醜い勇者の大冒険 ~転生したのは豚人(オーク)でした~ 作:ガリアムス
レベル8
所持能力[ハイドスキル]:回復[ヒーリング]レベル2/走力[ランニング]/雑食[オールイート]レベル1/解毒[シャートポイズン]レベル1/創作[クラフト]レベル1/創火[フレイムメーカー]レベル1
所持異能[ハイドスペシャル]
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所持武器&防具
巨大剣[バスターソード]/簡易ナイフ/古ぼけた盾
ランドア装備一式[兜/胴/腰/腕/脚]
漆黒の荒野に肌身を切り裂くような、冷たい風が吹き荒ぶ。歩む者の体力を奪い、やがては生きる力も失わせ、最後には静寂の死を与える風。その中を一人、たった一人で歩き続ける者がいた。
彼の名は真杣 大毅。この世界とは別の世界で死に、ウラノスによって豚人[オーク]に転生した青年。神との契約で大魔王討伐と引き換えに、元の世界へと還る事を約束して貰った。
そんな彼は今、冷めに冷めきった風に、体力と体温を奪われ続け、苦しめられていた。
大毅
「寒…寒い…」
震えが止まらない。歯がガチガチ鳴る。雪原地帯の真っ只中に居るかのような極寒の気象に、マッドウルフとの戦いで消耗した体には相応に堪えた。何とかして風だけでも凌げないか…そう考えていた時。
ふと、自分はさっきまで野獣相手に戦っていたのを彼は思い出す。
大毅
「一か八か…賭けるしか、ない…」
自身のステータスを開く。もしレベルアップによる能力値[スキルポイント]が無い場合は本当の詰み。もしそうなれば、死、在るのみだ…。
おそるおそる目を開くと能力値[スキルポイント]を示す場所に数値が刻まれている。そして其れは[0]では無い。まずは最悪の事態を避けられた事に安堵する。
が、しかし。その安堵もステータスに目を通した瞬間、荒野の風よりも恐ろしい極寒が彼を襲う事になる。
大毅
「レベル14…? す、…能力値[スキルポイント]…3600…?」
明らかに『伸び』がおかしい事に気付く。先程までレベルが1上がる毎に[300]しか上がらなかった能力値[スキルポイント]…。
だがしかし、今はその数が倍の[600]に上がっている。
大毅
「………能力[スキル]を取ろう。えっと…気象関連は…有った」
脳内に無数に広がるスキルの光玉達、そして数多に繋がり絡み合う管。光玉にはそれぞれ、其の能力[スキル]に必要となる能力値[スキルポイント]や、取得のための条件が記載されている。
それら下級能力[ロースキル]より更に深層にある光玉…中級能力[ビルフィースキル]は、特定の能力[スキル]を所持しなければいけない、能力[スキル]のレベルが一定以上なければならないといった条件が設けられている物が多く、相応の時間を要して、漸く獲得出来るのだ。
そして中級能力[ビルフィースキル]よりも更に深く、更に奥に眠るとされる上級能力[エクセントスキル]に至っては、条件が厳し過ぎ、まず条件を覚えたとしても其れを手にするには中級能力[ビルフィースキル]よりも研鑽と努力、膨大な年月の果てにやっとの思いで初めて獲得可能と相成る。
ゲームで言うなれば、廃人御用達のエンドコンテンツに他ならない。
大毅
「防寒には創火[フレイムメーカー]が、防熱には創氷[アイスメーカー]を取って、尚且つ…気質[オーラ]が必要なのか。で…その気質[オーラ]が…げ」
獲得条件記載項目を見た大毅は、苦い顔と声を出す。気質[オーラ]に必要な物が、精神[マインド]:レベル3以上と強化[ブースト]レベル5以上、操作[レゴリス]レベル3以上と言う、かなり複雑で面倒な能力[スキル]だったからである。
そもそも、強化[ブースト]の獲得には走力[ランニング]・筋力[マッスル]をどちらもレベル15以上にして初めて開放。
精神[マインド]は治癒[ヒーリング]のレベルMAX、操作[レゴリス]に関しては条件すら出ていない始末に、これはひどいと言わざるをえない。
大毅
「…待てよ?」
が、此処で彼は有ることを閃く。気質[オーラ]から離れ、属性方面の能力[スキル]を確認、そしてある能力[スキル]に着目した。
大毅
「創土[サンドメーカー]…こいつだ」
創土[サンドメーカー]と記載された光玉…あらゆる土属性能力[サンドエレメントスキル]の原点たる其れは、創火[フレイムメーカー]や創氷[アイスメーカー]等と並ぶ属性開眼能力である。
また、土属性[サンドエレメント]は光属性[ライトエレメント]と闇属性[ダークエレメント]の高等属性[ハイエレメント]の精製に、どちらも此の属性の存在が必要不可欠であり、後々自分が其れを手に入れようと考えた時に備えての投資と考えていた。
大毅
「創土[サンドメーカー]が400で…レベル5まで上げるのに1600の能力値[スキルポイント]が必要。其処から土属性能力[サンドエレメントスキル]の壁[ウォール]が700…か。
後の900は取り敢えず保留かな」
光玉が弾け、体に融けて、交じる。所持能力[ハイドスキル]をいつものように確認、自分自身にしっかりと身に付いたかを見るまでは、能力[スキル]を手に入れたとは言えないのだ。
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創土[サンドメーカー]:土属性能力[サンドエレメントスキル]の原点にあたる能力[スキル]であり、土属性魔法[サンドエレメントマジック]等の習得に必須。レベルを上げる事で、より強力な土属性能力[サンドエレメントスキル]や土属性魔法[サンドエレメントマジック]を習得出来る。
壁[ウォール]:土属性能力[サンドエレメントスキル]の1つ。魔力を一定以上消費し、発動者の目の前にその消費魔力と同等の土の壁を形成・出現させる能力[スキル]。レベルを上げる事で、厚さや枚数が増える。但し、自分よりも離れた場所に壁[ウォール]を形成する時や、長さ等を変化させる場合、操作[レゴリス]の能力[スキル]が必要となる。
取得条件:創土[サンドメーカー]レベル5以上
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大毅
「早速試すか、…壁[ウォール]」
掌を目の前に出すと、淡く黄土色の光を放ちながら目の前に一つ、高さ三メートルの巨大正方形の壁が地面から競り出した。
大毅
「おー…あれぇ!?」
横を覗いた時、大毅は驚愕する。競り出した壁はなんと、まな板程度の厚さしかなかったのである。
大毅
「おうふ…そうきたかぁ。でもまぁ問題無いかな、今厚さとかは」
そう言い、彼は最初に作った壁の周りに二つの壁を作ると、離れた場所にもう一枚壁を作り、其れを先の三枚の上に慎重に乗せた。そうして彼は中に入ると、更に壁を作り上げた。
大毅
「完成…大毅特性、簡易土小屋。耐久性は絶望的だが、今の俺には最高の一手。風を凌いで眠れるな。
ふぁあ~…おやすみ…」
ランドアリゲータとマッドウルフの軍勢との連戦で疲れきった彼は、体を冷たい地面に丸めて、軈て寝息を立てて眠ってしまった。
風は未だ冷たく、轟々と吹き荒ぶ。天に浮かぶ無数の星々は、只静かに地に生きる命を見守るだけ…。
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大毅
「スピー…スピー…へぉ…る、…むぅ~…?」
どれだけ時間が経ったか、大毅が静かに目を醒ました。それも突然に。
大毅
「…んん~…?」
地面の微弱な。本当に僅かばかりの『揺れ』を肌身に感じたからである。壁で作った土小屋がガタガタと小刻みに揺れる…まるで地震が来るかのような、そんな前触れに彼は嫌な予感を覚えた。
1枚しかない土壁の即席屋根を持ち上げ外し、四方の内の一枚を蹴り砕いて、外に出た。
日は大体三十度程に昇って、日差しは少し熱い。真っ昼間の其れに比べれば、今くらいが心地良いのだが。
大毅
「何か無いのか…」
彼は再び、能力の獲得へ意識を移す。今回は狙撃系統の能力[スキル]に着目し、一つ良い物を見つけた。
大樹
「視力[スコープ]…必要値は800か。よし、此れで決まりだな」
光玉が弾けて、体に融ける。何度も味わう感覚だが、段々と心地良くなり、仕舞いには中毒にならないか心配した。
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視力[スコープ]…狙撃系能力[ガンズスキル]の1つ。魔力を一定量消費し、近遠距離を見通す能力。狙撃弓[ゲルボウ]との組み合わせが推奨される。
レベルを上げる事で更に遠くを見たり、1点のみに在るものを見たり出来る。
また能力同士の組み合わせで真価を発揮。操作[レゴリス]で動く物体に狙いを固定や、強化[ブースト]で単純な強化、探知[ソナー]で壁越しの敵を見抜いたり出来る。
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大樹
「では早速…視力[スコープ]」
大毅が能力[スキル]発動宣言と共に、彼の視界が双眼鏡でも使用したかのような物に変わる。「うおお…」と驚きの声を吐露しつつも、辺りを見回した時。
大毅
「あ…」
彼から見て10時の方角。砂埃を起てながら、広野を爆走する軍勢を見つけた。それも只の軍勢ではない。
掲げる旗…赤い布地に刻まれた『髑髏と3つ首の龍、そして3つの三又槍』を、彼は知っている。別れた友[ノブナガ]の故郷を滅ぼした…敵。
大樹
『魔王軍…!』
どす黒い、怒りが込み上げてくる…。友の悲しみと深い傷を負わせた敵に、心臓の鼓動が加速し、呼吸が荒ぐ。
だが…
大毅
(落ち着け…今怒りに身を任せて、何になる)
深呼吸を何度も繰り返し、冷静に思考を巡らせる。魔王軍の旗は3本は見えた。つまり敵は100人以上、1000人未満の可能性が高く、また其の魔王軍の一団を指揮する大将、もしく指揮官の戦闘力の高さによって、団全体の強さも大きく変わる。
万が一、大将が化物クラスの強者、さらには戦闘指南者のような立ち位置の者だった場合、単騎突撃はまず確実に大毅の死を意味するのだ。
大毅
「焦るな…チャンスを伺う。そうすれ『サクッ』…ば?」
刹那、自分の頬を切り裂く音。左頬から流れ出す血、そして彼の後ろ…地面に突き刺さっていたのは…『1本の不変の矢』だった。
大毅
「え、何これ…」
矢を引っこ抜こうと手を伸ばした時、彼の体を構成する、あらゆる物が警告を発したのだ。
生半可な物でもなければ、生易しい問題ではない。
『これを放った奴には、どう足掻いても、策を何百と巡らせても、勝つ事は天変地異が起ころうが、『不可能である』と伝えるもの』だった。
大毅
「なんちゅう…気迫だよ…!」
後退りし、尻餅を着く。未だ体験した事の無い恐怖が、彼を震え上がらせる。
だが同士に、恐怖とはまた違う感覚と感情が昇って来るのを、彼はまだ知らない…。
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「外したか」
魔王軍の旗の下、絢爛な黒鋼の鎧纏う馬に乗る者は、小さく、そんな事を呟く。
大男が着るかのような青の巨大な騎士鎧に身を包み、背には矢筒と大量の矢を背負う。左手に握る巨大な其の弓は、弦の長さが2mはあり、グリップに当たる中間以外の場所は刃となっている、他の弓とは次元を逸脱した物…。
兵士
「団長が外すなんて、最早絶好調である以外に有り得ませんね」
団長
「どうだか…私は『異能[スペシャル]』を使って射った筈なのだがな」
異能[スペシャル]の単語に、団員が一人残らず反応。そしてざわつき始める。
団長
「まぁ良い。我々の目的は神聖なる遺跡アグニカへの道を塞ぐ街や、里を滅ぼす事。全ては魔王ゼリエナ様の、高き崇高なる野望の為に」
団員一同
『ジークゼリエナ!!』
魔王軍は着実に、確実に、アグニカへと進行する。
果たしてその目的は?そして遺跡には一体どんな秘密が眠っているのか?
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大毅
「何これ」
矢が飛来してから暫し経ち、再び歩き始めた大毅は途中、ぽつんと立つ奇妙な木製の看板を見つけた。
大毅「ええっと…『←コジュカの里 ↑ダムクル山
→希望のオアシス:ゴルド』…?
道案内だよな、これは」
屈み姿勢で顔を近付け、品定めをするかのように目の前の看板を吟味する。
大毅
(コジュカの里は…チーアの里同様、警備系統の場所だったら先ずダメ。
ダムクル山…そもそも装備がまともに整ってないから、絶対パス。
ゴルド…どう足掻いても金取る気満々だからノー…っと。
どうしたもんかね)
おそらくどの道を進んでも、待っているのは酷い目に逢う未来のみ。だが今更引き返す事は出来ない。
大毅
「進むしかないよな…こんなところで止まる訳にもいかないし」
彼は最後の手段として、近くに落ちていた石を放り投げ、落ちた場所の方角にある場所へと向かう事を決心。早速手頃な大きさの石を手に持って、軽く投げる。
U字の弧を描き、空から地へ落ちた石は、数度地面を転がり、軈て『右斜め』の方向に止まったのであった…。