※この作品はR-18です。

女神が堕落する時   作:濡れ書生

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濡れ場なし回
展開は決まってるけど、どうしてそういう選択をしていくのか
巧く心理描写とかができずに結構詰まる次第


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 朝のまどろみの中から抜け出すというのは存外難しいもので、ベットの中の温もりが外気と触れるのを億劫にさせる。眠気が残る事から、それが抜けるまで暖かい中に居たいとも思う。何よりも、ベットの中には愛する者がともにあり、静かに寝息を立てている。この瞬間、この時間を自分から中断させないといけない。これは非常に決断力が求められるものである。

 

「今日は、巻き割りと、食材の加工か。何処か手ごろに釣りが出来る場所があればいいんだけどな」

 

 暖かな毛布の中で、予定を自分に言い聞かせるように独語する。ただ将来の事を考えていると気分が憂鬱になるし、フィーナになされた陵辱が頭を過ぎる。体を動かす事でそれらを一時的に忘れ、リフレッシュした状態で将来の事を考える事出来る。そういった意味で日々の労働はアドルにとってもフィーナにとっても重要な時間であった。

 

「……おはようございます」

 

 フィーナも目が覚めたのだろう。アドルの顔を覗き込みながら恥ずかしそうに微笑む。体に残る疲れから、昨晩の浴場で何度もオーガズムを迎えた事を思い出したのだろう。顔が赤く染まる姿からは何度もアドルと体を重ねているのに、いまだに初々しさを残す。そんな初心な所はアドルを喜ばせる。

 

「おはよう。よく眠れた?」

 

「はい。ちょっとまだ少し気だるい感じもありまけど」

 

 そういってアドルにぎゅっと抱きついてくるフィーナの体の柔らかさと暖かさに、幸福とはこういうものか、と考える。冒険では色々なものを見て、体感してきたが、それとは違う心を満足させる感覚。どちらかを得る為にどちらかを捨てるしかないのなら。アドルが迷わずフィーナを手に入れたが、それに後悔はなかった。

 大切な者と生活する事がこれほどに素晴らしいものか。実際体験すれば父親が何故結婚したのか、その理由がわかるものの、正直自分は父親と同じ様に根を張るのにまだまだ時間がかかると思っていた。思いも寄らない状況の変化に戸惑うものの、こうやって互いの温もりを感じながら、普通の恋愛をして、普通に家庭を持って、普通に子供をもうけて、普通に暮らしていく。その普通が如何に大切で尊いものか。

 立場も種族も超える難しさと、世界を敵に回すかも知れない。それでも手に入れたいと望んだものを手にいれたのだ。これを守る為に全力を尽くすつもりのアドルではある。こうやって二人の時間というものは何もしなくても、会話が少なくても甘く、離れがたいものであり、新婚夫婦や馬鹿ップルを見てきたアドルがどうしてそうなるのか、自分が体験して初めて理解できた。

 

「よし、朝食の準備をしようか。今日は僕の当番だから、フィーナは着替えたらテーブルの用意とかしてくれるかな?」

 

「はい。今日は暖かいですし、テラスでご飯にしましょうか」

 

 フィーナの提案に同意して、意を決するとフィーナにキスをする。それが起き上がる合図とわかっているフィーナが、少し名残惜しそうにアドルから手を離すとベットの上で起き上がる。薄着の為胸元が覗き、綺麗な白い肌、細い腕と、アドルの眼に入る。

 今でこそ、興奮からの動悸を抑える事が出来ているが、この宮殿に来たばかりの時、このフィーナの姿を見た時の煩悩の膨れ上がり方は言葉に出来なかっだほどだ。薬の影響は大分抜けたはずなのに、思わず息を飲むほどに美しいフィーナの容姿。状況が許すのであれば、すぐにでも押し倒してしまいたいと今でも思う。

 少しずつ慣れた。とはいえ、それでもアドルの煩悩を刺激しているのをフィーナ自身、アドルの反応をわかっているのか時折、小悪魔めいたいたずらっぽい笑顔で見せつけてくるものだから、困った笑顔をアドルが見せている。

 清楚で生真面目、そういった茶目っ気と無縁と思っていたフィーナがゼピック村での生活で同年代の娘たちの影響を受けたのだろう。年相応の娘の行動というのは、フィーナのあまりでてこなかった本質の部分なのかも知れなかった。

 

「よし、じゃあ早速用意してくるよ」

 

 ベットから降りると着替えるフィーナにそう声をかける。もし一人になる事に不安そうな様子を見せる様なら、少し待つつもりだった。だが、あまり距離が離れていないためか、焦る様子もないフィーナに安堵して直ぐに朝食の準備に入る為に近くにある厨房に移動する。

 本来なら食材もちゃんとした形で入手出来れば良いのだが。そう思っても現実は不可能であり、無理に焦って調達に出ても仕方がない。まずは腹を満たす為に料理に専念する。当初はすべての料理をフィーナが作りたがったのだが、アドルが譲らず家事分担で交互に作る事になった。

 だがこれはこれで娘達の思い描く楽しい夫婦の生活のひとつでもあり、フィーナは受け入れてそれを楽しんでいる。ゼピック村に生家のないアドルを知る為に、互いの味付けの差を知り、少しずつお互いの好みを理解しあうのも、パートナーを理解していっている。そして二人が満足できるラインを探していく楽しさがある。そう感じているのだからなお更。

 女神だった娘は立場から開放されて、普通の人間としての楽しみを存分に感じている様子で、この生活を魔に襲われる人間がみたらきっと許さないだろうな。と改めて思う。そんな事を考えながら庭園で採った野菜やハーブでサラダ、干し肉と合わせてスープを作っていく。パンを用意すると卵といった食材の貴重さを改めて感じる。

 

「贅沢は言ってられないか」

 

 呟いて調理を再開するとその後ろに、テーブルの準備を整えたフィーナがやってきて、料理をしているアドルの手元を興味深そうに覗き込む。元々冒険の過程で色々な文化と触れて来た事もあり、アドルの料理のレパートリーはなかなか手広く、フィーナにとっては新鮮の塊なのだ。邪魔にならない様に味付けを見て、偶に味見をして、そして食後のお茶の為の準備をする。

 こうやって二人、台所に立つというのもちょっとした新婚気分に浸れ幸せを感じる瞬間は肉体的な繋がりで感じるオーガズムや充足感と違い、夜一緒に寝て、朝起きてこうやって朝食の用意をして二人でとる。何気ない事。気にしなければ気がつかないもの。何気ない日々がフィーナとアドルに新たな発見と驚きを与えている。そして、こういった何気ない時間がフィーナの心を少しずつ癒していく大切な瞬間であった。

 

 

 

2

 

 

 

 アドルの作った料理は東方の香草などを使ったスープであるが、材料が少ないため神殿付近で自生していた実から種を取り出し、乾燥させた香辛料を使う等アレンジを加えたスープである。本来は魚介類の具材も欲しいのだが、あるもので代用しており、この土地の風土に合わせてアレンジ出来る程にアドルの料理の技量はあると示している。

 

「あっ……おいしい……」

 

 初めての料理、初めて経験する少し辛味と香りの強い料理に人の世界は広いのだ。自分達が去って数百年の中で大きく変化したり、進化したのだ。このアドルの料理ひとつをとってみても、フィーナにはそう思えた。

 

「本来なら海藻とか、海の魚とか貝類とか入れるんだけどね」

 

 フィーナの満足そうな表情にアドルが笑みを見せる。旅の中で旅費を稼ぐのに肉体労働をする事もあれば、個人の郵便仕事をする事もある。中には旅の一団の護衛をしたり、と危険な仕事もある。

 それ以外でも、旅で色々な地方を巡る事での経験を生かして、貴族や豪商と話をしたり、現地で得た伝を利用して仲介に立つ事もあれば、人手の不足する酒場で料理人の真似事をして、その地方では珍しい料理を作る事もある。楽器で吟遊詩人の真似事もする。

 旅をするのに路銀は必須。パトロンの居ないアドルの冒険するに当たり厳しい現実だが、父親の経験から学んだ事がフィーナとの生活で生かされるとは思わなかった。そして、こうやって目の前で喜んでくれる姿にアドルが嬉しくなる。

 

「うーっ……。何か、アドルさんがこんなに料理が上手だと……やっぱりショックです」

 

「僕が上手というわけじゃないよ。初めて食べる料理だから、本場の味がわからないからおいしいって感じるだけさ」

 

 現地の料理人や主婦の料理は自分よりおいしかったとアドルがフィーナに苦笑する。フィーナ自身、自分でも理不尽だと思うが、もっと料理に関しては精進しないと。と思いを新たにする。男を落とすのに胃袋をつかめとデミ達の言葉もある。そんなアドバイスを真摯に実行して努力する姿は本当にただの女の子と変わりがなかった。

 料理に関してはジェバから大分仕込まれた様で、フィーナは手馴れた手つきで料理をするし、ジェバの料理と変わらない味付けは本当に美味しいとしかいえない程である。それも全ては自分が生きていく為から、今ではそれがアドルの為に変化している。フィーナのそういった対象に自分がなっている事。それらはただただ嬉しいと思えた。

 食事も終え、食後のお茶をフィーナがカップに注いでいると、不意にアドルが椅子から立ち上がり、外へと視線を向けたままゆっくりとテラスの縁へと歩いていく。何があったのだろうか? フィーナもポットを置いてアドルの視線の先へと目を向けると、遠くからファルキリーと大型の魔物、小柄な影が歩いていくのが見えた。

 

「魔物……ですね」

 

「……ジェバがいる!」

 

 アドルの声に驚いて目を凝らすが、人影みたいなものは見えるが遠すぎる事、ヴァルキリー達の様な鎧姿でもなければ、魔物の様に大柄であったり見分けのつく個性がない事から判別はフィーナに出来なかった。だがアドルはその人影をジェバと見て取ったのか、常に帯剣しているクレリア製の剣をもって部屋の中に戻ると、同じくクレリア製の鎧を着け、盾を持つ。ジェバと魔物が一緒にいる。異常な事態に臨戦態勢を整えたのだ。

 

「フィーナはここでまっててくれ。僕がいってくる」

 

「っ、嫌です。私も一緒に行きます」

 

 今だダームによって魔力が封じられているが、それでもそれなりに魔力は回復もしているし、発動させる事も出来る。ヴァルキリーやあの魔物相手に遅れをとる事はない。少しでもアドルの助けになりたい。一人で居る所を襲撃された場合の恐怖もあるし、罠でアドルの身に何かあっても、そうなったら一緒に死ねる。後ろ向きな思考だが、フィーナの行動は決まっていた。

 フィーナの想いを理解して半瞬の思考でフィーナの言葉を受け入れるが、フィーナの表情が少し青ざめているのが見える。フィーナの正体を知ったらジェバがどう思うだろうか? フィーナの決断を知ったらジェバが幻滅したり、裏切られたと思われないだろうか? そんな不安が渦巻いている様子だった。ただそれでもアドルとジェバの身を案じて、自分も行こうとする姿にアドルが微笑む。

 

「大丈夫。何があっても僕は一緒だ」

 

「……っ、はい」

 

 自分の不安を理解してアドルの言葉。アドルが自分を理解してくれている。それが嬉くフィーナが笑顔になる。そんなフィーナをいきなりお姫様抱っこするとフィーナが驚きの声を上げる間もなく、テラスから下へと身を躍らせる。人一人抱えているのに軽やかな着地。しっかりと足と腰で衝撃を殺しての着地とはいかず、流石にかなりの衝撃をアドルは感じるが、普段鍛えられた体はその勢いを受け切っていた。

 

 

 驚いたのはそんなアドルの登場の仕方を見たヴァルキリーとジェバである。赤い髪の男。恐らくアドルだろう人影が人を抱えて2階のテラスから飛び降りたのだ。抱えた人影は髪の毛の色から、恐らくフィーナだろう娘。何て無茶な。怪我したらどうするのだ。そう思うが、アドルは何事もなかった様にフィーナを下ろし、しっかりと手を繋いで自分達の方へと歩き出している。ルー達を引き連れて歩いていたジェバだが、そんな若者らしいといえばらしい行動に苦笑いが浮かぶ。

 その二人はしっかり互いに手を握り、二人寄り添う姿から、あの鏡での光景を見て以降、二人の間はちゃんとあの様な出来事の後も良好な関係を築いている。そしてそれは今も継続している。その様子を見てとりあえずは安堵する。

 フィーナが無事だった事、アドルがフィーナを助けて結ばれた事は喜ばしい事である。ただ、ジェバでも素直に喜びだけで済ませるのは難しいものがあるのも事実であり、フィーナがジェバに会う事に勇気が必要であった様に、ジェバもまた勇気が必要で、いまだ自分の中で答えが出ていない部分もあった。

 

「フィーナ……」

 

 だが、実際本人を前にしてジェバはそんな考えも全てが一瞬にして飛んだ。大切な実の娘と思えた子。そんなフィーナと言葉が聞こえる距離まで近づくと、自然と言葉と涙が零れる。あの様な事をされたのを見て、それでも生きていて、好きな男と二人で一緒にある事に、たったそれだけに涙が止まらなかった。

 そんなジェバの体がビクリと稲妻に打たれた様に体を震わせ、思い出した様に恭しく頭を下げる。トバ家の血がフィーナの正体を知った事で本能的にジェバに起こさせた行動。ジェバやルタがフィーナを無意識に受け入れ世話をしていた理由でもあるが、ジェバがそれを知るはずもない。ただ、フィーナが女神と知り、ジェバにその行動を取らせたのは古くからの本能的なものであった。

 

「フィーナ様、知らぬ事といえ失礼を……」

 

「まって!」

 

 ジェバの言葉をフィーナが上ずり震えた声で遮る。

 

「違うの。私は女神なんかじゃない。ただのフィーナだから……お願い……」

 

 不安に押しつぶされそうなフィーナの表情。まるでアドルが神殿から保護してきた直後の様に安全な環境にあっても、記憶のない事から不安に押しつぶされそうになっていた時と同じもの。ただそれでもフィーナが声を出して自分の思いを口にしたのは、間違いなくアドルが傍にいるからであり、フィーナの手を優しく握ったアドルの手が、フィーナに勇気と安心感を与えていた。

 

「私はもう……女神じゃないから……」

 

 フィーナの口からはっきりとした言葉がジェバの耳を打つ。あの陵辱行為から日を置いても、フィーナの決意は変わらない。フィーナの中では自分のいた世界は滅びていた。あの時の守るべき人間は居らず、それどころか王国の人間の子孫達に辱めを受け、悪意を見た。そんな人の為に女神である事を続ける必要はなかった。

 でも、アドルは共に生きる伴侶として受け入れていた。そしてどうやら自分はフィーナにとって排除されるべき人間ではない。それがわかってジェバは安堵していた。それは静かに歩み寄ってジェバに抱きつくフィーナの行動から理解できた。

 娘と思えた子に受け入れられている。素直にその事は嬉しい。でも女神がその立場を捨てた。そしてその理由が人間側にもある。それを見てきたジェバには複雑で、人が思うフィーナへの感情と、フィーナ双方の気持ちがわかる。それだけに難しいものだった。でもこうやって娘を抱きしめているとそれを忘れさせる幸せがある。

 

「ジェバはどうしてここに?」

 

 ルー以外歩き去る魔物達を見送り、周囲をそれでも油断なく見やりながらアドルが口を開く。まさか地上のゼピック村にいるジェバがここに連れてこられるとは考えてもおらず、何故なのか? 恐らくダレスの考えからだろうとは思う。だがその真意をアドルは掴み損ねていた。

 

「村に魔物の一団が侵入してね。私を連れて来る様にと命令を受けていたらしいのさ。

 村人にけが人は出た様だけど死者はいないよ。アドル、フィーナ。二人が言ってくれたんだってね?

 本当に助かったよ」

 

 ジェバの言葉を聴いて一瞬体を硬直させたが、フィーナが安心した様に息をはく。村にはデミやルタ夫妻と仲の良かった者も多い。彼女達が無事。本気でダレスがあの時の言葉通り、進んでフィーナに関係のある人間を殺すつもりはない。というのがわかった。

 

「私を人質にフィーナに何か無理強いをさせるのではないか、と思ったけどそうでもなかった様だしねぇ。

 何か思い当たる事はあるかい?」

 

 ジェバが一番恐れていた事として、自分が人質にされる。という事態はなかったから良かったが、何の目的を持ってここに連れてこられたのかわからずアドルへと視線を向ける。

 

「ダレスという魔王がいる。恐らくアイツの考えなんだろうと思う。

 僕とフィーナが……アイツと取引したけど」

 

「皆まで言う必要はないさ。お前さん達の大よその事はわかっているよ。

 それに、フィーナが普通に人として生活するのは難しいのもわかっているよ。実際この浮遊していた大陸の住人達の反応をみたら、ね。

 フィーナとアドルが夫婦になったら、例え魔物を全滅させたとしても女神が一人の男を愛する事を認めない者はいるだろうね。

 それもかなりの大多数。それは避けられない事さ」

 

 ジェバの見てきた光景を口にするとアドルとフィーナの顔が曇る。鏡で見た光景そのままの事が各村でジェバが見てきた。中には好意的だったり理解を示す人もいるが、ダレスが見せた光景は事実であるのは間違いない。ジェバの言葉からアドルもフィーナも改めて理解した。

 

「そうだね。それでも僕達は決めた。その僕達を見てもダレスが動いたというのは多分、駄目押し、止めの一手なんだと思う」

 

「ふん?」

 

「選んだのだから、歩けって言う事なんだと思う。ジェバを連れてきたのは道中の光景を見せてどんな状況か教える為なのもあるんじゃないかな。

 それに、結果がどうであれ僕達とジェバが情報を共有して僕達とジェバの関係がどうなるかその結果を突きつけたい。というのもあるのかもしれない」

 

 ダレスの最大の目的は黒真珠の管理・コントロールと、新たな黒真珠の生産。フィーナが同意しているとはいえ、積極的な製作をさせるには状況を明確化するのが最善とダレスが判断したのであれば、ジェバを連れて来たという可能性はあるとアドルが考えたのだ。

 ジェバがアドル達を認めないのであればそれはそれでいい。アドル達が守るのは自由だが、アドル達は完全に孤立化するのだから、生活を営む為にダレスの要求に対して応じる可能性は必然的に上がる事が期待できる。逆にアドル達を認めて友好的な関係を築くのであれば、それはフィーナの弱点となる。彼女達を守る為に必然的にダレスの要求に応じざる得ない。どちらに転んでもダレスの得であり、結果を早く出したい故の行動だろう。そんな風にアドルが考えたのだ。

 

「でもダレスの事は関係ない。僕はフィーナと一緒にジェバに話をしないといけない事がたくさんあるんだ」

 

「私もそうさね。知りたい事も多い。まずはそれからだ」

 

 アドルの言葉にジェバが笑うとフィーナがアドルとジェバの間に入る様に三人並んで歩き出す。女神の宮殿まで僅かな距離だが、母親の様なジェバと愛する男に挟まれて見せるフィーナの幸せそうな表情を見ると、何故フィーナが女神なのか。それがなければこの様な事にはならなかったのに。そう考えジェバには不憫に思えてならなかった。

 

 

 

3

 

 

 

 アドルが驚いたのはさも当然とばかりにジェバについてきたルー達が女神の宮殿に入った事である。彼らは我が物顔で宮殿内で自分達の居場所を作るとそこを自分達の住処としていた。

 

「元々ルーは神官のペットになっていた固体もいるんです。ジェバに懐いていたのも、私やアドルさんにも友好的なのもそれが理由だと思います。

 それにここに入って来られるんですから、悪い子達じゃないですよ」

 

 フィーナがじゃれ付く一頭を抱き上げて笑顔を見せる。テレパシーの魔法で彼らの事を理解していたが、確かに魔物が入り込めないこの宮殿に入れる事を考えれば害のない存在なのは間違いない。フィーナが空中庭園を荒らさない様に。宮殿内の物にいたずらをしない様に。そうルー達に言えばおとなしくそれに従うのだ。過去女神や神官とこれだけの関係を築けるのだから、可愛がったというのも理解できた。

 結局、一日の予定は崩れたが予定を潰すのに十分な理由。ジェバをアドルとフィーナが出迎え長い話の始まる。

 フィーナからジェバにイースの事。過去六神官の事から色々な事が伝えられた。ダルク=ファクトの事も、サラの仇を討った事も神官の末裔という事からジェバには複雑だが一つの心の痞えが取れた気がした。

 そしてイースの事、全てを理解してジェバが納得したのは、ゼピック村で血筋を遡れば古くからこの地に根を下ろした家系程フィーナに好意的だった事。それが神官の末裔だったり、古代王国の民の血筋であった事。先ほどのジェバの様に、本能的にフィーナを受け入れていたのだろうという事である。フィーナが全ての人間にではないが、何故ゼピック村での生活であれだけ受け入れられたのかと、謎が氷解したのかジェバがすっきりした様な表情であったのが、アドルには印象に残った。

 そしてアドルとフィーナが魔と戦い、あの出来事を経て、今の状況になった事。アドルとフィーナがともに生きる事。そういった決断を聞いてジェバが複雑な表情を見せていた。アドルもフィーナも、完全に理解される事は無いと思っていた。実際魔と協力関係になるのだ。ジェバにはもう助からないとまで言われたゴーバンの事。瀕死のルタの事もあるのだ。女神のお告げで戦ったのに、女神が戦いを捨てるとは。そんな想いはジェバにもある。

 だが、フィーナが人間に陵辱された。しかも守った人間の子孫から。そしてアドルと結ばれればそれに対して多くの人間から憎悪も生まれた。一人の娘として幸せを得られないフィーナに、戦って封印の礎となれと、アドルと別れろとはジェバには言えない部分もあった。

 

 長い長い話。だがそれはまだ半分が終わっただけである。時間も昼を回っていてそれに気がついた二人が一度話しを切り上る。アドルとフィーナが食事の用意の為に席を外すと二人台所に立つのをジェバが後ろから見守る。まるで新婚夫婦の様で、幸せそうな姿に何でフィーナが女神なのだろうかと不憫に思えて来る。

 

「あの二人がただの旅人と村娘なら良かったのに、ねぇ」

 

 膝の上で丸くなって眠るルーの頭を撫でながらジェバが胸の内を吐露するが、ルーは我関せずと寝息を立てていた。もし、フィーナが女神だと知られていなければ。もしかしたらアドルと幸せな家庭を築けたかも知れない。そんな事を考えるが、フィーナの告げた女神二人で封印しなければならないという事実がそれを残酷に否定する。

 勝てば封印の為にフィーナが犠牲になる。アドルがフィーナを選んだ以上、戦う事に消極的になるのは仕方のない所だろう。フィーナの決意だけでなくアドルも積極的に戦う意思がなくなった。冒険を捨てフィーナと結ばれる事で人間から向けられる嫉妬と直面すれば、当然とも言えるが、アドル本人はいまだにそれが正しい選択なのか悩んでいるのは見て取れた。世界の平和と一人の娘の選択。まるで物語に出てきそうな選択である。ダレスという魔性の者がアドルを揺さぶる為に自分やゼピック村、アドルに関係のある者を助けるという条件を出した事は、アドルを確実に一定方向へと進ませる役割を果たしている様にも見えた。

 

「アドルとフィーナに躊躇させない様に私と接触させ、変化を起こしてそれを加速させる。アドルの言う通りなのかもね」

 

 アドルの言葉を思い出す。ダレスにいい様に使われている感は否めない。アドルもそれを理解している。フィーナは完全にアドルに依存している様子でアドルから片時も離れるという事を嫌がる。そんなアドルを守る様にフィーナと一緒にある。正直自分が必要だったのだろうかとも思える。実際自分もアドルと同じく答えを出せていないのである。

 フィーナの無事を確かめられた。出発時であればこれだけで十分だったのに道中とんどもない光景を見て、フィーナの想いを知って、まったく違う状況にジェバがため息をつく。まだアドルとフィーナの現状を聞いただけであり、今度は自分が二人の置かれた状況。もう一柱の双子の姉神の事も知る限り伝えなければならない。精神的にまだまだ重圧のある時間はかかるのは間違いなかった。

 

 

 食事を終えて、片付けをするとフィーナが三人分のお茶を用意する。ルー達はフィーナに言われた場所で遊んだり昼寝をしているのだが、どうも彼らは宮殿での生活を許され、フィーナに食事を貰えた事で宮殿の見回りと警備を任務としたのか周囲を見回っている。さながら小さな侵入者を発見する番犬とも言うべきか。いずれにしてもアドルとしても異変があれば知らせてくるルー達に有難く思うのは常に気を張る時間が減った事。ジェバと共に来訪したルー達がこの様な形で役にやってくれるのは助かるのだが、食糧事情を考えて今後どうするか、また悩みの種が増える事になった。

 

「そうか……。あの時の事、今も見られる状態なのか」

 

 ダレスや男達に陵辱され、心をズタズタにされる行為の数々を思い出したのか、フィーナの顔色が青くなり体も震えている。そんなフィーナの手をアドルが握りながら声を漏らす。ジェバの話を聞いて、覚悟もしていたが、ランスの村でアドルに対しての反発が大きい事は覚悟していたのに辛いものがあった。

 リリアが人間達に陵辱されている光景も見せ付けていたのだ。アドルに助けを求めて、でもフィーナの時と違い間に合わず、何人もの男達と進んで性交に励む姿。心が快楽に溺れている姿。これらを見せ付けられたのに、アドルはフィーナという美しい女神と快楽を貪っただけに飽き足らず、恋人となり人間に陵辱されて人間を見捨てた女神と共にある。

 アドルを好いていた娘を見捨てたのを見て怒りを覚えるのはアドルでも仕方がないとは思う。何故あの時自分はリリアも助ける様に動かなかったのか、という迂闊さを呪ったが、フィーナの陵辱していた男達への自分の行動が、冷静さを失っていたのは間違いなく、振り返ってみればあれ以外の行動が不可能だったのは変えようがない事実である。

 だが冷静だったとして、あの時リリアを助ける余裕が自分にあったのだろうか? 精神的に不安定なフィーナを置いていけなかったし、完全に依存状態にあるフィーナがリリアを助ける姿を見てどう思うだろうか。恋敵と知れば。あの異常な状況下において冷静な判断力を失い、あの精神状態であっては致命的な問題になったのではないか? ダレスと戦った後のケアを考えるとリリアを助けに行くのにフィーナを一人置いて行く事も、何かする事も難しい状態だったのだ。

 ましてどこに捕らわれているのかもわからない。魔と戦うのならレアも助けなければならなかった。優先順位を考えればレアが優先になっていただろう。その時点でもうアドルは恨まれる立場になっていたのは確実である。アドルは肉体はひとつしかなく、同時に出来る事は少ない。自分が無力だけに、優先した結果がフィーナになっていた。恐らくフィーナへの感情に気がつかなかったとしても、似た状態になっていたのではないか? そうアドルには思える。

 

「それと、姉神様もフィーナ達同様の辱めを受けていたよ……。

 詳細はわからないが、フィーナとは違いアドルの様に助けにくる者はいないんだ。リリアって娘と同じ様な目にあっていると考えるべきなのかも知れないね」

 

 レアの話にフィーナの目が潤み、痛む胸を押さえる為に空いた左手を自分の胸に置く。双子の片割れ。もう一人の自分。覚悟していたはずなのに、レアになされた事。その後の予測。それを考えるだけで身を裂かれる思いがある。レアがアドルを諦めろといっていたが、だからといってやっぱり、レアは自分の片割れなのだ。

 自分はアドルが間に合ってくれた。結ばれる事も出来た。あの地獄の時間を助けられた事で新たな絶望が生まれたが幸せはあった。だがレアには愛する者は既にこの世には無い。その血筋であるダルク=ファクトは魔に落ち、キース=ファクトは女神の求めに恐怖から拒否し助けにくる事は無かった。これはレアの心に影を落としている。それに恐らくレアにはフィーナの選択が伝えられているだろう。孤立した中で魔性の陵辱を受けている。そう思うとフィーナが今更ながらレアを心配して涙が溢れ出る。

 でも、選んだ以上どうしようもない。ダレスの言葉を信じて開放を待つか、戦ってレアを取り戻すかしかない。だがそうなった時の後はどうなるだろう? 結局フィーナは八方塞であり、どうしようもない状態だった。

 

「フィーナ」

 

 そんなフィーナにアドルが声をかける。

 

「選んだ事だ。こうなる事もわかっていた。だからもっと単純に考えよう。

 どうすれば幸せになるか、どうすればよりよい未来を選べるかを、ね」

 

 全てを手にする事も、完璧にこなす事も出来ない。出来るのであればダームの誕生といった事は無かった。女神であるフィーナとレアが失敗したのだ。だからゆっくりと最善を探していくしかない。

 

「はい……っ」

 

 涙ぐむフィーナを抱き寄せるアドルを見て、本当アドルがフィーナの隣に居てくれて良かった感じる。ジェバでは出来ない事。心の傷。双子の姉妹の心配。それを癒すのには時間もかかるし、何かをするにも立ち直る時間が必要だが、時間と同様に傍らにある人という存在は大きい。とはいえ、フィーナの精神的な負担も大きく、暫く話しをした後、フィーナは疲労からアドルが寝室まで運んで先に眠る事になった。

 残りはアドルとジェバが新室内にある小さな卓を挟んで座って続ける事となり、本来アドルの場所にはルーがアドル代理としてフィーナに抱きかかえられて眠っている。アドルがその姿に安心したのか微笑を見せていた。

 ジェバも、安心感から見せるあどけないフィーナの寝顔を見て微笑が浮かぶ。同時に本当にあの様な陵辱をされたのかと疑いたくなる様な光景。アドルが傍にいるだけでここまで違う。フィーナへ良い影響を与えているのはジェバから見てもわかるが、フィーナがアドルへの依存心を高めており、以前と違い少し甘えた様子をアドルやジェバに見せる姿は、何故アドルが過保護と思える程フィーナを気にするのか理解した。

 

「ジェバは、僕とフィーナの選んだ事をどう思う?」

 

 席について、アドルが単刀直入に切り出す。フィーナが眠っている今だからこそ、聞けるとアドルが判断したのだろう。先ほどの微笑と打って変わって真面目な表情になる姿にジェバが真面目だねぇと苦笑する。

 

「そうさね……。

 アドル、お前さんがサラの仇を討ってくれた事は感謝しているよ。

 この島の為に奔走してくれたのも知ってるし、フィーナと引き合わせてくれたのも感謝してる。結果それが厳しい戦いだし、平和にもつながっていた。

 例えそれがお前さんにはただ自己満足の冒険だったかもしれない。でも私達には有難いものさ」

 

 これは事実であり、感謝している部分である。サラの事は特にそうだ。大切な娘の様なサラ。彼女を失ったからこそ、新たに娘の様に感じた女神フィーナも、サラの様に失うのではないかと心配していた。

 

「フィーナと一緒になる事に異論があるわけでもないさ。寧ろ嬉しいくらいだよ。あの娘が幸せになるんだから。お前さんが相手なら申し分ない。

 ただ、ゴーバンの事がある。素直に喜べないのはそこさ。でもフィーナが女神として人を嫌うなだなんて、アレを見て私にはいえないよ」

 

 フィーナが惚れた男と所帯を持つならば、ましてそれがアドルなら拒否する理由もない。サラの仇を討ってくれたし、サラが認めた男だ。ゴーバンもアドルを良い男だとも言っていた。息子達が認めたのだ。フィーナの相手として不足など考える余地もない。

 だが、最後の決戦に向けて女神達は六神官の末裔に招集をかけた。だが地上ではファクト家は居らず、結果的にゴーバン瀕死の重傷をおっていて恐らく助からない。ルタは怪我が深い。召集をかけてこれでは不満があるのは時間が経っても消えるものではないのだ。

 この二つの感情に挟まれるジェバをアドルから何か言う事は出来ない。出来るので今の様に全てを語るだけ。苦しむとわかっていても、伝えないとならない事ではあった。

 

「お前さんこそどうするんだい? このままじゃお前さん達は多くの人間から目の仇にされるだろう。

 魔物と争わないという形にしても、お前さんは間違いなく多くの人間から攻撃されるんじゃないかい?」

 

 ジェバの問いにアドルが苦笑する。ジェバも今後アドル達の行く末を心配しているのだ。女神の寵愛を独占した男。女神の加護で守られた男。そんな男をほかの人間が羨むのは必定。女神が女神の職責を捨てる。世界を闇に変える事に怒りを覚える者や、見捨てられたと思う者もいる。ジェバもフィーナが予想した現実を見てきた。それだけにフィーナと二人どうするのか。それが疑問であった。

 

「私がフィーナの替わりが出来るのなら、私がいくらでも肩代わりするんだがね……」

 

 フィーナが年齢相応の恋愛をして、結婚して家庭を築いて、子供を産んで、育てて、そうやって日々を過ごして歳を重ねて子供が孫をなし、その孫や子供に囲まれる生活。そんな一生を過ごして欲しい。ジェバがそう告げるとアドルがジェバが本当に、神官の末裔よりも、親に近い感覚でフィーナに接しているのがわかった。世界が敵になっても、ジェバにとってフィーナは間違いなく守るべき娘。だからこそ、ジェバは自分達に好意的なのだとも。

 

「ダレスはこの島を僕達に渡すつもりらしいよ」

 

 ダレスが言っていた内容。エステリアをアドルとフィーナに治めさせ、二人が守りたい人間達を住まわせる。二人が領主として生活し、住人の安全を守る。住人は二人に必要な生活必需品を納める。その内容にジェバが驚いた様子だが、安全と等価条件であれば住民は反発しないだろう。ダレスという魔王が人間の領主の様な頭の使い方だと思わず感心する程だ。

 

「ただいずれ僕は老化してフィーナより先に死ぬ。これは避けられない。

 だから人をやめようと思っている」

 

 とんでもない事を真顔で口にするアドルの言葉にジェバが戸惑いを見せる。女神とは生きる時間の長さが違うのだとアドルが言う。今のままでは確実にアドルは自分が先に死ぬ。その後フィーナが一人で生きる事にアドルには不安がある。だからこそ、フィーナと共に生きて、フィーナが死ぬ時に自分も死ぬ。悩んだ末にアドルが導き出したのだろう言葉。この事実をしれば更に多くの人間がアドルを羨むだろう。アドル本人がそういって笑っていたが、確かにその通りだった。

 だがそんな決断をアドルが下した事にジェバには驚きがある。あまり寿命・永遠の命といったものに興味がなさそうなアドルだっただけに、アドルをそう決断させたフィーナという存在は、確実にアドルの人生設計の中で中心にしているのが見て取れる。

 そして、それをジェバにも求めない所がアドルらしいといえばアドルらしい。人を止めるという言葉。その言葉に込めた意味をアドルが正しく理解しているからこそ、ジェバに求めないのだ。益を持って誘う事も、フィーナを出して情で誘う事もしない。

 ただアドルにはもう少し、それこそ今生きている時間の間だけでも自分に協力を求めてくれても良いのにとそうジェバは感じる。元々単独での冒険を続けていた事で一人でやろうという考えが強いのかも知れないが、全て完璧には出来ないのだ。少なくてもジェバはゴーバンの件もあるし、自分ではそこまで役に立てないかもしれないが、それでも二人の為に力を貸す事になんら問題はないのだから。

 

「人が神の領域だなんて入るべきではないと思うけど、今の置かれた状況でフィーナが一人だけになる。そんな事はさせられない。

 僕はそういった意味で、こんな選択をするんだから本当に度し難い人間なんだと思うよ」

 

 乾いた笑いだが、決意は硬い。暫く悩んでいたともジェバに口にしたがフィーナとの生活の中でそうアドルが結論を出したらしい。フィーナが一人精神的に弱っている様子と、他の人の反応を見せ付けられたり、ジェバから確認した人々の反応はアドルの選択肢を狭めていたのは間違いはない。だが結果がどうであれ、自分の有利に転ぶためダレスがどちらに転んでも良いとジェバを寄越したのではないだろうか? とも思う。

 事実女神とその剣士が愛欲に溺れ、自分達の為だけに力を使う。その方向に見事に誘導されている。でも解かっていてもフィーナを選ぶしかアドルには選択肢がないというのも事実で、これをダレスが計画しているのだとしたら、巧妙としかいえない所だった。

 

「人間らしくていいじゃないか。アドルが完璧でないと解かって安心するよ」

 

 冗談ぽく笑うジェバにアドルも笑う。二人笑いで誤魔化しているが決断していても、やはり心にしこりはあるのだ。

 

「もう一人の姉神様と、リリアという娘はどうするんだい?

 このままには出来ないだろうし、とはいっても……今更どうにかしても今のフィーナの立場はどうにもならないし、魔物と戦って勝っても封印は出来ないのではね」

 

 そう、ここがアドルのしこりになっている。それを問われて返答に窮する。言葉を選びながらアドルが慎重に口を開く。

 

「レアは何とかしたい。ダレスはいずれ解放すると言っていたけど、素直に信じる訳にはいかないだろう。

 何だかんだいっても、やっぱりフィーナにとって唯一の肉親だから」

 

 フィーナ同様に陵辱を受けていたと聞いている。今それ以上の苛烈な行為がされている可能性もあり、フィーナが心配している様にアドルもどうにかならないか、とは思っている。だがこれはジェバの言う通りでもあり、アドルにとっても苦しい所である。

 

「リリアという娘はどうするんだい?」

 

 ジェバが見て、話を聞いた限りでは薬を使われたのではないかともいう話があった。心が壊れてしまったのではないか? とも言われていた。あの娘を解放したとしてアドルには既にフィーナが居て、レアを助けるにはリリアまで手が回らない。となればバノアの元に帰されるだけだが、今更戻っても既に高まっている人間達のアドルへの恨みは晴れる事は無い。

 

「開放して貰えないか、聞いてみるつもりだよ」

 

 そうアドルが呟く。自分に対してどういわれても構わないが、だからといってリリアをあのままにするわけにはやっぱり行かない。だが帰されたとしてリリアが普通の生活を送れるだろうか? その後の生活をアドルがどうにか出来るわけではない。

 ダレスならば、割り切ってしまえというのだろう。女神を抱えて何が出来ると言われてしまえば、反論は出来ない。結局出来る事は少ないという現実をアドルが改めて思い知るだけであった。

 

「今更だけど、ね」

 

 自嘲気味にクッションに背中を預けてアドルが視線を眠るフィーナへと向ける。選んだ事。諦める事もしたが、やっぱりレアもリリアも心配だし、どうにかしたい。自分がこんなに欲深いとは思わなかっただけに、そんな自分にアドルが自嘲したのだ。

 視線を廊下に向けると夜になってもルー達の一部は足音を立てずに宮殿内を駆けている。自分達の役目を見つけ、ルー達が励む姿は可愛らしく、白い廊下を胸を張っている姿は微笑ましく笑顔になる。

 

「直ぐに答えを出せない事を話し続けてもしょうがないさね。

 今日はこれでお開きにしようかね? 明日も時間を取って、足りない分は話した方が建設的だよ」

 

 思っていたよりもアドルもジェバも精神的に疲れていたのをルー達の姿から癒される事で感じ取った事でジェバが終了を告げる。このあたりは年の功ともいうべきだろうと思うが、ジェバの言葉にアドルが素直に頷く。

 

「ジェバはフィーナと一緒に寝てくれ」

 

「お前さんはどこで寝るんだい?」

 

 ジェバの問いにアドルが苦笑いして視線を向けると長椅子がある。どうやら今日はここで眠る。という事なのだろう。窓からの侵入からもある程度対応出来て、部屋の入り口からの侵入には最前線となる場所でもある。

 

「たまにはジェバとフィーナ、親子水入らずっていうのもいいと思ってね。

 ここ最近はずっと僕が独占してたから」

 

 アドルなりに気を使ったのだろう。一応フィーナがまだ悪夢に魘される事がある。それをジェバが聞いていたいたし、それを共に寝て抑えるのがアドルの役目なのに、それをまさかアドルが譲るとは思っておらず、ジェバが驚くが、今日は完全にジェバにその場所を明け渡すつもりで寝床の準備に入っていた。

 

「ジェバがいるのにいちゃつけるわけじゃないから我慢するのなら、思い切って少し離れたほうが良いっていうのもあるんだよ」

 

 散々しておいてしれっと口にするアドル。普段ナニをしているのやら。若いだけに盛んだったのだろう。これだけ器量良しの娘が自分を好いて隣にいるのだから尚更。だがせっかくのアドルの好意。フィーナと久しぶりに一緒にいる時間を楽しませて貰おうとジェバが笑う。

 

「お休みジェバ」

 

 アドルの言葉に手を振って答えるとジェバが柔らかなベットの中に入る。先に眠っていたフィーナとルーの体温で温められた温度が心地よく、ジェバが眠りに落ちるのに時間はそれほどかかるものではなかった。

 静かに眠る二人を見ながらアドルも椅子に体を横たえる。ジェバの家に居た頃から、本当の親子に見えたフィーナとジェバ。そんな二人が破局的な展開にならなかった。アドルが危惧した未来を回避した事に安堵するが、まだまだ問題は山積しているのだ。

 

「そろそろ、ダレスが区切っていた期限か」

 

 左手で剣の位置を確認してアドルが瞼を閉じる。アドルも想像以上にジェバがどう判断して答えを出すか、内心で恐れていたのだろう。精神的な疲労から意識を手放すのはフィーナやジェバ同様に時間はかからなかった。




好きなキャラを陵辱させたり、快楽堕ち、NTRさせるのって以外と凄いパワーが必要ですね……
結局同じ濡れ場でも女神と赤い人のいちゃらぶのがやっぱり楽に書ける

濡れ場を満足のいくエロさとか、その時の睦事を話にあわせるとか合わせると中々思った様にいかず
双子の女神様が片方が不幸、片方が歪な幸福という状況とかその環境に人間らしく迷う描写とかまだまだ精進が必要で
巧く伝わらない、無駄に文章が長くなってしまいましたがご容赦をば……

作中(本編・番外編含)のフィーナのスケベシーンに関して

  • 和姦比率多いの方が良い
  • 凌辱の比率多い方が良い
  • もっと甘い内容の方が良い
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