醜い勇者の大冒険 ~転生したのは豚人(オーク)でした~ 作:ガリアムス
所持能力(ハイドスキル):回復(ヒーリング)、走力(ランニング)、雑食(オールイート)
異能(スペシャル):???
所持武装:巨大剣(バスターソード)、古ぼけた盾
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ノブナガ 種族:人間(ヒューマン) レベル?
所持能力(ハイドスキル):???
異能(スペシャル)???
所持武装:長刀、短刀、長銃
チーアの里…ノブナガの故郷だった場所は、魔王軍の襲撃によって滅び、彼女は唯一の生き残りとなった。仲間達の亡骸を火葬し、魔王軍への復讐を誓う彼女に大毅はつまらない事で人生を棒に振るなと言う。
一方、魔王軍はマルシェ村を壊滅させ神聖なる遺跡アグニカへ着々と歩を進めていた…
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「起きろ、豚」
「ぶっ!?」
脂肪が付いた腹が沈み、大毅は目覚めた。ノブナガが手に持った長刀の柄で当身を打ったのである。
「けほ!!けほ…!い、いきなり何すんだ!?」
「何をする…と。まるで起きる気配がない豚を、叩き起こす事に理由があるか?」
「うぐ…」
「ほれ」と、ノブナガが放り投げてきた物を受け止める。掌を開き現れたのは、昨日食べた干し肉と木の実だ。
「これから私達は、デトナと言う街に向かう。其処で魔王軍との戦いに備えて、ポーション等を入手する」
ポーションの単語を聴いた時、大毅の頭には真っ先にマイ◯ラの事が思い浮かぶ。
「質問良いか?」
「何だ」
「そのデトナっていう街には、(薬剤師)か(魔法使い)って居るのか?出来れば旅に同行願えるように交渉したい」
大毅はこの先、魔王軍との戦いを考えるノブナガや自分の為、使い処では百人力の力を発揮出来る役職を持つ存在が必要だと考えた。
「居ない訳では無い。だが問題が在るなら…お前だな、豚」
ノブナガは人差し指で大毅の鼻を指す。その一言で彼は、大きく深い溜息を付いた。
「俺が…豚人(オーク)だからか」
「そう。デトナの連中にとって、豚人(オーク)は忌み嫌うべき存在。お前を見て、まず仲間に加わりたいと思う奴は絶対にいない。
寧ろ奴等からすれば、絶好の食料…家畜同然だからな」
豚人(オーク)を家畜扱いし、食料にしている辺りから、大毅はデトナの街の人々が相応の力を持っていると、把握する。
となると、易々と大毅が街に近付く事は出来ない。何か別の手を考える必要があるようだ。
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「皆、行ってくる」
荒削りの岩で作った墓標に手を合わせ、ノブナガはチーアの里の仲間達に別れを告げた。彼女は自分が此処にはもう戻れなくなるかもしれない、そんな覚悟で祈ったのだろうか。
「…いくぞ、豚。デトナに」
「あいよ」
大魔王討伐という、長い…、永い…、その旅の始まり。
風は弱く、雲は空に四割程度。晴天でもなければ、曇天でもない其れは、二人の旅がハッピーエンドやバッドエンドでは無い、別の終着点を暗示しているかのようだった。
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「ノブナガ?」
「何だ、豚」
「何にも無いな、此処」
「そうだな」
続く限りの荒野に、旅人の姿在るのみの、静かで荒涼とした地面と水平線。そんな中で大毅はノブナガを肩車していることを除けば、何ら変わらない。
「…肩車、ゲブベブビビジ!!!???」
「認めない、以上だ」
彼女の強烈な首締め上げに気道をロックされ、泡を吹きかける大毅。ノブナガが肩車されている限り、彼には勝ち目が先ず無いのである。
「さぁ、空気を確保しただろう。早く歩け豚。今日中にはこの荒野を抜けて、デトナの街に入るぞ」
「ち、ょうしに…乗りやがっ…!?」
ビクンと全身が反応する。本能的直感が彼に「今すぐ伏せろ!」と言い放つ!
「おい、早く起き」
「伏せろ!!!」と大毅が飛び掛かって、ノブナガを押し倒す。刹那、彼等の背中が在った場所を幾多の風切り音と共に、複数の細い影がすり抜ける!
「な、なんだ…!」
「おい豚」
「今変なの…が」
大毅は瞬間、青ざめる。地面に倒れたノブナガ、乱れた髪と散開した持ち物や武器、そして何よりも(大毅が彼女の上に覆い被さり、逃げ道を巨大な腕が防いでいる)。
最早、完全に床ドンである。
「死ぬ覚悟は…出来てるよな?」
「待て待て待て!?取り敢えず落ち着け、な!」
「生憎、私はこれでも落ち着いてるよ。頭が凄まじいくらいにはな」
長銃を構え、大毅の眉間に狙いを定めた時、水平線の彼方から何かが、猛スピードで接近するのを彼女は見た。
赤い毛並みで、歪んだ嘴を前に出し、ロケットのような形で此方に突き進む…鳥!!!
「ダーツコンドルだと…!?此処には居ないはず、何故だ!?」
「そうなのか?」
「ダーツコンドルは本来なら、森の奥深くで巣を作り住む鳥。それが何でこんな場所に、狩りにしては時間が早すぎる…!」
ダーツコンドルは本来、夜行性であり夕暮れを狙って狩りを行う。それが夕日と同じ色の羽毛を持つ彼等にとっては、最も潜在能力(ポテンシャル)を発揮するのに最適だからだ。だが現在は昼間で、先ず絶対に有り得ない。
しかしそんな思考をさせて貰える程、彼等も甘くはなかった。ヒュイン!と風を切り、空間に風穴を貫き穿たんとす、轟速の槍に、大毅の目は追い付けない。
このままでは、敵に蜂の巣にされるのがオチ。
「だったら…!」
彼は背中に掛けた巨大剣を抜刀し、地面に深く突き刺すと、其れを背にしつつ、古ぼけた盾を構える。こうする事で、ノブナガと己の背中を守り、目の前の敵に集中出来る。
「悔しいが、今の俺にダーツコンドル(コイツら)を避けるだけの力は無い!だったらやってやる!来やがれ!!!」
「豚!」
鋭き鳥の嘴から成る槍と、未知数の硬度持つ盾の、激突。
かつて矛盾と呼ばれる言葉が生まれたように、試さねば分からぬ事もある。だが分かる事は一つある。これにより、どちらが優れているか…即ち優劣が着く…!
そして…激突…!
閃光とも呼ぶべき発光と、大毅の腕に襲い掛かる絶大な衝撃。恐る恐る瞼を開けた時、彼等の目の前には、五匹のダーツコンドルが地上に伏し、泡を吹き、白眼を剥いて死んでいる。
その首は心音計の心拍起伏のように畝り、曲がっていた…。
仲間の亡骸に…いや、盾そのものに怯え、逃げてゆくダーツコンドル。同時に、彼の頭に響いたのはレベルアップを告げる音楽。
(レベル3から4にアップしました。
能力値(スキルポイント)を300入手しました)
大毅
(まぁ、ここらへんは問題ないな。レベルが上がれば出来る事も多くないし)
(レベルを上げてゆく事で、貴方は自身の持つ異能(スペシャル)を発現する為のヒントを得る事が出来ます。
貴方の未覚醒異能(ロックスペシャル)は…
(5つ)です)
大毅
「ふむふむ、5つかぁ~…え"…?」
彼はただただ驚愕、そして戦慄する。
それもそうだ。
ウラヌスが決めたという、あらゆる命がどんなに足掻いても(1つ)しか持てない筈の異能(スペシャル)を、(5つ)持っているという事実が、混乱と動揺を加速させ、思考を滞らせてゆく。
だが何よりも、大毅(かれ)以上に驚いた人物がいた…
ノブナガ
「おい、豚…今なんて言った?」
大毅
「え…」
ノブナガ
「答えろ…今なんて言った!」
ノブナガだった。彼女の目は血眼で、此方にぶつけてくる殺意は、3日間一緒に過ごした中では最も大きく、そして全身に深く突き刺さってくる。
大毅は最早言い逃れは出来ぬと、早々に観念し、先のレベルアップによって、能力値(スキルポイント)300を入手した事。そして…自分が未覚醒異能(ロックスペシャル)を5つ所有している事を、彼女に対し告白した。
ノブナガ
「…何故、だ…」
その答えに言葉を失い、軈て地面に両膝を着く。目に浮かび、彼女の視界には敗北の二文字が澱みながら、刻まれる。
ノブナガ
「どうして…お前が、異能(スペシャル)を…。5つも…所有出来る…?私は…」
大毅
「ノブ」
ノブナガ
「来るな!」
大毅
「!」
半ば発狂したかのような口調と叫び声をあげながら、短刀を引き抜き、大毅の前に翳す。ノブナガの心理が只事では済まない状態にあるのは、彼にも分かる。
ノブナガ
「私は…何も!異能(スペシャル)を持たないまま、産まれてきた…!」
大毅
「………」
ノブナガ
「チーアの里の仲間達は、皆…早くに異能(スペシャル)の力に覚醒(めざ)め、里の為に力を振るい、役にたってきた。
だが私は…(長の娘)で在りながら、異能(スペシャル)を持たずに産まれた…!」
大毅
「長の…娘…」
ノブナガ
「私の里には掟がある。「異能(スペシャル)持たざる者、生きる価値無し。生きたくば戦え、戦士となれ」…だ。例えそれが長であろうが、異能(スペシャル)の無い者は、皆殺される…!」
チーアの里の歴史…この地域が荒野ではなく、まだ野花が咲き誇り、絨毯のような緑が生きていた時代。
他種族の大進軍によって数多の命が奪われ、人々が悲しみと絶望の淵に在った時、1人の戦士が現れ、人々に力を与えた。
もたらされた其れは、人々を強靭で気高い戦士に変え、他種族に立ち向かう事を可能としたのである。何年にも渡る、長い長い戦いの果てに、彼等は他種族を撃退し、この地に安息をもたらした。
だが、戦いの代償は大きく、大地は荒れ果て、命が生きられぬ場所になってしまう。ノブナガの先祖達は、戦いの償いと自らを罰するべく、この地に里を作り、人々を魔物達から護り、救う為に戦い続けた。
時が流れる中で、彼等は異能(スペシャル)の力に目を付け、「異能(スペシャル)こそ、大いなる力を先祖達にもたらした」と言う歪んだ考えに至り、「異能(スペシャル)を持たざる者は無能」と結論。
無能力者を見せしめとして殺し、異能力者を崇め奉っていたのだと…。
ノブナガ
「私が…!どれだけ惨めだったか、お前には分からないだろう!異能(スペシャル)にも覚醒(めざ)めず、己が生きるために、同胞から殺されないために、望まぬ稽古を受け入れなければなからなかった私の気持ちや心など!
魔物のお前には…絶対にッ!」
大毅
「ノブナガ…」
ノブナガ
「私は…お前とは旅する事は…、出来ない。時が経てば、お前は私を上回る。
全てに於いてだ…。そしていつか私を殺すのだろう…?今まで受けた非道の全てを返す為に…!」
大毅
「おい!俺は…!」
ノブナガ
「私はあまりにも愚かな人間(ヒューマン)さ…お前を従え、気取っていた馬鹿さ加減が、嫌になった。
だから…此所で別れよう。お前と私では…見ている場所が違う」
募る言葉1つ1つが、重く、大毅の心に乗し掛かり、締め付け、苦しめる。幾多のライトノベルを読破した彼が、いつも読む事に苦しむ場面…それこそまさに、今ノブナガが言った別れの言葉。
互いにぶつかりながら、漸く分かり合えた時に訪れる、仲間やヒロイン、ライバルとの別れの瞬間…。
ノブナガ
「数日だけだが…お前と居られた事、嫌いではなかった…。
さらばだ…(大毅)」
豚としか呼ばなかった彼女は別れの間際、彼に背を向け、歩き出した瞬間に、初めて名前を呟いたのを耳にする。巨腕を伸ばそうと、脚を一歩前に出そうとしたが、金縛りを受けたように、全く動けない。
遠退き、離れゆく背中を、彼は止められず、ノブナガの姿は地平線の果てに消えていった。
大毅
「…ちく、しょう…」
心の奥底から込み上げる、怒りと悔しさを噛み締める。
拳を地面に打ち付けて、やるせない気持ちを呪う。
大毅がこの世界に降り立ち、初めて出会った仲間であり、友となったノブナガ。
彼女は彼から去り、孤独の道を歩んでゆく。
こうして彼は再び、1人の旅路を刻み出すのだった…。
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ウラヌス
「(想定外)…じゃな」
(目の前に広がる広大な世界地図)と(様々な色をした駒)を見つめ、彼は呟いた。
視線の先に見えるピンク色の駒を、摘まみ上げて、大きな溜息を付きながら…。
ウラヌス
「お前ならば…
儂を真に(殺せるやも)…しれぬな」