醜い勇者の大冒険 ~転生したのは豚人(オーク)でした~ 作:ガリアムス
レベル4 所持能力[ハイドスキル]
走力[ランニング]/回復[ヒーリング]/雑食[オールイート]
所持異能[ハイドスペシャル]
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所持武装:巨大剣[バスターソード]/古ぼけた盾
グギャキャキャキャキャ!!!
荒野に響き、無数に闊歩する、四足の脚で走る鰐の化け物達。
彼等はランドアリゲータと呼ばれる、元来の鰐とは異なる陸上での生存に特化した魔物で知られ、四足歩行とは思えぬような蜥蜴の如き機動力を有する。
そんな奴等が涎を振り撒き、生臭い臭いを吐露し、目指す先には、たった一人の豚人[オーク]が立っているのみ。
大毅
(俺が…)
豚人[オーク]が握る、巨大剣[バスターソード]が空を薙ぐ。大地が砕け、砂埃が舞い散り、魔物の血飛沫と断末魔で空気が踊る…。
大毅
(俺が…)
衝撃が地面を這い、岩を粉砕。血眼で敵を狩り尽くす、その姿。『修羅』の如し。
大毅
(俺が…!)
大毅
「ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
相対した魔物が次々に血祭りにあがり、吐き出す息は白く染まる。
全身に沸き出した汗に、衣服がじめってむず痒くなってゆく。だが、彼はそんな事すら気に留めない。敵を倒し、血が頬に、肌に掛かった。
大毅
(俺が…!もっと、もっと…!ノブナガの力になれていたら…!!!)
彼を支配していたものは…『悔しさ』だった。
その悔しさは彼の中に、無尽蔵とも謂うべき力を与え、扱う事など困難であったはずの、巨大剣[バスターソード]を容易く振るわせる。
鰐の魔物の皮膚を、胴体を、頭蓋を。叩き割り、ぶった斬り、破壊し。突き崩し、打ち倒し、捻り潰す。
広がる荒野が血の赤に染まり、日が落ちて、地平線の橙に照らされる。
だが、それもやがては黒の闇に溶けて、見えなくなった。
(レベルが7から8にアップしました。能力値[スキルポイント]300入手しました)
ノブナガから別れを告げられ、そこから半日が経過していた。大毅は自分自身の中に生まれた、やるせない気持ちの行き場を、魔物討伐という形でぶつけていたのである。
悔しさと自責の念に駆られ、自分に迫った魔物を倒し、その度にレベルが上がる。なのに…『満たされない』。『充ちない』…『足りないのだ』。
体の芯に、ぽっかり…大きな穴が空いた感覚。そう…『ウラヌスに人間世界での死を告げられた』時の其れとよく似ていた。
大毅
「くそっ…」
地面を踏みつけては、何度も頭を指で押し当てる。やがて、荒野の夜空に星が点々と輝き始めた頃、彼は今までの戦いで得た能力値[スキルポイント]で、新たなる能力[スキル]習得へ動く。
大毅
「俺の合計能力値[スキルポイント]は1750。先ず、能力[スキル]:創火[フレイムメーカー]が400に、創作[クラフト]は750で、2つは確定。残りは600。
あとは雑食[オールイート]の力を活かすために、解毒[シャートポイズン]が必要…500使い、あとの100は回復[ヒーリング]のレベルを上げるか」
大毅の頭の中に広がる数多の能力[スキル]が印された枝から創火[フレイムメーカー]、創作[クラフト]、解毒[シャートポイズン]の3つの玉を取ると、弾けて自分の体に流れ込み、力に変わるのを、彼は感じ取った。
同時に彼は、自身の所持能力[ハイドスキル]を確認する。
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真杣 大毅 豚人[オーク] レベル8
所持能力[ハイドスキル]:走力[ランニング]/回復[ヒーリング]・レベル2 /雑食[オールイート]・レベル1/創火[フレイムメーカー]/創作[クラフト]・レベル1 /解毒[シャートポイズン]・レベル1
・創火[フレイムメーカー]…掌で火を起こす事が出来るようになる。また、炎属性全てに通じる最初の能力[スキル]で、他の炎属性能力[フレアスキル]を習得するには、このスキルを習得する事が絶対条件となる。
レベルを上げる事で、より強く、より大きな火を起こす事が可能。
・解毒[シャートポイズン]…毒を無力化出来る唯一の能力[スキル]であり、毒物を食したり、毒が体内に侵入した時、MPを消費し中和する。ただし、自身の解毒[シャートポイズン]のレベル以上の毒は中和出来ない。
・創作[クラフト]…魔物や物資を組み合わせて、新たなる物資や武器、防具を作り出す能力[スキル]。武器等の性能は、創作[クラフト]のレベルと使用する素材の希少度合い[レアリティ]により変化する。レベルが一定以上無ければ作れない物もある。
またこの能力[スキル]は能力値[スキルポイント]でのレベルアップが不可能で、創作[クラフト]を行う事でのみ、レベルを上げる事が可能となる。
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大毅
「試してみるか…」
大毅は先ず、自身が討伐し積み重ねたランドアリゲータの死体から[肋骨と牙]を取り出し、近くの[石ころ]を使いながら、其れを[磨ぐ]…。
数分経つと、黄ばんでいた牙や血染めの肋骨は白い光沢を取り戻して、鋭利な[簡易性のナイフ]へと姿を変えた。
大毅
「牙か骨に石を足してナイフか。よし、やろう」
こうして巨大剣[バスターソード]以外の刃物を得た彼は、次々にランドアリゲータを解体。その肉を枯れ草と木材に、創火[フレイムメーカー]で起こした火に放り入れ、どんどん焼いてゆく。
その中で彼は、ランドアリゲータの心臓は火に入れると、より大きく燃える事を初めて知り、大いに驚いたそうだ。
またこの魔物の革は、弾力性や柔軟性に富み、防具として使えそうであった為、その革と骨を贅沢に使用した、大毅特性のランドア装備一式[兜・胴・腰・腕・脚]を創作[クラフト]。
尚、その過程で大半の革と骨を駄目にしてしまい、残ったのは、沢山の骨付き焼き肉と三枚の革に心臓十個、そして簡易性ナイフが八本という状態。
大毅
「初めてで、こんだけ出来れば上出来だな。さて…いただきますか」
ホクホクに焼けた骨付き焼き肉に、大毅の心が踊る。男の子が一度は夢見て、非常なる現実に諦めた、マンガ肉。それが今、自分の目の前にある事が何物にも変えがたい感動を生み出す。
滴り落ちそうな涎を飲み込み、匂いを嗅ぎ、意を決してかぶり付く。
大毅
「…マッズ!?」
噛み付いた瞬間、大毅は骨付き焼き肉から口を離してしまう。
口に含んだ瞬間、鼻と口に砂を食べたかのようなざらつきと、薬草の強烈な苦味と渋みが襲い掛かってきたのだ。
大毅
「ヴェッ!?オエッ!!!」
舌に張り付く感触[それ]に、大毅は苦しむ。舌の両端を歯で圧しながら肉を見てみると、何と生焼けであった事が判明。
大毅
「…ちくせう。どうすりゃ…あ」
食えない生焼け肉をどう処理しようかと考えていた大毅だったが、此処で妙案に閃く。用意したのはランドアリゲータの心臓。それを二つ火の中に入れると、キャンプファイヤー並に勢いを増す。
大毅は火が無くなる前に生焼け肉全てを火炎の中で焼き、焦げているのではと思う程に十分に火を通した。
大毅
「では…いただきます」
合掌、そしてかぶり付く。
大毅
「…うめぇ」
先程までの生臭く苦い味は無く、噛むほどに濁流の如く押し寄せる肉汁が、口一杯に広がり、空腹を充たしてゆくのだ。大毅は一つ、また一つと肉を食い、腹を充たし、力に変える。
大毅
「ふぅ…御馳走様でした」
積まれた棒状の骨を見ながら、ふと彼は何かを作れるのでは?と考え、[棒状の骨]と[石]を組み合わせる。数分後、彼の目の前には創作[クラフト]の犠牲になった骨や石と、一個の[原始的なトンカチ]が佇んでいた。
「補強とかに使えるかな…」などと色々と考えていた時だ。
???
『動くな』
そんな声が彼の背後に響き、何かが近付いてくる。足音からするに声の主はおそらく四足歩行…しかもこの臭い。大毅はその正体を察した。
『奴等しか当てはまらない』と。
???
「探したよ…同胞を葬った豚の戦士」
マッドウルフ…ノブナガと居た時に遭遇した魔物。
大毅
「…数日前の復讐、そんな所か。生憎だがまだ飯を食ってるから、後でな」
マッド
『随分と余裕だな、我等精鋭100匹に対して貴様は一人…くっくっく。全くもって愚かな事だ』
暗闇に光り、揺らめく、赤の瞳孔達。『今までの大毅』ならば、諦めていたに違いない。
「あ、そう」と彼の手から空へと放たれたのはランドアリゲーターの心臓だった。しかし其れは真っ赤な炎を纏いつつ、夜闇の中で煌美やかな光を放っている…!!!
マッド
『かかれぇ!!!』
位置が特定される前に、マッドウルフ達が大毅をドーム状に覆い尽くす!
大毅
「能力[スキル]:走力[ランニング]発揮…敵が全方位から攻撃を仕掛けた時は、唯一点に攻撃を収束させて、貫き通す…それだけだッ!!!」
巨大剣[バスターソード]を牙突の状態に構え、走り出す。足の筋肉、筋繊維、骨が、大地を踏み締め、小石を跳ね上げ、大毅は加速。ひたすら加速し、マッドウルフの壁に大きな、捻り斬ったかのような風穴を空けた。
マッド
『怯むな!』
多少の犠牲等、はなから想定済みであるかのように、マッドウルフ達は着地から隙を見せず、速やかに大毅へと迫った。犬科[かれら]の持つ集団行動能力と、連携した狩りは、人類[ひと]の技術[それ]を遥かに上回る。
大毅
「マッドウルフのド真ん中を走り抜ける訳にはいかない…ならば、確実に一匹ずつ仕留めてからだ!」
巨大剣を地面に刺し、先に創作[クラフト]した簡易ナイフを逆手持ちに構える。体を低く、腹を引き締め、丸く構え、嗅覚を研ぎ澄ます。
大毅
(キノコを見つけた時と同じだ…臭いを嗅ぎ分けろ。目には頼るな…暗闇の中での戦いに、…勝て!)
鼻が左と右後ろから迫る、血生臭い異臭[それ]に警告[アラート]を鳴らす。だが、その間も無く次々に鼻が敵に反応、まるで火事の現場に鳴り響く消防車達の如きけたたましさ。
大毅
「其処!」
左足を軸に、反時計回りに回転しつつ逆手持ちのナイフが、夜闇の中に円月の軌道を刹那に遺す。
幾つかの悲鳴と体に掛かる生温かな液体。どしゃりと落ちるマッドウルフだった物。
マッドウルフ
『ぐらぁう!!』
大毅
「おらぁ!」
盾をグローブ代わりとして撲り、体を回してその場を離脱。刺した巨大剣の場所に移動後、地面を割りながら振り抜き、マッドウルフを1匹、また1匹と死骸に変える。
大毅
「いっ…!?」
膝に激痛、マッドウルフの1匹に防具が無い場所に噛み付かれた。爪を食い込ませ、絶対に離さないという覚悟。口から漏れる空気がそれを物語る。
体勢が崩れ、地面に片膝が着きそうになった。だが着いてはいけない。倒れてしまえば、マッドウルフに全身を引き裂かれ、肉塊に成り果てるのみ。
大毅は体を前に倒し、一回の前転を行った。回避…と呼ぶには少しばかり歪なものではあるが。何にせよ、マッドウルフ達に殺られる訳にはいかない。
大毅は、膝に噛み付くマッドウルフの頭蓋を叩き潰して、再度前転する。草食獣特有の危機察知と、人間が持つ直感をフルに発揮し戦った。こんな場所で終わるわけにはいかない、こんな場所で死ぬわけにはいかない、こんな場所で…
唯、それだけで。
マッドウルフの爪が突き刺さり、皮膚が切り裂かれ、鋭い牙に食い込まれた肉が悲鳴をあげる。
血が流れ、傷を狙われ、攻撃が当たってさらに広がる。
それがどうした?
その程度か?
…易い、弛い、あまりにも。
足りない、満ちない、充たされない。
『もっと』
大毅
『もっと…!』
マッドウルフが大毅の『異変』に気付いたのは、彼の呼吸からだった。
今まで散々抵抗[あば]れ、息も荒い。全身に刻んだ傷と出血から、この豚人[オーク]も何れ倒せる。
…倒せる『はず』なのだ。
呼吸が、好物を目の前にして御預けを言い渡された『猟犬』のように、『興奮[うえ]ていた』。
大毅
『もっと…!もっと!
もっと!もっと!もっと!もっと!
もっともっともっともっともっともっともっと、モットモットモットもっとモットモットもっとモットモット、モットモットもっとモットモットモットもっとモットモットモットもっとモットモットもっとモットモット、モットモットモットモット!!!
モットぉおおおおおおおおぉおおおおオアああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
瞬間。
大毅の頭の中で
[5つ]の錠前の内の[1つ]が
『弾け飛んだ』
炎を纏い、大毅が投げていたランドアリゲータの心臓が遂に地面に落ちる。同時に、肉の幾重にも渡って潰れる音が荒野に響く。
それが十数分続いた後…荒野に再び静寂が訪れた。
大毅
「回復[ヒーリング]…」
疲弊しきった声で、彼は体中に出来た傷を静かに癒す。それが終わると、彼は巨大剣を抱えて、速やかに此の場を去る事を決める。
また何時、敵が奇襲して来るか分からない。彼は移動し、何処か別の場所を目指す。何処にも行く宛のない遥かな旅路…。
彼の目には果てしなく続く暗闇と、空に無数の光を放つ星々が映るのみ…。
彼はまだ知らない。この荒野で起きた戦いが、後に彼の運命に大きな影響を与える事を…。