肉体の裡側からの衝動である。抵抗は無意味だった。
「ああ……」
アイリスフィールは、その白く滑らかな頬を苦悶に引き攣らせながらも、少しずつ、少しずつ、自分の肌を曝してゆく。長い銀髪を振り乱し、彼女がのた打ち回っているのは、薄暗い地下の大空間。不衛生な下水施設の床の上である。
「ん……あ……だ、め……」
古いコンクリートの床板に描かれた魔法陣が、赤く禍々しい光を放っている。彼女はその上で仰向けになり、着衣を脱ぎ捨てていった。まず黒いリボンを解き赤い上着を、次に白いスカートを、今はブラウスのボタンを1つずつ、外していた。
理由は、彼女のすぐ脇に立つ男から命じられたからだ。「脱げ。着ている物を全て、2分以内だ」と。
その、聖堂教会の神父が着る黒服を身に纏った男は、足元に転げ回るアイリスフィールを、ただ見下ろしている。小気味良さげに、薄い笑みを浮かべて。
「嫌ぁ……あ……ん……」
悩ましくも熱い息を吐き出し、強く身を捩ってなんとか堪えようとする。だが、裡なる衝動は彼女を突き動かし続けた。
脱ぎたくて脱いでいるわけでなければ、見せたくて見せているわけでもない。それどころか、男は、彼女と夫にとっての最大の敵であった。彼女はつい先刻、この男を侮蔑し、自分の夫・衛宮切嗣の優秀さを誇ったばかりである。
だが、それでも押しとどめることは出来ない。脱ぎたい、この男の目前で、可能な限りの素肌を曝したいという彼女自身の衝動を。
アイリスフィールは人間ではない。人をかたどる肉を持った人形――ホムンクルスだった。彼女の精神的な機能に魔術的な細工を施すのは、普通の人間に対するより簡単であると言えなくもない。彼女は気絶させられていた間に、どうやら致命的な弱点を植えつけられてしまったようだった。すなわち、この邪悪なる神父、言峰綺礼の命令に逆らうことができないという特性を付加されてしまっていた。
「く……あ……」
手間取りながらブラウスを脱ぎ、その下に着ていたシルク地のインナーも脱ぎ終えた。純白のブラジャーが露になった。同じく純白のショーツはまだ黒いストッキングに守られている。制限時間は2分で、もう時間が無い。急がなくては。
逆らわなければ、と思うそばから無意識に従ってしまっている。辱めの為の命令に。
「……あ! なぜ……嫌……見られ……るっ……!」
我に返ると、猛烈な羞恥と屈辱感が襲ってきた。少しでも気が緩むと、心が衝動に支配されてしまうのだ。衝動に駆られ、正気に戻る――先ほどからずっとその繰り返しだ。
心の中の、人間で言えば本能と呼ばれる部位を弄られている。アイリスフィールの理性がいくら拒絶しても、意識のもっと深いところで隷従したいという欲求が生じており、それが気持ちを、意志を歪めてしまう。
彼女の造り物の魂は、完全に囚われてしまっていた。いや、じわじわと侵食されてゆく。牢獄というより、底なし沼に沈んでゆく感覚。
「ああ……!」
夫、衛宮切嗣の愛するアイリスフィールが、切嗣にとって最大の脅威、言峰綺礼の望むアイリスフィールに変わってゆく。
下着は、脱ぎたくない。そう思って夢中になっているうちに、太腿まである長いブーツも、黒いストッキングもいつの間にか脱いでしまっている自分がいる。あとは、ブラとショーツのみ。アイリスフィールは先に、ブラジャーに手をかけた。
「ほう」
「…………!」
ホックを外し、両乳房がこぼれ出た瞬間、男の感嘆の声が降ってきた。
「さすが、錬金術の大家、アインツベルンがあの衛宮切嗣を誘惑するために用意しただけはある。ふふふ……これでは一溜まりもあるまい」
「やめて……はあはあはあ……やめ……させて……」
綺礼と視線が合わないように目を伏せながら、アイリスフィールはついに懇願した。身体の火照りが酷い。熱い――高揚している。
命令の撤回はなかった。無防備に寝転がり、雪のような透き通る柔肌を紅潮させ、理不尽な仕打ちへの怒りと屈辱の予感に興奮しつつ着衣を脱ぎ続ける女の姿を見下ろす男は、冷静かつ無言である。間を空けず、さらに人造の女の心を絶望で切り裂く。
「あと1枚か。どうした、2分経過まであと20秒だぞ。それとも、私の命令に従いたい欲求を、見事凌ぎきってみせるのか?」
綺礼の揶揄に、アイリスフィールは歯軋りした。ただでさえ、すでに双乳を曝してしまっているのに、ショーツまで脱ぎたくない。だが、それでも彼女の両手は、最後の1枚の縁に掛かって離れようとしなかった。全身に汗が滲み、両腕がぶるぶると震える。ぎりぎりで堪えている。どうなるものでもなかったが、我慢し続けるくらいしか抵抗する術が無い。
「あと10秒、9、8、7――」
「あ! や……はあ、はあ……ん……ふ……ん……!」
神父らしい耳に心地良い声で、唐突にはじまる、いやらしいカウントダウン。アイリスフィールの昂ぶりが、急激に増してゆく。
「4、3、2――」
「や……あはぁ……!」
心の中で破裂しそうな焦燥感を押さえ込み、捻じ伏せ、彼女は衛宮切嗣のもののままであろうとした。夫への愛情と尊敬の念が本物であれば、出来る。出来なければならない。アイリスフィールが「自分は人間の女性である」と自覚し、生きるために必要不可欠な、そしてその認識の根幹を成している想いだ。もし切嗣を、妻として裏切ることになったら、彼女はもはや元の生きた人形に戻るしかない。
「1……ゼロ」
「ああん!」
カウントが終わった。
締めつけていた緊張が、解けてゆく。衝動が消えた。まだショーツを脱いだわけではないのに。
「はあ、はあ、はあ……堪え、た……わ……」
アイリスフィールは安堵した。そうだ、自分が夫を裏切るわけがない。私とあの人との絆は、本物――
乱れた呼吸を整えるため、彼女は大きく息を吐いた。
「言峰綺礼、私に、これ以上おかしな真似を――!?」
片手で胸を隠しながら身体を起こしかけ、愕然とした。自分が、ショーツを穿いていないことに気づいたからだ。
「そんな……」
周囲に目を走らせ、アイリスフィールはすぐに、消えた下着の所在を知った。彼女自身が握り締めていたのだ。引き千切れた白く、上品な意匠が凝らされた薄布を。
それを投げ捨てると、アイリスフィールは両腕で胸をかばい、股間も片膝を立てて隠しながら、そばで立ち尽くす男を見上げた。
畏怖を篭めた目で。
「2分丁度か」
時計を見ながら勝ち誇れたのは、綺礼のほうであった。
彼女は今、衰弱しきっている。こうやって身体を起こしていることすら辛いほどだ。いかに薄い布地であろうと、彼女自身に引き千切る力など残っていないはずであった。それなのに――
「隠すな、女。お前の肌を、特に隠したい部分を手足で隠すことは許さぬ」
やけに細かすぎる指示に、呆然とするアイリスフィールの身体が、勝手に反応した。両手を床につき、太腿も床に下ろす。乳房や性器を、綺礼の視線に曝してしまう。
「…………!」
慌てて隠そうとするが、駄目だ。手足が動かない。腰を落とし、ニヤつきながら顔を近づけてくるこの卑劣漢の目がある限り、胸も股間も手で覆うことは出来ないのだ。
「ふ……それにしても、1秒も我が命令に抗しきれぬとは。衛宮切嗣も躾が甘い」
「言峰……綺礼……!」
恥部だけではない。銀色の細くまっすぐな長髪も、陶器のような艶やか素肌も、紅玉のように赤い瞳も――今や、アイリスフィールの全てがこの男の支配下にある。再び昂奮が全身を熱くさせてきた。堪えようもない。一糸纏わぬ姿を憎い男の目に曝し、隠すこともままならないとあっては。
「そう恥ずかしがる必要もあるまい。男の目を愉しませ、悦ばせる――お前の身体はその用途において完璧な造詣が施されてある」
彼女の全身を舐めるように見回しながら、綺礼はまだ触れようとはしない。それが、余計に危機感を募らせる。
「ふざけ……ないで……私、を……そのように扱ってよいのは、断じ…て……」
たしかに、アイリスフィールはホムンクルス――魔術によって造られた女だ。自分が、男の目に魅力的に映ることも知っていた。しかし、愉しんでよいのは、悦ばせたいのは、今、彼女の精神を拘束している男ではない。おそらくは今、必死で自分を捜し回っているであろう人……
「断じて、お前などでは――はぅん!」
甲高い声をあげ、アイリスフィールは仰け反った。その身体を、綺礼が受け止める。耳許に口づけされたのだ。綺礼は脱力した彼女を床に寝かせなおし、そして、その上に馬乗りになった。
「勘違いするな。私はお前で愉しもうとは思わぬ。お前を……愉しませてやりたいだけだ」
「……何を、馬鹿な」
剝き出しの女性器の上に、綺礼は腰を下ろした。ズボン越しに、性器に性器を押し付けている格好だ。危険が直前に迫っている。アイリスフィールは身を慄かせた。細くくびれた腰から脇腹を擦り上げられる。だが、彼女に止めさせる力はなかった。心を蝕まれるだけではなく、いよいよ肉体も蹂躙されるというのに、身動きひとつ出来はしない。
「思った以上に良い手触りだ。ふふふ、これからのお前は、人として生きる必要はない。私がお前の裡から、女の、いや、牝の悦びを引き出してやる。お前はただそれを受け入れ、その愉悦に浸るだけでいい」
「愉悦……」
綺礼の手は、両乳房に迫っていた。アイリスフィールは、柔らかな乳肉を揉みしだかれる痛みを予感し、頬を強張らせた。しかし、男の手は乳房の縁を迂回し、腋の下へと入り込んだ。
「ああ……触……ら…ないで」
拒絶するアイリスフィールの声は上擦っていた。
「しかし、張りといい艶といい……見事なものだ。胸全体の形もそうだが、この乳首の色と大きさ……まあ、造られたのだから当然といえば当然か」
乳房についての、無遠慮で卑猥な批評――だが、隠そうとしても手が動いてくれない。
「と、言っても、ここまでの良作はそう多くなかろう。おい、アインツベルンには、お前ほどのホムンクルスはどのくらいいる」
「…………」
「ん? お前が突出して良い出来というだけなのだろう」
何と答えてよいかも分からず、アイリスフィールはただ顔を真っ赤にするだけだ。
「どうなのだ?」
「……ああん! あーーっ、はぁんっ!」
綺礼は、まだ乳房に触れようとしない。だが腋の下は2つの親指で、微弱な力ながら指圧されている。そのもどかしさにアイリスフィールは身体を跳ねさせた。
「そう焦るな。ここまで身体が衰弱していると、気功を用いるのは逆効果か。だが安心しろ。この、治癒力を高める魔法陣の上で、たっぷりと時間を掛けて嬲り抜いてやる」
無残な宣告であった。そして綺礼は、上着を脱ぎはじめた。
「あぁ……嫌……はあ、はあ……助け……て……」
「ふん、思いの外、嬉しそうな顔だな。そう、期待はするな」
言いながら、綺礼はアイリスフィールの左乳房を2本の指で絞りはじめた。手馴れた愛撫……ゆっくりと、根元から……同時に、股を開かされ、女性器を貫かれた。
「ん…………はぁ…んあああああああああああっ!」
忌々しい男の忌々しい肉棒によって、夫のものであるはずの子宮が穢されてゆく。彼女の慟哭に呼応するかのように、魔法陣の赤い光がぎらぎらと輝きを増していった。
綺礼はまだ、ズボンを脱ぎ終えていなかった。脱ぎ終えるまで堪えきれず、美肉を挿し貫いたのである。
地下下水施設の汚れた床の上で、男女の汚れた秘め事は続いていた。
「ん……んん……っ……くは……ぁふ……」
女の甘い喘ぎが静かに響き渡る。
赤い輝きの中、綺礼はアイリスフィールの口を貪り、男性器により彼女の肉壺に淫虐を加え続けていた。前触れもなく、綺礼の腰の動きが速まってゆく。
「んは……ふ……ぅん……ん……ん、ん、ん! ん! ん! ん! ん……ん……うはぁ……はあ、はあ、はあ……」
この一方的な性の搾取がはじまってから、すでに3度目の射精であった。熱い牡液が膣内へ注入されだすと、やっとアイリスフィールは唇を解放された。
「はあ、はあ、は…………ぁ…………」
性交を終える度、アイリスフィールの目は死んだように曇る。
「…………ぷぁっ……はあ! はあ! はあ!」
しかし、しばらくするとまたその顔には生気が戻っていった。肉体を治癒し、体力を回復させる魔法陣の効用であった。
「何度犯しても犯し足らぬぞ、アイリ。さすがは、衛宮切嗣の……妻!」
「ふあ……ん! あん! ああーーっん!」
いやらしく淫猥な感想を述べ立てながら、綺礼はアイリスフィールの右乳首を捻り上げていった。先ほどまでは、硬く痼ったそれを軽く擦る程度だった。そこに突然、強烈な刺激が加わり、彼女を激しく乱れさせた。
容赦なく凌辱しながら、すでに綺礼は様々なことを彼女から聞き出していた。彼女と切嗣との関係、お互いの呼び名、夫婦の行為の時に切嗣がどういった愛し方をしてくるかなど、2人だけの秘密にしておきたいことを逐一問いただした。アイリスフィールは拒むことも出来ず、そのあまりに無礼な質問を全て正直に、詳細に答えるしかなかった。
「あ、ああ! あ! ん……ん……っ……ふ……んっ!」
再び唇を奪われる。綺礼は無遠慮に舌を突っ込んできて、無用心に彼女の舌を絡め取る。乳首への責めは和らげながらも、舌を舌でしごき、強く吸いつける。気功を用い、銃弾をも素手で跳ね返す男だ。身体が衰弱していなかったとしても、噛み切るどころか、歯を立てることすら出来なかっただろう。そして、2人の性器が、また交接した。4度目の性交が始まったのだ。
魔法陣の効果は、綺礼にも有効だった。この男が飽きるまで、アイリスフィールは凌辱され続ける運命にある。
女を満足させるのに、充分な太さと、硬さ。孕ますつもりに違いなかった。
毒々しい赤い輝きに染まる背筋から尻に、男の手が移動した。
「ん! ん! ん……ぷは……はあ、はぁ…ん、ああ、あ……」
声が聞きたくなったのか、口腔への蹂躙が途絶えた。
「じきにお前は、何も考えられなくなる。ただ、淫楽に耽ることに夢中なだけの牝獣になりさがる」
耳許で囁き、彼女の絶望を誘う。そんな綺礼をアイリスフィールは見つめた。何かをねだる子供のような目で、邪悪な神父を見つめ続けた。
「ん、何か訊きたいことがあるのか? 言ってみろ」
そんな彼女の意図を、綺礼は的確に見抜いた。
「……私を、はあ、はあ……私に、子供を産ませるつもり? でも、私が死ななければ、聖杯は現界しない。聖杯戦争は永久に終わらないわ」
「終わらせなければよいではないか」
アイリスフィールの妥当な問いかけに、綺礼は不可解な即答を返した。
「……え?」
「私の目的は聖杯ではない。この闘争を愉しむことにある、ということだ」
「…………あん! あ! あ! あ! あ!」
あまりに予想外の答えに、アイリスフィールが絶句していると、綺礼は早くも激しく突きこんできた。
「あ! ああん! あん! は……ああ! ああ! ああ!」
「お前も、愉しむがいい。この終わりなき争いを」
まだ、果てない、イかない。綺礼はいつまでも激しく、彼女の膣を擦りあげ続ける。
だから、強く絡みつき、締めつけるしかなかった。溢れるほどに潤わせ、滑りを良くして擦り易くするしかなかった。
言峰綺礼の肉棒に、熱く痺れる、至高の悦楽を味あわせる為に。
「あ! あ……あ……う……は……」
アイリスフィールは確信した。やはりこの男、自分を孕ませるつもりだ。そして、彼女の腹が大きくなったとき、その画像なり動画なりを切嗣に送りつけようとしているのだ。
この男は、そういう人間。他人の絶望で愉悦を得る、最低な輩。
アイリスフィールは思った。今の自分であれば、きっとこの男が何を考えていても、手に取るようにそれを把握できる。そんな気がした。
「あ! そ、そこ……そこは……!」
つるりと丸みを帯びた彼女の尻に、添えられていただけだった綺礼の指先が、肛門の表面を撫で回しはじめたのだ。その優しげな嬲りように、アイリスフィールは戦慄を禁じえなかった。
この男、そうやって最初はわざと弱い刺激で責め、いきなり強烈な性感を生じさせて悶えさせ、女を淫欲に囚われさせる業に長けている。本気で、彼女を色欲魔に堕とそうとしているのだ。
「嫌ぁ……気持ち…良く……させる……ん」
不思議だった。なぜか、夫・切嗣より、この男のほうが、腹の裡がよく読める。綺礼のほうも、アイリスフィールの気持ちが分かるらしい……切嗣より。人ならぬ女と、人外の魂を持つ男、案外似たもの同士、共感できる部分があるのかもしれない。
身体の相性がいいというヤツだ。
「嫌ん……ふふ……ああん」
そこで、また「は!?」となった。染め替えられそうになっているのだ。心を、真っ黒に。こいつの言う牝の悦びを刻み込まれ、それだけを愉悦として求め続ける自分に変えられかかっている。
「ああ! やめ、て。もうやめてぇ! お願い、これ以上……苦しい……ああ……ああ! あん! あ……あ! あ! あ!」
ほどなくして、綺礼は4度目の絶頂を迎えた。限界に達し、アイリスフィールの中にまた、精液をぶち撒ける。
「ああ……はあ、はあ、はあ、はあ、はあ」
駄目だ……気持ち良くなってきた。淫欲――性衝動を抱くことはあっても、それをこれほどまでに快感と捉えたことはなかった。今までの彼女にとって、抑えられない性欲と愉しいことは別種の事象であった。だが、この男、言峰綺礼による冷酷な凌辱は、アイリスフィールの中で淫欲と愉悦とを1つの感情として融合させてゆく。
男の悪意を受け入れるだけで気持ち良くなる女にされてしまう――切嗣は、ここまでしてはくれなかった。
「んはあっ! あ、ああん! あーーーーっ! あん!」
乳肉が揉み搾られ、同時に肛門に指先が当たりだした。魔法陣により体力が回復した途端、再び責め苦が開始される。
アイリスフィールの甘美を含有する悲鳴が、地下空間いっぱいに響き渡った。
「いくら叫んだところで、愛する切嗣は助けに来ぬぞ、アイリ」
彼女を侮蔑する声は、やはり神父という職業に見合う心地よい音色を伴っていた。
助けに来ないことは分かっている。おそらく、孕まされることなることも。彼女の人造の肉体がその事態に備えはじめているのを、たしかな事実として感じていた。だから問題は、もはやそこではない。今、彼女が考えるべきは、この凌辱者に、彼女自身を捨てさせない方策である。
この人の子を身篭ったまま、切嗣のもとには帰れない。帰りたくない。だったら、然るべき責任を取らせる必要がある。彼女と、彼女との子供に対する責任を。
憎むべき、言峰綺礼に対して。
「…………抓る!」
思わず、アイリスフィールは声に出した。予感があったのだ。綺礼が彼女の乳首を抓ったのは、それと同時だった。
それから約1年が経ち――アイリスフィールの姿は、言峰綺礼が神父を勤める冬木市聖堂教会の一室にあった。石床の上に魔法陣が描かれており、その上で飽くこともなく交接に耽っている。
「あ! ん! あ! あ! あ! ああ……!」
毎晩のように犯され続けている彼女の下腹は、すでに大きく膨らんでいた。
妊娠させてなお、綺礼の凌辱は変わらず続く。
「あ! あ! あ!」
すでにアイリスフィールの精神は大きく変質している。夫であるはずの切嗣に対する罪悪感や信頼・尊敬の念は霧散し、ひたすら綺礼の旺盛な性欲を満たすだけの奴隷に成り果ててしまっている。
その夜も、綺礼は容赦なく、アイリスフィールの身体を奪った。身重である女に対する気遣いなど皆無だった。
しかし、それでこそ言峰綺礼である。彼女はその残忍さに、頼もしささえ感じるようになっていた。
「どうだ、アイリ。そろそろ衛宮切嗣、お前の夫が恋しくなったのではないか?」
「…………」
返答に困る問い掛け。彼女が無言のまま銀色の前髪を掻き揚げると、綺礼はその形良い両乳を強く揉みしだいた。
「!……はぅん」
「腰が遅くなっているぞ」
言われて、アイリスフィールは腰の動きを速めた。昨今では、彼女が上であることが多かった。もちろん、孕んだ女がすることではない。
「で、答えろ、アイリスフィール。どうなんだ?」
「…………お腹がキツい。切嗣のより重くて丈夫な子が生まれそう……」
甘えるようにそれだけ答えると、綺礼は彼女を寝転がせ、尻を抱えて激しく突き込みだした。
「あん! あ! もっと……違うわあ……優しく、優しくしてぇ……やん! あ! あ! あ! あ!」
人造の女は、その夜も持ち主の劣情を充足させるための人形であった。