醜い勇者の大冒険 ~転生したのは豚人(オーク)でした~ 作:ガリアムス
レベル14
所持能力[ハイドスキル]
回復[ヒーリング]レベル2/雑食[オールイート]レベル1/走力[ランニング]レベル1/解毒[シャートポイズン]レベル1/創作[クラフト]レベル1/創火[フレイムメーカー]レベル1/創土[サンドメーカー]レベル5/壁[ウォール]レベル1/視力[スコープ]レベル1
所持異能[ハイドスペシャル]
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時の神ウラヌスが見守る、異世界 ヴォルツ・カーダー。この世界は中央に1つ、東西南北8つの巨大な大陸と、数多の島々、そして広大な海と空が広がっている。
そんな世界の東南方面に位置するのが、岩石と大地が広がり、人間と獣が住まうとされるヘレリート大陸。
そのヘレリート大陸の中…荒野の1つを歩く大毅は、途中で見つけた木製看板の指し示した方角へと歩いた果てに、ある場所に辿り着く。
大毅
「何じゃこりゃ…」
希望のオアシス:ゴルドと呼ばれる街。
入口は高さ15メートルは下らない巨大な門[ゲート]と横に広がる30メートルの城壁が、万里の長城の如く横に伸びる。空を見上げればスポットライトが空を照らし、幾つもの飛行船が出入りしている。
この時点でゴルドという街は、国に匹敵するだけの力を持っているのでは?と考えさせるには十分だった。
大毅
「何か…とんでもない場所に来ちゃったみたいだな」
固唾を飲み意を決して、希望のオアシス:ゴルドへと飛び込む。エ○動画サイトに飛び込む前の18歳になった男の子の気持ちってこんな感じなのかと考えていたのだが、目の前に飛び込んだ風景の数々に、そんな些細な事は台風に吹き飛ばされる藁屋のように破壊された。
まるで南国のリゾート地帯の様に椰子の木が羅列し、道行く人々の纏う装飾品の派手さに、大毅は目を丸くした。何より驚いたのは、椰子の木の横にある噴水…マーライオンのような芸術的石像と其の口から流れ出る水が、事と有ろうか『黄金』だったのである。
石像だけではない。目を凝らすと地面のタイルも、椰子の木と椰子の実さえも、全てが『黄金』…見渡す限りの黄金に埋め尽くされ、煌美やかに美しい光をばら蒔き、ゴルドという世界を照らす。
大毅
「どっひゃあ~…」
開いた口が塞がらない。それもそうだ。彼が居た前世の世界でさえ、大量に金塊を持つ人間等そうそう居なかった…此所を作り上げた奴は、一体何れ程の権力者なのかと興味が沸く。
???
「おーい、其所の豚の兄ちゃんやぁ~」
大毅
「ん?俺?」
自分が呼ばれたのだが、声の主が見当たらない。気のせいか?と首を傾げた時、足に激痛が走る。
大毅
「いっでぇ!?」
???
「儂じゃよ、わーし」
視線を下に向けた時、声の主は其処に立っていた。
丸みを帯びた鼻。口の周りに立派な白髭を生やし、巨大なバックパックの役割でも担うかのようなリュック。肌は焦げ茶色く、眼は青みがかったエメラルドの翠に、其の四肢はまるで長年を費やし鍛えられた、鋼の如し。
もっとも、その身長は大毅の4分の1程しかない小柄なものだった。
大毅
「…おっさん、もしかして小人族[ドワーフ]だったりする?」
???
「ん?そうだが?」
やっぱりだ。異世界にいる小柄な人間達といえば、小人族[ドワーフ]以外に考えられない。
小人族[ドワーフ]と言えば、鍛治屋や建築家等と言った職業では大体超一流であると相場が決まっている。味方に引き込めれば、討伐で手に入れた魔物や鋼木材を素材に強力無比な武器や防具に繕ってくれる。
彼等が居るか否かで、パーティーの価値には大きな差が生まれるのだ。
???
「んでぇ~…豚の兄ちゃんは何で、此処に来たんかなぁ…ヒック」
大毅
「あ、えっと…」
酒臭い息を吐露しながら聞く小人族[ドワーフ]に、ブラブラと来たなんて言えば、からかわれる可能性を感じた彼は、こう答えた。
大毅
「自分の…『人生』を賭けに…?」
彼の答えに小人族[ドワーフ]は目を丸くしたが、やがて小さな体に似合わぬ巨大な声で高笑う。
レックス
「ガッハッハッハ!兄ちゃん、中々弾けてるじゃねーか!!気に入った!儂はレックス・ダ・ゴンド、この街は少し噛った程度だが案内してやれるぞ!着いて来い!!」
こうして大毅は小人族[ドワーフ]のレックスの案内で、希望のオアシス:ゴルドを歩く事となった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
レックスと共に歩く大毅は一際広い道路に差し掛かる。そんな道を行く人々が纏う豪華な装飾品の数々に、彼は思わず目移りしてしまう。
そして皆、活気と生気に満ち溢れている。
レックス
「まずはメインストリート、通称『億万長者への始まり[ザ・ビリオネア・ロード]』。左右に所狭しと並ぶ店だが、実はこれの殆どが『酒場兼賭博場』なんだとよ」
大毅
「賭博場!?マジでか!!?」
レックス
「まぁ換金所も在るにゃ在るが、大体がそれだな。ゴルドはヘレリート大陸随一の賭博都市で有名、しかも世界に名が轟く程さ。
こーんな街を作り上げるヤローはさぞかし金持ちなんだろうぜぇ」
レックスの言葉に大毅は改めて、視力[スコープ]で1つの店の中を窓を通して凝視する。騒ぎ立つ博徒達、そのテーブルには酒と食べ物、そして積み重なった銀貨や銅貨が見え、数は十数枚は下らない。
レックス
「此処は毎日湯水の如く金が消費され、さらには動く。デカイ賭事があった日にゃ、『金貨が1万は容易く』動く事すら当たり前だ」
大毅
「いちっ…!?しかも金貨!?」
レックス
「おうよ、まさに弾けてるだろう?」
街に来た連中の金銭感覚のブッ飛び加減に、大毅の頭はくらくらする。
レックス
「で、このストリートを抜けてからが、とんでもなく弾けた場所が在るのさ」
彼に連れられ、黄金の道を歩いて行くと、メインストリートよりも更に開けた場所に出た。其処には4つの黄金のコロシアムが鎮座し、その中央には天空さえも貫き、宇宙にも届くかも分からない巨大な塔が立っている。
大毅
「なんじゃこりゃ…!?」
レックス
「此処こそが、希望のオアシス:ゴルドのメインテーマパーク。名を『運試しの遊園地[グッドラック・トリロジー]』さ!!!
レーシング・カジノ・コロセウム・クッキングの4種からなる賭博場。賭ける金額も、メインストリートの比じゃねぇ…勝てば天国、億万長者!負ければ地獄の、借金火達磨!
まさに己の命と運を天秤に賭ける場所だ!弾けてるだろぅ!?」
弾けてると言うよりも…彼には『狂っている』としか思えない。
しかし、ギャンブルは『狂ってこそ』真に面白くなる。それも自身の大切な物を賭けていれば尚更だ。
大毅
「どうするか…なぁ、おっさん。俺みたいなギャンブル初心者で無一文の奴が最初に向かうとしたら、何処に行けば良い?」
レックス
「断然コロセウムだろう、兄ちゃん冒険者みたいだしよぉ。彼処なら良い経験値稼ぎとレベルアップにゃうってつけだぜ」
人混みの流れる方向に沿って、レックスと共に歩いて行くと、剣と盾、そして骸骨が飾られたコロセウムのエントランスに向かい合う。其の中から響くのは、観客達の興奮と絶叫の声と、噎せ返るような生臭い血と汗の臭い。
大毅
「うぇ…キツい…」
レックス
「まぁ当然の反応だな。此処の戦い、主催者がある程度、剣闘士に見合った相手を用意してはくれるが、挑戦者がひでぇ有り様になる事が多いのさ」
大毅
「ちょっと待って。…挑戦者『が』酷い目に合うのか!?」
彼の問い掛けに、応よと答えるレックス。
レックス
「だがまぁ聞くよりゃ、実際にソイツを見た方が早いだろ。取り敢えず受付に行って、剣闘士登録してみな」
危険な匂いしかない。しかし、この異世界で生きる以上、金が無くては飯も、衣服も、武器も買えない。
そして魔王討伐も出来はしない。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
コロセウム内は盛り上がっていた。
見渡す限りの筋骨隆々で屈強な人間[ヒューマン]や獣人[ビーステン]の選手達が、素振りや武器の調整、鎧の着脱に勤しみ、其の眼は闘志に満ち溢れている。
が、それとは別の視線を彼は感じ取る。
大毅
「マッスルピックの会場か何かかな…(何だろう?…違和感が…?)」
レックス
「どした?」
大毅
「いや、何でもないよ。大丈夫、それより受付は」
彼処だぜとレックスの指差す方向に、『剣闘士登録受付』と大きく書かれた看板が見える。人混みの中で自身の巨体を上手い事操り、何とか抜けて、受付前に立つ。
???
「新しい剣闘士さんですか?」
優しい声がし視線を落とすと、自分より50㎝程の女の子が立っていた。青いメイド服を着こなし、白い肌と髪、第一印象で彼女現せという問題があったのならば、まず間違いなく兎と、彼は答えるだろう。
大毅
「はい。剣闘士の登録に」
女の子
「了解しました。では『ギルドカード』を御持ちですか?」
大毅
「ギルドカー…ん?」
聞き慣れない単語。大毅の思考と手が完全に止まる。
女の子
「どうなさいました?」
大毅
「あのぉぅ…『ギルドカード』って…何ですか?」
刹那、空間が絶対零度の氷結魔法を食らったように凍り付く。全員がポカンといった具合に唖然としているからだ。
レックス
「おうおう、兄ちゃんや。冗談キツくないか?…マジで持ってないんか?」
驚愕といった具合でワナワナと聞くレックスに、ただ軽く、大毅は首を縦に振った。
レックス
「かぁあ~!!!こいつは弾けてやがるぜ!おう、嬢ちゃんや!こいつのギルドカード制作を頼めねぇか?代金は俺が持つぞ」
大毅
「良いんですか?」
レックス
「あたぼうよ、困った時ゃ御互い様って言うじゃねぇか。良いってこった」
3倍の差はある受付をジャンプで御手付き、上半身を乗っけながら指で円を作るレックス。小人族[ドワーフ]は小柄にも関わらず、皆身体能力は高い傾向にある。だが、彼等の真の強さは心。
小さく、そして何よりも一人で出来る事の限界を痛い程知っている彼等は、困っている人々を助け、また助けられる事を深く理解している種族。故に大毅のような、どうすれば良いか分からない豚人にさえ、何の躊躇も無く助け船を出す。協力も惜しまない。
其の逆もまた然り。自分一人では解決出来ない困難な事は、例え他種族に嗤われようが、プライドすら投げ棄てて真摯な姿勢で頼ってくる。
卓越した建築技術と、強靭な肉体、そして広く健やかな心を持つ逞しい生き方をする種族なのだと、大毅は改めて知る事が出来たのだ。
大毅
「ありがとうございます」
レックス
「はっはっは!素直な奴は嫌いじゃないぜ!」
女の子
「ギルドカードの制作方法の御説明をさせていただきます。
まず、此方に御名前と『血液』を提供して貰います」
大毅
「血液ですか?」
レックス
「ギルドカードは持ち主の血を使って作る事で、他人に利用された時に犯人の居場所を突き止めたり、色んな施設を利用する時に行われる厳格な身分証明になるんだ。
何よりもギルドに属していれば、デメリットよりもメリットの方が沢山付いてくる。フリーの旅人は別としてな?そうだよな、嬢ちゃん」
はいと答えた少女。成程と納得し、手渡された何の変哲もない紙に自分の名前を書き込みつつ、親指の皮膚を噛み千切って血を滴り落とす。が、血液が白を赤に塗り潰して行くのを見ていた彼女の顔がみるみる内に青ざめていた事を、大毅は見逃さなかった。
女の子
「すいません!リーダーに変わります!」
慌てふためいて、紙を持って奥へと逃げるように隠れた彼女。突然の出来事に何事かと、周りがざわめき始める。
コレヤバいタイプのヤツだと、彼が気付いた時は既に手遅れ。逃げようにも周りの剣闘士が寄ってきてしまい、退路も四方八方塞がれた。
???
「シェーンが青ざめて私に頼って来たみたいだが。君か?」
入れ替わる形で顔を出したのは、170㎝程のSPIに所属していそうな雰囲気を纏う女性だった。髪は黒に緑を混ぜたようなセミロング。上下共に黒服で、スラリとしたボディラインに強調され、たわわに実った胸は開いた白シャツの間から谷間を此方に向けてくる。
大毅
「はい、俺です」
テレスティー
「そうか。私は当コロセウム受付係のリーダー、テレスティー・ラーシャハウムと言う者だ。真杣 大毅(まそま だいき)…振り仮名まで付けるとは、随分律儀な豚人[オーク]が居たものだな」
胸の下で腕を組むと、豊満な胸はたゆんと揺れ、谷間が迫って来る。それを見たレックスが、グヘヘとだらけた顔をしていたが、彼は此れを見なかったようにスルー。
テレスティー
「早速で悪いが、大毅…。
君をコロセウムに参戦させる事は出来ない」
まさかの言葉。大毅の頭に?マークばかりが浮かぶ。問おうとした時、口を開いたのはレックスだった。
レックス
「おうおう、姐ちゃんよお。豚の兄ちゃんがコロセウムに参加出来ねぇってのは、一体全体どうゆうこったい?個人的ってなら、ソイツは幾ら何でも見逃せねぇぞ」
テレスティー
「…『個人的な問題』では済まないからだ」
溜息を付いた後、彼女が大毅に渡したのは3×5㎝程の長方形の小さなカード。
おそらくコレが、ギルドカードなるものだろう。
テレスティー
「大毅…君は世界的に稀有[レア]。其れもかなりの特別な豚人[オーク]。其れを失うわけには、『我々』もいかないのだよ」
手渡されたギルドカードには、正方形の銀色のタイルが貼り付けてあり、其所に親指を置くと、自身の種族に、所持能力[ハイドスキル]や所持異能[ハイドスペシャル]がぼんやりと浮かび上がってくる。
が、このタイミングで其れをやってしまった事の重大性に大毅は「あ」と思わず声を出してしまう。
剣闘士
「所持異能[ハイドスペシャル]が5つ…!?」
剣闘士
「善豚人[リフェルオーク]…生きてたのか!?」
ざわめきはパンデミックの如く拡散。この状況、テレスティーは「絶対にこうなる」と確信した上で彼にギルドカードを見せた。
テレスティー
『黙ろうか?』
殺意を込めた、たった一言の「黙ろうか?」は、今此の場に居た剣闘士全員を沈黙させてしまった。
この瞬間に彼女の実力ならば、今此の場に居る剣闘士全員を間違いなく殺せると確信する。
テレスティー
「さて、大毅。そして其処の小人族[ドワーフ]。裏方に案内する。着いて来い」
逆らったら一瞬で殺される。そう確信した二人は只一言、同時に「はい」とだけしか答えられなかった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
ノブナガ
「が…くっ!!!」
???
「チーアの里の生き残り…成程、野狼共はしくじったらしいな」
とある一つの荒野…其処は魔王軍の将らしき者と、大毅と別れ、魔王軍への復讐の為に動くノブナガとの戦場になっていた。
だが、現状で勝っていたのはノブナガではなく、将の方。
黒の巨馬に載る其の者は、片膝を着き、ボロボロになった一人の少女を静かに、そして退屈したような雰囲気で見下ろしている。
ノブナガ
「やあああああ!!!」
???
「復讐とか、仇討ちとか、そうゆうのはただただ面倒なんだ。俺からすれば。
だから…」
刹那、ノブナガの胴部の鎧が三つのクレーターを作り、彼女の体が宙を舞って地面に叩き付けられる…!奴は武器も何も持っていない。なのにノブナガが吹き飛ばされたのだ…!
ノブナガ
「あがっ…!?
(私は…何をされた…!?こんな筈じゃ…こんなに…差が有るなんて…聞いて、ない…!)」
???
「とっとと、死…ん?何だよ…」
止めを刺そうとした時、部下の一人が何かを伝えている。聞き届けた後、ぶて腐れた態度を取るも部下に指示を出しながら、意識が遠退いてゆくノブナガに対して、こんなことを呟いた。
???
「お前は『原神獣[グレイブゴッドビースト]』復活の為の『生け贄』…だそうだ」