような安心感を抱いた。
「春香・・・私・・・」
胸が締め付けられる。涙がポロポロと・・・。
「千早ちゃん・・・。おうちに帰ろう・・・。今は何も話さなくていいから・・・。ここで待っててね。カバンを取ってくるから。」
そう言って、春香は再び店の方に向かって走っていった。私はその場に座り込んでしまった。
男の人に抱き締められるなんて、私が最後に犯されて以来初めてのことだった。胸が苦しい・・・。信じられなかった・・・。望月先輩に、あの男の影を見てしまうなんて・・・。あの憎むべき男とは、まるで正反対の人間であるというのに。男の人の感覚を感じてしまっただけで・・・あんなことになってしまうなんて・・・。
もう私はダメだ。もうこのサークルにはいられない。やめてしまおう、こんなサークル。ちょうどよかったのだ。・・・それで・・・いいじゃないか。なのに・・・どうして涙が止まらないの・・・。
「千早ちゃん、帰ろう。」
どれくらい時間が経ったのか、道端で座り込んでいる私に、春香が優しく手を差し伸べてくれた。
私はその手を取って、ゆっくり立ち上がると、私たちは手をつなぎながら、ゆっくりと駅に向かって歩き出した。
駅に向かっている間、春香が色々と話しかけてくれた。
「サークルの皆には、『とりあえず、何でもないから』って言っておいた。」
「望月先輩にも、私から謝っておいたし、誰も変な誤解をしてないから大丈夫だよ。」
「望月先輩も怒ってなかったよ。彼は優しいからね。」
「ケーキ買って帰ろうよ。イチゴショートのおいしいやつ。最近、節約節約で贅沢してなかったし、ちょうどいいんじゃない?」
「冷蔵庫に私が買ってあったプリンがあるんだけど、千早ちゃんにあげるね。」
「今日は一緒にお風呂入ろうか。最近恥ずかしがって、してなかったけど、たまにはいいんじゃない?」
でも、私はそのたびに生返事をするだけだった。
「ただいまー」
誰もいない部屋に向かって、春香が放った。
コンビニで買ってきたケーキを冷蔵庫にしまうと、私と春香は、座椅子に座った。私に関しては、春香が座椅子に座らせた。
「今、お茶を淹れるから待っててね。」
春香はキッチンへと向かい、そこでお茶を淹れてくれた。私の好きなダージリンだ。
「はい、どうぞ。」
「・・・ありがとう。」
私はダージリンを一口運んだ。心なしか、体が温まるような感じがする。
「お風呂沸かしてくるね。」
春香はお風呂のスイッチを入れて、また戻ってきた。私たちはしばらく無言で過ごしていた。無言だからって、居心地が悪いわけではない。私はむしろ、こんな静寂に安心感を覚えていた。家族のような時間、心が安らいでいく。
「千早ちゃん、落ち着いた?」
私はコクリとうなずいた。
「そう・・・よかった。」
そう言ってまた無言になってしまった。多分、私から話そうとしない限り、春香は何があったか聞いてこないだろう。あるいは、もう何が起こってしまったのか、分かってしまっているのかもしれない。分かっているから、あえて聞かないのかもしれない。
しばらくして、お風呂が沸いたという音楽が鳴った。
「さ、お風呂入ろうか、お風呂。」
春香が私の手を取った。私は春香に連れられながら、一緒にお風呂に入った。久しぶりに一緒に入ったお風呂は、どこか特別な感じがした。
「ケーキ食べようか、ケーキ。」
お風呂からあがって、洋服を着た私に、春香が提案した。確かに、飲み会の途中で出てきてしまったから、少しお腹が減っていたのだ。
「じゃあ、準備するから座って待っててね。」
そういうと、春香はお皿とフォークを用意し、それぞれにケーキを設えてくれた。
「はいどうぞ。」
春香は私の目の前にケーキを置いた。
「ありがとう。」
「じゃあ、食べよっか。いただきまーす。」
春香はフォークで、ケーキの先端部分を救い上げ、一口。
「おいしい!」
お腹が減っているとはいえ、なんとなく口に運ぶ気分ではなかった。私は春香が食べるところを見ているだけだった。
そんな私に業を煮やしたか、春香が私にケーキを食べさせようとしてきた。
「はい、あーんして。あーん」
「いいわよ、恥ずかしいし。」
「誰も見ている人なんていないんだから、いいじゃない。はい、あーん。」
私は春香の笑顔に流されれるまま、小さく口を開けた。ケーキが口の中に入ってくる。確かに甘くておいしい。
「おいしいでしょ?」
春香が嬉しそうに尋ねてくる。
私は首を縦に振った。
「はい、もう一口、あーん。」
私は、まるで赤ん坊のように、春香に食べさせてもらった。でも、途中でやっぱり恥ずかしくなって、自分でケーキを口に運んだ。
ケーキを食べ終わった後に、春香がまたお茶を淹れてくれた。私にはダージリン、春香はアップルティー。
特にテレビをつけるわけでもなく、無言でお茶を飲んでいる。少し気まずい。けど、このままにしておくわけにはいかない。私は、勇気を絞って、さっきあったことを話し始めた。
「春香。」
「うん。」
「あの居酒屋のトイレでね・・・。」
「うん。」
「私・・・転びそうになったの。でこぼこした石に躓いてね。」
「うん。」
「そのとき、私は望月先輩と鉢合わせになっててね、先輩が・・・倒れ掛かった私を抱きしめて支えてくれたの。」
「・・・うん。」
「男の人の体・・・あの時以来だった。だからすごく・・・怖かった。私、男の人に抱きしめられることが・・・あんなに怖いなんて・・・正直思わなかった。」
「・・・うん。」
話せば話すほど胸が苦しくなる。次第に涙がこぼれてきた。
「先輩は、すごく優しい。あんな男とは全然違う。けど・・・抱きしめられた瞬間、あの男のことがフラッシュバックしてきて・・・。」
春香が私のそばに寄ってきて、抱きしめてきた。
「うん・・・。」
「気づいたら、大声をあげて、突き飛ばしてた・・・。私なんてひどいことを・・・。先輩に謝りもしないで、そのまま逃げてしまうなんて・・・。」
「・・・千早ちゃんは悪くない。悪いのは、あの男なんだよ・・・。」
「私乗り越えたって思ってた・・・。あの男が死んで、秋月家で仲良く暮らして・・・失くしていたものを取り戻して・・・一から全部やり直せるって思ってた・・・けど、実際はそうじゃなかった。」
春香は黙って私の言葉に耳を傾ける。
「男の人はぁ・・・ダメぇだったぁ。男のぉ人は・・・みんなぁあの人に見えてぇしまうぅ。見ようぅとしなくてぇも、あの男の影がぁちらついて・・・憎んでしまうぅ・・・。」
ダメだ、涙が止まらない。自分の欲求があふれ出てくる。私・・・、春香の肌がほしい。春香の温もりが・・・春香の柔肌が・・・、男の人でない、柔らかい肌が欲しい・・・。春香の肌が・・・欲しい・・・欲しい、欲しい・・・欲しい!
「ねえ・・・春香。」
「うん。」
「こんなこと言って・・・嫌いにならないで欲しいんだけど・・・。」
「何?千早ちゃん?」
やはりどぎまぎしてしまう。春香はもしかしたら、もう分かっているのかもしれない。私が求めているものが。
「なーに?ちゃんと言わないと、分からないよ。」
春香が耳元で囁く。とてもエクスタシーな感じだ。春香の声はいつも可愛く聞こえているのに、この時ばかりはこそばゆい。とても色っぽい。
「あの・・・えっと・・・春香の・・・。」
「うん?」
ごちそうにありつくためには、全ての恥じらいを捨てるしかないみたいだ。私は意を決して、目をつぶって春香から顔を背けて口に出した。
「・・・春香の肌を抱かせて・・・春香を独り占めにさせて・・・。」
少しだけ間があった。もしかして拒否されてしまったのではないか、そんな恐怖感に苛まれて、春香の方を咄嗟に向いた。だけど春香は妖艶な笑顔を浮かべている。
「・・・いいよ。おいで・・・。」
春香は艶めかしく答えた。私は、抱きしめられていた春香から離れて、春香の唇に、自分の唇を近づけた。春香の顔が迫り、目を瞑る。
やがて、お互いの唇が触れ合った。
初めて味わう春香の唇の感触、それはマシュマロのように柔らかくて、それでいて生きている人肌を感じる温度であった。興奮した鼻息を感じる。春香も少しだけ息が上がっているみたいだった。
春香が唇を離してきた。それに気づいて私は目をゆっくりと開いた。そこには、トロンとした目で私を見つめている春香の姿があった。
ついにしてしまったんだ。春香とキスをしてしまった。その衝撃にいまだ興奮さめやらない中で、春香が性的に挑発してくる。
「千早ちゃん・・・すごくきれい。」
「春香だって・・・すごくセクシーよ。」
私は一歩春香の方に近づくと、そのまま春香の服のボタンに手をかけた。そして、それに合わせるように春香は私の服のボタンに。
「・・・続きは布団でしよう。」
春香が私をそう誘ってくる。
「うん。」と、私は短く答えた。
ブラジャー姿の私たちは、急いで布団の用意をした。早く春香の体に飛びつきたくて仕方が無かったのだ。早く彼女の柔肌に触れたい、早く彼女の肌に吸い付きたい。そんなみだらな欲望が脳髄を満たしていくのを感じている。
光の速さで布団を敷き終えると、その中で少し恥じらいながら、春香が自分の布団の中に入り、私が襲い掛かるのを待っている。敢えて、布団でブラジャー姿を隠そうとしているのが、却って興奮をそそる。私は自らを炊きつけるかのように、春香の布団をめくっていた。
「いやーん、千早ちゃん、エッチ。」
彼女はふざけて、おどけている。
「そうよ。今の私はエッチなの。」
そう言って私は彼女に覆いかぶさると、再びお互いの唇を重ね合わせた。今度はむさぼるようにやや強引に。
「んんっ・・むんっ・・んんっ。」
唇同士を重ね合わせているだけなのだが、お互いの聴覚を刺激するために、敢えて音を出してチュッチュと鳴らしている。舌をなめずり合いたい。私の舌を春香の口腔内に侵入させたい。
私は少しずつ舌ベロを伸ばし、春香の口の中に侵入を試みる。春香は少し驚いたようで、口を閉じようとして抵抗するが、すぐに笑顔を見せたように口角が持ち上がり、私の舌ベロの侵入を許した。やがて少しザラザラとした春香の舌ベロに接触する。
口を交差させているせいで、重力に従って私の唾液が春香の口元に滴り落ちてくる。そして口腔内で循環させるかのように、春香の舌ベロは、私の唾液と春香の唾液が絡まったものを私の舌ベロに塗り合わせて、お互いの唾液を絡めている。
「んんっ・・んんんっ・・・ぶはっ。」
やがて、私の方が息切れしてしまい、顔を上げてしまった。舌ベロをゆっくりと離した時に、透明な唾液の橋が架かっている。
「さっき食べたケーキの味がする。」
私は思わず笑ってしまった。春香がそんなことを言う。雰囲気も何もぶち壊しな感じがするが、それはそれで事実だった。
「そんなことを言ったら、元も子もないわ。」
「そうじゃないの。千早ちゃん、甘くって・・・すごく・・・おいしいよ。千早ちゃん。」
「これが焼肉じゃなくて良かったわね。」
「ふふっ・・でも、それはそれでおいしかったかも。」
そんな冗談を交わしていると、春香が積極的になって、自分の胸を指さしてきたのだ。
「ねぇ?脱がせないの?」
「今、取るわ。」
私は興奮で逸る手で春香のブラジャーを外し、私もブラジャーのホックを外した。春香の豊かな胸があらわになる。春香の胸はお風呂の中で何度も見ているはずなのに、その度に大きくなっているような気がする。それに比べて私は、いつになっても慎ましいままだ。
「また大きくなっているのね。春香の胸。」
「そんなことないよ。太ったっだけだよ。」
「嘘おっしゃい。」
「あんっ。」
私は両手で春香の胸を鷲掴みしてみた。いや、確かに春香の胸はサイズアップしているはずだ。
目視でも明らかだが、触感でさらに確信を深めた。明らかに、胸は成長している。
「何よ春香。春香は、脂肪が全部胸に行っているんじゃない。」
私は春香の左胸に顔をうずめて、唇で乳首を吸い上げてみる。
「ああううんっ・・・千早ちゃん、強引、ちょっと強引すぎだよ。」
別にSっ気に目覚めた訳ではないのだが、少しだけ春香が羨ましくなって、虐めたくなってしまうような気になる。
私は春香の左胸の乳首を舌ベロでチロチロと刺激してみる。
「ひゃあああっぅああなん・・ああぁぁううぅうん。気持ちいい・・・。」
春香が体をのけぞらせる。それくらい気持ちいいのだろう。春香の遠慮のない喘ぎ声を聞いていると、こちらも気分が高揚してくる。
次に右胸も同じように責めてみる。だけど、今度は余った右手を使って春香の左胸ももみしだくのだ。
春香の柔らかな胸の感触が手のひらに伝わってきて、実に色味を帯びている。
右胸への愛撫は丁寧に行う。乳輪を丁寧に舌ベロでなぞり、突起してきた乳首を甘噛みする。そして今度はチュパチュパと赤ちゃんになったかのようにいやらしい音を立てながら吸い付いている。そしてその反面、左胸には、手で鶏肉をもむようにもみほぐし、更に乳首を親指と人差し指の腹でこすり合わせる。
「ああぁぁぁああうっぅん・・・ちはやぁあちゃんの舌遣いぃい、もう最高ぃう!!」
じゅるじゅるじゅるるる、いやらしい水音が耳元を刺激する。春香の喘ぎ声からも、今までに感じたことのない快感で、頭がおかしくなっている様子が分かる。
「ち・・ちはやちゃ・・ん・・変な感じに・・・なってきたよ・・・。」
「変なってどんな感じ?」
「どんなって・・・お股のところが・・・あつい・・・。」
「さて、どんなかんじになっているのかしら。」
私は、春香の秘部を下着の上から触った。もう下着からおつゆが漏れ出している。
「いやらしい。もう愛液でべちょべちょじゃない。」
「そぉんあなあぁおいやらぁらいしいこといわなぁいいでええl。」
「ねぇ、下もシテほしい?」
「えっ?」
「春香のデロデロのアソコも舐めてほしい?」
春香は顔を紅潮させている。
「そんな・・・恥ずかしいこと・・・言えないよ・・・。」
ダメだ。普段出てこないSな私が、顔を出して収まらない。
「ちゃんと言わないと、シテあげないんだから。」
そういって、私はむくりと起き上がってしまう。
「ああぁ・・・。」
「シテほしかったら、ちゃんと言いなさい。春香。」
春香は顔を歪ませてどぎまぎさせているが、ついに覚悟を決めたのか、両手で顔を覆いながら、小声でつぶやくのだ。
「私の・・・おまんこを・・・舐めてください。」
私はにっこりと笑って、春香の頭を撫でて、耳元で囁いた。
「よく言えたわね、春香。お望みどおりにしてあげる。」
私の声に興奮したのか、春香は体をくねらせている。私は春香の足元へと移り、ゆっくりと下着を脱がせた。下着を剝いだ瞬間に、愛液が秘部から滴り落ちて、下着にべっちょりと絡みついている。
「いやらしいわ。春香のおまんこ。」
私は春香の股を広げて両手で固定すると、彼女の恥丘に顔を近づけてみる。熱気でムンムンのアソコからは、独特の香りが漂ってくる。
私は更に顔を近づけ、クリトリスを軽く舌でペロリと撫でた。
「ひゃんあぁぁあいううああぁl」
春香が体を硬直させ、声にならない声を上げている。
「そんなに気持ちいの?いやらしいのね、春香って。」
「そうじゃなくって・・・初めてだから・・・なんかすごくて・・・。あぁあぁぁうああんっ!」
私は春香のクリトリスをゆっくり舐めまわした。
「千早ちゃん!私・・処女だから・・・指は入れないで欲しいの・・・。」
「分かってるわ。春香の処女は、大切な人にあげなさい。」
その代わり、襞になっている部分は好きにさせてもらうわ。
私は小陰唇から膣前庭となっている部分を丁寧に舌で舐めとっていく。
「ああぁぁっぁlっぁあぁあぁぁっぁあぁぁあつつんんんっっつん。」
「気持ちいいのね。私で感じてくれるんだよね、春香。」
返事の代わりに春香は嬌声で答える。そして彼女の膣からは愛液がとめどなくあふれ出て、私に快感を知らせてくれる。
しばらく舌ベロで膣の入り口を刺激していると、春香が一層声を強めた。
「だめえっ・・・なんかヤバイっ・・あぁぁぁっ・・・あっ・・・。」
春香が体を大きくビクつかせた。これが世に言うオーガズムってやつなのだろうか。その後も、特に刺激したわけじゃないのに、電気刺激を受けたかのように細かく震えている。私は春香が少し心配になり、声をかけてみた。
「春香、大丈夫?」
「う・はぁっ・・・うん・・はぁっ・。気持ちよかったぁ・はぁっ・・。」
安心して笑みがこぼれた。
「そう。それは良かった。」
「もう・はあっ・・私は大丈夫だから・・はあー・。大丈夫・・・」
私は春香の上に覆いかぶさり、優しくキスを交わす。そして私は春香の隣にゴロンと仰向けになった。
「本当に大丈夫?」
まだ春香は息が上がっているようだ。そんなに気持ちいいのね。自分ではシタことないからよくわからない。
しばらくして息が整ったらしい春香が私の方に体を90度向けてきた。私も春香の方に体を90度向けて向かい合わせになる。
「ありがとう、千早ちゃん。本当に気持ちよかったよ。」
「それは良かったわ。でもごめんね。何だか意地悪しちゃって。」
「ううん。普段見れない千早ちゃんが見れて、すっごく興奮した。」
「フフフ、そう言ってもらえると嬉しいわ。私も自然と出ちゃったのよ。そういうの。」
「千早ちゃんって、実はSっぽいところもあるんだね。」
「凄くかわいいって思っちゃったの。そうしたら自然と、ちょっと虐めたくなっちゃった。」
「天性のSなんだね、千早ちゃんは。」
「やめてよ。自分の中のイメージが崩れちゃうから。そういう春香はMなのね。」
「ちょっと、ゾクゾクした。」
そう言って、春香は体を少しわざとらしく震わせた。
「さぁ、次は千早ちゃんの番だよ。」
春香はニコッと笑う。
「私もするの?」
「私だけアへ顔見せるなんて、不公平でしょ。千早ちゃんにも、エッチの気持ちよさを知って、恥ずかしい顔を見せてくれなきゃ。」
「何だか邪な感情が見えるんだけど。はわっ!」
気づいたら春香が私を仰向けにして、春香がそこに馬乗りになってきた。
「私がもっと千早ちゃんを気持ちよくさせてあげる。エッチの楽しみ、教えてあげるから。」
そう言って、舌をなめずり合わせる春香は、最高にいやらしい。
春香は体を後ろに下げて、私の上に覆いかぶさってくると、そのまま私と唇を重ね合わせた。春香はすぐに舌を侵入させて、口内をくまなく物色している。歯の表面から、歯の裏側、そして喉の方まで舌を伸ばしてくる。その間春香の多量に分泌された唾液が滴り落ちて春香のもので窒息しそうになる。けど、それもなかなかに気持ちいい。
「ぶはっ・・。」
息切れしたのか。春香が顔を上げてきた。きれいな唾液の橋が架かっている。私は口の中の唾液を一気に飲み干した。
「千早ちゃん・・・綺麗な顔・・・それに・・・今はすごくセクシーな顔になってる。気持ちいいんでしょ?」
胸がドキドキする。好きな人に体の芯まで侵されるような感覚、素晴らしくアドレナリンが高まってくる。
「うん・・・。」
「唇だけじゃなくて、人間にはいろんな性感帯があるんだよ。例えばこことか。」
そう言って春香は右耳の裏を舐めてきた。
「ちょっと春香・・・あんっ・・・。」
舌で舐める音が直接耳に入ってこそばゆい。それと共に、こんな汚いところを舐められているという背徳感で、体に鳥肌が立つ。春香は耳の裏から、耳の外側、そして耳の付け根を丁寧になめていく。
そして舌先を這わせて、そのまま鎖骨部分へ。骨になっている部分と首の付け根当りを丁寧になめていく。
「ああっ・・ああっ・・・。」
春香は両手で私の貧しい胸をゆっくりと揉んでいる。
「私の胸、全然触り心地しないでしょ。」と自分を卑下してみる。
「そんなことないよ。ほらっ」
「あんっ!」
春香が私の勃起した乳頭を人差し指で上下左右させてくる。
「大事なのは感度だよ。感度。」
そう言うと、春香は右胸に顔を近づけて、さっき私がしたみたいに、じゅるじゅるじゅるるる、と水音を立てて丁寧に舐めほぐしている。
「ああっ・・・・・。」
「千早ちゃん、気持ちい時は、もっと大声を出していいんだよ。千早ちゃんの声は、透明感あってきれいなんだから。」
「うっ・・・うんっ・・・。」
春香は私にもっと「喘ぎ声」を出させたいみたいだ。私もさっきやったから分かるけど、確かに「喘ぎ声」を上げてくれた方が、やっている方としては嬉しい。私で感じてくれているっていう実感があるからだ。
「ああぁっ・・うんあああーっ・・・。」
春香が右乳首を丁寧に舌ベロで這わせながら、左乳首をつねっている。中々に気持ちい。
すると春香は私の体を90度左側に向けた。そして春香自身は私の背中側へ移る。
「春香?」
「知ってる?背中も人間の性感帯なんだよ。だからこうやって・・・。」
「ひゃあぁあぁっ!あああぁあっ、何それっ!?気持ちいぃぃい!」
春香が背骨の部分を舐めながら、反対側から手前に回した手で私の乳房をもみしだくのだ。背中と胸の両方から快感がやってきて、私の体をサンドイッチする。
「千早ちゃん。背中好きなんだね。」
「好きって言うか、何かきもちいぁあぃ!」
春香は背骨を中心に、縦に舌で這わせている。
「ひゃあぁぁあぁぁっああぁlっつ・・・。」
「いい声出てるね、千早ちゃん。」
背骨のあたりに残った唾液が空気に触れてすーすーする。春香は肩甲骨のあたりも丁寧に舌先で舐めつつ、乳房をもみほぐし、乳首を指先でいじっている。今の私の乳首は、まるで乳牛のように直立している。
「じゃあ、今度はこっちだよ。」
そう言って、彼女はまた私を仰向けにした。そして私の足元に近づいた。いよいよ本番か、そう思った矢先、彼女は私の右の足先を持ち上げた。
「何?何をするの?」
「千早ちゃん、足も性感帯って知ってる?」
「えぇ?そんなの知らないわよ。」
一体春香はどこからそんな情報を仕入れてくるのか。同居しているはずなのに、どうしてこんなに知識の差があるのか。
「まさか、そこを舐めるって言うの?春香。あっっ・・。」
その行動が答えだった。春香は私の右足親指にキスをした。
「足なんて汚いよ。あああっん・・・。」
春香はそんなことお構いなしに、親指を口に含んだ。じゅっつぷっずっぷじゅっつぷつ、と卑猥な音が遠くから聞こえてくる。
「ひもひいいれしょ?(きもちいいでしょ?)」
「うんっん・・。」
それが嬉しかったのか、春香は今度は人差し指、そして中指と順々に舐め進めていく。
「あああっつああっああんんんんっつうっつあああん。」
声にならない声が断続的に漏れてしまう。足指を舐められるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかったよぉ。
右足をコンプリートした春香は、そのままずんずんと足から上へと上がっていく。くるぶし、そしてふくらはぎ、膝の皿まで上がってきた。そして内ももへと、どんどんどんどん上がっていく。いよいよだというワクワクで、胸が高鳴ってくる。
「千早ちゃん、『パンツを脱がして私のおマンコを舐め舐めしてください!』って大声で言って。」
「ぷふっ・・何よそれ?」
思わず吹き出してしまった。
「さっき、私に恥ずかしいことを言わせたでしょ。だから仕返し。そうしないと舐めてあげないもーん。」
まいったな・・・さっき調子に乗らなければよかった。
「さぁ、早く早く!」
春香はわなわなさせて、私の股付近で聞き耳を立てている。
「ぱ・・・パンツをぬが・・・。」
やっぱり恥ずかしい・・・。
「うん?なになに?聞こえないなー。」
「パンツを脱がして私のおマンコを舐め舐めしてください!」
「よく言えました!」
そう言うと春香は一気に私の下着を脱がせ、股を両腕で固定して、いきなり私の膣口へ舌を潜り込ませた。いきなりのことで驚きを隠せないながらも、今までに感じたことのない気持ちよさで、声が抑えられない。
「ああああぁっぁぁいいやあぁぁぁぁん、ななぁぁいにこれぇえきもちいいぃ!!?」
一気にトロトロと私の膣から蜜が流れ出てくる。でもそれを春香は全て口の中で受け止めて、一滴残さず飲み干そうとじゅるじゅると音を立てている。
「千早ちゃんの蜜の味は最高だね。」
「何バカなこと言っているのよ。」
「本当だよ。愛の味がする。」
「どんな味よ・・・。」
「んー、もう一度味わってどんな味だったか確かめてみようかな。」
そう言ってまた春香は私の股に顔をうずめて、今度はクリトリスそして、小陰唇のビラビラの部分を丁寧に舐めている。
「ああああぁあぁぁああぁぁんんんんんんんんっんなぁぁんんっ・・。」
脳天がおかしくなりそうなくらい気持ちいい!セックスってこんなに気持ちいいんだぁああ!
「あっ、出てきたっ。」
そう言うとまたじゅるじゅると、まるでジュースでも飲み干すかのように、吸い上げていくのだ。
「ああんあっ、んあっ・あんっああんっ・・あんっ!」
膣口から出る愛液を啜りながら春香は、空いた右手で左乳房を刺激し、それと同時にクリトリスも舌で刺激する。今度はクリトリスの刺激に神経を集中させているようだ。舌先のザラザラとしたところで、女の子で一番敏感な真珠を上から下へ、下から上へ、ゆっくりとだけどテンポよく、舐め続けている。
段々変な感覚が上がってくる。ナニコレ?経験したことのない、感覚・・・。あああっぁっすごい・・・すごいものが来る、何か来るぅ!着ちゃうきちゃうううっ!!
「あああっ!!」
体に大きな電気が走った。身体が雷に打たれたかのように、ビリビリして全く動かない。そして不随意的に体がビクビクしている。これがオーガズムなのか・・・。中々すごいものみたいね・・・。
「千早ちゃんもイっちゃったんだね。」
春香が笑顔で四つん這いになり、私の方に顔を近づけた。
「ええ・・・へぇえ・・はああっ・・そうみたいね・・・。」
私も少し息が上がってしまった。
「エッチって気持ちいでしょ?」
「そうね・・・。」
春香が私の顔に近づいて軽くキスした。そして今度は春香が私の隣でゴロンと仰向けになる。
「それにしても春香、どこでこんな知識覚えてきたの?性感帯とかそんなの?」
「ええっ!えっと・・あっと・・・まぁ・・いいじゃない、そういうことは!」
何だか怪しい。でもなんとなく予想はつきそうだ。
「京極さんとか猿渡さんの影響じゃないの?」
「げっ・・・。」
やっぱりそうか。あの人たち、部内で時々猥談に興じていたりするからね。
「春香・・・。女の子なんだから、下種な人たちの悪い影響を受けちゃダメよ。」
「うん、分かった。」
私は、90度横を向いて春香の方を向いた。春香も同じようにする。春香の唇を奪いながら、春香の体をぎゅっと抱きしめた。春香も、私の体を抱きしめ返す。
「ああぁ・・・安心する。春香の体。柔らかくて・・・気持ちいい。」
「もう一回する?」
私は苦笑いをした。
「いや、大丈夫。最高に気持ちよかったわ。それに私、多分こうやって抱き着いて、安心したかっただけなのかもしれない。」
「私は抱き枕ですか・・・。」
「最高に贅沢な抱き枕よ。」
春香もフフフと笑っていた。
「こうやって春香に抱きしめられていると・・・本当に安心できる。大切な人に守られているんだなって感じれるから。」
「毎晩、こうやって抱きしめてあげようか?」
「もう、子供じゃないんだから。今日だけで大丈夫よ。」
「はいはい。」
そう言って春香は笑っていた。
気づいたら、朝になっていた。抱きしめながら、眠っていたようだった。
私がムクっと起きだしたので、春香も目が覚めたようだ。今日は、午前中から授業がある日だ。時刻は午前7時頃。
「千早ちゃん、起きたの?」
春香が声をかけた。
「ええ。昨日は・・・ごめんなさい。こんなことさせて。」
「気にしないでよ。私たち、ずっと裸を見てきたじゃない。」
「春香の唇奪っちゃった・・・。」
「私のファーストキスを奪えるなんて、幸せ者だね。」
私は笑った。
「ねえ、春香。」
「なに?」
「私、先輩に謝ろうと思う。」
「・・・それがいいね。」
「近々先輩借りていい?二人きりで、会って話がしたいの。」
「・・・いいよ。」
「・・・ありがとう。」
「さっ、支度しよ。午前中から授業があるからね。」
そういって、春香は布団を剥いだ。私も洋服を着なくっちゃ。私たちは、何事もなかったかのように、朝の身支度を始めていた。